「カムイエクウチカウシ山」の版間の差分
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2021年5月14日 (金) 00:26時点における版
カムイエクウチカウシ山 | |
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東南東から望む ピラミッド峰(1853m)とのコルから撮影 | |
標高 | 1,979.5 m |
所在地 |
北海道日高郡新ひだか町・ 河西郡中札内村 |
位置 | 北緯42度37分30秒 東経142度45分59秒 / 北緯42.62500度 東経142.76639度座標: 北緯42度37分30秒 東経142度45分59秒 / 北緯42.62500度 東経142.76639度 |
山系 | 日高山脈 |
種類 | 氷食尖峰[1] |
初登頂 | 正木照信(1900年) |
カムイエクウチカウシ山の位置 | |
プロジェクト 山 |
カムイエクウチカウシ山(カムイエクウチカウシやま)は、北海道日高山脈に属する山である。日本二百名山の一つに数えられる。名称はアイヌ語の「熊(神)の転げ落ちる山」に由来する。登山家の間ではしばしばカムエクと略して呼ばれる[2]。
概要
幌尻岳に次ぐ日高山脈第二の高峰であり、標高1,979mである[3][4]。 日高山脈襟裳国定公園内にあり、山頂には1900年に陸地測量部の正木照信[5]により一等三角点(点名「札内岳」)が選点されている[6]。日高山脈主稜線上に悠然と聳える男性的な山容を誇り、主脈の盟主として山脈中央部に鎮座する。 南東側にはピラミッド峰 (1,853m) と呼ばれる四角錐型のピーク(支峰)が間近に望まれ、本峰を望見する絶好の展望台となる(ただし本峰以上に這松が生い茂る)。
地理
アイヌ語の名称の通り峻険な山容であり、日高山脈の高峰に特徴的な圏谷地形が見られ、十勝側山腹に八ノ沢カールと日高側山腹にコイボクカールを抱き、カールの下流側ではモレーンも確認されている[7]。幌尻岳、カムイエクウチカウシ山およびエサオマントッタベツ岳など日高山脈の山々は圏谷が見られるが、北アルプスの薬師岳や穂高岳に比べると小規模である。これは2万年前の氷期に日本列島が大陸と陸続きとなり対馬暖流が日本海へ流入しなくなり、降雪が現在よりも少なかったことが原因であると考えられている[8]。
山名の由来
そもそも山名となる「カムイエクウチカウシ」(ヒグマの転げ落ちる所)は、ヒグマを神と崇めるアイヌ人によって命名されたものではない。黎明期には「札内岳」と呼称されていた。1929年に北海道大学の伊藤秀五郎らが戸蔦別川上流の「カムイエクウチカウ」という場所で小屋を建設して幌尻岳に登頂する際に、案内人の勘違いでこの地名を誤って山名として伝えたために定着したのが真相[5]であるという。
登山
この山に登るための整備された一般登山道はない。最も容易なのは、夏期に八ノ沢 (札内川)を溯るものである。北海道の沢歩きとしては初級だが、標識があるわけではないので、ルートファインディング能力が不可欠。難度の高い滝の登攀はないが、へつりや徒渉箇所があり、水温、水量、流れの速さを考えると、沢歩きの総合的な力は中級以上あった方が良い。最後はカールから稜線に出て山頂に至る。
アプローチは、札内川沿いの北海道道111号静内中札内線(通称:日高横断道)に入り、札内川ダムを過ぎて、駐車スペースがある札内川ヒュッテ前のゲートまで車が入れる。ヒュッテは無料で利用でき、トイレとストーブはあるが、水はない。七ノ沢まで約7km。ここからは札内川の本流を、徒渉をくり返しながら踏み跡を辿り、八ノ沢 (札内川)出合に至る。
他に九ノ沢を辿るコース、コイボクシュシビチャリ川本流を詰めるもの、カムイエクウチカウシ沢左俣直登沢などもあるが、いずれも沢歩きの熟達者にのみ許された登路である。
冬は沢のコースを避け、八ノ沢左岸尾根、ガケ尾根、カムイエクウチカウシ山南西稜が登られている。
北大山岳部雪崩遭難事件
1965年(昭和40年)3月14日未明、日高山脈縦走中の北海道大学山岳部の登山隊6人が十ノ沢での露営中に大規模な雪崩に巻き込まれ、全員が死亡する事件が発生した。6人は決して危険な場所に雪洞を掘っていたわけではなかったが、走行約3km、デブリの長さ1km、幅30-100m、量約40万トン(いずれも推定)という、国内最大級の雪崩に巻き込まれたのである。初期捜索は困難を極め、雪融けを待って再開された捜索でようやく全員の遺体を発見、奇跡的に即死を免れていたリーダー澤田義一が雪の中で地図の裏にしたためた遺書がポケットから発見され、大きな話題を呼んだ。
福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件
1970年(昭和45年)7月、[9]日高山脈を縦走中だった福岡大学ワンダーフォーゲル同好会(当時)のパーティー5人が、九ノ沢カールでヒグマに遭遇、後に追跡・襲われ、5人中3人の男子大学生が死亡する事件が起こった。結局2人は無事下山し、討伐隊が問題のクマを射殺。北海道の山岳史上で最も悲惨な事件の一つとされる。
近隣の山
- 札内岳(1,896m)
- エサオマントッタベツ岳(1,869m)
- 十勝幌尻岳(1,846m)
- ピラミッド峰 (1,853m)
- コイカクシュサツナイ岳(1,721m)
- ピラトコミ山(1,588m)
- 岩内岳(1,497.7m)
脚注
- ^ 日本の典型地形 氷食尖峰 - 国土地理院、2016年10月閲覧
- ^ 荒井魏 『日本三百名山』 毎日新聞社編、1997年
- ^ “標高値を改定する山岳一覧 資料2”. 国土地理院 2014年3月26日閲覧。
- ^ GNSS測量等の点検・補正調査による2014年4月1日の国土地理院『日本の山岳標高一覧-1003山-』における改定値。なお、旧版での標高は1,980m。
- ^ a b 日本山岳会『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年
- ^ 国土地理院 基準点成果等閲覧サービス
- ^ 田代博、藤本一美、清水長正、高田将志 『山の地図と地形』 山と渓谷社、1996年
- ^ 梅沢俊、瀬尾央 『新版・空撮登山ガイド1 北海道の山々』 山と渓谷社、1995年
- ^ 現地遭難レリーフ(八ノ沢カール)
関連文献
- 岩村和彦『北海道沢登りガイド』北海道新聞社、2015年。
- 山と谷作成会議編『新版 北海道の山と谷2 日高・道東』富士コンテム、2018年。