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この項目では、チェスの駒について説明しています。その他の用法については「ルーク (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
ルーク (Rook、♖♜) はチェスの駒の一種。塔または城のような形をしている。城、戦車を表している。
- 英語では、「rook」の発音は /ɹʊk/ であり、母音は短い。そのため「ルック」と表記される場合もある。また駒の形から castle と呼ぶ人もいるがルール上の正式名称ではない。
- サンスクリットでは「ratha」(戦車)と呼ばれた。シャンチーの車もこの系統と思われる。現在のインドではゾウや船を意味するさまざまな名前で呼ばれる[1]。
- ペルシャ語では رخ (rokh)、アラビア語でも rukh と呼ばれ、英語の rook や、ドイツ語でキャスリングを意味する Rochade ロッハーデ はこれが語源である。ペルシア語も「戦車」を意味していたらしいが、本来の意味は早くにわからなくなった[2]。
- ドイツ語「Turm」、フランス語「Tour」、スペイン語「Torre」などは、いずれも「塔」を意味する。駒も塔の形をしている。戦車から塔になった理由ははっきりしないが、アラビア語の rukh とイタリア語で「砦」を意味する rocca が結びつけられたためという説がある[2]。
- ロシア語 ладья ラディヤー、ベンガル語 নৌকা ノウカ、タイ語 เรือ ルア は、いずれも「船」を意味する[1]。
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ルークの初期配置
白ルークはa1とh1、黒ルークはa8とh8に配置する。
- 棋譜上ではRで表される。
- キャスリングについては、ルークの動きではなくキングの動きとされている。
ルークの動き(基本)
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- 動きの基本
- 縦・横の方向の、任意のマス(どこでも好きなマス)に移動できる。
- 図1 : 移動できるマスに敵の駒がある場合、その駒を取る事ができる。
取った後は、その駒があったマスに移動する。
- 図2 : 味方の駒のいるマスには移動できない。
- 図3 : (敵味方に関係なく)他の駒を飛び越える事はできない。
図1
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6 | 6 |
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敵の駒は取る事ができる。
図2
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味方のいるマスには移動できない。
図3
| a | b | c | d | e | f | g | h | |
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他の駒を飛び越える事はできない。
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キング |
クイーン |
ルーク |
ビショップ |
ナイト |
ポーン
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駒の価値
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∞(無限大) |
9 |
5 |
3 |
3 |
1
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- この評価は一般的なものであるが、絶対的なものではない。チェスの局面によって駒の価値は変動する。
- ルークは、クイーンとともに「大駒」[3]とされている。
- ルークはチェスの序盤戦では、通常あまり活躍できない。しかし中盤戦および終盤戦では、次第にその存在感を増していく。特に終盤戦では、(キングを除く駒の中で)ポーンとルークが残る確率が非常に高い。
- 敵のポーンのプロモーションを防ぐ最後の砦も、大抵の場合は味方のルークである。
- ルークは時に、単独で敵のキングをチェックメイトできる。これは「バックランク・メイト」と呼ばれ、実戦でも数多く見かけられる。
8
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「セブンスランク・ルーク」の例
セブンスランク・ルーク
- ルークを敵陣の7ランクに侵入させると、中盤戦や終盤戦で非常に優位になる。この形は「セブンスランク・ルーク(seventh rank rook)」と呼ばれている。特にルークを2つ侵入させた形は、理想的な攻撃形態の一つである。
- 黒側であれば、ルークを2ランクに侵入させる形になる。
ルークは紋章学においてしばしば用いられる。紋章用のルークは現代のものではなく、2つの角のある古い形をしている[4]。
カナダのケイデンシーにも使われる。
- ^ a b Jean-Louis Cazaux (2012年1月10日). “Indian Chess Sets”. History of Chess. 2015年8月8日閲覧。
- ^ a b Remke Kruk (2001). “Of Rukhs and Rooks, Camels and Castles”. Oriens 36: 288-298. JSTOR 1580487.
- ^ 英語ではメジャー・ピース (major pieces) 、またはヘビー・ピース (heavy pieces) となる。
- ^ Chess pieces, Mistholme, http://mistholme.com/dictionary/chess-pieces/
- チェス用語一覧
- 飛車 - 駒の動きが同じで、英語でもRookと訳される。
- 香車 - 駒の動きは異なるが、起源の上ではこちらがルークに対応する。