コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

牛頭馬頭

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
地獄草紙』断簡 咩声地獄(シアトル美術館蔵)に描かれる馬頭羅刹

牛頭馬頭(ごずめず)とは、仏教において地獄にいるとされる亡者達を責め苛む獄卒で、牛の頭に体は人身の姿をした牛頭と、馬の頭に体は人身の姿をした馬頭をいう[1]

牛頭馬頭は漢訳語であり、元のサンスクリット名は牛頭はgośīrṣa(ゴーシールシャ)、馬頭はaśvaśīrṣa(アシュヴァシールシャ)である[1]

概要

[編集]

牛頭馬頭という呼び方からわかるように、牛頭と馬頭はセットで語られることが多い。仏教の経典では『大仏頂首楞厳経』第8[2]、『十王経』[3]などにその語の使用例が確認でき、牛頭鬼馬頭鬼(ごずき-めずき)、牛頭獄卒馬頭羅刹(ごずごくそつ-めずらせつ)[2]とも表記される。中国では牛頭馬面(ごず-ばめん)とも呼ばれており、地獄の様子を描写した民間の書籍や変文[4]ではこちらも広く使われている。

仏教の思想に基づく地獄の獄卒は、六朝以後の中国の小説類にも散見される。日本でも地獄の登場する説話や、地獄の様子を描いた『六道輪廻図』、『六道道』、『十王図』、『地獄草紙』などの絵画にその姿が決まって描かれてもおり、馴染みも多い。

牛頭、馬頭の他にも、鹿獅子といった動物の頭を持つ仲間も存在する。

牛頭

[編集]

牛頭人身の地獄亡者を責めさいなむ獄卒のひとつ。『五苦章句経』では地獄にいる「牛頭人手 両脚牛蹄」の獄卒を阿傍というとある。 日本では、『今昔物語集』、『太平記』など多くの文献に登場する(『平家物語』では、二位殿の夢の中で登場する)。

獄卒としてでは無く、牛の頭をした鬼として登場するものは「牛鬼」(うしおに)と呼ばれており、人間の敵として登場し、退治されるという説話が多い。

牛の頭という意味では、このような姿をとっている存在はミノタウロス牛頭天王モロクなど、世界中の伝説に散見される。

説話での登場例

[編集]

現在ここで挙げられている例はどちらも、獄卒としての牛頭鬼ではない。

  • 今昔物語集』巻第十七の、修行僧が毘沙門天に助けられるという話[5]に牛頭鬼が登場しており、「仏壇の前を見れば、牛の頭なる鬼を三段に切殺して置きたり」という描写なども見える(同様の説話は『大日本国法華験記』中巻にも見られる[6])。
  • 太平記』巻三十二の、鬼丸鬼切の事という話に大和国の宇多(うだ)の森に牛鬼(うしおに)が出没しており、渡辺綱(わたなべのつな)によって退治されている[7]

馬頭

[編集]

馬頭人身の地獄亡者を責めさいなむ獄卒のひとつ。牛頭とセットで語られることが多い。

説話での登場例

[編集]

獄卒としての描写が多いが、百鬼夜行の一員としても登場している。

  • 宇治拾遺物語』では百鬼夜行として夜中に歩いている鬼のひとつとして「馬の頭なる鬼」が登場している[8]

脚注

[編集]
  1. ^ a b 世界大百科事典 第2版(牛頭馬頭) 2006年 平凡社
  2. ^ a b 『大仏頂首楞厳経』第8 「亡者神識見大鉄城。火蛇火狗虎狼師子。牛頭獄卒馬頭羅刹。」
  3. ^ 『十王経』 「引路牛頭肩挾棒 催行馬頭腰擎叉」
  4. ^ 『大目乾連冥間救母変文』 「獄卒数万余人総是牛頭馬面」
  5. ^ 『今昔物語集』巻第十七 第四十二「於但馬国古寺毘沙門伏牛頭鬼助僧語」
  6. ^ 芳賀矢一『攷証今昔物語集』中 冨山房 1912年 872-874頁
  7. ^ 『太平記』下 博文館 1938年 161-162頁
  8. ^ 渡辺綱也 校訂『宇治拾遺物語』下巻 岩波書店岩波文庫〉 1952年 78頁

関連項目

[編集]