コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

座頭市 (2003年の映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
座頭市
Zatoichi
監督 北野武
脚本 北野武
製作 森昌行
斎藤恒久
出演者 ビートたけし
浅野忠信
音楽 鈴木慶一
撮影 柳島克己
編集 北野武
太田義則
配給 日本の旗 オフィス北野 / 松竹
アメリカ合衆国の旗 ミラマックス
公開 イタリアの旗 2003年9月2日VIFF
日本の旗 2003年9月6日
上映時間 115分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 28億5000万円[1]
テンプレートを表示

座頭市』(ざとういち)は、2003年に製作された北野武監督、ビートたけし主演の日本映画

北野武初の時代劇であり、盲目というハンデキャップを背負った謎の侠客「市(いち)」の活躍を描いた作品。勝新太郎の代表作である時代劇『座頭市シリーズ』を題材にしたが、「盲目でありながら居合抜きの達人」という座頭を主役にしている設定以外、子母澤寛が執筆した原作や前述のシリーズとは全く趣きが異なる[2]。いわゆるリブート(再始動)作品である。

日本国内の観客動員数は200万人で、北野映画最大のヒット作となった。本作は日本国外でも上映され、複数の賞を受賞した

公開時のキャッチコピーは「最強。

物語

[編集]

盲目の剣客である市が、とある宿場町にやって来た。その町はやくざの銀蔵一家に支配され、人々は苦しい生活を強いられていた。偶然知り合ったおうめの家に厄介になることになった市は、賭場にておうめの甥である遊び人の新吉と出会う。博打に勝った二人は、金を狙った芸者の姉妹(弟)に襲われそうになる。二人はある商家の子供だったが、幼少時に盗賊に両親を殺害され、その親の仇を探して旅をしていると打ち明ける。一方、脱藩して職を失った浪人・源之助夫妻もまたこの町に流れ着き、彼は剣術の腕を買われて銀蔵一家の用心棒を務めることになる。町の飯屋で市と源之助は出会い、互いに相手の剣術の凄さを見抜くのだった。

ある日、市は賭場博打のイカサマを見抜いたことから、やくざと大殺陣を演じてしまう。やがて姉妹の親の仇が銀蔵と扇屋の主人だと判明し、姉妹は復讐を遂げるために銀蔵の家に乗り込む。

出演者

[編集]

スタッフ

[編集]

製作

[編集]

浅草ロック座の会長である斎藤智恵子は、勝が昔から金銭的に世話になった存在であり、勝の債権者の一人でもあった。座頭市の映像化権は他社に譲渡されていたが買い戻し、昔からの付き合いであるビートたけしにオファーをかけた[3]

準備段階でたけしは勝の座頭市をTV・映画を全て観た上で全く新しいイメージで創りあげ、「『キル・ビル(Vol.1)』も『ラスト サムライ』も全くの偽物。本作こそ正真正銘の本物」と自負した。それでも「勝さんは超えられない」と謙遜していた。一方で、「時代劇ってのは近代の産物というか、フィクションじゃない。だから古きよき時代をお手本にすると、出発点で間違えることになる」と述べ、製作当初から近代の時代劇にないものを盛り込むという強い意気込みをもって製作にあたっていた[2]

市の正体

[編集]

市は身元も年齢も全く不明である。冒頭で「市」という名で呼ばれ、やくざの親玉のみが中盤で「座頭市」というあだ名を口にしたぐらいである。後は「按摩さん」としか呼ばれていなかった事から、知る人が限られた謎の存在であることがわかる。勝新版と異なり金髪をしている。最後の場面で、実は碧眼をしており、その混血らしき様相を目を閉じて隠していたとわかる(当人曰く「目が見えないほうが都合がよい時もある」)。ただし、最後の場面では「見える」という言葉が一般的な視力の意味ではなく、物事の実態を把握する能力という基準で語られており、市の目が実際に見えているわけではないとする解釈もある[2]

なお、蓮實重彦は市を異星人と位置づけている[4][5]

公開

[編集]

アクションシーンで流血描写などがグロテスクに表現されている箇所があるため、R-15に指定されての劇場公開となったが、地上波での放映時は、放送コードに抵触した一部のシーンやセリフをカットされ、WOWOWでは本作に手を加えることなくそのままR-15指定として放送されている。

R-15指定にもかかわらず、15歳未満でもDVDはレンタル可能である(VHSビデオは一般作品制限付き)。

評価

[編集]

従来の作品よりも娯楽的要素が強く、主演のたけしが金髪だったり、劇中で農民が田畑を耕す音や大工が作業をする音などにリズムをつけて独創的な音楽を演出し、祭りのシーンでは大人数が下駄を履いて、一斉にタップダンスを披露するなどミュージカル的なシーンがあった[2]。また、女性の方が男性よりも男らしく設定される、盲目の市が誰よりも正確に物事を把握する、おせいの性別や市の視覚のあいまいさといった、従来の時代劇の常識を覆す発想や仕掛けが多数盛り込まれていた[2]

映画界においては、第60回ヴェネツィア国際映画祭で監督賞(銀獅子賞)を受賞したのをはじめ、国内外の各映画賞で高い評価を受けている[2](下記参照)。監督・主演を務めたビートたけしが2014年にテレビの特別番組[6]ルーヴル美術館を訪れジャン=リュック・マルティネズ館長と対面した際、館長が「私だけでなく子供たちも大ファン」と『座頭市』のDVDパッケージを見せて歓迎したエピソードがある[7]

一方で、多くの時代劇で活躍してきた千葉真一松方弘樹は、二人が出演した映画『新・影の軍団 第参章 〜地雷火〜』の初日舞台挨拶の後に行われた記者会見で本作について、千葉は「時代に媚びた時代劇は作るべきじゃない。妙な時代劇が定着してしまうのは恐ろしいこと」、松方は「外国の賞狙いを意図している。タップとか金髪とかね…。だからこそ我々は『それだけが時代劇じゃない』ってことを伝えていかなきゃ」とコメントし[8]、その様子は複数のワイドショーメディアマスコミに取り上げられた。

受賞

[編集]

その他

[編集]
  • たけしは以前、自身のバラエティー番組のコントで座頭市のパロディをやったことがある (『北野ファンクラブ』等)。また、映画『みんな〜やってるか!』内でも主人公役のダンカンが『座頭市』のパロディをしている。
  • 1992年、勝新太郎と北野は文藝春秋誌上で対談を行う。その中で勝はたけしに座頭市のワンシーンのイメージを語った。〜 怪しげな煙の中で足をバタバタさせながら握り飯を喰う百姓、そこに現れる市、やがて追っ手の足音が聞こえ百姓の足音と重なり一つのリズムとなる。市は踊りだし旅人風の追手と殺陣を繰り広げる 〜 「たけし。百姓か、旅人姿か、どっちかで出るかい?」。

脚注

[編集]
  1. ^ 日本映画製作者連盟2003統計
  2. ^ a b c d e f 上垣公明「北野武監督 『座頭市』  ジェンダー、 視覚、 祭りを中心に」『大阪電気通信大学人間科学研究』第11巻、大阪電気通信大学、2009年3月、37-43頁。 
  3. ^ 「座頭市・制作秘話」”. 熱血ライター神山典士がゆく / @the bazaar / Works for Magazine. 2013年8月17日閲覧。
  4. ^ あなたに映画を愛しているは言わせない この金髪の座頭市は、まぎれもなく宇宙人である
  5. ^ 【みるほどにハマる北野映画の神髄】ずっとイメージを温めていた下駄タップシーン「座頭市」(2/2)”. SANKEI DIGITAL (2017年10月6日). 2018年4月23日閲覧。
  6. ^ 日本テレビ開局60年特別番組『ビートたけしの超訳ルーヴル』(日本テレビ系、2014年3月18日放送)
  7. ^ たけし、ルーヴル美術館の館長に名乗り?「ぜひ東京へ!」 - 2014年03月18日. ORICON STYLE、2014年3月30日閲覧。
  8. ^ “千葉 & 松方「座頭市」を斬る” (日本語). 読売新聞. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2003年9月20日). オリジナルの2003年12月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20031211213143/http://www.yomiuri.co.jp/hochi/geinou/sep/o20030920_30.htm 2003年9月20日閲覧。 

外部リンク

[編集]