EMIEW (ロボット)
EMIEW(エミュー)とは、日立製作所が2005年に開発したロボット。
2007年にはEMIEW2を発表し[1]、2016年10月よりEMIEW3の実証実験を開始した[2]。2020年4月20日から、稼働時間や移動性能などの実用性能を大幅に高めたヒューマノイド型の新モデルEMIEW4をオフィスや病院、福祉施設などを中心に、国内で販売開始し[3]、2018年10月にはタブレット端末と専用クレードル で「EMIEW」のアバター(分身)と会話ができる卓上型の「EMIEW-TT(エミューティーティー)」を開発し[4]、ラインナップに加えている[3]。EMIEWは「Excellent Mobility and Interactive Existence as Workmate」の略称[5]。 二体のEMIEW をシナリオ制御に基づいて速度 1.7 m/s(6 km/h)で連動させる走行演技では、複雑に交差した移動軌跡上で EMIEW 同士が衝突することなく安全にデモ走行を実現できた[6]。「愛・地球博」の会場内の「プロトタイプロボット展」での「ロボットカフェ」のウェイターとして対象物の搬送作業を行うというコンセプトの技術紹介デモ[7]の実績では、平均騒音レベル70dBの背景騒音条件で,1~4 m の距離を経て不特定話者の発声に対応した遠隔音声認識が可能で、識別可能な語彙は100語、キーワード識別機能をもち、予め対話のキーとなる単語を登録しておくことで、聴き取ったフレーズの中に該当する単語が存在した場合のみ、対応するアクションを発生できる実績を示した[8]。 移動システムには、床面占有面積を狭くできて人の邪魔にならず、小回りが利いて俊敏な移動が可能で、重心の高い移動体の姿勢をアクティブに安定に制御可能な倒立振子移動システムを採用し、人間並みの移動速度 1.7 m/s(6km/h(ホンダのASIMOも2005年に可能[9])で胴体に実装したレーザスキャナによる実時間障害物監視と、それに基づく実時間衝突回避制御を可能とした[10]。
人と同じ生活空間で人と同程度の速さで機敏に動きながら人をサポートするというEMIEWのコンセプトはそのままに、EMIEW2はオフィスでの案内や巡回などでの利用を想定した実用的な身長かつ安全性を確保するために小型・軽量化している。倒立振子方式では、電源が落ちて制御ができなくなると、バランスをくずして倒れてしまう[1]ため、「EMIEW3」は「EMIEW2」より重心を低くし、補助輪を付けて転倒からの復帰も可能となり実サービスの活用を視野に開発され[11]、羽田空港での実証実験によって人だけでなく、インフォメーションアナウンスなど雑音下でも「EMIEW3」が空港利用者の問いかけに対し、案内カウンターの隣に設置した案内情報ディスプレイと連携し,ディスプレイに表示された地図や,空港施設の概要,店舗の写真などを用いて案内する空港利用者の問いかけに対して案内できた[12]。「EMIEW4」や「EMIEW-TT」とサーマルカメラを連携させることで発熱者の誘導や来訪者の簡易問診を非接触で実施でき、建物の運用・管理者の負荷軽減が期待できるとしている[13]。
仕様
[編集]モデル | EMIEW | EMIEW 2 |
---|---|---|
発売年 | 2005 | 2007 |
質量 | 70 kg | 14 kg [14] |
高さ | 130 cm | 80 cm |
最高速度 | 6 km/h | 6 km/h |
加速度 | 4 m/s2 | 4 m/s2 |
自由度 | 14 [15] (アーム: 6 × 2, ハンド: 1 × 2) |
25 |
関連項目
[編集]- ヒューマノイドロボット
出典
[編集]- ^ a b 西條義典 2017, pp. 12–17.
- ^ 住吉貴志 et al. 2017, p. 1.
- ^ a b 株式会社日立製作所 & 株式会社日立ビルシステム 2020, p. 1.
- ^ 株式会社日立製作所 & 株式会社日立ビルシステム 2020, p. 2.
- ^ 細田祐司 2011, p. 4.
- ^ 細田祐司 2011, p. 65.
- ^ 細田祐司 2011, p. 38.
- ^ 細田祐司 2011, p. 27.
- ^ 川上清市 2022, p. 87.
- ^ 細田祐司 2011, p. 44.
- ^ 馬場淳史 & 設楽真一 2017, p. 12.
- ^ 馬場淳史 & 設楽真一 2017, p. 13.
- ^ 日立評論社 2021, p. 87.
- ^ “https://www.hitachi.co.jp/rd/research/mechanical/robotics/emiew2_01/index.html”. 2 March 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。1 March 2017閲覧。
- ^ GLOBAL. “https://www.hitachi.co.jp/rd/research/mechanical/robotics/emiew1_01/index.html”. 1 March 2017閲覧。
外部リンク
[編集]- EMIEW 公式ウェブサイト
- EMIEW2 公式ウェブサイト
- EMIEW3とロボットIT基盤
- 細田祐司『俊敏かつ安全な移動機能を持つ人間共生ロボットの研究』(博士(工学)論文・システム情報工学研究科専攻) 甲第、5895号、筑波大学、2011年。hdl:2241/117799。 NAID 500001098486。OCLC 828777624。国立国会図書館書誌ID:024158223 。2025年1月5日閲覧。
- 住吉貴志、山本正明、神田直之、藤田雄介、永松健司「人間共生ロボット”EMIEW3”の音声言語処理システムの開発」『研究報告音声言語情報処理(SLP)』2017-SLP-118第8号、情報処理学会、2017年、1 - 5頁、ISSN 2188-8663、NCID AN10442647、OCLC 838798037、国立国会図書館書誌ID:025608578、2025年1月5日閲覧。
- 西條義典「REAL INNOVATION(VOL.15)ヒューマノイド「EMIEW3」が描く近未来」『Realitas = レアリタス』第18号、日立製作所情報・通信システム社経営戦略室ブランド・コミュニケーション本部、2017年、12-17頁、CRID 1524232505772714880、NAID 40021079320、OCLC 6945336970、国立国会図書館書誌ID:027919244、2025年1月5日閲覧。
- 馬場淳史、設楽真一「本格実現に向けて動き出したサービスロボティクスシステム : 実証から事業化の段階にさしかかった接客・案内サービスロボット「EMIEW3」」『日立評論』1131特別号第99号、日立評論社、2017年、12-14頁、CRID 1522543655419615616、ISSN 03675874、NAID 40021069961、NCID AN00298883、OCLC 6939791770、国立国会図書館書誌ID:027859983、2025年1月5日閲覧。
- 株式会社日立製作所、株式会社日立ビルシステム「受付・案内・巡回監視などを行いビル内業 務を支援するコミュニケーションロボット「EMIEW」を本格事業化,」『日立リリースニュース』、株式会社日立製作所、2020年、1-5頁、2025年1月5日閲覧。
- 日立評論社「ビルシステム」『日立評論』第103巻第1号、日立評論社、2021年、86-90頁、ISSN 03675874、NCID AN00298883、NDLJP:12904618、2025年1月5日閲覧。
- 川上清市「2-21広がり見せるサービスロボット」『最新機械業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(第3版)秀和システム、2022年、87頁。ISBN 9784798065632。 NCID BC12405449。OCLC 1302960953。国立国会図書館書誌ID:000011199576 。2025年1月5日閲覧。