「ケンタウルス座」の版間の差分
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| bordering = [[ポンプ座]]<br />[[りゅうこつ座]]<br />[[コンパス座]]<br />[[みなみじゅうじ座]]<br />[[うみへび座]]<br />[[てんびん座]](角で接する)<br />[[おおかみ座]]<br />[[はえ座]]<br />[[ほ座]] |
| bordering = [[ポンプ座]]<br />[[りゅうこつ座]]<br />[[コンパス座]]<br />[[みなみじゅうじ座]]<br />[[うみへび座]]<br />[[てんびん座]](角で接する)<br />[[おおかみ座]]<br />[[はえ座]]<br />[[ほ座]] |
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| notes= |
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{{読み仮名|'''ケンタウルス座'''|ケンタウルスざ|{{lang-la|Centaurus}}}}は、[[トレミーの48星座]]の1つ。 |
{{読み仮名|'''ケンタウルス座'''|ケンタウルスざ|{{lang-la|Centaurus}}}}は、[[星座#国際天文学連合による88星座|現代の88星座]]の1つで、[[トレミーの48星座|プトレマイオスの48星座]]の1つ{{R|Ridpath}}。[[古代ギリシア]]・[[古代ローマ|ローマ]]の伝承に登場する半人半馬の獣人[[ケンタウロス]]をモチーフとしている{{R|IAU_constellations}}。南天の大きな[[星座]]で、全天21個の[[等級 (天文)|1等星]]に数えられる[[ケンタウルス座アルファ星|α星]]・[[ケンタウルス座ベータ星|β星]]や[[ω星団]]など、明るい天体が多い。日本など北半球の中緯度地域からは星座の南側の領域を見ることができない。 |
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'''[[ケンタウルス座アルファ星|α星]]'''・'''[[ケンタウルス座ベータ星|β星]]'''ともに、全天21の1等星の1つである。 |
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== 主な天体 == |
== 主な天体 == |
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=== 恒星 === |
=== 恒星 === |
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{{See also|ケンタウルス座の恒星の一覧}} |
{{See also|ケンタウルス座の恒星の一覧}} |
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α星とβ星の2つの1等星のほか、γ星{{R|simbad_gamma}}、ε星{{R|simbad_epsilon}}、η星{{R|simbad_eta}}、θ星{{R|simbad_theta}}の4つの2等星がある。α星とβ星の2星を結んだ線分をβ星方向に延長すると[[南十字星]]にたどり着くため、[[英語]]ではこの2星のペアを ''' the pointer stars''' と呼んでいる{{R|ConstellationGuide2021}}。 |
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[[2023年]]6月現在、[[国際天文学連合]] (IAU) によって9個の恒星に固有名が認証されている{{R|iaucsn}}。 |
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* [[ケンタウルス座アルファ星|α星]]:全天21の1等星の1つ |
* [[ケンタウルス座アルファ星|α星]]:全天21の1等星の1つ。[[連星|三重星系]]で、[[G型主系列星]]のA星とK型主系列星のB星の連星系の周囲を[[赤色矮星]]のC星が周回している。A・B星のペアを合成した見かけの明るさは、[[シリウス]]、[[カノープス]]に次いで全天で3番目に明るく見える{{R|simbad_alpha}}。[[太陽系]]の最も近くにある[[恒星系]]であり、中でもC星は、太陽系から最も近い位置にある{{R|Hara}}。'''リギル・ケンタウルス''' (Rigil Kentaurus) や'''トリマン''' (Toliman) という通称が知られていたが、2016年11月にIAUの恒星の命名に関するワーキンググループによって、リギル・ケンタウルスはA星の、トリマンはB星の固有名として認証された{{R|iaucsn}}。 |
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** α星A:[[見かけの等級|見かけの明るさ]]0.01 等、スペクトル型G2Vの[[G型主系列星]]で、単独の恒星としては[[アークトゥルス|アルクトゥールス]]に次いで4番目に明るい1等星である{{R|simbad_alpha01}}。「'''リギル・ケンタウルス'''{{R|StellaNavigator11}}(Rigil Kentaurus{{R|iaucsn}})」という固有名を持つ。[[2016年]]には、地球からの[[年周視差]]{{val|743|1.2|ul=ミリ秒}}、距離4.39 [[光年]]とする研究結果が発表されている{{R|Pourbaix2016}}。 |
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* [[ケンタウルス座ベータ星|β星]]:ハダル{{R|Hara}}は、全天21の1等星の1つで、青白い0.6等星{{R|simbad_beta}}。アゲナと呼ばれたこともあった。 |
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** α星B:見かけの明るさ1.33 等、スペクトル型K1Vの主系列星で{{R|simbad_alpha02}}、単独の恒星としては22番目に明るい1等星である。「'''トリマン'''{{R|StellaNavigator11}}(Toliman{{R|iaucsn}})」という固有名を持つ。AとBが二重星であることは、[[1689年]]12月19日、[[インド]]の[[ポンディシェリ]]で[[彗星]]を観測中の[[イエズス会]][[神父]]{{仮リンク|ジャン・リショー|fr|Jean Richaud}}によって発見された{{R|Kameswara-Rao1984}}。[[2012年]]に[[太陽系外惑星の発見方法#ドップラー分光法|ドップラー法]]によって太陽系外惑星[[ケンタウルス座アルファ星Bb|α Cen Bb]]を発見したとする研究結果が発表された{{R|Dumusque2012}}が、[[2015年]]に報告された研究により惑星の存在は否定されている{{R|NG20151104|Rajpaul2015|EPE_alfCenB}}。 |
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* [[ケンタウルス座シータ星|θ星]]:メンケント |
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** α星C:太陽系から4.246 光年の距離にある、見かけの明るさ11.13 等、スペクトル型M5.5Veの[[赤色矮星]]{{R|simbad_alpha03}}。「'''[[プロキシマ・ケンタウリ]]'''{{R|StellaNavigator11}}(Proxima Centauri{{R|iaucsn}})」の固有名で知られる、太陽系に最も近い位置にある恒星である{{R|simbad_alpha03}}。[[1915年]]の[[ロバート・イネス]]による発見{{R|Innes1915}}でその存在が知られて以来、本当にA・Bのペアと連星の関係にあるか否かについて長年議論されてきたが、[[2017年]]の研究では「A・Bのペアの周囲を約55万年の周期で公転している」とされた{{R|Kervella2017}}。2016年には、ドップラー法によって[[地球]]の1.3倍の質量を持つ系外惑星を発見したとする研究結果が報告された{{R|Anglada-Escudé2016}}。その後、[[2019年]]と[[2020年]]にも別の系外惑星の存在が報告されており、2023年6月現在少なくとも2つの系外惑星が存在することが確実視されている{{R|EPE_alfCenC}}。 |
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* [[HD 102117]]:国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」で[[ピトケアン諸島]]に命名権が与えられ、主星はUklun、太陽系外惑星はLeklsullunと命名された{{R|approved}}。 |
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* [[ケンタウルス座ベータ星|β星]]:全天21の1等星の1つ。太陽系から約390 光年の距離にある三重星系{{R|simbad_beta}}で、ともにB型星のAaとAbの連星の周囲を、これもB型のB星が周回している{{R|Pigulski2016}}。A星系は[[分光連星]]で、Aa星(1.29 等)とAb星(1.44 等)を合わせた見かけの明るさは0.58 等となる{{R|WDS_beta}}。2016年の研究では、Aa星は太陽の約12倍、Ab星は約10.6倍の質量を持ち、互いを約357日の周期で周回しているとされた{{R|Pigulski2016}}。2016年にIAUの恒星の命名に関するワーキンググループ (WGSN) によって、Aa星に[[アラビア語]]由来の「'''ハダル'''{{R|StellaNavigator11}}(Hadar{{R|iaucsn}})」という固有名が認証された。これとは別に、「ひざ」を意味する[[ラテン語]]に由来する「アジェナ (Agena){{R|Kunitzsch2006}}」という名称で呼ばれたこともあった。 |
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* [[HD 117618]]:国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」で[[インドネシア共和国]]に命名権が与えられ、主星はDofida、太陽系外惑星はNoifasuiと命名された{{R|approved}}。 |
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* [[ケンタウルス座シータ星|θ星]]:太陽系から約59 光年の距離にある、見かけの明るさ2.05 等、スペクトル型K0-IIIbの巨星で、2等星{{R|simbad_theta}}。「'''メンケント'''{{R|StellaNavigator11}}(Menkent{{R|iaucsn}})」という固有名を持つ。 |
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* [[WASP-15]]:国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」で[[コートジボワール共和国]]に命名権が与えられ、主星はNyamien、太陽系外惑星はAsyeと命名された{{R|approved}}。 |
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* [[HD 102117]]:太陽系から約129 光年の距離にある、見かけの明るさ7.45 等、スペクトル型G6VのG型主系列星で、7等星{{R|simbad_HD102117}}。IAUの100周年記念行事「[[NameExoWorlds|IAU100 NameExoWorlds]]」で[[ピトケアン諸島]]に命名権が与えられ、主星は Uklun、太陽系外惑星は Leklsullun と命名された{{R|approved}}。 |
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* [[HD 117618]]:太陽系から約123 光年の距離にある、見かけの明るさ7.17 等、スペクトル型G0VのG型主系列星で、7等星{{R|simbad_HD117618}}。IAUの100周年記念行事「IAU100 NameExoWorlds」で[[インドネシア共和国]]に命名権が与えられ、主星は Dofida、太陽系外惑星は Noifasui と命名された{{R|approved}}。 |
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* [[WASP-15]]:太陽系から約935 光年の距離にある、見かけの明るさ10.910 等、スペクトル型F7の恒星で、11等星{{R|simbad_WASP15}}。IAUの100周年記念行事「IAU100 NameExoWorlds」で[[コートジボワール共和国]]に命名権が与えられ、主星は Nyamien、太陽系外惑星は Asye と命名された{{R|approved}}。 |
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* [[HIP 65426]]:太陽系から約351 光年の距離にある、見かけの明るさ6.98 等、スペクトル型A2VのA型主系列星で、7等星{{R|simbad_HIP65426}}。[[2022年]]から2023年にかけてIAUが実施したキャンペーン「NameExoWorlds 2022」で[[メキシコ合衆国]]の先住民族[[ソケ族]]の言語{{仮リンク|ソケ語|es|Lenguas zoqueanas}}由来の提案が採用され、主星は Matza、太陽系外惑星は Najsakopajk とそれぞれ命名された{{R|approved2022}}。 |
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他にも、以下のような恒星が知られている。 |
他にも、以下のような恒星が知られている。 |
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* [[ケンタウルス座ガンマ星|γ星]]:太陽系から約130 光年の距離にある連星系{{R|simbad_gamma}}で、A型のスペクトルを持つ[[準巨星]]2つが約84.5年の周期で互いに周回している{{R|Malkov2012}}。A星(2.82 等)とB星(2.88 等)を合わせた見かけの明るさは2.17 等で{{R|simbad_gamma|WDS_gamma}}、ケンタウルス座で3番目に明るく見える。Muhlifain{{R|Kunitzsch2006}}という名称が知られていたが、これは[[おおいぬ座ガンマ星|おおいぬ座γ星]]の固有名が誤って転用されたもの{{R|Kunitzsch2006}}であり、IAUのWGSNからも認証されていない{{R|iaucsn}}。 |
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* [[ケンタウルス座ガンマ星|γ星]]:ムリファイン |
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* [[ケンタウルス座デルタ星|δ星]]:太陽系から約532 光年の距離にある、見かけの明るさ2.52 等、スペクトル型B2Vneの[[B型主系列星]]で、3等星{{R|simbad_delta}}。スペクトル中に顕著な水素の[[スペクトル#スペクトルの波形の特長による種類|輝線]]が見られる「[[Be星]]」で、約1.923日の周期で2.51 等から2.65 等の範囲で変光する{{R|GCVS_delta}}。2008年の研究では、2.50 等の主星と5.40 等の伴星からなる連星系であるとされた{{R|Meilland2008}}。 |
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* [[ケンタウルス座イプシロン星|ε星]]:バーダン |
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* [[ケンタウルス座イプシロン星|ε星]]:太陽系から約427 光年の距離にある、見かけの明るさ2.30 等、スペクトル型B1IIIの青色巨星で、2等星{{R|simbad_epsilon}}。[[変光星]]としては、[[脈動変光星]]の分類の1つ「[[ケフェウス座ベータ型変光星|ケフェウス座β型変光星]] (BCEP)」に分類されており、2.29 等から2.31 等の範囲を0.1694日の周期で変光している{{R|GCVS_epsilon}}。 |
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* [[ケンタウルス座イータ星|η星]] |
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* [[ケンタウルス座ゼータ星|ζ星]]:見かけの明るさ2.55 等、スペクトル型B2.5IVの青色準巨星で、3等星{{R|simbad_zeta}}。連星であるとされるが、伴星に関しては8.02日という公転周期以外の情報が得られていない{{R|Kaler_zet}}。 |
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* [[ケンタウルス座オミクロン1星|ο<sup>1</sup>星]]:SRD型の[[半規則型変光星]]。 |
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* [[ケンタウルス座イータ星|η星]]:見かけの明るさ2.31 等、スペクトル型B2Ve のB型主系列星で、2等星{{R|simbad_eta}}。太陽系に最も近い[[アソシエーション (天文学)#OB型アソシエーション|OBアソシエーション]]である「[[さそり–ケンタウルス座アソシエーション]]」に属するとされる。 |
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* [[ケンタウルス座T星|T星]]:SRA型の半規則型変光星。 |
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* [[ケンタウルス座 |
* [[ケンタウルス座イオタ星|ι星]]:太陽系から約58.2 光年の距離にある、見かけの明るさ2.73 等、スペクトル型kA1.5hA3mA3VaのA型主系列星で、3等星{{R|simbad_iota}}。 |
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* [[ケンタウルス座カッパ星|κ星]]:太陽系から約437 光年の距離にある、見かけの明るさ3.11 等、スペクトル型B2IVの青色準巨星で、3等星{{R|simbad_kappa}}。太陽系に最も近い[[アソシエーション (天文学)#OB型アソシエーション|OBアソシエーション]]である「[[さそり–ケンタウルス座アソシエーション]]」のサブグループ「Upper Centaurus–Lupus」に属するとされる{{R|simbad_UCL}}。 |
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* [[ケンタウルス座ラムダ星|λ星]]:太陽系から約394 光年の距離にある、見かけの明るさ3.14 等、スペクトル型B9IIIの青色巨星{{R|simbad_lambda}}。17世紀後半にイギリスの天文学者[[エドモンド・ハレー|エドモンド・ハリー]]が考案した星座「Robur Carolinum([[チャールズのかしのき座|チャールズの樫]])」に組み込まれたことがあった{{R|Barentine2015}}。 |
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* [[ケンタウルス座ミュー星|μ星]]:太陽系から約387 光年の距離にある、見かけの明るさ3.43 等、スペクトル型B2VnpeのBe星で、3等星{{R|simbad_mu}}。「さそり–ケンタウルス座アソシエーション」のサブグループ「Upper Centaurus–Lupus」に属するとされる{{R|simbad_UCL}}。 |
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* [[ケンタウルス座ニュー星|ν星]]:太陽系から約325 光年の距離にある、見かけの明るさ3.386 等、スペクトル型B2VのB型主系列星で、3等星{{R|simbad_nu}}。「さそり–ケンタウルス座アソシエーション」のサブグループ「Upper Centaurus–Lupus」に属するとされる{{R|simbad_UCL}}。 |
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* [[ケンタウルス座V886星|WG 22]]:太陽系から約48.4 光年の距離にある[[白色矮星]]で、14等星{{R|simbad_WG22}}。[[トリプルアルファ反応]]で生成された[[炭素]]や[[酸素]]で構成されていると考えられている。白色矮星は冷却が進むと内部から結晶化すると予想されており、[[1995年]]に結晶化理論を検証するための観測対象候補とされた{{R|Winget1995}}。研究者からは、[[ビートルズ]]の楽曲『[[ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ]]』にちなんで「[[ルーシー]] (Lucy)」とも呼ばれている{{R|BBC20040216}}。 |
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=== 星団・星雲・銀河 === |
=== 星団・星雲・銀河 === |
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[[天の南極]]に近いため[[メシエ天体]]こそないものの、6つの天体が{{仮リンク|パトリック・ムーア (天文学者)|label=パトリック・ムーア|en|Patrick Moore}}がアマチュア天文家の観測対象に相応しい星団・星雲・銀河を選んだ「[[カルドウェルカタログ|コールドウェルカタログ]]」に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}。 |
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* [[ω星団]]:全天で最も明るい[[球状星団]]。ω(オメガ)という名がついているのは、肉眼でも見えるほどの明るさ(4等級)であったために恒星と誤認され、ケンタウルス座ω星として[[バイエル符号]]が振られてしまったことに由来する。[[いて座]]の[[オメガ星雲]]([[Ω]]型をしている)と名称が似ているが、無関係である。 |
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* NGC 5128:「'''[[ケンタウルス座A]]'''{{R|EHTJapan20190719}}(Centaurus A{{R|simbad_CenA}})」の通称で知られる[[電波銀河]]{{R|EHTJapan20190719}}で、{{仮リンク|ケンタウルス座A/M83銀河群|en|Centaurus A/M83 Group}}を代表する銀河{{R|Karachentsev2005}}。[[1826年]]8月4日、[[スコットランド]]生まれの天文学者{{仮リンク|ジェームス・ダンロップ|en|James Dunlop}}によって発見された{{R|SEDS_NGC5128}}。[[天の川銀河]]から約1200万 光年{{R|simbad_CenA}}の距離にあり、中心部には太陽の5500万倍の質量を持つブラックホールがあると考えられている{{R|EHTJapan20190719|Janssen2021}}。2019年7月、[[イベントホライズンテレスコープ]] (EHT) の国際共同研究チームは、ケンタウルス座Aの中心部を高い解像度で撮影し、中心のブラックホールの位置を正確に特定するとともに、そこから吹き出す大規模ジェットを撮影することに成功した{{R|EHTJapan20190719|Janssen2021}}。コールドウェルカタログの77番に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}。 |
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* [[ブーメラン星雲]]:[[惑星状星雲]]。知られている中で最も低温(温度1[[ケルビン]]、-272℃)の天体である。 |
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* [[NGC 5139]]:'''[[ω星団]]''' ({{Lang-en-short|Omega Centauri}}) の通称で知られる、全天で最も明るく見える[[球状星団]]{{R|SEDS_NGC5139}}。太陽系から約1万6900 光年の距離にある{{R|simbad_NGC5139}}。天の川銀河に属する球状星団の中では最大のもので、[[局所銀河群]]全体でも[[アンドロメダ銀河]]最大の球状星団G1 ({{仮リンク|Mayall II|en|Mayall II}}) に次いで大きい{{R|SEDS_NGC5139}}。40億年以上前に天の川銀河の[[潮汐力]]で分裂させられた[[矮小銀河]]の中心核の残骸であると考えられている{{R|Youakim2023}}。見かけの明るさ3.68 等と肉眼でもよく見える明るさであるため、その存在は[[古代ギリシア]]の時代から知られていたが、長らく星団ではなく1つの恒星と考えられていた{{R|SEDS_NGC5139}}。[[ヨハン・バイエル]]の星図『ウラノメトリア』でも1つの恒星として[[ギリシア文字]]の小文字の「ω」が振られたため、この名称で呼ばれる{{R|SEDS_NGC5139}}{{efn2|[[オメガ星雲]]の名で知られる[[いて座]]の散光星雲M17は、その形状がギリシア文字の大文字の「Ω」に似て見えることから名称が付けられたものであり、この星団とは特に関係はない。}}。この天体が単独の星ではないことが発見されたのは[[1677年]]のことで、[[セントヘレナ島]]で南天の天体を観測していたエドモンド・ハリーによるものであった{{R|SEDS_NGC5139}}。コールドウェルカタログの80番に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}。 |
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* NGC 5128([[ケンタウルス座A]]):強力な電波を放出している銀河。 |
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* [[NGC 4945]]:天の川銀河から約1050万 光年の距離にある[[渦巻銀河]]{{R|simbad_NGC4945}}。ケンタウルス座Aと同じケンタウルス座A/M83銀河群に属しており、ケンタウルス座Aのグループではケンタウルス座Aに次いで明るく見える{{R|Karachentsev2005}}。銀河円盤を真横から観測する形となる典型的なエッジオン銀河だが、その渦状腕と中心核の棒状構造の特徴から天の川銀河と似た形をした渦巻銀河であるとされる{{R|ESO20090902}}。中心部に[[超大質量ブラックホール]]を伴う[[活動銀河核]]があるという点で天の川銀河とは異なっており、[[セイファート銀河]]に分類されている{{R|ESO20090902}}。コールドウェルカタログの83番に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}。 |
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* [[Hen2-104]]:塵の豊富な[[共生星]]から惑星状星雲への変化の途中にある天体。 |
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* [[NGC 5286]]:太陽系から約3万6000 光年の距離にある球状星団{{R|simbad_NGC5286}}。1826年4月29日、ジェームス・ダンロップによって発見された{{R|SEDS_NGC5286}}。コールドウェルカタログの84番に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}。 |
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* [[NGC 3766]]:太陽系から約5,880 光年の距離にある[[散開星団]]{{R|simbad_NGC3766}}。[[1752年]]3月5日、フランスの天文学者[[ニコラ=ルイ・ド・ラカーユ|ニコラ=ルイ・ド・ラカイユ]]によって発見された{{R|SEDS_NGC3766}}。星が密集した様子を[[真珠]]に喩えて「'''真珠星団''' (The Pearl Cluster)」の通称で呼ばれることもある{{R|SEDS_NGC3766}}。コールドウェルカタログの97番に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}。 |
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=== その他 === |
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* [[IC 2944]]:太陽系から約7,780 光年の距離にある、[[散光星雲]]を伴った[[散開星団]]{{R|simbad_IC2944}}。近くにあるλ星の名前を取って「λ Cen Nebula{{R|simbad_IC2944}}」、あるいは最も明るい領域の様子をニワトリに喩えて「'''走るニワトリ星雲'''{{R|ng20121129}}(The Running Chicken Nebula{{R|ESO20110921}})」などと呼ばれる。コールドウェルカタログの100番に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}。 |
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* [[ケンタウルス座V886星]]:ダイヤモンドの塊などとも言われる、炭素の結晶化の理論検証に利用されている[[白色矮星]]{{R|cfa}}。 |
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* [[ブーメラン星雲]]:太陽系から約1,212 光年の距離にある[[原始惑星状星雲]]。[[1980年]]に[[オーストラリア]]で観測された際に[[ブーメラン]]のように湾曲した形状に見えたため、この通称が付けられた{{R|ESA20030302}}。双極状の構造を持つことから Centaurus Bipolar Nebula{{R|simbad_BoomerangNebula}}、あるいは Bow tie Nebula{{R|ESA20030302}}とも呼ばれる。温度1[[ケルビン|K]] (-272℃) と、既知の天体の中で最も低温の天体の1つ{{R|ESA20030302}}。 |
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* [[Hen2-104]]:太陽系から約1万5400 光年{{R|simbad_Hen2-104}}の距離にある、豊富なダストを持つ[[共生星]]の段階から双極状の構造を持つ[[惑星状星雲]]への変化の途中にある天体{{R|Okazaki1994|Hubble19990824}}。アメリカの天文学者で[[宇宙飛行士]]の[[カール・ゴードン・ヘナイズ]]が[[1967年]]に発表した[[惑星状星雲]]のカタログで知られるようになったことからこの名称で呼ばれる{{R|Henize1967}}。その姿が[[おうし座]]にある[[超新星残骸]]「[[かに星雲]]」と似て見えることから「'''南のかに星雲'''{{R|Okazaki1994}}({{Lang-en-short|Southern Crab}}{{R|simbad_Hen2-104}})とも呼ばれるが、超新星残骸ではない。 |
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{{Gallery |
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| The brilliant southern Milky Way.jpg|南天の天の川に並ぶ美しい天体の写真。写真左から、[[ケンタウルス座アルファ星|ケンタウルス座α星]]、[[ケンタウルス座ベータ星|ケンタウルス座β星]]、[[みなみじゅうじ座|南十字]]、[[イータカリーナ星雲]] (NGC 3372)。 |
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| Black Hole Outflows From Centaurus A.jpg|[[ヨーロッパ南天天文台]] (ESO) による[[電波銀河]][[ケンタウルス座A]]のカラー合成画像。中心部から噴出するローブとジェットを確認できる。チリ [[ラ・シヤ天文台]]のMPG/ESO 2.2m望遠鏡に搭載された広視野イメージャー (WFI) による可視光の画像に、アタカマ砂漠の12mサブミリ波望遠鏡アタカマ・パスファインダー実験機 (APEX) による赤外線画像(オレンジ)とNASAの[[X線観測衛星]][[チャンドラ (人工衛星)|チャンドラ]]によるX線画像(青)を合成している。 |
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| Omega Centauri by ESO.jpg|ESOラ・シヤ天文台のWFIで撮影された[[球状星団]][[ω星団]]。 |
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| Spiral Galaxy NGC 4945.jpg|ESOラ・シヤ天文台のMPG/ESO 2.2m望遠鏡で撮影された[[渦巻銀河]][[NGC 4945]]。 |
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| Caldwell 84 (50291859591).jpg|[[ハッブル宇宙望遠鏡]] (HST) の[[広視野カメラ3]] (WFC3) で撮影された球状星団[[NGC 5286]]。 |
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| Star cluster NGC 3766.jpg|ESOラ・シヤ天文台の[[レオンハルト・オイラー望遠鏡|スイス1.2mレオンハルト・オイラー望遠鏡]]で撮影された[[散開星団]][[NGC 3766]]。 |
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| IC 2944, Nicknamed the Running Chicken Nebula.jpg|ESOラ・シヤ天文台のWFIで撮影された散開星団[[IC 2944]]。 |
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| True shape of the Boomerang.jpg|ESOによる[[原始惑星状星雲]][[ブーメラン星雲]]の擬似カラー合成画像。HSTが撮像した部分を青、[[アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計|ALMA]]が撮像した部分をオレンジに着色して合成されている。 |
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| The Crab of the Southern Sky (47638897011).jpg|HSTのWFC3で撮影された[[Hen2-104]]。 |
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}} |
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== 由来と歴史 == |
== 由来と歴史 == |
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=== 有史以前から古代ギリシア・ローマ期 === |
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[[古代メソポタミア]]では、[[紀元前5千年紀]]に成立した最も古い星座の1つである。人頭[[ウシ|牛]]身とされ、[[ケンタウロス|ケンタウルス]]に似た2腕4脚、または、直立した2腕2脚の姿に描かれた。これらは[[バイソン]]マン ({{en|the Bison-Man}}) またはブルマン ({{en|the Bull-Man}}) と呼ばれ、狂[[イヌ|犬]](現在の[[おおかみ座]])と対をなす{{R|Kondo}}。[[紀元前3千年紀]]後半には[[イノシシ]] ({{en|the Wild Boar}}) に変化した{{R|Kondo}}。 |
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ケンタウルス座は非常に長い歴史を持つ星座で、その原型は[[紀元前5千年紀]]頃の[[古代メソポタミア]]で考えられた獣人 MUL.GUD.ALIM まで遡るとされる{{R|Kondo}}。この獣人は人頭牛身の2腕4脚または直立した2腕2脚の姿で描かれたことから、「バイソンマン ({{Lang-en-short|the Bison-Man}})」や「ブルマン ({{Lang-en-short|the Bull-Man}})」と呼ばれている{{R|Kondo}}。この獣人の星座は、[[紀元前3千年紀]]後半頃には姿を変えて[[イノシシ]]の星座と見なされていた{{R|Kondo}}。このメソポタミア地方の星座の意匠がいつ頃[[地中海]]地域に伝えられたのかは定かではないが、[[紀元前4世紀]]頃に[[アナトリア半島]]の[[クニドス]]で活動した天文学者[[エウドクソス]]の著書『ファイノメナ ({{Lang-grc-short|Φαινόμενα}})』には既にケンタウルス座についての言及があったとされる。エウドクソスの『ファイノメナ』は現存していないが、エウドクソスの著述を元に[[紀元前3世紀]]の詩人[[アラトス|アラートス]]が詩作した詩編『ファイノメナ』には、ケンタウルス座の詩が詠われている{{R|Ito2007}}。 |
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古代ギリシア・ローマでは、[[みなみじゅうじ座]]の星々はケンタウロスの後ろ足の部分とされた{{R|Condos1997}}。また、現在の[[おおかみ座]]の星々もケンタウルス座の一部と考えられていた{{R|Ridpath_Lupus}}。当時は「半人半馬のケンタウロス ({{Lang-grc-short|Κένταυρος}}」と「ケンタウロスに槍で突かれようとしている野獣 ({{Lang-grc-short|Θηρίον}})」の2つの描像をまとめて1つの星座としており{{R|Ridpath_Lupus}}、[[紀元前3世紀]]後半の天文学者[[エラトステネス|エラトステネース]]の『[[カタステリスモイ]] ({{Lang-grc-short|Καταστερισμοί}})』や、1世紀初頭頃の著作家[[ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス]]の『天文詩 ({{Lang-la-short|De Astronomica}})』では、ケンタウロスの部分には24個、野獣の部分には10個の星があるとしていた{{R|Condos1997}}。これに対して、[[2世紀]]頃に[[アレクサンドリア]]で活躍した[[クラウディオス・プトレマイオス]]は、天文書『ヘー・メガレー・スュンタクスィス・テース・アストロノミアース ({{Lang-grc-short|ἡ Μεγάλη Σύνταξις τῆς Ἀστρονομίας}})』、いわゆる『[[アルマゲスト]]』の中で、ケンタウロスと野獣を2つの星座に分割した{{R|Ridpath_Lupus}}上で、より暗い星もケンタウルス座に加えて星の数を37個まで増やした{{R|Condos1997}}。 |
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この星座は紀元前4世紀の[[エウドクソス]]と紀元前3世紀の[[アラトス]]による言及がある。[[クラウディオス・プトレマイオス|プトレマイオス]]は、この星座の37の星のカタログを作った。現在は[[ギリシャ]]からこれらの星を見ることは困難だが、プトレマイオスの時代には[[歳差]]運動による地軸の向きの関係で見ることができたと考えられている{{R|ridpath}}。 |
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地球の[[歳差運動]]によって起こる[[地軸]]の移動のため、ケンタウルス座の天上での位置は時代を経るごとに南へと移動している。そのため、プトレマイオスが活動した2世紀頃の[[アレクサンドリア]]からはその全域を見ることができた{{R|Ridpath|StellaNavigator11}}が、次第に欧州や地中海沿岸の領域では[[周極星|地平線下から上がってこない星]]が増えていった。 |
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=== 16世紀以降 === |
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[[大航海時代]]を迎え、それまで観測できなかった南天の星々についての情報が西洋にもたらされるようになると、それを[[天球儀]]や[[星図]]に反映させようとする気運が生まれた。[[1595年]]から[[1597年]]にかけて行われた{{仮リンク|オランダの第1次東インド遠征|en|First Dutch Expedition to East Indies}}に帯同した[[オランダ]]の航海士[[ペーテル・ケイセル]]は、南天を観測してその詳細な記録を残した{{R|Dekker1987a|Ridpath_1c}}。ケイセルは航海途中の[[1596年]]に[[バンテン州|バンテン]]で客死したが、彼が遺した観測記録は[[フレデリック・デ・ハウトマン]]によってオランダの地図製作者[[ペトルス・プランシウス]]の元に届けられた{{R|Ridpath_1c}}。プランシウスはデ・ハウトマンから受け取った観測記録を元に、オランダの地図製作者{{仮リンク|ヨドクス・ホンディウス|en|Jodocus Hondius}}と共同で[[1598年]]に[[天球儀]]を製作した。この1598年の天球儀は現存していないが、[[1600年]]にホンディウスが製作した天球儀ではケンタウルス座は『アルマゲスト』に記されたものから南西に拡張されたこと、また[[みなみじゅうじ座]]が Cruzero として独立した星座とされたことが確認できる{{R|Hondius_globe}}。 |
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[[File:Uranometria Centaurus.jpg|thumb|360px|『ウラノメトリア』(1603年、[[ヨハン・バイエル]])に描かれたケンタウルス座。]] |
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[[1603年]]、[[ドイツ]]の法律家[[ヨハン・バイエル]]は、プランシウスやホンディウスらの天球儀から南天の星の位置をコピーして全天星図『ウラノメトリア (Uranometria)』を出版した{{R|Dekker1987a}}。バイエルはこの星図の中で、右手にブドウの蔓が絡まった槍を、左手にワインの革袋を持つケンタウロスの姿を描いた。またバイエルはホンディウスらと異なり南十字をケンタウルス座の一部と見なしており、星図上ではケンタウロスの後ろ足に重ねて十字架を描いている{{R|Bayer1603b}}。バイエルは他の星座と同様に、星座の中で目立つ恒星に対して[[ギリシア文字]]の小文字や[[ラテン文字]]の符号、いわゆる[[バイエル符号]]を付した{{R|Bayer1603b}}が、18世紀中頃にラカイユによって符号が全て見直しされたため、現代の星名と一致するものはα・θ・ι・φ・g・h・kの7星とω星団だけである{{R|Takesako2021}}。 |
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[[File:Halley's Argo and Robur Carolinum.jpg|thumb|360px|1678年にエドモンド・ハリーが刊行した星図に描かれた Robur Carolinum。ハリーが Robur Carolinum の星とした12個の星のうちの1つは、現在のケンタウルス座λ星である。]] |
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[[17世紀]][[イギリス]]の天文学者エドモンド・ハリーは、[[1679年]]の天文書『Catalogus Stellarum Australium』でプランシウスらと同様にケンタウルス座から独立した星座として扱った{{efn2|日本では、みなみじゅうじ座はフランスの天文学者[[オギュスタン・ロワーエ]]が1679年に出版した書籍『Cartes du ciel』で設定したのが最初であると説明する書籍{{R|Hara}}やサイト{{R|studystyle}}が多く見られるがこれは誤りで、実際にはプランシウスが1592年の世界地図や1598年の天球儀に描いたものが最初であり、また[[ヤコブス・バルチウス]]やハリーの天文書でも独立した星座として扱われている。}}。またハリーは、当時どの星座にも属していないとされていたアルゴ座とケンタウルス座の間の星を用いて「[[チャールズのかしのき座|Robur Carolinum(チャールズの樫)]]」を設けた{{R|Barentine2015}}。この星座には、バイエルらがケンタウロスの後ろ脚の蹄の部分とした現在のケンタウルス座λ星も含まれていた{{R|Barentine2015}}。 |
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[[18世紀]][[フランス]]の天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユは、[[1756年]]に出版された[[科学アカデミー (フランス)|フランス科学アカデミー]]の1752年版紀要に寄稿した星表と星図の中で、ハリーが設けた Robur Carolinum を廃し{{R|Barentine2015}}、その星を[[アルゴ座]]、ケンタウルス座、[[はえ座]]に属する星とした{{R|Stoppa|planisphere1756}}。また、バイエルがケンタウルス座に付したバイエル符号を全て廃して、新たにギリシア文字の小文字とラテン文字の符号を振り直した{{Sfn|Gould|1879|p=55}}。バイエルはギリシア文字の「α」との混同を避けるためにラテン文字の小文字「a」の代わりに大文字の「A」を使ったが、ラカイユは「a」をそのまま使用した。ラカイユは、ギリシア文字の24文字全てと、ラテン文字の J・U・W・j・vを除く47文字の計71文字を、ケンタウルス座の恒星と星団に使用した{{R|Lacaille}}。 |
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[[1879年]]、[[コルドバ州]]に新設された{{仮リンク|アルゼンチン国立天文台|en|Argentine National Observatory}}の台長の職にあった[[アメリカ]]生まれの天文学者[[ベンジャミン・グールド]]は、自身の観測記録を元に編纂した南天の星表『Uranometria Argentina』を刊行した。グールドはこの星表の中でラカイユの付した符号に以下の変更を加えた{{Sfn|Gould|1879|pp=65-66}}{{Sfn|Gould|1879|pp=150-155}}。 |
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# ラカイユが符号を付した星のうちラテン文字の大文字R以降の符号が付けられた星については、アルゲランダーが考案した変光星への符号と重なることから符号を取り消した。 |
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# ラテン文字の小文字の w もギリシア文字のωとの混同を避けるために取り消した。 |
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# ラカイユが使用しなかったラテン文字の大文字 J と小文字 j・v を新たに付した{{efn2|JはバイエルのZ星に、vはバイエルのY星に付けられた{{R|Lacaille}}{{Sfn|Gould|1879|pp=150-155}}。}}。 |
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グールドは{{行内引用|プトレマイオスの権威を尊重するがゆえに、アルゴ座とケンタウルス座が占めている広大な天空の領域に、ラカイユが新しい星座を導入しなかったことは非常に残念である{{Sfn|Gould|1879|p=55}}。}}としていたが、彼自身がアルゴ座を分割したのと同じようにケンタウルス座を分割することはなかった。 |
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[[1922年]]5月に[[ローマ]]で開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は '''Centaurus'''、略称は '''Cen''' と正式に定められた{{R|IAU_list}}。 |
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=== 中国 === |
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現在のケンタウルス座の領域のうち南側にある星の一部は、[[三垣]]や[[二十八宿]]には含まれていなかった。これらの星は、[[明|明代末期]]の[[1631年]]から[[1635年]]にかけて[[イエズス会|イエズス会士]][[アダム・シャール]]や[[徐光啓]]らにより編纂された天文書『[[崇禎暦書]]』で初めて取り入れられ、新たに設けられた領域「[[近南極星区|近南極星]]」の星官に配された{{R|Osaki1987}}。この頃、明の首都[[北京]]の天文台にはバイエルの『ウラノメトリア』が2冊置かれていたとされ、これら南天の新たな星官は『ウラノメトリア』に描かれた新星座をほとんどそのまま取り入れたものが多い{{R|Osaki1987}}。これらの星官は、[[清|清代]]の[[1752年]]に編纂された天文書『欽定儀象考成』にも、いくつかの星が新たに加えて取り入れられた{{R|Osaki1987}}。 |
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『欽定儀象考成』では、ケンタウルス座の星は、二十八宿の[[青龍|東方青龍]]七宿の第一宿「[[角宿]]」、第二宿「[[亢宿]]」、第三宿「[[氐宿]]」と近南極星の星官に配された。角宿では、ζ・η・θ・2・d・f・γ・τ・HD 107931・σ と ω の10星と星団1つが「武器庫」を表す星官「庫楼」に、υ{{sup|1}}・υ{{sup|2}}・a・ψ・4・3・1・ι と不明の1星の計9星が庫楼を支える柱を表す星官「柱」に、ν・μ・φ・χの4星が兵士の訓練場所を表す星官「衡」に、ε・α・R の3星が庫楼の南門を表す星官「南門」に、それぞれ配された{{Sfn|伊世同|1981|p=141}}。亢宿では、b・c{{sup|1}} の2星が要塞の城門を表す「陽門」に配された{{Sfn|伊世同|1981|p=141}}。氐宿では、κ が侍衛を表す星官「騎官」に配された{{Sfn|伊世同|1981|p=141}}。近南極星では、λと不明の1星が『ウラノメトリア』に描かれた大きな岩山にあたる「海山」に、G・ρ・δの3星がケンタウルスの尾にあたる「馬尾」に、β と不明の2星がケンタウルスの腹にあたる「馬腹」に、それぞれ配された{{Sfn|伊世同|1981|p=141}}。 |
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== 神話 == |
== 神話 == |
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[[File:Centaurus hevelius.png|thumb|1690年に出版された[[ヨハネス・ヘヴェリウス]]の ''Firmamentum Sobiescianum, sive Uranographia'' に描かれたケンタウルス座]] |
[[File:Centaurus hevelius.png|thumb|1690年に出版された[[ヨハネス・ヘヴェリウス]]の ''Firmamentum Sobiescianum, sive Uranographia'' に描かれたケンタウルス座]] |
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ケンタウルス座のモデルとされた人物は、'''[[ケイローン]]'''とされる{{R|Ridpath}}。紀元前3世紀のエラトステネースは詩編『カタステリスモイ』の中で、医神[[アスクレーピオス]]や勇将[[アキレウス]]の師で、[[ピリオ山|ペーリオン山]]に住むケイローンの姿であるとした{{R|Condos1997}}。エラトステネースの伝えるところでは、「ケイローンに恋心を抱いた[[ヘーラクレース]]が彼を洞窟に訪ね、彼と性交に及んだ。紀元前5世紀から紀元前4世紀頃の古代ギリシアの哲学者[[アンティステネス|アンティステネース]]の伝える話では、ヘーラクレースが殺害せず会話を交わした唯一のケンタウロスがケイローンであった。ケイローンがヘーラクレースと語らっていた際に、ヘーラクレースの矢筒から落ちた矢が足に刺さったことでケイローンは命を落とした。彼の死を悼んだ大神[[ゼウス]]はケイローンの亡骸を天に上げ、祭壇に野獣を生贄として捧げようとしている敬虔なケンタウロスの姿とした」とされている{{R|Condos1997}}。 |
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古代ギリシャでは、想像上の動物[[ケンタウロス]]([[ラテン語]]読みでケンタウルス)とみなされた。古代ギリシャのアラトスは『ファイノメナ』の中で、[[ケイローン]]という名の、神の子たちを立派に育て上げたケンタウロスであるとしている{{R|Chiba1999}}。古代ローマの[[ヒュギーヌス]]の『天文学』、偽エラトステネスの[[カタステリスモイ]]、[[オウィディウス]]の『祭暦』『変身物語』でも同様にケイローンに結び付けられている{{R|Chiba1999}}。19世紀末アメリカのアマチュア博物家[[リチャード・ヒンクリー・アレン]]は、ケイローンを由来とする説とともに、[[アポロドーロス]]の伝える話として[[ポロス]]という別のケンタウロスを由来とする説を伝えている{{R|Allen2013}}。 |
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このケンタウルス座のモデルについてのエラトステネースの見解は古代ギリシア・ローマ時代を通じて支配的なものとなり、1世紀の[[ヒュギーヌス]]の『天文詩 ({{Lang-la-short|Poeticon astronomicon}})』、[[オウィディウス]]の『祭暦 ({{Lang-la-short|Fasti}})』『変身物語 ({{Lang-la-short|Metamorphoses}})』などの作品では、いずれもケイローンがモデルとなったとされている。また、アラートスの『ファイノメナ』では特にモデルとなった人物についての言及はないが{{R|Ito2007}}、西暦4年に古代ローマのゲルマニクスが一部改変・ラテン語訳した『ファイノメナ』では、神の子たちを立派に育て上げたケイローンがモデルであると説明している{{R|ItoSagawa1999}}。 |
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[[19世紀|19世紀末]]アメリカのアマチュア博物家[[リチャード・ヒンクリー・アレン]]は、ケンタウルス座のモデルをケイローンとする説とともに、古代ローマの著作家[[アポロドーロス|偽アポロドーロス]]の著書『ビブリオテーケー ({{Lang-grc-short|Βιβλιοθήκη}})』に書かれたケンタウロス族と[[ヘーラクレース]]の争いに登場する[[ポロス]] (Pholus) という別のケンタウロスを由来とする説を伝えている{{R|Allen2013}}。 |
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== 呼称と方言 == |
== 呼称と方言 == |
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日本 |
日本語の学術用語としては「'''ケンタウルス'''」と定められている{{Sfn|学術用語集:天文学編(増訂版)|1994|pp=305-306}}。 |
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日本では、[[1874年]](明治7年)に[[文部省]]より出版された[[関藤成緒]]の天文書『星学捷径』では「'''センタウリュス'''{{R|Sekito1874}}」として、[[1879年]](明治12年)に[[ノーマン・ロッキャー]]の著書『Elements of Astronomy』を翻訳して出版された天文書『洛氏天文学』で「'''センタウルス'''{{R|Rakushi}}」と紹介された。明治末期には「'''ケンタウルス'''」という訳語が充てられていたことが、[[1910年]](明治43年)2月刊行の[[日本天文学会]]の会報『天文月報』第2巻11号に掲載された「星座名」という記事でうかがい知ることができる{{R|AH191002}}。この訳名は、[[1925年]](大正14年)に初版が刊行された『[[理科年表]]』にも引き継がれた{{R|Rika_1925}}。戦後の[[1952年]](昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」{{Sfn|学術用語集:天文学編(増訂版)|1994|p=316}}とした際に、Centaurus の日本語名は「'''ケンタウルス'''」と定められた{{R|AH195210}}。これ以降は「ケンタウルス」という表記が継続して用いられている。 |
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[[東亜天文学会|天文同好会]]{{efn2|現在の[[東亜天文学会]]。}}の[[山本一清]]らは異なる訳語を充てていた。天文同好会の編集により[[1928年]](昭和3年)4月に刊行された『[[天文年鑑]]』第1号では星座名 Centaurus に対して「'''ケンタウルス'''」の訳語を充てていたが{{R|nenkan1928}}、1929年(昭和4年)に刊行された第2号以降は「'''センタウル'''」という訳を充てた{{R|nenkan1929|nenkan1937}}。これについて山本は、東亜天文学会の会誌『[[天界]]』1934年4月号の「天文用語に關する私見と主張 (2)」という記事の中で{{行内引用|因みに,Centaurus や Cepheus や Perseus や,Taurus や,Pegasus 等の語尾のは,ラテン語の男性名詞を表はす語尾なのだから,此等を日本語に譯する場合には必ずしも性に囚はれる必要はない.(元々,日本語には性の區別は無いのだから.)只,「センタウル」,「セフェ」,「ペルセ」,「牛」,「ペガス」で好いのである.}}{{R|Yamamoto1934}}と述べている。山本は、[[京都帝国大学]]退官後に設けた私設の「田上天文台」の名義で刊行した『天文年表』の中でも「センタウル」の訳名を用い続けた{{R|nenpyo1944|nenpyo1953}}。 |
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現代の中国では、'''半人马座'''{{Sfn|伊世同|1981|p=131}}(半人馬座{{R|Osaki1987_2}})と呼ばれている。 |
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=== 方言 === |
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[[八重山諸島]]には、ケンタウルス座α星とβ星の2つの星を、「南の星」を意味する「ハイカプス」「パイガプシ」「パイガプス」などと呼ぶ[[八重山方言|方言]]が伝えられている{{R|nojiri}}。{{See also|[[星・星座に関する方言#ケンタウルス座|ケンタウルス座の方言]]}} |
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{{See also|[[星・星座に関する方言#ケンタウルス座|ケンタウルス座の方言]]}} |
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[[八重山諸島]]に伝わる[[八重山方言|方言]]では、α星とβ星の2つの星のペアは、「南の星」を意味する「ハイカプス」「パイガプシ」「パイガプス」などと呼ばれる{{R|Nojiri}}。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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{{Notelist2}} |
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=== 出典 === |
=== 出典 === |
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{{Reflist|25em|refs= |
{{Reflist|25em|refs= |
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<ref name="Kondo">{{Cite book|和書 |
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<ref name="IAU_constellations">{{Cite web |
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|author=[[近藤二郎]] |
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| title=The Constellations |
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|title=わかってきた星座神話の起源 古代メソポタミアの星座 |
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| publisher=[[国際天文学連合]] |
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|publisher=[[誠文堂新光社]]|date=2010-12-30|isbn=978-4-416-21024-6}}</ref> |
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| url=https://www.iau.org/public/constellations/#cen |
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| access-date=2023-06-15}}</ref> |
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| title=* alf Cen -- Double or multiple star |
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| work=[[SIMBAD|SIMBAD Astronomical Database]] |
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| title=* alf Cen A -- Spectroscopic binary |
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| title=Pointer Stars: Guides to Celestial Poles |
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| title=* alf Cen B -- High proper-motion Star |
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<ref name="StellaNavigator11">{{Citation | 和書 |
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| publisher=[[ストラスブール天文データセンター|CDS]] |
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| title=V* V645 Cen -- Flare Star |
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| url=https://www.pas.rochester.edu/~emamajek/WGSN/IAU-CSN.txt |
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<ref name="simbad_beta">{{cite web |
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| title=* bet Cen -- Variable Star of beta Cep type |
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| work=[[SIMBAD|SIMBAD Astronomical Database]] |
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<ref name="approved">{{cite web |
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| publisher=[[ストラスブール天文データセンター|CDS]] |
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| title=2019 Approved Names |
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== 参考文献 == |
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2023年7月24日 (月) 07:24時点における版
Centaurus | |
---|---|
属格形 | Centauri |
略符 | Cen |
発音 | 英語発音: [sɛnˈtɔrəs]、属格:/sɛnˈtɔraɪ/ |
象徴 | ケンタウロス[1] |
概略位置:赤経 | 11h 05m 20.9s - 15h 03m 11.1s[2] |
概略位置:赤緯 | −29.99° - −64.68°[2] |
正中 | 5月20日 |
広さ | 1060.422平方度[3] (9位) |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 69 |
3.0等より明るい恒星数 | 9 |
最輝星 | α Cen(-0.1等) |
メシエ天体数 | 0 |
隣接する星座 |
ポンプ座 りゅうこつ座 コンパス座 みなみじゅうじ座 うみへび座 てんびん座(角で接する) おおかみ座 はえ座 ほ座 |
主な天体
恒星
α星とβ星の2つの1等星のほか、γ星[5]、ε星[6]、η星[7]、θ星[8]の4つの2等星がある。α星とβ星の2星を結んだ線分をβ星方向に延長すると南十字星にたどり着くため、英語ではこの2星のペアを the pointer stars と呼んでいる[9]。
2023年6月現在、国際天文学連合 (IAU) によって9個の恒星に固有名が認証されている[10]。
- α星:全天21の1等星の1つ。三重星系で、G型主系列星のA星とK型主系列星のB星の連星系の周囲を赤色矮星のC星が周回している。A・B星のペアを合成した見かけの明るさは、シリウス、カノープスに次いで全天で3番目に明るく見える[11]。太陽系の最も近くにある恒星系であり、中でもC星は、太陽系から最も近い位置にある[12]。リギル・ケンタウルス (Rigil Kentaurus) やトリマン (Toliman) という通称が知られていたが、2016年11月にIAUの恒星の命名に関するワーキンググループによって、リギル・ケンタウルスはA星の、トリマンはB星の固有名として認証された[10]。
- α星A:見かけの明るさ0.01 等、スペクトル型G2VのG型主系列星で、単独の恒星としてはアルクトゥールスに次いで4番目に明るい1等星である[13]。「リギル・ケンタウルス[14](Rigil Kentaurus[10])」という固有名を持つ。2016年には、地球からの年周視差743±1.2 ミリ秒、距離4.39 光年とする研究結果が発表されている[15]。
- α星B:見かけの明るさ1.33 等、スペクトル型K1Vの主系列星で[16]、単独の恒星としては22番目に明るい1等星である。「トリマン[14](Toliman[10])」という固有名を持つ。AとBが二重星であることは、1689年12月19日、インドのポンディシェリで彗星を観測中のイエズス会神父ジャン・リショーによって発見された[17]。2012年にドップラー法によって太陽系外惑星α Cen Bbを発見したとする研究結果が発表された[18]が、2015年に報告された研究により惑星の存在は否定されている[19][20][21]。
- α星C:太陽系から4.246 光年の距離にある、見かけの明るさ11.13 等、スペクトル型M5.5Veの赤色矮星[22]。「プロキシマ・ケンタウリ[14](Proxima Centauri[10])」の固有名で知られる、太陽系に最も近い位置にある恒星である[22]。1915年のロバート・イネスによる発見[23]でその存在が知られて以来、本当にA・Bのペアと連星の関係にあるか否かについて長年議論されてきたが、2017年の研究では「A・Bのペアの周囲を約55万年の周期で公転している」とされた[24]。2016年には、ドップラー法によって地球の1.3倍の質量を持つ系外惑星を発見したとする研究結果が報告された[25]。その後、2019年と2020年にも別の系外惑星の存在が報告されており、2023年6月現在少なくとも2つの系外惑星が存在することが確実視されている[26]。
- β星:全天21の1等星の1つ。太陽系から約390 光年の距離にある三重星系[27]で、ともにB型星のAaとAbの連星の周囲を、これもB型のB星が周回している[28]。A星系は分光連星で、Aa星(1.29 等)とAb星(1.44 等)を合わせた見かけの明るさは0.58 等となる[29]。2016年の研究では、Aa星は太陽の約12倍、Ab星は約10.6倍の質量を持ち、互いを約357日の周期で周回しているとされた[28]。2016年にIAUの恒星の命名に関するワーキンググループ (WGSN) によって、Aa星にアラビア語由来の「ハダル[14](Hadar[10])」という固有名が認証された。これとは別に、「ひざ」を意味するラテン語に由来する「アジェナ (Agena)[30]」という名称で呼ばれたこともあった。
- θ星:太陽系から約59 光年の距離にある、見かけの明るさ2.05 等、スペクトル型K0-IIIbの巨星で、2等星[8]。「メンケント[14](Menkent[10])」という固有名を持つ。
- HD 102117:太陽系から約129 光年の距離にある、見かけの明るさ7.45 等、スペクトル型G6VのG型主系列星で、7等星[31]。IAUの100周年記念行事「IAU100 NameExoWorlds」でピトケアン諸島に命名権が与えられ、主星は Uklun、太陽系外惑星は Leklsullun と命名された[32]。
- HD 117618:太陽系から約123 光年の距離にある、見かけの明るさ7.17 等、スペクトル型G0VのG型主系列星で、7等星[33]。IAUの100周年記念行事「IAU100 NameExoWorlds」でインドネシア共和国に命名権が与えられ、主星は Dofida、太陽系外惑星は Noifasui と命名された[32]。
- WASP-15:太陽系から約935 光年の距離にある、見かけの明るさ10.910 等、スペクトル型F7の恒星で、11等星[34]。IAUの100周年記念行事「IAU100 NameExoWorlds」でコートジボワール共和国に命名権が与えられ、主星は Nyamien、太陽系外惑星は Asye と命名された[32]。
- HIP 65426:太陽系から約351 光年の距離にある、見かけの明るさ6.98 等、スペクトル型A2VのA型主系列星で、7等星[35]。2022年から2023年にかけてIAUが実施したキャンペーン「NameExoWorlds 2022」でメキシコ合衆国の先住民族ソケ族の言語ソケ語由来の提案が採用され、主星は Matza、太陽系外惑星は Najsakopajk とそれぞれ命名された[36]。
他にも、以下のような恒星が知られている。
- γ星:太陽系から約130 光年の距離にある連星系[5]で、A型のスペクトルを持つ準巨星2つが約84.5年の周期で互いに周回している[37]。A星(2.82 等)とB星(2.88 等)を合わせた見かけの明るさは2.17 等で[5][38]、ケンタウルス座で3番目に明るく見える。Muhlifain[30]という名称が知られていたが、これはおおいぬ座γ星の固有名が誤って転用されたもの[30]であり、IAUのWGSNからも認証されていない[10]。
- δ星:太陽系から約532 光年の距離にある、見かけの明るさ2.52 等、スペクトル型B2VneのB型主系列星で、3等星[39]。スペクトル中に顕著な水素の輝線が見られる「Be星」で、約1.923日の周期で2.51 等から2.65 等の範囲で変光する[40]。2008年の研究では、2.50 等の主星と5.40 等の伴星からなる連星系であるとされた[41]。
- ε星:太陽系から約427 光年の距離にある、見かけの明るさ2.30 等、スペクトル型B1IIIの青色巨星で、2等星[6]。変光星としては、脈動変光星の分類の1つ「ケフェウス座β型変光星 (BCEP)」に分類されており、2.29 等から2.31 等の範囲を0.1694日の周期で変光している[42]。
- ζ星:見かけの明るさ2.55 等、スペクトル型B2.5IVの青色準巨星で、3等星[43]。連星であるとされるが、伴星に関しては8.02日という公転周期以外の情報が得られていない[44]。
- η星:見かけの明るさ2.31 等、スペクトル型B2Ve のB型主系列星で、2等星[7]。太陽系に最も近いOBアソシエーションである「さそり–ケンタウルス座アソシエーション」に属するとされる。
- ι星:太陽系から約58.2 光年の距離にある、見かけの明るさ2.73 等、スペクトル型kA1.5hA3mA3VaのA型主系列星で、3等星[45]。
- κ星:太陽系から約437 光年の距離にある、見かけの明るさ3.11 等、スペクトル型B2IVの青色準巨星で、3等星[46]。太陽系に最も近いOBアソシエーションである「さそり–ケンタウルス座アソシエーション」のサブグループ「Upper Centaurus–Lupus」に属するとされる[47]。
- λ星:太陽系から約394 光年の距離にある、見かけの明るさ3.14 等、スペクトル型B9IIIの青色巨星[48]。17世紀後半にイギリスの天文学者エドモンド・ハリーが考案した星座「Robur Carolinum(チャールズの樫)」に組み込まれたことがあった[49]。
- μ星:太陽系から約387 光年の距離にある、見かけの明るさ3.43 等、スペクトル型B2VnpeのBe星で、3等星[50]。「さそり–ケンタウルス座アソシエーション」のサブグループ「Upper Centaurus–Lupus」に属するとされる[47]。
- ν星:太陽系から約325 光年の距離にある、見かけの明るさ3.386 等、スペクトル型B2VのB型主系列星で、3等星[51]。「さそり–ケンタウルス座アソシエーション」のサブグループ「Upper Centaurus–Lupus」に属するとされる[47]。
- WG 22:太陽系から約48.4 光年の距離にある白色矮星で、14等星[52]。トリプルアルファ反応で生成された炭素や酸素で構成されていると考えられている。白色矮星は冷却が進むと内部から結晶化すると予想されており、1995年に結晶化理論を検証するための観測対象候補とされた[53]。研究者からは、ビートルズの楽曲『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』にちなんで「ルーシー (Lucy)」とも呼ばれている[54]。
星団・星雲・銀河
天の南極に近いためメシエ天体こそないものの、6つの天体がパトリック・ムーアがアマチュア天文家の観測対象に相応しい星団・星雲・銀河を選んだ「コールドウェルカタログ」に選ばれている[55]。
- NGC 5128:「ケンタウルス座A[56](Centaurus A[57])」の通称で知られる電波銀河[56]で、ケンタウルス座A/M83銀河群を代表する銀河[58]。1826年8月4日、スコットランド生まれの天文学者ジェームス・ダンロップによって発見された[59]。天の川銀河から約1200万 光年[57]の距離にあり、中心部には太陽の5500万倍の質量を持つブラックホールがあると考えられている[56][60]。2019年7月、イベントホライズンテレスコープ (EHT) の国際共同研究チームは、ケンタウルス座Aの中心部を高い解像度で撮影し、中心のブラックホールの位置を正確に特定するとともに、そこから吹き出す大規模ジェットを撮影することに成功した[56][60]。コールドウェルカタログの77番に選ばれている[55]。
- NGC 5139:ω星団 (英: Omega Centauri) の通称で知られる、全天で最も明るく見える球状星団[61]。太陽系から約1万6900 光年の距離にある[62]。天の川銀河に属する球状星団の中では最大のもので、局所銀河群全体でもアンドロメダ銀河最大の球状星団G1 (Mayall II) に次いで大きい[61]。40億年以上前に天の川銀河の潮汐力で分裂させられた矮小銀河の中心核の残骸であると考えられている[63]。見かけの明るさ3.68 等と肉眼でもよく見える明るさであるため、その存在は古代ギリシアの時代から知られていたが、長らく星団ではなく1つの恒星と考えられていた[61]。ヨハン・バイエルの星図『ウラノメトリア』でも1つの恒星としてギリシア文字の小文字の「ω」が振られたため、この名称で呼ばれる[61][注 1]。この天体が単独の星ではないことが発見されたのは1677年のことで、セントヘレナ島で南天の天体を観測していたエドモンド・ハリーによるものであった[61]。コールドウェルカタログの80番に選ばれている[55]。
- NGC 4945:天の川銀河から約1050万 光年の距離にある渦巻銀河[64]。ケンタウルス座Aと同じケンタウルス座A/M83銀河群に属しており、ケンタウルス座Aのグループではケンタウルス座Aに次いで明るく見える[58]。銀河円盤を真横から観測する形となる典型的なエッジオン銀河だが、その渦状腕と中心核の棒状構造の特徴から天の川銀河と似た形をした渦巻銀河であるとされる[65]。中心部に超大質量ブラックホールを伴う活動銀河核があるという点で天の川銀河とは異なっており、セイファート銀河に分類されている[65]。コールドウェルカタログの83番に選ばれている[55]。
- NGC 5286:太陽系から約3万6000 光年の距離にある球状星団[66]。1826年4月29日、ジェームス・ダンロップによって発見された[67]。コールドウェルカタログの84番に選ばれている[55]。
- NGC 3766:太陽系から約5,880 光年の距離にある散開星団[68]。1752年3月5日、フランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユによって発見された[69]。星が密集した様子を真珠に喩えて「真珠星団 (The Pearl Cluster)」の通称で呼ばれることもある[69]。コールドウェルカタログの97番に選ばれている[55]。
- IC 2944:太陽系から約7,780 光年の距離にある、散光星雲を伴った散開星団[70]。近くにあるλ星の名前を取って「λ Cen Nebula[70]」、あるいは最も明るい領域の様子をニワトリに喩えて「走るニワトリ星雲[71](The Running Chicken Nebula[72])」などと呼ばれる。コールドウェルカタログの100番に選ばれている[55]。
- ブーメラン星雲:太陽系から約1,212 光年の距離にある原始惑星状星雲。1980年にオーストラリアで観測された際にブーメランのように湾曲した形状に見えたため、この通称が付けられた[73]。双極状の構造を持つことから Centaurus Bipolar Nebula[74]、あるいは Bow tie Nebula[73]とも呼ばれる。温度1K (-272℃) と、既知の天体の中で最も低温の天体の1つ[73]。
- Hen2-104:太陽系から約1万5400 光年[75]の距離にある、豊富なダストを持つ共生星の段階から双極状の構造を持つ惑星状星雲への変化の途中にある天体[76][77]。アメリカの天文学者で宇宙飛行士のカール・ゴードン・ヘナイズが1967年に発表した惑星状星雲のカタログで知られるようになったことからこの名称で呼ばれる[78]。その姿がおうし座にある超新星残骸「かに星雲」と似て見えることから「南のかに星雲[76](英: Southern Crab[75])とも呼ばれるが、超新星残骸ではない。
由来と歴史
有史以前から古代ギリシア・ローマ期
ケンタウルス座は非常に長い歴史を持つ星座で、その原型は紀元前5千年紀頃の古代メソポタミアで考えられた獣人 MUL.GUD.ALIM まで遡るとされる[79]。この獣人は人頭牛身の2腕4脚または直立した2腕2脚の姿で描かれたことから、「バイソンマン (英: the Bison-Man)」や「ブルマン (英: the Bull-Man)」と呼ばれている[79]。この獣人の星座は、紀元前3千年紀後半頃には姿を変えてイノシシの星座と見なされていた[79]。このメソポタミア地方の星座の意匠がいつ頃地中海地域に伝えられたのかは定かではないが、紀元前4世紀頃にアナトリア半島のクニドスで活動した天文学者エウドクソスの著書『ファイノメナ (古希: Φαινόμενα)』には既にケンタウルス座についての言及があったとされる。エウドクソスの『ファイノメナ』は現存していないが、エウドクソスの著述を元に紀元前3世紀の詩人アラートスが詩作した詩編『ファイノメナ』には、ケンタウルス座の詩が詠われている[80]。
古代ギリシア・ローマでは、みなみじゅうじ座の星々はケンタウロスの後ろ足の部分とされた[81]。また、現在のおおかみ座の星々もケンタウルス座の一部と考えられていた[82]。当時は「半人半馬のケンタウロス (古希: Κένταυρος」と「ケンタウロスに槍で突かれようとしている野獣 (古希: Θηρίον)」の2つの描像をまとめて1つの星座としており[82]、紀元前3世紀後半の天文学者エラトステネースの『カタステリスモイ (古希: Καταστερισμοί)』や、1世紀初頭頃の著作家ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスの『天文詩 (羅: De Astronomica)』では、ケンタウロスの部分には24個、野獣の部分には10個の星があるとしていた[81]。これに対して、2世紀頃にアレクサンドリアで活躍したクラウディオス・プトレマイオスは、天文書『ヘー・メガレー・スュンタクスィス・テース・アストロノミアース (古希: ἡ Μεγάλη Σύνταξις τῆς Ἀστρονομίας)』、いわゆる『アルマゲスト』の中で、ケンタウロスと野獣を2つの星座に分割した[82]上で、より暗い星もケンタウルス座に加えて星の数を37個まで増やした[81]。
地球の歳差運動によって起こる地軸の移動のため、ケンタウルス座の天上での位置は時代を経るごとに南へと移動している。そのため、プトレマイオスが活動した2世紀頃のアレクサンドリアからはその全域を見ることができた[4][14]が、次第に欧州や地中海沿岸の領域では地平線下から上がってこない星が増えていった。
16世紀以降
大航海時代を迎え、それまで観測できなかった南天の星々についての情報が西洋にもたらされるようになると、それを天球儀や星図に反映させようとする気運が生まれた。1595年から1597年にかけて行われたオランダの第1次東インド遠征に帯同したオランダの航海士ペーテル・ケイセルは、南天を観測してその詳細な記録を残した[83][84]。ケイセルは航海途中の1596年にバンテンで客死したが、彼が遺した観測記録はフレデリック・デ・ハウトマンによってオランダの地図製作者ペトルス・プランシウスの元に届けられた[84]。プランシウスはデ・ハウトマンから受け取った観測記録を元に、オランダの地図製作者ヨドクス・ホンディウスと共同で1598年に天球儀を製作した。この1598年の天球儀は現存していないが、1600年にホンディウスが製作した天球儀ではケンタウルス座は『アルマゲスト』に記されたものから南西に拡張されたこと、またみなみじゅうじ座が Cruzero として独立した星座とされたことが確認できる[85]。
1603年、ドイツの法律家ヨハン・バイエルは、プランシウスやホンディウスらの天球儀から南天の星の位置をコピーして全天星図『ウラノメトリア (Uranometria)』を出版した[83]。バイエルはこの星図の中で、右手にブドウの蔓が絡まった槍を、左手にワインの革袋を持つケンタウロスの姿を描いた。またバイエルはホンディウスらと異なり南十字をケンタウルス座の一部と見なしており、星図上ではケンタウロスの後ろ足に重ねて十字架を描いている[86]。バイエルは他の星座と同様に、星座の中で目立つ恒星に対してギリシア文字の小文字やラテン文字の符号、いわゆるバイエル符号を付した[86]が、18世紀中頃にラカイユによって符号が全て見直しされたため、現代の星名と一致するものはα・θ・ι・φ・g・h・kの7星とω星団だけである[87]。
17世紀イギリスの天文学者エドモンド・ハリーは、1679年の天文書『Catalogus Stellarum Australium』でプランシウスらと同様にケンタウルス座から独立した星座として扱った[注 2]。またハリーは、当時どの星座にも属していないとされていたアルゴ座とケンタウルス座の間の星を用いて「Robur Carolinum(チャールズの樫)」を設けた[49]。この星座には、バイエルらがケンタウロスの後ろ脚の蹄の部分とした現在のケンタウルス座λ星も含まれていた[49]。
18世紀フランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユは、1756年に出版されたフランス科学アカデミーの1752年版紀要に寄稿した星表と星図の中で、ハリーが設けた Robur Carolinum を廃し[49]、その星をアルゴ座、ケンタウルス座、はえ座に属する星とした[89][90]。また、バイエルがケンタウルス座に付したバイエル符号を全て廃して、新たにギリシア文字の小文字とラテン文字の符号を振り直した[91]。バイエルはギリシア文字の「α」との混同を避けるためにラテン文字の小文字「a」の代わりに大文字の「A」を使ったが、ラカイユは「a」をそのまま使用した。ラカイユは、ギリシア文字の24文字全てと、ラテン文字の J・U・W・j・vを除く47文字の計71文字を、ケンタウルス座の恒星と星団に使用した[92]。
1879年、コルドバ州に新設されたアルゼンチン国立天文台の台長の職にあったアメリカ生まれの天文学者ベンジャミン・グールドは、自身の観測記録を元に編纂した南天の星表『Uranometria Argentina』を刊行した。グールドはこの星表の中でラカイユの付した符号に以下の変更を加えた[93][94]。
- ラカイユが符号を付した星のうちラテン文字の大文字R以降の符号が付けられた星については、アルゲランダーが考案した変光星への符号と重なることから符号を取り消した。
- ラテン文字の小文字の w もギリシア文字のωとの混同を避けるために取り消した。
- ラカイユが使用しなかったラテン文字の大文字 J と小文字 j・v を新たに付した[注 3]。
グールドはプトレマイオスの権威を尊重するがゆえに、アルゴ座とケンタウルス座が占めている広大な天空の領域に、ラカイユが新しい星座を導入しなかったことは非常に残念である[91]。
としていたが、彼自身がアルゴ座を分割したのと同じようにケンタウルス座を分割することはなかった。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Centaurus、略称は Cen と正式に定められた[95]。
中国
現在のケンタウルス座の領域のうち南側にある星の一部は、三垣や二十八宿には含まれていなかった。これらの星は、明代末期の1631年から1635年にかけてイエズス会士アダム・シャールや徐光啓らにより編纂された天文書『崇禎暦書』で初めて取り入れられ、新たに設けられた領域「近南極星」の星官に配された[96]。この頃、明の首都北京の天文台にはバイエルの『ウラノメトリア』が2冊置かれていたとされ、これら南天の新たな星官は『ウラノメトリア』に描かれた新星座をほとんどそのまま取り入れたものが多い[96]。これらの星官は、清代の1752年に編纂された天文書『欽定儀象考成』にも、いくつかの星が新たに加えて取り入れられた[96]。
『欽定儀象考成』では、ケンタウルス座の星は、二十八宿の東方青龍七宿の第一宿「角宿」、第二宿「亢宿」、第三宿「氐宿」と近南極星の星官に配された。角宿では、ζ・η・θ・2・d・f・γ・τ・HD 107931・σ と ω の10星と星団1つが「武器庫」を表す星官「庫楼」に、υ1・υ2・a・ψ・4・3・1・ι と不明の1星の計9星が庫楼を支える柱を表す星官「柱」に、ν・μ・φ・χの4星が兵士の訓練場所を表す星官「衡」に、ε・α・R の3星が庫楼の南門を表す星官「南門」に、それぞれ配された[97]。亢宿では、b・c1 の2星が要塞の城門を表す「陽門」に配された[97]。氐宿では、κ が侍衛を表す星官「騎官」に配された[97]。近南極星では、λと不明の1星が『ウラノメトリア』に描かれた大きな岩山にあたる「海山」に、G・ρ・δの3星がケンタウルスの尾にあたる「馬尾」に、β と不明の2星がケンタウルスの腹にあたる「馬腹」に、それぞれ配された[97]。
神話
ケンタウルス座のモデルとされた人物は、ケイローンとされる[4]。紀元前3世紀のエラトステネースは詩編『カタステリスモイ』の中で、医神アスクレーピオスや勇将アキレウスの師で、ペーリオン山に住むケイローンの姿であるとした[81]。エラトステネースの伝えるところでは、「ケイローンに恋心を抱いたヘーラクレースが彼を洞窟に訪ね、彼と性交に及んだ。紀元前5世紀から紀元前4世紀頃の古代ギリシアの哲学者アンティステネースの伝える話では、ヘーラクレースが殺害せず会話を交わした唯一のケンタウロスがケイローンであった。ケイローンがヘーラクレースと語らっていた際に、ヘーラクレースの矢筒から落ちた矢が足に刺さったことでケイローンは命を落とした。彼の死を悼んだ大神ゼウスはケイローンの亡骸を天に上げ、祭壇に野獣を生贄として捧げようとしている敬虔なケンタウロスの姿とした」とされている[81]。
このケンタウルス座のモデルについてのエラトステネースの見解は古代ギリシア・ローマ時代を通じて支配的なものとなり、1世紀のヒュギーヌスの『天文詩 (羅: Poeticon astronomicon)』、オウィディウスの『祭暦 (羅: Fasti)』『変身物語 (羅: Metamorphoses)』などの作品では、いずれもケイローンがモデルとなったとされている。また、アラートスの『ファイノメナ』では特にモデルとなった人物についての言及はないが[80]、西暦4年に古代ローマのゲルマニクスが一部改変・ラテン語訳した『ファイノメナ』では、神の子たちを立派に育て上げたケイローンがモデルであると説明している[98]。
19世紀末アメリカのアマチュア博物家リチャード・ヒンクリー・アレンは、ケンタウルス座のモデルをケイローンとする説とともに、古代ローマの著作家偽アポロドーロスの著書『ビブリオテーケー (古希: Βιβλιοθήκη)』に書かれたケンタウロス族とヘーラクレースの争いに登場するポロス (Pholus) という別のケンタウロスを由来とする説を伝えている[99]。
呼称と方言
日本語の学術用語としては「ケンタウルス」と定められている[100]。
日本では、1874年(明治7年)に文部省より出版された関藤成緒の天文書『星学捷径』では「センタウリュス[101]」として、1879年(明治12年)にノーマン・ロッキャーの著書『Elements of Astronomy』を翻訳して出版された天文書『洛氏天文学』で「センタウルス[102]」と紹介された。明治末期には「ケンタウルス」という訳語が充てられていたことが、1910年(明治43年)2月刊行の日本天文学会の会報『天文月報』第2巻11号に掲載された「星座名」という記事でうかがい知ることができる[103]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも引き継がれた[104]。戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[105]とした際に、Centaurus の日本語名は「ケンタウルス」と定められた[106]。これ以降は「ケンタウルス」という表記が継続して用いられている。
天文同好会[注 4]の山本一清らは異なる訳語を充てていた。天文同好会の編集により1928年(昭和3年)4月に刊行された『天文年鑑』第1号では星座名 Centaurus に対して「ケンタウルス」の訳語を充てていたが[107]、1929年(昭和4年)に刊行された第2号以降は「センタウル」という訳を充てた[108][109]。これについて山本は、東亜天文学会の会誌『天界』1934年4月号の「天文用語に關する私見と主張 (2)」という記事の中で因みに,Centaurus や Cepheus や Perseus や,Taurus や,Pegasus 等の語尾のは,ラテン語の男性名詞を表はす語尾なのだから,此等を日本語に譯する場合には必ずしも性に囚はれる必要はない.(元々,日本語には性の區別は無いのだから.)只,「センタウル」,「セフェ」,「ペルセ」,「牛」,「ペガス」で好いのである.
[110]と述べている。山本は、京都帝国大学退官後に設けた私設の「田上天文台」の名義で刊行した『天文年表』の中でも「センタウル」の訳名を用い続けた[111][112]。
現代の中国では、半人马座[113](半人馬座[114])と呼ばれている。
方言
八重山諸島に伝わる方言では、α星とβ星の2つの星のペアは、「南の星」を意味する「ハイカプス」「パイガプシ」「パイガプス」などと呼ばれる[115]。
脚注
注釈
- ^ オメガ星雲の名で知られるいて座の散光星雲M17は、その形状がギリシア文字の大文字の「Ω」に似て見えることから名称が付けられたものであり、この星団とは特に関係はない。
- ^ 日本では、みなみじゅうじ座はフランスの天文学者オギュスタン・ロワーエが1679年に出版した書籍『Cartes du ciel』で設定したのが最初であると説明する書籍[12]やサイト[88]が多く見られるがこれは誤りで、実際にはプランシウスが1592年の世界地図や1598年の天球儀に描いたものが最初であり、またヤコブス・バルチウスやハリーの天文書でも独立した星座として扱われている。
- ^ JはバイエルのZ星に、vはバイエルのY星に付けられた[92][94]。
- ^ 現在の東亜天文学会。
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