国立感染症研究所
国立感染症研究所 | |
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国立感染症研究所(戸山庁舎)正門、2007年3月 | |
正式名称 | 国立感染症研究所 |
英語名称 | National Institute of Infectious Diseases |
略称 | 感染研 |
組織形態 | 施設等機関 |
戸山庁舎所在地 |
日本 〒162-8640 東京都新宿区戸山1丁目23番1号 北緯35度42分15.02秒 東経139度43分2.56秒 / 北緯35.7041722度 東経139.7173778度座標: 北緯35度42分15.02秒 東経139度43分2.56秒 / 北緯35.7041722度 東経139.7173778度 |
予算 | (本省試験研究所試験研究費)33億3869万4千円[注釈 1][1] |
人数 | 716人[2][3] |
所長 |
脇田隆字 (2018年4月1日 ~ )[4] |
活動領域 | 感染症 |
設立年月日 | 1997年(平成9年) |
前身 | 国立予防衛生研究所(1947年(昭和22年) - 1997年(平成9年)) |
所管 | 厚生労働省 |
公式サイト | 国立感染症研究所 |
国立感染症研究所(こくりつかんせんしょうけんきゅうしょ、英語: National Institute of Infectious Diseases, NIID)は、厚生労働省の施設等機関。1947年(昭和22年)に設立された国立予防衛生研究所(略称:予研、英語: National Institute of Health, NIH)を前身とする。2025年に国立国際医療研究センターと合併し、非公務員型の特殊法人「国立健康危機管理研究機構」に再編される予定である[5]。
概要
[編集]所掌事務
[編集]- 病原及び病因の検索並びに予防及び治療の方法の研究及び講習を行うこと。
- 予防、治療及び診断に関する生物学的製剤、抗菌性物質及びその製剤、消毒剤、殺虫剤並びに殺鼠剤の生物学的検査、検定及び試験的製造、並びにこれらの医薬品及び医薬部外品の生物学的検査及び検定に必要な、標準品の製造を行うこと。
- ペストワクチン、その他使用されることが稀である生物学的製剤、又はその製造が技術上困難な生物学的製剤の製造を行うこと。
- 食品衛生に関し、細菌学的及び生物学的試験及び検査を行うこと。
- その他予防衛生に関し、科学的調査及び研究を行うこと。
- 予防衛生に関する試験、及び研究の調整を行うこと。
所在地
[編集]- 戸山庁舎:〒162-8640 東京都新宿区戸山1-23-1 厚生労働省戸山研究庁舎内(北緯35度42分15.02秒 東経139度43分2.56秒 / 北緯35.7041722度 東経139.7173778度)
- 村山庁舎:〒208-0011 東京都武蔵村山市学園4-7-1(北緯35度44分41.16秒 東経139度24分6.11秒 / 北緯35.7447667度 東経139.4016972度)
- 国立病院機構村山医療センター(旧:国立療養所村山病院)に近接。
- ハンセン病研究センター:〒189-0002 東京都東村山市青葉町4-2-1(北緯35度46分6.96秒 東経139度29分59.58秒 / 北緯35.7686000度 東経139.4998833度)
- 旧:国立らい研究所→国立多摩研究所[6]。
村山庁舎
[編集]村山庁舎は、陸軍病院から戦後厚生省に移管され結核療養所(サナトリウム)となった国立療養所村山病院(現:国立病院機構村山医療センター)の敷地内に、1961年(昭和36年)に「国立予防衛生研究所ワクチン検定庁舎」として設立されたのを始まりとする[7]。
予研村山庁舎は理研筑波研究所と並び、バイオセーフティーレベル4 (BSL4、当時はP4施設と呼ばれていた)の実験施設として設計され、1981年(昭和56年)に完成していたが、両施設とも近隣住民や武蔵村山市からの反対により、運用は当面の間BSL3までとされ、BSL4が要求される研究は行えなかった[8][9]。なお、エボラウイルス属の遺伝子・血清学的診断などウイルス学的検査については村山庁舎のウイルス第一部第一室で対応可能である[10]。
2014年の西アフリカエボラ出血熱流行に伴い、エボラ出血熱感染が疑われる患者の詳細な検査や治療薬の開発のため、2014年11月より厚生労働大臣が武蔵村山市長と協議を開始[9]。翌2015年8月7日に村山庁舎が日本で初めてBSL4施設に指定された[11][12]。
ただしこの際のBSL4施設稼働については、将来的な移転を市が条件としていたことと、村山庁舎の老朽化が指摘されていたことから、厚生労働省は2020年8月5日、武蔵村山市に対しBSL4施設の移転を検討開始することを伝えた[13][14][15][16][17][18][19]。
沿革
[編集]- 1947年(昭和22年)5月21日 - 東京帝国大学附属伝染病研究所(現・東京大学医科学研究所)の一部を独立させ、厚生省所管の予防衛生研究所を設置[20]。
- 1948年(昭和23年)8月31日 - 原子爆弾影響研究所を広島および長崎に開設[21]。
- 1949年(昭和24年)6月1日 - 国立予防衛生研究所に改称[22]。
- 1955年(昭和30年)
- 1961年(昭和36年) - 国立療養所村山病院の敷地にワクチン検定庁舎(後の村山庁舎)を設置[7]。
- 1962年(昭和37年)6月 - 国立らい研究所を「国立多摩研究所」へ改称[6]。
- 1975年(昭和50年)4月1日 - 原子爆弾影響研究所を放射線影響研究所へ移管[7]。
- 1978年(昭和53年)4月5日 - 筑波医学実験用霊長類センター設置[7]
- 1980年(昭和55年) - 村山分室に高度安全実験室(P4施設)が完成。しかし周辺住民の反対運動により稼働せず。
- 1988年(昭和63年) - エイズ研究センターを設置。
- 1992年(平成4年)10月 - 本部を新宿区戸山の厚生省戸山研究庁舎(陸軍軍医学校跡地)へ移転。
- 1997年(平成9年)4月1日
- 2002年(平成14年)- 一部を国立保健医療科学院・国立医薬品食品衛生研究所へ移管。
- 2005年(平成17年)- 筑波医学実験用霊長類センターほかを医薬基盤研究所へ移管。
- 2008年度(平成20年度)- ハンセン病研究センターにBSL3施設となる第二研究棟が完成[6]。
- 2015年(平成27年)8月7日 - 村山分室がBSL4施設として日本初指定[9][11]。
- 2020年(令和2年)8月5日 - 村山分室の施設老朽化などにより移転を求める武蔵村山市に対し、厚生労働省が移転検討開始を伝える。
組織
[編集]- 総務部
- 企画調整主幹
- ウイルス第一部
- ウイルス第二部
- ウイルス第三部
- 細菌第一部
- 細菌第二部
- 寄生動物部
- 感染病理部
- 免疫部
- 真菌部
- 細胞化学部
- 昆虫医科学部
- 獣医科学部
- 血液・安全性研究部
- 品質保証・管理部
- 安全実験管理部
- 感染症疫学センター
- エイズ研究センター
- 病原体ゲノム解析研究センター
- インフルエンザウイルス研究センター
- ハンセン病研究センター
- ハンセン病研究センター感染制御部
- 感染症危機管理センター
- 国際協力室
歴代所長
[編集]所長は、国家公務員指定職の厚生労働技官であり、技官の中でも医務技監に並んで最高位の職務である。
研究所関係者一覧
[編集]不祥事
[編集]- 新薬スパイ事件
1983年、前身の国立予防衛生研究所において、新薬スパイ事件と抗生物質不正検定事件が発生、職員が逮捕され、所長と抗生物質部長が引責辞職した。
- 収賄と官製談合
2010年、焼却炉解体工事で便宜を図る見返りに廃棄物処理会社の社長から現金200万円を受け取ったとして、総務部会計課係長が収賄容疑で逮捕され、その後収賄と官製談合防止法違反の罪で起訴された[23][24]。東京地裁は執行猶予付きの有罪判決を言い渡したが、判決の中ではその上で感染研の内部管理体制にも問題があったことが指摘された[25]。
論文捏造
- 2006年、エイズ研究センターの複数の論文についての内部告発の存在が報道された[26]。告発された論文の一つは2005年に撤回されていた。
- 2015年、「捏造問題にもっと怒りを」というウェブサイト[27]のコメント欄で、エイズ研究センターやウイルス第三部の複数の論文に不自然な改変や酷似画像があることが指摘された(匿名Aによる論文大量不正疑義事件)。一部の論文については、不正行為が存在する疑いはないと判断されたことが東京大学から発表された[28]。
- 2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に、ウイルス第三部の元研究員だった岡田晴恵が、ワイドショーの生放送で「国立感染症研究所のOBの陰謀によりPCR検査を制限している」旨の発言を行った。この発言を受け、2000年頃に浮上していた岡田氏の論文疑義についての情報が有志により週刊文春に提供され、疑義の報道が行われた[29]。
- 飲酒送別会
新型コロナウイルス緊急事態宣言発令下の2021年3月18日、21人が食堂に集まって送別会を開催。田村憲久厚生労働相は研究所を厳重注意処分とした[30]。
関連事項
[編集]- 戸山庁舎の敷地内では、陸軍軍医学校時代のものと思われる人骨が1989年に発見され、敷地内の設備で保管されている。
- 2023年、戸山庁舎の一般公開に反ワクチン活動家が来場し、脇田隆字所長の意見は自分と同じだとSNSで無断発信した。所長はその無断発信を否定するプレスリリースを数日後に発表した[31][32]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 本省試験研究所共通費(人件費など58億2949万7千円)・本省試験研究所施設費(1億5321万5千円)・周辺安全対策等事業費補助金(武蔵村山市 2億2258万6千円)は別。
出典
[編集]- ^ 令和4年度厚生労働省各目明細書. 第208回国会(常会)提出. 厚生労働省. pp. 152頁以下. オリジナルの2022年4月19日時点におけるアーカイブ。 . "13087-2203-09試験研究費 3,167,964千円"
- ^ 令和4年度厚生労働省各目明細書. 厚生労働省. p. 144頁 . "一般職 716人"
- ^ “感染研の人員、倍増へ”. 朝日新聞デジタル. (2020年12月20日). オリジナルの2021年7月31日時点におけるアーカイブ。
- ^ “所長挨拶”. 国立感染症研究所 (2018年4月21日). 2018年4月21日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2023年5月31日). “「国立健康危機管理研究機構」創設 参院本会議で可決・成立 | NHK”. NHKニュース. 2023年6月5日閲覧。
- ^ a b c d e 国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 国立感染症研究所
- ^ a b c d e 『予研40年のあゆみ』国立予防衛生研究所、1988年。 NCID BN03570372。
- ^ 藤野基文 (2014年11月17日). “エボラ出血熱:国立感染研村山庁舎の施設稼働で協議”. 毎日新聞. オリジナルの2014年12月14日時点におけるアーカイブ。 2014年11月18日閲覧。
- ^ a b c “【エボラ出血熱】実験施設稼働に向け協議へ 塩崎厚労相が武蔵村山市長と合意”. 産経ニュース. (2014年11月17日) 2014年11月18日閲覧。
- ^ 国立感染症研究所 (2012年3月). “エボラ出血熱診断マニュアル” (PDF). 2014年8月10日閲覧。
- ^ a b 日本経済新聞社 (2015年8月7日). “「BSL4」施設、国内初の指定 国立感染症研・村山庁舎”. 2016年2月6日閲覧。
- ^ 武田徹 (2019年10月26日). “高病原性ウイルスを輸入する感染症研究所を訪ねて 五輪を前に休眠から目覚めたBSL4施設”. 論座(RONZA)- 朝日新聞社の言論サイト. 朝日新聞社. 2021年2月1日閲覧。
- ^ 国立感染症研の村山庁舎BSL4施設の移転検討 年内に候補地決定 毎日新聞、2020年8月5日
- ^ 東京 武蔵村山市の病原体扱う施設 移転先など具体的に検討へ NHKニュースWeb、2020年8月5日
- ^ エボラなど扱うBSL4施設、移転の検討開始へ 厚労省 朝日新聞デジタル、2020年8月5日
- ^ 【厚労省検討会】BSL-4施設移転へ議論‐感染研本部近接に設置を 薬事日報電子版、2020年11月6日
- ^ ウイルス扱う特別施設 場所要件など報告書 日テレNEWS24、2020年12月12日
- ^ 大臣官房厚生科学課「国立感染症研究所 村山庁舎 BSL-4の今後の検討について」 厚生労働省 戸山研究庁舎、令和2年(2020年)8月
- ^ BSL-4施設のあり方検討会における倉根班報告書(BSL-4施設に関する部分)に関する説明資料 厚生労働省、2020年10月22日
- ^ 昭和22年政令第58号NDLJP:2962617/1
- ^ 昭和23年厚生省訓令第419号NDLJP:2963069/4
- ^ 昭和24年法律第151号NDLJP:2963253/58
- ^ 元感染研職員ら逮捕 東京地検、200万円贈収賄容疑 日本経済新聞 2010年6月22日付
- ^ 感染研職員ら起訴、工事入札巡る贈収賄事件 2010年7月10日付
- ^ 感染研汚職、元職員に有罪 東京地裁判決 2020年10月4日付
- ^ “エイズワクチン論文を訂正 国立感染研”. web.archive.org. 朝日新聞 (2006年8月12日). 2022年10月16日閲覧。
- ^ 捏造問題にもっと怒りを 日本の科学を考える 2016年12月6日閲覧。匿名Aの約4000件のコメントは2017年1月に運営者によってほぼ全て削除されたが、84報の疑義を指摘した6件のコメントは、「Doctor G 3 のメディカル・ポプリ」というブログの2015年1月10日付の記事に全て転記されている。また、削除された他のコメントの一部は次のアーカイブから閲覧可能。https://archive.is/tDAqj (2015年1月6日 11:59:18 UTC) https://archive.is/UEdyv (2015年1月15日 05:51:11 UTC) https://archive.is/7fBa5 (2015年1月18日 12:59:43 UTC)
- ^ 「東大『論文に不正行為ない』」朝日新聞、2015年8月1日
- ^ 「週刊文春」 (2020年3月26日). “「不正実験データ」で感染研所長が論文取り下げを要求”. 文春オンライン. 2020年11月11日閲覧。
- ^ 「感染研の21人送別会 「問題なし」から一転、厳重注意」【朝日新聞】2021年4月9日付
- ^ “感染研所長、SNSの一部投稿に異例の「見解」 コロナワクチン巡り”. 毎日新聞. 2023年11月2日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2023年11月1日). “国立感染症研究所所長 “SNSなどに意図と異なる発言内容” | NHK”. NHKニュース. 2023年11月2日閲覧。
関連項目
[編集]関連項目が多すぎます。 |
- 伝染病/感染症/疫学/院内感染/薬剤耐性
- 感染症新法/伝染病予防法
- HIV/ハンセン病/国立療養所多磨全生園/国立ハンセン病資料館
- 医学/歯学/薬学/獣医学/公衆衛生学
- 微生物学/細菌学/口腔細菌学/ウイルス学/真菌学/寄生虫学
- 感染症専門医/インフェクションコントロールドクター/医師/歯科医師/薬剤師/看護師/臨床検査技師/診療放射線技師
- 厚生労働省
- 日本感染症学会/日本環境感染学会/日本ウイルス学会/日本熱帯医学会/日本衛生動物学会/日本公衆衛生学会
- 国立健康・栄養研究所(同じ建物である厚生労働省戸山合同研究庁舎にある)/ 国立国際医療研究センター
- 学会の一覧/研究会
- 匿名Aによる論文大量不正疑義事件
- 世界保健機関(WHO)
- 東京大学新世代感染症センター(UTOPIA)
- アメリカ疾病予防管理センター(CDC)
- 欧州疾病予防管理センター(ECDC)