ジャズ+クラシック/ロック=ナイス
『ジャズ+クラシック/ロック=ナイス』 | ||||
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ザ・ナイス の ライブ録音を含む スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
[スタジオ音源] 1969年 ロンドン トライデント・スタジオ(ニューヨークからのゲストはニューヨークで録音) [ライブ音源] 1969年4月9日、10日 ニューヨーク、フィルモア・イースト | |||
ジャンル | サイケデリック・ロック, プログレッシブ・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル | イミディエイト・レコード | |||
プロデュース | The Nice | |||
ザ・ナイス アルバム 年表 | ||||
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『ジャズ+クラシック/ロック=ナイス』 (Nice)[注釈 1] は、イングランドのロック・バンドのザ・ナイスが1969年に発表した3作目のアルバム。
解説
[編集]経緯
[編集]ザ・ナイスは1968年11月に前作『少年易老学難成』を発表し、1969年にはロンドンのマーキー・クラブ、バーミンガムのマザーズ、マンチェスター大学、リーズ大学など国内で活動した後、4月から5月までアメリカ公演を行った。そして帰国後、ロンドンのトライデント・スタジオで新作アルバムを制作した。
彼等はライブ演奏について非常に高い評価を得てきたが、2作のスタジオ・アルバムの売り上げは今一つであった。そこで彼等は新作の片面にライブ録音を収録した[1]。
内容
[編集]オリジナルLP[注釈 2][注釈 3]には、片面にスタジオ録音が4曲、もう片面に1969年4月9日と10日のフィルモア・イーストでのコンサートからの2曲が収録された。見開きジャケットの内側にキース・エマーソンの手書きによる収録曲の解説が掲載された。
スタジオ録音の4曲のうち、オリジナルは3曲。「アズラエル・リヴィジテッド」は、イギリスでデビュー・シングル「ナイスの思想」の裏面に収録された「アズラエル」の再録音。原曲と同様にセルゲイ・ラフマニノフのピアノ曲「前奏曲 嬰ハ短調」(作品3-2)が引用され、エマーソンが調弦を変えて演奏するピアノがホンキー・トンク・ミュージックの雰囲気を醸し出している[注釈 4]。また同曲ではレニー・トリスターノの「ターキッシュ・マンボ」が引用されている。「空虚な日々の想い出」は、エマーソンが1969年の2月4日にロンドンの Institute of Contemporary Artsで[注釈 5]バイオリニストのジョン・メイヤー[注釈 6]と演奏して[2]気に入ったエドゥアール・ラロ作曲「スペイン交響曲」(作品21)第五楽章を改作し、リー・ジャクソンが歌詞をつけた。「フォー・イグザンプル」には、前半のオルガン・トリオの演奏にケニー・ホイーラーなどのロンドンのジャズ・ミュージシャン、後半のピアノ・トリオの演奏[注釈 7]にジョン・サーマンなどのニューヨークのジャズ・ミュージシャンが、現地での録音を介して参加しており[3]、後半ではザ・ビートルズの「ノルウェーの森」とミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』の挿入歌「アメリカ」[注釈 8]の一節が演奏される。「夢を追って」の原曲はアメリカのシンガーのティム・ハーディンがデビュー・アルバムTim Hardin 1(1966年)に収録した'How Can We Hang On to a Dream'である。
ライブ録音の2曲のうち、オリジナル曲の「ロンド '69'」はデビュー・アルバム『ナイスの思想』に収録された「ロンド」であり、ここでは冒頭にヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲の「イタリア協奏曲」第三楽章の最初の24小節、中間部にバッハ作曲の「トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565」の一節が演奏されている。「シー・ビロングス・トゥ・ミー」の原曲はボブ・ディランがアルバム『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』(1965年)で発表した。1969年4月9日と10日の演奏が編集で繋ぎ合わされて収録された[1]。
裏ジャケットに掲載された5枚の写真のうち、上段左のものにジャクソンと写っているのはイエスのクリス・スクワイアとビル・ブルーフォードである[4]。
収録曲
[編集]- LP
- CD
- ジャズ+クラシック/ロック=ナイス+2[注釈 9]
# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「Azrael Revisited (アズラエル・リヴィジテッド)」 | Keith Emerson, Lee Jackson | |
2. | 「Hang on to a Dream (夢を追って)」 | Tim Hardin | |
3. | 「Diary of an Empty Day (空虚な日々の想い出)」 | Emerson, Jackson | |
4. | 「For Example (フォー・イグザンプル)」 | Emerson, Jackson | |
5. | 「Rondo '69' (ロンド'69')」 | Emerson, Jackson, Brian Davison | |
6. | 「She Belongs to Me (シー・ビロングス・トゥ・ミー)」 | Bob Dylan | |
7. | 「Hang on to a Dream (夢を追って)」(ボーナス・トラック、シングルA面) | Tim Hardin | |
8. | 「Diary of an Empty Day (空虚な日々の想い出)」(ボーナス・トラック、シングルB面) | Emerson, Jackson | |
合計時間: |
- Nice (Expanded De-luxe Edition)[注釈 10]
評価
[編集]全英アルバム・チャートで最高位3位を記録した[1]。
参加ミュージシャン
[編集]- The Nice
- Keith Emerson – ハモンド・オルガン、ピアノ
- Lee Jackson – ベース・ギター、ヴォーカル
- Brian Davison – ドラムス、パーカッション
- その他
- Alan Skidmore (CD #4)[3]
- Joe Harriott (CD #4)[3]
- Chris Pyne (CD #4)[3]
- Kenny Wheeler (CD #4)[3]
- John Surman (CD #4)[3]
- Joe Newman (CD #4)[3]
- Pepper Adams (CD #4)[3]
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ アメリカ盤はEverything As Nice As Mother Makes It。
- ^ 欧米でのバンド名はThe Niceであるので、本作の原題は形容詞のniceであろう。
- ^ 邦題の「ジャズ+クラシック/ロック=ナイス」は「ジャズとクラシックを足してロックで割るとザ・ナイスになる」の意味で、より正確には「(ジャズ+クラシック)/ロック=ナイス」であろう。
- ^ 「アズラエル」は、エマーソンのハモンド・オルガンと、当時メンバーだったデヴィッド・オリストのギターが主体だった。
- ^ この日は複合媒体のショーが催され、ザ・ナイスが参加して、ブライアン・デヴィソンはマンフレッド・マンのマイク・ハグと共演し、リー・ジャクソンは詩を朗読した。
- ^ インド出身の作曲家兼バイオリニスト。ザ・ナイス解散後にエマーソンが結成したエマーソン・レイク・アンド・パーマーが1977年に発表した『ELP四部作』に収録されたエマーソン作曲の「ピアノ協奏曲第一番」のオーケストラ・アレンジを協力し、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した。
- ^ ブライアン・デヴィソンはザイロフォンも演奏している。
- ^ ザ・ナイスはインストゥルメンタルのカバーを1968年7月に2作目のシングルとして発表。全米のシングル・チャートを29位まで上昇した。
- ^ VICP-63269。イミディエイト。SKU: 4988002495702。
- ^ Castle Music。CMQDD792。各トラックの作詞・作曲は本CDのライナーノーツに基づく。
出典
[編集]引用文献
[編集]- Hanson, Martyn (2014). Hang on to a Dream: The Story of the Nice. London: Foruli Classics. ISBN 978-1-905792-61-0