ギター奏者のいるバッカス祭

『ギター奏者のいるバッカス祭』
	フランス語: Bacchanale à la joueuse de guitare; 英語: Bacchanal with the Guitar Player
作者	ニコラ・プッサン
製作年	1625年ごろ
種類	キャンバス上に油彩
寸法	121 cm × 175 cm (48 in × 69 in)
所蔵	ルーヴル美術館、パリ

『ギター奏者のいるバッカス祭』（ギターそうしゃのいるバッカスさい、仏: Bacchanale à la joueuse de guitare、英: Bacchanal with the Guitar Player）、または『大バッカス祭』（だいバッカスさい、仏: La Grande Bacchanale、英: The Great Bacchanal）は、17世紀のフランスの巨匠ニコラ・プッサンが1625年ごろ^[1]、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。この絵画の制作年については諸説があるが、16世紀ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノの影響がきわめて大きかったプッサンのローマ滞在の最初期にあたる^[2]。1809年以来^[1]、パリのルーヴル美術館に所蔵されている^[1]^[2]。

作品

本作は、リシュリュー枢機卿がプッサンに委嘱した4点の絵画のうちに数えられるかもしれないが、定かではない^[2]。いずれにしても、枢機卿の甥であったリシュリュー公爵は、1665年にフランス国王ルイ14世とのジュ・ド・ポーム (テニスの原型のスポーツ) の試合に敗れ、この絵画を含む自身のコレクションを王に売却しなくてはならなかった^[2]。

本作はプッサンの作品中最もティツィアーノ的なものであり、ローマのルドヴィーシ (Ludovisi) ・コレクションにあったティツィアーノの『アンドロス島のバッカス祭』 (プラド美術館、マドリード) を想起させる^[1]。ローマにいたプッサンは、このティツィアーノの作品を目にしえた可能性がある^[2]。ティツィアーノの作品は古代ギリシアのフィロストラトスの著作『エイコネス』から主題を採用しているが、プッサンは1614年に出版された『エイコネス』に掲載された69枚の版画を参照した。プッサンは、アンドロス島の人々の逸話を表す版画から本作の左側の陰でブドウの房の上に横たわるバッカス像を借用している。しかし、プッサンは本当にワインが小川に流れるというこの奇跡の島を描いたのであろうか。ティツィアーノの作品と違い、本作には海が見られないのである^[1]。

本作は陽気で官能的であり、ワインによる酩酊を音楽の喜びと結びつけている^[1]。身振りと色彩のコントラストにより一目で鑑賞者の目を引くのは、黄色い衣服を身に着け、後ろ姿で杯を上げている男と、ギターを弾いている若い女である。プットたちが、17世紀フランドルの彫刻家フランソワ・デュケノア的な精神で陽気さとファンタジーの雰囲気に寄与している。中央のプットは貪欲に2つの把手のある杯を上げている。右側では、もう1人のプットが演劇の仮面を着けて仲間と戯れている。左側の酔って眠っているプットは怖いものしらずである^[1]。

脚注

^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g “Bacchanale à la joueuse de guitare”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2024年11月2日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d ^e 『ルーヴル美術館200年展』、1993年、48頁。

参考文献

『ルーヴル美術館200年展』、横浜美術館、ルーヴル美術館、日本経済新聞社、1993年刊行

外部リンク

ルーヴル美術館公式サイト、ニコラ・プッサン『ギター奏者のいるバッカス祭』 (フランス語)

[ReferenceML-1] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g “Bacchanale à la joueuse de guitare”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2024年11月2日閲覧。

[L200-2] 『ルーヴル美術館200年展』、1993年、48頁。

[1]

[2]

表話編歴ニコラ・プッサン
宗教画	『川にすてられるモーセ』(1624年頃) · 『聖チェチリア』(1625年頃) · 『キリストの哀悼』(1628年) · 『聖エラスムスの殉教』(1628-1629年) · 『聖カタリナの神秘の結婚』(1628-1629年頃) · 『聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ』(1628-1629年頃) · 『聖ヤコブによる聖母マリアの幻視』(1629-1630年) · 『幼児虐殺』(1625-1632年) · 『アシドドのペスト』(1628-1630年) · 『聖母被昇天』(1630-1632年頃) · 『ダヴィデの勝利』(1630年頃) · 『紅海の横断』(1633-1634年) · 『黄金の子牛の礼拝』(1633-1634年) · 『人々に洗礼を授ける聖ヨハネ』(1635-1637年頃) · 『マナの収集』(1638-1639年) · 『日本の鹿児島で娘を蘇らす聖フランシスコ・ザビエル』(1641年) · 『終油の秘蹟』(1644年) · 『川から救われるモーセ』(1647年) · 『聖餐の秘蹟』(1647年) · 『エリエゼルとリベカ』(1648年) · 『階段の聖家族』(1648年) · 『ソロモンの審判』(1649年) · 『岩を打つモーセ』(1649年) · 『聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ、聖エリサベト』(1650年) · 『風景の中の聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ、聖エリサベト』(1650-1651年頃) · 『聖家族』(1651年頃) · 『足の不自由な男を癒す聖ペテロと聖ヨハネ』(1655年) · 『羊飼いの礼拝』(1650-1657年頃) · 『エジプトの聖家族』(1657年) · 『受胎告知』(1657年)
神話画・歴史画	『ミダース王とバッカス』(1624年頃) · 『イスラエル人とアモリ人の戦い』(1625年頃) · 『ギター奏者のいるバッカス祭』(1625年頃) · 『バッカスの光景』(1626年頃) · 『フローラの勝利』(1627年頃) · 『パクトロス河で身体を洗うミダース王』(1627年頃) · 『我アルカディアにもあり (チャッツワース)』(1627年) · 『ゲルマニクスの死』(1627年) · 『エコーとナルキッソス』(1629年頃) · 『リナルドとアルミーダ』(1628-1630年頃) · 『詩人の霊感』(1629-1630年頃) · 『マルスとヴィーナス』(1630年頃) · 『セレネとエンデュミオン』(1630年頃) · 『フローラの王国』(1631年) · 『タンクレーディとエルミニア』(1631年) · 『ケパロスとアウローラ』(1631年頃) · 『パルナッソス』(1631-1633年) · 『境界標の前のバッカナーレ』(1632-1633年頃) · 『サビニの女たちの掠奪』(1633-1634年) · 『幼いピュロスの救出』(1634年) · 『ティトゥス帝によるエルサレムの神殿の破壊』(1635年) · 『人生の踊り』(1634-1636年頃) · 『ヴィーナスの誕生』(1635-1636年) · 『パンの勝利』(1636年) · 『パンとシュリンクス』(1637年) · 『生徒たちにファレリ人の教師を引き渡すカミルス』(1637年) · 『我アルカディアにもあり (ルーヴル美術館)』(1637-1638年頃) · 『嫉妬と不和の攻撃から真理を救う時』(1641年) · 『エウダミダスの遺書』(1644-1648年) · 『アキレウスとリュコメデスの娘たち』(1649-1650年) · 『バッカスの誕生』(1657年) · 『アポロンとダフネ』(1661-1664年)
風景画	『小川から水をすくう男のいる風景』(1637年頃) · 『隠者聖パウルスのいる風景』(1637-1638年) · 『聖マタイと天使のいる風景』(1639-1640年) · 『パトモス島の聖ヨハネのいる風景』(1640年) · 『フォキオンの葬送』(1648年) · 『フォキオンの遺灰のある風景』(1648年) · 『ヘビに殺された男のいる風景』(1648年頃) · 『ポリュペーモスのいる風景』(1649年) · 『オルフェウスとエウリュディケーのいる風景』(1650年頃) · 『三人の人物のいる風景』(1648-1651年頃) · 『ディオゲネスのいる風景』(1654-1658年) · 『日の出を探す盲目のオリオン』(1658年) · 『夏』(1660-1664年) · 『冬』(1660-1664年)
自画像	『自画像 (ベルリン絵画館)』(1649年) · 『自画像 (ルーヴル美術館)』(1650年)