ノリウツギ
ノリウツギ | |||||||||||||||||||||
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福島県会津地方 2008年7月
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Hydrangea paniculata Siebold (1829)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ノリウツギ[1] |
ノリウツギ(糊空木[3]・糊樹[4]、学名: Hydrangea paniculata )は、アジサイ科[注 1]アジサイ属の落葉低木。別名サビタ[1][5]、ノリノキ(糊の木)[6]。
名称
[編集]和名ノリウツギは、かつて製紙用に、この木の樹皮から糊を採ったことに由来する[7]。そのため、別名でノリノキ(糊の木)、ニレ、ネリ、ネリキ、ノリダモ、トロロノキなどともよばれている[7]。北海道や東北地方では、サビタという地方名のほうがよく通じる[7]。サビタの名の由来について、植物学者の辻井達一は、「アイヌ語からきたように思えるが、アジサイの仲間が別名としてサワフサギとかサワップサギ、サワツタ、サワブタなどと呼ばれることからの転訛だと考えられる」と自身の著書で述べている[7]。アイヌ名はラスパ・ニで、ラスパは槍の柄と穂先を継ぐ棒を指し、二は「木の」の意味である[8]。中国名は水亞木 (別名:圓錐繡球)[1]。
分布と生育環境
[編集]日本、南千島、樺太(サハリン)、中国東北部、台湾に分布し、日本では北海道、本州、四国、九州に分布する[9][5]。山野や山地の低木林や林縁などに自生する[5][3]。山地の沢沿いや湿った場所を好むが、あまり日陰では育たない[9]。しばしば、湿原の中にも見られる[10]。奈良県の大台ケ原はノリウツギの自生地として知られている[11]。よく目立つ花で、またハナカミキリやハナムグリなどの訪花性の昆虫が多く集まる。
花は枯れてからも茶色くなって翌年まで残る。そのため、和歌山県南部の山間部では娘を嫁に出すときに「ノリウツギの花が無くなるまで帰るな」と言って送り出す地域があるという。
形態・生態
[編集]落葉広葉樹の低木から小高木[5][3]。樹高は2 - 3メートル (m) くらいで、高いものは5 mくらいになる[9][5][3]。木本であるが、先端がやや倒れて他の木により掛かり、つる植物のように見えることもある。成木の樹皮は縦に裂け、剥がれ落ちる[3]。若木の樹皮は淡褐色から茶褐色で、割れる前の溝があり、皮目がまばらにある[3]。小枝は茶褐色[3]。
葉に葉柄があり、枝に対生し、ときに3輪生する[9][5]。葉身は長さ5 - 12センチメートル (cm) 、幅3 - 8 cmの卵形から楕円形、葉先と葉脚が尖っている[9]。葉縁は鋸歯状[9]。表面は濃い緑色で、裏面はやや淡く、葉脈上にまばらに毛が生える[9]。
花期は7 - 8月[5]。枝の先に白色の小さな両性花が円錐状に多数つき(円錐花序)、花序の高さは8 - 30 cm[9]、白または淡紅色の花弁4枚の装飾花が混ざる[5]。両生花は直径4ミリメートル (mm) 程度、その周囲の装飾花の花弁は萼片で長さ2 cm程度で、はじめは白色だが時間が経つと淡い紫色を帯びはじめ、さらに次第に淡い紅色へと変化する[9]。枝先には果実が冬まで残り、果柄の途中から折れてぶら下がっているものも多く、強風時には折れて転がり、種子を遠くまで運ぶ[3]。種子は細かい[9]。
冬芽は短い円錐形から卵形[3]。頂芽の下には頂生側芽がある[3]。側芽は対生するか三輪生し、芽鱗の先端が尖る[3]。葉痕は三角形からV字形で、維管束痕が3個つく[3]。
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樹形
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花序
利用
[編集]花を楽しむために庭に植えられる[5]。樹皮からは和紙の糊料が採れる[5]。また、根からは喫煙具のパイプが作られることが知られている[5]。
糊料としては粘液の高い内皮が使われるが、良質なものが採れるのは8年生以上の樹齢が経ったものが白くてよいとされた[7]。日本では庭園樹としての利用には重用されていない傾向にあるが、かつて日本から輸入したアメリカやカナダでは、庭園や公園の植栽に使っている[10]。なかには、アメリカで改良された新しい品種が、日本へ逆輸入されるケースもある[10]。
文化
[編集]ノリウツギ(サビタ)は、釧路湿原を舞台にした原康子の小説『サビタの記憶』や『挽歌』にたびたび登場する[10]。また、釧路在住の画家、佐々木栄松の描く釧路湿原の画の中に、さまざまな色に変化するサビタの花を描き出している[12]。
品種
[編集]- ヒダカノリウツギ(Hydrangea paniculata f. debilis)[13]
- ビロードノリウツギ(Hydrangea paniculata f. velutina)[14]
- ミナヅキ(Hydrangea paniculata f. grandiflora) - 別名:ノリアジサイ[15]
注釈
[編集]注釈
[編集]- ^ 新エングラー体系では、ユキノシタ科アジサイ属になっているが、クロンキスト体系ではユキノシタ科の木本類をアジサイ科として分離独立させている[1]。また、APG体系においてもアジサイ科に分類される[1]。
出典
[編集]- ^ a b c d e f 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea paniculata Siebold ノリウツギ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年7月1日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Heteromalla paniculata (Siebold) H.Ohba et S.Akiyama ノリウツギ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年7月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 90.
- ^ 落合直文「のりうつぎ」『言泉:日本大辞典』 第四、芳賀矢一改修、大倉書店、1927年、3526頁。
- ^ a b c d e f g h i j k 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 67.
- ^ 松村明 編「のりのき」『大辞林 4.0』三省堂、2019年。
- ^ a b c d e 辻井達一 1995, p. 167.
- ^ 辻井達一 1995, p. 168.
- ^ a b c d e f g h i j 辻井達一 1995, p. 169.
- ^ a b c d 辻井達一 1995, p. 170.
- ^ “紀伊半島の自然と文化”. 国立大学法人奈良女子大学. 2020年5月22日閲覧。
- ^ 辻井達一 1995, p. 179.
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea paniculata Siebold f. debilis (Nakai) Sugim. ヒダカノリウツギ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年2月25日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea paniculata Siebold f. velutina (Nakai) Kitam. ビロードノリウツギ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年2月25日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea paniculata Siebold f. grandiflora (Siebold ex Van Houtte) Ohwi ミナヅキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年2月25日閲覧。
参考文献
[編集]- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、90頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、167 - 170頁。ISBN 4-12-101238-0。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、67頁。ISBN 4-522-21557-6。