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日本国憲法第18条

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(にほんこく/にっぽんこくけんぽう だい18じょう)は、日本国憲法第3章にある条文で、身体的自由権である奴隷的拘束・苦役からの自由について規定している。

条文

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日本国憲法 - e-Gov法令検索

第十八条
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

解説

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憲法18条上段の「保障」には「奴隷とならない権利」が含まれる。奴隷とは、人間としての権利・自由を全く否定され法的には家畜と同じように売買や所有権の対象とされる人間のことで、近代では、アメリカ合衆国の黒人奴隷の例が有名である。黒人奴隷制は、ジョージア、アラバマなど南部の州では南北戦争に負けるまで存続した[1]

南北戦争後の1865年に追加された合衆国憲法修正第13条は、「奴隷または本人の意に反する苦役は、犯罪に対する処罰として、として当事者が有事宣言の場合を除くほか、合衆国内またはその所轄に属するいずれの他にも存在してはならない」と規定している。[2]

第二次世界大戦前でも日本には奴隷制度はなかったが、「娼妓契約」や、「監獄部屋=タコ部屋」のように奴隷的と形容できる拘束はあった。奴隷的拘束とは、「自由な人格者であることと両立しない程度に身体が拘束されている状態」を指し(通説、政府見解)、労働の強制がなくても奴隷的拘束となる場合がある。

憲法18条後段は「犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」権利を保障する。「その意に反する苦役」とは、三つの考え方がある。

第一は、通常人から見て普通以上に苦痛に感じられるような任務の強制と考える説だ(法学協会編・詿解日本国憲法上,小嶋・概説,野中ほか・憲法Ⅰ[高橋和之執筆])。これに対して第二は、苦痛に感じられるかどうかを問わず、要するに強制労働の意味に理解する説である(芦部・憲法,佐藤幸・憲法など)。最後に第三は、強制労役またはそれに準ずるような隷属状態のうち、奴隷的拘束とまでは言えないものを広く含むとする説である(宮沢・憲法Ⅱ,芦部編・憲法Ⅲ[杉原泰雄執筆])。

憲法18条条文は、奴隷的拘束とは違って「犯罪に因る処罰の場合」の強制労働は認めている。裁判員制度に伴う役務提供義務についても、最高裁が国民の司法参加の制度であるから参政権と同様の意味を持つなどの理由で18条の苦役には当たらないとしている(最大判平成23・11・16刑集65巻8号1285頁)。

国家総動員法に基づいて戦前行われた、軍需工場への生徒の勤労動員のようなものは、18条後段違反である。多数説と政府見解は、徴兵制も18条後段違反とみなしている。[3]

沿革

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大日本帝国憲法

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東京法律研究会 p.8

第二十條
日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ從ヒ兵役ノ義務ヲ有ス

憲法改正要綱

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「憲法改正要綱」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

第二十条中ニ「兵役ノ義務」トアルヲ「公益ノ為必要ナル役務ニ服スル義務」ト改ムルコト

GHQ草案

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「GHQ草案」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

日本語

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第十七条
何人モ奴隷、農奴又ハ如何ナル種類ノ奴隷役務ニ服セシメラルルコト無カルヘシ犯罪ノ為ノ処罰ヲ除クノ外本人ノ意思ニ反スル服役ハ之ヲ禁ス

英語

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Article XVII.
No person shall be held in enslavement, serfdom or bondage of any kind. Involuntary servitude, except as a punishment for crime, is prohibited.

憲法改正草案要綱

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「憲法改正草案要綱」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

第十六
何人ト雖モ如何ナル奴隷的役務ニモ服セシメラルルコトナク犯罪ニ因ル処罰ノ場合ヲ除クノ外其ノ意ニ反スル苦役ハ之ヲ禁ズルコト

憲法改正草案

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「憲法改正草案」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

第十六条
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

判例

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参考文献

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  • 東京法律研究会『大日本六法全書』明治39年、井上一書堂、1906年。 
  • 野畑健太郎・東裕『憲法学事始(第2版)』一学舎、2017年4月15日、98-99頁。 
  • 渋谷秀樹・赤坂正造『憲法Ⅰ人権』(8版)有斐閣アルマ、2000年、21-24頁。 

関連条文

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脚注

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  1. ^ 渋谷秀樹、赤坂正浩『憲法1人権』有斐閣、2000年4月30日、21頁。 
  2. ^ 『憲法学事始(第2版)』一学舎、2017年4月15日、99頁。 
  3. ^ 渋谷秀樹、赤坂正浩『憲法Ⅰ人権』有斐閣、2000年4月30日、21-24頁。 

関連項目

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