ニシアフリカコビトワニ
ニシアフリカコビトワニ | |||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[2] | |||||||||||||||||||||||||||
VULNERABLE (IUCN Red List Ver.2.3 (1994)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Osteolaemus tetraspis Cope, 1861 | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Dwarf crocodile African dwarf crocodile bony crocodile[4] | |||||||||||||||||||||||||||
分布
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ニシアフリカコビトワニ(西阿弗利加小人鰐、Osteolaemus tetraspis)はクロコダイル科に分類されるワニの一種。ニシアフリカコガタワニとも呼ばれる[5]。その名の通り西アフリカに分布し、現存するクロコダイル科の中でもかなり小型である。
分類
[編集]コンゴコビトワニは長らく亜種とされていた。コンゴコビトワニはカール・パターソン・シュミットによって1919年に現在のコンゴ民主共和国にあるコンゴ川上流域から採取された数個の標本に基づき、Osteoblepharon osborni として記載された。Robert F. Ingerは別属に分類するほどの特徴は無いと判断し、1948年にコビトワニ属へと分類し、学名は Osteolaemus osborni となった。1961年には亜種へと格下げされた[6]。
2007年に発表された形態学的研究、2009年、2013年、2015年のDNA研究では、 コビトワニ属の3つの明確に異なる個体群が完全な種として認められる可能性があることが示された[7][8][9][10]。コンゴ川流域を除く中央アフリカのニシアフリカコビトワニ、コンゴ川流域のコンゴコビトワニ、および西アフリカの未記載種である[8][10][11]。ナイジェリアの個体群については研究が進んでおらず、どの種に分類されるか不明である[11]。4番目の系統群は2013年の飼育下での調査で発見されたが、野生での分布域は不明である[9]。カメルーンではニシアフリカコビトワニとコンゴコビトワニの分布が重なっているなど、分布の重なる系統群も存在する[12]。
名称
[編集]属名はギリシア語で「骨の喉」を意味し、首と腹の間の皮骨を示す。種小名はギリシア語で「4つの盾」を意味し、4つの大きな盾状の頸鱗板を示す[5]。
系統
[編集]2018年の形態学的、分子学的、地層学的データを同時に使用した年代測定研究により、クロコダイル科内の相互関係が確立された[13]。2021年には絶滅したヴォアイからDNAを抽出して解析を行い、クロコダイル亜科とコビトワニ亜科を含むクロコダイル科内の関係がより明確となった[14]。以下はそれらの研究成果を示した系統樹である。
クロコダイル科 |
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(クラウングループ) |
形態
[編集]全長は通常1.5m、最大1.9mである。体重は通常18-32kgで、雌では最大40kg、雄では最大80kgに達する[15][16]。以前はコビトカイマンに次いで2番目に小さいワニだと考えられていた[16][17]。コンゴコビトワニが亜種から独立したため、コビトカイマンよりも小さな最小のワニとなった[18]。成体の背側と側面は暗色で、腹面は黄色がかり、黒い斑点が散らばる[19]。幼体は茶褐色から灰褐色で、黒褐色の斑紋が散らばる[5]。ガボンのアバンダ洞窟内の個体には体色がオレンジ色のものも見られ、アルカリ性のグアノによるものと思われる[20]。また遺伝的な違いも発見されている[5]。体が小さいため、防御力を確保するために頸、背中、尾は固い鱗で覆われており、腹部と頸部の間には皮骨板がある。口吻は短く基部の1-1.3倍で、隆起が無い。コビトカイマンの吻と形状が似ており、同様の生態的地位を占めていると考えられる。前上顎骨に4本、上顎骨に12-13本、下顎骨に14-15本の歯を持つ。後方の歯は球状で、硬い獲物を噛み砕くのに適していると考えられている。口吻の後端が切れ上がる。水掻きは後肢の趾の半分ほどまである。前顎骨と上顎骨の縫合線はアルファベットの「V」字状[5]。
分布と生息地
[編集]サハラ砂漠以南の西アフリカと中部アフリカの熱帯地域に分布する。分布域の大部分はクチナガワニ属と重なっており、西はセネガル、東はウガンダ南西部、南はアンゴラにまで及ぶ[2][18]。ウガンダでは1940年代以降発見されておらず、現在の分布状況は不明である[18]。
小川、池沼、マングローブ林に生息し、一般的に大きな河川の本流では見られない[18][21]。一般的に森林生息地で見られるが、開けた場所で見られることもある。季節的に浸水する森林でも見られる[22]。ほとんどのワニと異なり、日光浴をすることはめったにない。夜間は水から少し離れた場所に移動することもある[18]。サバンナの孤立した水場からの報告もある[11]。ガボン西部の洞窟に生息する個体群が知られており[23]、遺伝子的に孤立している[24]。汽水域や海岸に進出することもある[5]。
生態と行動
[編集]クロコダイル科では珍しく、性質は温和でおとなしい[25]。主に夜行性であり、日中は水中や巣穴に隠れて過ごすが[11]、日中に活動する場合もある[18]。主に水中または水辺で索餌を行うが、ワニの中でも陸生傾向が強く、特に雨が降った後は広範囲に渡って陸上で餌を探す[11]。ジェネラリスト種であり、魚、カニ、カエル、腹足類、昆虫、トカゲ、水鳥、コウモリ、トガリネズミなど、幅広い小動物を捕食する[18][21][23]。コンゴ民主共和国において主な獲物は魚であり[18]、ナイジェリアでの主な獲物は腹足類とカニであった[26]。コンゴでは季節によって食性が変化し、雨季には魚、乾季には甲殻類を食べる[19]。胃の中からは植物質も見つかっているが、偶発的に摂取したものと考えられている[21]。比較的絶食にも強い[16]。乾季には深い穴に逃げ込むことが多い[21]。水場付近に巣穴を掘り、巣穴の入り口は水面下にある場合もある。適切な条件に恵まれない場合、水域の上に張り出した木の根の間に住む。
繁殖期にのみ密接に交流し、5-6月にかけての雨季の初めに塚状の巣を作る。巣は水辺に作られ、腐敗した植物の分解によって発生する熱によって卵が温められる。通常約10個、最大20個の卵を産み、85-105日で孵化する。孵化時の全長は28cm。雌は巣を守り、孵化後は鳥、魚、哺乳類、爬虫類、他のワニを含む天敵から幼体の捕食を防ぐため、一定期間幼体を保護する[5]。
人間との関係
[編集]IUCNのレッドリストでは絶滅危惧種とされており[2]、CITESの付属書Iに掲載されている[18]。研究が進んでおらず、人間活動による個体数の変化などはあまり認識されていない。ブッシュミートを目的とした狩猟や森林伐採による生息地の喪失により、ある程度は個体数の減少が示されている。しかし分布域は広いため、全体としては個体数は豊富だと考えられている。ガンビアやリベリアなどでは深刻な個体数の減少が見られ、絶滅の危機に瀕している可能性がある[19]。いくつかの保護区に生息している[21]。地元では皮革製品の製造に使用されているが、品質が悪いため、飼育下繁殖や持続可能な利用にはほとんど関心が寄せられていない。食用目的で狩猟されることもある[18][19]。
日本では恩賜上野動物園などで飼育され、繁殖も行われている[27][28]。北米の動物園を対象とした調査では、西アフリカの未記載種や、雑種も何頭か飼育されていた[10]。ヨーロッパでも同様の状況であったが、分布域の不明な4番目の系統が数頭、コンゴコビトワニも1頭が飼育されていた[9]。ペットとして飼育されることもあり、かつては日本でも流通していた[29]。
出典
[編集]- ^ Rio, Jonathan P.; Mannion, Philip D. (6 September 2021). “Phylogenetic analysis of a new morphological dataset elucidates the evolutionary history of Crocodylia and resolves the long-standing gharial problem”. PeerJ 9: e12094. doi:10.7717/peerj.12094. PMC 8428266. PMID 34567843 .
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参考文献
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