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ファイヴ・ブリッジズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『ファイヴ・ブリッジズ』
ザ・ナイススタジオ録音を含む ライブ・アルバム
リリース
録音 [ライブ録音]
1969年10月17日
イングランドの旗ロンドン、フェアフィールド・ホール
1969年12月20日
アメリカ合衆国の旗ニューヨーク、フィルモア・イースト
[スタジオ録音]
1969年夏
イングランドの旗ロンドン、トライデント・スタジオ
ジャンル サイケデリック・ロックプログレッシブ・ロック
時間
レーベル カリスマ・レコード
プロデュース ザ・ナイス
ザ・ナイス アルバム 年表
ジャズ+クラシック/ロック=ナイス
(1968年)
ファイヴ・ブリッジズ
(1970年)
エレジー
(1971年)
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ファイヴ・ブリッジズ』 (Five Bridges)は、イングランドロック・グループのザ・ナイスの4作目のアルバムで、彼等が1970年に解散した直後に発表された。

解説

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経緯

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ザ・ナイスは1969年9月にイミディエイト・レコード[注釈 1]から前作『ジャズ+クラシック/ロック=ナイス』を発表。その後、マネージャーのトニー・ストラットン・スミスはイミディエイト・レコードの対応に強い不満を覚えて、彼等を同年に自分が設立したカリスマ・レコードに移籍させた。

彼等は1969年10月にニューカッスル芸術祭とロンドンのフェアフィールド・ホールズで、新作の組曲「ファイヴ・ブリッジズ」を披露。11月からはキング・クリムゾンと合同でアメリカ公演を行った。その間、キース・エマーソンがキング・クリムゾンのグレッグ・レイクと意気投合し、彼と新しいバンドを結成しようと決心をして、スミスや他のメンバーにザ・ナイスを脱退すると伝えた。

彼等は契約を履行する為に1970年初めのライブ活動を遂行した後、4月に正式解散した。

内容

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カリスマ・レコードは彼等が解散した直後の1970年6月に本作を発表した。計5曲の収録曲の内訳は、3曲が1969年10月17日のロンドンのフェアフィールド・ホールでのシンフォニア・オブ・ロンドンとの共演のライブ録音、1曲が1969年12月20日のフィルモア・イーストでのライブ録音、1曲が1969年のスタジオ録音である。ジャケットにはエマーソンによる解説が掲載された。

オリジナルLPの片面を占める「ファイヴ・ブリッジズ」は、ニューカッスル芸術祭から楽曲制作を依頼されて、エマーソンとリー・ジャクソンが共作した。この組曲はニューカッスル市内にあるタイン川に掛かる五つの橋[注釈 2]に因んだ五つの楽章からなる。ザ・ナイスは、ニューヨーク・シンフォニーの指揮者のジョセフ・イーガーに連絡して、この組曲を1969年10月10日のニューカッスル芸術祭でオーケストラと共演して披露しようと計画したが、管弦楽曲への編曲が間に合わず、自分達だけでニューカッスル芸術祭での初演を務めた[1]。その一週間後の10月17日、ロンドンのフェアフィールド・ホールでイーガーが指揮するシンフォニア・オブ・ロンドンと共演して、この組曲の管弦楽曲版を披露した。第四楽章はフリードリヒ・グルダの「プレリュード・アンド・フーガ」[注釈 3]に影響を受けた作品。第五楽章ではアラン・スキドモアケニー・ホイーラーなどのジャズミュージシャンが客演した。「インターメッツォ: 'カレリア・スウィート'」はザ・ナイスのアルバム『少年易老学難成』に収録された「間奏曲(「カレリア組曲」)」をオーケストラとの共演によって再演したもの。「パセティーク」はチャイコフスキー作曲の交響曲第六番の第三楽章の改作。この2曲では、イーガーがエマーソンと共に編曲に携わった。

フィルモア・イーストでのライブ録音である「カントリー・パイ/ブランデンブルグ・コンチェルト No.6」は、ボブ・ディランが1969年に発表したアルバム『ナッシュヴィル・スカイライン』に収録した「カントリー・パイ」と、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲の「ブランデンブルク協奏曲」第六番(変ロ長調 BWV1051)を改作した作品で、本作唯一のスタジオ録音である「ワン・オブ・ゾウズ・ピープル」を裏面に伴ってシングルになった[2]

ジャケットはヒプノシスによる[3]

収録曲

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LP
Side One
#タイトル作詞・作曲時間
1.「The Five Bridges Suite (ファイヴ・ブリッジズ)
  • Fantasia 1st Bridge (ファンタジア:ファースト・ブリッジ/セカンド・ブリッジ)
  • 2nd Bridge (セカンド・ブリッジ)
  • Chorale 3rd Bridge (コーラル:サード・ブリッジ)
  • High Level Fugue 4th Bridge (ハイ・レヴェル・フーガ:フォース・ブリッジ)
  • Finale 5th Bridge (フィナーレ:フィフス・ブリッジ)(Live at Fairfield Halls, Croydon, London, October 17th, 1969)
Keith Emerson, Lee Jackson
合計時間:
Side Two
#タイトル作詞・作曲時間
1.「Intermezzo 'Karelia Suite' (インターメッツォ: 'カレリア・スウィート')(Live at Fairfield Halls, Croydon, London, October 17th, 1969)Johan Julius Christian Sibelius, arr. Emerson, Joseph Eger
2.「Pathetique (Symphony No. 6, 3rd Movement) (パセティーク)(Live at Fairfield Halls, Croydon, London, October 17th, 1969)Pyotr Ilyich Tchaikovsky, arr. Emerson, Eger
3.「Country Pie/Brandenburg Concerto No. 6 (カントリー・パイ / ブランデンブルグ・コンチェルト No.6)
  • Country Pie (カントリー・パイ)
  • Brandenburg Concerto No. 6 (ブランデンブルグ・コンチェルト No.6)(Live at Fillmore East, New York, December 20, 1969)
  •  
  • Bob Dylan
  • Johann Sebastian Bach
  • 4.「One of Those People (ワン・オブ・ゾウズ・ピープル)(Studio recording)Emerson, Jackson
    合計時間:
    CD
    Five Bridges (CD)
    #タイトル作詞・作曲時間
    1.「Fantasia 1st Bridge/2nd Bridge」Keith Emerson, Lee Jackson
    2.「Chorale 3rd Bridge」Emerson, Jackson
    3.「High Level Fugue 4th Bridge」Emerson, Jackson
    4.「Finale 5th Bridge」Emerson, Jackson
    5.「Intermezzo 'Karelia Suite'」Johan Julius Christian Sibelius, arr. Emerson, Joseph Eger
    6.「Pathetique」Pyotr Ilyich Tchaikovsky, arr. Emerson, Eger
    7.「Country Pie/Brandenburg Concerto No. 6
    • Country Pie
    • Brandenburg Concerto No. 6」
     
  • Bob Dylan
  • Johann Sebastian Bach
  • 8.「One of Those People」Emerson, Jackson
    9.「Fairfield Hall final:
  • Lieutenant Kijé
  • Rondo
  • She Belongs to Me」(Bonus Tracks. Recorded for BBC's "Sounds of the Seventies.")
  •  
  • Brian Davison, Emerson, Jackson, Davy O'List, Sergei Prokofiev
  • Emerson, O'List, Davison, Jackson
  • Dylan
  • 10.「Country Pie」(Bonus Tracks. Studio Overdubbed Version)Dylan
    11.「Experts from the Five Bridges suite」(Bonus Tracks. Recorded at the Fairfield Halls, Croydon 17th October 1969.)Emerson, Jackson
    合計時間:
    • Five Bridges『ファイヴ・ブリッジズ(フェアウェル・ザ・ナイス/組曲~五つの橋) +3』[注釈 6]
    #タイトル作詞・作曲時間
    1.「Fantasia 1st Bridge/2nd Bridge (ファンタジア:ファースト・ブリッジ/セカンド・ブリッジ)Keith Emerson, Lee Jackson
    2.「Chorale 3rd Bridge (コーラル:サード・ブリッジ)Emerson, Jackson
    3.「High Level Fugue 4th Bridge (ハイ・レヴェル・フーガ:フォース・ブリッジ)Emerson, Jackson
    4.「Finale 5th Bridge (フィナーレ:フィフス・ブリッジ)Emerson, Jackson
    5.「Intermezzo 'Karelia Suite' (インターメッツォ:'カレリア・スウィート')Johan Julius Christian Sibelius, arr. Emerson, Joseph Eger
    6.「Pathetique (パセティーク)Pyotr Ilyich Tchaikovsky, arr. Emerson, Eger
    7.「Country Pie/Brandenburg Concerto No. 6 (メドレー カントリー・パイ / ブランデンブルグ・コンチェルト No.6)
    • Country Pie (カントリー・パイ)
    • Brandenburg Concerto No. 6 (ブランデンブルグ・コンチェルト No.6)
     
  • Bob Dylan
  • Johann Sebastian Bach
  • 8.「One of Those People (ワン・オブ・ゾウズ・ピープル)Emerson, Jackson
    9.「Fairfield Hall final (メドレー):
  • Lieutenant Kijé (ルーテナント・キージェ)
  • Rondo (ロンド)
  • She Belongs to Me (シー・ビロングス・トゥ・ミー)(ボーナス・トラック)
  •  
  • Brian Davison, Emerson, Jackson, Davy O'List, Sergei Prokofiev
  • Emerson, O'List, Davison, Jackson
  • Dylan
  • 10.「Country Pie (カントリー・パイ)(ボーナス・トラック、スタジオ・オーヴァーダブド・ヴァージョン)Dylan
    11.「Experts from the Five Bridges suite (エクサープツ・フロム・ザ・ファイヴ・ブリッジズ・スウィート)(ボーナス・トラック、BBC Radio 1 "サウンズ・オブ・ザ・セヴンティーズ" より)Emerson, Jackson
    合計時間:

    評価

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    イギリスのアルバム・チャートで最高2位を記録した[4]

    参加ミュージシャン

    [編集]
    The Nice
    その他
    • Sinfonia Of London (LP Side One #1, Side Two #1, #2)
    • Joseph Eger – 指揮 (LP Side One #1, Side Two #1, #2)
    • Joe Harriott – サクソフォーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
    • Pete King – サクソフォーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
    • Chris Pyne – トロンボーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
    • Alan Skidmore – サクソフォーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
    • John Warren – サクソフォーン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")
    • Kenny Wheeler – トランペット、フリューゲルホルン (LP Side One #1 "Final 5th Bridge")

    脚注

    [編集]

    注釈

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    1. ^ ザ・ナイスの初代マネージャーはイミディエイト・レコードを所有するアンドリュー・ルーグ・オールダムであったが、彼等はオールダムのマネージメントに不満を覚えて、トニー・ストラットン・スミスを二代目のマネージャーに迎えた。
    2. ^ ニューカッスルはタイン川の河口近くに存在しており、正式名をニューカッスル・アポン・タインという。Tyne Bridgeをはじめタイン川にかかる橋はいずれも観光名所となっている。リー・ジャクソンはニューカッスルの出身である。
    3. ^ エマーソンは、レイクと結成したエマーソン・レイク・アンド・パーマーのコンサートで、この曲を度々取り上げた。
    4. ^ Virgin Records。CASCDR 1014。
    5. ^ 作詞・作曲と時間はライナーノーツによる。タイトル#1 "Fantasia 1st Bridge/2nd Bridge" (2:42) と #2 "Chorale 3rd Bridge" (3:27) は "Fantasia 1st Bridge" (6:11) に、#3 "High Level Fugue 4th Bridge" (4:01) は "2nd Bridge" (3:58) に、#4 "Finale 5th Bridge" (7:59) は "Chorale 3rd Bridge" (3:32) と "High Level Fugue 4th Bridge" (1:00) と "Finale 5th Bridge" (3:26) に、それぞれ相当する。
    6. ^ UICY-25577。ユニバーサル・ミュージック。SKU: 4988031144060。

    出典

    [編集]
    1. ^ Macan (2006), p. 36.
    2. ^ Discogs”. 2024年3月2日閲覧。
    3. ^ Five Bridges (Virgin CASCDR 1014)のライナーノーツ。
    4. ^ Hanson (2014), p. 167.

    引用文献

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    • Hanson, Martyn (2014). Hang on to a Dream: The Story of the Nice. London: Foruli Classics. ISBN 978-1-905792-61-0 
    • Macan, Edward (2006). Endless Enigma: A Musical Biography of Emerson, Lake and Palmer. Chicago and La Salle: Open Court. ISBN 978-0-8126-9596-0 

    関連項目

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    外部リンク

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