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ケンタウルス座ベータ星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ケンタウルス座β星[1]
Beta Centauri
ケンタウルス座の2つの1等星。右がβ星。
ケンタウルス座の2つの1等星。右がβ星。
仮符号・別名 ハダル[2], Hadar[3][4]
星座 ケンタウルス座
見かけの等級 (mv) 0.60[1]
変光星型 ケフェウス座β型[1](BCEP)[5]
分類 恒星青色巨星
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  14h 03m 49.40535s[1]
赤緯 (Dec, δ) −60° 22′ 22.9266″[1]
赤方偏移 0.000020[1]
視線速度 (Rv) 5.9 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: -33.27 ミリ秒/年[1]
赤緯: -23.16 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 8.32 ± 0.50ミリ秒[1]
(誤差6%)
距離 390 ± 20 光年[注 1]
(120 ± 7 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -4.8[注 2]
β星の位置
物理的性質
半径 8.00太陽半径
質量 12.02太陽質量/10.58太陽質量/4.61太陽質量
スペクトル分類 B1III[1]+ B1Ⅲ+B1Ⅴ?
色指数 (B-V) -0.23[6]
色指数 (U-B) -0.98[6]
他のカタログでの名称
アゲナ (Agena), BD -59 5054[1],
FK5 518[1], HD 122451[1],
HIP 68702[1], HR 5267[1],
SAO 252582[1],
WDS J14038-6022AB[1]
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ケンタウルス座β星は、ケンタウルス座恒星で全天21の1等星の1つ。

概要

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ケンタウルス座α星と並んで輝いており、黄色く輝くα星に対し青白いβ星の色合いは対照的である。α星もβ星も南緯29度以南の地域では周極星になるが、日本では奄美以南でないと見ることが出来ない。

それ自体が分光連星系を成している1等星の主星Aと4等星の伴星Bによる三重連星を構成している[1][7][8]。A星を構成する恒星AaとAbの質量を合計すると太陽の14.7倍あり[7]、ある研究結果では一方がもう一方より4%だけ重いとしている[7]。AaとAbは軌道長半径3.0au、近点距離0.53au、遠点距離5.5auという細長い軌道で、Aa+Abの共通重心を357日周期で周回している[7]。B星はA星(Aa+Ab)から最低120au離れた軌道を225年掛けて周回している[7]

ケフェウス座β型脈動変光星で、眼視観測では変光はわからないが短時間でごくわずかな光度の変化を示す。

名称

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学名は、β Centauri(略称はβ Cen)。固有名ハダル[2] (Hadar[3][4]) はアラビア語の حضار (Ḥaḍār, ハダール、語末母音を含む発音は حَضَارِ, Ḥaḍāri, ハダーリ[9][10][11]) が由来で、意味に関して[3]アレンは「地面」の意味であるとしている[2][12]

一方複数アラビア語大辞典ではこの星の名前を通常の名詞ではなく語末が母音i(カスラ)になる動詞命令形の意味を持つ語形であると説明。اُحْضُرْ(uḥḍur, ウフドゥル, 「来い;居合わせ、居合わせよ」の意)と同義であるとしているほか、語末が古いヒジャーズ地方やタミーム族アラビア語方言の名残りとされる母音iで終わる女性名詞[13]であり星の名前、白牛・白いウシ科動物を指す名称としても使われる、としている[9][10][11]

また語末がi音で固定されない普通の名詞 حَضَار(ḥaḍār, ハダール)の場合は「白ラクダ」を意味。この星の光が白色系であることから白牛なり白駱駝なりの名称で呼ばれたと説明[14]しているアラビア語大全もある。

2016年8月21日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) は、Hadar をケンタウルス座β星Aaの固有名として正式に承認した[4]

別名のアゲナ[2] (Agena[3]、アジェナ) は、ギリシャ文字のアルファ (Α) とラテン語で「ひざ」を意味する gena に由来すると考えられている[3]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* bet Cen. 2016年11月5日閲覧。
  2. ^ a b c d 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、126頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  3. ^ a b c d e Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Pub. Corp.. p. 27. ISBN 978-1-931559-44-7 
  4. ^ a b c IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年11月5日閲覧。
  5. ^ GCVS”. Results for bet Cen. 2015年10月26日閲覧。
  6. ^ a b 輝星星表第5版
  7. ^ a b c d e Jim Kaler. “Hadar”. STARS. 2016年11月5日閲覧。
  8. ^ The Washington Visual Double Star Catalog (Mason+ 2001-2014)”. VizieR. Centre de Données astronomiques de Strasbourg. 2016年11月5日閲覧。
  9. ^ a b المعاني : حضار”. 2023年10月8日閲覧。
  10. ^ a b معنى شرح تفسير كلمة (حضار)”. almougem.com. 2023年10月8日閲覧。
  11. ^ a b قاموس النور : حضار”. 2023年10月8日閲覧。
  12. ^ Richard Hinckley Allen. “Star Names - Their Lore and Meaning”. Bill Thayer. 2014年12月18日閲覧。
  13. ^ المحكم والمحيط الأعظم 3. دار الكتب العلمية. (2000). p. 123 
  14. ^ الكنز اللغوي في اللسن العربي - ابن السكيت - مکتبة مدرسة الفقاهة” (アラビア語). ar.lib.eshia.ir. 2023年10月8日閲覧。

関連項目

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