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レグルス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
レグルス[1]
Regulus[2][3]
レグルス(中央)とHD 87884(右上)の画像
レグルス(中央)とHD 87884(右上)の画像
仮符号・別名 しし座α星[4]
星座 しし座
見かけの等級 (mv) 1.40[4]
1.33 - 1.40 (変光)[5]
変光星型 疑わしい[5]
分類 B型主系列星(主星)
4重連星
位置
元期:J2000.0[4]
赤経 (RA, α)  10h 08m 22.31099s[4]
赤緯 (Dec, δ) +11° 58′ 01.9516″[4]
赤方偏移 0.000020[4]
視線速度 (Rv) 5.9 km/s[4]
固有運動 (μ) 赤経: -248.73 ミリ秒/年[4]
赤緯: 5.59 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 41.13 ± 0.35ミリ秒[4]
(誤差0.9%)
距離 79.3 ± 0.7 光年[注 1]
(24.3 ± 0.2 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -0.5[注 2]
レグルスの位置
物理的性質
半径 4.3 R(赤道)[6]
質量 3.8 M[7]
表面重力 3.54 ± 0.09 (log g)[8]
自転速度 317 km/s[6]
自転周期 16 時間[6]
スペクトル分類 B8IVn[4]
光度 360 L[6]
表面温度
最低 平均 最高
10,200 K[6] 15,400 K[6]
色指数 (B-V) -0.11[9]
色指数 (U-B) -0.36[9]
色指数 (R-I) -0.10[9]
年齢 ≥1 ×109[10]
他のカタログでの名称
Cor Leonis, Basilicus
Lion's Heart, Rex
Kalb al Asad, Kabeleced
軒轅十四
しし座32番星[4]
GJ 9316 A[4]
BD +12 2149[4], FK5 380[4]
HD 87901[4], HIP 49669[4]
HR 3982[4], SAO 98967[4]
LTT12716[4]
NSV 4750[4]
Template (ノート 解説) ■Project
HD 87884[11]
見かけの等級 (mv) 8.13[11]
8.14 / 13.5
位置
元期:J2000.0[11]
赤経 (RA, α)  10h 08m 12.799s[11]
赤緯 (Dec, δ) +11° 59′ 49.08″[11]
赤方偏移 0.000021 ± 0.000017[11]
視線速度 (Rv) 6.3 ± 5 km/s[11]
固有運動 (μ) 赤経: -241.1 ミリ秒/年[11]
赤緯: 12.2 ミリ秒/年[11]
絶対等級 (MV) 4.2 / 9.5
物理的性質
半径 0.5 / ? R
質量 0.8[12] / 0.2[13] M
表面重力 4.4[12] / ? (log g)
スペクトル分類 K0Ve[11]
K2V / M4V[6]
光度 0.50[12] / ? L
表面温度 4,885[12] / ? K
色指数 (B-V) 0.86[11]
色指数 (U-B) 0.46[11]
他のカタログでの名称
GJ 9316 B/C[11]
BD+12 2147[11],
LTT 12714[11],
SAO 98966[11]
Template (ノート 解説) ■Project

レグルス[14] (Regulus)は、しし座α星しし座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ。1等星の中では最も暗い。

概要

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ほぼ黄道上にあり、航海位置の計測の基準となる常用恒星となっている。

連星系

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4個の星が各2個のペアになって互いに回っている多重連星である[6]。主星はB型主系列星、または準巨星に分類され、中心核の水素核融合を終える段階にある[6]。主星からわずか0.35au離れた位置に0.3太陽質量程度の白色矮星があり、40.11日の周期で互いの共通重心を回っているとされる[6]。この伴星の質量は白色矮星の下限値(0.55太陽質量)を大きく下回るが、巨星へと進化する過程で構成する物質が現在の主星に移動したものと考えられている[6]

もう一方は「HD 87884[11]」と呼ばれ、太陽より暗く小さいK型主系列星とM型の赤色矮星が少なくとも97au離れた軌道を880年以上かけて互いを周回している連星系である[6]

2つの連星系は少なくとも4,200au離れており、125,000年以上かけて周っているものと考えられている[6]

レグルスの形状

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アメリカカリフォルニア州ウィルソン山天文台の光学干渉計施設(口径1m望遠鏡6台を使用)でレグルスの大きさ・形などの観測が行われ、その結果及び他で行われたスペクトル観測、コンピュータによるモデル計算によりレグルスの形が明らかになった。その結果、レグルスは高速で自転しているために赤道部分が遠心力で膨れ上がり、赤道半径は極半径より30%も大きいことがわかった。そのため、極の温度は15,100℃なのに対し、赤道部は10,000℃しかない(つまり、極は赤道部より5倍も明るい)。レグルスの自転軸は天の北極より86度も傾いている。しかも、レグルスの固有運動の向きはその自転軸の向きに一致している。

自転速度は秒速300km(時速108万km)を超え、所要時間は15.9時間である[15]。自転速度があと16%早ければ、遠心力が重力を上回り、レグルスは崩壊してしまうだろう。

レグルス食

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1等星の中で最も黄道に近いため、定期的に月による(掩蔽)が発生する。非常に稀ではあるが、惑星水星金星)によるレグルス食も発生する。前回は、金星によるレグルス食が1959年7月7日に起きた。次回の惑星によるレグルス食は、85年後の2044年10月1日の金星によるレグルス食の予定である。他の惑星によるレグルス食は、交点の位置の関係上、ここ2000-3000年の間は発生しない。

名称

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学名は Alpha Leonis(略称:α Leo)。レグルス[1] (Regulus[2][3]) は、ラテン語で「(小さな)王」という意味である[2]。これは元々、シュメールバビロニアに起源を持つギリシャ語で「(小さな)王」を意味する Βασιλισκος に由来する[2]。古代ローマではギリシャに倣って「王の星」を意味する stella regia と呼んだ[2]。時代は下って、中世にアラビア語から訳された『アルマゲスト』では、「王」を意味する rex と記されている[2]Regulus という表記が初めて登場するのは1522年で、巷間この呼び名を初めて使ったと言われる[1]ニコラウス・コペルニクスの『天球の回転について』(1543年)よりも20年以上前のことである[2]。2016年6月30日、国際天文学連合の恒星の固有名に関するワーキンググループは、Regulus をしし座α星の固有名として正式に承認した[3]。なお、英語読みはレギュラスである。

別名のコル・レオニス[1] (Cor Leonis) は、ラテン語で「獅子の心臓」を意味する[1]。この名も「レグルス」同様にギリシャ語の Καρδια Λεοντος に由来する古い呼び名である[1]

備考

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  • 13世紀末の記録として、『伏見院御記』には、「木星が軒轅(けんえん)女主星(しし座α星)を犯す」と記述されている[16]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記

出典

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  1. ^ a b c d e f 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、95頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  2. ^ a b c d e f g Paul Kunitzsch; Tim Smart. A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Publishing. p. 40-41. ISBN 978-1-931559-44-7 
  3. ^ a b c IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年12月9日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u SIMBAD Astronomical Database”. Results for NAME REGULUS. 2016年12月9日閲覧。
  5. ^ a b GCVS”. Result for HD 87901. 2016年12月9日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m Professor James B. (Jim) Kaler. “Regulus”. University of Illinois. 2016年12月9日閲覧。
  7. ^ Malagnini, M. L.; Morossi, C. (November 1990). “Accurate absolute luminosities, effective temperatures, radii, masses and surface gravities for a selected sample of field stars”. Astronomy and Astrophysics Supplement Series 85 (3): 1015–1019. Bibcode1990A&AS...85.1015M. 
  8. ^ Fitzpatrick, E. L.; Massa, D. (March 2005). “Determining the Physical Properties of the B Stars. II. Calibration of Synthetic Photometry”. The Astronomical Journal 129 (3): 1642–1662. arXiv:astro-ph/0412542. Bibcode2005AJ....129.1642F. doi:10.1086/427855. 
  9. ^ a b c 輝星星表第5版
  10. ^ Rappaport, S.; Podsiadlowski, Ph.; Horev, I. (2009). “The Past and Future History of Regulus”. The Astrophysical Journal 698 (1): 666–675. arXiv:0904.0395. Bibcode2009ApJ...698..666R. doi:10.1088/0004-637X/698/1/666. 
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q SIMBAD Astronomical Database”. Results for HD 87884. 2016年12月9日閲覧。
  12. ^ a b c d Martin, E. L.; Magazzu, A.; Rebolo, R. (1992). “On the post-T-Tauri nature of late-type visual companions to B-type stars”. Astronomy and Astrophysics 257: 186. Bibcode1992A&A...257..186M. 
  13. ^ Tokovinin, A. A. (1997). “MSC - a catalogue of physical multiple stars”. Astronomy and Astrophysics Supplement Series 124: 75–84. Bibcode1997A&AS..124...75T. doi:10.1051/aas:1997181. 
  14. ^ おもな恒星の名前”. こよみ用語解説. 国立天文台. 2018年11月14日閲覧。
  15. ^ McAlister, H. A.; ten Brummelaar, T. A.; Gies; Huang; Bagnuolo, Jr.; Shure; Sturmann; Sturmann et al. (2005). “First Results from the CHARA Array. I. An Interferometric and Spectroscopic Study of the Fast Rotator Alpha Leonis (Regulus)”. The Astrophysical Journal 628: 439-452. arXiv:astro-ph/0501261. Bibcode2005ApJ...628..439M. doi:10.1086/430730. 
  16. ^ 峰岸純夫『中世 災害・戦乱の社会史』吉川弘文館、2011年、14頁。ISBN 978-4-642-06372-2 

関連項目

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外部リンク

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