コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ミツバフウロ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミツバフウロ
伊吹山(岐阜県揖斐川町) 2015年9月14日
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ上類 Superrosids
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : アオイ類 Malvids
: フウロソウ目 Geraniales
: フウロソウ科 Geraniaceae
: フウロソウ属 Geranium
: ミツバフウロ G. wilfordii
学名
Geranium wilfordii Maxim.[1]
シノニム
和名
ミツバフウロ

ミツバフウロ(三葉風露[2][3]学名Geranium wilfordii Maxim.[1])は、フウロソウ科フウロソウ属分類される多年草の1[4]和名の3深裂する形状に由来する[2][3]。別名が、フシダカフウロ(節高風露)で、目立つ節であることに由来する[2][3]

特徴

[編集]

高さは30-80 cm、基部では倒れ伏し、よく分れする[4]。上部には下向きの屈毛と圧毛がある[4]。葉は対生し長い柄があり[2][3]葉身は幅1.5-10 cmで3深裂し、裂片には大きな数個の鋸歯があり、表面と裏面脈上には細毛がある[4]托葉は離生し膜質で、長さ2-5mmの狭三角形[4]。長い花柄の先端に[2]直径1-1.5 cm薄紫色の1-2個のを7-10月に上向きに付ける[3][4]花柄小花柄には下向きの屈毛と圧毛が密生する[4]。花弁と萼片は5枚。萼片は長さ6-8 mmで、花弁より少し短く、3脈があり脈上に短い圧毛がある[4]雌蕊は10本で[5]長さ約6 mm、朔果は花柱分枝と共に長さ約2cm[4]。果体には開出する長毛と細毛が密生し、嘴には細毛が密生する[4]。花柱分枝は長さ4.5-2 mm[4]果実は熟すと下方から裂開し、種子をはじき飛ばす[6]染色体数は2n=28[4]

分布と生育環境

[編集]

中国(本土部、北東部)[注釈 1]朝鮮半島ロシア連邦アムール州から日本にかけての、温帯から暖帯域に[2]分布する[4]

日本では、北海道本州四国九州に広く分布する[4]

平地山地の草むらに生育する[3][4]

分類

[編集]

以下の変種品種が知られている。

基本変種の品種

[編集]
  • ブコウミツバフウロ(学名:Geranium wilfordii Maxim. f. bukoense Hiyama[7]) - 埼玉県の武甲山に分布し、茎や葉柄に著しい開出毛がある[4]

変種

[編集]
  • エゾミツバフウロ(学名:Geranium wilfordii Maxim. var. yezoense Hiyama[8]) - 北海道に分布し、葉の裏前面に短い伏毛がある[4]。別名がエゾノミツバフウロ[8]
  • タカオフウロ(学名:Geranium wilfordii Maxim. var. chinense (Migo) H.Hara) - 東京都の高尾山に分布し、萼片の外面に開出毛がある[4]
  • ホコガタフウロ(学名:Geranium wilfordii Maxim. var. hastatum (Nakai) Hara) - 栃木県日光市に分布し、葉の裂片が細かく、側裂片がほこ形に張り出し、萼片の脈上に開出毛がある[4]

これらは地理的な変異と見られる[4]

近縁種

[編集]

同属のゲンノショウコGeranium thunbergii)と形態が非常に似ているが、植物体の腺毛の有無などで識別することができる[5]。ゲンノショウコはミツバフウロと同様に日本国内で広く分布し、同じ地域で見られることがある。そこでは完全に混じり合って生育しておらず、パッチ状に棲み分けていることが確認されている[9]。両者の雑種と思われる個体も確認されている[9]

和名
学名
萼片と花柄 識別のポイント
ミツバフウロ
三葉風露
Geranium wilfordii
ミツバフウロ、花の色は薄紫色(伊吹山、滋賀県米原市、2015年9月20日) ミツバフウロ、萼片と花柄に腺毛がない(伊吹山、岐阜県揖斐川町、2013年10月12日) ミツバフウロ、葉は3深裂する(伊吹山、岐阜県揖斐川町、2015年9月14日) 花の色は薄紫色
萼片と花柄に腺毛がない
葉は3深裂する[4]
ゲンノショウコ
現の証拠
Geranium thunbergii
ゲンノショウコ、花の色は紅紫色-白色(伊吹山、2015年9月14日) ゲンノショウコ、萼片と花柄に腺毛がある(伊吹山、岐阜県揖斐川町、2015年9月14日) ゲンノショウコ、下部の葉は5中-深裂する(伊吹山、岐阜県揖斐川町、2015年9月14日) 花の色は紅紫色-白色
萼片と花柄に腺毛がある
下部の葉は5中-深裂する[4]

利用

[編集]
同属の薬草として利用されているゲンノショウコ(左)とハクサンフウロ(右)

同属の薬草として利用されるゲンノショウコと同様にタンニンの大部分がゲラニインGeraniin)からなり[10]、乾燥した全草からのゲラニインの粗結晶収率は2.2 %とゲンノショコより収量は少ないものの代用薬としての価値があるとみられている[11]

種の保全状況評価

[編集]

日本では以下の都道府県レッドリストの指定を受けている[12]。生息地の開発や環境遷移により、個体数が減少している地域がある[13]。生息域が極めて局所的な地域がある[6][14][15]

  • 絶滅危惧IA類(CR) - 山形県[16]、宮崎県
  • 絶滅寸前種 - 奈良県[注釈 2]
  • 絶滅危惧IB類(EN) - 神奈川県[14]、愛知県[6]
  • 絶滅危惧II類(VU) - 三重県[17]、岡山県[15]
  • 準絶滅危惧(NT)- 石川県[18]、秋田県[19]、富山県[13]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 中国名が、老鸛草。
  2. ^ 奈良県のカテゴリー「絶滅寸前種」は、環境省によるカテゴリーの絶滅危惧IA類(CR)または絶滅危惧IB類(EN)相当。

出典

[編集]
  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2014年2月6日). “ミツバフウロ”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2015年9月27日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 牧野 (1982)、266頁
  3. ^ a b c d e f 金丸 (2001)、42頁
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 佐竹 (1982)、218-219頁、(該当部の執筆者は清水建美)
  5. ^ a b 佐竹 (1982)、217頁
  6. ^ a b c レッドデータブックあいち植物編2009、ミツバフウロ” (PDF). 愛知県. pp. 200 (2009年). 2015年9月27日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2014年2月6日). “ブコウミツバフウロ”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2015年9月27日閲覧。
  8. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2014年2月6日). “エゾミツバフウロ”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2015年9月27日閲覧。
  9. ^ a b 高倉 (2010)、159頁
  10. ^ 奥田 (1979)、543頁
  11. ^ 奥田 (1979)、544頁
  12. ^ 日本のレッドデータ検索システム「ミツバフウロ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2015年9月27日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  13. ^ a b レッドデータブックとやま2012” (PDF). 富山県. pp. 344 (2012年). 2015年9月27日閲覧。
  14. ^ a b (神奈川県レッドレータブック)、ミツバフウロ”. 神奈川県 (2006年). 2015年10月2日閲覧。
  15. ^ a b 岡山県版レッドデータブック2009” (PDF). 岡山県. pp. 129 (2009年). 2015年9月27日閲覧。
  16. ^ 絶滅危惧野生植物一覧” (PDF). 山形県. pp. 6 (2004年). 2015年9月27日閲覧。
  17. ^ 三重県レッドデータブック2005、ミツバフウロ”. 三重県 (2005年). 2015年9月27日閲覧。
  18. ^ 改訂・石川県の絶滅のおそれのある野生生物 いしかわレッドデータブック<植物編>2010「ミツバフウロ」” (PDF). 石川県 (2010年). 2015年9月27日閲覧。
  19. ^ 秋田県の絶滅の おそれのある 野生生物 秋田県版レッドリスト2014(維管束植物)” (PDF). 秋田県. pp. 184 (2014年). 2015年9月27日閲覧。

参考文献

[編集]
  • * 奥田拓男, 毛利和子, 寺山香代子, 樋口恵子, 波多野力「フウロソウ属およびトウダイグサ科植物からGeraniinの単離」『藥學雜誌』第99巻第5号、日本薬学会、1979年、543-545頁、doi:10.1248/yakushi1947.99.5_543ISSN 0031-6903NAID 130007287107 
  • 金丸勝実『鈴鹿・伊吹山』山と溪谷社〈花の山旅〉、2001年6月10日。ISBN 4635014134 
  • 高倉耕一, 西田佐知子, 西田隆義「植物における繁殖干渉とその生態・生物地理に与える影響」『分類』第10巻第2号、日本植物分類学会、2010年、151-162頁、doi:10.18942/bunrui.KJ00006537116ISSN 1346-6852NAID 110007681491 
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本II離弁花類』平凡社、1982年3月17日。ISBN 458253502X 
  • 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZENCID BN00811290全国書誌番号:85032603https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467-00 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]