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「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」の版間の差分

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== 概要 ==
== 概要 ==
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前作同様、緻密なミニチュアや、現実感のある大きさの人型怪獣同士による格闘が見所となっている。本作品で初登場した[[東宝特撮映画の怪獣対策組織|東宝自衛隊]]の対怪獣兵器「[[メーサー兵器#メーサー殺獣光線車|メーサー殺獣光線車]]」は、[[伊福部昭]]の[[劇伴]]「L作戦(メーサー)マーチ」と合わさって高い人気を得た{{Refnest|group="出典"|{{R|全史306|来襲76|特撮世界116}}}}結果、本作品以降の日本の[[特撮]]や[[アニメ (日本のアニメーション作品)|アニメ]]作品などに多大な影響を与えている。当初、メーサー殺獣光線車の登場シーンは脚本に無かったが、ドラマ的な見せ場を作るために本多が加筆して映像化した{{R|東宝特撮映画大全集107}}。
前作同様、緻密なミニチュアや、現実感のある大きさの人型怪獣同士による格闘が見所となっている。本作品で初登場した[[東宝特撮映画の怪獣対策組織|東宝自衛隊]]の対怪獣兵器「[[メーサー兵器#メーサー殺獣光線車|メーサー殺獣光線車]]」は、[[伊福部昭]]の[[劇伴]]「L作戦(メーサー)マーチ」と合わさって高い人気を得た{{Refnest|group="出典"|{{R|全史306|来襲76|特撮世界116}}}}結果、本作品以降の日本の[[特撮]]や[[アニメ (日本のアニメーション作品)|アニメ]]作品などに多大な影響を与えている。当初、メーサー殺獣光線車の登場シーンは脚本に無かったが、ドラマ的な見せ場を作るために本多が加筆して映像化した{{R|東宝特撮映画大全集107}}。
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スチュワート博士は「研究所で育てられ、1年前に富士で死んだはずのフランケンシュタインが生き返り、漁船を襲ったのではないか」との問いに「仮に生き返ったとしても海にいたり人間を喰うことはあり得ない」と答え、サンダと名付けられたこのフランケンシュタインを世話していた所員の戸川アケミも「サンダはおとなしく素直だった」と答え、疑いを全面否定する。
スチュワート博士は「研究所で育てられ、1年前に富士で死んだはずのフランケンシュタインが生き返り、漁船を襲ったのではないか」との問いに「仮に生き返ったとしても海にいたり人間を喰うことはあり得ない」と答え、サンダと名付けられたこのフランケンシュタインを世話していた所員の戸川アケミも「サンダはおとなしく素直だった」と答え、疑いを全面否定する。


しかし、その後も三浦半島付近では海の怪物による被害が相次ぎ、スチュワート博士とアケミはフランケンシュタインの目撃報告をもとに富士山へ、間宮博士は横須賀へ、それぞれ向かう。その結果、引き上げられた漁船からは海棲生物の細胞組織が、山中では巨大な足跡がそれぞれ発見された。間宮の持ち帰った細胞組織がフランケンシュタインのものと判明した直後、曇天の羽田空港に巨大なフランケンシュタインが現れ、女性事務員を食らう。雲間から太陽が覗くと、フランケンシュタインは慌てて海へ姿を消した。
しかし、その後も三浦半島付近では海の怪物による被害が相次ぎ、スチュワート博士とアケミはフランケンシュタインの目撃報告をもとに谷川岳へ、間宮博士は山中湖へ、それぞれ向かう。その結果、引き上げられた漁船からは海棲生物の細胞組織が、山中では巨大な足跡がそれぞれ発見された。間宮の持ち帰った細胞組織がフランケンシュタインのものと判明した直後、曇天の羽田空港に巨大なフランケンシュタインが現れ、女性事務員を食らう。雲間から太陽が覗くと、フランケンシュタインは慌てて海へ姿を消した。


一連の事件がフランケンシュタインによるものと判明し、スチュワート博士とアケミは対策会議に出席するために上京する。スチュワート博士は、山と海にそれぞれ別のフランケンシュタインがいるのではないかと想像する。会議では強い光や火に弱い海のフランケンシュタインの性質が間宮によって指摘され、市民に灯火要請が出される。その夜、ビアガーデンを襲った海のフランケンシュタインはライトを浴びせられて[[境川 (東京都・神奈川県)|境川]]から上陸し、自衛隊によって[[太田橋 (木曽川)|太田橋]]付近の谷川へ誘導される。殺人光線による細胞組織の徹底消滅を図る「'''L作戦'''」が実行され、海のフランケンシュタインは陸上自衛隊の[[メーサー兵器#メーサー殺獣光線車|メーサー殺獣光線車]]と放電攻撃によって感電死寸前となる。ところが、そこにもう1頭の巨大な山のフランケンシュタインが現れ、自衛隊を牽制して海のフランケンシュタインを連れ去る。
一連の事件がフランケンシュタインによるものと判明し、スチュワート博士とアケミは対策会議に出席するために上京する。スチュワート博士は、山と海にそれぞれ別のフランケンシュタインがいるのではないかと想像する。会議では強い光や火に弱い海のフランケンシュタインの性質が間宮によって指摘され、市民に灯火要請が出される。その夜、ビアガーデンを襲った海のフランケンシュタインはライトを浴びせられて[[境川 (東京都・神奈川県)|境川]]から上陸し、自衛隊によって[[太田橋 (木曽川)|太田橋]]付近の谷川へ誘導される。殺人光線による細胞組織の徹底消滅を図る「'''L作戦'''」が実行され、海のフランケンシュタインは陸上自衛隊の[[メーサー兵器#メーサー殺獣光線車|メーサー殺獣光線車]]と放電攻撃によって感電死寸前となる。ところが、そこにもう1頭の巨大な山のフランケンシュタインが現れ、自衛隊を牽制して海のフランケンシュタインを連れ去る。
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; 海魔 大ダコ
; 海魔 大ダコ
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== 登場兵器・メカニック ==
== 登場兵器・メカニック ==
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2023年1月26日 (木) 02:30時点における版

フランケンシュタインの怪獣
サンダ対ガイラ
The War of the Gargantuas[出典 1]
監督
脚本
製作
出演者
音楽 伊福部昭
撮影
編集
製作会社 東宝[出典 2][注釈 1]
配給 東宝[5][7][注釈 1]
公開
上映時間
製作国 日本の旗 日本
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 日本語
前作 フランケンシュタイン対地底怪獣
テンプレートを表示

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(フランケンシュタインのかいじゅう サンダたいガイラ)は、東宝米国ベネディクト・プロが提携し、1966年(昭和41年)7月31日に封切り公開した日本の特撮映画[出典 5]カラーシネマスコープ(東宝スコープ)[出典 6]。同時上映は『ジャングル大帝』と『つるのおんがえし(人形劇)[4]

概要

スチュワート博士とアケミの投宿したホテルの外観には、大手町パレスホテルが使われた。

設定などは異なるが、前年に公開された怪獣映画『フランケンシュタイン対地底怪獣』(1965年、本多猪四郎監督)の姉妹編である[出典 7]。作品の根底には日本古来の神話『海彦山彦』が敷かれ[出典 8]、「細胞分裂によって分身した2体のフランケンシュタイン(いわばクローン[12])の争い」が描かれた。

前作同様、緻密なミニチュアや、現実感のある大きさの人型怪獣同士による格闘が見所となっている。本作品で初登場した東宝自衛隊の対怪獣兵器「メーサー殺獣光線車」は、伊福部昭劇伴「L作戦(メーサー)マーチ」と合わさって高い人気を得た[出典 9]結果、本作品以降の日本の特撮アニメ作品などに多大な影響を与えている。当初、メーサー殺獣光線車の登場シーンは脚本に無かったが、ドラマ的な見せ場を作るために本多が加筆して映像化した[15]

怪獣のデザインを担当したのは、『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『マイティジャック』などでも知られる成田亨である[16][注釈 2]。前作のフランケンシュタインは俳優が生身で演じていたのに対し、本作品のサンダとガイラは着ぐるみによる怪獣となっている[7]。これにより、前作では描かれなかった自衛隊による激しい攻撃が描かれている[12]

興行面では、東映や大映との競合への対策から、東宝初の長編アニメーション映画と同時上映が行われた[15]

ストーリー

スチュワート研究所は京都清水寺そばという設定。清水寺と京都女子大近辺が外観描写に使われた。
「東都大学原子生物化学研究所」の外観に使われた「長沢浄水場」。ほぼ同じ頃、円谷プロの『ウルトラマン』に登場する科学特捜隊の研究施設「科学センター」としてたびたび撮影されている。
山中湖でロケが行われた。

嵐の夜、三浦半島沖を航行する漁船・第三海神丸が大ダコに襲撃され、沈没する。唯一生き残った男性が「仲間は全員、タコに続いて海から現れたフランケンシュタインみたいな怪物に食われた」と繰り返したうえ、噛み砕かれて吐き出されたかのような乗組員の衣服が引き上げられたことを受け、海上保安庁はフランケンシュタインの研究で有名な京都のスチュワート研究所へ連絡する。

スチュワート博士は「研究所で育てられ、1年前に富士で死んだはずのフランケンシュタインが生き返り、漁船を襲ったのではないか」との問いに「仮に生き返ったとしても海にいたり人間を喰うことはあり得ない」と答え、サンダと名付けられたこのフランケンシュタインを世話していた所員の戸川アケミも「サンダはおとなしく素直だった」と答え、疑いを全面否定する。

しかし、その後も三浦半島付近では海の怪物による被害が相次ぎ、スチュワート博士とアケミはフランケンシュタインの目撃報告をもとに谷川岳へ、間宮博士は山中湖へ、それぞれ向かう。その結果、引き上げられた漁船からは海棲生物の細胞組織が、山中では巨大な足跡がそれぞれ発見された。間宮の持ち帰った細胞組織がフランケンシュタインのものと判明した直後、曇天の羽田空港に巨大なフランケンシュタインが現れ、女性事務員を食らう。雲間から太陽が覗くと、フランケンシュタインは慌てて海へ姿を消した。

一連の事件がフランケンシュタインによるものと判明し、スチュワート博士とアケミは対策会議に出席するために上京する。スチュワート博士は、山と海にそれぞれ別のフランケンシュタインがいるのではないかと想像する。会議では強い光や火に弱い海のフランケンシュタインの性質が間宮によって指摘され、市民に灯火要請が出される。その夜、ビアガーデンを襲った海のフランケンシュタインはライトを浴びせられて境川から上陸し、自衛隊によって太田橋付近の谷川へ誘導される。殺人光線による細胞組織の徹底消滅を図る「L作戦」が実行され、海のフランケンシュタインは陸上自衛隊のメーサー殺獣光線車と放電攻撃によって感電死寸前となる。ところが、そこにもう1頭の巨大な山のフランケンシュタインが現れ、自衛隊を牽制して海のフランケンシュタインを連れ去る。

山と海のフランケンシュタインは、それぞれ「サンダ」と「ガイラ」と正式に命名される。両者の細胞は完全に一致し、2頭は「分身」であることが確定する。サンダは心優しく、ガイラを湖の水辺で保護しながら、湖に落ちかけたアケミを救って負傷する。一方、ガイラは霧に乗じて湖を訪れた人々を食らい続け、ついにサンダを怒らせる。サンダの攻撃に、ガイラは海へ逃げ出して消息を絶つ。サンダの保護管理を主張するスチュワート博士と、両フランケンシュタインの徹底消滅を主張する橋本陸将補が対立する中、餌を求めて東京銀座に現れたガイラを追い、サンダも現れる。負傷を押してガイラを止めようと立ち向かうサンダを自衛隊が援護しながら、サンダとガイラの戦いが始まる。サンダは晴海埠頭へ逃げ込んだガイラに最後の説得を試みるが、拒絶されて最後の戦いを始め、共に外海へ出ていく。その後、外海で海底火山が噴火し、サンダとガイラは巻き込まれて海に消えていった。

登場怪獣

フランケンシュタインの怪獣 サンダ
フランケンシュタインの怪獣 ガイラ
海魔 大ダコ

登場兵器・メカニック

架空

メーサー殺獣光線車
ミサイル戦車[17]
サーチライト車[17]
レーザー放射機[出典 10]・高圧電流端子
L作戦に投入された陸上自衛隊の装備群[19]。双方共に全高2 - 3メートルほどの大きさで、4輪の電源車(車体上部にパラボラアンテナを装備)によって電力を供給され、放電コントロール装置によって制御される。H-19 はつかりにより空輸され、設置は人間の手で行われる[19]
レーザー放射器は形状と塗装の異なるAタイプとBタイプの2種が存在するが、側面にパラボラ型レーダー、頂部にレーザーの放射部を装備する基本的な構造は同一である。放射部から直線的なレーザーを発射するが、メーサー殺獣光線車ほどの出力は無い。高圧電流端子は水中に高圧放電を行うもので、上部に2基の螺旋状の突起部を持ち、そこからコードを介して電源車に接続されている。
劇中では共にガイラ撃滅を目的とした「L作戦」で投入される。レーザー放射器はガイラへの牽制攻撃に参加し、高圧電流端子は木曽川の中に設置され、川の水を介してガイラを感電させる。これにメーサー殺獣光線車などを加えた連携攻撃で、ガイラを感電死寸前にまで追い詰めた。
  • 準備稿ではメーサー殺獣光線車は登場せず、こちらが主であった[2]

実在

自衛隊

海上保安庁

キャスト

参照[5][26][15]

キャスト(ノンクレジット)

  • 記者、山のガイド、ヘリ隊員:石川隆昭[32]
  • 喜田教授の助手:内山みどり[33]
  • 防衛庁長官、羽田空港の避難民:生方壮児[34]
  • 海に落ちる漁師:久野征四郎[35]
  • ハイカー:小松英三郎[36]、近藤征矢[36]、高野文子[37]谷和子[38]
  • 海上保安庁の職員:西条悦郎[29]
  • 生物科学研究所員:清水良二[39]
  • ガイラに食べられてしまう空港職員:田辺和佳子[38]
  • 幕僚副長:松下正秀[40]
  • 海上保安部職員:吉田静司[41]

スタッフ

参照[5][6][15]

スタッフ(ノンクレジット)

劇中歌

「Feel In My Heart」[注釈 10]
作曲:伊福部昭 / 歌:キップ・ハミルトン
劇中で外国人歌手が歌う。本作品に主演したラス・タンブリンは、自身のファンだという音楽グループ・DEVOと会った際にこの映画の話をされ、この曲をソラで歌えると言われて相当驚いたと語っている。

製作

本来は『フランケンシュタイン対地底怪獣』の続編として企画されていたが、監督の本多猪四郎の「映画は1本1本独立したものが良い」という考えから、シナリオ決定稿の段階で独立した作品となった[42]

脚本ではサンダとガイラの名は決まっておらず、それぞれ「山フランケンシュタイン」「海フランケンシュタイン」と表記されている[15][11]。脚本名も、第一稿では『フランケンシュタインの兄弟』と題され、以後は『フランケンシュタインの斗争』、『フランケンシュタインの決闘』と変遷している[出典 13]

キャスティング

戸川アケミ役の水野久美は、別役ではあるものの「幼少期のフランケンシュタインを知る研究者」という前作とほぼ同様の役柄を演じている[2][12]

当初、スチュワート博士役にはタブ・ハンターが予定されていた[43]。実際にスチュワート博士を演じたラス・タンブリンは、定時の撮影後は共に来日した妻とホテルへ直帰し、食事などの交歓の誘いも一切断わるなど、ニック・アダムスがスタッフや俳優たちと積極的に交流したのとは対照的な姿勢をとった。撮影現場でもまったく演技を合わせようとせず、土屋嘉男によれば、水野久美はタンブリンの態度に怒ってヒステリーを起こしたこともあったという[44]

タンブリンは娘のアンバー・タンブリンが2007年日本公開の『呪怨 パンデミック』に出演した際に妻と共に来日し、40年ぶりに東宝のスタジオを訪れて撮影を見学した。また、2014年にハリウッドのイベント「モンスターパルーザ英語版」でタンブリンと再会した佐原健二は友好的に会話し、同じ作品に出演した同志であることを感じた旨を語っている[45]

特撮

冒頭のガイラと大ダコの対決シーンは、『フランケンシュタイン対地底怪獣』の公開版では用いられなかった「大ダコ出現版」を仕切り直したものとされる[13][46][注釈 11]

羽田空港のセットは、東宝撮影所の大プールに設けられた[12]。管制塔も建て込まれるなど広大なセットであったが、スクリプターの鈴木桂子はカット数が少なく、完成作品でも広さを感じられなかったと述べている[48]。鈴木は、このころより製作期間が半分に減らされるなどしたため、特撮の質が目に見えて落ちていったと証言している[48]

ガイラが大木を引き抜くシーンでは、ヒムロ杉で作られたミニチュアの樹木に雑草から取られた根がつけられた[49]。美術の青木利郎は、ガイラ役の中島春雄がどの木を抜くかわからないため周辺の木すべてに根をつけていったという[49]

海外公開版とオリジナル版との相違

日米合作映画である本作品は、ベネディクト社が「海外公開版」として再編集したものが、アメリカで『怪獣大戦争』との2本立てで公開された。画面サイズは東宝スコープではなく、ビスタサイズにトリミングされている。セリフはすべてアメリカの俳優によって吹き替えられ、タンブリン自身も英語台本に合わせて自分のセリフを再アフレコしている。タンブリンのシーンを撮り直した部分も多い[1]

作劇面では「フランケンシュタイン」という意匠設定が外されており、二大怪獣は巨人を意味する「ガルガンチュア」と呼ばれ、細胞分裂を繰り返すUMAとなっている[注釈 12]。ガイラは「緑の怪物(グリーン・モンスター)」または「グリーン・ガルガンチュア」[50][15]、サンダは「茶色の怪物(ブラウン・モンスター)」または「ブラウン・ガルガンチュア」[50][15]と呼ばれ、アケミもサンダのことを単に「ガルガンチュア」と呼ぶ。また、スチュワート博士の視点を中心にした作劇にアレンジされており、海上保安庁職員・平井(田島義文)が操舵手・亀田三郎(山本廉)や漁船を検分する一連のシーンも、スチュワート博士が立ち会うものとなっている。

伊福部昭による劇伴曲はぶつ切りにされており、「L作戦マーチ」や「ガイラが海へ逃げるシーンでの使用曲」などがテンポの速いアメリカの楽曲[注釈 13]に差し替えられ、随所に『怪獣大戦争』(1965年、本多猪四郎監督)、『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年、本多猪四郎監督)からの楽曲や、『キングコング対ゴジラ』(1962年、本多猪四郎監督)の「大ダコのテーマ」が挿入されている。また、歌手役のキップ・ハミルトン英語版の歌声は日本版より鮮明である。

ガイラが羽田空港に上陸し、女性を掴み上げて食べる場面は「ガイラが女性を噛み砕いて飲み込んだあとに衣服を吐き出す」というところまでは同じだが、その次はオリジナル版では花束のアップ、海外版では「ボロボロの衣服が滑走路にベタッとたたきつけられる」というショットになっている[1][50]

アメリカでの上映時間規定(90分)を満たすため、「ガイラを助けに現れ、飛び降りるサンダ」、「銀座でガイラを迎え撃つ自衛隊の車両描写」など、国内版では未使用の特撮カットが挿入されている[1][20]

ベネディクト・プロの経営者であるヘンリー・G・サパースタインは、本作品の続編的作品としてサイボーグ化したゴジラとガルガンチュアが戦う映画『Godzilla vs Gargantua』を企画し、ルーベン・バーコヴィッチが脚本を執筆したが、実現には至らなかった[51][52]

評価

雑誌『映画芸術』1966年10月号では、ガイラをソ連軍、サンダを中共軍、メーサーなど超兵器を米軍のイメージ投影だとして、日本を襲うソ連軍から中同じ共産国の中共軍と米軍、自衛隊が日本を守るというプロパガンダ映画だとの評論を掲載した[要ページ番号]

映画監督のティム・バートンは、クリス・ペプラー木村カエラによるインタビューの際に大好きな作品として本作品を挙げており[53]、幼少期に本作品を見て感銘を受けたと語っている[要出典]

俳優のブラッド・ピットは、2012年2月26日に行われた第84回アカデミー賞の授賞式で本作品への愛を語り、話題となった[54][55]

漫画家の諫山創は、幼少時にテレビで本作品を偶然見ており、後年には代表作『進撃の巨人』に登場する巨人を作るうえで影響を受けたことを明かしている[56]

映画監督のジョン・タートルトーブは、日本の特撮映画にも愛着を持っており、自身が手掛けた『MEG ザ・モンスター』のインタビューの際には本作品のことを「僕のお気に入りのひとつだ」と評している[57]

俳優の斎藤工は、お気に入りの怪獣映画として本作品を挙げており、小学校中学年くらいに観た怪獣映画の中でも特に物悲しく切ないと思わされたことを明かしている[58]

映像ソフト化

  • 8mmフィルム
    • 1972年ごろに、『怪獣ジャイアント サンダ』として、ソノシートと絵本のセットで発売された。結末はサンダとガイラが戦い、最後はガイラが逃げ出すというもの。サンダは「ちびっ子サンダ」と呼称され、アケミたち研究員によって大きくなったという設定。ガイラの破壊シーンには『怪獣総進撃』の映像が流用されている。
  • ビデオテープ
    • ノーカット、シネスコ版で1983年に発売。1996年には「国内版」の再発売と併せ、「海外版」も発売。
    • 怪獣王ゴジラ』(1954年版『ゴジラ』の海外公開ヴァージョン)のVHSビデオには、本作品の「海外公開版」の予告編が特典収録されている。
  • レーザーディスク
    • ノーカット、シネスコ版で1985年に発売。1992年にはニューリマスター版が発売。
  • DVD
    • 2002年1月26日に発売。特典には「海外公開版」の予告篇と、上記の『怪獣ジャイアントサンダ』の映像やソノシート音声、絵本の画像が収録された。
    • 音声特典・オーディオコメンタリーのゲストは水野久美、聞き手は佐藤利明
  • BD
    • 2010年1月22日発売。

関連作品

キル・ビル Vol.2
劇中のブライドとエルの格闘シーンを撮影するにあたり、クエンティン・タランティーノ監督は役者に本作品のDVDを見せ、クライマックスの2怪獣の格闘場面を参考にさせたとコメントしている[54]
岸和田少年愚連隊』(1996年)
双子の俳優が、「優等生のサンダと不良のガイラ(もちろんあだ名)」というキャラクターを演じている。

脚注

注釈

  1. ^ a b ノンクレジット
  2. ^ 本作品の後、『ウルトラマン』第18話ではウルトラマンとにせウルトラマンの戦いを描いており、書籍『大ゴジラ図鑑2』では本作品での成田の起用は『ウルトラマン』での怪人同士による善悪の対決を円谷が構想していたためと推測している[8]
  3. ^ 東宝公式サイト映画資料室では、スチュアート博士と表記している[5]
  4. ^ 来日スケジュールの都合から、脚本では出演シーンが内容未定となっていた[27]
  5. ^ 通訳も担当している[28]
  6. ^ 書籍『東宝特撮映画大全集』ではオープンカーの男[15]、書籍『モスラ映画大全』では車で立ち往生する男[29]と記述している。
  7. ^ 書籍『東宝特撮映画大全集』ではオープンカーの女[15]、書籍『モスラ映画大全』では困惑する女[31]と記述している。
  8. ^ 書籍『東宝特撮映画大全集』では、自衛隊幹部と記述している[15]
  9. ^ 「祥」の表記は示に羊。
  10. ^ 2017年にディスクユニオンから発売された本作品のサントラでは、「海外での一般的な表記」として曲名を「The Word Gets Stuck in My Heart」と紹介している。
  11. ^ 特技監督の円谷英二は、『フランケンシュタイン対地底怪獣』製作時のインタビューにて、次回作で大ダコを登場させることを公言していた[47]
  12. ^ 「ガルガンチュアの足跡なんて珍しくもない」との間宮雄三(佐原健二)のセリフがある。
  13. ^ アメリカの映画『Zaat』での劇伴音楽が使われた。

出典

  1. ^ a b c d ヒットブックスVSモスラ 1992, p. 76, 「東宝怪獣激闘外伝」
  2. ^ a b c d e f g ゴジラ来襲 1998, pp. 76–77, 「第2章 東宝・怪獣SF特撮映画の歩み 第2期(1962-1970)」
  3. ^ a b c ゴジラ画報 1999, pp. 130–131, 「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」
  4. ^ a b c d e 東宝特撮映画大全集 2012, p. 106, 「『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』」
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au 映画資料室”. viewer.kintoneapp.com. 2022年2月20日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 東宝特撮映画全史 1983, p. 547, 「東宝特撮映画作品リスト」
  7. ^ a b c d e f g 円谷英二特撮世界 2001, pp. 116–117, 「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」
  8. ^ a b c 大ゴジラ図鑑2 1995, p. 79, 「サンダ・ガイラ」
  9. ^ a b c 東宝ゴジラ会 2010, pp. 297–298, 「円谷組作品紹介」
  10. ^ a b c 東宝特撮全怪獣図鑑 2014, pp. 42–43, 「地球防衛軍」
  11. ^ a b c d e f g 超常識 2016, pp. 260–263, 「同細胞から生まれた兄弟怪獣の対決 フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」
  12. ^ a b c d e f 日本特撮映画図鑑 1999, pp. 40–41, 「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」
  13. ^ a b c 東宝特撮映画全史 1983, pp. 306–307, 「東宝特撮映画作品史 フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」
  14. ^ a b GTOM vol.0 2022, p. 27, 「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 東宝特撮映画大全集 2012, p. 107, 「『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』作品解説/俳優名鑑」
  16. ^ a b c 東宝特撮映画大全集 2012, p. 109, 「『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』撮影秘話/川北監督に訊く」
  17. ^ a b c オール東宝メカニック大図鑑 2018, pp. 104–105, 「『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』」
  18. ^ 超最新ゴジラ大図鑑 1992, p. 182, 「SF兵器」
  19. ^ a b c 東宝特撮メカニック大全 2003, p. 95, 「1960s レーザー放射機」
  20. ^ a b c 東宝特撮映画大全集 2012, p. 108, 「『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』怪獣図鑑/兵器図録/資料館」
  21. ^ a b 超最新ゴジラ大図鑑 1992, pp. 168–170, 「陸上兵器」
  22. ^ 東宝特撮メカニック大全 2003, p. 306, 「通常兵器 [陸上]」
  23. ^ a b オール東宝メカニック大図鑑 2018, pp. 102–103, 「『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』」
  24. ^ 東宝特撮メカニック大全 2003, p. 299, 「通常兵器 [航空]」
  25. ^ オール東宝メカニック大図鑑 2018, p. 106, 「『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』」
  26. ^ a b 東宝特撮映画全史 1983, p. 537, 「主要特撮作品配役リスト」
  27. ^ a b 特撮秘宝3 2016, p. 121, 「東宝:ベネディクトプロ合作『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』シナリオ決定稿完全採録」
  28. ^ フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ The War of the Gargantuas”. 本多猪四郎オフィシャルサイト. 2017年8月28日閲覧。
  29. ^ a b モスラ映画大全 2011, p. 63, 「脇役俳優辞典21」
  30. ^ モスラ映画大全 2011, p. 35, 「脇役俳優辞典10」
  31. ^ モスラ映画大全 2011, p. 133, 「脇役俳優辞典39」
  32. ^ モスラ映画大全 2011, p. 19, 「脇役俳優辞典03」
  33. ^ モスラ映画大全 2011, p. 27, 「脇役俳優辞典06」
  34. ^ モスラ映画大全 2011, p. 29, 「脇役俳優辞典07」
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  36. ^ a b モスラ映画大全 2011, p. 61, 「脇役俳優辞典20」
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  38. ^ a b モスラ映画大全 2011, p. 91, 「脇役俳優辞典29」
  39. ^ モスラ映画大全 2011, p. 69, 「脇役俳優辞典24」
  40. ^ モスラ映画大全 2011, p. 129, 「脇役俳優辞典37」
  41. ^ モスラ映画大全 2011, p. 153, 「脇役俳優辞典42」
  42. ^ 破李拳竜『ゴジラ怪獣超クイズ』久保書店〈ジアス・ブックス 6〉、1992年、123頁。ISBN 4765910601 
  43. ^ Furankenshutain no kaijû: Sanda tai Gaira (1966) - Trivia” (英語). インターネット・ムービー・データベース. 2017年8月28日閲覧。
  44. ^ 怪獣大戦争』DVDのオーディオコメンタリーによる。
  45. ^ 特撮秘宝3 2016, p. 111, 「祝・ガイラ生誕50周年!! 佐原健二」.
  46. ^ 東宝特撮映画大全集 2012, p. 97, 「『フランケンシュタイン対地底怪獣』撮影秘話/川北監督に訊く」
  47. ^ 東宝特撮映画大全集 2012, p. 130, 文 鈴木宣孝「撮影秘話-特別編- 東宝特撮映画とその海外進出3 異色のフランケンシュタイン映画」
  48. ^ a b 別冊映画秘宝編集部 編「鈴木桂子(構成・文 友井健人/『映画秘宝』2010年12月号掲載)」『ゴジラとともに 東宝特撮VIPインタビュー集』洋泉社〈映画秘宝COLLECTION〉、2016年9月21日、223頁。ISBN 978-4-8003-1050-7 
  49. ^ a b 友井健人 編「青木利郎さんの思い出(文・三池敏夫)」『別冊映画秘宝 昭和メカゴジラ鋼鉄図鑑』洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2019年4月6日、89頁。ISBN 978-4-8003-1628-8 
  50. ^ a b c ゴジラ来襲 1998, pp. 185–189, 「第6章 海の向こうの東宝特撮」
  51. ^ パトリック・マシアス「『ゴジラ対悪魔』を作ろうとした男」『オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史』町山智浩(訳)、太田出版、2006年、67頁。ISBN 978-4778310028 
  52. ^ Fox, Andrew (2022年2月10日). “Godzilla’s Jewish Hollywood Friend” (英語). Tablet Magazine. https://www.tabletmag.com/sections/arts-letters/articles/godzilla-jewish-hollywood 2022年8月6日閲覧。 
  53. ^ 11/16 今週のJ-WAVE SELECTION 【 The World Of Tim Burton 】”. J-WAVE SELECTION. J-WAVE (2014年11月16日). 2022年9月12日閲覧。
  54. ^ a b Hugh Hart「ブラッド・ピットに影響を与えた「日本の怪獣映画」」『WIRED』、コンデナスト・ジャパン、2012年3月1日、2017年8月28日閲覧 
  55. ^ 相原斎 (2022年9月5日). “3年ぶり来日も変わらぬ「日本愛」ブラッド・ピット 新作PR活動も「仕事」にあらず!?”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202209010000093.html 2022年9月12日閲覧。 
  56. ^ FORZA STYLE (2011年1月28日). “「僕はまだ、思春期を こじらせている」 『進撃の巨人』 諫山創”. 現代ビジネス (講談社). https://gendai.ismedia.jp/articles/-/1980 2021年4月16日閲覧。 
  57. ^ “「MEG」監督が“特撮愛”を表明!お気に入りは「サンダ対ガイラ」”. 映画.com (エイガ・ドット・コム). (2018年7月27日). https://eiga.com/news/20180727/7/ 2021年4月16日閲覧。 
  58. ^ ガイガン山崎 (2022年5月28日). “『シン・ウルトラマン』斎藤工が愛するSF映画『サンダ対ガイラ』や『ブロブ』の魅力”. 扶桑社. p. 2. https://nikkan-spa.jp/1832160/2 2023年1月24日閲覧。 

出典(リンク)

参考文献

外部リンク