コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

スズキ・GSX-S

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
GSX-S750

GSX-S(ジーエスエックス エス)は、スズキが製造販売するオートバイのシリーズ車種である。

概要

[編集]

スズキの伝統であるGSXシリーズレーサーレプリカおよびスーパースポーツGSX-Rシリーズを経て派生したシリーズ車種で、『S』 のシリーズ名は「ストリート」「スポーツ」をイメージさせている[1][2]

2014年インターモトにおいて、ストリートファイターGSX-S1000(ジーエスエックス エス 1000)と、カウルが装備されたGSX-S1000F(ジーエスエックス エス 1000 エフ)が発表されており[3]、2車種ともABS装備もしくは非装備の両タイプが生産されている。2021年にはGSX-S1000Fの後継としてGSX-S1000GTおよびGSX-S1000GT+(海外限定)が発表された。

なお750cc版の GSX-S750日本で発売されているGSR750の北米向け仕様であったが、2016年10月のインターモトで新型のGSX-S750が発表されている[4]。また同年11月にはインドネシアにおいてGSX-S150[5]、ミラノショーにおいてGSX-S125[6]を発表した。

GSX-S1000

[編集]
GSX-S1000 ABS
GSX-S1000F ABS
2016年モデル
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
メーカー 日本の旗スズキ
車体型式 EBL-GT79A
エンジン T719型 998 cm3 4サイクル
水冷DOHC直列4気筒4バルブ
内径×行程 / 圧縮比 73.4 mm × 59.0 mm / 12.2:1
最高出力 107 kW (145 PS)/10,000rpm
最大トルク 105 N⋅m (10.7 kgf⋅m)/9,500rpm
車両重量 209(214) kg
テンプレートを表示

1,000cc版の日本仕様は GSX-S1000 ABS として2015年7月6日[7]より発売され、ABSが標準装備となっている。

エンジンはかつてGSX-R1000に搭載されていたものの中から、ロングストロークで低回転域の扱いやすさに定評のあった2005年(K5)モデルのものをベースとして改良を加え搭載し、通常走行から3段階(OFF・1・2・3)の操作ができるトラクションコントロールシステムも装備されている。車体は軽量化を重視して設計されフレームにアルミ素材を使用しており、スイングアームはGSX-Rから設計を流用している[8]

GSX-S1000F ABS は同時発売されたスポーツモデルで、横2灯式ヘッドライトのフロントカウルと、面積を増やしたサイドカウルが装備されている。

1000/F の両仕様とも2017年3月30日にマイナーチェンジが行われた。エンジンを平成28年環境規制に適合させながら、最高出力を107kWから109kWへ、最大トルクを10.7kgf・mから10.9kgf・mに強化された。また、ハンドルレバー等のアクセントをブラック化し質感を向上させたほか、スリッパークラッチが追加で装備された[9][10]

2021年フルモデルチェンジ

[編集]

2021年4月26日にはGSX-S1000にとって初めてのフルモデルチェンジが発表され、8月4日より日本国内で発売された[11]。エンジンがDTB1型に変更されたことで平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応し[12]、電子制御システムS.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)を新たに搭載した。また、このタイミングでデザインが変更され、全幅が810mmに、重量が214kgに増加し、スズキ二輪車に初採用となるモノフォーカスタイプのLEDヘッドライトを縦型2灯式に配列したフロントカウルになった[13]。ちなみに、このフルモデルチェンジにあたって販売名から「ABS」が抜けた。

新搭載の電子制御システムS.I.R.S.には、出力特性を3つのモードから選択できるパワーモードセレクターを内蔵したSDMS(スズキドライブモードセレクター)や、選択幅を広げ5段階から選択可能となったトラクションコントロールシステム、クラッチレバーを操作しなくてもシフトアップ/ダウンできる双方向クイックシフトシステムなどを採用した[13]

バリエーションは従来のGSX-S1000F ABSに代わってグランドツアラーのGSX-S1000GTが登場した。2021年9月22日に発表され、2022年2月8日に国内発売が発表された。日本国内での発売予定日は2月17日とされた[14][15]

空力性能を考慮して専用にデザインされたことでサイズが拡大され、重量は226kgに増加されている。また、GSX-S1000Fと同様にウインドスクリーンを装着している。メーターは6.5インチ大画面フルカラーTFT液晶メーターをスズキで初採用し、昼間と夜間それぞれに応じた表示に切り替えることができる。純正用品も、GSX-S1000GT専用開発品が用意された[15]。海外で販売されているGSX-S1000GT+は、より長距離のツーリングに特化した仕様になっている。

2023年11月7日にはスポーツツアラーとアドベンチャーを融合させたクロスオーバーバイクとしてGSX-S1000GXが発表された[16]。エンジンは共通だが、最大トルクを105 N⋅m (10.7 kgf⋅m)に落としている。シート高が830mmと高くなり、サイズが拡大された。

GSX-S1000GXの最大の特徴は、スズキの二輪車として初採用となるS.A.E.S.(スズキアドバンスドエレクトロニックサスペンション)である。専用にセッティングを施した日立Astemo製電子制御サスペンションEERA(Electronically Equipped Ride Adjustment)をベースに、さまざまな電子制御を採用したものである。

これに伴い、S.I.R.S.にはSDMSの強化版であるSDMS-αが内蔵される。SDMA-αはパワーモードセレクターだけでなく、7段階+オフを調整するスズキトラクションコントロールシステム(STCS)、4段階のサスペンション減衰量を選択できるアクティブダンピングコントロール(AD)が含まれている。また、SDMS-αと連携して乗り心地をより滑らかにする設定を切り替えるスズキロードアダプティブスタビライゼーションシステム(SRAS)も導入される。

2025年モデルではカラーバリエーションに2色加えたほか、5インチのカラーTFT液晶マルチインフォメーションディスプレイを搭載した[17]

モデルチェンジごとの変化

[編集]
項目\年代 2015年7月 - 2017年3月 - 2021年4月 -
型式 EBL-GT79A 2BL-GT79B 8BL-EK1AA
エンジン型式 T719 DTB1
最高出力 107 kW (145 PS)
/ 10,000 rpm
109 kW (148 PS)
/ 10,000 rpm
112 kW (152 PS)
/ 11,000 rpm
最大トルク 105 N⋅m (10.7 kgf⋅m)
/ 9,500 rpm
107 N⋅m (10.9 kgf⋅m)
/ 9,500 rpm
106 N⋅m (10.8 kgf⋅m)
/ 9,250 rpm
燃費(WMTC) 19.2 km/L 18.7 km/L 17.0 km/L

バリエーションごとの差違

[編集]
項目\モデル GSX-S1000 ABS GSX-S1000F ABS GSX-S1000 GSX-S1000GT GSX-S1000GX
タイプ ストリート
ファイター
スーパースポーツ ストリート
ファイター
グランドツアラー クロスオーバー
型式 GT79 EK1AA
全長(mm) 2,115 2,140 2,150
全幅(mm) 795 810 825 925
全高(mm) 1,080 1,180 1,080 1,215 1,350
重量(kg) 209 214 214 226 232
本体価格
(税抜)
1,033,000円
(2016年モデル)
1,048,000円
(2018年モデル)
1,080,000円
(2016年モデル)
1,098,000円
(2018年モデル)
1,300,000円 1,450,000円 1,810,000円

GSX-S750

[編集]
GSX-S750 ABS
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
メーカー 日本の旗スズキ
車体型式 2BL-C533F
エンジン R749型 749 cm3 4サイクル
水冷DOHC4バルブ直列4気筒
内径×行程 / 圧縮比 72.0 mm × 46.0 mm / 12.3:1
最高出力 83 kW (113 PS)/10,500rpm
最大トルク 80 N⋅m (8.2 kgf⋅m)/9,000rpm
車両重量 212 kg
テンプレートを表示

750cc版の日本仕様は GSX-S750 ABS として2017年3月30日に発売された[18]

車体は1,000cc版であるGSX-S1000に合わせたデザインとなっており、エンジンはGSX-R750のものをベースとし日本の平成28年環境規制に適合させ搭載しているが日本国外仕様とスペックの差異はほぼない。また1000同様のトラクションコントロールシステムだけでなく、SV650同様の「ローRPMアシスト」も搭載した。なお車両重量は1000より若干増加している。

走行中は全体を通して、静かである。低回転時はもちろん、エンジンを高速域ギアの3000~4000回転で回すと、微細な振動すら消えて、エンジンが「無い」ような感覚になるほどであり、風切り音のほうが目立つくらいである[19]

シートの前方部分は潔く面積を小さくしているため、シート高の割に足着きも良い。ハンドリングに関しては、GSX-S1000よりも3kg重いにもかかわらず動きが軽い上に、ブレーキリリースの瞬間に自然な方向転換ができる[20]

排ガス規制のため、2022年以降は販売が終了する運びとなった。

GSX-S125

[編集]
GSX-S125 ABS
基本情報
排気量クラス 小型自動二輪車
メーカー 日本の旗スズキ
車体型式 2BJ-DL32B
エンジン CFA1型 124 cm3 4サイクル
水冷DOHC4バルブ単気筒
内径×行程 / 圧縮比 62.0 mm × 41.2 mm / 11.0:1
最高出力 11 kW (15 PS)/10,000rpm
最大トルク 11 N⋅m (1.1 kgf⋅m)/8,000rpm
車両重量 133 kg
テンプレートを表示

2016年のミラノ・モーターサイクル・ショーで、GSX-Sシリーズの125cc版として発表された[21]。欧州モデルではヨーロッパ圏におけるA1ライセンス所有者向けの入門スポーツモデルとして扱われていた[21]。日本仕様は GSX-S125 ABS として2017年10月11日に発売された[22]

車体は1,000cc版に意匠を合わせたデザインとなっており、エンジンはGSX-R125のものをベースとし日本の平成28年環境規制に適合させ搭載しているが日本国外仕様とスペックの差異はほぼない。GSX-S1000と同じく、スタータースイッチを押し続けずワンプッシュするだけで始動する「スズキイージースタートシステム」を採用している。スズキの原付二種としては国内初のABS装着車である。

搭載される単気筒エンジンは他の同排気量エンジンと比べるとビッグボア、あるいはショートストロークであり、比較的に中回転域まで回したときの快活さが優先されたセッティングとなっている[23]

2019年モデルはカラーリングが変更された[21]。2020年モデルではハザードスイッチが追加され、液晶メーターは黒地に白抜き文字表示になるなどの小変更を受けた[21]

2022年7月に発表されたモデルでは平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応すべく、モデルチェンジが行われた[21]。型式は8BJ-DL32D。見た目上の変化はアンダーカウルの後端が少し短くなり、ツートーンカラー風に仕上げられた。また、最高出力は10,500rpm、最大トルクは8,500rpmで発生するように特性が変更された。車両重量が135kgとわずかに増加してはいるものの、車体の細さの割には安定して乗車できる[23]

脚注

[編集]
  1. ^ 【インターモト14】スズキ GSX-S1000 / F 新型…モデルの立ち位置は? - Response.・2014年10月8日
  2. ^ なおGSXのカタナシリーズGSX250Sコブラは排気量数字の後に『S』または『SS』が付いているが、『KATANA』『COBRA』の名称も付けられている。
  3. ^ スズキ、海外向け二輪車の2015年新モデルを発表 - スズキ・ニュースリリース 2014年9月30日
  4. ^ スズキ、インターモトで海外向け二輪車の新型モデルを発表 - スズキ・ニュースリリース 2016年10月4日
  5. ^ スズキ、インドネシアモーターサイクルショーでアセアン地域向け二輪車の新型モデルを発表 - スズキ・ニュースリリース 2016年11月2日
  6. ^ スズキ、ミラノショーで海外向け二輪車の新型モデルを発表 - スズキ・ニュースリリース 2016年11月8日
  7. ^ スズキ、新型ロードスポーツバイク「GSX‐S1000 ABS」、「GSX‐S1000F ABS」を発売 - スズキ・ニュースリリース 2015年6月17日
  8. ^ スズキ GSX-S1000 - MotoRIDE(バイクブロス)・2015年6月18日
  9. ^ 【スズキ】出力向上を果たした2017年GSX-S1000/F ABS登場”. バイクブロス (2017年3月17日). 08 May 2024閲覧。
  10. ^ GSX-S1000の「EBL-GT79A」と「2BL-GT79B」の違いを比較”. 08 May 2024閲覧。
  11. ^ "スズキ、ストリートバイクの大型二輪車 新型「GSX-S1000」を国内で発売" (Press release). スズキ株式会社. 21 July 2021. 2024年5月8日閲覧
  12. ^ GSX-S1000の「2BL-GT79B」と「8BL-EK1AA」の違いを比較”. 08 May 2024閲覧。
  13. ^ a b "スズキ、ストリートバイク 新型「GSX-S1000」を発表" (Press release). スズキ株式会社. 26 April 2021. 2024年5月8日閲覧
  14. ^ "スズキ、スポーツツアラー新型「GSX-S1000GT」を発表". スズキ・ニュースリリース (Press release). 22 September 2021. 2024年5月17日閲覧
  15. ^ a b スポーツツアラーの大型二輪車新型「GSX-S1000GT」を国内で発売”. スズキ・ニュースリリース. スズキ株式会社 (2022年2月8日). 17 May 2024閲覧。
  16. ^ スズキ、大型二輪車新型「GSX-S1000GX」、新型「GSX-8R」を発表”. スズキ・ニュースリリース. スズキ株式会社 (2023年11月7日). 17 May 2024閲覧。
  17. ^ 津田昌宏 (2024年11月6日). “スズキのスポーツネイキッドバイク「GSX-S1000」がさらに進化! ふたつのカラーを新採用!! 情報を把握しやすい“TFT液晶ディスプレイ”も新搭載”. VAGUE. 株式会社メディア・ヴァーグ. 2024年11月7日閲覧。
  18. ^ スズキ、GSX-Sシリーズの新型モデル「GSX-S750 ABS」を発売 - スズキ・ニュースリリース2017年3月17日
  19. ^ 北岡博樹 (2021年3月14日). “スズキ『GSX-S750』が傑作すぎて忘れられない。1000cc以上の大型バイクよりもおすすめできる理由がある!【SUZUKI GSX-S750/試乗インプレ 前編】”. モーターマガジン社 スズキのバイク!. 2024年6月13日閲覧。
  20. ^ 北岡博樹 (2021年3月14日). “凄腕の刺客『GSX-S750』は1000cc大型バイクの背後を狙う! だけど普段は初心者にも優しいって!?【SUZUKI GSX-S750/試乗インプレ 後編】”. モーターマガジン社 スズキのバイク!. 2024年6月13日閲覧。
  21. ^ a b c d e GSX-S125のカタログ・諸元表・スペック情報”. BikeBros. 18 May 2024閲覧。
  22. ^ "スズキ、GSX-Sシリーズの新型モデル「GSX‐S125 ABS」を発売". スズキ・ニュースリリース (Press release). スズキ株式会社. 20 September 2017. 2024年5月17日閲覧
  23. ^ a b 伊丹孝裕 (03 Feb 2024). “【スズキ GSX-S125 試乗】誰もが「細ッ!」と驚くはず、気負わず乗れる“走りの指南役”…伊丹孝裕”. Response. 17 May 2024閲覧。

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]