コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

応天の門

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
応天の門
ジャンル 歴史、クライム・サスペンス
漫画
作者 灰原薬
出版社 新潮社
掲載誌 月刊コミック@バンチ
月刊コミックバンチ
→コミックバンチKai
レーベル BUNCH COMICS
発表号 月刊コミック@バンチ
2013年12月号 - 2018年5月号
月刊コミックバンチ:
2018年6月号 - 2024年5月号
コミックバンチKai:
2024年4月26日[1] -
発表期間 2013年10月21日[2] -
巻数 既刊19巻(2024年7月9日現在)
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

応天の門』(おうてんのもん)は、灰原薬による日本漫画作品。『月刊コミック@バンチ』(新潮社)にて、2013年12月号から連載中[2]。2018年6月号から2024年5月号までは『月刊コミックバンチ』の誌名で、同誌が最終号を迎えた後は『コミックバンチKai』へ移籍して[3][4]、2024年4月26日から連載されている[1]

平安京を舞台に巻き起こる怪奇事件を、在原業平菅原道真が解き明かすクライム・サスペンス作品[5]。事件は平安時代に信じられていた物の怪などが引き起こすという形で発生するが、真相は人間たちが引き起こしたものとして解決される。また、事件の背景には、朝廷で勢力争いを繰り広げていた藤原氏伴氏といった有力貴族が何らかの形で関わっているなど、歴史ものとしての側面も描かれている[6]

本作の監修は東京大学史料編纂所本郷和人が担当しており、単行本には平安時代の文化・風俗に関する解説文を書いている。

2017年、第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞[7]。2024年2月時点で単行本の累計部数は、200万部を突破している[8]

あらすじ

[編集]

藤原氏が朝廷の実権を掌握しつつあった時代[注釈 1]。平安京の貴族たちの間では、その藤原氏の屋敷から夜な夜な下女が行方不明になるという事件の噂で持ちきりとなっていた。貴族たちは「鬼の仕業」と言い出し、その噂は帝の耳にも届くようになった。都の守護を務める在原業平は、帝の命を受け犯人捜しを始めるが、下女誘拐の犯人として自身の縁者である紀長谷雄が捕縛されてしまう。長谷雄の無実を証明しようとする業平は、捕縛の場に居合わせた長谷雄の学友・菅原道真に協力を依頼し、不承不承協力を約束した道真と共に犯人捜しを続けることになった。

捜査の甲斐あって下女の行方不明事件を解決した業平と道真は、以降も都で起こる怪奇事件を解き明かしていくが、次第に事件の背後に関わる藤原氏と伴氏の勢力争いに巻き込まれることになる。

登場人物

[編集]

主人公

[編集]
菅原道真(すがわら の みちざね)
文章生。長谷雄からは「菅三殿」(菅原家三男の意)、屋敷の女房からは幼名の「阿呼さま」と呼ばれている。普段はを被っているため隠れているが、病で亡くなった兄・吉祥丸に負わされた傷痕が額にある。
学問に秀で、類稀なる洞察力があることにより業平に度々事件への協力を頼まれている。夥しい数の書籍を父・是善と共に所蔵している。権謀術数蔓延る都の政に嫌気が差し、遣唐使として大陸に渡ることを目標に精進している。一度聞けば大抵のことを記憶するなど秀でた才を持ち、大学寮には殆ど通っていない。貴重な書物・に目がない。人と馴れ合うことを嫌っており、屋敷に閉じこもっていることが多い。また年若い為、貴族社会の理不尽さには憤りを感じている。リアリストで物の怪・怨霊などの迷信は全く信じていない。厄介事に巻き込まれることを嫌い常に相談者へ突っ慳貪な態度をとるが、頼られることや尊敬されること感謝されることに対しては度々喜びを隠し切れないでいる。相手の心理を汲み取り応じる優しさもある。
兄の死の原因となった藤原家に対し多少憎んではいるが、それ以上に自分には何も出来ないことを憎く思っている。是善に抗議するために数日間断食したり、現実逃避のために出奔したりするなど頑固で行動的なところもある。
普通の貴族と違い民衆とも分け隔てなく接するが、家柄のせいで下級貴族や貴族でない人間からは特別視されてしまい葛藤している。
在原業平(ありわら の なりひら)
左近衛権少将。都の守護を務める役目柄、都で起こる怪奇事件の捜査に当たる。好色漢として有名で、数々の貴婦人と浮名を流しているが、本人はかつて駆け落ち未遂をした高子のことを忘れられないでいる。 白梅から好意をもたれておりそれを度々利用しているが、宣来子からは警戒されている。女性のを聞くだけで誰のものか分かる特技をもつ。根っからの人たらし。 血筋としては平城天皇の孫であり、反藤原派との宴会を度々ひらいている。

菅原家

[編集]
菅原是善(すがわら の これよし)
道真の父。天皇の侍読をしており、ときには天皇に頼みにされることもある。藤原家の恐ろしさを知り逆らえずにおり、道真には藤原家と関わって欲しくないと思っている。道真に負けず劣らずの本好き。
吉祥丸(きっしょうまる)
道真の兄。流行病で亡くなったとされるが、藤原家の犬に噛まれたことが原因の狂犬病により病死。
白梅(はくばい)
森本の翁に仕えた女房。翁の元で漢学を学び、翁の死後は道真に仕える。識字に長け、道真父子の書倉の整頓・管理を任されている。玉虫姫の一件を業平から知らされている高子から玉虫姫とも呼ばれている。宣来子とは読書を通じて友人関係となり、時には道真との恋の相談も聞く。他人の筆跡を真似る特技がある。
桂木(かつらぎ)
菅家に仕える古株の女房。道真を可愛がっているが、未だにしばしば幼名で呼ぶ。

藤原北家

[編集]
藤原良房(ふじわら の よしふさ)
左大臣藤原北家を率いる朝廷の実力者で、今上帝外祖父でもある。自身と藤原氏の権勢を強めることに執着し、その妨げになる人間は一族の者であっても容赦しない。
娘の明子に続き、姪の高子を入内させようと画策しており、かつて高子と関係を持っていた業平を警戒している。
藤原高子(ふじわら の たかこ)
良房の姪。良房の権勢拡大の策として、年若い帝に入内することになっている。かつて業平と駆け落ちしたことがあり、今でも業平に想いを寄せ、時折文を送り合っている。大胆な行動を躊躇いもなく起こすことがあり、また道真の性格を見通して物で釣って協力させたことなどから、道真から「強烈な姫」と評される。
藤原基経(ふじわら の もとつね)
左近衛中将、参議。良房の甥で、高子の同母兄。良房の養子となり、英才教育を受け育ち朝廷内の実力者となる。
良房同様に冷徹な人物で、兄の国経遠経のことまで内心見下しており、高子からは良房以上に恐れられている。良房同様、高子のことで業平を警戒している。幼少期に吉祥丸と面識があり、道真へも興味を持っている。
藤原国経(ふじわら の くにつね)
良房の甥で、基経・高子の異母兄。藤原家へ出入りする吉祥丸を使い走り扱いし威張っていたが、出世は年下の基経より遅い。業平と駆け落ちした高子を、追っ手として連れ戻した。
藤原遠経(ふじわら の とおつね)
良房の甥で、基経・高子の異母兄。藤原家へ出入りする吉祥丸を使い走り扱いし威張っていたが、出世は年下の基経より遅い。業平と駆け落ちした高子を、追っ手として連れ戻した。
藤原良相(ふじわら の よしみ)
良房の弟で、基経らの叔父。藤原家以外とも交流がある穏健派と見られているが、高子に先駆けて娘の多美子を入内させるなど油断ならない面もある。
藤原常行(ふじわら の ときつら)
良相の息子で、基経とは従兄弟。基経と同時期に参議に任ぜられたが、身分の低い女の許へ通うため夜道を微行し"百鬼夜行"に遭遇。
藤原多美子(ふじわら の たみこ)
良相の娘で、常行の妹。父親の画策で高子を出し抜く形で入内したが、本人はまだあどけなく従姉の高子を慕っている。

伴家

[編集]
伴善男(とも の よしお)
大納言。良房に次ぐ朝廷の実力者。藤原氏に代わり朝廷の実権を掌握しようとしており、様々な策謀を画策している。
道真の母は伴氏の出身で、遠縁にあたる。
伴中庸(とも の なかつね)
善男の子。非藤原氏勢力の中で、自分より年下の道真を懇意に思っている。

その他朝廷関連

[編集]
紀長谷雄(き の はせお)
業平の妻の縁者で、道真の学友。博打や女に目がなく、文章生試験にも消極的で落第し続け、度々問題を起こしては道真に助けを求めているため、道真には突き放された物言いをされることが多い。
島田忠臣(しまだ の ただおみ)
基経に仕える漢詩人。菅家廊下で教えを受けた是善の弟子であり、また、道真の師でもある。基経の命で裏で暗躍している。
島田宣来子(しまだ の のぶきこ)
忠臣の娘で道真の許嫁。政略結婚で許嫁となっているが道真のことを心から愛し、道真が得業生になったら正式に夫婦になると約束している。
わずか12歳で道真と同格の観察力を持ち、双六偏つぎもかなりの実力を持つなど学習力や記憶力に長けているが漢書が読めず、白梅が代わりに書物を読んであげる内に友人となる。
夫婦になるのを待ちきれず道真の屋敷の塀をよじ登り、侵入しようとするなどお転婆なところもある。
橘広相(たちばな の ひろみ)
大内裏八省院大学寮に勤める学者で、道真の師。是善の元で学んだこともあり、今でも懇意にしている。道真が師事している数少ない人物のひとり。
都言道(みやこ の ことみち)
広相と同じく、大学寮に勤める学者。道真の未熟を指摘したり、学業をサボりがちな長谷雄を指導したりしている。山行を愛好する。
紀豊城(き の とよき)
素行不良で父や兄から家を追い出され、伴善男の許へ身を寄せているトラブルメーカー。右目に大きな傷跡がある。
源信(みなもと の まこと)
嵯峨帝の子で、臣籍降下した非藤原系の有力貴族。仏教信仰に篤く、博識で穏やかな性格。
臣籍降下した身といえど、源一門は莫大な財産や私兵を有しており、家人の土師忠道を信頼していた。
源融(みなもと の とおる)
嵯峨帝の子で、信の弟。耽美趣味で、また藤原氏の台頭を快く思っておらず、源氏の財力にあかせて広大な庭園を造成するなどした。
清和帝(せいわてい)
藤原明子の子で、良房の孫。父である文徳帝の急死により、幼くして即位した。他に皇太子として有力視されていた兄達もいたが、祖父である良房の威光により立太子に至った経緯がある。

皇室関係者の系図

[編集]
 
(50代)桓武帝 
 
 
 
 
(51代)平城帝 
 
 
 
阿保親王
 
 
在原業平
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
紀静子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
惟喬親王
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
恬子内親王
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
源能有
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(52代)嵯峨帝 
 
 
 
 
(54代)仁明帝 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(55代)文徳帝
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
橘 嘉智子
 
 
 
 
藤原順子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(56代)清和帝 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
藤原良房
 
 
藤原明子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
藤原基経
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
藤原長良
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
藤原高子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
藤原常行
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
藤原良相
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
藤原多美子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 正子内親王(良祚)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 恒貞親王(恒寂)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
源 信
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
源 融
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(53代)淳和帝 
 
 
 

市井

[編集]
昭姫(しょうき)
都の遊技場を束ねる女主人。からやって来た渡来人唐物に詳しいため、唐物が関わる事件の際には道真が相談に訪れる。以来、何かと頼りにされる。
長谷雄のことを「御得意様」として懇意にしているが、長谷雄からは苦手意識を持たれている。元は、唐の後宮女官であった。
昭姫の店の大男
名前は未詳。スキンヘッドの強面。荷役や横暴な客への対応など、様々な業務を担っている。小藤と夫婦になった。

各話登場人物

[編集]
  • 「在原業平少将、門上に小鬼を見る事」
藤原親嗣(ふじわら の ちかつぐ)
藤原良房の従弟。日常的に、些細な事で使用人へ酷い折檻を繰り返していた。
小藤(こふじ)
親嗣の下女
松葉(まつば)
小藤を庇ってくれていた先輩。
  • 「都を賑わす玉虫の姫の事」
森本の翁(もりもとのおきな)
若いころに名を馳せた学者で、老体の今は盲目となり、白梅に書を読み上げてもらっている。
玉虫姫(たまむしひめ)
森本の翁の孫娘。両親を早くに亡くしている。14歳にして多才で見目麗しいと評判になり、毎日数々の男たちから恋文や贈り物が届く。しかし、垣間見た人ごとに語る人物像がまちまちで、まさに玉虫のごとく印象が変わる。
雪代(ゆきしろ)
森本家の女房たちの頭で、皆をまとめている。
酒井久通(さかい ひさみち)
玉虫姫へ特に熱心に文を送っていた若い公達。念願叶って会う約束を取り付けた直後、森本邸の近くで不審死の遺体となって発見された。
  • 「藤原高子屋敷に怪現れたりの事」
山路(やまじ)
高子に仕える女房の頭。
筑紫(つくし)
高子に仕える女房。夜間、庭で物の怪に襲われたと証言した。
  • 「鏡売るものぐるいの事」
加持丸(かじまる)
石川という家の下男。唐行きの商船に乗って仕入れた、出所の怪しげな物品を売り歩いている。
  • 「染殿の后、鬼に乱心せらるるの事」
染殿(そめどの) / 藤原明子(ふじわら の あきらけいこ)
先の文徳帝の女御で、清和帝の生母。良房の娘であり、基経の義姉にあたる。
先帝の崩御や幼い皇子と引き離されたことで気を病んでいるとされ、実質的な幽閉状態で療養している。
遠山(とおやま)
染殿の女房。明子に対して、しきりに“薬粥”を勧める。
真済(しんぜい)
明子の祈祷に呼ばれた金剛山の僧侶。
  • 「道真、明石にて水脈を見る事」
キヨ / 清川(きよかわ)
明石の浜で倒れていた道真を介抱してくれた女性。以前に京でお屋敷に勤めていたことがある。
常丸(つねまる)
キヨの夫で、郷司。村民の命を預かる責任感と覚悟を持つ。
ハツ
郷司の娘。村中の井戸が枯れ、人柱に立てられそうになる。
  • 「在原業平、多くの災難に遭うこと」
山吹(やまぶき)
数年前、業平と交際していたことがある姫君。気性が激しい。
肋丸(ろくまる)
山吹の屋敷で働いていた下男。今は郷里で蜂飼いをしている。
  • 「在原業平、京にて塩焼きの宴を催す事」
大江公幹(おおえ の きみみき)
業平が催した反藤原派の宴に参加していた貴族。
藤原良近(ふじわら の よしちか)
業平が催した反藤原派の宴に参加していた貴族。藤原式家の当主であり、良房ら藤原北家に要職を総取りされていることを不満に思っている。
藤原有貞(ふじわら の ありさだ)
業平が催した反藤原派の宴に参加していた貴族。藤原南家の当主。
  • 「山科の宮、山中の笛の音に惑わさるる事」
皐月(さつき)
森本の翁に仕えていた、白梅の同僚。若い白梅の行く末を気に掛けていた。今は人里離れた屋敷で、山科宮に仕えている。に秀でる。
山科宮(やましなのみや)
元はやんごとない身分だったが、出家山科に住んでいる。盲目のため、常人よりも聴覚が鋭い。琵琶の名手。
  • 「伴善男、吉夢を引き替ふる事」
タツ
若き日の伴善男が佐渡に赴任した際、身の回りの世話をしていた現地の田舎娘。よく笑う明朗な女だった。巨人になって京をのし歩く夢を、夢見が悪いとぼやく善男と交換した。
  • 「都にて、魂鎮めの祭りの開かれる事」
タマ
昭姫の店へ仕立て物を納めに出入りする勤労少女。
大宅鷹取(おおやけ の たかとり)
タマの父で、下級官吏である権史生。
  • 「藤原多美子、入内の事」
吉野(よしの)
多美子付きの女房の頭。多美子の幼少時より仕えている。一見、女房たちに対する態度は厳しい。
深雪(みゆき)
多美子に仕える女房の一人。
  • 「長谷雄、唐美人に惑わさるる事」
寧(ニン)
唐の都にいたころ、後宮に仕え始めた少女時代の昭姫がいろいろ教わった恩人。
  • 「源融、庭に古桜を欲す事」
カヤメ
山菜売りの女。桜の下で再会を約束し、赴任する主人に付いて東国へ行った恋人の帰りを待っている。
  • 「都で流行りたりける暦の事」
家原郷好(いえはら の さとよし)
陰陽頭暦道について一家言ある。
古川幹麻呂(ふるかわ の みきまろ)
陰陽寮で働いていた男。渡来技術者の受け入れにあたり、人員整理で失職した。低い身分の出身ながら、暦の計算に頭抜けた才能を持つ。
  • 「大学寮にて騒ぎが起こる事」
安野有兼(やすの ありかね)
大学寮に通う文章生。かなり年上だが、貧しい家の出身でどの学閥にも属しておらず、何度も挑戦するものの得業生試に及第していない。
  • 「菅原道真、遊行する比丘尼に合う事」
青海尼(せいかいに)
遊行先で数々の“奇跡”を起こして回る、謎の比丘尼。困窮する民を助け、絶大な信仰を集めているが、固定の寺は持たない。老人が子供だった頃から目撃されており、仙女の娘で年をとらないとも云われている。
大師(だいし)
内教坊妓女へ舞いの指南に訪れる舞師。裏では、貴族相手の高級娼婦を生業としている。背中に特徴的な紋様の刺青を入れている。
清原定成(きよはら の さだなり)
大師に入れ上げている客の一人。多額の家財をつぎ込んでいる。
柏木(かしわぎ)
長岡の山にある菅家の別荘を世話している、桂木の姉。桂木と瓜二つ。
  • 「禍いを呼ぶ男の童の事」
小雪姫(こゆきひめ)
常行が通う女。暴漢に襲われた弟を常行が助け、家まで送ってきたところで出会い、一目惚れされた。
武市丸(たけちまる)
小雪姫の弟。元服前。儚げな美貌の少年。多数の年嵩の男女から言い寄られている。
藤原元亮(ふじわら の もとあき)
武市丸に行儀見習いの稚児に入るよう誘いをかけていた一人。遠乗りの約束をした翌日に落馬し、負傷した。
日野唯兼(ひの ただかね)
武市丸に行儀見習いの稚児に入るよう誘いをかけていた一人。屋敷に招く予定だった前週、裏門で火事が起きた。
橘治臣(たちばな の おさおみ)
武市丸に行儀見習いの稚児に入るよう誘いをかけていた一人。相次ぐ不審事のため物忌みの相談をしたところ、流行病に伏せるようになった。
ビシル
基経に使われていた回鶻(ウイグル)人。日本人や中国人とは異なる、西域の民の風貌をしている。
  • 「菅原道真、米算用をする事」
フキ
昭姫の店で働く女性。
三好(みよし)
昭姫の店で働く女性。大きくなってきた年齢の子持ち。
  • 「菅原道真、山中に椿の怪をみる事」
源能有(みなもと の よしあり)
文徳帝の子で清和帝の異母兄になるが、生母が伴氏出身で身分が低く、早いうちに臣籍降下となった。
散位で隠棲中に、善男の計らいにより同年代の道真と親交を得る。書を好み将来を見通す見識がある一方、おしゃべり好きで細かいことにこだわらない性格。
滋子(しげこ)
能有の妻。名門出身で、子女に関する上昇志向も強い。
  • 「菅原道真、盗人に疑わるる事」
笠隆守(かさ の たかもり)
魂鎮めの祭の日、強盗に家宝のを盗まれ、父親を殺された。家の前ですれ違った道真を犯人と疑い、検非違使に訴え出る。
尾野昌嗣(おの まさつぐ)
大学寮の学生。悪友とつるんで遊び歩いていた。
  • 「天女に魅入られたる男の事」
近丸(ちかまる)
業平の部下。近頃、通う女ができたようだが、どうも様子がおかしい。
  • 「土師忠道、菅原道真と遇する事」
土師忠道(はじ の ただみち)
源信に心服する身辺警護の大男。
伴清縄(とも の きよただ)
伴善男の従者。粗暴。
  • 「紀長谷雄、竹薮にて子を見付くる事」
初音(はつね)
権少納言の奥方に仕える女房。昭姫の店によく奥方のための薬湯を買いに来る。
ヨリ
昭姫の店の従業員。乳飲み子を抱えながらも働いている。
藤原紀長(ふじわら の のりなが)
大学寮に通う藤原式家の四男。ハンサムだが女遊びが派手で不真面目。
  • 「在原業平、伊勢に呼ばるる事」
紀静子(き の しずこ)
業平の旧知。文徳帝の東宮時代から入内して寵愛を受け、第一皇子の惟喬親王や恬子などを産んだが、藤原氏より後ろ盾が弱く身分の劣る更衣だったため、息子は皇太子になれなかった。
恬子(やすこ)
文徳帝と静子の娘で、清和帝の異母姉。伊勢斎宮を務める。
峯緒(みねお)
伊勢神宮の神祇官の四男。
小雛(こひな)
恬子に仕える命婦
紀有常(き の ありつね)
静子の兄。
  • 典薬寮にて不老不死の薬が見つかる事」
興道名継(おきみち の なつぐ)
内薬司に勤める、忠臣の友人。師から送られてきた薬のことで、忠臣へ相談を持ち掛けた。
出雲峯嗣(いずも の みねつぐ)
前の典薬頭。役目を退いてからは、山中に隠居している。
八千代(やちよ)
内薬司の女医。急な腹痛を起こした宣来子を手当てした。
紀国守(き の くにもり)
長谷雄の祖父。代々の医師の家系で、名高い内薬正だったが、子孫には紀伝道を学び文章博士になるよう勧めた。
藤原秀雄(ふじわら の ひでお)
医薬については門外漢だが、藤原家からの目付役として典薬寮へ配されている。
  • 「流人の隠岐より帰京する事」
恒貞親王(つねさだしんのう) / 恒寂(ごうじゃく)
淳和帝の息子で、嵯峨帝の甥(父方)かつ孫(母方)。嵯峨帝の子である仁明帝の御世に皇太子であったが、約20年前の承和の変廃太子となり、出家した。その結果、藤原良房が妹・順子の産んだ子として推す道康親王(のちの文徳帝)が、新たに皇太子となった。
橘逸勢(たちばな の はやなり)
弘法大師と同時期に遣唐使として留学し、文字の美しさに定評のある書家。承和の変の首謀者として伊豆配流になる途上で死去し、都では怨霊として恐れられた。
伴健岑(とも の こわみね)
恒貞親王に仕えていた元舎人。橘逸勢と同じく隠岐へ流罪になったが、20年ぶりに恩赦により京へ戻るとの噂が流れる。
菅原清公(すがわら の きよきみ)
道真の祖父。かつて遣唐使を務めた。
正子内親王(まさこないしんのう) / 良祚(りょうそ)
恒貞親王の母。嵯峨帝の娘で、叔父にあたる淳和帝の皇后となった。息子とともに出家し、今は嵯峨院に暮らす。
嵯峨帝(さがてい)
恒貞親王の伯父(父方)かつ祖父(母方)。弟の淳和帝に譲位した後も、上皇として実質的な政治権力を揮っていた。仁明帝の皇太子に恒貞親王を指名し、将来を期待していた。源信、源融らの父でもある。
阿保親王(あぼしんのう)
嵯峨帝の甥で、業平の父。嵯峨帝の崩御に際し、恒貞親王の安全を図るための相談を橘逸勢から受けたが、これを嵯峨帝の皇后であった嘉智子太皇太后に報告したことで変事の発端となった。
  • 「宵闇に鬼出る辻の事」
小菊(こぎく)
高子の屋敷で働く使用人。漢籍を借りる遣いで出入りし、菅家の白梅とも親しい。夜道で襲われ、首に負傷した。相撲人(すまいびと)の兄が3人いる。
シゲ爺(しげじい)
高子の屋敷で働く下男。若い頃の力自慢をしていたが、夜道で暴漢に遭った際には腰を打って臥せった。
直世(なおよ)
権中将の四男。身の丈六尺(約182cm)の暴れ者だったが、夜道で腕をねじ折られた。
  • 「宴の松原に屍の出る事」
高麻呂(たかまろ)
かつて菅家で学んでいた門下生。
  • 「伴中庸、橋の上にて思し悩む事」
藤原順子(ふじわら の のぶこ)
良房の妹で、良相の姉。基経や高子の叔母にあたる。仁明帝の女御で、文徳帝の生母。清和帝の祖母である太皇太后で、即位時は内裏で幼帝を後見していた。
  • 「狐を嫁にした男の事」
使部丈人(つかいべ の たけひと)
最近、左馬寮へ配属になった下級官吏。
こう
使部丈人の新妻。夫やその同僚らから、在原業平を呪詛している狐の化身ではと疑われている。
  • 「藤原高子、屋敷に吉兆が現れる事」
瀬戸(せと)
高子に仕える女房。務め始めて一年ほど。よく働くが、上昇志向が強く、不審な外出が多い。
桃里(とうり)
高子の屋敷で働く端女(はしため)。以前は藤原ゆかりの尼寺で厨の奉公をしており、2ヶ月前にやって来た。
  • 「雪中に、朧車の出づる事」
千乗(ちのり)
最近侍従の職に任ぜられ従五位下になった、質素な若手貴族。かつて左少弁だった亡父は、当時右少弁だった伴善男と因縁がある。
軽麻呂(かるまろ)
千乗の家に、父親の代から仕えていた牛飼いの爺。退職金をもらって引退した。
登美直名(とみ の ただな)
20年前、法隆寺の有力な檀越である立場を利用して、寺の土地財物を私物化し売り払っていた。
善愷(ぜんがい)
法隆寺の僧。登美直名の横領に憤慨し、弁官へ訴え出た

書誌情報

[編集]
  • 灰原薬『応天の門』新潮社〈BUNCH COMICS〉、既刊19巻(2024年7月9日現在)
    1. 2014年4月15日発行(2014年4月9日発売)、ISBN 978-4-10-771742-9
    2. 2014年10月15日発行(2014年10月9日発売)、ISBN 978-4-10-771777-1
    3. 2015年4月15日発行(2015年4月9日発売)、ISBN 978-4-10-771810-5
    4. 2015年10月15日発行(2015年10月9日発売)、ISBN 978-4-10-771846-4
    5. 2016年3月15日発行(2016年3月9日発売)、ISBN 978-4-10-771883-9
    6. 2016年11月15日発行(2016年11月9日発売)、ISBN 978-4-10-771930-0
    7. 2017年6月15日発行(2017年6月9日発売)、ISBN 978-4-10-771987-4
    8. 2017年12月15日発行(2017年12月9日発売)、ISBN 978-4-10-772034-4
    9. 2018年7月15日発行(2018年7月9日発売)、ISBN 978-4-10-772101-3
    10. 2018年12月15日発行(2018年12月7日発売)、ISBN 978-4-10-772143-3
    11. 2019年7月15日発行(2019年7月9日発売)、ISBN 978-4-10-772203-4
    12. 2020年2月15日発行(2020年2月7日発売)、ISBN 978-4-10-772258-4
    13. 2020年9月15日発行(2020年9月9日発売)、ISBN 978-4-10-772320-8
    14. 2021年3月15日発行(2021年3月9日発売)、ISBN 978-4-10-772371-0
    15. 2021年11月15日発行(2021年11月9日発売)、ISBN 978-4-10-772445-8
    16. 2022年11月9日発売、ISBN 978-4-10-772544-8
    17. 2023年3月9日発売、ISBN 978-4-10-772584-4
    18. 2023年11月9日発売、ISBN 978-4-10-772666-7
    19. 2024年7月9日発売、ISBN 978-4-10-772732-9

ミュージカル

[編集]

宝塚歌劇団月組により、2023年2月から4月まで宝塚大劇場東京宝塚劇場において上演された。主演は月城かなと海乃美月。脚本・演出は田渕大輔[9]

キャスト

舞台

[編集]

舞台『応天の門』のタイトルで、2024年12月4日から22日まで明治座で上演予定。主演は佐藤流司、脚本は桑原裕子、演出は青木豪が務める[13][14]

キャスト
スタッフ

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ a b 応天の門 第106話 雪中に、朧車の出づる事 三①”. コミックバンチKai. 新潮社 (2024年4月26日). 2024年5月1日閲覧。
  2. ^ a b “灰原薬が@バンチ新連載、菅原道真&在原業平のサスペンス”. コミックナタリー (ナターシャ). (2013年10月21日). https://natalie.mu/comic/news/101816 2024年3月21日閲覧。 
  3. ^ “@バンチが“@”を取って新装刊、最終号で「BTOOOM!」が足掛け9年の連載に幕”. コミックナタリー (ナターシャ). (2018年3月20日). https://natalie.mu/comic/news/274410 2024年3月21日閲覧。 
  4. ^ “月刊コミックバンチがWeb雑誌・コミックバンチKaiにリニューアル、4月26日オープン”. コミックナタリー (ナターシャ). (2024年3月21日). https://natalie.mu/comic/news/565883 2024年3月21日閲覧。 
  5. ^ 灰原薬が@バンチ新連載、菅原道真&在原業平のサスペンス”. コミックナタリー (2013年10月21日). 2014年6月29日閲覧。
  6. ^ 菅原道真と在原業平がコンビを組んで事件を解決! 歴史ミステリコミック『応天の門』”. ダ・ヴィンチWeb. KADOKAWA (2014年6月5日). 2014年6月29日閲覧。
  7. ^ メディア芸術祭で大賞の石塚真一がスピーチ、犬木加奈子も審査の決め手語る”. コミックナタリー (2017年3月16日). 2021年3月9日閲覧。
  8. ^ 「応天の門最新コミックス第18巻 NOW ON SALE!!」『月刊コミックバンチ』2024年4月号、新潮社、2023年2月21日、182頁。
  9. ^ 月組公演『応天の門』『Deep Sea-海神たちのカルナバル-』」宝塚歌劇団。2022年7月16日閲覧
  10. ^ a b c キャストほか”. 宝塚歌劇団. 2022年7月16日閲覧。
  11. ^ 中本千晶「月組トップスター・月城かなと演じる菅原道真の成長譚『応天の門』(2ページ目)」『HOMINIS』スカパーJSAT、2024年3月27日。2024年6月24日閲覧
  12. ^ a b c d e f 中本千晶「月組トップスター・月城かなと演じる菅原道真の成長譚『応天の門』」『HOMINIS』スカパーJSAT、2024年3月27日。2024年6月24日閲覧
  13. ^ a b c d e f g 灰原薬のマンガ『応天の門』が明治座で舞台化、出演に佐藤流司・高橋克典・花總まり」ナターシャ、2024年6月24日。2024年6月24日閲覧
  14. ^ a b c d e f g h i j 舞台『応天の門』追加キャストに中村莟玉・篠井英介・西岡徳馬ら、ビジュアルも到着」ナターシャ、2024年7月31日。2024年7月31日閲覧

注釈

[編集]
  1. ^ 道真らの年齢から推測して作中は西暦861 - 862年ごろのはずだが、864年に大納言となるはずの伴善男がすでに大納言であるなど、やや史実と異なる部分が散見される。

外部リンク

[編集]