聖マタイと天使のいる風景
ドイツ語: Landschaft aus der römischen Campagna, mit Matthäus und dem Engel 英語: Landscape with St Matthew and the Angel | |
作者 | ニコラ・プッサン |
---|---|
製作年 | 1639-1640年 |
種類 | キャンバス、油彩 |
寸法 | 100.3 cm × 135.3 cm (39.5 in × 53.3 in) |
所蔵 | 絵画館 (ベルリン) |
『聖マタイと天使のいる風景』(せいマタイとてんしのいるふうけい、英: Landscape with St Matthew and the Angel)、または『聖マタイと天使のいるローマ近郊の風景』(せいマタイとてんしのいるローマきんこうのふうけい、独: Landschaft aus der römischen Campagna, mit Matthäus und dem Engel)は、17世紀フランスの巨匠ニコラ・プッサンが1639-1640年にキャンバス上に油彩で制作した絵画で、プッサンの最初期の風景画の1つである[1]。ウルバヌス8世 (ローマ教皇) の書記ジャン・マリア・ロッショーリ (Gian Maria Roscioli) のために、対をなす『パトモス島の聖ヨハネのいる風景』 (シカゴ美術館) とともに描かれた[1][2]。1873年にシャッラ (Sciarra) ・コレクションから購入されて以来[1]、絵画館 (ベルリン) に所蔵されている[1][3]。
作品
[編集]本作『聖マタイと天使のいる風景』と『パトモス島の聖ヨハネのいる風景』は本来、聖ルカ、聖マルコを含む4人の福音書記者を表す、完成しなかった連作の一部であった可能性がある[1]。
画中の聖マタイは、川岸にある遺跡の巨大な残骸の中に座っている。背後には、丘が地平線となっている広大な風景が広がっている[1]。聖マタイの横にいるのは彼を象徴する天使で、彼が福音書を著すのに霊感を与えた[1][3]。しかし、この絵画の主役は厳粛で平和な風景である。ローマの北のテヴェレ川の渓谷に類似している[1][3]この風景の地平線にそびえる遺跡はおそらく、アングィッラーラ (Anguilllara) 近くの「聖ステファノの壁」であろう。それを聖マタイと天使の真上に配置することで、彼らの位置を強調している。人物たちの衣服の青色、黄色がかったオレンジ色、白色は風景の中で繰り返されると同時にやわらげられている[1]。
プッサンと同様にローマに長く暮らしたクロード・ロランの風景画は、時の移り変わりを感じさせる。しかし、プッサンの風景画はより静的な、時間を超えた[1]理想的な世界の凝固したものに思われる[3]。また、本作と『パトモス島の聖ヨハネのいる風景』は、ポール・ブリルやアンニーバレ・カラッチなどによるプッサン以前の風景画に比べると、明らかに新しい壮大さを備えている。とはいえ、これらのプッサンの絵画は、後年の風景画ほどの広大さをまだ持っていない[4]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h i j “Landschaft aus der römischen Campagna, mit Matthäus und dem Engel”. 絵画館 (ベルリン) 公式サイト (ドイツ語、英語). 2024年10月23日閲覧。
- ^ 辻邦生・高階秀爾・木村三郎、1984年、75頁。
- ^ a b c d 『NHK ベルリン美術館1 ヨーロッパ美術の精華』、1993年、114頁。
- ^ W.フリードレンダー 1970年、174頁。
参考文献
[編集]- 有川治男・重延浩・高草茂編集『NHK ベルリン美術館1 ヨーロッパ美術の精華』、角川書店、1993年刊行 ISBN 4-04-650901-5
- 辻邦生・高階秀爾・木村三郎『カンヴァス世界の大画家14 プッサン』、中央公論社、1984年刊行 ISBN 4-12-401904-1
- W.フリードレンダー 若桑みどり訳『世界の巨匠シリーズ プッサン』、美術出版社、1970年刊行 ISBN 4-568-16023-5