ファイヴ・ブリッジズ
『ファイヴ・ブリッジズ』 | ||||
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ザ・ナイス の スタジオ録音を含む ライブ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
[ライブ録音] 1969年10月17日 ロンドン、フェアフィールド・ホール 1969年12月20日 ニューヨーク、フィルモア・イースト [スタジオ録音] 1969年夏 ロンドン、トライデント・スタジオ | |||
ジャンル | サイケデリック・ロック、プログレッシブ・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル | カリスマ・レコード | |||
プロデュース | ザ・ナイス | |||
ザ・ナイス アルバム 年表 | ||||
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『ファイヴ・ブリッジズ』 (Five Bridges)は、イングランドのロック・グループのザ・ナイスの4作目のアルバムで、彼等が1970年に解散した直後に発表された。
解説
[編集]経緯
[編集]ザ・ナイスは1969年9月にイミディエイト・レコード[注釈 1]から前作『ジャズ+クラシック/ロック=ナイス』を発表。その後、マネージャーのトニー・ストラットン・スミスはイミディエイト・レコードの対応に強い不満を覚えて、彼等を同年に自分が設立したカリスマ・レコードに移籍させた。
彼等は1969年10月にニューカッスル芸術祭とロンドンのフェアフィールド・ホールズで、新作の組曲「ファイヴ・ブリッジズ」を披露。11月からはキング・クリムゾンと合同でアメリカ公演を行った。その間、キース・エマーソンがキング・クリムゾンのグレッグ・レイクと意気投合し、彼と新しいバンドを結成しようと決心をして、スミスや他のメンバーにザ・ナイスを脱退すると伝えた。
彼等は契約を履行する為に1970年初めのライブ活動を遂行した後、4月に正式解散した。
内容
[編集]カリスマ・レコードは彼等が解散した直後の1970年6月に本作を発表した。計5曲の収録曲の内訳は、3曲が1969年10月17日のロンドンのフェアフィールド・ホールでのシンフォニア・オブ・ロンドンとの共演のライブ録音、1曲が1969年12月20日のフィルモア・イーストでのライブ録音、1曲が1969年のスタジオ録音である。ジャケットにはエマーソンによる解説が掲載された。
オリジナルLPの片面を占める「ファイヴ・ブリッジズ」は、ニューカッスル芸術祭から楽曲制作を依頼されて、エマーソンとリー・ジャクソンが共作した。この組曲はニューカッスル市内にあるタイン川に掛かる五つの橋[注釈 2]に因んだ五つの楽章からなる。ザ・ナイスは、ニューヨーク・シンフォニーの指揮者のジョセフ・イーガーに連絡して、この組曲を1969年10月10日のニューカッスル芸術祭でオーケストラと共演して披露しようと計画したが、管弦楽曲への編曲が間に合わず、自分達だけでニューカッスル芸術祭での初演を務めた[1]。その一週間後の10月17日、ロンドンのフェアフィールド・ホールでイーガーが指揮するシンフォニア・オブ・ロンドンと共演して、この組曲の管弦楽曲版を披露した。第四楽章はフリードリヒ・グルダの「プレリュード・アンド・フーガ」[注釈 3]に影響を受けた作品。第五楽章ではアラン・スキドモアやケニー・ホイーラーなどのジャズミュージシャンが客演した。「インターメッツォ: 'カレリア・スウィート'」はザ・ナイスのアルバム『少年易老学難成』に収録された「間奏曲(「カレリア組曲」)」をオーケストラとの共演によって再演したもの。「パセティーク」はチャイコフスキー作曲の交響曲第六番の第三楽章の改作。この2曲では、イーガーがエマーソンと共に編曲に携わった。
フィルモア・イーストでのライブ録音である「カントリー・パイ/ブランデンブルグ・コンチェルト No.6」は、ボブ・ディランが1969年に発表したアルバム『ナッシュヴィル・スカイライン』に収録した「カントリー・パイ」と、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲の「ブランデンブルク協奏曲」第六番(変ロ長調 BWV1051)を改作した作品で、本作唯一のスタジオ録音である「ワン・オブ・ゾウズ・ピープル」を裏面に伴ってシングルになった[2]。
収録曲
[編集]- LP
# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「The Five Bridges Suite (ファイヴ・ブリッジズ)
| Keith Emerson, Lee Jackson | |
合計時間: |
# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「Intermezzo 'Karelia Suite' (インターメッツォ: 'カレリア・スウィート')」(Live at Fairfield Halls, Croydon, London, October 17th, 1969) | Johan Julius Christian Sibelius, arr. Emerson, Joseph Eger | |
2. | 「Pathetique (Symphony No. 6, 3rd Movement) (パセティーク)」(Live at Fairfield Halls, Croydon, London, October 17th, 1969) | Pyotr Ilyich Tchaikovsky, arr. Emerson, Eger | |
3. | 「Country Pie/Brandenburg Concerto No. 6 (カントリー・パイ / ブランデンブルグ・コンチェルト No.6)
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4. | 「One of Those People (ワン・オブ・ゾウズ・ピープル)」(Studio recording) | Emerson, Jackson | |
合計時間: |
- CD
# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「Fantasia 1st Bridge/2nd Bridge」 | Keith Emerson, Lee Jackson | |
2. | 「Chorale 3rd Bridge」 | Emerson, Jackson | |
3. | 「High Level Fugue 4th Bridge」 | Emerson, Jackson | |
4. | 「Finale 5th Bridge」 | Emerson, Jackson | |
5. | 「Intermezzo 'Karelia Suite'」 | Johan Julius Christian Sibelius, arr. Emerson, Joseph Eger | |
6. | 「Pathetique」 | Pyotr Ilyich Tchaikovsky, arr. Emerson, Eger | |
7. | 「Country Pie/Brandenburg Concerto No. 6
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8. | 「One of Those People」 | Emerson, Jackson | |
9. | 「Fairfield Hall final:
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10. | 「Country Pie」(Bonus Tracks. Studio Overdubbed Version) | Dylan | |
11. | 「Experts from the Five Bridges suite」(Bonus Tracks. Recorded at the Fairfield Halls, Croydon 17th October 1969.) | Emerson, Jackson | |
合計時間: |
- Five Bridges『ファイヴ・ブリッジズ(フェアウェル・ザ・ナイス/組曲~五つの橋) +3』[注釈 6]
# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「Fantasia 1st Bridge/2nd Bridge (ファンタジア:ファースト・ブリッジ/セカンド・ブリッジ)」 | Keith Emerson, Lee Jackson | |
2. | 「Chorale 3rd Bridge (コーラル:サード・ブリッジ)」 | Emerson, Jackson | |
3. | 「High Level Fugue 4th Bridge (ハイ・レヴェル・フーガ:フォース・ブリッジ)」 | Emerson, Jackson | |
4. | 「Finale 5th Bridge (フィナーレ:フィフス・ブリッジ)」 | Emerson, Jackson | |
5. | 「Intermezzo 'Karelia Suite' (インターメッツォ:'カレリア・スウィート')」 | Johan Julius Christian Sibelius, arr. Emerson, Joseph Eger | |
6. | 「Pathetique (パセティーク)」 | Pyotr Ilyich Tchaikovsky, arr. Emerson, Eger | |
7. | 「Country Pie/Brandenburg Concerto No. 6 (メドレー カントリー・パイ / ブランデンブルグ・コンチェルト No.6)
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8. | 「One of Those People (ワン・オブ・ゾウズ・ピープル)」 | Emerson, Jackson | |
9. | 「Fairfield Hall final (メドレー):
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10. | 「Country Pie (カントリー・パイ)」(ボーナス・トラック、スタジオ・オーヴァーダブド・ヴァージョン) | Dylan | |
11. | 「Experts from the Five Bridges suite (エクサープツ・フロム・ザ・ファイヴ・ブリッジズ・スウィート)」(ボーナス・トラック、BBC Radio 1 "サウンズ・オブ・ザ・セヴンティーズ" より) | Emerson, Jackson | |
合計時間: |
評価
[編集]イギリスのアルバム・チャートで最高2位を記録した[4]。
参加ミュージシャン
[編集]- The Nice
- Keith Emerson – キーボード
- Lee Jackson – ヴォーカル、ベース・ギター
- Brian Davison – ドラムス、パーカッション
- その他
- Sinfonia Of London (LP Side One #1, Side Two #1, #2)
- Joseph Eger – 指揮 (LP Side One #1, Side Two #1, #2)
- Joe Harriott – サクソフォーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
- Pete King – サクソフォーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
- Chris Pyne – トロンボーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
- Alan Skidmore – サクソフォーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
- John Warren – サクソフォーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
- Kenny Wheeler – トランペット、フリューゲルホルン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ザ・ナイスの初代マネージャーはイミディエイト・レコードを所有するアンドリュー・ルーグ・オールダムであったが、彼等はオールダムのマネージメントに不満を覚えて、トニー・ストラットン・スミスを二代目のマネージャーに迎えた。
- ^ ニューカッスルはタイン川の河口近くに存在しており、正式名をニューカッスル・アポン・タインという。Tyne Bridgeをはじめタイン川にかかる橋はいずれも観光名所となっている。リー・ジャクソンはニューカッスルの出身である。
- ^ エマーソンは、レイクと結成したエマーソン・レイク・アンド・パーマーのコンサートで、この曲を度々取り上げた。
- ^ Virgin Records。CASCDR 1014。
- ^ 作詞・作曲と時間はライナーノーツによる。タイトル#1 "Fantasia 1st Bridge/2nd Bridge" (2:42) と #2 "Chorale 3rd Bridge" (3:27) は "Fantasia 1st Bridge" (6:11) に、#3 "High Level Fugue 4th Bridge" (4:01) は "2nd Bridge" (3:58) に、#4 "Finale 5th Bridge" (7:59) は "Chorale 3rd Bridge" (3:32) と "High Level Fugue 4th Bridge" (1:00) と "Finale 5th Bridge" (3:26) に、それぞれ相当する。
- ^ UICY-25577。ユニバーサル・ミュージック。SKU: 4988031144060。
出典
[編集]- ^ Macan (2006), p. 36.
- ^ “Discogs”. 2024年3月2日閲覧。
- ^ Five Bridges (Virgin CASCDR 1014)のライナーノーツ。
- ^ Hanson (2014), p. 167.
引用文献
[編集]- Hanson, Martyn (2014). Hang on to a Dream: The Story of the Nice. London: Foruli Classics. ISBN 978-1-905792-61-0
- Macan, Edward (2006). Endless Enigma: A Musical Biography of Emerson, Lake and Palmer. Chicago and La Salle: Open Court. ISBN 978-0-8126-9596-0