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'''アジサイ'''(紫陽花、[[英語|英名]]・[[学名]]: {{Lang|la|Hydrangea}})は[[アジサイ科]]アジサイ属の[[植物]]の総称である。学名は「水の容器」という意味で、そのまま「ヒドランジア」あるいは「ハイドランジア」ということもある。また、英語では「ハイドレインジア」と呼ぶ。
'''アジサイ'''(紫陽花、[[学名]] {{snamei|Hydrangea}})は[[アジサイ科]]アジサイ属の[[植物]]の総称である。学名は「水の容器」という意味で、そのまま「ヒドランジア」あるいは「ハイドランジア」ということもある。また、英語では「ハイドレインジア」と呼ぶ。


最も一般的に植えられている球状のアジサイは'''セイヨウアジサイ'''(ヒメアジサイ・テマリ咲きアジサイは別)であり、日本原産の'''ガクアジサイ'''({{snamei|Hydrangea macrophylla}})を改良した品種である。
== 概要 ==
いわゆる最も一般的に植えられている球状のアジサイは'''セイヨウアジサイ''' (ヒメアジサイ・テマリ咲きアジサイは別) であり、日本原産の'''ガクアジサイ''' (Hydrangea macrophylla) を改良した品種である。


== 名称 ==
樹高は 1-2 メートル。[[葉]]は光沢のある淡緑色で葉脈のはっきりした卵形で、周囲は鋸歯状。6 月から 7 月に紫(赤紫から青紫)の[[花]]を咲かせる。一般に花と言われている部分は装飾花で、おしべとめしべが退化しており(中性花)、花びらに見えるものは萼(がく)である。ガクアジサイでは密集した両性花の周囲にいくつかの装飾花がみられるが、セイヨウアジサイではほとんどが装飾花となっている。また、装飾花の欠如した変異もある(ガクアジサイ「三河千鳥」など)。
アジサイの語源ははっきりしないが、最古の和歌集『[[万葉集]]』では「味狭藍」「安治佐為」、[[平安時代]]の辞典『[[和名類聚抄]]』では「阿豆佐為」の字をあてて書かれている<ref name="山本12">[[#山本|山本 (1981)]]、12頁。</ref>。もっとも有力とされているのは、「[[藍色]]が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」がなまったものとする説である<ref name="山本12" />。そのほか、「味」は評価を<ref group="注">「味のある絵」「味な趣向」などの用法における味。</ref>、「狭藍」は花の色を示すという[[谷川士清]]の説、「集まって咲くもの」とする[[山本章夫]]の説(『万葉古今動植物正名』)、「厚咲き」が転じたものであるという[[貝原益軒]]の説がある<ref name="山本12" />。


花の色がよく変わることから、「七変化」「八仙花」とも呼ばれる<ref>[[#山本|山本 (1981)]]、8頁。</ref><ref>[[#武田|武田 (1996)]]、105頁。</ref>。
「あじさい」の名は「[[藍色]]が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」が訛ったものと言われる。また[[漢字]]表記に用いられる「紫陽花」は唐の詩人・[[白居易]]が別の花に名付けたもので、[[平安時代]]の学者・[[源順]]がこの漢字をあてはめたことから誤って広まったといわれている。


日本語で漢字表記に用いられる「紫陽花」は唐の詩人・[[白居易]]が別の花に名付けたもので、平安時代の学者・[[源順]]がこの漢字をあてはめたことから誤って広まったといわれている<ref>[[#山本|山本 (1981)]]、14頁。</ref>。[[艸部|草冠]]の下に「便」を置いた字が『新撰字鏡』にはみられ、「安知佐井」のほか「止毛久佐」の字があてられている。アジサイ研究家の山本武臣は、アジサイの葉が便所で使われる地域のあることから、止毛久佐は普通トモクサと読むが、シモクサとも読むことができると指摘している<ref name="山本13">[[#山本|山本 (1981)]]、13頁。</ref>。また『[[言塵集]]』にはアジサイの別名として「またぶりぐさ」が挙げられている<ref name="山本13" />。
=== 花の色 ===
花(正確には萼)の色は、[[アントシアニン]]のほか、その発色に影響する補助色素(助色素)や、土壌の [[水素イオン指数|pH]] (酸性度)、[[アルミニウム]][[イオン]]量、さらには開花からの日数によって様々に変化する。そのため、「七変化」とも呼ばれる。一般に「土壌が酸性ならば青、アルカリ性ならば赤」と言われているが、'''土壌の pH (酸性度)は花色を決定する要因の一つに過ぎない'''。花弁(正確には装飾花)に含まれる補助色素によっては青になり得ない、またはなり難いものがあるほか、pH は地中のアルミニウムがイオン化する量を左右する要因に過ぎないため、仮に酸性土壌であっても地中のアルミニウムの量が少なければ花が青色になることはない。また、初めは青かった花も、咲き終わりに近づくにつれて赤みがかかっていく。


学名のハイドランゲア {{snamei|Hydrangea}} はギリシア語の {{lang|el|&#x1F55;&delta;&rho;&omicron;}}<ref group="注">ラテン文字翻字:{{ラテン翻字|el|hydro}}</ref>(水)と {{lang|el|&alpha;&nu;&gamma;&epsilon;&iota;&omicron;&nu;}}<ref group="注">ラテン文字翻字:{{ラテン翻字|el|angeion}}</ref>(容器)に由来する<ref name="山本15">[[#山本|山本 (1981)]]、15頁。</ref>。果実の形によるという説もある<ref name="山本15" />。
花の色が緑色になることがあり、観賞用として緑の花が販売されることもある。花が緑色の品種もあるが、日本では[[ファイトプラズマ]]感染による「アジサイ葉化病」に罹ったものも稀にみられる<ref>[http://www.agri-kanagawa.jp/nosoken/kankyo/2007/ajisaiyouka200711.htm アジサイ葉化病について] - 神奈川県農業技術センター</ref>。この病気の治療法はまだなく、感染拡大を避けるため発病株の処分が求められる。


[[フィリベール・コメルソン]]と[[ジャン=バティスト・ラマルク]]は、[[モーリシャス]]で栽培されていた植物を {{snamei|Hortensia oploides}} と命名し<ref name="山本15" /><ref name="マレー240">[[#マレー|マレー (2009)]]、240頁。</ref>、フランス語や英語、西ヨーロッパの言語では「ホルテンシア (hortensia)」 とも呼ばれる。これはオルタンス (Hortanse) という実在の女性の名をとったものである<ref name="マレー240" />。[[アントワーヌ・ローラン・ド・ジュシュー]]が著書でそのことを発表したが<ref name="山本15" />、誰のことであるかは明らかにされていなかった。コメルソンが[[ブーゲンビル島]]への航海に男装させ同行させたバレーという娘であるとか、オルタンス王女であるとか、当時有名であった時計や実験器具の製作者の妻であるとかの説があり<ref>[[#山本|山本 (1981)]]、15–16頁。</ref>、有力であるとされるのは<ref>[[#マレー|マレー (2009)]]、240–241頁。</ref>、コメルソンに協力したナッサウ=ジーゲン公爵家の娘であるというものである。
== 毒性 ==
アジサイは毒性があり、[[ウシ]]、[[ヤギ]]、[[ヒト|人]]などが'''摂食すると中毒を起こす'''。症状は過呼吸、興奮、ふらつき歩行、[[痙攣]]、[[麻痺]]などを経て死亡する場合もある。日本では、飲食店などが毒性を持つアジサイの性質を知らずに料理に使用してしまい、経口摂取した客が中毒する事故が発生している<ref>[http://www.asahi.com/health/news/OSK200806300067.html アジサイの葉食べ食中毒 大阪市の居酒屋で] - 朝日新聞 2008年6月30日配信</ref>。


また、[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト|シーボルト]]はアジサイの一種に自分の妻「おタキさん」の名をとって {{snamei|Hydrangea otaksa}} と命名し、物議をかもしたことが知られている<ref>[[#山本|山本 (1981)]]、16頁。</ref><ref name="マレー241">[[#マレー|マレー (2009)]]、241頁。</ref>。
アジサイには[[青酸]][[配糖体]](グリコシド)が含まれており、それが中毒の原因であると考えられている。ただし、[[農業・食品産業技術総合研究機構]][[動物衛生研究所]]によると、原因物質は青酸配糖体ではなく、別の物質の可能性があるとしている<ref>[http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poisoning/plants/hydrangea.html アジサイ] - 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所</ref>。[[厚生労働省]]の課長通知においても、アジサイに青酸配糖体が含まれていることについての知見が十分ではないことから、2008年8月18日付けで「アジサイの喫食による青酸食中毒について (2008年7月1日) 」の文書を廃止している<ref>{{PDFlink|[http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/080818a.pdf アジサイの喫食による食中毒について]}} 厚生労働省 - 2008年8月18日</ref>。
<!--対症療法として、[[亜硝酸ナトリウム]]や[[チオ硫酸ナトリウム]]の静脈内投与が有効。-->


== 特徴 ==
*'''毒成分''' アミグダリン (amygdalin) 、アントシアニン (anthocyanin) 、ヒドラゲノシド A、グリコシド(上記参照)
樹高は1–2メートル。[[葉]]は光沢のある淡緑色で葉脈のはっきりした卵形で、周囲は鋸歯状。6月から7月に紫(赤紫から青紫)の[[花]]を咲かせる。一般に花といわれている部分は装飾花で、おしべとめしべが退化しており(中性花)、花びらに見えるものは萼(がく)である。ガクアジサイでは密集した両性花の周囲にいくつかの装飾花がみられるが、セイヨウアジサイではほとんどが装飾花となっている。また、装飾花の欠如した変異もある(ガクアジサイ「三河千鳥」など)。
*'''毒部位''' 蕾、葉、根

*'''毒症状''' めまい、嘔吐、痙攣、昏睡、呼吸麻痺
=== 花の色 ===
花(萼)の色は[[アントシアニン]]という色素によるもので、アジサイにはその一種のデルフィニジンが含まれている。これに補助色素(助色素)と[[アルミニウム]]の[[イオン]]が加わると、青色の花となる<ref>[[#武田|武田 (1996)]]、98–99頁。</ref>。

土壌の[[水素イオン指数|pH]](酸性度)によって花の色が変わり、一般に「酸性ならば青、アルカリ性ならば赤」といわれている。これは、アルミニウムが根から吸収されやすいイオンの形になるかどうかに、pHが影響するためである。すなわち、土壌が酸性だとアルミニウムが溶け出し、吸収されて花が青色となる。逆に中性やアルカリ性であれば、アルミニウムは溶け出さず吸収されないため、花は赤色となる<ref>[[#武田|武田 (1996)]]、102頁。</ref>。したがって、花を青色にしたい場合は、酸性の[[肥料]]や、アルミニウムを含む[[ミョウバン]]を与えればよい<ref>[[#武田|武田 (1996)]]、103頁。</ref>。同じ株でも部分によって花の色が違うのは、根から送られてくるアルミニウムの量に差があるためである<ref>[[#武田|武田 (1996)]]、100頁。</ref>。花(萼)1グラムあたりに含まれるアルミニウムの量が、およそ40マイクログラム以上だと青色になると見積もられている<ref>{{cite journal|author=Schreiber, H. D.; Jones, A. H.; Lariviere, C. M.; Mayhew, K. M.; Cain, J. B.|year=2011|title=Role of aluminum in red-to-blue color changes in ''Hydrangea macrophylla'' sepals|journal=Biometals|volume=24|number=6|pages=1005–1015|pmid=21584711}}</ref>。品種によっては遺伝的な要素で花が青色にならないものもある。これは補助色素が原因であり、もともと量が少ない品種や、効果を阻害する成分を持つ品種は、アルミニウムを吸収しても青色にはなりにくい<ref>[[#武田|武田 (1996)]]、103–104頁。</ref>。

また、開花から日を経るに従って、花の色は変化する<ref name="武田105-107">[[#武田|武田 (1996)]]、105–107頁。</ref>。最初は含まれる[[葉緑素]]のため薄い黄緑色で、徐々に分解されていくとともにアントシアニンや補助色素が[[生合成]]され、赤や青に色づいていく<ref name="武田105-107" />。さらに日が経つと[[有機酸]]が蓄積されてゆくため、青色の花も赤味を帯びるようになる{{#tag:ref|アントシアニンそのものも酸性度によって色が変化する<ref>[[#武田|武田 (1996)]]、65頁。</ref>。|group=注}}。これは花の老化によるものであり、土壌の変化とは関係なく起こる<ref>[[#武田|武田 (1996)]]、107頁。</ref>。

花の色が緑になることがあり、観賞用として緑の花が販売されることもある。花が緑色の品種もあるが、日本では[[ファイトプラズマ]]感染による「アジサイ葉化病」にかかったものも稀にみられる<ref name="河原田175">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、175頁。</ref><ref>{{cite web|url=http://www.agri-kanagawa.jp/nosoken/kankyo/2007/ajisaiyouka200711.htm|title=アジサイ葉化病について|publisher=神奈川県農業技術センター|date=2007-11-01|accessdate=2012-06-16}}</ref>。この病気の治療法は知られておらず、感染拡大を避けるため発病株は処分したほうがよいとされる<ref name="河原田175" />。


== 分類と品種 ==
== 分類と品種 ==
[[ファイル:Hydrangea macrophylla f normalis2.jpg|thumb|ガクアジサイ ''H. macrophylla'']]
エングラーの分類体系では「ユキノシタ科アジサイ属」になっているが、[[クロンキスト体系]]ではユキノシタ科の木本類をアジサイ科として分離独立させている。
エングラーの分類体系ではユキノシタ科アジサイ属とされていたが、[[クロンキスト体系]]ではユキノシタ科の木本類をアジサイ科として分離独立させた<ref name="河原田9">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、9頁。</ref><ref name="佐藤">{{cite journal|和書|author=佐藤嘉彦|title=アジサイ(広義)の葉の解剖学的研究|journal=横浜国立大学理科教育実習施設研究報告|volume=5|pages=15–26頁|year=1989|naid=110006151494}}</ref>。アジサイ属はアジサイ節 (Sect. ''Hydrangea'')、クスノハアジサイ節 (Sect. ''Cornidia'')、ツルアジサイ節 (Sect. ''Calyptranthe'') の3節に分けられる<ref>{{cite book|author=Haworth-Booth, Michael|year=1975|title=The Hydrangeas|location=London|publisher=Constable|page=46|isbn=0094603707}}</ref>。アジサイ属の野生種としては、日本には14種・1亜種・6変種がある<ref>[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、5頁。</ref>。
アジサイ属の野生種としては、日本には以下のようなものがある。


=== アジサイ節 ===
まず次の種がアジサイの原種と栽培種であるが、野性でも変異が多い種である。
==== アジサイ亜節 ====
* ガクアジサイ ''H. macrophylla'' Sieb. f. ''normalis'' (Wilson) Hara
アジサイ亜節 (Subsect. ''Macrophyllae'') にはガクアジサイ、[[ヤマアジサイ]]、ハイドランゲア・スティロサの3種が含まれ、いずれもアジアにのみ自生する<ref name="マレー61">[[#マレー|マレー (2009)]]、61頁。</ref>。白色または有色の花を付ける<ref name="マレー61" />。通常、[[花序]](花の並び方)は中央に両性花があってその周りを中性花(装飾花)が囲んだ平坦な形であるが、まれにほとんどが中性化からなる球形の花序が生じる<ref name="マレー61" /><ref name="山本17">[[#山本|山本 (1981)]]、17頁。</ref>。両性花は種を作るが、中性花は結実しない<ref name="山本17" />。基部から枝分かれする低木であるという点は共通するが、高さは種により異なる<ref name="マレー61" />。種子は卵形または長い楕円形で、長さは0.5–1ミリである<ref>[[#北村|北村、村田 (1979)]]、112頁。</ref>。ガクアジサイとヤマアジサイとは自然雑種ハイドランゲア・セロトフィラ ''H. × serratophylla'' を生じるが<ref name="マレー61" />、これらを人為的に交配させることによって、多くの栽培品種が作り出されている<ref>[[#マレー|マレー (2009)]]、62頁。</ref>。6月から8月にかけて花を咲かせる<ref name="マレー61" />。
** アジサイ f. ''macrophylla''
* ガクアジサイ ''H. macrophylla'' ({{Taxonomist|Thunberg}}) {{Taxonomist|Seringe}} - 房総半島、三浦半島、伊豆半島、伊豆諸島、足摺岬で海岸に自生する<ref name="北村114">[[#北村|北村、村田 (1979)]]、114頁。</ref><ref name="河原田26">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、26頁。</ref>。このためハマアジサイとも呼ばれる<ref name="河原田26" />。高さは2メートル程度だが<ref name="北村114" />、4メートルに達することもある<ref name="マレー61" />。花序は多数の両性花を中心として、装飾花が周りを縁取る<ref name="北村114" />。名称の「ガク」はこのさまを額縁になぞらえたものである<ref name="河原田26" />。花序は直径12–18センチ、装飾花は直径3–6センチで色は白色・青色・淡青緑色・または淡赤紫色<ref name="北村114" />、両性花は濃紫色である<ref name="河原田26" />。葉は厚く、大きく(長さ10–18センチ<ref name="北村114" />)、種小名 macro (大きい) pyllus (葉)の由来となっている<ref name="河原田26" />。葉の表面は濃緑色で光沢がある<ref name="北村114" />。栽培品種に ‘花火’、‘城ヶ崎’ などがある<ref>[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、8、34、36頁; [[#マレー|マレー (2009)]]、66–67頁。</ref>。
** セイヨウアジサイ f. ''hortensia''
** アジサイ ''H. macrophylla'' var. ''macrophylla'' - 日本原産のガクアジサイの[[品種]]だが、自生しているという説もあり<ref name="河原田27" />、起源ははっきりしない<ref name="北村115">[[#北村|北村、村田 (1979)]]、115頁。</ref>。他のアジサイとの区別のためホンアジサイとも呼ばれる<ref name="河原田27">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、27頁。</ref>。花序はほとんど装飾花のみからなり、種子ができるのはまれであるため、挿し木や株分けで増やす<ref name="北村114" />。花序の大きさは20–25センチ程度である<ref name="北村114" />。古く日本から中国へ伝わったものが、18世紀にさらにヨーロッパへと持ち込まれ、多くの園芸品種が作られた<ref name="北村115" />。日本では輸入したものがセイヨウアジサイとも呼ばれる。かつて、[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト|シーボルト]]はこの品種を ''H. otaksa'' と命名したが、学名としては現在では使われていない<ref>[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、7頁。</ref>。
** ヤマアジサイ(サワアジサイ) ''H. macrophylla'' subsp. ''serrata'' (Thumb.) Makino
* [[ヤマアジサイ]] ''H. serrata'' (Thunberg) Seringe - 本州では関東より西、また四国、九州などの山地に分布する<ref name="北村116">[[#北村|北村、村田 (1979)]]、116頁。</ref>。千島列島、台湾、中国南部の山地にもみられる<ref name="マレー61" />。山中で沢によく見られることからサワアジサイとも呼ばれる<ref name="河原田88">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、88頁。</ref>。ガクアジサイと比べ、花の色が多様性に富む<ref name="河原田88" />。花序は直径7–18センチ、装飾花は直径1.7–3センチ<ref name="北村116" />。葉質は薄く光沢がなく、小さく(6.5–13センチ<ref name="北村116" />)、長楕円形・楕円形・円形など形はさまざまである<ref name="河原田88" />。枝は細く、樹高1メートル程度である<ref name="北村116" />。葉に[[フィロズルチン]]の配糖体を含むものがあり、[[甘茶]]として利用される<ref name="北村116" /><ref name="山本18">[[#山本|山本 (1981)]]、18頁。</ref>。「甘茶(アマチャ)」は分類上特定の品種を指す名称ではない<ref>[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、91頁。</ref>。ヤマアジサイは分布域が広く、いくつかの亜種がある。
*** [[アマチャ]]はこの変種
** [[エゾアジサイ]] ''H. serrata'' subsp. ''yezoensis'' ({{Taxonomist|Koidz.}}) {{Taxonomist|Kitam.}} - ヤマアジサイの亜種。東北地方・北陸地方・北海道、および朝鮮南部に分布する<ref name="北村116" /><ref name="マレー75">[[#マレー|マレー (2009)]]、75頁。</ref>。高さ1–1.5メートルで<ref name="北村116" />、北海道のものは本州のものより大きい<ref name="マレー75" />。花序は直径10–17センチ<ref name="北村116" />、普通青色や青紫色だが白・ピンク・ほとんど赤色のものもある<ref name="山本18" /><ref name="マレー75" />。葉はヤマアジサイよりも大きく(10–17センチ)、ふちの鋸刃も鋭い<ref name="北村116" />。花期は5月中旬から6月中旬である<ref name="河原田89">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、89頁。</ref>。
** [[エゾアジサイ]] subsp. ''yezoensis'' (Koidzumi) Kitamura
** アマギアマチャ ''H. serrata'' subsp. ''angustata'' ([[アドリアン・ルネ・フランシェ|Franch.]] & {{Taxonomist|Savatier}}) Kitam. - ヤマアジサイの亜種。富士山・[[天城山]]周辺<ref name="マレー73">[[#マレー|マレー (2009)]]、73頁。</ref>、静岡市梅ヶ島、[[箱根]]<ref name="北村117">[[#北村|北村、村田 (1979)]]、117頁。</ref>に自生する。花はすべて白く<ref name="マレー73" />、葉はヤマアジサイより細い<ref name="北村117" />。生の葉は甘苦い<ref name="北村117" />。
** ベニガク ''H. macrophylla'' f. ''rosalba'' ({{Taxonomist|Van Houtte}}) {{Taxonomist|Ohwi}} - 南日本の山地にみられる<ref name="マレー73" />。江戸時代から栽培されている品種である<ref name="河原田97">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、97頁。</ref>。装飾花は白色だが日光に当たると赤みを帯びる<ref name="河原田97" />。葉は厚く楕円形で<ref name="北村117" />、秋に紅葉する<ref name="マレー73" />。
** シチダンカ ''H. serrata'' cv. ‘prolifera’ - ヤマアジサイの栽培品種で、萼が星型で重なっている<ref name="山本20">[[#山本|山本 (1981)]]、20頁。</ref>。江戸時代から知られ、シーボルトが『フローラ・ヤポニカ』で報告していたものの発見例がなく、絶滅した「幻のアジサイ」とされていたが、1959年に[[六甲山]]で再発見された<ref name="山本20" /><ref>[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、98頁。</ref>。葉は卵形で、エゾアジサイに近い<ref name="北村117" />。
* ハイドランゲア・スティロサ ''H. stylosa'' [[ジョセフ・ダルトン・フッカー|J. D. Hooker]] & [[トーマス・トムソン (植物学者)|Thomson]] - [[ブータン]]、[[ベトナム]]原産の種である<ref name="河原田9">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、9頁。</ref>。山地にのみ生える<ref name="マレー61" />。花はガクアジサイに似るが、色は薄い<ref name="河原田9" />。
<gallery>
ファイル:Gakuajisai6213.jpg|ガクアジサイ
ファイル:Hydrangea macrophylla 02.jpg|アジサイ
ファイル:yamaajisai 02.jpg|ヤマアジサイ
ファイル:エゾアジサイ Hydrangea serrata var. megacarpa.JPG|エゾアジサイ
ファイル:Hydrangea macrophylla subsp yesoensis f prolifera1.jpg|シチダンカ
ファイル:Bigleaf Hydrangea Hydrangea macrophylla 'Tokyo Delight' Pink 3008px.jpg|種間雑種の品種 ‘東京デライト’
</gallery>


==== タマアジサイ亜節 ====
全くの別種になるのが以下のものである。
* [[ヤハズアジサイ]] ''H. sikokiana'' Maximowicz
[[ファイル:Tamaajisai-tsubomi.JPG|thumb|タマアジサイ ''H. involucrata'' のつぼみ]]
タマアジサイ亜節 (Subsect. ''Asperae'') に含まれる種はすべてアジア原産で、ネパール、中国、台湾、インドネシア、日本に分布する<ref name="マレー29">[[#マレー|マレー (2009)]]、29–31頁。</ref>。いずれも温暖な気候の山地に自生するが、中国やネパールには厳しい気候に耐えるものもある<ref name="マレー29" />。高さ1.5–5メートルの低木であり<ref name="マレー29" />、葉は大きく(10–23センチ<ref>[[#北村|北村、村田 (1979)]]、111頁。</ref>)表面は粗く、花序は散房形で丸みを帯びる<ref name="マレー29" />。花期は6月から9月に始まる<ref name="マレー29" />。
* [[タマアジサイ]] ''H. involucrata'' Sieb.
* [[タマアジサイ]] ''H. involucrata'' Siebold - 東北地方南部、福島より南の関東地方、岐阜県までの中部地方の林地に自生する<ref name="北村113">[[#北村|北村、村田 (1979)]]、113頁。</ref><ref name="河原田18">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、18頁。</ref>。つぼみが球形であることから名付けられた<ref name="北村113" />。高さ約1.5メートル程度で、葉は長さ10–21センチの楕円形で先がとがる<ref name="北村113" />。葉や幹など全体に短毛が生えており、ざらつく<ref name="河原田18" /><ref name="北村113" />。装飾花は大きさ20–32ミリで白色、両性花は大きさ2–5ミリで紫色であり<ref name="北村113" />、花序は直径10–15センチである<ref name="北村113" />。つぼみの大きさは径1.5センチ、長さ1.2センチ程度で、開花に従い包んでいた[[苞]](ほう)は落ちる<ref name="北村113" />。山地で自生する場合、花は8–9月に咲くが<ref name="北村113" />、平地で栽培しているものは6–7月ごろに咲き始める<ref name="河原田18" />。かつて[[タバコ]]の代用品や混ぜものとして使われ、「ヤマタバコ」の別名がある<ref name="河原田18" /><ref>[[#山本|山本 (1981)]]、109、133頁。</ref>。
* [[ヤハズアジサイ]] ''H. sikokiana'' {{Taxonomist|Maxim.}} - 紀伊半島、四国、九州南部の湿った山地に自生する<ref name="北村112">[[#北村|北村、村田 (1979)]]、112頁。</ref><ref name="河原田154">[[#河原田|河原田、三上、若林 (2010)]]、154頁。</ref>。葉の先が分かれ、[[矢羽]]・矢筈(やはず)に似ることから名が付けられた<ref name="北村112" /><ref name="河原田154" />。葉は幅の広い楕円形で大きく(長さ12–23センチ<ref name="北村112" />)、切れ込みがあるのが特徴である<ref name="マレー29" />。花期は7–8月で、ふちの装飾花は白く小さく<ref name="河原田154" />、花序の大きさは20–25センチである<ref name="北村112" />。葉を傷つけると[[ウリ]]のにおいがし、方言では「ウリバ」「ウリノキ」と呼ばれる<ref>[[#山本|山本 (1981)]]、133頁。</ref>。
* ヒマラヤタマアジサイ ''H. aspera''
* タイワンゴトウヅル ''H. kawakami''
* ナガバアジサイ ''H. longifolia''
* ''H. glabripes''
* ''H. longipes''
* ''H. sargentiana''
* ''H. strigosa''
* ''H. villosa''
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ファイル:Tamaajisai00.JPG|タマアジサイ
ファイル:Hydrangea aspera Macrophylla1UME.JPG|ストリゴサ
ファイル:Hydrangea-aspera-zoo-cgn-07074-mutante.jpg|サージェンティアナ
ファイル:Hydrangea aspera var. villosa.jpg|ウィロサ
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==== コアジサイ亜節 ====
以下の種はアジサイの名を持つが、装飾花を持たない。
以下の種はアジサイの名を持つが、装飾花を持たない。
* [[コアジサイ]] ''H. hirta'' (Thumb.) Sieb. et Zucc.
* [[コアジサイ]] ''H. hirta''
* キダチノコガク ''H. angustipetala''
* カラコンテリギ ''H. chinensis''
* ヤクシマアジサイ ''H. grosseserrata''
* トカラアジサイ ''H. kawagoeana''
* ''H. lobbii''
* コガクウツギ ''H. luteovenosa''
* [[ガクウツギ]] ''H. scandens'' - 名に[[ウツギ]]とあるがアジサイの一種で、茎と葉がウツギに似ている事からこの名が付いた
* ''H. umbellata''
* ヤクシマガクウツギ ''H. yaakusimensis''
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ファイル:Hydrangea hirta 2004ja 01.jpg|コアジサイ ''Hydrangea hirta''
ファイル:Gakuutsugi.JPG|ガクウツギ ''Hydrangea scandens''
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==== アメリカノリノキ亜節 ====
* アメリカノリノキ ''H. arborescens''
* ''H. cinerra''
* [[カシワバアジサイ]] ''H. quercifolia'' - 飾り花をもたない、北米原産
* ''H. radiata''
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ファイル:Hydrangea quercifolia 2004ja 01.jpg|thumb|カシワバアジサイ ''Hydrangea quercifolia''
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==== ノリウツギ亜節 ====
また、アジサイの名を持たないが、以下の種はアジサイ属で、よく似た花をつける。
また、アジサイの名を持たないが、以下の種はアジサイ属で、よく似た花をつける。
* [[ガクウツギ]] ''H. scandens'' (L. f.) Seringe
* [[ノリウツギ]] ''H. paniculata''
* コガクウツギ ''H. luteovenosa'' Koidzumi
* ヒマラヤノリウツギ ''H. heteromalla''
* ''H. xanthoneura''
* [[ノリウツギ]] ''H.paniculata'' Sieb.
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画像:ノリウツギ02 Hydrangea paniculata.JPG|ノリウツギ ''Hydrangea paniculata''
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=== クスノハアジサイ節 ===
[[つる植物]]となるものもある。
==== モノセギア亜節 ====
* [[ツルアジサイ]](ゴトウヅル) ''H. petiolaris'' Sieb. et Zucc.
* クスノハアジサイ ''H. integrifolia''
* [[イワガラミ]] ''Schizophragma hydrangeoides'' Sieb. et Zucc.(ツルアジサイに似るが、装飾花が一弁)
* ''H. peruviana''
* ''H. seemannii''


==== ポリセギア亜節 ====
このほか、[[草本]]でアジサイ様の花を咲かせるものに[[クサアジサイ]](''Cardiandra alternifolia'' Sieb. et Zucc.)がある。
* ''H. serratifolia''


=== ツルアジサイ節 ===
また、分類上の位置は大きく異なるが[[スイカズラ科]]にも低木で散房花序の周辺部に装飾花をつけるものがあり、やや様子が似ている。[[ムシカリ]] (''Viburnum furcatum'' Blume) や[[ヤブデマリ]] (''V. plicatum'' Thumb. f. ''tomentosum'' [Thumb.] Rehder) などがその代表で、ヤブデマリではアジサイと同様に装飾花だけからなる園芸品種[[オオデマリ]] (f. ''plicatum'') があるのもよく似ている。
[[つる植物]]となるものもある。
* [[ツルアジサイ]](ゴトウヅル) ''H. petiolaris''
* タイワンツルアジサイ ''H. petiolaris''
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画像:ツルアジサイ Hydrangea petiolaris.JPG|ツルアジサイ ''Hydrangea petiolaris''
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=== 類似の種 ===
* [[イワガラミ]] ''Schizophragma hydrangeoides'' Sieb. et Zucc. - ツルアジサイに似るが、装飾花が一弁
このほか、[[草本]]でアジサイ様の花を咲かせるものに[[クサアジサイ]] (''Cardiandra alternifolia'' Sieb. et Zucc.) がある。
分類上の位置は大きく異なるが[[スイカズラ科]]にも低木で散房花序の周辺部に装飾花をつけるものがあり、やや様子が似ている。[[ムシカリ]] (''Viburnum furcatum'' Blume) や[[ヤブデマリ]] (''V. plicatum'' Thumb. f. ''tomentosum'' [Thumb.] Rehder) などがその代表で、ヤブデマリではアジサイと同様に装飾花だけからなる園芸品種[[オオデマリ]] (f. ''plicatum'') があるのもよく似ている。
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画像:イワガラミ Schizophragma hydrangeoides.JPG|イワガラミ ''Schizophragma hydrangeoides''
Image:Hydrangea macrophylla 2004ja 01.jpg|''Hydrangea macrophylla'' (アジサイ)
Image:Hydrangea macrophylla forma normalis 01.jpg|''Hydrangea macrophylla'' forma ''normalis'' (ガクアジサイ:アジサイの原種)
Image:Hydrangea hirta 2004ja 01.jpg|''Hydrangea hirta'' ([[コアジサイ]])
Image:Hydrangea quercifolia 2004ja 01.jpg|''Hydrangea quercifolia'' (カシワバアジサイ:飾り花をもたない、北米原産)
Image:Gakuutsugi.JPG|''Hydrangea scandens'' ([[ガクウツギ]]:名に[[ウツギ]]とあるがアジサイの一種で、茎と葉がウツギに似ている事からこの名が付いた)
Image:Tamaajisai00.JPG|''Hydrangea involucrata'' Sieb. ([[タマアジサイ]]:つぼみが球の形をしていることからこの名が付いた)
Image:Tamaajisai-tsubomi.JPG|タマアジサイのつぼみ
画像:P6164299カシワバアジサイ.jpg|[[カシワバアジサイ]]([[西脇市]]・[[都麻乃郷あじさい園]])
画像:ツルアジサイ Hydrangea petiolaris.JPG|''Hydrangea petiolaris''([[ツルアジサイ]])
画像:エゾアジサイ Hydrangea serrata var. megacarpa.JPG|''Hydrangea serrata'' var. ''megacarpa''<br />([[エゾアジサイ]])
画像:ノリウツギ02 Hydrangea paniculata.JPG|''Hydrangea paniculata''<br />([[ノリウツギ]])
画像:イワガラミ Schizophragma hydrangeoides.JPG|''Schizophragma hydrangeoides''<br />([[イワガラミ]])
Image:yamaajisai 01.jpg|''Hydrangea macrophylla'' subsp. ''serrata'' (ヤマアジサイ)
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== 毒性 ==
アジサイには毒性があり、[[ウシ]]、[[ヤギ]]、[[ヒト|人]]などが摂食すると中毒を起こす。症状は過呼吸、興奮、ふらつき歩行、[[痙攣]]、[[麻痺]]などを経て死亡する場合もある{{要出典|date=2012-06}}。<!--対症療法として、[[亜硝酸ナトリウム]]や[[チオ硫酸ナトリウム]]の静脈内投与が有効。-->1920年にアメリカでアジサイの一種{{仮リンク|アメリカノリノキ|en|Hydrangea arborescens}} ''Hydrangea arborescens'' によるウシとウマでの中毒について、下痢・体温上昇・呼吸数と心拍数の増加・骨格筋の強い収縮・足を突っ張って飛び上がるなどの症状が見られたが、対症療法により回復したと報告されている<ref name=Bruce>{{cite journal|author=Bruce, E. A.|year=1920|title=Hydrangea poisoning|journal=Journal of the American Veterinary Medical Association|volume=58|pages=313–315}}</ref><ref name="佐竹">{{cite journal|和書|author=佐竹元吉|title=植物性の健康食品の安全性について|journal=食品衛生学雑誌|year=2010|volume=51|number=6|pages=408–414頁|naid=130000454923}}</ref>。日本では2008年6月に、料理の飾りに使われたアジサイの葉を摂食した客が中毒する事故が発生し、嘔吐・めまい・顔面紅潮の症状を示した<ref name="佐竹" /><ref name="数馬">{{cite web|author=数馬恒平、紺野勝弘|url=http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_det_01.html|title=アジサイ|work=自然毒のリスクプロファイル|publisher=厚生労働省|accessdate=2012-06-24}}</ref><ref>{{cite news|url=http://www.asahi.com/health/news/OSK200806300067.html|title=アジサイの葉食べ食中毒 大阪市の居酒屋で|newspaper=朝日新聞|date=2008-06-30}}</ref>。またアジサイ属の[[甘茶|アマチャ]]による中毒例も報告されている<ref name="佐竹" />。

アジサイの毒性物質は明らかにされていない<ref name="数馬" />。1920年のアメリカでの報告<ref name=Bruce />から、根から抽出されたヒドランギンという[[青酸配糖体]](グリコシド)が中毒の原因であると考えられていたが<ref name="数馬" /><ref name=NARO>{{cite web|url=http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poisoning/plants/hydrangea.html|title=アジサイ|publisher=農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所|date=2009-12-08|accessdate=2012-06-24}}</ref>、1963年にこれは誤りであると報告されている<ref name="佐竹" />。すなわち、ヒドランギンとされた化合物は実際には窒素(青酸)を含まない[[ウンベリフェロン ]](7-ヒドロキシクマリン)であった<ref>{{cite journal|author=Palmer, K. H.|year=1963|title=The structure of hydrangin|journal=Canadian Journal of Chemistry|volume=41|issue=9|pages=2387–2389|doi=10.1139/v63-348}}</ref>。また2008年の日本の中毒例でも、つくばでは青酸配糖体は検出されておらず<ref name="佐竹" />、大阪では葉1グラムあたり29マイクログラムと微量であった<ref>{{cite news|title=アジサイの葉は毒?原因物質検出できず…昨年2件の食中毒|url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090317-OYT1T00919.htm|newspaper=読売新聞|date=2009-03-17}}</ref>。これを受けて[[厚生労働省]]は2008年8月18日付けで「アジサイの喫食による青酸食中毒について(2008年7月1日)」の文書を廃止した<ref>{{PDFlink|[http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/080818a.pdf アジサイの喫食による食中毒について]}} 厚生労働省 - 2008年8月18日</ref>。

2009年に京都薬科大学の吉川らは中国産のアジサイから青酸配糖体としてヒドラシアノシド類を単離したと報告したが<ref>{{cite journal|author=Nakamuraa, Seikou; Wanga, Zhibin; Xua, Fengming; Matsudaa, Hisashi; Wub, Lijun; Yoshikawa, Masayuki|year=2009|title=The absolute stereostructures of cyanogenic glycosides, hydracyanosides A, B, and C, from the leaves and stems of ''Hydrangea macrophylla''|journal=Tetrahedron Letters|volume=50|issue=32|pages=4639–4642|doi=10.1016/j.tetlet.2009.05.111}}</ref>、京都産のものには含まれないなど青酸配糖体の量や種類には品種による差があると述べている<ref name="数馬" />。一方[[アジサイ科]]ジョウザン属の[[ジョウザン]]に含まれるアルカロイドの一種、[[フェブリフギン]]がアジサイにも見られることが報告されているが<ref>{{cite journal|和書|author=加藤正博、稲葉美代志、板鼻秀信、大原英治、中村好一、上里新一、井上博之、藤多哲朗|title=生薬および関連植物の抗コクシジウム活性成分の探索 (I): アジサイからの ''cis'' ならびに ''trans''-febrifugine の単離および抗コクシジウム活性について|journal=生薬学雑誌|volume=44|number=4|pages=288–292頁|naid=110008908259}}</ref>、この化合物が中毒の原因であるかは明らかではない<ref name="数馬" />。


== シーボルトとあじさいと牧野富太郎 ==
== シーボルトとあじさいと牧野富太郎 ==
[[鎖国]]時代に長崎に[[オランダ商館]]員の一員として日本に渡来し、オランダ人と偽って[[出島]]に滞在し医療と博物学的研究に従事したドイツ人医師にして博物学者[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト|シーボルト]]は、オランダに帰還してから植物学者のツッカリニと共著で『日本植物誌』を著した際にアジサイ属 14 種を新種記載している。その中で花序全体が装飾花になる園芸品種のアジサイを ''Hydrangea otaksa'' Siebold et Zuccarini と命名している。しかしこれはすでに[[カール・ツンベルク]]によって記載されていた ''H. macrophylla'' (Thunberg) Seringe var. ''macrophylla'' の[[シノニム]](同一種)とみなされ、植物学上有効名ではない。にもかかわらず、[[牧野富太郎]]が自著の各種植物図鑑において ''Hydrangea macrophylla'' Seringe var. ''otaksa'' Makino の学名を用い種の記載者が Seringe で変種の記載者が牧野自身であるとする事実と異なる処置を行っていることから、一部の植物学書であたかも ''H. otaksa'' が植物学的な有効名であるかのような誤解が広まってしまっている。
[[鎖国]]時代に長崎に[[オランダ商館]]員の一員として日本に渡来し、オランダ人と偽って[[出島]]に滞在し医療と博物学的研究に従事したドイツ人医師にして博物学者[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト|シーボルト]]は、オランダに帰還してから植物学者のツッカリニと共著で『日本植物誌』を著した際にアジサイ属 14 種を新種記載している。その中で花序全体が装飾花になる園芸品種のアジサイを ''Hydrangea otaksa'' Siebold et Zuccarini と命名している。しかしこれはすでに[[カール・ツンベルク]]によって記載されていた ''H. macrophylla'' (Thunberg) Seringe var. ''macrophylla'' の[[シノニム]](同一種)とみなされ、植物学上有効名ではない。にもかかわらず、[[牧野富太郎]]が自著の各種植物図鑑において ''Hydrangea macrophylla'' Seringe var. ''otaksa'' Makino の学名を用い種の記載者が Seringe で変種の記載者が牧野自身であるとする事実と異なる処置を行っていることから、一部の植物学書であたかも ''H. otaksa'' が植物学的な有効名であるかのような誤解が広まってしまっている。


牧野は上記の植物学的に不可解な処置と矛盾する言動をまた、著書の中で行っている。シーボルトは自著の中で '''otaksa''' をアジサイが日本で「オタクサ」と呼ばれていると命名の由来を説明しているが、牧野は日本国内でこの呼称が確認できなかったことからシーボルトの愛妾の[[楠本滝]](お滝さん)の名を潜ませたと推測し、美しい花に[[花柳界]]の女性の名をつけたとして強く非難している。
牧野は上記の植物学的に不可解な処置と矛盾する言動をまた、著書の中で行っている。シーボルトは自著の中で otaksa をアジサイが日本で「オタクサ」と呼ばれていると命名の由来を説明しているが、牧野は日本国内でこの呼称が確認できなかったことからシーボルトの愛妾の[[楠本滝]](お滝さん)の名を潜ませたと推測し、美しい花に[[花柳界]]の女性の名をつけたとして強く非難している。


牧野のこの推測によって「オタクサ」の名はシーボルトとお滝さんのロマンスをイメージさせて文人作家の創作意欲を刺激し、詩歌にこの名を詠み込むことなどが盛んに行われている。
牧野のこの推測によって「オタクサ」の名はシーボルトとお滝さんのロマンスをイメージさせて文人作家の創作意欲を刺激し、詩歌にこの名を詠み込むことなどが盛んに行われている。


== 鑑賞 ==
== 鑑賞 ==
[[画像:Ajisai Kobe Rokko01bs2700.jpg|thumbnail|200px|自生のアジサイ<br />([[表六甲ドライブウェイ]])]]
[[画像:Ajisai Kobe Rokko01bs2700.jpg|thumbnail|200px|自生のアジサイ([[表六甲ドライブウェイ]])]]
低木で、5月から7月頃、青、紫、ピンクなどの花(装飾花)を密につけ、手毬状をなす。[[初夏]]あるいは[[梅雨]]時期の風物詩として広く親しまれ、鑑賞用に庭園や公園に植栽されてきた。また、咲き始めの頃は白っぽく、次第に色が変ってくることから「七変化」とも呼ばれる。園芸種も多い。
低木で、5月から7月頃、青、紫、ピンクなどの花(装飾花)を密につけ、手毬状をなす。[[初夏]]あるいは[[梅雨]]時期の風物詩として広く親しまれ、鑑賞用に庭園や公園に植栽されてきた。また、咲き始めの頃は白っぽく、次第に色が変ってくることから「七変化」とも呼ばれる。園芸種も多い。


=== アジサイ名所 ===
=== アジサイ名所 ===
全国各地にアジサイを境内に多く植えた[[アジサイ寺]]と呼ばれるような[[観光都市|観光名所]]がある。公共の施設では[[大阪府民の森ぬかた園地]]、[[神戸市立森林植物園]]、[[舞鶴自然文化園]]に約5万株のアジサイが植えられている。三重県[[津市]]にある「伊勢温泉ゴルフクラブ内の福祉と環境を融合したあじさい園」には 2万5000平方メートルに 56 種類・7万5000株という日本最大級のあじさい園が2008年6月より新設された。また神戸市の[[裏六甲ドライブウェイ]]および[[奥摩耶ドライブウェイ]]沿いには延々とアジサイが自生している。[[箱根登山鉄道]]では開花時期に合わせ夜間[[ライトアップ]]されたアジサイを楽しめる特別列車が運行されている。
全国各地にアジサイを境内に多く植えた[[アジサイ寺]]と呼ばれるような[[観光都市|観光名所]]がある。公共の施設では[[大阪府民の森ぬかた園地]]、[[神戸市立森林植物園]]、[[舞鶴自然文化園]]に約5万株のアジサイが植えられている。三重県[[津市]]にある「伊勢温泉ゴルフクラブ内の福祉と環境を融合したあじさい園」には 2万5000平方メートルに 56 種類・7万5000株のあじさい園が2008年6月より新設された。また神戸市の[[裏六甲ドライブウェイ]]および[[奥摩耶ドライブウェイ]]沿いには延々とアジサイが自生している。[[箱根登山鉄道]]では開花時期に合わせ夜間[[ライトアップ]]されたアジサイを楽しめる特別列車が運行されている。


; 名所一覧
=== 名所一覧 ===
''寺院の名所は、[[アジサイ寺]]を参照''
''寺院の名所は、[[アジサイ寺]]を参照''
<!--五十音順-->
<!--五十音順-->
142行目: 210行目:
<!--複数ソースで確認するまでコメントアウト
<!--複数ソースで確認するまでコメントアウト
; 江戸時代
; 江戸時代
:: 昨日今日あすとうつろう世の人の 心に似たるあぢさゐの花([[佐久間象山]])
:: 昨日今日あすとうつろう世の人の 心に似たるあぢさゐの花([[佐久間象山]])-->

-->
<!--歌 http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/ajisai.html
-->
=== 文学 ===
=== 文学 ===
*『あじさい』- [[永井荷風]] 作、昭和6年(1931年)
*『あじさい』- [[永井荷風]] 作、昭和6年(1931年)
164行目: 230行目:
*「[[ステレオ2#収録曲|あじさい]]」- [[山崎まさよし]] 歌、1997年
*「[[ステレオ2#収録曲|あじさい]]」- [[山崎まさよし]] 歌、1997年
*「紫陽花」- [[五木ひろし]] 歌、1997年
*「紫陽花」- [[五木ひろし]] 歌、1997年
*「[[虹になりたい#収録曲|紫陽花]]」- [[TUBE]] 歌、2000年
*「紫陽花の咲く庭で」- 2001年<!--に放送されたアニメ『[[まほろまてぃっく]]』劇中歌。-->、[[川澄綾子]] 歌
*「紫陽花の咲く庭で」- 2001年<!--に放送されたアニメ『[[まほろまてぃっく]]』劇中歌。-->、[[川澄綾子]] 歌
*「[[憐哀 -レンアイ-#収録曲|紫陽花]]」- [[シド (バンド)|シド]] 歌、2004年
*「[[憐哀 -レンアイ-#収録曲|紫陽花]]」- [[シド (バンド)|シド]] 歌、2004年
*「[[紫陽花/螺旋階段|紫陽花]]」- [[椿屋四重奏]] 歌、2005年
*「Hydrangea」- [[INORAN]] 歌、2008年
*「Hydrangea」- [[INORAN]] 歌、2008年


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*[[新潟県]][[豊浦町 (新潟県)|豊浦町]](現:[[新発田市]])
*[[新潟県]][[豊浦町 (新潟県)|豊浦町]](現:[[新発田市]])
*[[兵庫県]][[安富町]](現:[[姫路市]])--><!--不要-->
*[[兵庫県]][[安富町]](現:[[姫路市]])--><!--不要-->

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
* {{cite book|和書|author=山本武臣|title=アジサイの話|publisher=八坂書房|series=植物と文化双書|year=1981|isbn=978-4-89694-314-6|ref=山本}}
* {{cite book|和書|author=コリン・マレー|title=アジサイ図鑑|publisher=アボック|others=大場秀章、太田哲英(訳)|year=2009|isbn=978-2-84138-309-2|ref=マレー}}
* {{cite book|和書|author=武田幸作|title=アジサイはなぜ七色に変わるのか?|publisher=PHP研究所|year=1996|isbn=4-569-55044-4|ref=武田}}
* {{cite book|和書|author=河原田邦彦、三上常夫、若林芳樹|title=日本のアジサイ図鑑|publisher=柏書房|year=2010|isbn=978-4-7601-3819-7|ref=河原田}}
* {{cite book|和書|author=北村四郎、村田源|title=原色日本植物図鑑|publisher=保育者|year=1979|isbn=4-586-30050-7|ref=北村}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[木の一覧]]
* [[木の一覧]]
* [[花の一覧]]
* [[花の一覧]]

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Wikispecies|Hydrangea}}
{{Wikispecies|Hydrangea}}
{{Commonscat|Hydrangea}}
{{Commonscat|Hydrangea}}
* [http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_det_01.html 自然毒リスクプロファル:アジサイ] [[厚生労働省]]
* [http://www.geocities.co.jp/AnimalPark-Shiro/5314/yamaazisai/azisai-ka/azisaika-sekai.html 世界アジサ科とアジサイ]
* [http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poisoning/plants/hydrangea.html 写真で見る家畜の有毒植物と中毒-アジサイ-] - 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
* [http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poisoning/plants/hydrangea.html 写真で見る家畜の有毒植物と中毒-アジサイ-] - 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
* [http://www.i-apple.jp/medicinal/01/2014.html アジサイ Hydrangea 紫陽花] 江戸時代・明治時代の植物事典([[長野電波技術研究所]])
* [http://www.i-apple.jp/medicinal/01/2014.html アジサイ Hydrangea 紫陽花] 江戸時代・明治時代の植物事典([[長野電波技術研究所]])
* [http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/ajisai.html あじさいを詠んだ和歌 - 和歌雑記]
* [http://news.shikoku-np.co.jp/national/life_topic/200806/20080630000409.htm アジサイの葉食べ食中毒/大阪市の居酒屋で―四国新聞社] - [[四国新聞社]]

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[[Category:アジサイ科]]
[[Category:アジサイ科]]

2012年7月8日 (日) 13:30時点における版

アジサイ属
宇治・三室戸寺のアジサイ庭園
宇治・三室戸寺のアジサイ庭園
分類クロンキスト体系
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: バラ目 Rosales
: アジサイ科 Hydrangeaceae
: アジサイ属 Hydrangea
和名
アジサイ
  • 本文参照
アジサイ属
分類APG植物分類体系
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Magnoliophyta
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: ミズキ目 Cornales
: アジサイ科 Hydrangeaceae
: アジサイ属 Hydrangea
  • 本文参照

アジサイ(紫陽花、学名 Hydrangea)はアジサイ科アジサイ属の植物の総称である。学名は「水の容器」という意味で、そのまま「ヒドランジア」あるいは「ハイドランジア」ということもある。また、英語では「ハイドレインジア」と呼ぶ。

最も一般的に植えられている球状のアジサイはセイヨウアジサイ(ヒメアジサイ・テマリ咲きアジサイは別)であり、日本原産のガクアジサイHydrangea macrophylla)を改良した品種である。

名称

アジサイの語源ははっきりしないが、最古の和歌集『万葉集』では「味狭藍」「安治佐為」、平安時代の辞典『和名類聚抄』では「阿豆佐為」の字をあてて書かれている[1]。もっとも有力とされているのは、「藍色が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」がなまったものとする説である[1]。そのほか、「味」は評価を[注 1]、「狭藍」は花の色を示すという谷川士清の説、「集まって咲くもの」とする山本章夫の説(『万葉古今動植物正名』)、「厚咲き」が転じたものであるという貝原益軒の説がある[1]

花の色がよく変わることから、「七変化」「八仙花」とも呼ばれる[2][3]

日本語で漢字表記に用いられる「紫陽花」は唐の詩人・白居易が別の花に名付けたもので、平安時代の学者・源順がこの漢字をあてはめたことから誤って広まったといわれている[4]草冠の下に「便」を置いた字が『新撰字鏡』にはみられ、「安知佐井」のほか「止毛久佐」の字があてられている。アジサイ研究家の山本武臣は、アジサイの葉が便所で使われる地域のあることから、止毛久佐は普通トモクサと読むが、シモクサとも読むことができると指摘している[5]。また『言塵集』にはアジサイの別名として「またぶりぐさ」が挙げられている[5]

学名のハイドランゲア Hydrangea はギリシア語の ὕδρο[注 2](水)と ανγειον[注 3](容器)に由来する[6]。果実の形によるという説もある[6]

フィリベール・コメルソンジャン=バティスト・ラマルクは、モーリシャスで栽培されていた植物を Hortensia oploides と命名し[6][7]、フランス語や英語、西ヨーロッパの言語では「ホルテンシア (hortensia)」 とも呼ばれる。これはオルタンス (Hortanse) という実在の女性の名をとったものである[7]アントワーヌ・ローラン・ド・ジュシューが著書でそのことを発表したが[6]、誰のことであるかは明らかにされていなかった。コメルソンがブーゲンビル島への航海に男装させ同行させたバレーという娘であるとか、オルタンス王女であるとか、当時有名であった時計や実験器具の製作者の妻であるとかの説があり[8]、有力であるとされるのは[9]、コメルソンに協力したナッサウ=ジーゲン公爵家の娘であるというものである。

また、シーボルトはアジサイの一種に自分の妻「おタキさん」の名をとって Hydrangea otaksa と命名し、物議をかもしたことが知られている[10][11]

特徴

樹高は1–2メートル。は光沢のある淡緑色で葉脈のはっきりした卵形で、周囲は鋸歯状。6月から7月に紫(赤紫から青紫)のを咲かせる。一般に花といわれている部分は装飾花で、おしべとめしべが退化しており(中性花)、花びらに見えるものは萼(がく)である。ガクアジサイでは密集した両性花の周囲にいくつかの装飾花がみられるが、セイヨウアジサイではほとんどが装飾花となっている。また、装飾花の欠如した変異もある(ガクアジサイ「三河千鳥」など)。

花の色

花(萼)の色はアントシアニンという色素によるもので、アジサイにはその一種のデルフィニジンが含まれている。これに補助色素(助色素)とアルミニウムイオンが加わると、青色の花となる[12]

土壌のpH(酸性度)によって花の色が変わり、一般に「酸性ならば青、アルカリ性ならば赤」といわれている。これは、アルミニウムが根から吸収されやすいイオンの形になるかどうかに、pHが影響するためである。すなわち、土壌が酸性だとアルミニウムが溶け出し、吸収されて花が青色となる。逆に中性やアルカリ性であれば、アルミニウムは溶け出さず吸収されないため、花は赤色となる[13]。したがって、花を青色にしたい場合は、酸性の肥料や、アルミニウムを含むミョウバンを与えればよい[14]。同じ株でも部分によって花の色が違うのは、根から送られてくるアルミニウムの量に差があるためである[15]。花(萼)1グラムあたりに含まれるアルミニウムの量が、およそ40マイクログラム以上だと青色になると見積もられている[16]。品種によっては遺伝的な要素で花が青色にならないものもある。これは補助色素が原因であり、もともと量が少ない品種や、効果を阻害する成分を持つ品種は、アルミニウムを吸収しても青色にはなりにくい[17]

また、開花から日を経るに従って、花の色は変化する[18]。最初は含まれる葉緑素のため薄い黄緑色で、徐々に分解されていくとともにアントシアニンや補助色素が生合成され、赤や青に色づいていく[18]。さらに日が経つと有機酸が蓄積されてゆくため、青色の花も赤味を帯びるようになる[注 4]。これは花の老化によるものであり、土壌の変化とは関係なく起こる[20]

花の色が緑になることがあり、観賞用として緑の花が販売されることもある。花が緑色の品種もあるが、日本ではファイトプラズマ感染による「アジサイ葉化病」にかかったものも稀にみられる[21][22]。この病気の治療法は知られておらず、感染拡大を避けるため発病株は処分したほうがよいとされる[21]

分類と品種

ガクアジサイ H. macrophylla

エングラーの分類体系ではユキノシタ科アジサイ属とされていたが、クロンキスト体系ではユキノシタ科の木本類をアジサイ科として分離独立させた[23][24]。アジサイ属はアジサイ節 (Sect. Hydrangea)、クスノハアジサイ節 (Sect. Cornidia)、ツルアジサイ節 (Sect. Calyptranthe) の3節に分けられる[25]。アジサイ属の野生種としては、日本には14種・1亜種・6変種がある[26]

アジサイ節

アジサイ亜節

アジサイ亜節 (Subsect. Macrophyllae) にはガクアジサイ、ヤマアジサイ、ハイドランゲア・スティロサの3種が含まれ、いずれもアジアにのみ自生する[27]。白色または有色の花を付ける[27]。通常、花序(花の並び方)は中央に両性花があってその周りを中性花(装飾花)が囲んだ平坦な形であるが、まれにほとんどが中性化からなる球形の花序が生じる[27][28]。両性花は種を作るが、中性花は結実しない[28]。基部から枝分かれする低木であるという点は共通するが、高さは種により異なる[27]。種子は卵形または長い楕円形で、長さは0.5–1ミリである[29]。ガクアジサイとヤマアジサイとは自然雑種ハイドランゲア・セロトフィラ H. × serratophylla を生じるが[27]、これらを人為的に交配させることによって、多くの栽培品種が作り出されている[30]。6月から8月にかけて花を咲かせる[27]

  • ガクアジサイ H. macrophylla (Thunberg) Seringe - 房総半島、三浦半島、伊豆半島、伊豆諸島、足摺岬で海岸に自生する[31][32]。このためハマアジサイとも呼ばれる[32]。高さは2メートル程度だが[31]、4メートルに達することもある[27]。花序は多数の両性花を中心として、装飾花が周りを縁取る[31]。名称の「ガク」はこのさまを額縁になぞらえたものである[32]。花序は直径12–18センチ、装飾花は直径3–6センチで色は白色・青色・淡青緑色・または淡赤紫色[31]、両性花は濃紫色である[32]。葉は厚く、大きく(長さ10–18センチ[31])、種小名 macro (大きい) pyllus (葉)の由来となっている[32]。葉の表面は濃緑色で光沢がある[31]。栽培品種に ‘花火’、‘城ヶ崎’ などがある[33]
    • アジサイ H. macrophylla var. macrophylla - 日本原産のガクアジサイの品種だが、自生しているという説もあり[34]、起源ははっきりしない[35]。他のアジサイとの区別のためホンアジサイとも呼ばれる[34]。花序はほとんど装飾花のみからなり、種子ができるのはまれであるため、挿し木や株分けで増やす[31]。花序の大きさは20–25センチ程度である[31]。古く日本から中国へ伝わったものが、18世紀にさらにヨーロッパへと持ち込まれ、多くの園芸品種が作られた[35]。日本では輸入したものがセイヨウアジサイとも呼ばれる。かつて、シーボルトはこの品種を H. otaksa と命名したが、学名としては現在では使われていない[36]
  • ヤマアジサイ H. serrata (Thunberg) Seringe - 本州では関東より西、また四国、九州などの山地に分布する[37]。千島列島、台湾、中国南部の山地にもみられる[27]。山中で沢によく見られることからサワアジサイとも呼ばれる[38]。ガクアジサイと比べ、花の色が多様性に富む[38]。花序は直径7–18センチ、装飾花は直径1.7–3センチ[37]。葉質は薄く光沢がなく、小さく(6.5–13センチ[37])、長楕円形・楕円形・円形など形はさまざまである[38]。枝は細く、樹高1メートル程度である[37]。葉にフィロズルチンの配糖体を含むものがあり、甘茶として利用される[37][39]。「甘茶(アマチャ)」は分類上特定の品種を指す名称ではない[40]。ヤマアジサイは分布域が広く、いくつかの亜種がある。
    • エゾアジサイ H. serrata subsp. yezoensis (Koidz.) Kitam. - ヤマアジサイの亜種。東北地方・北陸地方・北海道、および朝鮮南部に分布する[37][41]。高さ1–1.5メートルで[37]、北海道のものは本州のものより大きい[41]。花序は直径10–17センチ[37]、普通青色や青紫色だが白・ピンク・ほとんど赤色のものもある[39][41]。葉はヤマアジサイよりも大きく(10–17センチ)、ふちの鋸刃も鋭い[37]。花期は5月中旬から6月中旬である[42]
    • アマギアマチャ H. serrata subsp. angustata (Franch. & Savatier) Kitam. - ヤマアジサイの亜種。富士山・天城山周辺[43]、静岡市梅ヶ島、箱根[44]に自生する。花はすべて白く[43]、葉はヤマアジサイより細い[44]。生の葉は甘苦い[44]
    • ベニガク H. macrophylla f. rosalba (Van Houtte) Ohwi - 南日本の山地にみられる[43]。江戸時代から栽培されている品種である[45]。装飾花は白色だが日光に当たると赤みを帯びる[45]。葉は厚く楕円形で[44]、秋に紅葉する[43]
    • シチダンカ H. serrata cv. ‘prolifera’ - ヤマアジサイの栽培品種で、萼が星型で重なっている[46]。江戸時代から知られ、シーボルトが『フローラ・ヤポニカ』で報告していたものの発見例がなく、絶滅した「幻のアジサイ」とされていたが、1959年に六甲山で再発見された[46][47]。葉は卵形で、エゾアジサイに近い[44]
  • ハイドランゲア・スティロサ H. stylosa J. D. Hooker & Thomson - ブータンベトナム原産の種である[23]。山地にのみ生える[27]。花はガクアジサイに似るが、色は薄い[23]

タマアジサイ亜節

タマアジサイ H. involucrata のつぼみ

タマアジサイ亜節 (Subsect. Asperae) に含まれる種はすべてアジア原産で、ネパール、中国、台湾、インドネシア、日本に分布する[48]。いずれも温暖な気候の山地に自生するが、中国やネパールには厳しい気候に耐えるものもある[48]。高さ1.5–5メートルの低木であり[48]、葉は大きく(10–23センチ[49])表面は粗く、花序は散房形で丸みを帯びる[48]。花期は6月から9月に始まる[48]

  • タマアジサイ H. involucrata Siebold - 東北地方南部、福島より南の関東地方、岐阜県までの中部地方の林地に自生する[50][51]。つぼみが球形であることから名付けられた[50]。高さ約1.5メートル程度で、葉は長さ10–21センチの楕円形で先がとがる[50]。葉や幹など全体に短毛が生えており、ざらつく[51][50]。装飾花は大きさ20–32ミリで白色、両性花は大きさ2–5ミリで紫色であり[50]、花序は直径10–15センチである[50]。つぼみの大きさは径1.5センチ、長さ1.2センチ程度で、開花に従い包んでいた(ほう)は落ちる[50]。山地で自生する場合、花は8–9月に咲くが[50]、平地で栽培しているものは6–7月ごろに咲き始める[51]。かつてタバコの代用品や混ぜものとして使われ、「ヤマタバコ」の別名がある[51][52]
  • ヤハズアジサイ H. sikokiana Maxim. - 紀伊半島、四国、九州南部の湿った山地に自生する[53][54]。葉の先が分かれ、矢羽・矢筈(やはず)に似ることから名が付けられた[53][54]。葉は幅の広い楕円形で大きく(長さ12–23センチ[53])、切れ込みがあるのが特徴である[48]。花期は7–8月で、ふちの装飾花は白く小さく[54]、花序の大きさは20–25センチである[53]。葉を傷つけるとウリのにおいがし、方言では「ウリバ」「ウリノキ」と呼ばれる[55]
  • ヒマラヤタマアジサイ H. aspera
  • タイワンゴトウヅル H. kawakami
  • ナガバアジサイ H. longifolia
  • H. glabripes
  • H. longipes
  • H. sargentiana
  • H. strigosa
  • H. villosa

コアジサイ亜節

以下の種はアジサイの名を持つが、装飾花を持たない。

  • コアジサイ H. hirta
  • キダチノコガク H. angustipetala
  • カラコンテリギ H. chinensis
  • ヤクシマアジサイ H. grosseserrata
  • トカラアジサイ H. kawagoeana
  • H. lobbii
  • コガクウツギ H. luteovenosa
  • ガクウツギ H. scandens - 名にウツギとあるがアジサイの一種で、茎と葉がウツギに似ている事からこの名が付いた
  • H. umbellata
  • ヤクシマガクウツギ H. yaakusimensis

アメリカノリノキ亜節

  • アメリカノリノキ H. arborescens
  • H. cinerra
  • カシワバアジサイ H. quercifolia - 飾り花をもたない、北米原産
  • H. radiata

ノリウツギ亜節

また、アジサイの名を持たないが、以下の種はアジサイ属で、よく似た花をつける。

  • ノリウツギ H. paniculata
  • ヒマラヤノリウツギ H. heteromalla
  • H. xanthoneura

クスノハアジサイ節

モノセギア亜節

  • クスノハアジサイ H. integrifolia
  • H. peruviana
  • H. seemannii

ポリセギア亜節

  • H. serratifolia

ツルアジサイ節

つる植物となるものもある。

  • ツルアジサイ(ゴトウヅル) H. petiolaris
  • タイワンツルアジサイ H. petiolaris

類似の種

  • イワガラミ Schizophragma hydrangeoides Sieb. et Zucc. - ツルアジサイに似るが、装飾花が一弁

このほか、草本でアジサイ様の花を咲かせるものにクサアジサイ (Cardiandra alternifolia Sieb. et Zucc.) がある。 分類上の位置は大きく異なるがスイカズラ科にも低木で散房花序の周辺部に装飾花をつけるものがあり、やや様子が似ている。ムシカリ (Viburnum furcatum Blume) やヤブデマリ (V. plicatum Thumb. f. tomentosum [Thumb.] Rehder) などがその代表で、ヤブデマリではアジサイと同様に装飾花だけからなる園芸品種オオデマリ (f. plicatum) があるのもよく似ている。

毒性

アジサイには毒性があり、ウシヤギなどが摂食すると中毒を起こす。症状は過呼吸、興奮、ふらつき歩行、痙攣麻痺などを経て死亡する場合もある[要出典]。1920年にアメリカでアジサイの一種アメリカノリノキ英語版 Hydrangea arborescens によるウシとウマでの中毒について、下痢・体温上昇・呼吸数と心拍数の増加・骨格筋の強い収縮・足を突っ張って飛び上がるなどの症状が見られたが、対症療法により回復したと報告されている[56][57]。日本では2008年6月に、料理の飾りに使われたアジサイの葉を摂食した客が中毒する事故が発生し、嘔吐・めまい・顔面紅潮の症状を示した[57][58][59]。またアジサイ属のアマチャによる中毒例も報告されている[57]

アジサイの毒性物質は明らかにされていない[58]。1920年のアメリカでの報告[56]から、根から抽出されたヒドランギンという青酸配糖体(グリコシド)が中毒の原因であると考えられていたが[58][60]、1963年にこれは誤りであると報告されている[57]。すなわち、ヒドランギンとされた化合物は実際には窒素(青酸)を含まないウンベリフェロン (7-ヒドロキシクマリン)であった[61]。また2008年の日本の中毒例でも、つくばでは青酸配糖体は検出されておらず[57]、大阪では葉1グラムあたり29マイクログラムと微量であった[62]。これを受けて厚生労働省は2008年8月18日付けで「アジサイの喫食による青酸食中毒について(2008年7月1日)」の文書を廃止した[63]

2009年に京都薬科大学の吉川らは中国産のアジサイから青酸配糖体としてヒドラシアノシド類を単離したと報告したが[64]、京都産のものには含まれないなど青酸配糖体の量や種類には品種による差があると述べている[58]。一方アジサイ科ジョウザン属のジョウザンに含まれるアルカロイドの一種、フェブリフギンがアジサイにも見られることが報告されているが[65]、この化合物が中毒の原因であるかは明らかではない[58]

シーボルトとあじさいと牧野富太郎

鎖国時代に長崎にオランダ商館員の一員として日本に渡来し、オランダ人と偽って出島に滞在し医療と博物学的研究に従事したドイツ人医師にして博物学者シーボルトは、オランダに帰還してから植物学者のツッカリニと共著で『日本植物誌』を著した際にアジサイ属 14 種を新種記載している。その中で花序全体が装飾花になる園芸品種のアジサイを Hydrangea otaksa Siebold et Zuccarini と命名している。しかしこれはすでにカール・ツンベルクによって記載されていた H. macrophylla (Thunberg) Seringe var. macrophyllaシノニム(同一種)とみなされ、植物学上有効名ではない。にもかかわらず、牧野富太郎が自著の各種植物図鑑において Hydrangea macrophylla Seringe var. otaksa Makino の学名を用い種の記載者が Seringe で変種の記載者が牧野自身であるとする事実と異なる処置を行っていることから、一部の植物学書であたかも H. otaksa が植物学的な有効名であるかのような誤解が広まってしまっている。

牧野は上記の植物学的に不可解な処置と矛盾する言動をまた、著書の中で行っている。シーボルトは自著の中で otaksa をアジサイが日本で「オタクサ」と呼ばれていると命名の由来を説明しているが、牧野は日本国内でこの呼称が確認できなかったことからシーボルトの愛妾の楠本滝(お滝さん)の名を潜ませたと推測し、美しい花に花柳界の女性の名をつけたとして強く非難している。

牧野のこの推測によって「オタクサ」の名はシーボルトとお滝さんのロマンスをイメージさせて文人作家の創作意欲を刺激し、詩歌にこの名を詠み込むことなどが盛んに行われている。

鑑賞

自生のアジサイ(表六甲ドライブウェイ

低木で、5月から7月頃、青、紫、ピンクなどの花(装飾花)を密につけ、手毬状をなす。初夏あるいは梅雨時期の風物詩として広く親しまれ、鑑賞用に庭園や公園に植栽されてきた。また、咲き始めの頃は白っぽく、次第に色が変ってくることから「七変化」とも呼ばれる。園芸種も多い。

アジサイ名所

全国各地にアジサイを境内に多く植えたアジサイ寺と呼ばれるような観光名所がある。公共の施設では大阪府民の森ぬかた園地神戸市立森林植物園舞鶴自然文化園に約5万株のアジサイが植えられている。三重県津市にある「伊勢温泉ゴルフクラブ内の福祉と環境を融合したあじさい園」には 2万5000平方メートルに 56 種類・7万5000株のあじさい園が2008年6月より新設された。また神戸市の裏六甲ドライブウェイおよび奥摩耶ドライブウェイ沿いには延々とアジサイが自生している。箱根登山鉄道では開花時期に合わせ夜間ライトアップされたアジサイを楽しめる特別列車が運行されている。

名所一覧

寺院の名所は、アジサイ寺を参照

文化

紫陽花を模した生菓子

和歌

あじさい(紫陽花)は夏の季語

万葉集には二首のみ。

  • 言問はぬ木すら味狭藍 諸弟(もろと)らが 練の村戸(むらと)にあざむかえけり(大伴家持 巻4 773)
  • 紫陽花の八重咲く如くやつ代にを いませわが背子見つつ思はむ(しのはむ)(橘諸兄 巻20 4448)

平安後期になるとしばしば詠まれるようになった。

  • あぢさゐの 花のよひらに もる月を 影もさながら 折る身ともがな(源俊頼『散木奇歌集』)
  • 夏もなほ 心はつきぬ あぢさゐの よひらの露に 月もすみけり(藤原俊成『千五百番歌合』)
  • あぢさゐの 下葉にすだく蛍をば 四ひらの数の添ふかとぞ見る(藤原定家

文学

  • 『あじさい』- 永井荷風 作、昭和6年(1931年)

絵画

あじさいに燕

歌謡曲

市町村の花・木として

アジサイは下記の市区町村の花・木として制定されている。

脚注

注釈

  1. ^ 「味のある絵」「味な趣向」などの用法における味。
  2. ^ ラテン文字翻字:hydro
  3. ^ ラテン文字翻字:angeion
  4. ^ アントシアニンそのものも酸性度によって色が変化する[19]

出典

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  64. ^ Nakamuraa, Seikou; Wanga, Zhibin; Xua, Fengming; Matsudaa, Hisashi; Wub, Lijun; Yoshikawa, Masayuki (2009). “The absolute stereostructures of cyanogenic glycosides, hydracyanosides A, B, and C, from the leaves and stems of Hydrangea macrophylla”. Tetrahedron Letters 50 (32): 4639–4642. doi:10.1016/j.tetlet.2009.05.111. 
  65. ^ 加藤正博、稲葉美代志、板鼻秀信、大原英治、中村好一、上里新一、井上博之、藤多哲朗「生薬および関連植物の抗コクシジウム活性成分の探索 (I): アジサイからの cis ならびに trans-febrifugine の単離および抗コクシジウム活性について」『生薬学雑誌』第44巻第4号、288–292頁、NAID 110008908259 

参考文献

  • 山本武臣『アジサイの話』八坂書房〈植物と文化双書〉、1981年。ISBN 978-4-89694-314-6 
  • コリン・マレー『アジサイ図鑑』大場秀章、太田哲英(訳)、アボック、2009年。ISBN 978-2-84138-309-2 
  • 武田幸作『アジサイはなぜ七色に変わるのか?』PHP研究所、1996年。ISBN 4-569-55044-4 
  • 河原田邦彦、三上常夫、若林芳樹『日本のアジサイ図鑑』柏書房、2010年。ISBN 978-4-7601-3819-7 
  • 北村四郎、村田源『原色日本植物図鑑』保育者、1979年。ISBN 4-586-30050-7 

関連項目

外部リンク