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インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2007年イープル・ラリー

インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ(The Intercontinental Rally Challenge、IRC)は、ヨーロッパのスポーツ専門放送局ユーロスポーツが主催および運営し、2006年から2012年まで行なわれた国際ラリー選手権シリーズ。

一時は欧州でWRCに比肩する人気を集めていたが、ユーロスポーツが2013年以降のヨーロッパラリー選手権(ERC)のプロモーターとなることから、ERCに統合される形で2012年シーズンを最後に終了した。

概要

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当時の世界ラリー選手権(WRC)の参戦コストが年々高騰していたことから、WRCよりも低いコストで参戦出来る国際ラリーシリーズとして発足した[1]。発起人はFIA副会長のマルコ・ピッチニーニと、英国の元ラリードライバーで後に世界ツーリングカー選手権(WTCC)代表にもなるジョナサン・アシュマン。なおアシュマンは創設にあたって「1970年代WRCのような(安価かつ多様なマシンが溢れ、弱小プライベーターでも勝利を争える)選手権を開催したい」と語っている[2]

2006年に『インターナショナル・ラリー・チャレンジ』として暫定的に開催され、2007年から正式にスタートした。

2009年ラリー・プリンセサのシュコダ・ファビアS2000

外観が市販車に近くプライベーターにも低コストで運用しやすい、市販車販売戦略に結びつくなどの理由から、2,000ccまでのグループAスーパー2000)とグループNR規定を中心に据えた[1]。加えて各開催地の独自規定車両もポイント対象となるなど、WRCと異なり厳格な規定は求めない傾向にあった。

放送局が主催するシリーズということで、テレビ中継やインターネット配信などのメディア露出の多さも魅力であった。なお、メーカーがマニュファクチャラー登録をした場合のみ、そのマシンを使用するチームがポイント対象となり、ユーロスポーツの放送にも映されるというシステムを用いており、これもメーカー参戦を促進した。

2012年イープル・ラリーのホンダ・シビックタイプR R3

ドライバーは若手やアマチュアドライバーが多かったが、イベントによっては現役のWRCやPWRCドライバーも参戦していた。ランキングは有効ポイント制で、2011年まではベスト7戦、2012年はベスト8戦の合計得点で争われる。全選手を対象とした総合ランキングのほかに、2WD車を対象とした2WDカップ、スーパー2000以外の市販車を対象としたプロダクションカップも表彰される。しばし日本人も参戦し、2011年は新井敏弘(スバル)がプロダクションカップを獲得した。

シリーズはWRCのように単独開催ではなく、ヨーロッパを中心とした世界各地のラリーの中から人気や伝統のあるイベントを選んで選手権指定する方式。同時期にWRCが1イベントにつき2年に1度の開催という変則的なスケジュールを用いていたこともあり、上記のモンテカルロ以外にもサファリラリーツール・ド・コルスラリー・サンレモといったWRCカレンダーから外れた有名なイベントを混じえることができており、運営方法もイベントごとの個性をある程度尊重していた[1]2009年シリーズはラリージャパンもスケジュールに組み込まれていたが開催されず、IRCの補助的なイベントとしてラリー北海道アジアパシフィックラリー選手権のイベント)が指定された。FIAの定めた方式に則って全てが厳格に行われるWRCに対し、IRCでは各イベントに方式が委ねられていたため、自由な雰囲気が味わえるのも魅力の一つだった。

2012年シビウ・ラリーの三菱・ランサーエボリューション X R4

一方でユーロスポーツがプロモーションをしていたということや、開催地が欧州に偏っていることなどから、欧州以外の地域でのファン人気は限定的になってしまっていた面もあった。欧州でのマーケティングのために自動車のディストリビューター(卸売業者)系やディーラー(販売店)系チームの参加が多かったが、これはつまり彼らがフル参戦できる程度の資金コストまでしかかからなかったということでもあり、つまり欧州に開催地が集中してしまうということでもあった[3]

2010年時点でワークスがわずか2社にまで後退したWRCに比べると、同時期のIRCにはアバルトプジョープロトンラリーアートシュコダスバルが、さらに2012年にはルノーMINIもマニュファクチャラー登録するなど、実に多彩なメーカーが集結した[4]。また2WD部門でもプジョー、ルノー、ホンダフォルクスワーゲンなどがマニュファクチャラー登録しており、ホンダは2012年にマニュファクチャラーズタイトルを獲得している。さらに伝統の一戦であるラリー・モンテカルロをWRCから2009〜2011年と3年続けて奪い取るほどに、IRCは欧州ファン人気も高かった(特に2011年はモンテカルロ100周年記念であった)。

しかし北米のオープンホイールスポーツカーレースの分裂ほど顕著な対立では無いにせよ、ラリーのトップカテゴリが競合しているという状況はFIAにとって望ましいものとは言い難く、2007年頃からWRCとの統合の話は持ち上がっていた[5]。前述の通りIRCも、当初の目的とは異なり欧州以外に開催地を広げることができないという課題を解決できなかったこともあり、最終的にIRCはERCと統合、FIAもWRC含め車両規定やカテゴリ構成を大きく刷新することで決着を見た。

歴代チャンピオン

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年度 シリーズチャンピオン マニュファクチャラー部門
ドライバー コ・ドライバー 車両
2006 イタリアの旗 ジャンドメニコ・バッソ イタリアの旗 ミティア・ドッタ フィアット・プント・アバルト S2000
2007 スペインの旗 エンリケ・オヘダ スペインの旗 ヨルディ・バラデス プジョー・207 S2000
2008 フランスの旗 ニコラス・ヴイヨズ フランスの旗 ニコラス・クリンガー プジョー・207 S2000 フランスの旗 プジョー
2009 イギリスの旗 クリス・ミーク アイルランドの旗 ポール・ネーグル プジョー・207 S2000 フランスの旗 プジョー
2010 フィンランドの旗 ユホ・ハンニネン フィンランドの旗 ミッコ・マルックラ シュコダ・ファビア S2000 チェコの旗 シュコダ
2011 ノルウェーの旗 アンドレアス・ミケルセン ノルウェーの旗 オーラ・フロエネ シュコダ・ファビア S2000 チェコの旗 シュコダ
2012 ノルウェーの旗 アンドレアス・ミケルセン ノルウェーの旗 オーラ・フロエネ シュコダ・ファビア S2000 チェコの旗 シュコダ

開催イベント

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2006年

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  1. 南アフリカ共和国の旗 ラリー・サウスアフリカ
  2. ベルギーの旗 イープル・ラリー
  3. ポルトガルの旗 ラリー・マデイラ
  4. イタリアの旗 ラリー・サンレモ

2007年

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  1. ケニアの旗 サファリラリー
  2. トルコの旗 イスタンブール・ラリー
  3. ベルギーの旗 イープル・ラリー
  4. ロシアの旗 ラリー・ロシア
  5. ポルトガルの旗 ラリー・マデイラ
  6. チェコの旗 チェコ・ラリー・ズリーン
  7. イタリアの旗 ラリー・サンレモ
  8. スイスの旗 ラリー・ド・ヴァレー
  9. 中華人民共和国の旗 ラリー・チャイナ

2008年

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  1. トルコの旗 イスタンブール・ラリー
  2. ポルトガルの旗 ラリー・ド・ポルトガル
  3. ベルギーの旗 イープル・ラリー
  4. ロシアの旗 ラリー・ロシア
  5. ポルトガルの旗 ラリー・マデイラ
  6. チェコの旗 チェコ・ラリー・ズリーン
  7. スペインの旗 ラリー・アストゥリアス
  8. イタリアの旗 ラリー・サンレモ
  9. スイスの旗 ラリー・ド・ヴァレー
  10. 中華人民共和国の旗 ラリー・チャイナ

サファリラリーが開幕戦として設定されていたが、同年1月から開催予定だったダカール・ラリーが政情不安等から中止になったのを受けて、こちらも中止となった。

2009年

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  1. モナコの旗 ラリー・モンテカルロ
  2. ブラジルの旗 ラリー・オブ・クリティバ
  3. ケニアの旗 サファリラリー
  4. ポルトガルの旗 ラリー・アゾレス
  5. ベルギーの旗 イープル・ラリー
  6. ロシアの旗 ラリー・ロシア
  7. ポルトガルの旗 ラリー・マデイラ
  8. チェコの旗 チェコ・ラリー・ズリーン
  9. スペインの旗 ラリー・アストゥリアス
  10. イタリアの旗 ラリー・サンレモ
  11. スコットランドの旗 ラリー・オブ・スコットランド

ラリージャパンが設定されていたが、WRC開催に専念する等の理由で中止となった。

2010年

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  1. モナコの旗 ラリー・モンテカルロ
  2. ブラジルの旗 ラリー・オブ・クリティバ
  3. アルゼンチンの旗 ラリー・アルゼンチン
  4. スペインの旗 ラリー・イスラス・カナリアス
  5. イタリアの旗 ラリー・サルディニア
  6. ベルギーの旗 イープル・ラリー
  7. ポルトガルの旗 ラリー・アゾレス
  8. ポルトガルの旗 ラリー・マデイラ
  9. チェコの旗 チェコ・ラリー・ズリーン
  10. イタリアの旗 ラリー・サンレモ
  11. スコットランドの旗 ラリー・オブ・スコットランド
  12. キプロスの旗 キプロス・ラリー

2011年

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  1. モナコの旗 ラリー・モンテカルロ
  2. スペインの旗 ラリー・イスラス・カナリアス
  3. フランスの旗 ツール・ド・コルス
  4. ウクライナの旗 ヤルタ・ラリー
  5. ベルギーの旗 イープル・ラリー
  6. ポルトガルの旗 ラリー・アゾレス
  7. チェコの旗 チェコ・ラリー・ズリーン
  8. ハンガリーの旗 メチェック・ラリー
  9. イタリアの旗 ラリー・サンレモ
  10. スコットランドの旗 ラリー・オブ・スコットランド
  11. キプロスの旗 キプロス・ラリー

2012年

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  1. ポルトガルの旗 ラリー・アゾレス
  2. スペインの旗 ラリー・イスラス・カナリアス
  3. アイルランドの旗 アイルランド・ラリー
  4. フランスの旗 ツール・ド・コルス
  5. イタリアの旗 タルガ・フローリオ
  6. ベルギーの旗 イープル・ラリー
  7. サンマリノの旗 ラリー・サンマリノ
  8. ルーマニアの旗 ラリー・ルーマニア
  9. チェコの旗 チェコ・ラリー・ズリーン
  10. ウクライナの旗 ヤルタ・ラリー
  11. ブルガリアの旗 ラリー・スリベン
  12. イタリアの旗 ラリー・サンレモ
  13. キプロスの旗 キプロス・ラリー

参戦メーカー(マニファクチャラー)

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2007年
2008年
  • アバルト - フィアット・グランデプント・アバルト Super2000
  • プジョー - 207 Super2000
  • 三菱自動車 - ランサーエボリュションIX グループN
  • フォルクスワーゲン - ポロ Super2000
  • ホンダ - シビックタイプR R3 (FN2)
2009年
  • プジョー - 207 Super2000
  • アバルト - フィアット・グランデプント・アバルト Super2000
  • シュコダ - ファビア Super2000
  • 三菱自動車 - ランサーエボリュションIX・X グループN
  • プロトン - サトリアネオ Super2000
  • フォルクスワーゲン - ポロ Super2000
  • ホンダ - シビックタイプR R3 (FN2)
2010年
  • プジョー - 207 Super2000
  • Mスポーツ - フォード・フィエスタ Super2000
  • シュコダ - ファビア Super2000
  • アバルト - フィアット・グランデプント・アバルト Super2000
  • スバル - インプレッサ WRX STI グループN
  • 三菱自動車 - ランサーエボリュションIX・X グループN
  • フォルクスワーゲン - ポロ Super2000
  • プロトン - サトリアネオ Super2000
  • ホンダ - シビックタイプR R3 (FN2)
2011年
  • シュコダ - ファビア Super2000
  • プジョー - 207 Super2000
  • Mスポーツ - フォード・フィエスタ Super2000
  • プロトン - サトリアネオ Super2000
  • アバルト - フィアット・グランデプント・アバルト Super2000
  • スバル - インプレッサ WRX STI R4・グループN
  • 三菱自動車 - ランサーエボリュションIX・X R4・グループN
  • フォルクスワーゲン - ポロ Super2000
  • ホンダ - シビックタイプR R3 (FN2)
2012年
  • シュコダ - ファビア Super2000
  • プジョー - 207 Super2000
  • 三菱自動車 - ランサーエボリュションIX・X R4・グループN
  • Mスポーツ - フォード・フィエスタ Super2000
  • スバル - インプレッサ WRX STI R4・グループN
  • ルノー - メガーヌ RS グループN / クリオ R3
  • ホンダ - シビックタイプR R3 (FN2)
  • ミニ - ジョン・クーパー・ワークス Super2000

タイヤメーカー

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2009年は3社がタイヤを供給している。

2011年

ワークスとして参戦するシュコダ、アバルト、プジョーはBFグッドリッチを使用し、プライベーターの殆どがピレリかBFグッドリッチを使用しており、横浜ゴムの利用者は極めて稀であった。

脚注

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  1. ^ a b c "Intercontinental Rally Challenge 2010". 横浜ゴム.(2010年)2014年1月25日閲覧。
  2. ^ 『AUTOSPORT No.1241』P56 2010年2月4日発売 三栄書房刊行
  3. ^ 『AUTOSPORT No.1241』P58 2010年2月4日発売 三栄書房刊行
  4. ^ "スバル、IRCにマニュファクチャラーとして登録". オートスポーツ.(2009年12月5日)2014年1月25日閲覧。
  5. ^ WRCとIRCの統合計画が進行中!?

外部リンク

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