スペースX Crew-8
スターライナー・カリプソ内部から見たISSのハーモニー・モジュール天頂側ポートにドッキングしているクルードラゴン・エンデバー | |
名称 | USCV-8 |
---|---|
任務種別 | ISS乗員輸送 |
運用者 | スペースX |
COSPAR ID | 2024-042A |
任務期間 | 235日 3時間 36分 |
飛行距離 | 1億6000万km |
周回数 | 3,760 |
特性 | |
宇宙機 | クルードラゴン エンデバー |
宇宙機種別 | クルードラゴン |
製造者 | スペースX |
乗員 | |
乗員数 | 4 |
乗員 | |
長期滞在 | 第70/71/72次長期滞在 |
任務開始 | |
打ち上げ日 | 2024年3月4日 03:54 UTC[1][2] |
ロケット | ファルコン9ブロック5(B1083.1)、Flight 305 |
打上げ場所 | ケネディ宇宙センター、LC-39A |
打ち上げ請負者 | スペースX |
任務終了 | |
回収担当 | MVミーガン |
着陸日 | 2024年10月25日 07:29:02 UTC(東部夏時間午前3:29:02) |
着陸地点 | フロリダ州ペンサコーラ近くのメキシコ湾(北緯29度48分40秒 西経87度33分25秒 / 北緯29.81111度 西経87.55694度) |
軌道特性 | |
参照座標 | 地球周回軌道 |
体制 | 低軌道 |
傾斜角 | 51.66° |
ISSのドッキング(捕捉) | |
ドッキング | ハーモニー 前方側[3] |
ドッキング(捕捉)日 | 2024年3月5日 07:28 UTC |
分離日 | 2024年5月2日 12:57 UTC |
ドッキング時間 | 58日 5時間 29分 |
ISS(再配置)[注釈 1]のドッキング(捕捉) | |
ドッキング | ハーモニー 天頂側 |
ドッキング(捕捉)日 | 2024年5月2日 13:46 UTC |
分離日 | 2024年10月23日 21:05 UTC |
ドッキング時間 | 174日 7時間 19分 |
スペースX Crew-8の徽章 (左から)グレベンキン、バラット、ドミニク、エップス |
COSPAR ID | 2024-042A |
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スペースX Crew-8はクルードラゴン宇宙船による、NASA商業乗員飛行としては8回目、有人軌道飛行としては13回目の飛行[4]。このミッションは2024年3且4日に打ち上げられた[1]。
Crew-8ミッションでは4名の乗組員を国際宇宙ステーション(ISS)に輸送する。3名のNASAの宇宙飛行士マシュー・ドミニク、マイケル・バラット、ジャネット・エップスと1名のロスコスモスの宇宙飛行士アレクサンダー・グレベンキンがこのミッションに割り当てられた。ジャネット・エップスは以前はボーイング・スターライナーのミッションに割り当てられていた[5][6]。
Crew-8ミッションは、ボーイング有人飛行試験がミッション中に遭遇した問題に対応するために延長された。クルーは、2024年9月29日のCrew-9のドッキング以前に緊急事態が発生した場合に備えて、2名の宇宙飛行士を追加して収容できるようにCrew-8のカプセルを用意した[7]。
クルー
[編集]正クルー
[編集]地位[8] | 宇宙飛行士 | |
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船長 | マシュー・ドミニク, NASA 第70 / 71次長期滞在 1回目の宇宙飛行 | |
操縦士 | マイケル・バラット, NASA 第70 / 71次長期滞在 3回目の宇宙飛行 | |
第1ミッションスペシャリスト | ジャネット・エップス, NASA 第70 / 71次長期滞在 1回目の宇宙飛行 | |
第2ミッションスペシャリスト | アレクサンダー・グレベンキン, ロスコスモス 第70 / 71次長期滞在 1回目の宇宙飛行 |
予備クルー
[編集]地位 | 宇宙飛行士 | |
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船長 | ジーナ・カードマン, NASA 1回目の宇宙飛行 | |
操縦士 | ニック・ヘイグ, NASA 3回目の宇宙飛行 | |
第1ミッションスペシャリスト | ステファニー・ウィルソン, NASA 4回目の宇宙飛行 | |
第2ミッションスペシャリスト | アレクサンドル・ゴルブノフ, Roscosmos 1回目の宇宙飛行 |
ミッション
[編集]Crew-8はスペースXが商業乗員輸送計画で運用する8回目のミッションであるとともに、クルードラゴン宇宙船での13回目の完全な有人軌道飛行だった[9]。このミッションは2024年3月4日 03:53:38 UTC(打ち上げ場所の現地時間では東部夏時間3月3日午後10:53:38)に打ち上げられた[10]。スペースXは、このクルードラゴンの打ち上げで50人目の宇宙飛行士を送り出した[11]。
前日の最初の打ち上げの試みは、飛行経路の沖合で風が強くなったためにT−03:25:38に中止された [12][13][14][15]。
打ち上げの試み
[編集]注:時刻は射場現地時間(東部夏時間)
回目 | 時刻 | 結果 | 再準備期間 | 理由 | 決定時間 | 好天確率 (%) | 補足 |
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1 | 2024年3月3日4:16:00 am | 延期 | --- | 上昇風 | 2024年3月3日12:51:00 am(-03:25:38前) | 40[16] | |
2 | 2024年3月4日3:53:00 am | 成功 | 0日23時間37分 | 75[17] |
再配置
[編集]ボーイング有人飛行試験の一環として、2024年6月6日にハーモニー・モジュールの前方側ポートにドッキングするボーイング・スターライナーのために、クルーは2024年5月2日にクルードラゴン・エンデバーをハーモニーの天頂側ポートに移動させ、13:46 UTCに再ドッキングさせた[18]。スターライナー・カリプソは2024年6月5日に無事打ち上げられ、6月6日にハーモニーの前方側ポートにドッキングした[19]。
スターライナーCFTの援助
[編集]ボーイング有人飛行試験のミッションは、スラスターの異常を経験したのちに2024年6月6日にISSにドッキングした。NASAとボーイングが問題を評価する間、CFTの2名のクルーはISSへの滞在を延長した。NASAはスターライナーで乗組員を地球に帰還させるには不確実性が高すぎると判断し、Crew-9ミッションを本来の4名ではなく2名のクルーとともにISSに送り、スターライナーのクルーは2025年2月にCrew-9とともに地球に帰還することになり、一方、スターライナー宇宙船はISSから切り離されて2024年9月に無人での地球帰還に成功した。 これは、ISSにドラゴンとスターライナーで使用しているIDSSポートが2基しかないために必要な処置だった。しかしながら、ISSのクルーはそれぞれISSの緊急事態に備えて非常用「救命ボート」を必要としており、スターライナーが無人のままドッキング解除されるとスターライナーのクルーは救命ボートなしでISSに残されることになる。そこで、NASAはスターライナーがドッキング解除してからCrew-9がドッキングするまでの間の救命ボート機能を提供するために、Crew-8カプセルの貨物エリアに追加の座席を設置するようにクルーに指示した[7]。Crew-9が到着するまで、クルーは臨時の緊急避難宇宙船であるスペースX Crew-8に移動し、その後Crew-9に移動した[20]。
ミッション期間
[編集]Crew-8は、当初は通常の180日間のミッションののちに8月前半に地球に帰還する予定だったが、数度にわたってミッションが延長された。当初はNASAがCFTの状況を調査していたため延長され、ボーイングがスターライナーを無人帰還のために再構成する作業を行う間、救命ボートの機能を提供するために再度延長された。Crew-9到着後の重複期間は通常よりわずかに長く、スターライナーの宇宙飛行士がCerw-9に移動した際にCrew-8とCrew-9を再構成する時間を確保した。しかし、Crew-8の帰還はハリケーン・ミルトンと他のいくつかの嵐によって引き起こされたフロリダ周辺の着水地帯の悪天候のため、さらに数週間遅れた[21]。遅延が積み重なった結果、Crew-8 はドラゴン史上最長のミッションとなった。
帰還
[編集]Crew-8は、2024年10月23日 21:05 UTCにISSからドッキング解除した。3,760周の軌道周回を完了し、およそ100 million miles (160 million kilometers)を移動したのちに、エンデバーは地球の大気圏への再突入を開始し、2024年10月25日 07:29:02 UTC(現地時間東部夏時間午前3:29:02)にフロリダ州ペンサコーラ近くのメキシコ湾に着水した[22]。カプセルは回収船MVミーガンに引き上げられた。クルーは、宇宙船から降りたのちに健康評価のためにミーガン船上の医療施設に送り込まれた。検査の後で、NASAはさらに評価するためにクルーをヘリコプターでアセンション・セイクリッド・ハート・ペンサコーラ病院へと移送した。宇宙飛行士1名が入院したが、NASAは当該人物の容態や身元を明らかにすることを拒否した。NASAは、突入と着水は正常であり、クルーと宇宙船の回収は問題なく行われたと述べた[23]。宇宙飛行士は翌日に退院し、「健康状態は良好」だと言われている[24]。
ギャラリー
[編集]- スペースX Crew-8
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ドラゴン宇宙船は、5月7日に予定されているボーイング・スターライナーがドッキングできるように天頂側ポートに移動する
出典
[編集]- ^ a b “NASA's SpaceX Crew-8 - NASA” (英語). 2024年2月13日閲覧。
- ^ Parra, Marissa; Cohen, Rebecca (4 March 2024). “SpaceX, NASA successfully launch manned Crew-8 mission to International Space Station”. NBC News (Cape Canaveral, Florida) 4 March 2024閲覧。
- ^ “Crew-8 Mission Overview”. National Aeronautics and Space Administration (NASA). National Aeronautics and Space Administration (NASA) (n.d.). 3 March 2024閲覧。 “Crew-8 will dock to the forward-facing port of the Harmony module”
- ^ “NASA, SpaceX Target NET Feb. 22 to Launch Crew-8 – NASA's SpaceX Crew-8 Mission” (英語). blogs.nasa.gov (2024年1月31日). 2024年10月29日閲覧。
- ^ “What You Need to Know about NASA's SpaceX Crew-8 Mission - NASA” (英語) (2024年1月26日). 2024年2月1日閲覧。
- ^ “NASA Astronaut from Syracuse is ready for liftoff” (英語). WXXI News (2024年1月30日). 2024年2月1日閲覧。
- ^ a b Stich, Steve (24 August 2024). NASA's Boeing Crew Flight Test Status News Conference. NASA. 該当時間: 1:22:00. YouTubeより2024年8月25日閲覧。
- ^ O'Shea, Claire A. (5 August 2023). “Space Station Assignments Out for NASA's SpaceX Crew-8 Mission”. NASA. 5 August 2023閲覧。
- ^ “NASA, SpaceX Target NET Feb. 22 to Launch Crew-8 – NASA's SpaceX Crew-8 Mission” (英語). blogs.nasa.gov (31 January 2024). 1 February 2024閲覧。
- ^ “NASA's SpaceX Crew-8”. NASA. 2024年10月29日閲覧。
- ^ SpaceX [@SpaceX]. "50 crewmembers launched and counting! Earlier tonight, Crew-8 signed the White Room at the end of the crew access arm ahead of boarding Dragon and liftoff". X(旧Twitter)より2024年10月29日閲覧。
- ^ Malik, Tariq (28 February 2024). “SpaceX delays Crew-8 astronaut launch for NASA to March 2 due to bad weather”. Space.com 5 March 2024閲覧。
- ^ NASA Commercial Crew [@Commercial_Crew] [in 英語] (2024年2月29日). "Teams with @NASA and @SpaceX now are targeting March 2 for the launch of the agency's #Crew8 mission to @Space_Station due to unfavorable weather conditions in offshore areas along the flight track of the Dragon spacecraft" (英語). X(旧Twitter)より2024年3月5日閲覧。
- ^ Malik, Tariq (3 March 2024). “SpaceX delays Crew-8 astronaut launch for NASA due to high winds, next try on March 3”. Space.com 4 March 2024閲覧。
- ^ Neale, Rick; Haris, Bianca (2 March 2024). “NASA SpaceX launch: Crew-8's mission from Cape Canaveral scrubbed over weather conditions”. USA Today 5 March 2024閲覧。
- ^ NASA Commercial Crew [@Commercial_Crew] [in 英語] (2024年2月29日). "Launch weather officers with @SLDelta45 predict a 40% chance of favorable weather conditions for the launch of @NASA's @SpaceX #Crew8 mission at 11:16 pm ET March 2 from @NASAKennedy's Launch Complex 39A" (英語). X(旧Twitter)より2024年3月5日閲覧。
- ^ NASA Commercial Crew [@Commercial_Crew] [in 英語] (2024年3月3日). "For @NASA's @SpaceX #Crew8 launch, targeted at 10:53pm ET tonight, the @SLDelta45 predicts a 75% chance of favorable weather conditions" (英語). X(旧Twitter)より2024年3月5日閲覧。
- ^ Wall, Mike (2 May 2024). “SpaceX's Crew-8 astronauts move Dragon at the ISS to make way for Boeing's Starliner”. Space.com. Future US, Inc.. 2 May 2024閲覧。 “Endeavour autonomously docked with Harmony's space-facing port, Zenith, at 9:46 a.m. EDT (1346 GMT).”
- ^ Foust, Jeff (6 June 2024). “Starliner docks with International Space Station on crewed test flight”. SpaceNews. 8 June 2024時点のオリジナルよりアーカイブ。6 June 2024閲覧。
- ^ Garcia, Mark (2024年9月4日). “Crew Studies Space Effects on Humans, Prepares Spaceships for Departure” (英語). blogs.nasa.gov. 2024年9月5日閲覧。
- ^ Wulfeck, Andrew (2024年10月19日). “SpaceX’s Crew-8 prepare to depart space station after weeks of weather delays” (英語). FOX Weather. 2024年10月23日閲覧。
- ^ Taveau, Jessica (2024年10月25日). “Back on Earth: NASA’s SpaceX Crew-8 Mission Splashes Down Off Florida” (英語). NASA. 2024年10月25日閲覧。
- ^ Garcia, Mark (2024年10月25日). “NASA Provides Update on Agency’s SpaceX Crew-8 Health” (英語). NASA. 2024年10月25日閲覧。
- ^ Clark, Stephen (2024年10月25日). “Astronaut released from hospital after “medical issue” upon return from space” (英語). Ars Technica. 2024年10月28日閲覧。