コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

安部龍太郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
安部 龍太郎あべ りゅうたろう
誕生 安部 良法
(1955-06-20) 1955年6月20日(69歳)
日本の旗 福岡県八女郡黒木町(現八女市
職業 小説家
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
最終学歴 久留米工業高等専門学校機械工学科
活動期間 1988年 -
ジャンル 歴史小説時代小説
主な受賞歴 中山義秀文学賞(2005年)
直木三十五賞(2013年)
歴史時代作家クラブ賞(2016年)
デビュー作 「師直の恋」(1988年)
ウィキポータル 文学
テンプレートを表示

安部 龍太郎(あべ りゅうたろう、1955年昭和30年)6月20日 - )は、日本小説家。本名は安部 良法[1]日本文芸家協会会員[2]日本ペンクラブ会員[3]

略歴

[編集]

福岡県八女市(旧・黒木町)生まれ[4]。国立久留米工業高等専門学校機械工学科卒。

学生時代から太宰治坂口安吾などの作品を読んできた[5]。高専時代、熱中したラグビーで大けがを負い1年間休学。このとき坂口の「堕落論」を読んで作家を志すようになった[4]。21歳で上京して東京都大田区役所の矢口出張所に勤めたのち、異動となった下丸子図書館で「図書館報」の編集に携わった。

それまで、同人誌などに小説を書いていたが、妻子がいた29歳のときに公務員を退職し、2年間に限定して小説の執筆に専念した[4]。この間、歴史小説で初めて最終選考に残ったため、さらに1年延長して創作に没頭、このとき応募した新作が編集者に認められた[4]1988年、短編「師直の恋」(『小説新潮』)で文壇にデビュー。まもなく、別の作家からの引き継ぎで取り組んだ週刊誌(『週刊新潮』)の連載が好評を得、予定を越えて延長を重ねた[4]。この連載をもとに1990年に刊行した『血の日本史』(「日本史 血の年表」改題)が、単行本のデビュー作となった[4]。この作品をきっかけに「隆慶一郎が最後に会いたがった男」という逸話が生まれた[6]

早くから新人賞の候補に挙げられながら度々受賞を逃してきた[4]。その後、歴史小説家として欠落しているものを感じ、46歳の時に京都に仕事場を設けて、茶道水墨画を学んだ[4]2013年、自身の姿を画家長谷川等伯に重ねて書いた『等伯』で直木賞を受賞した[4]

歴史を動かしてきたものは「海外貿易と経済構造の変化、それを担う人材が現れるか」の三つと考え、この史観を基に三つのシリーズもの(家康、遣唐使の物語、太平記)を手掛けている[4]。「太平記」シリーズに関しては、室町幕府に敗れた南朝方の落人集落と伝えられる山村に生まれた[7]自身の出自が気になり、書くことに決めたと語る[4]

受賞歴

[編集]

(以下は受賞を逃した候補作)

『矢口の渡』(1987年 第67回オール讀物新人賞 候補)
『降人哀し』(1987年 第5回小説新潮新人賞 候補)
『血の日本史』(1991年 第4回山本周五郎賞 候補)
『黄金海流』(1992年 第13回吉川英治文学新人賞 候補)
『彷徨える帝』(1994年 第111回直木三十五賞 候補 / 第7回山本周五郎賞 候補)
『関ヶ原連判状』(1997年 第10回山本周五郎賞 候補)
『生きて候』(2003年 第9回中山義秀文学賞 候補)

著作一覧

[編集]

小説

[編集]
  • 血の日本史(1990年11月、新潮社
  • 黄金海流(1991年12月、新潮社)
  • 彷徨える帝(1994年3月、新潮社)
  • 太閤の城(1994年12月、PHP研究所、文庫題「太閤の城 結城虎之介・残月剣」)
  • 室町花伝(1995年5月、文藝春秋、文庫題「バサラ将軍」)
  • 風の如く水の如く(1996年3月、集英社
  • 関ヶ原連判状(1996年10月、新潮社)
  • 密室大坂城(1997年1月、講談社
  • 金沢城嵐の間(1997年8月、文藝春秋)
  • 難風(1998年6月、講談社、文庫題「忠直卿御座船」「佐和山炎上」)
  • 神々に告ぐ(1999年7月、角川書店、文庫題「戦国秘譚 神々に告ぐ」)
  • 海神 孫太郎漂流記(1999年9月、集英社)
  • 開陽丸、北へ 徳川海軍の興亡(1999年12月、朝日新聞社、文庫題「幕末 開陽丸 徳川海軍最後の戦い」)
  • お吉写真帖 明治維新新技術事始め(2000年7月、文藝春秋、文庫題「お吉写真帖」)
  • 信長燃ゆ(2001年6月、日本経済新聞社
  • 生きて候(2002年10月、集英社)
  • 薩摩燃ゆ(2004年7月、小学館
  • 天馬、翔ける(2004年12月、新潮社、文庫題「天馬、翔ける 源義経」)
  • 浄土の帝(2005年7月、角川書店)
  • 天下布武 夢どの与一郎(2006年9月、角川書店)
  • 恋七夜(2007年2月、集英社)
  • 道誉と正成(2009年8月、集英社)
  • 下天を謀る(2009年11月、新潮社)
  • 蒼き信長(2010年1月、毎日新聞社
  • 葉隠物語(2011年3月、エイチアンドアイ)
  • レオン氏郷(2012年9月、PHP研究所)
  • 等伯(2012年9月、日本経済新聞出版社
  • 五峯の鷹(2013年12月、小学館)
  • 冬を待つ城(2014年10月、新潮社)
  • 維新の肖像(2015年4月、潮出版社
  • 姫神(2015年8月、文藝春秋)
  • 義貞の旗(2015年10月、集英社)
  • 宗麟の海(2017年9月、NHK出版)文春文庫 2020年
  • 冬を待つ城(2017年10月、新潮社)
  • 平城京(2018年5月、KADOKAWA)
  • 蝦夷太平記 十三の海鳴り(2019年10月、集英社)
  • 海の十字架(2020年2月、文藝春秋)
  • 迷宮の月(2020年4月、新潮社)
  • 家康(幻冬舎時代小説文庫)
    1. 信長との同盟(2020年7月)
    2. 三方ヶ原の戦い(2020年8月)
    3. 長篠の戦い(2020年9月)
    4. 甲州征伐(2020年10月)
    5. 本能寺の変(2020年11月)
    6. 小牧・長久手の戦い(2020年12月)
    7. 秀吉との和睦(2022年12月)

史論・随筆など

[編集]
  • 天才信長を探しに、旅に出た(2002年6月、日本経済新聞社)
  • 戦国の山城をゆく 信長や秀吉に滅ぼされた世界(2004年4月、集英社新書
  • 名将の法則 戦国乱世を生き抜いた12人の知られざる"決断"とは(2006年8月、日本実業出版社
  • 武田信玄の古戦場をゆく なぜ武田軍団は北へ向かったのか?(2006年11月、集英社新書)
  • 徳川家康の詰め将棋 大坂城包囲網(2009年1月、集英社新書)
  • 安部龍太郎「英雄」を歩く(2013年7月、日本実業出版社)
  • 信長はなぜ葬られたのか 世界史の中の本能寺の変(2018年7月、幻冬舎新書
  • 信長になれなかった男たち 戦国武将外伝(2019年1月、幻冬舎新書)
  • 信長の革命と光秀の正義 真説本能寺(2020年1月、幻冬舎新書)
  • 日本はこうしてつくられた 大和を都に選んだ古代王権の謎(2021年1月、小学館カラー版)
  • シルクロード 仏の道をゆく(2021年7月、潮出版社)
  • 特攻隊員と大刀洗飛行場(2021年7月、PHP新書) 

共著

[編集]
  • 禅林寺 古寺巡礼京都(小木曽善龍共著、2007年3月、淡交社
  • 神の島 沖ノ島(藤原新也共著、2013年5月、小学館)
  • 対決!日本史(佐藤優、潮出版社・潮新書、2020年-)  

脚注

[編集]
  1. ^ 島内景二 (2015年9月6日). “天才絵師の生涯を骨太に描き、直木賞を受賞した安部文学の金字塔(前)”. 文藝春秋. 2024年8月31日閲覧。
  2. ^ 日外アソシエーツ現代人物情報より
  3. ^ 朝日新聞人物データベース
  4. ^ a b c d e f g h i j k 「ブレークスルー 43・作家の安部龍太郎さん」『京都新聞(朝刊)』2020年3月24日。
  5. ^ 日外アソシエーツ現代人物情報より
  6. ^ 縄田一男「解説」(新潮文庫版『血の日本史』収録)
  7. ^ 運動部 谷口誠 (2015年12月29日). “ラグビーに学ぶ日本の進む道 五郎丸氏と直木賞・安部氏が対談:勤勉さ、世界で輝く”. 日本経済新聞. 2024年8月31日閲覧。

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]