「古都 (小説)」の版間の差分
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{{基礎情報 文学作品 |
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|題名 = 古都 |
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『'''古都'''』(こと)は、[[川端康成]]の[[小説]]。古都・[[京都府|京都]]を舞台に、生き別れになった双子の姉妹の数奇な運命を描いた物語。『[[朝日新聞]]』に[[1961年]]10月から[[1962年]]1月まで連載、同年に[[新潮社]]より刊行された。 |
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|訳題 = The Old Capital |
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|キャプション = |
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|作者 = [[川端康成]] |
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|国 = {{JPN}} |
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|言語 = [[日本語]] |
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|ジャンル = [[長編小説]] |
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|シリーズ = |
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|発表形態 = 新聞連載 |
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|初出 = 『[[朝日新聞]]』[[1961年]]10月8日号 - [[1962年]]1月23日号(全107回) |
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|初出の挿絵 = [[小磯良平]] |
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|刊行 = |
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|刊行の出版元 = [[新潮社]] |
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|刊行の出版年月日 = 1962年6月25日 |
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|装幀 = [[石井敦子]] |
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|口絵 = [[東山魁夷]]「冬の花」 |
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|総ページ数 = 243 |
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|受賞 = |
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|訳者 = |
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|前作 = |
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|次作 = |
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|portal1 = 文学 |
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『'''古都'''』(こと)は、[[川端康成]]の[[長編小説]]。[[古都]]・[[京都府|京都]]を舞台に、生き別れになった[[双子]]の姉妹の数奇な[[運命]]を描いた川端の代表作の一つ。[[老舗]]呉服商の一人娘として育った[[捨て子]]の娘が、[[北山杉]]の村で見かけた自分の分身のような村娘と[[祇園祭]]の夜に偶然出逢う物語で、互いに心を通わせながらも同じ屋根の下で暮らせない双子の娘の健気な姿が、[[四季]]折々の美しい風景や京都の伝統を背景に、切なく可憐に描かれている。 |
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京都各地の[[名所]]や[[史蹟]]、[[年中行事]]が盛り込まれた人気作品であるが<ref>[[山本健吉]]「解説」({{Harvnb|古都文庫|2010|pp=271-278}})</ref>、国内よりも海外での評価の方が高く[[ノーベル文学賞]]の授賞対象作にもなった<ref name="jiten">[[上田渡]]「古都」({{Harvnb|事典|1998|pp=153-155}})</ref><ref name="tomioka">「第9章 抱擁する『魔界』――たんぽぽ」({{Harvnb|富岡|2015|pp=199-224}})</ref>。 |
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== ストーリー == |
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[[川口松太郎]]脚色で[[新派]]で舞台化され、幾度も映画化、テレビドラマ化されている。 |
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== 映画 == |
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*[[古都 (1963年の映画)|古都]]([[松竹]]・[[1963年]]) [[中村登]]監督([[第36回アカデミー賞]]外国語映画賞本選ノミネート作品) |
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*: 主演:[[岩下志麻]] [[吉田輝雄]] [[長門裕之]] |
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*[[古都 (1980年の映画)|古都]]([[東宝]]・[[1980年]])[[市川崑]]監督 |
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*: 主演:[[山口百恵]] [[三浦友和]] [[實川延若 (3代目)|實川延若]] [[岸惠子]] [[北詰友樹]] |
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== 発表経過 == |
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『[[朝日新聞]]』に[[1961年]](昭和36年)10月8日から翌[[1962年]](昭和37年)1月23日まで、107回にわたって連載された(1月2日は休刊)。挿絵は[[小磯良平]]が担当<ref name="kaidai18">「解題――古都」({{Harvnb|小説18|1980|pp=588-589}})</ref><ref name="saku-nen1961-1962">「作品年表――昭和36年(1961)から昭和37年(1962)」({{Harvnb|雑纂2|1983|pp=570-573}})</ref>。作品連載中の11月3日に川端は[[文化勲章]]を授与された<ref name="kaidai18"/><ref name="kotoato">川端康成「あとがき」(『古都』新潮社、1962年6月)。{{Harvnb|古都12巻|1970}}、{{Harvnb|古都文庫|2010|pp=267-270}}再録。{{Harvnb|評論5|1982|pp=660-662}}に所収</ref>。 |
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{{ドラマ}} |
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*古都([[1964年]]、[[日本放送協会|NHK]] 文芸劇場) |
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*:佐田千恵子・苗子(二役):[[小林千登勢]] |
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*古都([[1966年]]、[[フジテレビジョン|フジテレビ]] [[ライオン奥様劇場]]) |
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*:佐田千恵子・苗子(二役):[[長内美那子]] |
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*[[古都_(1980年のテレビドラマ)|古都]](1980年[[1月7日]] - [[3月7日]]、[[TBSテレビ|TBS]] [[愛の劇場]]) |
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*:佐田千重子・苗子(二役):[[岡江久美子]] |
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*古都([[1988年]]、[[関西テレビ放送|関西テレビ]] [[開局記念番組|開局30周年スペシャル]]) |
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*:佐田千恵子・苗子(二役):[[沢口靖子]] |
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*古都([[1994年]]、[[テレビ東京]] [[テレビ東京月曜9時枠の連続ドラマ|日本名作ドラマ]]) |
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*:佐田千恵子・苗子(二役):[[中江有里]] |
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*[[古都 (2005年のテレビドラマ)|古都]]([[2005年]][[2月5日]]、[[テレビ朝日]] [[土曜ワイド劇場]]) |
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*:佐田千恵子・苗子(二役):[[上戸彩]] |
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その後、会話部分の[[京都弁]]を井尻茂子の協力により訂正するなど加筆補正が施され、「あとがき」を付して同年6月25日に[[新潮社]]より単行本刊行された<ref name="kaidai18"/><ref name="chomoku-t-139">「著書目録 一 単行本――139」({{Harvnb|雑纂2|1983|p=611}})</ref>。 |
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==その他== |
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洛中に現存する唯一の蔵元[[佐々木酒造]]の日本酒に「この酒の風味こそ京都の味」と、作品名『[[古都]]』を揮毫した。川端は[[京都大学|京大]][[名誉教授]][[桑原武夫]]に「古都という酒を知っているか。」と尋ね、知らないと答えた桑原にこれを飲ませようと、寒い夜にも関わらず徒歩30分かけて買いに行ったと言われている<ref>[[文藝春秋 (雑誌)|文藝春秋]]1972年6月号掲載『川端康成氏との一夕』</ref>。 |
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なお、初出が新聞紙上のため、[[現代仮名遣い]]と、[[漢字]]は[[新字体]]の表記に合わせて連載され、単行本の際もそれが踏襲されたが<ref name="kaidai18"/>、その後、[[1970年]](昭和45年)5月10日刊行の『川端康成全集第12巻』(全19巻本)に収録の際には、全文、[[歴史的仮名遣い]]と[[正字体]]に戻され、新聞用表記での[[送り仮名]](送り過ぎ)も是正された<ref name="kaidai18"/>。 |
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==類似作品== |
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*[[私と私]] |
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*[[ふたりのロッテ]] |
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*[[だんだん]] |
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翻訳版は、[[ドイツ語]](独題:Kyoto oder Die jungen Liebenden in der alten Kaiserstadt, 1965)や、[[:en:J. Martin Holman|J・マーティン・ホルマン]]訳の英語(英題:“The Old Capital”, 1987)のほか、[[イタリア語]](伊題:Koto, 1968)、[[フランス語]](法題:Kyōto, 1971)、[[中国語]](中題:古都, 1969 [[台北]])など世界各国で出版されている<ref name="honyaku">「翻訳書目録――古都」({{Harvnb|雑纂2|1983|pp=656-658}})</ref>。 |
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==出典== |
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<references/> |
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== あらすじ == |
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京都[[中京区|中京]]の由緒ある呉服問屋の一人娘の佐田千重子は、両親に愛されて育ったが悩みがあった。それは自分が[[捨て子]]ではないのかということだった。両親はその噂を否定し、20年前に[[八坂神社|祇園さん]]の夜桜の下に置かれていたあまりにも可愛い赤ちゃんをさらって逃げてきたんだと千重子には説明していた。 |
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5月のある日、千重子は友達の真砂子と[[北山杉]]を見にいった。真砂子は北山丸太の加工の仕事をしている村娘の中に千重子とそっくりな娘を見つけ、千重子に指し示した。 |
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夏、[[祇園祭]]の夜、千重子は[[八坂神社]]の[[御旅所]]で熱心に七度まいりをしている見覚えのある娘を見つめた。その娘も千重子に気づくと食い入るように見つめ、「あんた、姉さんや、神さまのお引き合せどす」と涙を流した。娘はあの北山杉の村娘で、名は苗子だった。 |
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2人はお互いの身の上を短く語り合い、とりあえずその場は別れた。苗子は身分の違いを自覚し、千重子を「お嬢さん」と呼んだ。四条大橋のたもとで、[[西陣織]]屋の息子で職人の秀男が、苗子を千重子と間違えて声をかけた。千重子が好きな秀男は、自分の考案の柄で [[帯]]をおらしてくれと言って去った。 |
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後日、千重子の家に図案を持ってきた秀男に、千重子は自分に双子の姉妹がいることを告げ、苗子の分も「[[杉]]と[[アカマツ|赤松]]の山」の帯を織って、届けてくれるように頼んだ。それをきっかけに秀男は苗子に惹かれ始め[[時代祭]]に誘った。 |
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一方、千重子の家と同じ問屋の息子で、幼馴染の水木真一の兄・竜助が、経営が傾きかけている千重子の店にやって来て、番頭の裏[[帳簿]]を正すためにいろいろと店を手伝ってくれるようになった。竜助の父親は、息子を佐田家に[[婿養子]]に出してもいいと申し出て、千重子の父も喜んだ。 |
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苗子は秀男に結婚を申し込まれ、それを千重子に告げた。千重子は賛成するが、苗子は、秀男が千重子の幻を愛していることを知っており、それに自分の存在が公になれば、千重子の家に迷惑がかかると考え、[[プロポーズ]]を断るつもりだった。千重子は、父も母も苗子を家に引き取ってもいいと言っていることを苗子に告げると、苗子は涙を流して感謝した。そして一泊だけ千重子の家に行くことにした。 |
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冬の夜、千重子と苗子は一緒の床に寝て、幸福な姉妹の時を過ごした。千重子はずっと側にいてくれと言ったが、苗子は今では身分も教養も違う2人の身を思い、少しでもお嬢さんの幸せに支障があってはならないと考え、これをたった一度の訪問にして、雪の朝早く、山の村へ帰っていった。 |
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== 登場人物 == |
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;佐田千重子 |
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:20歳。京都中京にある由緒ある[[室町通]]の[[呉服]][[問屋]]の美しい一人娘。実は店の前に捨てられていた[[捨て子]]。やわらかいきれいな手。 |
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;佐田太吉郎 |
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:50代半ば。千重子の育ての父。呉服問屋を経営。自分でも図案を書く。名人気質で人嫌い。若い頃、才能のなさに悩み麻薬の魔力で、[[友禅]]の怪しい抽象絵を描いたこともあるが、今は地味なものしか描けない。商売気がなく、店は[[番頭]]に任せているが、商売が傾き気味である。 |
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;佐田しげ |
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:50歳。千重子の育ての母。色白で品のいい顔。捨て子ではなく、可愛い赤ん坊の千重子をさらって逃げてきたと娘に嘘を言って、捨子の娘が傷つかないようにしている。 |
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;水木真一 |
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:20歳。大学生。名刀のような顔だと人に言われる。千重子の[[幼馴染]]で高校まで同じだった。千重子を愛する。数えで7歳の時、[[祇園祭#長刀鉾の稚児|祇園祭]]の長刀鉾に稚児姿で乗ったことがある。兄がいる。今でも兄から、「お稚児さん」とからかい半分に呼ばれる。 |
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;水木竜助 |
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:真一の兄。大学院にいる。英語が堪能。室町の大問屋の長男。近所の問屋の妙な噂を知り、千重子に番頭を調べるように助言する。男っぽい風情。千重子を愛する。 |
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;真砂子 |
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:千重子の友人。[[茶道]]の友達。千重子のことを、「きれいやなあ」とよく言う。恋人がいる。 |
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;苗子 |
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:20歳。千重子の[[双子]]の姉妹。[[北区 (京都市)|北区]][[北山 (京都市)|中川北山町]](北山丸太村)で、伐られた北山杉の加工の仕事をしている貧しい山娘。皮の厚い荒れた手。生まれたての赤ん坊の時に、父親が北山杉の枝打ち中に転落死。母親も早世。今は「村瀬」という家に[[奉公]]している。村瀬家は杉山持ち。 |
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;大友宗助 |
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:50歳くらい。[[西陣織]]屋。佐田太吉郎の友人。妻と三人の息子がいる。家族だけで手織をしている。太吉郎を恩人と思っている。 |
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;大友あさ子 |
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:大友宗助の妻。帯糸を巻く仕事で、年よりも老けている。 |
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;大友秀男 |
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:大友宗助とあさ子の長男。西陣織の[[帯]]を織っている。親より優れた技術がある。無愛想な職人。濃い眉。千重子を愛する。千重子の父が娘のために描いた図案の帯を織る。秀男自身も千重子のために図案を描いて帯を織るが、その時、千重子から苗子の分も頼まれる。 |
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;おかみ |
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:[[上七軒]]の[[お茶屋]]のおかみ。佐田太吉郎の昔の知り合い。お茶屋に20歳の芸者がいる。 |
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;ちいちゃん |
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:中学一年。或るお茶屋の娘。[[おかっぱ]]の毛が美しく黒光りしている。将来の[[舞妓]]として期待されている。姉が2人いる。上の姉は来春、中学卒業。[[先斗町]]に住む伯母がいる。 |
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;芸者 |
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:20歳。おかみの茶屋の芸者。いきなりキスをしてきた酔客の舌を噛み拒んだこともあったことを、佐田太吉郎に話すが、その後、太吉郎と再会すると平気で戯れに舌を含み、太吉郎から「あんた、堕落したな」と言われる。 |
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;植村 |
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:千重子の家(呉服問屋)の番頭。帳簿をごまかしている。 |
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;水木 |
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:水木竜助と真一の父。室町の大問屋。傾きかけている千重子の店に長男の竜助を婿養子に出して助けようとする。 |
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;その他の人々 |
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:千重子の家に来る[[白川女]](花売り娘)。千重子がよく買物をする[[湯葉]]半(総菜屋)の女。竜村(下河原町の織物屋<ref>現:京都市中京区の[https://www.tatsumura.co.jp/ 株式会社龍村美術織物]</ref>)の店員。バスの中にいた[[手錠]]をかけられた若い男。 |
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== 作品背景 == |
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<small>※川端康成の作品や随筆内からの文章の引用は〈 〉にしています(論者や評者の論文からの引用部との区別のため)。</small> |
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=== 京都滞在 === |
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『古都』は全9章からなり、「春の花」「尼寺と格子」「きものの町」は'''春'''、「北山杉」「祇園祭」は'''夏'''、「秋の色」「松のみどり」「秋深い姉妹」は'''秋'''、「冬の花」は'''冬'''、といったように[[京都]]の四季を背景に物語が進行する。小説に描かれたのは、[[1961年]](昭和36年)の春から冬にかけての京都であり、実際の年中行事や出来事が盛り込まれている。 |
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川端はこの物語を執筆するために、[[京都市]][[左京区]][[下鴨]]泉川町25番地の武市龍雄の邸宅を借りていた<ref name="nozue">[[野末明]]「『古都』成立考」(『康成・[[森鷗外|鴎外]]―研究と新資料―』審美社、1997年11月)。{{Harvnb|森本・下|2014|p=346,366-367}}</ref><ref name="ibuki">{{Harvnb|伊吹|1997}}</ref>。作品冒頭には[[スミレ|すみれ]]の花が描かれているが、川端が「[[京言葉]]」を取材するために訪れた[[下京区]][[油小路通|油小路]][[佛光寺]]下ルの[[町屋 (商家)|町家]]の秦家([[漢方薬]]を製造販売した老舗の薬種商)の庭には、作中にも登場する[[キリシタン]]灯籠があり、川端が[[蹲]]の石の間に咲いていたすみれの花に興味をひかれていたという<ref name="noguchi">{{Harvnb|野口|2009}}</ref>。モデルとなった家の庭は他に、京都市[[中京区]][[車屋町通|車屋町]][[三条通|三条]]下[[仁王門通|仁王門]]突抜307-1の漢方薬店([[無二膏]]販売)[[雨森氏|雨森敬太郎薬房]]もあるという<ref name="nozue"/>。 |
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川端は『古都』の連載にあたり、〈『古都』とは、もちろん、京都です。ここしばらく私は日本の「ふるさと」をたづねるやうな小説を書いてみたいと思つてゐます〉と語っている<ref>「『古都』作者の言葉」([[朝日新聞]] 1961年10月4日号)。{{Harvnb|評論5|1982|p=175}}に所収</ref>。主人公・千重子が[[平安神宮]]で桜を見る場面では、[[谷崎潤一郎]]の『[[細雪]]』からの、「まことに、ここの花をおいて、京洛の春を代表するものはないと言ってよい」という一節が[[オマージュ]]として引用され、[[北山杉]]の村の場面では、同じ[[鎌倉文士]]で懇意だった[[大佛次郎|大仏次郎]]の随筆『京都の誘惑』の一節が引かれ、花や樹木の自然の瑞々しさを綴る描写が多い。 |
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連載中、[[文化勲章]]受賞を受けて記者会見した時に、京都を舞台にした動機を川端は以下のように語っていた<ref name="tukada">[[塚田満江]]「『古都』うらおもて」({{Harvnb|作品研究|1969|pp=308-323}})</ref>。 |
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{{Quotation|古い都の中でも次第になくなってゆくもの、それを書いておきたいのです。京都はよく来ますが、名所旧蹟を外からなでていくだけ。内部の生活は何も知らなかったようなものです|川端康成「文化勲章の記者会見にて」<ref name="tukada"/>}} |
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なお、川端は洛中に現存する唯一の蔵元[[佐々木酒造]]の日本酒に「この酒の風味こそ京都の味」と、作品名『古都』を[[揮毫]]した。川端は[[京都大学|京大]][[名誉教授]][[桑原武夫]]に、「古都という酒を知っているか」と尋ね、知らないと答えた桑原にこれを飲ませようと、寒い夜にもかかわらず徒歩30分かけて買いに行ったと言われている<ref>[[桑原武夫]]「川端康成氏との一夕」([[文藝春秋 (雑誌)|文藝春秋]] 1972年6月号)</ref>。 |
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=== 睡眠薬 === |
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初版刊行本の口絵には、終章と同じ題名の「'''冬の花'''」と題する[[東山魁夷]]の[[北山杉]]の図(京洛四季シリーズ)が掲げてあるが、これは東山が、川端の[[文化勲章]]受章祝いとして描いたものである<ref name="kotoato"/>。川端は『古都』連載終了を機に長年常用していた[[睡眠薬]]を止めようとして、[[1962年]](昭和37年)2月から禁断症状で東大[[冲中重雄|冲中内科]]に入院していたが、この川端の病室へ東山は「冬の花』を直接持参した<ref name="kotoato"/>。川端は、〈病室で日毎ながめてゐると、近づく春の光りが明るくなるとともに、この絵の杉のみどり色も明るくなつて来た〉と述べている<ref name="kotoato"/>。 |
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入院中、10日ほど意識不明であったという川端は、『古都』執筆中のことを以下のように語っている<ref name="kotoato"/>。 |
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{{Quotation|「古都」執筆期間のいろんなことの記憶は多く失はれてゐて、不気味なほどであつた。「古都」になにを書いたかもよくはおぼえてゐなくて、たしかには思ひ出せなかつた。私は毎日「古都」を書き出す前にも、書いてゐるあひだにも、眠り薬を用ゐた。眠り薬に酔つて、うつつないありさまで書いた。眠り薬が書かせたやうなものであつたらうか。「古都」を「私の異常な所産」と言ふわけである。|川端康成「あとがき」<ref name="kotoato"/>}} |
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そして、定まった構想もなく書き始められた作品だったが、〈小さく愛すべき恋物語を書くつもりだつたのが、まつたく意外にも、[[双生児|ふた子]]の娘の話になつてしまつた〉としている<ref>「『古都』を書き終えて」(朝日新聞 1962年1月29日-31日号)。{{Harvnb|古都12巻|1970}}、{{Harvnb|評論5|1982|pp=180-186}}に所収</ref>。 |
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== 作品評価・研究 == |
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<small>※川端康成の作品や随筆内からの文章の引用は〈 〉にしています(論者や評者の論文からの引用部との区別のため)。</small> |
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『古都』は、京都という古き伝統が残る地を舞台とし、各地の名所や年中行事絵巻を楽しめる作品でもあり、映画化やドラマ化も多くなされ知名度はあるが、他の代表的川端作品の『[[雪国 (小説)|雪国]]』や『[[山の音]]』などに比べると、文学的にはあまり本格的論及の対象とはなっていない傾向がある<ref name="jiten"/>。失われてゆく日本の美をとどめておきたいという、川端自身の創作意図の観点から論じられることが多く、構造的な読みは他の川端作品よりは少ない<ref name="jiten"/>。 |
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[[三谷憲正]]は、「[[スミレ|すみれ]]」の可憐さをもつ女性として登場した千重子が、〈[[北山杉]]〉の素直さをも同時に合わせ持つイメージとして物語が進行してゆくが、千重子が〈北山杉〉の林の中で、苗子と胎内の[[双生児]]のように抱き合った後には、次第に〈[[楠]]〉の力強さを身につけてゆくと解説している<ref name="mitani">{{Harvnb|三谷|1995}}</ref>。 |
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また『古都』は『[[竹取物語]]』との類縁を指摘されることもしばしばあり、三谷はそれに関し、千重子の養父「太吉郎」(takitiro)の名は「竹取翁」(taketori okina)の[[アナグラム]]であるという学会発表の会場からの指摘を記している<ref name="mitani"/>。さらに[[高橋真理]]は、このアナグラムを敷衍し、「竹取翁」(taketori okina)から、「太吉郎」(takitiro)をマイナスすると、イコール「苗子」(naeko)であることを指摘し、「この二人の人物にまたがるようにtieko(「千重子」)の名はある」と考察している<ref>{{Harvnb|高橋|2001}}</ref>。 |
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[[田村充正]]は、姉と生き別れ、両親を失った苗子の姿には、幼い頃に両親を失い、おぼろげな姉の記憶しかない川端自身の境遇が投影され、苗子が思慕する会ったことのない姉とは、川端の姉・芳子への「秘められた思慕」であり、姉に会いたかったという苗子の「心情のほとばしり」は、そのまま川端の「心情の真実」であろうと考察し、それが『古都』を「既成のモチーフの借用だけで作られたのではない、川端にとって創作の必然を秘めた作品」にしていると解説している<ref>[[田村充正]]「川端文学、美の反響――『古都』秘められた亡き姉への思慕」({{Harvnb|太陽|2009|pp=132-133}})</ref>。 |
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川端は、『古都』刊行後に執筆した随筆で、〈山が見えない、山が見えない。近ごろ、私は京都の町を歩きながら、声なくさうつぶやいてゐることがある〉<ref name="jiman">「自慢十話・町づくり」([[毎日新聞]] 1962年8月7日号)。{{Harvnb|古都12巻|1970}}、{{Harvnb|随筆3|1982|pp=158-179}}に所収</ref>、〈山の木はなくなり、山は削りくづされて分譲地になつてしまはないか。自然の美の尊びも、町づくりの美も踏みやぶつてゆく、今の日本人はすさまじい勢ひ、おそろしい力である〉と記して<ref name="jiman"/>、都市景観の破壊的変化を危惧し<ref name="jiman"/>、後に[[東山魁夷]]『京洛四季』に寄せた序文でも同様のことを述べて、〈京都は今描いといていただかないとなくなります〉と東山にしきりに勧めて<ref name="miyako">「都のすがた――とどめおかまし」([[東山魁夷]]『京洛四季』序文)(1969年)。{{Harvnb|随筆3|1982|pp=508-533}}、{{Harvnb|一草一花|1991|pp=229-238}}に所収</ref>、〈みにくい安洋館〉が建ちはじめて、〈町通りから山が見えなくなつたのである。山の見えない町なんて、私には京都ではない〉という歎きを記している<ref name="miyako"/>。 |
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[[野口祐子]]はこういった川端の危機感を踏まえて、川端が『古都』を四季で構成したのは、安易な方法ではなく、時代への批判精神であり、そこで試みたのは、[[高度経済成長]]期の日本に対する「ささやかな抵抗」であるとし<ref name="noguchi"/>、川端が東山へ送った言葉を自ら行なった創作が『古都』であったと解説しながら<ref name="noguchi"/>、「『古都』の、時代から遊離したかのごとく感じられる古風な京都イメージと登場人物、そして円環的時間間隔と物語性の欠落は、川端の京都を古都として描き残そうとする使命感のなせるわざだったと言えるだろう」と論じている<ref name="noguchi"/>。 |
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[[呉悦]]は、『古都』の書かれた当時の急速な近代化の日本社会を鑑み、川端がその流れに反して、主人公の少女たちを「単純」「純潔」に表現し、「少女特有の恥じらい」を溢れさせているとし<ref name="goetsu">{{Harvnb|呉悦|2011}}</ref>、他の登場人物も古い土地で代々伝わる家業を守り暮らしている設定であり、その主題の中には、徐々に失われてゆく伝統風景や自然の生命、人間社会への厭世と裏腹の人間愛、近代化の波による過去に対する懐かしさなどが入り混じっていると解説している<ref name="goetsu"/>。そして戦後、世の中の価値観の変動を目の当たりにした川端が述べていた以下の随筆の言葉を引きながら、川端が〈現実を信じない<ref name="aishu">「哀愁」(社会 1947年10月号)。『哀愁』(細川書店、1949年12月)、{{Harvnb|随筆2|1982|pp=388-396}}、{{Harvnb|随筆集|2013}}に所収</ref>〉結果、「日本の伝統的故郷に対する愛を徹底的に」描き出すことに情熱を傾けたのが『古都』だと論じている<ref name="goetsu"/>。 |
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{{Quotation|戦争中、殊に敗戦後、日本人には真の悲劇も不幸も感じる力がないといふ、私の前からの思ひは強くなつた。感じる力がないといふことは、感じられる本体がないといふことであらう。敗戦後の私は日本古来の悲しみのなかに帰つてゆくばかりである。私は戦後の世相なるもの、風俗なるものを信じない。現実なるものをあるひは信じない。|川端康成「哀愁」<ref name="aishu"/>}} |
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そして呉悦は、川端が『古都』において、「懸命に理想的世界を作り、純粋な人物を登場させているにもかかわらず、人物は悲哀に富んだ人生を辿ることから、川端の現実社会に対する失望、不信感が窺える」とし<ref name="goetsu"/>、作中に漂う哀愁や、〈運命〉という言葉の繰り返しは、「変えられない運命に左右される時の作者の感嘆」であり、その後幻想的な世界観の『[[片腕 (小説)|片腕]]』を描き、現実からかけ離れた道を辿っていったのは、西欧近代化の波と伝統との葛藤が強まった川端の、「日本の伝統を必死に守ろうにも守りきれなかったという現実に対する無力感の現れ」ではないかと考察しながら<ref name="goetsu"/>、[[新感覚派]]の旗手として西欧思想を取り入れ欧米に学んだ後に日本伝統回帰を経て、不思議な作品を創出し、最後は自殺してしまった川端自身の運命について言及している<ref name="goetsu"/>。 |
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[[山田吉郎]]は、川端が巨木を愛していたことから北山杉との関連などに触れつつ、『古都』の物語の深層に「[[霊界]]との交信」を看取し<ref name="yamada">[[山田吉郎]]「『古都』の精神構造」(『川端康成研究叢書8』教育出版センター、1980年11月)。{{Harvnb|森本・下|2014|pp=368-369,566}}に抜粋掲載</ref>、川端の主治医だった[[栗原雅直]]が『古都』の双子について、「やはり[[ナルシシズム|ナルシシスム]]とは言うものの、見ぬ母への空想的な愛情要求の変形としてとることができ、見る自分と見られる自分という[[鏡]]の世界、{{ruby|二重身|ドッペルゲンガー}}の問題との関連をもつものである<ref name="kurihara">「寒風の母――川端作品の血縁構造〈五 女性的なるもの〉2 とりちがえ、双生児の姉妹」(NAMAZU 1981年5月・第5号)。{{Harvnb|栗原|1986|pp=175-183}}に所収。{{Harvnb|森本・下|2014|p=369}}に抜粋掲載</ref>」と論じたことに示唆を受けつつ、以下のように心霊的、霊界通信的な要素と絡めて姉妹2人を考察している<ref name="yamada"/>。 |
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{{Quotation|本質的なことは、川端が『古都』という作品において、知らず知らずのうちに霊界との交感をおこなっていたということである。北山杉の村には現世と隔絶した霊界の[[磁場]]が張られ、その内奥に〈未生〉および〈死後〉の世界がひそんでいた。その霊界からあらわれたかのような苗子は、主人公千重子を北山杉の村へといざない、千重子に〈未生の時〉をかいま見せるのである。こうした現世と霊界との交感を、川端は[[睡眠薬|眠り薬]]に侵されたうつつない薄明の世界で、何ものかに促されるように書いていったのである。|[[山田吉郎]]「『古都』の精神構造」<ref name="yamada"/>}} |
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また山田は、作中に見られる〈[[魔界]]〉の要素として、北山杉の村に向うバスの中で、手錠をかけられている若い男が千重子に声をかける場面などを指摘している<ref name="yamada"/>。 |
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== 舞台化 == |
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{{ウィキポータルリンク|舞台芸術|[[画像:P culture.svg|36px|Portal:舞台芸術]]}} |
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*[[新派]]『古都』 劇団新派公演 |
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**1962年(昭和37年) [[明治座]] |
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**脚色:[[川口松太郎]]。演出:[[松浦竹夫]] |
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== 映画化 == |
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{{Portal 映画}} |
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*『[[古都 (1963年の映画)|古都]]』([[松竹]]) カラー105分。 |
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**1963年(昭和38年)1月13日封切。 |
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**監督:[[中村登]]。脚本:[[権藤利英]]。音楽:[[武満徹]] |
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**主演:[[岩下志麻]](二役)、[[吉田輝雄]]、[[長門裕之]]、ほか |
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**※ [[第36回アカデミー賞]]外国語映画賞本選ノミネート作品 |
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*『[[古都 (1980年の映画)|古都]]』([[東宝]]) カラー125分。 |
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**1980年(昭和55年)12月20日封切。 |
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**監督:[[市川崑]]。脚本:[[日高真也]]、市川崑。音楽:[[田辺信一]] |
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**主演:[[山口百恵]](二役)、[[三浦友和]]、[[實川延若 (3代目)|實川延若]]、[[岸惠子]]、[[北詰友樹]]、ほか |
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**※ 山口百恵の引退前の最後の映画<ref name="eiga34">志村三代子「川端康成原作映画事典――34『古都』」({{Harvnb|川端康成スタディーズ|2016|pp=255-256}})</ref>。三浦友和は、原作にはない「木こりの清作」の役で、北山東屋根の杉を切ることに反対して造林計画に情熱を傾ける青年を演じた<ref name="eiga34"/>。 |
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*『[[古都 (2016年の映画)|古都]]』<ref>{{cite news|url=https://natalie.mu/eiga/news/190894|title=松雪泰子が橋本愛と成海璃子の母親演じる「古都」、川端康成の小説を現代にアレンジ|newspaper=映画ナタリー|date=2016-06-15|accessdate=2016-06-15}}</ref> |
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**2016年(平成28年)12月3日封切。 |
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**監督:[[Yuki Saito]] |
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**主演:[[松雪泰子]](二役)、[[橋本愛 (1996年生)|橋本愛]]、[[成海璃子]]、[[伊原剛志]]、[[奥田瑛二]]、[[葉山奨之]]、[[蒼あんな・れいな|蒼れいな、蒼あんな]]、[[栗塚旭]]、[[松野莉奈]](当時[[私立恵比寿中学]]、公開2か月後の[[2017年]][[2月8日]]に急逝)、ほか |
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**※千重子と苗子の2人が別れてから20数年後の現代として、京都とパリを舞台に、彼女らとその娘たちを描くという形にアレンジされている<ref>[https://natalie.mu/eiga/news/190894 松雪泰子が橋本愛と成海璃子の母親演じる「古都」、川端康成の小説を現代にアレンジ](2016年6月15日)、[[ナタリー (ニュースサイト)|映画ナタリー]]、2016年10月7日閲覧。</ref><ref name="eiga42">志村三代子「川端康成原作映画事典――42『古都』」({{Harvnb|川端康成スタディーズ|2016|p=262}})</ref>。文部科学省特別選定作品(青年向き、成人向き)<ref>{{Cite news|url= https://eiga.com/news/20160826/5/ |title= 松雪泰子主演「古都」、文部科学省特別選定作品に決定! |newspaper= 映画.com |publisher= 株式会社エイガ・ドット・コム |date= 2016-08-26 |accessdate= 2018-10-30 }}</ref>。 |
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== テレビドラマ化 == |
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*文芸劇場(第107回)『古都』([[NHK総合テレビジョン|NHK]]) |
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**1964年(昭和39年)3月20日 金曜日 20:00 - 21:30 |
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**脚本:[[成沢昌茂]](成澤昌茂)。演出:[[畑中庸生]] |
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**出演:[[小林千登勢]](佐田千重子・苗子の二役)、[[中村鴈治郎 (2代目)|中村鴈治郎]]、[[萬代峰子]]、[[津川雅彦]]、[[清水元]]、[[渡辺文雄 (俳優)|渡辺文雄]]、[[花ノ本寿]]、[[有田紀子]]、[[浦辺粂子]] |
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*[[ライオン奥様劇場]]『古都』([[フジテレビジョン|フジテレビ]]) |
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**1966年(昭和41年)1月3日 - 2月11日 月曜日 - 金曜日 13:00 - 13:30 |
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**脚本:[[芦沢俊郎]]。演出:[[岩間鶴夫]]。制作会社:[[松竹]]テレビ室、CX。 |
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**出演:[[長内美那子]](佐田千重子・苗子の二役)、[[吉田輝雄]]、[[小坂一也]]、[[宇佐美淳也]] |
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*[[花王愛の劇場]]『[[古都_(1980年のテレビドラマ)|古都]]』([[TBSテレビ|TBS]]) |
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**1980年(昭和55年)1月7日 - 3月7日(全45回) 月曜日 - 金曜日 13:00 - 13:30 |
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**脚本:[[芦沢俊郎]] |
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**出演:[[岡江久美子]](佐田千重子・苗子の二役)、[[志垣太郎]]、[[河原崎建三]]、[[松下達夫]]、[[露原千草]]、[[長内美那子]]、[[山田はるみ]] |
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**主題歌:[[芹洋子]]「古都の旅」(作詞:[[木下龍太郎]]。作曲:[[平尾昌晃]]) |
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*[[関西テレビ放送|関西テレビ]]開局30周年スペシャル『古都』([[関西テレビ|KTV]]) |
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**1988年(昭和63年)4月1日 金曜日 21:03 - 23:07 |
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**脚本:[[早坂暁|早坂曉]]。演出・監督:[[出目昌伸]]。制作:[[東宝]]、KTV |
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**出演:[[沢口靖子]](佐田千重子・苗子の二役)、[[村上弘明]]、[[堤大二郎]]、[[田村高廣]]、[[草笛光子]]、[[田武謙三]] |
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**関西地区以外は「春のドラマスペシャル」とされている |
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*月曜特集特別企画・[[テレビ東京月曜9時枠の連続ドラマ|日本名作ドラマ]]『古都』([[テレビ東京]]) |
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**1994年(平成6年)5月30日 月曜日 20:00 - 21:54 |
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**脚本:[[綾部伴子]]。演出:[[森崎東]]。音楽:[[羽田健太郎]]。選曲:[[山川繁]]。プロデューサー:[[田中浩三]]、[[原克子]]、[[大野晴雄]]。制作会社:[[松竹]]、TX。制作協力:[[京都映画]] |
|||
**出演:[[中江有里]](佐田千重子・苗子の二役)、[[橋爪功]]、[[岩本多代]]、[[杉本哲太]]、[[大沢健]]、[[橋本潤]]、[[西山辰夫]]、[[奥村公延]]、[[穂積隆信]]、[[石田章]]、[[絵沢萠子]]、[[扇田喜久一]]、[[三浦徳子]]、[[神谷けいこ]]、[[橋本じゅん]]、[[石田アキラ]] |
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*[[土曜ワイド劇場]]・ドラマスペシャル『[[古都 (2005年のテレビドラマ)|古都]]』([[テレビ朝日]]) |
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**2005年(平成17年)2月5日 土曜日 21:00 - 23:06 |
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**脚本:[[永田優子]]。演出・監督:[[猪崎宣昭]]。制作会社:[[ホリプロ]]、EX。制作協力:松竹京都映画。 |
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**出演:[[上戸彩]](佐田千重子・苗子の二役)、[[渡部篤郎]]、[[西岡徳馬]]、[[小栗旬]]、[[朝丘雪路]]、[[高橋惠子]]、[[夏八木勲]]、ほか |
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== おもな刊行本 == |
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=== 単行本 === |
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*『古都』([[新潮社]]、1962年6月25日) {{NCID|BN04763724}} |
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**装幀:[[石井敦子]]。口絵:[[東山魁夷]]「冬の花」。[[四六判]]。函入。243頁 |
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**付録:川端康成「あとがき」 |
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**※ [[現代仮名遣い]]、[[新字体]]表記となっている。 |
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*文庫版『古都』([[新潮文庫]]、1968年8月27日。改版2010年1月15日) |
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**カバー装幀:[[ケルスティン・ティニ・ミウラ]]。解説:[[山本健吉]] |
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**付録:川端康成「あとがき」(初刊本と同じ) |
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*豪華限定版『古都』(牧羊社、1973年5月25日) |
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**[[菊倍判]]変形枡形本。紅葉装700部限定。松山装350部限定。 |
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**装幀・挿画:東山魁夷。 |
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**付録:東山魁夷「限定本『古都』の造本、装画について」。川端康成「あとがき」(初刊本と同じ) |
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*特装本『古都』(牧羊社、1973年) 限定30部 |
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**装幀・木版口絵:東山魁夷。題字:川端康成。自筆表紙絵「光悦垣」 |
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*英文版『The Old Capital』(訳:J・マーティン・ホルマン)(Tuttle、1987年) |
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=== 全集 === |
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*『川端康成全集第12巻 古都・片腕・落花流水』(新潮社、1970年5月10日) - 全19巻本全集 |
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**カバー題字:[[松井如流]]。[[菊判]]変形。函入。口絵写真2葉:著者小影、木米[[急須]] |
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**[[月報#別刷として添付される月報|月報]](第13回):[[河盛好蔵]]「フランス人の見た川端文学」。[[柏原兵三]]「『[[伊豆の踊子]]』のことなど」。〔川端文学への視点(13)〕[[長谷川泉]]「新潮社版全集の後記」 |
|||
**収録作品:「古都」「[[片腕 (小説)|片腕]]」「[[掌の小説]](秋の雨、手紙、隣人、木の上、乗馬服、かささぎ、不死、月下美人、地、白馬、雪)」「落花流水(行燈、伊豆行、枕の草子、秋風高原)」「美智子妃殿下」「[[岸惠子]]さんの婚礼」「自慢十話」「『[[浅草紅団]]』について」「『[[雪国 (小説)|雪国]]』の旅」「週刊日記」「宿駅」「パリ郷愁」「パリ安息」「ブラジルペン大会」「字のことなど」「美しい地図」 |
|||
*『川端康成全集第18巻 小説18』(新潮社、1980年3月20日) - 全35巻本・補巻2全集 |
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**カバー題字:[[東山魁夷]]。四六判。函入 |
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**月報:[[中村光夫]]「川端文学の特質」「『みづうみ』と『眠れる美女』」。[[川端秀子]]「川端康成の思い出(二)」 |
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**収録作品:「[[みづうみ]]」「[[眠れる美女]]」「古都」「[[たんぽぽ (小説)|たんぽぽ]]」 |
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== 派生作品・オマージュ作品 == |
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※出典は<ref name="tsune">[[恒川茂樹]]「川端康成〈転生〉作品年表【引用・オマージュ篇】」({{Harvnb|転生|2022|pp=261-267}})</ref> |
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*古都([[朱天心]]、1997年5月) |
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*[[異邦人 (原田マハ)|異邦人]]([[原田マハ]]、2012年5月 - 2014年4月) |
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*手のひらの京([[綿矢りさ]]、2016年1月) |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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{{Reflist|32em}} |
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== 参考文献 == |
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*{{Citation|和書|author=[[川端康成]]|date=1970-05|title=川端康成全集第12巻 古都・[[片腕 (小説)|片腕]]・落花流水|publisher=新潮社|id={{NCID|BN06162656}}|ref={{Harvid|古都12巻|1970}}}} |
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*{{Citation|和書|author=川端康成|date=1980-03|title=川端康成全集第18巻 小説18|publisher=[[新潮社]]|isbn=978-4106438189|ref={{Harvid|小説18|1980}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=川端康成|date=1982-03|title=川端康成全集第27巻 随筆2|publisher=新潮社|isbn=978-4106438271|ref={{Harvid|随筆2|1982}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=川端康成|date=1982-02|title=川端康成全集第28巻 随筆3|publisher=新潮社|isbn=978-4106438288|ref={{Harvid|随筆3|1982}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=川端康成|date=1982-05|title=川端康成全集第33巻 評論5|publisher=新潮社|isbn=978-4-10-643833-2|ref={{Harvid|評論5|1982}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=川端康成|date=1983-02|title=川端康成全集第35巻 雑纂2|publisher=新潮社|isbn=978-410643835-6|ref={{Harvid|雑纂2|1983}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=川端康成|date=2010-01|title=古都|publisher=新潮社|series=[[新潮文庫]]|edition=改版|isbn=978-4101001210|ref={{Harvid|古都文庫|2010}}}} - 初版は1968年8月。 |
|||
*{{Citation|和書|author=川端康成|date=1991-03|title=一草一花|publisher=講談社|series=[[講談社文芸文庫]]|isbn=978-4061961180|ref={{Harvid|一草一花|1991}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=川端康成|date=2013-12|title=川端康成随筆集|publisher=岩波書店|series=[[岩波文庫]]|isbn=978-4003108154|ref={{Harvid|随筆集|2013}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=[[伊吹和子]]|date=1997-04|title=川端康成――瞳の伝説|publisher=[[PHP研究所]]|isbn=978-4569555966|ref={{Harvid|伊吹|1997}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=[[栗原雅直]]|date=1986-05|title=川端康成――精神医学者による作品分析|publisher=[[中央公論新社]]|series=[[中公文庫]]|isbn=978-4122013247|ref={{Harvid|栗原|1986}}}} |
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*{{Citation|和書|author=[[呉悦]]|date=2011-03|title=川端康成と沈従文における伝統への回帰―『古都』と『辺城』の比較を中心として|journal=多元文化|issue=11|volume=|pages=15-28|publisher=[[名古屋大学]]国際言語文化研究科国際多元文化|naid=120002933905|ref={{Harvid|呉悦|2011}}}} |
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*{{Citation|和書|editor1=[[坂井セシル]]|editor2=[[紅野謙介]] |editor3=[[十重田裕一]] |editor4=[[マイケル・K・ボーダッシュ|マイケル・ボーダッシュ]] |editor5=[[和田博文]] |date=2016-12|title=川端康成スタディーズ ――21世紀に読み継ぐために |publisher=[[笠間書院]]|isbn=978-4305708229|ref={{Harvid|川端康成スタディーズ|2016}}}} |
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*{{Citation|和書|editor1=[[仁平政人]]|editor2=[[原善]]|editor3=[[藤田祐史]]|date=2022-11|title=〈転生〉する川端康成 1――引用・オマージュの諸相 |publisher=[[文学通信]]|isbn= 978-4909658890 |ref={{Harvid|転生|2022}}}} |
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*{{Citation|和書|author=[[高橋真理]]|date=2001-03-25|title=『[[山の音]]』その他―『禁』の構造、『虚』の時間|journal=[[明星大学]]研究紀要|issue=9|volume=|pages=49-56|publisher=明星大学日本文化学部・言語文化学科|naid=110001023165|ref={{Harvid|高橋|2001}}}} |
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*{{Citation|和書|author=[[富岡幸一郎]]|date=2014-05|title=川端康成 魔界の文学|publisher=岩波書店|series=岩波現代全書031|isbn=978-4000291316|ref={{Harvid|富岡|2015}}}} |
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*{{Citation|和書|author=[[野口祐子]]|date=2009-12|title=川端康成『古都』におけるすみれの花と時間感覚|journal=[[京都府立大学]]学術報告・人文|issue=61|volume=|pages=39-52|publisher=京都府立大学|naid=110008138628|ref={{Harvid|野口|2009}}}} |
|||
*{{Citation|和書|editor1=[[羽鳥徹哉]]|editor2=原善|date=1998-06|title=川端康成全作品研究事典|publisher=[[勉誠出版]]|isbn=978-4-585-06008-6|ref={{Harvid|事典|1998}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=羽鳥徹哉監修|date=2009-02|title=別冊太陽 日本のこころ157 川端康成――蒐められた日本の美|publisher=[[平凡社]]|isbn=978-4582921571|ref={{Harvid|太陽|2009}}}} |
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*{{Citation|和書|editor=[[長谷川泉]]|date=1969-03|title=川端康成作品研究|series=近代文学研究双書|publisher=[[八木書店]]|id={{NCID|BN01844524}}|ref={{Harvid|作品研究|1969}}}} 増補版1973年1月。 |
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*{{Citation|和書|editor=[[保昌正夫]]|date=1984-03|title=新潮日本文学アルバム16 川端康成|publisher=新潮社|isbn=978-4106206160|ref={{Harvid|アルバム川端|1984}}}} |
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*{{Citation|和書|author=[[三谷憲正]]|date=1995-11|title=川端康成『古都』論――〈衰滅〉の予兆と萌芽の予感と|journal=稿本近代文学|issue=20|volume=|pages=134-147|publisher=[[筑波大学]]|naid=110000437717|ref={{Harvid|三谷|1995}}}} |
|||
*{{Citation|和書|author=[[森本穫]]|date=2014-09|title=魔界の住人 川端康成――その生涯と文学 下巻|publisher=勉誠出版|isbn=978-4585290766|ref={{Harvid|森本・下|2014}}}} |
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== 関連項目 == |
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*[[宗方姉妹]] |
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== 外部リンク == |
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* {{Allcinema title|140686|古都(1963)}} |
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* {{Kinejun title|20958|古都(1963)}} |
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* {{Allcinema title|147438|古都(1980)}} |
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* {{Kinejun title|19169|古都(1980)}} |
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{{川端康成}} |
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{{ライオン奥様劇場}} |
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{{リダイレクトの所属カテゴリ |
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|1-1=川端康成原作のテレビドラマ |
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|1-2=双子を題材としたテレビドラマ |
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|1-3=NHK総合テレビジョンのスペシャルドラマ |
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[[Category:川端康成の小説]] |
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[[Category:高度経済成長期の日本を舞台とした小説]] |
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[[Category:四季を題材とした小説]] |
2024年9月21日 (土) 07:31時点における最新版
古都 | |
---|---|
訳題 | The Old Capital |
作者 | 川端康成 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 長編小説 |
発表形態 | 新聞連載 |
初出情報 | |
初出 | 『朝日新聞』1961年10月8日号 - 1962年1月23日号(全107回) |
挿絵 | 小磯良平 |
刊本情報 | |
出版元 | 新潮社 |
出版年月日 | 1962年6月25日 |
装幀 | 石井敦子 |
口絵 | 東山魁夷「冬の花」 |
総ページ数 | 243 |
ウィキポータル 文学 ポータル 書物 |
『古都』(こと)は、川端康成の長編小説。古都・京都を舞台に、生き別れになった双子の姉妹の数奇な運命を描いた川端の代表作の一つ。老舗呉服商の一人娘として育った捨て子の娘が、北山杉の村で見かけた自分の分身のような村娘と祇園祭の夜に偶然出逢う物語で、互いに心を通わせながらも同じ屋根の下で暮らせない双子の娘の健気な姿が、四季折々の美しい風景や京都の伝統を背景に、切なく可憐に描かれている。
京都各地の名所や史蹟、年中行事が盛り込まれた人気作品であるが[1]、国内よりも海外での評価の方が高くノーベル文学賞の授賞対象作にもなった[2][3]。
川口松太郎脚色で新派で舞台化され、幾度も映画化、テレビドラマ化されている。
発表経過
[編集]『朝日新聞』に1961年(昭和36年)10月8日から翌1962年(昭和37年)1月23日まで、107回にわたって連載された(1月2日は休刊)。挿絵は小磯良平が担当[4][5]。作品連載中の11月3日に川端は文化勲章を授与された[4][6]。
その後、会話部分の京都弁を井尻茂子の協力により訂正するなど加筆補正が施され、「あとがき」を付して同年6月25日に新潮社より単行本刊行された[4][7]。
なお、初出が新聞紙上のため、現代仮名遣いと、漢字は新字体の表記に合わせて連載され、単行本の際もそれが踏襲されたが[4]、その後、1970年(昭和45年)5月10日刊行の『川端康成全集第12巻』(全19巻本)に収録の際には、全文、歴史的仮名遣いと正字体に戻され、新聞用表記での送り仮名(送り過ぎ)も是正された[4]。
翻訳版は、ドイツ語(独題:Kyoto oder Die jungen Liebenden in der alten Kaiserstadt, 1965)や、J・マーティン・ホルマン訳の英語(英題:“The Old Capital”, 1987)のほか、イタリア語(伊題:Koto, 1968)、フランス語(法題:Kyōto, 1971)、中国語(中題:古都, 1969 台北)など世界各国で出版されている[8]。
あらすじ
[編集]京都中京の由緒ある呉服問屋の一人娘の佐田千重子は、両親に愛されて育ったが悩みがあった。それは自分が捨て子ではないのかということだった。両親はその噂を否定し、20年前に祇園さんの夜桜の下に置かれていたあまりにも可愛い赤ちゃんをさらって逃げてきたんだと千重子には説明していた。
5月のある日、千重子は友達の真砂子と北山杉を見にいった。真砂子は北山丸太の加工の仕事をしている村娘の中に千重子とそっくりな娘を見つけ、千重子に指し示した。
夏、祇園祭の夜、千重子は八坂神社の御旅所で熱心に七度まいりをしている見覚えのある娘を見つめた。その娘も千重子に気づくと食い入るように見つめ、「あんた、姉さんや、神さまのお引き合せどす」と涙を流した。娘はあの北山杉の村娘で、名は苗子だった。
2人はお互いの身の上を短く語り合い、とりあえずその場は別れた。苗子は身分の違いを自覚し、千重子を「お嬢さん」と呼んだ。四条大橋のたもとで、西陣織屋の息子で職人の秀男が、苗子を千重子と間違えて声をかけた。千重子が好きな秀男は、自分の考案の柄で 帯をおらしてくれと言って去った。
後日、千重子の家に図案を持ってきた秀男に、千重子は自分に双子の姉妹がいることを告げ、苗子の分も「杉と赤松の山」の帯を織って、届けてくれるように頼んだ。それをきっかけに秀男は苗子に惹かれ始め時代祭に誘った。
一方、千重子の家と同じ問屋の息子で、幼馴染の水木真一の兄・竜助が、経営が傾きかけている千重子の店にやって来て、番頭の裏帳簿を正すためにいろいろと店を手伝ってくれるようになった。竜助の父親は、息子を佐田家に婿養子に出してもいいと申し出て、千重子の父も喜んだ。
苗子は秀男に結婚を申し込まれ、それを千重子に告げた。千重子は賛成するが、苗子は、秀男が千重子の幻を愛していることを知っており、それに自分の存在が公になれば、千重子の家に迷惑がかかると考え、プロポーズを断るつもりだった。千重子は、父も母も苗子を家に引き取ってもいいと言っていることを苗子に告げると、苗子は涙を流して感謝した。そして一泊だけ千重子の家に行くことにした。
冬の夜、千重子と苗子は一緒の床に寝て、幸福な姉妹の時を過ごした。千重子はずっと側にいてくれと言ったが、苗子は今では身分も教養も違う2人の身を思い、少しでもお嬢さんの幸せに支障があってはならないと考え、これをたった一度の訪問にして、雪の朝早く、山の村へ帰っていった。
登場人物
[編集]- 佐田千重子
- 20歳。京都中京にある由緒ある室町通の呉服問屋の美しい一人娘。実は店の前に捨てられていた捨て子。やわらかいきれいな手。
- 佐田太吉郎
- 50代半ば。千重子の育ての父。呉服問屋を経営。自分でも図案を書く。名人気質で人嫌い。若い頃、才能のなさに悩み麻薬の魔力で、友禅の怪しい抽象絵を描いたこともあるが、今は地味なものしか描けない。商売気がなく、店は番頭に任せているが、商売が傾き気味である。
- 佐田しげ
- 50歳。千重子の育ての母。色白で品のいい顔。捨て子ではなく、可愛い赤ん坊の千重子をさらって逃げてきたと娘に嘘を言って、捨子の娘が傷つかないようにしている。
- 水木真一
- 20歳。大学生。名刀のような顔だと人に言われる。千重子の幼馴染で高校まで同じだった。千重子を愛する。数えで7歳の時、祇園祭の長刀鉾に稚児姿で乗ったことがある。兄がいる。今でも兄から、「お稚児さん」とからかい半分に呼ばれる。
- 水木竜助
- 真一の兄。大学院にいる。英語が堪能。室町の大問屋の長男。近所の問屋の妙な噂を知り、千重子に番頭を調べるように助言する。男っぽい風情。千重子を愛する。
- 真砂子
- 千重子の友人。茶道の友達。千重子のことを、「きれいやなあ」とよく言う。恋人がいる。
- 苗子
- 20歳。千重子の双子の姉妹。北区中川北山町(北山丸太村)で、伐られた北山杉の加工の仕事をしている貧しい山娘。皮の厚い荒れた手。生まれたての赤ん坊の時に、父親が北山杉の枝打ち中に転落死。母親も早世。今は「村瀬」という家に奉公している。村瀬家は杉山持ち。
- 大友宗助
- 50歳くらい。西陣織屋。佐田太吉郎の友人。妻と三人の息子がいる。家族だけで手織をしている。太吉郎を恩人と思っている。
- 大友あさ子
- 大友宗助の妻。帯糸を巻く仕事で、年よりも老けている。
- 大友秀男
- 大友宗助とあさ子の長男。西陣織の帯を織っている。親より優れた技術がある。無愛想な職人。濃い眉。千重子を愛する。千重子の父が娘のために描いた図案の帯を織る。秀男自身も千重子のために図案を描いて帯を織るが、その時、千重子から苗子の分も頼まれる。
- おかみ
- 上七軒のお茶屋のおかみ。佐田太吉郎の昔の知り合い。お茶屋に20歳の芸者がいる。
- ちいちゃん
- 中学一年。或るお茶屋の娘。おかっぱの毛が美しく黒光りしている。将来の舞妓として期待されている。姉が2人いる。上の姉は来春、中学卒業。先斗町に住む伯母がいる。
- 芸者
- 20歳。おかみの茶屋の芸者。いきなりキスをしてきた酔客の舌を噛み拒んだこともあったことを、佐田太吉郎に話すが、その後、太吉郎と再会すると平気で戯れに舌を含み、太吉郎から「あんた、堕落したな」と言われる。
- 植村
- 千重子の家(呉服問屋)の番頭。帳簿をごまかしている。
- 水木
- 水木竜助と真一の父。室町の大問屋。傾きかけている千重子の店に長男の竜助を婿養子に出して助けようとする。
- その他の人々
- 千重子の家に来る白川女(花売り娘)。千重子がよく買物をする湯葉半(総菜屋)の女。竜村(下河原町の織物屋[9])の店員。バスの中にいた手錠をかけられた若い男。
作品背景
[編集]※川端康成の作品や随筆内からの文章の引用は〈 〉にしています(論者や評者の論文からの引用部との区別のため)。
京都滞在
[編集]『古都』は全9章からなり、「春の花」「尼寺と格子」「きものの町」は春、「北山杉」「祇園祭」は夏、「秋の色」「松のみどり」「秋深い姉妹」は秋、「冬の花」は冬、といったように京都の四季を背景に物語が進行する。小説に描かれたのは、1961年(昭和36年)の春から冬にかけての京都であり、実際の年中行事や出来事が盛り込まれている。
川端はこの物語を執筆するために、京都市左京区下鴨泉川町25番地の武市龍雄の邸宅を借りていた[10][11]。作品冒頭にはすみれの花が描かれているが、川端が「京言葉」を取材するために訪れた下京区油小路佛光寺下ルの町家の秦家(漢方薬を製造販売した老舗の薬種商)の庭には、作中にも登場するキリシタン灯籠があり、川端が蹲の石の間に咲いていたすみれの花に興味をひかれていたという[12]。モデルとなった家の庭は他に、京都市中京区車屋町三条下仁王門突抜307-1の漢方薬店(無二膏販売)雨森敬太郎薬房もあるという[10]。
川端は『古都』の連載にあたり、〈『古都』とは、もちろん、京都です。ここしばらく私は日本の「ふるさと」をたづねるやうな小説を書いてみたいと思つてゐます〉と語っている[13]。主人公・千重子が平安神宮で桜を見る場面では、谷崎潤一郎の『細雪』からの、「まことに、ここの花をおいて、京洛の春を代表するものはないと言ってよい」という一節がオマージュとして引用され、北山杉の村の場面では、同じ鎌倉文士で懇意だった大仏次郎の随筆『京都の誘惑』の一節が引かれ、花や樹木の自然の瑞々しさを綴る描写が多い。
連載中、文化勲章受賞を受けて記者会見した時に、京都を舞台にした動機を川端は以下のように語っていた[14]。
古い都の中でも次第になくなってゆくもの、それを書いておきたいのです。京都はよく来ますが、名所旧蹟を外からなでていくだけ。内部の生活は何も知らなかったようなものです — 川端康成「文化勲章の記者会見にて」[14]
なお、川端は洛中に現存する唯一の蔵元佐々木酒造の日本酒に「この酒の風味こそ京都の味」と、作品名『古都』を揮毫した。川端は京大名誉教授桑原武夫に、「古都という酒を知っているか」と尋ね、知らないと答えた桑原にこれを飲ませようと、寒い夜にもかかわらず徒歩30分かけて買いに行ったと言われている[15]。
睡眠薬
[編集]初版刊行本の口絵には、終章と同じ題名の「冬の花」と題する東山魁夷の北山杉の図(京洛四季シリーズ)が掲げてあるが、これは東山が、川端の文化勲章受章祝いとして描いたものである[6]。川端は『古都』連載終了を機に長年常用していた睡眠薬を止めようとして、1962年(昭和37年)2月から禁断症状で東大冲中内科に入院していたが、この川端の病室へ東山は「冬の花』を直接持参した[6]。川端は、〈病室で日毎ながめてゐると、近づく春の光りが明るくなるとともに、この絵の杉のみどり色も明るくなつて来た〉と述べている[6]。
入院中、10日ほど意識不明であったという川端は、『古都』執筆中のことを以下のように語っている[6]。
「古都」執筆期間のいろんなことの記憶は多く失はれてゐて、不気味なほどであつた。「古都」になにを書いたかもよくはおぼえてゐなくて、たしかには思ひ出せなかつた。私は毎日「古都」を書き出す前にも、書いてゐるあひだにも、眠り薬を用ゐた。眠り薬に酔つて、うつつないありさまで書いた。眠り薬が書かせたやうなものであつたらうか。「古都」を「私の異常な所産」と言ふわけである。 — 川端康成「あとがき」[6]
そして、定まった構想もなく書き始められた作品だったが、〈小さく愛すべき恋物語を書くつもりだつたのが、まつたく意外にも、ふた子の娘の話になつてしまつた〉としている[16]。
作品評価・研究
[編集]※川端康成の作品や随筆内からの文章の引用は〈 〉にしています(論者や評者の論文からの引用部との区別のため)。
『古都』は、京都という古き伝統が残る地を舞台とし、各地の名所や年中行事絵巻を楽しめる作品でもあり、映画化やドラマ化も多くなされ知名度はあるが、他の代表的川端作品の『雪国』や『山の音』などに比べると、文学的にはあまり本格的論及の対象とはなっていない傾向がある[2]。失われてゆく日本の美をとどめておきたいという、川端自身の創作意図の観点から論じられることが多く、構造的な読みは他の川端作品よりは少ない[2]。
三谷憲正は、「すみれ」の可憐さをもつ女性として登場した千重子が、〈北山杉〉の素直さをも同時に合わせ持つイメージとして物語が進行してゆくが、千重子が〈北山杉〉の林の中で、苗子と胎内の双生児のように抱き合った後には、次第に〈楠〉の力強さを身につけてゆくと解説している[17]。
また『古都』は『竹取物語』との類縁を指摘されることもしばしばあり、三谷はそれに関し、千重子の養父「太吉郎」(takitiro)の名は「竹取翁」(taketori okina)のアナグラムであるという学会発表の会場からの指摘を記している[17]。さらに高橋真理は、このアナグラムを敷衍し、「竹取翁」(taketori okina)から、「太吉郎」(takitiro)をマイナスすると、イコール「苗子」(naeko)であることを指摘し、「この二人の人物にまたがるようにtieko(「千重子」)の名はある」と考察している[18]。
田村充正は、姉と生き別れ、両親を失った苗子の姿には、幼い頃に両親を失い、おぼろげな姉の記憶しかない川端自身の境遇が投影され、苗子が思慕する会ったことのない姉とは、川端の姉・芳子への「秘められた思慕」であり、姉に会いたかったという苗子の「心情のほとばしり」は、そのまま川端の「心情の真実」であろうと考察し、それが『古都』を「既成のモチーフの借用だけで作られたのではない、川端にとって創作の必然を秘めた作品」にしていると解説している[19]。
川端は、『古都』刊行後に執筆した随筆で、〈山が見えない、山が見えない。近ごろ、私は京都の町を歩きながら、声なくさうつぶやいてゐることがある〉[20]、〈山の木はなくなり、山は削りくづされて分譲地になつてしまはないか。自然の美の尊びも、町づくりの美も踏みやぶつてゆく、今の日本人はすさまじい勢ひ、おそろしい力である〉と記して[20]、都市景観の破壊的変化を危惧し[20]、後に東山魁夷『京洛四季』に寄せた序文でも同様のことを述べて、〈京都は今描いといていただかないとなくなります〉と東山にしきりに勧めて[21]、〈みにくい安洋館〉が建ちはじめて、〈町通りから山が見えなくなつたのである。山の見えない町なんて、私には京都ではない〉という歎きを記している[21]。
野口祐子はこういった川端の危機感を踏まえて、川端が『古都』を四季で構成したのは、安易な方法ではなく、時代への批判精神であり、そこで試みたのは、高度経済成長期の日本に対する「ささやかな抵抗」であるとし[12]、川端が東山へ送った言葉を自ら行なった創作が『古都』であったと解説しながら[12]、「『古都』の、時代から遊離したかのごとく感じられる古風な京都イメージと登場人物、そして円環的時間間隔と物語性の欠落は、川端の京都を古都として描き残そうとする使命感のなせるわざだったと言えるだろう」と論じている[12]。
呉悦は、『古都』の書かれた当時の急速な近代化の日本社会を鑑み、川端がその流れに反して、主人公の少女たちを「単純」「純潔」に表現し、「少女特有の恥じらい」を溢れさせているとし[22]、他の登場人物も古い土地で代々伝わる家業を守り暮らしている設定であり、その主題の中には、徐々に失われてゆく伝統風景や自然の生命、人間社会への厭世と裏腹の人間愛、近代化の波による過去に対する懐かしさなどが入り混じっていると解説している[22]。そして戦後、世の中の価値観の変動を目の当たりにした川端が述べていた以下の随筆の言葉を引きながら、川端が〈現実を信じない[23]〉結果、「日本の伝統的故郷に対する愛を徹底的に」描き出すことに情熱を傾けたのが『古都』だと論じている[22]。
戦争中、殊に敗戦後、日本人には真の悲劇も不幸も感じる力がないといふ、私の前からの思ひは強くなつた。感じる力がないといふことは、感じられる本体がないといふことであらう。敗戦後の私は日本古来の悲しみのなかに帰つてゆくばかりである。私は戦後の世相なるもの、風俗なるものを信じない。現実なるものをあるひは信じない。 — 川端康成「哀愁」[23]
そして呉悦は、川端が『古都』において、「懸命に理想的世界を作り、純粋な人物を登場させているにもかかわらず、人物は悲哀に富んだ人生を辿ることから、川端の現実社会に対する失望、不信感が窺える」とし[22]、作中に漂う哀愁や、〈運命〉という言葉の繰り返しは、「変えられない運命に左右される時の作者の感嘆」であり、その後幻想的な世界観の『片腕』を描き、現実からかけ離れた道を辿っていったのは、西欧近代化の波と伝統との葛藤が強まった川端の、「日本の伝統を必死に守ろうにも守りきれなかったという現実に対する無力感の現れ」ではないかと考察しながら[22]、新感覚派の旗手として西欧思想を取り入れ欧米に学んだ後に日本伝統回帰を経て、不思議な作品を創出し、最後は自殺してしまった川端自身の運命について言及している[22]。
山田吉郎は、川端が巨木を愛していたことから北山杉との関連などに触れつつ、『古都』の物語の深層に「霊界との交信」を看取し[24]、川端の主治医だった栗原雅直が『古都』の双子について、「やはりナルシシスムとは言うものの、見ぬ母への空想的な愛情要求の変形としてとることができ、見る自分と見られる自分という鏡の世界、
また山田は、作中に見られる〈魔界〉の要素として、北山杉の村に向うバスの中で、手錠をかけられている若い男が千重子に声をかける場面などを指摘している[24]。
舞台化
[編集]映画化
[編集]テレビドラマ化
[編集]- 文芸劇場(第107回)『古都』(NHK)
- ライオン奥様劇場『古都』(フジテレビ)
- 花王愛の劇場『古都』(TBS)
- 関西テレビ開局30周年スペシャル『古都』(KTV)
- 月曜特集特別企画・日本名作ドラマ『古都』(テレビ東京)
- 土曜ワイド劇場・ドラマスペシャル『古都』(テレビ朝日)
おもな刊行本
[編集]単行本
[編集]- 『古都』(新潮社、1962年6月25日) NCID BN04763724
- 文庫版『古都』(新潮文庫、1968年8月27日。改版2010年1月15日)
- カバー装幀:ケルスティン・ティニ・ミウラ。解説:山本健吉
- 付録:川端康成「あとがき」(初刊本と同じ)
- 豪華限定版『古都』(牧羊社、1973年5月25日)
- 菊倍判変形枡形本。紅葉装700部限定。松山装350部限定。
- 装幀・挿画:東山魁夷。
- 付録:東山魁夷「限定本『古都』の造本、装画について」。川端康成「あとがき」(初刊本と同じ)
- 特装本『古都』(牧羊社、1973年) 限定30部
- 装幀・木版口絵:東山魁夷。題字:川端康成。自筆表紙絵「光悦垣」
- 英文版『The Old Capital』(訳:J・マーティン・ホルマン)(Tuttle、1987年)
全集
[編集]- 『川端康成全集第12巻 古都・片腕・落花流水』(新潮社、1970年5月10日) - 全19巻本全集
- 『川端康成全集第18巻 小説18』(新潮社、1980年3月20日) - 全35巻本・補巻2全集
派生作品・オマージュ作品
[編集]※出典は[31]
脚注
[編集]- ^ 山本健吉「解説」(古都文庫 2010, pp. 271–278)
- ^ a b c 上田渡「古都」(事典 1998, pp. 153–155)
- ^ 「第9章 抱擁する『魔界』――たんぽぽ」(富岡 2015, pp. 199–224)
- ^ a b c d e 「解題――古都」(小説18 1980, pp. 588–589)
- ^ 「作品年表――昭和36年(1961)から昭和37年(1962)」(雑纂2 1983, pp. 570–573)
- ^ a b c d e f 川端康成「あとがき」(『古都』新潮社、1962年6月)。古都12巻 1970、古都文庫 2010, pp. 267–270再録。評論5 1982, pp. 660–662に所収
- ^ 「著書目録 一 単行本――139」(雑纂2 1983, p. 611)
- ^ 「翻訳書目録――古都」(雑纂2 1983, pp. 656–658)
- ^ 現:京都市中京区の株式会社龍村美術織物
- ^ a b 野末明「『古都』成立考」(『康成・鴎外―研究と新資料―』審美社、1997年11月)。森本・下 2014, p. 346,366-367
- ^ 伊吹 1997
- ^ a b c d 野口 2009
- ^ 「『古都』作者の言葉」(朝日新聞 1961年10月4日号)。評論5 1982, p. 175に所収
- ^ a b 塚田満江「『古都』うらおもて」(作品研究 1969, pp. 308–323)
- ^ 桑原武夫「川端康成氏との一夕」(文藝春秋 1972年6月号)
- ^ 「『古都』を書き終えて」(朝日新聞 1962年1月29日-31日号)。古都12巻 1970、評論5 1982, pp. 180–186に所収
- ^ a b 三谷 1995
- ^ 高橋 2001
- ^ 田村充正「川端文学、美の反響――『古都』秘められた亡き姉への思慕」(太陽 2009, pp. 132–133)
- ^ a b c 「自慢十話・町づくり」(毎日新聞 1962年8月7日号)。古都12巻 1970、随筆3 1982, pp. 158–179に所収
- ^ a b 「都のすがた――とどめおかまし」(東山魁夷『京洛四季』序文)(1969年)。随筆3 1982, pp. 508–533、一草一花 1991, pp. 229–238に所収
- ^ a b c d e f 呉悦 2011
- ^ a b 「哀愁」(社会 1947年10月号)。『哀愁』(細川書店、1949年12月)、随筆2 1982, pp. 388–396、随筆集 2013に所収
- ^ a b c d 山田吉郎「『古都』の精神構造」(『川端康成研究叢書8』教育出版センター、1980年11月)。森本・下 2014, pp. 368–369, 566に抜粋掲載
- ^ 「寒風の母――川端作品の血縁構造〈五 女性的なるもの〉2 とりちがえ、双生児の姉妹」(NAMAZU 1981年5月・第5号)。栗原 1986, pp. 175–183に所収。森本・下 2014, p. 369に抜粋掲載
- ^ a b 志村三代子「川端康成原作映画事典――34『古都』」(川端康成スタディーズ 2016, pp. 255–256)
- ^ “松雪泰子が橋本愛と成海璃子の母親演じる「古都」、川端康成の小説を現代にアレンジ”. 映画ナタリー. (2016年6月15日) 2016年6月15日閲覧。
- ^ 松雪泰子が橋本愛と成海璃子の母親演じる「古都」、川端康成の小説を現代にアレンジ(2016年6月15日)、映画ナタリー、2016年10月7日閲覧。
- ^ 志村三代子「川端康成原作映画事典――42『古都』」(川端康成スタディーズ 2016, p. 262)
- ^ “松雪泰子主演「古都」、文部科学省特別選定作品に決定!”. 映画.com (株式会社エイガ・ドット・コム). (2016年8月26日) 2018年10月30日閲覧。
- ^ 恒川茂樹「川端康成〈転生〉作品年表【引用・オマージュ篇】」(転生 2022, pp. 261–267)
参考文献
[編集]- 川端康成『川端康成全集第12巻 古都・片腕・落花流水』新潮社、1970年5月。NCID BN06162656。
- 川端康成『川端康成全集第18巻 小説18』新潮社、1980年3月。ISBN 978-4106438189。
- 川端康成『川端康成全集第27巻 随筆2』新潮社、1982年3月。ISBN 978-4106438271。
- 川端康成『川端康成全集第28巻 随筆3』新潮社、1982年2月。ISBN 978-4106438288。
- 川端康成『川端康成全集第33巻 評論5』新潮社、1982年5月。ISBN 978-4-10-643833-2。
- 川端康成『川端康成全集第35巻 雑纂2』新潮社、1983年2月。ISBN 978-410643835-6。
- 川端康成『古都』(改版)新潮社〈新潮文庫〉、2010年1月。ISBN 978-4101001210。 - 初版は1968年8月。
- 川端康成『一草一花』講談社〈講談社文芸文庫〉、1991年3月。ISBN 978-4061961180。
- 川端康成『川端康成随筆集』岩波書店〈岩波文庫〉、2013年12月。ISBN 978-4003108154。
- 伊吹和子『川端康成――瞳の伝説』PHP研究所、1997年4月。ISBN 978-4569555966。
- 栗原雅直『川端康成――精神医学者による作品分析』中央公論新社〈中公文庫〉、1986年5月。ISBN 978-4122013247。
- 呉悦「川端康成と沈従文における伝統への回帰―『古都』と『辺城』の比較を中心として」『多元文化』第11号、名古屋大学国際言語文化研究科国際多元文化、15-28頁、2011年3月。 NAID 120002933905。
- 坂井セシル; 紅野謙介; 十重田裕一 ほか 編『川端康成スタディーズ ――21世紀に読み継ぐために』笠間書院、2016年12月。ISBN 978-4305708229。
- 仁平政人; 原善; 藤田祐史 編『〈転生〉する川端康成 1――引用・オマージュの諸相』文学通信、2022年11月。ISBN 978-4909658890。
- 高橋真理「『山の音』その他―『禁』の構造、『虚』の時間」『明星大学研究紀要』第9号、明星大学日本文化学部・言語文化学科、49-56頁、2001年3月25日。 NAID 110001023165。
- 富岡幸一郎『川端康成 魔界の文学』岩波書店〈岩波現代全書031〉、2014年5月。ISBN 978-4000291316。
- 野口祐子「川端康成『古都』におけるすみれの花と時間感覚」『京都府立大学学術報告・人文』第61号、京都府立大学、39-52頁、2009年12月。 NAID 110008138628。
- 羽鳥徹哉; 原善 編『川端康成全作品研究事典』勉誠出版、1998年6月。ISBN 978-4-585-06008-6。
- 羽鳥徹哉監修『別冊太陽 日本のこころ157 川端康成――蒐められた日本の美』平凡社、2009年2月。ISBN 978-4582921571。
- 長谷川泉 編『川端康成作品研究』八木書店〈近代文学研究双書〉、1969年3月。NCID BN01844524。 増補版1973年1月。
- 保昌正夫 編『新潮日本文学アルバム16 川端康成』新潮社、1984年3月。ISBN 978-4106206160。
- 三谷憲正「川端康成『古都』論――〈衰滅〉の予兆と萌芽の予感と」『稿本近代文学』第20号、筑波大学、134-147頁、1995年11月。 NAID 110000437717。
- 森本穫『魔界の住人 川端康成――その生涯と文学 下巻』勉誠出版、2014年9月。ISBN 978-4585290766。