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東九州新幹線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
東九州新幹線の大まかな計画ルートを示した図

東九州新幹線(ひがしきゅうしゅうしんかんせん)は、福岡県福岡市から東九州大分県大分市附近、宮崎県宮崎市附近を経由して、鹿児島県鹿児島市に至る新幹線の基本計画路線である。

概要

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概略

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1973年11月15日の「昭和48年運輸省告示第466号」によって、建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画に追加された。

山陽新幹線との共用区間を除く延長が約390kmとされており[1]、福岡市からの一部区間では既存の山陽新幹線の線路を共用することが想定されている。また、約390kmという延長は、日豊本線(小倉駅 - 鹿児島駅間)の総延長467.2 kmを2割近く下回り、在来線に比してルートの短縮が図られている。途中の大分市附近では、同じく基本計画路線である四国新幹線及び九州横断新幹線との接続が予定されている。

基本計画が決定されたのは高度経済成長期であったが、その後のオイルショックや国鉄の経営悪化などの状況変化のため、工事のために必要な調査さえ行われておらず、着工には至っていない。

東九州沿岸地域は、西九州地域と比べ、鉄道の高速化や高速道路東九州道)の整備が遅れ、かつては裏九州、陸の孤島と呼ばれることもあった。近年、高速道路の開通や在来線の高速化によって交通の整備が進みつつあるものの、今もなおインフラ整備が遅れているという声は多い[2]。他方で、1973年の基本計画決定時点で、西九州の代表的都市である長崎市の人口(当時約50万人)は、同じく東九州の代表的都市である大分市(当時約30万人)の人口を大きく上回っていた[注釈 1]が、2000年の国勢調査で大分市が逆転している。

福岡県、大分県、宮崎県、鹿児島県、北九州市の4県1市で構成する東九州新幹線鉄道整備促進期成会[3]や、九州経済連合会等で組織する東九州軸推進機構[4]は、国に対して整備計画線への格上げの要望を行っている。また、2012年秋には九州地方知事会も整備計画線への格上げを求める特別決議を採択している[5]

2015年6月29日、大分県が東九州新幹線の調査費として809万円を、2015年度一般会計の7月補正予算案に盛り込んだと発表した[6]

ルート

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従来は、起点の福岡市から北九州市(小倉駅)を経由し、日豊本線に沿って大分方面へ結ぶルートが前提とされてきた[1]。しかし、1973年公示の基本計画では「起点:福岡市」「終点:鹿児島市」「主要な経過地:大分市附近、宮崎市附近」と規定されているのみであり、当時、北九州市は九州において人口最大の都市であったが、「主要な経過地」に指定されていない[注釈 2][7]。これまでの日豊本線沿いルートのほか、2023年頃からは久大本線沿いルートも浮上するようになったが、これは北九州市が経過地に指定されていないという隙を突いたものだという見解がある[8]

2023年11月21日、大分県は福岡市から大分市までの区間を日豊線と久大線沿いの2ルート案で比較した結果、費用対効果の試算はわずかに日豊線ルートが高いとする調査結果を発表した。この調査は、大分県の東九州新幹線整備推進期成会が野村総合研究所に委託したものであり、小倉-大分間は新たに整備し、久大線ルートは九州新幹線の線路の一部を活用して、新鳥栖駅から大分駅までは新設することを前提としたものである[9]

日豊線ルートでは、北九州市長が北九州空港を経由する案に関心を示しているほか、東九州新幹線鉄道整備促進期成会は「北九州空港、宮崎空港鹿児島空港等を経由させることもルート案の選択肢の一つとして有効」としている[10][11]

整備についての検討

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需要

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鉄道ジャーナリストの梅原淳の試算によると、「福岡-大分間の特急電車利用者は1万1千人/日にのぼる。これは、北陸新幹線が建設されている首都圏-富山・石川間の5千人/日を上回り、関西圏-福井・富山・石川間の1万4千人/日に匹敵する。また、交通機関別に見ると、現在の福岡-大分の鉄道利用者は7.8%に過ぎず、新幹線の開通によって他の交通機関からの振り替え需要も期待される」とされている[12]

一方、大分県、宮崎県の人口は都道府県別で33位、37位と下位にとどまる。また、大分駅の1日あたりの平均乗車人員は16,982人で九州内で4位であるものの、宮崎駅は4,715人で30位以内にも入っていない。これらのことから需要に疑問を示す報道もある。

2023年11月21日の日本経済新聞の報道によると、博多-大分間の一日当たりの利用者数の見込みが日豊線ルートが2万3973人、久大線ルートが2万2163人とされた[13]

効果

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東九州新幹線の着工のめどが立たない間、在来線である日豊本線の高速化が進められており、路線改良や振り子式車両である883系885系の投入等によって、博多駅 - 大分駅間の所要時間は20分ほど短縮されて、約2時間となっている。

大分県は2016年1月18日に、東九州新幹線が全線開通し、日豊本線と同じルートを、北陸新幹線の平均時速と同じ180kmで走行すると想定した場合の主要駅間の所要時間を試算し、短縮効果を示した[14][15]

また、東九州新幹線鉄道建設促進期成会も2016年3月23日に、新幹線の運行に適したルート(380km)を、九州新幹線、北陸新幹線と同じ平均速度(表定速度)210km/hで走行すると想定した場合の主要駅間の所要時間の調査結果を公表した[16][17][18][19]

2023年11月21日の大分朝日放送の報道によると、現状では大分から博多までは約2時間、大阪までは4時間以上という現状が東九州新幹線開業により、日豊線ルートなら大分から博多まで47分・大分から大阪まで約3時間半、久大線ルートなら大分から博多まで46分・大分から大阪までは4時間強に変化するという試算が出た[20]

費用対効果については、「社会的割引率」を2%とした場合、日豊線ルートが1.27、久大線ルートが1.23となった[13]

2023年11月23日の朝日新聞デジタルの報道によれば、熊本-大分間だと、最短所要時間は日豊線ルートが79分、久大線ルートが56分と差があった[21]

主要駅間の所要時間
在来線 大分県試算 期成会試算
新幹線(推計) 短縮効果 新幹線(推計) 短縮効果
大分 - 小倉 1時間23分 - - 31分 52分
- 博多 2時間5分 1時間 1時間5分 47分 1時間18分
- 宮崎 3時間9分 1時間9分 2時間 48分 2時間21分
- 鹿児島中央 5時間18分 1時間51分 3時間27分 1時間17分 4時間1分
宮崎 - 小倉 4時間32分 1時間53分 2時間39分 1時間19分 3時間13分
- 博多 5時間14分 2時間9分 3時間5分 - -
- 鹿児島中央 2時間9分 - - 29分 1時間40分

計画沿線の交通インフラ

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脚注

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注釈

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  1. ^ それぞれ、現在の市域に相当する地域の人口。
  2. ^ 一部の路線を除き、経過地に指定されているのは基本的に県庁所在地である。

出典

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  1. ^ a b 『数字でみる鉄道2010』、国土交通省鉄道局監修、運輸政策研究機構
  2. ^ 「5.東九州のインフラ整備について」『日本の成長と発展に必要な豊予海峡ルートについて』(藤井聡)”. 大分市. 2024年10月25日閲覧。
  3. ^ 鹿児島-宮崎間の新幹線誘致について|宮崎県:県民の声 県に寄せられた主な提言と回答(平成19年度)交通・社会基盤”. 宮崎県 (2007年12月25日). 2014年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  4. ^ 東九州地域の活性化推進に関する要望 (PDF) 東九州軸推進機構、2010年8月
  5. ^ 東九州新幹線、整備を 九州知事会が決議”. 大分合同新聞社 (2012年11月1日). 2012年11月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  6. ^ 東九州新幹線に調査費、大分県が建設目指し」『産経新聞』2015年6月29日。オリジナルの2015年7月8日時点におけるアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  7. ^ 『昭和48年11月15日 運輸省告示第466号』運輸省、1973年。 
  8. ^ 東九州新幹線の「久大本線ルート」案、基本計画の隙を突く妙案かも”. 2023年7月29日閲覧。
  9. ^ 「東九州新幹線」の費用対効果、日豊線ルートわずかに有利…久大線ルートと比較、大分県が試算”. 読売新聞オンライン (2023年11月22日). 2023年11月23日閲覧。
  10. ^ 【第1部】クロスFM 24時間ラジオ生配信『ホリスペ』24時間やれば、何かおもしろいこと起こるだろ!”. YouTube. 2023年12月18日閲覧。
  11. ^ 『東九州新幹線調査報告書(概要版)平成28年3月』東九州新幹線鉄道建設促進期成会、2016年、23頁。 
  12. ^ 高速道の次は新幹線!東九州高まる期待 東西格差是正へ 幻の計画動くか”. MSN産経ニュース (2014年5月19日). 2014年5月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  13. ^ a b 東九州新幹線の費用対効果、日豊線ルートがやや上”. 日本経済新聞 (2023年11月21日). 2023年11月23日閲覧。
  14. ^ 宮崎―博多は2時間9分に…東九州新幹線あれば”. YOMIURI ONLINE. 読売新聞社 (2016年1月21日). 2016年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  15. ^ 年間584万人利用 東九州新幹線”. 大分合同新聞プレミアムオンライン Gate. 大分合同新聞社 (2016年1月19日). 2016年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  16. ^ 東九州新幹線 利用者の便益、整備費上回る 県が調査”. YOMIURI ONLINE. 読売新聞社 (2016年3月24日). 2016年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  17. ^ 博多―宮崎1時間35分 東九州新幹線試算”. YOMIURI ONLINE. 読売新聞社 (2016年3月24日). 2016年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  18. ^ 東九州新幹線:試算、県内整備費は1兆円 他ルートも調査へ 知事「財政負担が重い」 /宮崎 毎日新聞、2016年3月24日[リンク切れ]
  19. ^ 東九州新幹線所要時間など試算”. 大分合同新聞プレミアムオンライン Gate. 大分合同新聞社 (2016年3月24日). 2016年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  20. ^ 【大分】東九州新幹線の調査進む”. OAB大分朝日放送. 2023年11月23日閲覧。
  21. ^ 東九州新幹線の2ルートの試算比較「ほぼ同等」 日豊線・久大線”. 朝日新聞デジタル (2023年11月23日). 2023年11月23日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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