和訓栞
『和訓栞』 | |
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言語 | 日本語 |
類型 | 古辞書 |
編者・監修者 | 谷川士清 |
出版地 | 日本 |
最初の出版日 | 1778年 ~1887年 |
バリエーション |
谷川清逸筆写本 製版本 合冊 |
最新版の項目数 | 20897 |
排列 | 五十音順(第二音節まで) |
派生辞書 | 井上頼圀・小杉榲邨編『増補語林倭訓栞』 |
数量 ; 大きさ | 93巻82冊 |
付録 | 大綱 |
印刷者 | 成美堂など |
『和訓栞』(わくんのしおり)は、谷川士清が編纂した国語辞書。江戸時代に編纂され、明治にかけて刊行された。
概要
[編集]「和訓栞」の表記は題叢で、内題・版心から「倭訓栞」とも表記される[2]。前編45巻34冊、中編30巻30冊、後編18巻18冊、全93巻82冊のち合冊。
五十音順の配列、穏当な語釈、出典・用例などの整備から、「日本初の近代的な国語辞書」とされる[注 1]。石川雅望の『雅言集覧』、太田全斎の『俚言集覧』とともに「近世の三大(国語)辞書」として並称されることがある[4][5][6][7]。また『雅言集覧』とともに双璧をなすと言われることもある[8]。
沿革
[編集]当初は、製版本として谷川士清の没翌年から1887年(明治20年)までの百余年、数次にわたり刊行された[9]。原稿完成当時のものとして、士清の曾孫にあたる清逸(すがはや)の筆写した清逸本『倭訓栞』が現存する。当初は一部の予定であったが、出版は難航し、三部構成に変更された[10]。
時系列的には次のように刊行された[11]。
- 1777年(安永6年):前編14冊出版。
- 1805年(文化2年):前編10冊出版。士清の息子・士逸(ことはや)と賀茂季鷹の校訂。
- 1830年(文政13年):前編10冊出版。孫の士行(ことつら)が資金を工面。
- 1862年(文久2年):中編30冊出版。
- 1887年(明治20年):後編18冊出版。野村秋足が校訂。
- 1898年(明治31年):井上頼圀・小杉榲邨が『増補語林倭訓栞』として後編を割愛して前編・中編を増補改正。
内容
[編集]首巻の「大綱」では漢字、仮名、方言など、国語に関して論ずるが、その所説は谷川士清の主著『日本書紀通證』と密接な関係にあり[12]、附録の「倭語通音」説に基づいて、見出し語を各編ごと仮名一字の語、二字の語、三字の語などそれぞれ別に、また第二音節までを五十音順に配列している[注 2]。前編(7496語)には古言・雅語、中編(9618語)に雅語、後編に方言・俗語・外来語(3783語)を収録する[13]。
受容
[編集]曲亭馬琴が書肆に宛てた書簡に『和訓栞』の注文が見られる[14]。また、喜多村信節は『嬉遊笑覧』において、語の考証に『和訓栞』を引用している[14]。
明治以降でも、たとえば幸田露伴は「音幻論」の中で『和訓栞』を引いている[14]。また、大槻文彦が編纂した国語辞典『言海』には、『和訓栞』の影響が指摘されている[15][16]。さらにジェームス・カーティス・ヘボンの『和英語林集成』第3版「和英の部」においても、古典語の増補にあたって『和訓栞』や『雅言集覧』などの近世辞書が編纂資料として参照されているが、特に『和訓栞』は意味・解説の際にも参照された[17]。
復刻・影印
[編集]- 尾崎知光編『和訓栞:大綱』勉誠社〈勉誠社文庫121〉、1984年3月。
- 木村晟・三澤成博編輯『版本和訓栞』第1巻~第7巻、大空社〈古辞書影印資料叢刊〉、1998年11月。ISBN 4-7568-0533-7
- 三澤薫生編著『〔谷川士清自筆本〕倭訓栞:影印・研究・索引』勉誠出版、2008年12月。ISBN 978-4-585-03215-1
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 平井吾門 (2016), p. 44.
- ^ 木村義之 (2015), p. 118.
- ^ 平井吾門 (2016), pp. 46–47.
- ^ 湯浅茂雄 (1995), pp. 238–240.
- ^ 湯浅茂雄 (2000), p. 64.
- ^ 木村義之 (2015), p. 103.
- ^ 木村一 (2021), p. 154.
- ^ 花岡安見 (1902), p. 114.
- ^ 足立巻一 (1983), p. 173.
- ^ 吉丸雄哉「Chronicle of Mie 文学編 谷川士清と『倭訓栞』」『Wave Mie Univ.』2014年 。2024年11月17日閲覧。
- ^ 木村義之 (2015), p. 104.
- ^ 北岡四良 (1977), p. 37.
- ^ 北岡四良 (1977), p. 32.
- ^ a b c 木村義之 (2015), p. 117.
- ^ 湯浅茂雄 (1997), pp. 10–11.
- ^ 小野春菜 (2015), pp. 64–65.
- ^ 湯浅茂雄 (2002), pp. 74–79.
参考文献
[編集]- 図書
- 論文
- 足立巻一「谷川士清の好古」『歴史と人物』第13巻第8号、中央公論新社、1983年7月、166-173頁。
- 岡田希雄「俚言集覧伊部上巻の発見」『国語国文』第12巻第9号、1942年9月、33-46頁。
- 小松寿雄「語源と辞書」『日本語学』第31巻第7号、明治書院、2012年6月、26-35頁。
- 小野春菜「『倭訓栞』後編からみた『言海』について」『鈴屋学会報』第32号、鈴屋学会、2015年12月、53-69頁。
- 湯浅茂雄 著「江戸時代の辞書」、西崎亨 編『日本古辞書を学ぶ人のために』世界思想社、1995年5月、223-254頁。ISBN 4790705552。
- 湯浅茂雄「「言海」と近世辞書」『国語学』第188号、国語学会、1997年3月、1-14頁。
- 湯浅茂雄「江戸の国語辞典あれこれ」『月刊しにか』第11巻第3号、大修館書店、2000年3月、57-64頁。
- 湯浅茂雄「『訂正増補 和英英和語林集成』「和英の部」の増補と『和訓栞』『雅言集覧』『官版 語彙』」『国語学』第53巻第1号、国語学会、2002年1月、70-83頁。
- 平井吾門「谷川士清」『日本語学』第35巻第4号、明治書院、2016年4月、44-47頁。
- 木村一 著「中世(後期)・近世の辞書」、沖森卓也・木村義之 編『辞書の成り立ち』朝倉書店〈日本語ライブラリー〉、2021年11月、151-157頁。ISBN 9784254516197。
- 木村義之「近世の辞書:『倭訓栞』『雅言集覧』『俚言集覧』」『悠久』第139号、おうふう、2015年2月、103-121頁。