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メディアの動き
[編集]テレビ
[編集]NHK総合では16時6分の前震による緊急地震速報が入電し、そのまま地震に関する報道特別番組に切り替わった[1][2]。各民放テレビ局でも16時21分までに全て中止され地震に関する報道特別番組に切り替わった[3][4]。元日に発生した地震のため、『芸能人格付けチェック』(朝日放送テレビ・テレビ朝日系)をはじめとした多くの正月特別番組が放送を中止した[5]。他にも一部企業で正月に合わせたCMの放映を自粛する動きが見られた[6]。
NHKではアナウンサーの山内泉が大津波警報に対して「あなたに命の危険が迫っています」「テレビを見てないで逃げてください」などと大声で発し、「絶叫」とも形容される強い口調で避難を呼びかけた[7][8]。NHK報道部の足立義則は、このような呼びかけ方は東日本大震災時の教訓を生かして決められたものであると、NHKによるnoteの記事[9][10]を挙げて説明している[7]。このような最大級の呼びかけが行われたのは、普段は冷静な口調のアナウンサーが強い口調を使うことで「自分は大丈夫」などといった正常性バイアスに陥らないようにするための試みであった[11]。津波警報における東日本大震災の教訓を生かした呼びかけ自体は2012年12月7日の三陸沖地震などでも行われていたが[10]、最大級の呼びかけが行われたのは今回が初めてであり、このような呼びかけを受けて避難を決断した人もいた[12]。また、日本海中部地震や北海道南西沖地震がそうであったように、日本海側での地震では津波がすぐに到達することも強い呼びかけの背景にあった[13]。
NHKは、インフラの寸断により被災地域の一部で地上波放送の視聴が出来なくなっていることから、BS波の再編に伴い2023年12月以降番組移設や停波の周知広報に使用しているBS103ch(旧・NHK BSプレミアム)において、9日18時より総合テレビの金沢局の地域向けニュースや全国ニュースなどを随時放送する臨時対応を行った[14][15]。さらに12日4時以降、BS103chでの臨時対応の対象を、総合テレビの石川県域放送および全国放送のほぼすべての番組に拡大[16][17]。本来は2024年3月で放送免許失効に伴い停波する予定だったが、臨時目的放送に切り替えた上で同年4月以降も継続[18]。同月6月30日でBSでの被災地向け放送の対応を終了した[19]。
独立放送局については、津波警報の対象地域であった兵庫県のサンテレビは事前収録で制作された多言語で避難を訴える映像を放送する[20]などいくつかの放送局が臨時編成を組んだ。このほか、編成の変更を行わなかったテレビ埼玉においても1日に放送を予定していた『埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』の放送を延期した[21]。
なお、元日(1月1日)の番組編成がテレビ各局において大幅に変更されたことを受けて、テレビ番組の視聴率測定を行っているビデオリサーチは地震発生以降の視聴率発表は行わない異例の措置が取られた[22]。1月1日から7日までの期間は視聴率上位10番組のうち6番組をニュースが占め、翌週も2位と3位に地震に関する報道番組がランクインした[23]。
ラジオ
[編集]この地震では停電のためにテレビやインターネットが使えない状態が長期間続いたため、ラジオは情報収集の媒体として重要な役割を果たした[24]。石川県の北陸放送では地震当日が元日であったために勤務していたアナウンサーが1人しかいなかったが、すでに退職した者や外部の者の手伝いもあり放送を行うことができた[25]。
新聞
[編集]地震を受けて、読売新聞[26]や北日本新聞[27]では被害状況を伝える号外を連日にわたって、被災地の避難所や全国の主要な都市などで配布した[28]。さらに、北國新聞では1日に号外を配布した他に、新聞休刊日であった2日に特別夕刊を発行した[29]。記者の帰省などにより取材が難しい状況ではあったが、号外は1日21時現在の情報に基づいて作成され、特別夕刊は金沢市内でも購読者であるかを問わずに配布された。1月3日に通常の新聞で報道が始まってからは多くの記者も被災したという事情からルポルタージュ記事やライフラインに関する記事が中心となった。北國新聞は、過去に震災で大きな被害を受けた地域の地方紙である熊本日日新聞、河北新報、福島民報などの編集局からも助言を受けながら報道を行った[30]。また、石川県では新聞を配達できない地域が生じたため、朝日新聞社では避難所でタブレット端末を配布し電子版の記事を読めるようにした他[31]、北陸中日新聞では臨時の処置として紙面をインターネット上で無料で公開した[32]。
日本新聞協会が実施した「新聞オーディエンス調査365」の2024年1月分の調査結果では、1月3日、4日に新聞(電子版、新聞社のニュースサイトを含む)を普段よりよく見たり読んだりしたと回答した者の割合が元日に次いでそれぞれ2番目、3番目に高くなっており、この地震や羽田空港での衝突事故に多くの人が関心を寄せていたことが窺えたと結論している[33]。
電話・電報
[編集]地震の当日中に、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルは災害用伝言板の運用を、NTT東日本とNTT西日本は災害用伝言ダイヤル(171)とインターネット上の「web171」の運用をそれぞれ開始した[34]。LINEヤフーは地震の当日にLINE内で2022年2月28日の導入以降、同年3月16日の福島県沖地震で1日のみ運用したのに続いて2回目、長期としては初となる「LINE安否確認」の運用を開始し、ワンタッチで登録している「友だち」に安否を報告できるようにした。1月16日の運用終了までに1232万3000人が利用した。この他、地震に関係するオープンチャットも190件以上開設された[35]。また、石川県、富山県、新潟県、福井県のいずれも全域で公衆無線LANの「00000JAPAN」が無償で提供された[36]。石川県の珠洲市、輪島市、能登町、穴水町、志賀町、七尾市、中能登町、羽昨市、宝達志水町、かほく市、津幡町、内灘町、金沢市、野々市市、白山市、川北町、能美市、小松市、加賀市では公衆電話が無償で提供されたが、かほく市、津幡町、内灘町、金沢市、野々市市、白山市、川北町、能美市、小松市、加賀市に関しては2月1日0時以降は再び有料化された[37]。それ以外の自治体でも3月1日0時をもって無料化は終了となった[38]。これ以外にも避難所等で特設公衆電話や衛星携帯電話の提供が行われたり、Wi-Fiスポット「DoSPOT」の接続制限を解除したり、被災により利用できなかった分の電話料金を免除したりするなどの対応が実施された[37]。
電報についても地震後に珠洲市・輪島市・能登町・穴水町では受け付けが停止された他、石川県の受け付け停止地域以外の地域や新潟県、富山県、福井県でも配達に遅れが生じる可能性があると発表された[39]。3月1日の時点でも輪島市・穴水町で電報の受け付けの停止が続いている他、七尾市・珠洲市・志賀町・能登町・中能登町でも配達に遅れが出ている[40]。
インターネット
[編集]2月10日までに、東京大学先端科学技術研究センターが撮影した被災後の珠洲市の一部地域の画像が、同市の許諾を得たうえでGoogle ストリートビュー上で公開された[41]。地震の被害により4Gや5Gへの移行が行えなくなっている利用者がいることを考慮し、ガラケーなどに使用されていたソフトバンクの3G通信のサービス終了は当初予定されていた2024年1月31日から4月15日へと延期された[42]。3月13日、ソフトバンクは3Gのサービス終了期日を4月7日時点で石川県内に在住する利用者に限り7月31日まで再延期し、他の46都道府県に在住する利用者は予定通り4月15日で終了すると発表した[43]。NPO法人のクライシスマッパーズ・ジャパンを率いる古橋大地は、地震の後にXでファクトチェックを実施した他、被災前の被災地の状況をオープンストリートマップ (OSM) に投稿し、インターネットに接続できないオフラインの環境でも使用できるようにするクライシスマッピングの活動を行った。被災後ではなく被災前の状況を投稿したのは、被災後の状況に関してはすでに国土地理院などによって十分なデータが提供されていること、被災後の状況と比較することで被害状況が把握しやすくなること、復興活動にも役立てやすいこと、Google マップや地理院地図などの既存の地図と相互補完を行いやすいことなどが理由であった[44]。
SNS上においては後述するように誤情報・偽情報が拡散された反面、被災者による赤裸々な体験談を投稿した利用者も多くいた。中でも、能登町への帰省中に被災し避難所での5日間の生活の様子を綴った投稿が注目を集めた[7]。FASTALERTによるデータでは、本震発生の5分後頃から道路陥没などの、本震発生の7分後頃から家屋倒壊などの被害報告が次々と投稿されており、SNS上のデータを分析することでピンポイントな被害の状況を把握することが可能になり[45]、地震による元来脆弱であった交通網の寸断のため取材が困難になったマスメディアの情報を補った[46]。東北大学災害科学国際研究所の分析においてはX上で1月1日から7日までの7日間に「地震」という言葉を含む投稿が251万1688件、1月1日16時から17時までの1時間だけでも63万7584件、「津波」という言葉を含む投稿は7日間で68万2127件、「地震」に加えて「拡散希望」という言葉も含んだ投稿は4024件あったとまとめている(本震の発生前に行われた投稿を含む)[47]。Xを巡っては、後述する「インプレゾンビ」の他に、2016年に当時のTwitter社が初期設定でのタイムラインの表示順序を時系列順からおすすめ順に変更したことで東日本大震災時と比べ情報収集が行いにくくなったという指摘もある[48]。住民が避難したために離れ離れになった集落においては、SNSを活用しグループチャットを開設するなどして集落の住民としての人間関係を維持する取り組みも行われた[49]。
警察庁はこの地震を受け、石川県警が災害への対応に専念できるよう、法令の改正や啓発に関する投稿など様々な投稿が混在しているメインの「警視庁」アカウントの代わりに新たに災害状況を提供する専用のアカウントを1月9日に開設し、3月中旬までに1万5000以上のアカウントからフォローがあった。主要な対象として想定したのは被災者やその親戚、知人であり、部署横断的に投稿内容に関する検討を重ねた上で、被災地で警察官がパトロールを実施している様子の画像を公開するなど、災害に便乗した犯罪の恐怖に怯えている被災者が安心して過ごせるようになるための、被災地の現況に関する情報提供に努めた。この他にも、100万以上のアカウントからフォローされている警察庁警備部災害対策課のアカウントが、避難所で体を温めたり血行を良くしたりする方法や少ない水で行うことのできる洗濯の方法などについて情報を提供した[50]。また、LINEヤフーの運営するYahoo!防災速報のアプリケーションでは地震が発生した数日後に災害マップが公開され、被害状況が一瞥して分かるような対応が取られた[51]。
日本国外
[編集]- アメリカ合衆国
- CNNやウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ)などが「多くの人々が帰省したり、初詣をしたりしている元日を直撃した」などと報じた[52][53]。NBCでは『ナイトリーニュース』において、「2024年、日本は最悪のスタートを切った。マグニチュード7.6の強い地震が日本を襲い、懸命の生存者捜索が行われている」と報じた[54]。
- イギリス
- 英国放送協会 (BBC)が日本時間の17時すぎに報道。停車した新幹線の車両内から撮影されたと思しき映像を取り上げ、駅構内の看板が大きく揺れる様子を放送した[55][56]。1月4日には同局の特派員が輪島市に入り、被災地の様子を報告している[57]。
- ドイツ
- 公共放送のドイツ公共放送連盟 (ARD)など複数のメディアが速報、有力誌シュピーゲルは周辺の原発の状況も詳しく紹介し「現在のところは異常はないとされている」と伝えた[53]。
- ロシア
- 国営メディアのタス通信がサハリンやウラジオストクなど、ロシアの極東各地の都市や地域広域に津波警報を発令したことを報じた[58]。
- 大韓民国
- 韓国放送公社 (KBS)が地震による原子力発電所への被害について伝えたほか、韓国が旧朝鮮半島出身労働者問題(徴用工問題)により世界遺産への登録に反発している佐渡金山の被害が大きく報じられた[59]。
- 朝鮮民主主義人民共和国
- 国営メディアの朝鮮中央放送が国内で地震津波警報が発令されたことを報じた[60]。
- 中華人民共和国
- 新華社通信は、日本の北陸地方で地震が発生し広範囲で津波が観測されたことを速報で報じた[61]。また、中国国内のニュースサイトでは、石川県で最大震度7が観測され東京でも揺れが感じられたことが報じられた[61]。
- 海南省のテレビ局である海南ラジオテレビ総台の男性アナウンサーが、2023年から行われている東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水放出と絡めて「(地震は)日本への報いだ」などと発言したことが報じられ、中国国内で物議をかもした。同テレビ局は1月2日付けで該当アナウンサーを調査のため一時的に停職にしたことを明らかにした[62][63]。新浪微博(ウェイボー)でも検索結果で上位となった[53]。
- 中華民国(台湾)
- 三立新聞は、商業施設の駐車場で車が至る所で衝突する映像を取り上げるとともに、ネットの声を紹介した。
- 自由時報は、津波の影響で路上の車が水しぶきに飲まれる画像を掲載した。また、北陸地方が電子部品産業の集積地だとし、サプライチェーンへの影響も懸念されることを指摘した。
- 民間全民電視公司(民視)は、1999年に台湾中部で発生した921大地震と重ね合わせ、「思い出さずにはいられない」と報道した[64]。
日本国外の対応
[編集]外務省の発表によれば、2月22日時点で、アジア・大洋州・北米・中南米・欧州・中東・アフリカの合計172の国・地域及び43の国際機関からお見舞いメッセージなどが寄せられている。メッセージを寄せた国の中には日本との国交がない台湾(中華民国)や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、パレスチナ(パレスチナ自治政府)なども含まれている[65][66][67]。外務大臣の上川陽子は5日の記者会見で「世界各地の100以上の国・地域や、また団体、そして個人からも、多数のお見舞いのメッセージや、また、支援の申出を受けているところでございます」と述べた[68]。
東アジア
[編集]- 大韓民国
- 第20代大統領の尹錫悦は2日、岸田にお見舞いのメッセージを送り、犠牲者と遺族に哀悼の意を表し、被害の克服に向けた連帯の意志を表明した。また、被害復旧を支援する意思を伝え、被災者らが一日も早く日常に戻れることを願った[69]。一方、韓国外交部報道官の任洙奭(イム・スソク)は2日の定例会見で、日本の気象庁が1日島根県の竹島(韓国名:独島)を含む地域に津波注意報を出したことについて「外交ルートを通じて日本側に厳重に抗議し、是正措置を求めた」と明らかにした[70]。11日、韓国外務省は、地震による被害に対し、300万ドル(約4億4000万円)規模の人道支援を行うことを決定したと発表した。同省は「被災地の復旧と、地域住民の早急な日常復帰に役立つことを期待する」とコメントした[71]。
- 中華人民共和国
- 中国外交部副報道局長の汪文斌は2日の記者会見で、日本で発生した能登半島地震に関し「我々は亡くなった方々に哀悼の意を表するとともに、その家族と負傷された方々にお見舞い申し上げる」として哀悼の意を表明した[72]。国務院総理の李強は3日、岸田にお見舞いの電報を送り「私は中国政府を代表して犠牲者に深い哀悼の意を表し、犠牲者の遺族と負傷者に心からのお見舞いを申し上げる」「中国は日本の震災救援のために必要な支援を提供する用意がある」と伝えた。外交部長の王毅も日本の外務大臣の上川陽子に慰問の電報を送った[73]。駐日中華人民共和国大使館大使の呉江浩もXで哀悼の意を表明した[74]。
- 中華民国(台湾)
- 第7代総統の蔡英文は1日夜、X(旧Twitter)に「日本の石川県を震源とする強い地震が発生したことにつき、心よりお見舞い申し上げます。現地の皆さまがご無事であること、そして一日も早く日常生活を取り戻せるようお祈り申し上げます」と投稿した。また、日本台湾交流協会を通して必要な協力を提供する用意があることを日本側に伝えたことを表明した[75]。外交部長の呉釗燮は4日、外交部として政府を代表し、被災地支援のため6,000万円を寄付すると発表した。また、衛生福利部(保健省)が地震災害支援の募金口座を開設することを併せて発表した[76]。外交部は11日、市民からの義援金が10日までに2億5千万台湾元(約11億7千万円)を超えたと発表した[77]。18日の時点では、総額およそ22億6000万円に上る[78]。花蓮市は1月9日、魏嘉彦市長や職員が12万1350台湾元(約56万円)を寄付したと発表した[79]。また、地震による被害が比較的軽微である石川県加賀地域や富山県内の宿泊施設への台湾訪日客による予約も相次いでいる[80]。新北市淡水区では日本人留学生らが3月10日にこの地震と東日本大震災の際に寄せられた義援金に感謝する行事が行われた[81]。台湾石川県人会の3人は支援に感謝して3月11日から16日まで台湾一周約1100 kmの道のりを自転車で巡った[82]。
- 朝鮮民主主義人民共和国
- 朝鮮労働党総書記(最高指導者)の金正恩は5日、国務委員長の名義で岸田にお見舞いの電報を送り「日本で不幸にも年初から地震によって多くの人命被害と物質的な損失を受けたとの知らせに接し、遺族と被害者に深い同情とお見舞いの意を表す」とした。そのうえで「被災地の人々が1日も早く地震の被害から復旧し、安定した生活を取り戻すことを願っている」と強調した[83][84][注釈 1]。
- モンゴル
- モンゴル政府は17日、10万ドルの支援を行うと発表した。日本の外務省は同日、「同国大統領のウフナーギーン・フレルスフの書簡を始め、温かいお見舞いのメッセージに加え、今般、このような措置が決定されたことは、日・モンゴルの友好協力関係を示すものであり、日本政府として歓迎するとともに、感謝します」と声明[86]。
- 香港
- 香港電台 (RTHK)によれば、香港政府の入境事務処は日本に滞在中の香港市民20人余りから2日17時までに支援の要請を受けた[87]。また、日本香港人協会は1月2日から9日までの間に2,508,501香港ドルと8,399,635円(日本円で合計53,582,734円)を義援金として集め、被災地の自治体やNPO法人に送られた[88]。
東南アジア
[編集]- タイ
- 在東京タイ王国大使館は1月10日、被災者への1回目となる支援物資を送付した[89]。同16日、2回目の支援として都内の輸入業者などと協力して、ココナツウォーター2,400本やタイのカップめん1,200個、タイ米のレトルト食品、それに薬やトイレットペーパーなど合わせて2,000キログラム分をトラックに積み込み、石川県に向けて送った[90]。同19日には、タイ米の生産・販売を行う民間企業Wonnapobと協力し、3回目の支援活動としてタイ米など大型トラック1台分を能登半島の被災地に向けて発送した。現地ではNPO法人YOU-Iが支援を行っている[91]。
- フィリピン
- 第17代大統領のボンボン・マルコスは日本への支援を表明し「元日に日本で起きた地震に深く悲しんでいる」との声明を出した[92]。
- マレーシア
- 外務省は地震当日に声明を発表し、マレーシアの国民にこの地震による被害は出ていないことを伝え、被災地の国民に対し最新の情報に注意し地元当局の指示に従うよう呼び掛けた[93]。
- シンガポール
- 外務省は1月2日までに日本に滞在しているシンガポール人全員の無事を確認し、被害を受けた地域への旅行を延期するよう呼び掛けた[94]。第3代首相のリー・シェンロン(李顕竜)は1月4日に岸田に対し哀悼の意を表すると同時に手助けできることがあれば知らせるよう求める手紙を出した[95]。
- ミャンマー
- 国家行政評議会は日本赤十字社に本地震に対する義援金として10万米ドルを寄付したことを3月12日に発表した。また、駐日ミャンマー大使館の大使であるソー・ハンが日本赤十字社大使の清家篤に目録を手渡したと国家行政評議会の外務省は発表している[96]。また、クーデターで本国を追われた在日ミャンマー人も、故郷を追われた辛さは同じという思いから能登半島で活動を行った[97]。
南アジア・中近東
[編集]- インド
- 駐日インド大使館は地震の数時間後に緊急連絡室を設置した。第16代首相のナレンドラ・モディは1月4日に日本の首相である岸田文雄に手紙を書き、犠牲者に対し弔辞を述べた[98]。
- トルコ
- 第12代大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアンは2日、Xに「大地震に見舞われた日本と友好的な日本国民の迅速な復興を望んでいる」と投稿した[99]。トルコ出身の在日クルド人は故郷を追われたのは同じという思いから能登半島で支援活動を行った[97]。
- イスラエル
- イスラエル政府は2月5日、被災地に支援物資を送った。計約100万円分の食料を積んだ車両が同日、東京都内の大使館から出発。支援物資は、被災者用のスープや魚の缶詰といった保存可能な食料に加え、被災地で活動する支援者に向けたイスラエル産のナツメヤシの実デーツやハチミツなど。現地で支援に当たるNGOが聞き取ったニーズに基づき内容を決めたという。コーヘン駐日イスラエル大使は継続的な支援にも言及した[100]。
- イラン
- 元外務大臣のホセイン・アミールアブドッラーヒヤーンが1月2日に哀悼の意を表明した[101]。
ヨーロッパ
[編集]- イギリス
- 第79代首相のリシ・スナクは1日「被災した全ての人に、心からお見舞いを申し上げる。日本を支援する用意があり、状況を注視している」とする声明を出した[102][99]。またチャールズ国王は3日、天皇にメッセージを送り、地震の甚大な被害について「深い悲しみを覚える」と表明。「犠牲になった多くの命を悼み、愛する人を失ったすべての人に思いを寄せる」と哀悼の意を表すとともに、救助活動などに関わった人々に対して敬意を表し「イギリス政府は日本を支援する用意がある」とした[103]。
- フランス
- 第25代大統領のエマニュエル・マクロンは日本との連帯を表明し「フランスの支援を頼りにしていただきたい」と述べた[99]。
- イタリア
- 第68代首相のジョルジャ・メローニは日本との連帯を表明し、Xに「イタリアは、この困難な時期にある日本の人々に寄り添います。内閣総理大臣岸田文雄に、震災の犠牲者の方々に、哀悼の意を表します。私たちは、日本が必要とするあらゆる支援とサポートを提供する用意があります」と投稿した[104]。
- モルドバ
- 第6代大統領のマイア・サンドゥは2日18時、Xに「西日本を襲った大地震により、深い悲しみに暮れています。私の思いは、石川県で愛する人を亡くされたご遺族と、被害に遭われたすべての方々にあります。 モルドバは日本と連帯します。岸田文雄内閣総理大臣に心よりお悔やみ申し上げます」と投稿した[105]。
- ウクライナ
- 外務大臣のドミトロ・クレーバは7日に日本の外務大臣・上川陽子とキーウ(キエフ)で実施した記者会見において犠牲者に対する哀悼と日本国民との連帯の意を表明した[106]。
- ロシア
- ロシアは日本がウクライナ侵攻に対する経済制裁を発動したことにより日本を非友好国に指定しており、本地震に対する反応を示していない[106](見舞いのメッセージを発した171の国・地域にも入っていない[65])。
- スペイン
- スペイン人の画家で2016年から志賀町富来地区を拠点としているタラク・アバールは、ドイツで地震の一報を受けて富来に駆け付け、拠点となる住宅も被災した中で復興への思いから被災者の思いやりなどに着想を得て制作を続けた[107]。
- バチカン
- 第266代ローマ教皇(バチカンの国家元首)であるフランシスコは1月2日、教皇庁国務省長官のピエトロ・パロリンを経由して、被災者に対し連帯を約束し神の祝福を祈る内容の電報を日本に送った[108][109]。翌3日に行われた一般謁見では、英語圏の巡礼者への教皇の挨拶の中で2日の羽田空港での航空機事故を含めてイタリア語で見舞いと祈りの言葉を述べ、同時に英語に通訳された[110]。
北アメリカ
[編集]- アメリカ合衆国
- 第46代合衆国大統領のジョー・バイデンは現地時間1日に「恐ろしい地震の被害を受けた日本の人びとのために祈っている。アメリカは日本の人々に必要な支援を提供する用意がある。緊密な同盟国として両国は深い友情のきずなを共有しており、この困難な時期に私たちの思いは日本と共にある」との声明を発表した[111][112][113]。
- 1月17日、在日米軍のヘリコプターUH60は被災者支援のための食料品などの物資を載せて航空自衛隊の小松基地よりを出発し、能登空港に到着した。今回の地震で他国軍による支援活動は初めて。18日も同様の活動を行うとした[114]。
- カナダ
- 第29代首相のジャスティン・トルドーは1日、Xに「カナダは日本の人々と共に立ち、支援の手を差し伸べる準備ができている」と投稿した[99]。
- メキシコ
- 駐日メキシコ大使館には日本に親族がいる者からの問い合わせが相次いだ。駐韓メキシコ大使館も韓国での津波警報発表を受け緊急連絡先を設置した。外務省はメキシコ人にこの地震に伴う死者・行方不明者はいないと発表し、ソーシャルメディアと電話でメッセージを伝えた[115]。外務大臣のアリシア・バルセナ・イバラは2月21日に日本の外務大臣である上川陽子と会談し、将来の減災に対して協力する旨を伝えた[116]。
南アメリカ
[編集]- アルゼンチン
- 外務省は1月2日に被災地に住むアルゼンチン人8人は全員が無事であったという声明を発表し、負傷者の早期の回復を祈った[117]。日本の外務大臣である上川は1月26日に外務大臣のディアナ・モンディーノに対して電話で見舞いに関する謝意を伝えた[118]。
- チリ
- 駐日チリ大使館は危険な場所に近づかないこと、当局の指示に従うことを現地の住民に呼びかけた[119]。
オセアニア
[編集]- オーストラリア
- 第31代首相のアンソニー・アルバニージーは2日、Xに「豪州人の思いは日本の人々とともにある。地震による破壊と人命の損失を見て、私たちは悲しんでいる」と投稿。日本に必要な援助を提供する用意があると強調した[120]。
国際機関
[編集]- 国際通貨基金 (IMF)
- 専務理事のクリスタリナ・ゲオルギエバは1日、Xで「日本を思い、祈っている」との見舞いのメッセージを投稿し「ショックを受けやすくなっている世界において、必要とされる(社会の)回復力に資金を投じることへの貴重な教訓を示している」と指摘した[121]。
- 国際連合
- 国連の報道官は2日、第9代事務総長のアントニオ・グテーレスのコメントとして「地震によって人命が失われ、被害が出たことを深く悲しんでいる。犠牲者の家族に哀悼の意を表すると共に、負傷した人たちの一日も早い回復を祈っている」と話し、また羽田空港での航空機事故についても触れ「被災者に救援物資を届けようとしていた航空機の事故に心を痛めている」と述べた[122]。
- 東南アジア諸国連合 (ASEAN)
- 1月4日に外相声明を発表し、見舞いや哀悼の念を示すと共に日本への救助活動を支援することを表明した[123]。
- 欧州連合 (EU)
- 外務・安全保障政策上級代表で欧州委員会副委員長のジョセップ・ボレルと危機管理担当欧州委員のヤネス・レナルチッチは1月3日にベルギーのブリュッセルで声明を発表し、本地震と羽田空港での航空機事故に関して深い悲しみを感じていると表明すると共に、必要な支援を提供できると明かした[124][125]。
- 経済協力開発機構 (OECD)
- 事務総長のマティアス・コーマンが見舞いのメッセージを送り、1月11日に日本の外務副大臣・辻清人が謝意を示した[126]。OECDの教育・スキル局長であるアンドレアス・シュライヒャーは3月10日から日本を訪問し、11日に県立輪島高校と七尾特別支援学校輪島分校を訪問し輪島高校の校長から同校の現状について聴取したほか、子供が地元の復興活動に参加することに関してOECDとして支援を行う意向を示した。シュライヒャーは輪島高校の授業風景も視察し、教員への支援が手薄であり教員の孤立を防ぐ支援が必要であるという考えを示した上で、被災地の子供に対し国際社会との関係を持つ機会を提供していくことに意欲を示した[127]。一方で、3月14日に行われたNHKのインタビューでは輪島高校の教員が生徒の心のケアに尽力し、生徒を包括的に支えてきたことは評価でき、専門的な人材を投入すると教員への負担の軽減に繋がると指摘した[128]。
関連する問題行動など
[編集]インターネット上、X(旧Twitter)などのソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS)上において誤情報が相次いで拡散され、問題となった。
誤情報の中には政治家や芸能人など、影響力の大きい人物から発信されたものもあった(後述)。その一方で、ITジャーナリストの井上トシユキは、過去の災害の際に流れた「黒い雨が降る(東日本大震災原発事故)」「動物園からライオンが逃げた(熊本地震)」といったセンセーショナルな誤情報は確認できず、拡散されたデマに関しても過去の震災時ほどの影響力は持っていなかったと指摘しており、旧Twitterが日本語での提供を開始して16年以上が経過していた中で災害時の作法が定着しつつあると評した[129]。
経済学者の山口真一は、災害に関係するデマを「災害規模や被害に関するデマ」「犯罪行為に関するデマ」「偽の救助要請」「不正な寄付の呼びかけ」「陰謀論」の5種類に分類し、この地震においてはその全てのデマが確認できたと指摘している[130]。
他の災害に関連する画像・映像を本地震によるものと偽った情報
[編集]地震や津波に関連して、SNS上では東北地方太平洋沖地震における津波や2016年の熊本地震[131]、2023年11月のインドネシアでの海底地震[132]、2021年に静岡県熱海市で発生した土砂災害[133]などの映像を本地震によるものであると偽ったものや、本地震の原因は「人工地震」であるという根拠不明な偽情報、地震直後の原子力発電所の状況に関する偽情報、さらに虚偽の救助要請を訴えるものなど、デマや陰謀論、自らの政治的主張を結びつけるような投稿が相次いだほか、募金を装ったサイトに誘導して個人情報等を盗み取る(フィッシング詐欺)など悪質な投稿も確認された[134][135]。これを受け、内閣総理大臣の岸田文雄などが偽情報の投稿への非難・自制を呼びかける事態となった[136][137][138]。内閣官房長官の林芳正は、該当する偽情報の削除を事業者に要請したことを明らかにした[139]。一方で、本地震の映像も2月14日に京都府で発生した地震の映像だと偽って拡散された[140]。
「インプレゾンビ」の影響
[編集]特にX(旧:Twitter)で偽情報の投稿が多数確認されていることについて、Xにおいてはアカウントのフォロワー数やインプレッション数(投稿の表示回数)に応じた広告収益の分配システムが導入されていることから、災害に伴って大きな注目を集める投稿を行う事が収益の獲得につながっていることが背景の一つにあると指摘されている[141][142]。これによって元の投稿が分かりにくくなる弊害もあった[48]。これらの収益狙いの投稿は「インプ稼ぎ」、そうした投稿を行うユーザは「インプレゾンビ」と称され、それらの多くはアラビア語やウルドゥー語による南アジアや中東地域といった日本国外からの投稿であった。
そもそもXでは自然災害を利用して収益を得ようとする行為は禁止されているが、このような地域からの偽情報の投稿が多い背景として、パキスタンなどでの就職難により多くの若者がSNSを利用して収入を得ようと考えていることも指摘されている[143]。
このようなアテンション・エコノミー(関心経済)により経済的価値を交換財にするという概念は、以前からYouTubeなどの収益化で見られていたが、Xでの投稿はYouTubeでのそれに比べるとはるかに手軽に行うことができるため、この地震においてデマを拡散する動機づけになりやすかったと指摘されている[130]。このようにXがイーロン・マスクによる買収を機に公共性重視から収益性重視へとその性質を変化させている上に人員の削減も進めていることから、情報発信の手段をXだけに依存するべきではなく、他のサービスと上手に使い分けるべきであるとの見方も示されている[144][145]。
虚偽の救援要請
[編集]Xでは、珠洲市の同じ住所を挙げ、その場所とは関係ない動画や画像などを添付した上で救助を求める偽の投稿が30件以上確認された[139]。また、「#助けて」「#能登地震」というハッシュタグを付けた「親友が家のドアが壊れて外に出られません」という投稿もあったが、これも偽情報で、2019年に別のアカウントによって投稿された関係ない画像を流用したものであった[141]。さらには、実際には怪我一つしていない元気な人物に対して「夫は亡くなった」などと同情を煽る投稿や、「石川県川永市」などという架空の住所を使った投稿まであった[146]。また、実際に行われた救助要請を別のアカウントがコピー&ペーストするなどして、「救助」などのキーワードで検索を行ってもどれが本物の救助要請なのか分かりにくくなり、ハッシュタグとしての用を成さなくなった[147]。実際に偽情報を拡散された人物の中にも遺憾の意を示したり[145]、不謹慎で迷惑であると考えたりする者もおり[146]、SNSの運営会社にも責任があると考える者もいる[145]。また、公的機関が地震に関して行った投稿の返信欄もこのような投稿で埋め尽くされ、救助活動を妨害する結果となった。本当に救助を求めているアカウントまで凍結される可能性を心配する意見も出た[147]。なお、防災に関する技術の開発を行っているスペクティ (Spectee)の最高経営責任者 (CEO)である村上建治郎の分析によれば、実際に救助を求めていると確認できた投稿は10件前後であったという[148]。情報通信研究機構の災害情報要約システム「D-SUMM」のデータによれば、地震発生後24時間の間にXで行われた救助要請でD-SUMMが収集した1091件のうち254件に矛盾した内容があり、そのうち104件は偽情報と断定可能な投稿であった。熊本地震では偽情報は573件の救助要請中1件だけであったので、偽情報の投稿はおよそ100倍に急増したことになる[149]。
実在する他人の住所を示して「息子が挟まって動けない 助けて」という虚偽の投稿が行われた事例では、実際にはこの投稿を行った者の家は崩れておらず、この投稿を行った者にはそもそも息子も居なかったが、通報が寄せられたことで警察が動く事態となった[150]。無人の倉庫の住所を示した偽の救助要請の投稿を見た人が119番に通報し消防が出動したために必要な救助に向かうことができなくなる可能性も生じた[146]。
2024年7月24日、地震発生直後の1月1日19時頃にSNSを使用して虚偽の救助要請をした埼玉県八潮市在住の男性会社員が石川県警察に偽計業務妨害の容疑で逮捕された。投稿された情報を基に石川県警察の機動隊が輪島市内に向かったが、被害は確認されなかった。容疑者は「震災に便乗して自分の投稿に注目を集めたかった」と供述している[151]。輪島区検察庁が同罪で男を略式起訴し、輪島簡易裁判所は10月9日付で罰金20万円の略式命令を出した[152]。
地震の原因に関する誤情報
[編集]地震発生後、Xでは今回の地震が人為的に引き起こされた「人工地震」であると主張する誤情報が拡散した。NHKによると、2日17時半の段階で、否定するものも含めて「人工地震」に関して、およそ25万件の投稿があった。このうち、1つは850万回近く閲覧されていた[153]。中には、2016年の北朝鮮による核実験の際に行われた気象庁の記者会見の映像など、全く関係ない情報を添付して人工地震を主張する投稿もあった[153]。なお、東北大学災害科学国際研究所のまとめではX上に1月1日から7日までに「人工地震」という語の入った投稿が76,803件あったと指摘されている[47]。
これに対し、京都大学防災研究所の西村卓也は、「今回の地震が人工地震であることは考えられない。地震波や地震に伴う地殻変動を見ても一般的な自然の地震と何ら変わらない特徴を持っている。地震は深さは15キロぐらいで起こっているが、例えばその深さまで人間が例えば穴を掘って何かをするのは到底難しく、マグニチュードからみても人間が作り出せるエネルギー量ではない。人工地震では無いと断言できる」と述べている[153]。
なお、地震の前日である2023年12月31日には能登町での変電所で爆発音が発生し周辺で停電が発生しており、これを変電所のトラブルによるものであるとした記事[154]が削除されていることを人工地震である根拠とした投稿もXでは拡散され、Yahoo!知恵袋でも「爆発音のニュースが表沙汰になると困る原因があると推測されます」などと人工地震の可能性を仄めかす投稿があったが、実際には変電所のトラブルではなく樹木が接触したことにより発生した音・停電であることが判明したために削除されたものである[155]。
この他に、海洋研究開発機構 (JAMSTEC)の掘削船である「ちきゅう」が2023年に震源付近で作業を行っていたことと本地震を結びつける偽情報[156]や、地震後に現れた雲が「地震雲」であるとするデマ[157]も見られた。
志賀原発に関する誤情報
[編集]1月2日21時36分、元内閣総理大臣の鳩山由紀夫(鳩山友紀夫)は自身のXで「気になるのは志賀原発で、爆発音がして変圧器の配管が破損して3500ℓの油が漏れて火災が起きた。それでも大きな異常なしと言えるのか。被害を過小に言うのは原発を再稼働させたいからだろう」と投稿した[158]。当初は政府によって「変圧器で火災が発生していた」と報道されていたが、北陸電力は同月2日午前の記者会見にて、油漏れと変圧器の一部破損によるものを作業員が誤認したものであり、火災などの異常は発生していなかったと訂正した[159]。また、その旨は同日中に複数のメディアから報じられていた[159][160]。
同月4日、鳩山の長男である鳩山紀一郎はXにて、由紀夫へ投稿の削除を求めたことを明らかにした[158]。しかし、由紀夫は投稿を削除せず、同日22時ごろには「火災がないに越したことはないが、作業員が何を火災と間違えたのか。では火もないのに消火済みとは?怪しさは消えず」と投稿を重ね[161]、誤りであることを認めず謝罪も行わなかったために批判を浴びた[161]。
他にも、志賀原発に関してはNHKのロゴを無断で利用し、あたかもNHKが発表したものであるかのように見せかけた誤情報や[162]、19,600 L(実際には6 L)の油が海上に流出したとする誤情報[163]なども拡散された。また、津波が高さ4 mの防潮堤を超えるまであと1 mの場所まで迫った(実際には防潮堤自体が標高11 mの地点にあり、その上端の標高は15 mになるので3 mの津波が到来してもあと10 m以上の余裕があった)、志賀原発の耐震基準が一般のハウスメーカーの定めている基準より低かった(原発の耐震基準として使われている岩盤の加速度を通常の住宅の耐震基準として使われており岩盤の加速度よりはるかに大きくなる表層地盤の加速度と混同した、または設備の揺れと地盤の揺れを混同したもの)、地震により志賀原発の全電源が喪失した、燃料を冷やすことができなくなるほどの水が核燃料プールから漏れた(実際には水位の低下は1号機・2号機とも1 mm程度で特に問題のない水準であった)という誤情報もあった[164]。
予備費に対する誤解
[編集]1月4日、岸田総理大臣が地震に対応するため40億円規模の予備費の使用を9日に閣議決定することを記者会見で表明したことに対して、SNSを中心に「少なすぎる」との批判が起こった。これに対して、これまでの地震の例からこの金額はプッシュ型支援(被災地の自治体からの具体的な要請を待たず、食料や仮設トイレといった必需の物資を緊急輸送する支援[165])に係った経費分のみと見られ能登半島地震にかかる費用の総額ではない、との指摘がなされた[166]。9日、「日本政府・自治体の対応」で既述のとおり、プッシュ型支援のための予備費47億3790万円の支出が閣議決定された。
誤解に基づく同様の発言は一部の政治家からも行われた。特に立憲民主党の議員である蓮舫らの発言に対し、産経新聞の永原慎吾は「被災者をミスリードさせかねない発信からは東日本大震災で政権を担った矜持はうかがえない」と批判した[167]。
外国人の犯罪に関する誤情報
[編集]地震後の1月3日夜、被災地の避難所で「中国人が被災地にマイクロバスで訪れ、窃盗行為を繰り返している」という情報が流れた。その後巡回が行われ、1月4日未明にはそのような事実はなかったと訂正されたものの、すでにLINEだけではなくXでも拡散されていた[168]。この他、外国人の盗賊団がいるという誤情報の投稿が400万回以上閲覧されたり、「井戸に毒が入っている可能性があるので注意するように」などと関東大震災朝鮮人虐殺事件のきっかけとなったデマを真似たと思われる悪質な投稿が行われたりし、外国人への差別や偏見に繋がることが懸念された[169]。
台湾からの救助隊の拒否に関する誤解
[編集]1月3日、中華民国(台湾)の内政部消防署は、本地震の発生を受けて派遣の準備を行っていた捜索救助隊について、災害の範囲が広がっておらず日本側から支援のニーズがないことを確認したとして、同日に待機を解除したことを発表した[170]。行方不明者や孤立地域が残るなどの状況での報道であったことから、日本政府や首相の岸田文雄への批判のほか、中国への忖度が支援拒否の理由であるとする憶測など、SNS上で波紋が広がった[171][172]。
これを受けて4日に中華民国外交部は、日本が「台湾の支援を断った」とする言説は台日間の調整の事実と合致せず、公平性を欠くとしたほか、日本側から台湾の支援申し出に関しての感謝の表明があったと明らかにした[173]。また同日に日本政府も、被災地の状況や受け入れ態勢を考慮し、海外からの人的・物的支援について現時点では一律に受け入れているわけではないと説明した[174]。
二次避難に関する誤情報
[編集]1月11日、岸田文雄首相は公式X(旧Twitter)の投稿で、インフラの復旧や住まいの確保に時間が掛かることや、一次避難所内で感染症が拡大し高齢者を中心に災害関連死の懸念があることなどから、避難所の過密状態を解消するために、ホテルや旅館といった安全な環境への「二次避難」の検討を呼びかけた[175]。この投稿に対しタレントのラサール石井は「被災者が宿泊費を支払う必要がある」と誤認し、同月12日、岸田の投稿を引用した上で「被災者にそんな金あるか。だったらあんたが金を出して、旅館やホテルを借り上げ避難民を移動させろ。五輪誘致のアルバム作り[注釈 2]みたいに、馳浩石川知事に官房機密費から金出してやらせろ」(原文ママ)と自身のXに投稿した[177]。このポストは同月13日21:55時点で4,833回リポスト(拡散)され、約491万回閲覧されている[178]。また、石井以外にも同様の投稿が複数拡散されている[179]。
しかし、石井が投稿した時点で政府や自治体が二次避難所としてホテルや旅館を借り上げ、その多くで被災者の費用負担がないことは複数のメディアで報じられていたため、石井の投稿に対してはSNS上で多数の批判が寄せられた[180]。石井の投稿にはコミュニティノート(利用者によるファクトチェック)が付与されて旅館への避難に自己負担が必要であるという事実は否定されている[181]ほか、神戸市議会議員の岡田裕二は自身のX投稿で、石井の投稿をデマだと断じた上で「被災者は『お金がないのでホテル・旅館に避難できない』と誤解してしまい、二次被害や最悪命を落とすケースも出ます」と批判する[177]など、多方面で物議を醸している。
同月13日、岸田首相は自身のX投稿において、「事実に基づかない投稿が散見されます」、「影響の大きいアカウントだから正しいとは限りません」としたうえで、二次避難について被災者の負担はなく、誤情報に注意してほしい旨を投稿した[177]。続いて、馳も岸田の投稿を引用する形で詳細な情報を投稿し、被災者に安心するように呼びかけた[177]。
その後、石井は同月14日の投稿で「正月以来政府の地震災害への対応に怒りを感じる連続だったので、二次避難の呟きにも即反応してしまい、ホテルや旅館が有料であるかのような誤情報を流す結果になりました。被災地の皆様にはただならぬご迷惑をお掛けしたことを深くお詫びします」と謝罪している[175]。しかし、れいわ新選組所属の八幡愛のように石井を擁護している者もいる。石井は自身のXに「そもそも総理の言葉足らずと説明不足が全ての原因なのに、勘違いをさせてしまった人たちを【悪質な虚偽情報】(を発信している人である)かのように扱うことに違和感がある」と投稿している。このように、原因は岸田首相にあるなどと主張し責任を転嫁しているようにも読み取れる論調[182]も散見され、炎上が続いている。
この他、二次避難を巡っては「1.5次避難所[注釈 3]に入るためには罹災証明書が必要」[184]、「被災者には20万円しか貸付されない」(緊急小口資金の制限を全ての支援であると誤認したもの)[185]、「二次避難すると仮設住宅に入居できない」[186]、「集団避難先はビル・ゲイツの別荘またはエプスタイン島である」[187]といった情報が出回ったが、全て誤りである。
支援に関する誤情報
[編集]実際に日本円での支援を呼びかけているシビックフォースを騙り仮想通貨(USDT)での支援を呼びかける偽のサイト[188]や、LINEヤフーを騙るフィッシングサイトが確認されている[189]。また、被災地にパンを支援しているヤマザキパンに対して「食品添加物で人口削減しようとしている」などとする偽情報や[190]、「北陸応援割」による割引金額(実際には1泊につき最大2万円)が自宅が全壊した被災者への支援金額(実際には最低100万円)より高いという誤情報も確認されている[191]。
偽情報に対する行政の対応
[編集]総務省は、インターネット上における偽情報・誤情報の流通について、SNS上で注意喚起を行った。また主要プラットフォーム事業者4社(LINEヤフー、X、Meta、Google)に対し、各事業者の利用規約に基づいた適切な対応とともに、それぞれの対応状況について報告を求めた。1月19日、同省の検討会は各社の対応状況を公表するとともに、今後の再発防止のため偽・誤情報への対策や制度面を含めた検討を行うためのワーキンググループを設置することを決めた[192][193]。なお、地震を機としたこのような偽情報への対策を政府が実施すべきか尋ねた読売新聞社の世論調査では、肯定的な回答が84 %、否定的な回答が10 %となった[194]。
窃盗等の犯罪
[編集]警察庁によると、1月13日までに、災害に便乗したとみられる空き巣や避難所での置き引きなどの窃盗の被害が石川県内で21件発生し[195]、この数は3月5日までに51件に増えた[196]。輪島市では避難していたために誰もいなかった住宅2件に入り被害額6万円に相当する指輪などを盗んだため石川県外在住(または住所不定)の10代の男女3人が3月5日に逮捕された[197]。同じく輪島市では被災した住宅に侵入しミカン6個を盗んだ大学生に対し執行猶予の付いた有罪判決が言い渡されている[198]。
この他、名古屋市科学館[199]や京都市の寺院[200]では募金箱に寄せられた義援金が盗難の被害に遭っている。2024年1月に石川県内でこの地震に関連した犯罪は窃盗が空き巣10件や出店荒らし(店員が避難しており不在である隙を狙って店から商品を盗む)5件など30件、建造物侵入や器物損壊など他の種類が5件の合わせて35件あり、3人が検挙されている[201]。
自動販売機の破壊
[編集]1月1日20時ごろ、この地震で避難者が集まっていた(公式な避難所ではなかった)石川県立穴水高等学校校舎1階にある事務室の近くで、北陸コカ・コーラボトリング、明治、雪印メグミルクの管理する(後2者はサンデン・リテールシステム社製)自動販売機合計3台が学校の関係者や自動販売機の管理者の許可を得ることなく、「緊急だから」と言った男女4、5人によって硬貨や紙幣を保管する場所を含めて電動式の工具で壊され、中から飲み物が取り出されて周囲の避難者に配布された[202][203]。被害額は1台につき約40万円であった[204]。この自動販売機は災害支援型で、鍵で扉を開ければ無料で飲み物を取り出すことができたが[202]、この当時は停電中であったため鍵で扉を開けることも不可能であった[203]上、そもそも当日は元日であったために鍵を管理している教職員が不在であった[205]。また、穴水高校は公式な避難所ではなかったため食料や水の備蓄はなかった[205]。避難者の一人は他の避難者が飲み物を確保するために「自販機を壊そう」と話し合っているのを聞き、壊された自動販売機から取り出されたジュースを受け取った際には嬉しい気持ちになったと証言している[203]。北陸コカ・コーラボトリングは1月18日に被害届を提出しており、石川県警察は器物損壊罪に該当する可能性があるため関係者から事情聴取を実施していた[203]。弁護士の永井幸寿[203]や近畿大学教授の辻本典央[202]からは管理者への連絡などの代替手段があったために緊急避難に当たる可能性も低く、壊された自動販売機から取り出された飲み物を受け取った人も罪に問われる可能性があるとの見解が示されていた。1月22日になって自動販売機の破壊に関係した女性から北陸コカ・コーラボトリングに対し謝罪と被害の弁済の申し出があったが、事情に鑑みて北陸コカ・コーラボトリングからは弁済を求めないとの返答があった[204]。被害届に関しては経理上の観点から取り下げられなかった[206]。一方で、北陸コカ・コーラボトリングは自身や周囲の人の怪我防止の観点からもこのような破壊行為は行わないよう求め[204]、この一件を受けて停電時でも作動できるような自動販売機を順次設置することを検討した[205]。他の2社は1月23日時点で被害状況を確認中である[206]。
不審なメール・勧誘
[編集]トビラシステムズによると、災害に便乗し1日に数百件、多い時で数千件のショートメッセージサービス (SMS)等を利用した不審なメールが届いていることを検知している。不審なメールは返信しないように同社は注意喚起している[207]。
また、石川県によると、住民が屋根の修理やブルーシートの設置などを巡り高額な代金を請求されたケースが1月9日時点で9件あった[195]。また、市役所を騙り寄付金を集めているとの不審な電話も確認されており[208]、実際に詐欺の被害に遭った事例も確認されている[209]。3月13日には、この地震で国から点検を行うよう説明を受けたという虚偽の説明を行い、製造者や販売の担当者の氏名が記入されていないなど記載に不備のある契約書類を交付して訪問販売で火災報知器を高額で売り付けたとして特定商取引法違反で3人の男が逮捕されたことが報じられた[210]。
能登半島への不要不急の訪問
[編集]地震後、石川県が能登方面への移動自粛を呼び掛けており、個人からの救援物資が受け付けられていなかった段階でも複数の迷惑系YouTuberや参議院議員の山本太郎が被災地を訪れ、被災者のために行われた炊き出しの食料を食べるなどして問題視する意見が出た[211][212]。一方で、渋滞対策として個別に訪問せずに県に登録してから県の手配したバスでボランティアを行うように呼び掛けている石川県の立場に関しては、関心を持った人が自発的に行うというボランティア本来の趣旨に反しており、実際に行ってみて何も手伝えることがなければ帰ればよいだけである、重機を操縦できるなどの特別な技能も必ずしも必要ではない、などという批判も見られた[213]。さらに、不要不急の能登半島への訪問を控えるべき根拠として提示された「渋滞の回避」には定量的な根拠が存在しないという指摘もある[214]。なお、金沢大学が結成した合同調査チームでは、被災地で調査を行う際には被災地に負担をかけないよう身分を明示すること、必要な物品を全て持参し自己完結型で実施すること、周囲の状況を判断して行動することなどを盛り込んだガイドラインを制定し、1月30日に災害対策本部会議で承認されている[215]。
問題のある支援物資
[編集]各地から送られてくる支援物資の中には、古着や賞味期限が切れた食品もあり、問題となっている[216]。
炊き出しへのサプリメント投入
[編集]被災地における炊き出しにおいて、被災者に知らせずに「70種類以上の植物系ミネラル」を謳うサプリメントを投入している団体があった。当該製品のウェブサイトには含まれているミネラルの種類や量は記載されておらず、注意事項には「妊婦や服薬中の方は医師などに相談」と記されていた。炊き出しの様子をSNSに投稿した人物は、ABEMA TIMESの取材に対し「どれだけ摂っても問題ない」「どういう薬理効果があるのかを全部説明できる」と主張し、「アンチする人は『無知なんだな』っていうだけです」と見解を述べた。これに対し、科学コミュニケーション専門家の左巻健男は「乳幼児、高齢者、妊婦、あるいは肝臓や腎臓の働きが弱い人。そういう人たちがもし知らずにそれを摂ってしまうと問題が起き得る」「植物系だからいいってことはない」と批判した[217]。管理栄養士の成田崇信は、緊急時に必要性が高いのは長期的に考えた際に健康を維持するのに必要に過ぎないミネラルより水分と三大栄養素(脂質、タンパク質、炭水化物)であると指摘した上で、「腎機能障害がある人ではカリウムの過剰摂取は心機能に重大な影響を及ぼす事もあり、最悪心停止に至る事もあります。善意であっても、特定の栄養素が多く含まれている食品を添加するのは、推奨されません」と批判した[218]。炊き出しには自治体の許可を取る必要はなく、自治体はサプリメントを投入した団体があったことを把握していなかった[217]。
支援物資のフリマサイトへの出品
[編集]珠洲市において、支援物資がフリマサイトのメルカリに出品されている疑いが生じている。メルカリのサイト上に、簡易トイレやサプリメントなどに加え、なにわ男子が被災地で配布したタオルなども出品されているのが確認されたという。これらの支援物資を出品しているアカウントは2つ存在し、いずれも発送元が石川県となっていた。被災地の住民らからは「換金は非常識な行為だ」などの怒りの声が出ている[219]。
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- ^ 【悪質】能登半島地震の募金箱から現金盗む瞬間映像 寺の本堂で手を合わせ…さい銭も盗んだか FNNプライムオンライン、2024年2月20日
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- ^ 能登半島地震に便乗した特殊詐欺、呉市の60代が150万円だまし取られる 広島県内で初確認 中国新聞、2024年2月15日更新
- ^ 「能登地震で国から点検指導」とウソ、戸別訪問で3000円の火災警報器を1万円超で販売か 読売新聞、2024年3月12日
- ^ 【速報】山本太郎氏が能登訪問への批判に反論 「カレー食べたのは夜9時。断る理由ない」 他党からの批判は「ばからしい」 FNNプライムオンライン、2024年1月17日
- ^ 「猪狩ともか 被災地・能登半島を訪れる迷惑系ユーチューバーを批判「再生数稼ぎをしたいだけ」」『東スポWEB』2024年1月7日。2024年2月6日閲覧。
- ^ 能登の災害ボランティアが足りない 志願者のやる気をくじいた要因の数々 被災地入り「自粛論」の的外れ 東京新聞、2024年3月12日
- ^ 引用エラー: 無効な
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」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません - ^ 令和6年能登半島地震における調査活動ガイドライン 2024年1月30日、金沢大学
- ^ “「避難所をなんだと思ってる」賞味期限切れ食品にシェフ怒り 一方的に置いていかれた支援物資…“民間物資”の受け入れ一時中止に”. FNNプライムオンライン (2024年1月10日). 2024年2月6日閲覧。
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