鼻疽
鼻疽(びそ、glanders)は、鼻疽菌 (Burkholderia mallei) 感染による馬、ロバ、ラバなどの感染症。鼻疽菌はヒトにも感染し症状を示すことがあるため、人獣共通感染症の一つである。
ウマやロバのほか、犬、猫、羊、山羊にも感染する。日本での発生はみられないが、海外から侵入する可能性が心配されている(海外悪性伝染病)。日本では家畜伝染病予防法における法定伝染病の一つであり、対象動物は馬。臨床症状の違いにより肺鼻疽、鼻腔鼻疽。皮疽と呼ばれる場合もある。
原因
[編集]疫学
[編集]東欧、アジア、アフリカ、中東、南アフリカなどで報告される。日本での発生は報告されていない。飛沫感染および経口感染により、馬からヒト、ヒトからヒトへと伝播する。感染様式は、馬同士の直接的、間接的な接触により、経口感染、経気道感染、経皮感染、創傷感染。
病原体は環境中(土壌など)で生存することが出来ないため、病原体を有した動物との接触及び汚染された分泌物(膿)との接触が主な感染経路となる。
症状
[編集]- ヒト
- 馬
診断
[編集]グリセリンあるいは血液を添加した培地を用いて菌を分離・同定することが最も信頼性のある診断方法である。ストラウス反応(モルモットの雄の腹腔内に菌を摂取すると3~4日で精巣炎が認められる)、マレイン反応(菌体成分であるマレインを点眼するとアレルギー反応が認められる)も診断に有用である。そのほか、CF反応、ELISA、凝集反応などの抗体検査法が用いられる。鑑別疾患として、炭疽、類丹毒、天然痘、梅毒など。
治療
[編集]ヒトではサルファダイアジン、テトラサイクリン、セフタジジム、イミペネムなどが有効。未治療の場合、100%に近い致死率を示す。馬は治療を行わず、殺処分する。
予防
[編集]ヒト用のワクチンは存在しない。輸入動物の検疫、常在地での馬、患者との接触回避、馬の殺処分により予防する。
出典
[編集]- 鼻疽(glanders) 農研機構
- 鼻疽(glanders) 国立感染症研究所 病原体検出マニュアル (PDF)
参考文献
[編集]- 鹿江雅光、新城敏晴、高橋英司、田淵清、原澤亮編 『最新家畜微生物学』 朝倉書店 1998年 ISBN 4254460198
- 見上彪監修 『獣医感染症カラーアトラス』 文永堂出版 2006年 ISBN 4830032030
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- ベトナムで感染した類鼻疽の1例 病原微生物検出情報 Vol. 31 p. 107-108: 2010年4月号 国立感染症研究所
- 鼻疽 厚生労働省