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新光丸事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

新光丸事件(しんこうまるじけん)とは、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)によるスパイ事件[1][2][3]1957年昭和32年)12月28日海上保安庁検挙(摘発)[1][2][3][4]

概要

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北朝鮮工作員の松田博こと全基永(30歳)が北朝鮮の工作船「新光丸」を用いて、1957年12月28日、京都府与謝郡伊根町の伊根港から密出国しようとして海上保安庁が摘発した事件である[2][3][4]。携行品は無線機暗号文書などであった[3][4]。全は1953年(昭和28年)、イギリス領香港を経由して神奈川県横浜市横浜港から密入国しており、すでに日本国内で活動中の通信技師として、工作機関から北朝鮮本国への無線連絡を担当していた[2][3][4]。工作機関が収集した日本の政治経済防衛等に関する情報を暗号化して無電で報告するのが彼の役割で、調べによれば、「新光丸」は全基永検挙の2日前に5人の工作員を密入国させていたという[3][4][注釈 1]

1958年(昭和33年)5月12日京都地方裁判所舞鶴支部において、裁判の結果、全基永に対し、出入国管理令(出入国管理及び難民認定法)・外国人登録法および電波法違反の罪で懲役1年の判決が下された[2][3]

なお、当時の『週刊読売』には「北鮮スパイに偽装日本船 女性もおどる“西の出入口”伊根港 【京都】」と題する記事が掲載されている[4]。それによれば、北朝鮮社会安全省の直属機関「東海貿易商事遮湖出張所」(咸鏡南道)の指導的立場にあった工作員李文善が「伊根港の波止場に近い八坂神社境内で1957年11月25日から28日の間、毎日正午に『ハンマーを持った男』が待っている。この男を乗せて帰れ」という指令を発し、それを受けた「新光丸」船長の田京太、機関長の朴春雄ら5人が伊根港へ潜入し、周囲に不審がられながらも指定最終日の11月28日にようやく朴春雄が上陸を果たし、ちょうど正午に八坂神社で「ハンマーを持った男」と接触して、「新光丸」に連れ帰ったという出来事を報じている[4][注釈 2]海上保安庁の職員らが新光丸に乗り込んだところ、船室内には精巧な短波無電機の装備された無線室が設けられていたという[4]。『週刊読売』は、この事件について当局が発覚をひた隠しにしているように報じているが、その理由は記しておらず、不明な点が多い事件である[4]

脚注

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注釈

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  1. ^ 「全基永」は北朝鮮内務省社会安全部対外安全処第1局の所属で、朝鮮人民軍大尉であった[1]。彼が送信した情報は、日本政府の国内政策、対北朝鮮政策、在日朝鮮人政策、日本の再武装計画、日米安保条約体制などに関連するものであった[1]
  2. ^ 「ハンマーを持った男」は『週刊読売』の記事では、横浜市在住の「金基永」(全基永の誤記か)と名乗る30歳の男で、北朝鮮内務省系の無電連絡工作員であることを認め、伊根では「任務完了のため交代帰国するところだった」ことを自供したという[4]。記事では、伊根八坂神社での接触の際、男は20歳代後半の大柄な美人女性と一緒で、2人は泣きながら別れを惜しんでいたという[4]。「金」は日本国内では養鶏業を営む鎌倉市在住の柳沢多吉(44歳)という朝鮮人からも指示を受けていた[4]。八坂神社にいた女性は内堀佳子(27歳)で、柳沢の娘で「金基永」の内縁の妻であるという[4]。内堀を名乗る女性も北朝鮮工作員とみられ、柳沢・内堀の2人はともに指名手配された[4]

出典

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  1. ^ a b c d 清水(2004)p.218
  2. ^ a b c d e 高世(2002)p.305
  3. ^ a b c d e f g 『戦後のスパイ事件』(1990)p.111
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 特定失踪者問題調査会特別調査班 (2021年4月28日). “新光丸事件(日本における外事事件の歴史7)”. 調査会ニュース. 特定失踪者問題調査会. 2022年2月25日閲覧。

参考文献 

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  • 清水惇『北朝鮮情報機関の全貌―独裁政権を支える巨大組織の実態』光人社、2004年5月。ISBN 4-76-981196-9 
  • 高世仁『拉致 北朝鮮の国家犯罪』講談社〈講談社文庫〉、2002年9月(原著1999年)。ISBN 4-06-273552-0 
  • 諜報事件研究会『戦後のスパイ事件』東京法令出版、1990年1月。 

関連文献

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  • 外事事件研究会『戦後の外事事件―スパイ・拉致・不正輸出』東京法令出版、2007年10月。ISBN 978-4809011474 

外部リンク

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関連項目

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