ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ
ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ | |
---|---|
The United States vs. Billie Holiday | |
監督 | リー・ダニエルズ |
脚本 | スーザン=ロリ・パークス |
原作 |
ヨハン・ハリ 『麻薬と人間 100年の物語』 |
製作 |
リー・ダニエルズ ジョーダン・ファッジ ジェフ・キルシェンバウム タッカー・トゥーリー パメラ・オアス・ウィリアムズ |
製作総指揮 |
ヨハン・ハリ ジェレミー・アレン マーク・ボンバック カシアン・エルウィズ パティ・ロング パティ・ロング ジョー・ロス ヒラリー・ショー デニス・ストラットン |
出演者 |
アンドラ・デイ トレヴァンテ・ローズ ナターシャ・リオン ギャレット・ヘドランド |
音楽 | クリス・バワーズ |
主題歌 |
アンドラ・デイ 「Tigress & Tweed」 |
撮影 | アンドリュー・ダン |
編集 | ジェイ・ラビノウィッツ |
製作会社 |
リー・ダニエルズ・エンターテインメント ニュー・スレイト・ベンチャーズ ロス/キルシェンバウム・フィルムズ |
配給 |
Hulu ギャガ |
公開 |
2021年2月26日(配信) 2022年2月11日(劇場公開) |
上映時間 | 131分[1] |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
興行収入 | $1,135,988[2] |
『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』(The United States vs. Billie Holiday)は2021年のアメリカ合衆国の伝記映画。監督はリー・ダニエルズ、主演はアンドラ・デイが務めた。本作はヨハン・ハリが2015年に発表したノンフィクション『麻薬と人間 100年の物語』(福井昌子訳、作品社)を原作とし、黒人ジャズ・シンガーであるビリー・ホリデイの人生を映画化した伝記ドラマ[3]。
ストーリー
[編集]1940年代、ビリー・ホリデイが歌う『奇妙な果実』は黒人差別の悲惨さを人々に知らしめ、公民権運動に大きな影響を与えていた。ホリデイはジャズ・シンガーとしてスターダムにのし上がったかに見えたが、その裏では恋人からの暴力に苦しみ、酒や麻薬を手放せない日々を送っていた。
しばらくして、『奇妙な果実』の力を危惧した当局は歌唱の妨害を試みたが、どうやっても上手くいかなかった。ところが、時の連邦麻薬局の長官、ハリー・J・アンスリンガーの介入で事態は急転することになった。アンスリンガーは麻薬の使用・所持を法律で禁止し、さらには厳罰化するキャンペーンに力を注いでいたが、それは自らの権力欲を満たすためであり、国民の健康増進や治安向上を願ってのことではなかった。アンスリンガーは「黒人の歌手が麻薬に手を出している」というイメージを宣伝し、人々の差別意識をも利用しようとしていた。そんな彼が目を付けたのがホリデイであった。
アンスリンガーは黒人捜査官、ジミー・フレッチャーをホリデイの元に送り込み、彼女に関する情報を一通り集めさせた。そうした諜報活動の結果、ホリデイはヘロインの使用で逮捕され、そのまま服役することになった。1年後、出所したホリデイは歌手活動を再開したが、アンスリンガーは彼女を再起不能になるまで追い込むつもりでいた。だが、ここで予期せぬ事態が起こる。
キャスト
[編集]- ビリー・ホリデイ:アンドラ・デイ
- ジミー・フレッチャー:トレヴァンテ・ローズ
- タルーラ・バンクヘッド:ナターシャ・リオン
- ハリー・J・アンスリンガー:ギャレット・ヘドランド
- ミス・フレディ:ミス・ローレンス
- ルイス・マッケイ:ロブ・モーガン
- ロズリン:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
- サム・ウィリアムズ:エヴァン・ロス
- レスター・ヤング:タイラー・ジェームズ・ウィリアムズ
- ジョン・レヴィ:トーン・ベル
- ジミー・モンロー:エリック・ラレイ・ハーヴェイ
- ジョー・ガイ:メルヴィン・グレッグ
- セイディ・フェイガン:デイナ・グーリエ
- レジナルド・ロード・ディヴァイン:レスリー・ジョーダン
製作
[編集]2019年9月17日、リー・ダニエルズ監督の新作映画にアンドラ・デイ、トレヴァンテ・ローズ、ギャレット・ヘドランド、ナターシャ・リオンが出演することになったと報じられた[4]。9月25日、エヴァン・ロス、デイナ・グーリエ、エリック・ラレイ・ハーヴェイの起用が発表された[5]。10月2日、メルヴィン・グレッグとミス・ローレンスがキャスト入りした[6]。
なお、ダニエルズ監督は当初、女優としての経験がないに等しいデイの起用に難色を示していた。しかし、周囲からの強い勧めもあり、取り敢えずデイと会うことにした。直接話をした監督は「デイには十分な魅力があり、ビリー・ホリデイの精神をその身に宿している」と感じ、彼女に演技のレッスンを受けるよう勧めた。それからしばらくして、コーチから監督の下にデイの演技を収めた30秒の映像が送られてきた。その映像を見た監督は「ここに映っているのはビリー・ホリデイを演じるアンドラ・デイではない。ホリデイ本人だ」と感動し、正式なオーディションを経てデイの起用を決断したのだという[7]。
撮影・音楽
[編集]2019年10月、本作の主要撮影がカナダのモントリオールで始まった[4]。17日、クリストファー・ガニングが本作で使用される楽曲を手がけるとの報道があった[8]。後にガニングが降板したため、その後任はマーク・アイシャム→クリス・バワーズと代わっていった[9][10]。2021年1月11日にはデイが歌う劇中歌「All of Me」が[11]、26日には主題歌「Tigress & Tweed」がシングルとして発売された[12]。2月19日、ワーナー・レコードが本作のサウンドトラックを発売した[13]。
公開・マーケティング
[編集]2020年7月1日、パラマウント映画が本作の全米配給権を獲得したと報じられた[14]。11月5日、本作の劇中写真が初めて公開された[15]。12月24日、新型コロナウイルスの流行が一向に収束しない状況を受け、パラマウント映画は本作の全米配給権をHuluに売却した[16]。2021年1月12日、本作のオフィシャル・トレイラーが公開された[17]。当初、本作の全米公開日は2021年2月12日に設定されていたが、後に公開日は同月26日に延期された[18][19]。さらには公開形態も劇場公開からインターネットでの配信に切り替わった。
評価
[編集]本作に対する批評家の評価は平凡なものに留まっている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには117件のレビューがあり、批評家支持率は57%、平均点は10点満点で5.4点となっている。サイト側による批評家の見解の要約は「『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』は主題を十分に活かしきれていない。しかし、アンドラ・デイの名演のお陰で、そうした欠点は相殺されている。」となっている[20]。また、Metacriticには38件のレビューがあり、加重平均値は53/100となっている[21]。
受賞・ノミネート
[編集]賞 | 発表日 | カテゴリ | 対象 | 結果 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|
ゴールデングローブ賞 | 2021年2月28日 | 主演女優賞 (ドラマ部門) | アンドラ・デイ | 受賞 | [22][23] |
主題歌賞 | 「Tigress & Tweed」 | ノミネート | |||
クリティクス・チョイス・アワード | 2021年3月7日 | 主演女優賞 | アンドラ・デイ | ノミネート | [24][25] |
歌曲賞 | 「Tigress & Tweed」 | ノミネート | |||
ヘアデザイン&メイクアップ賞 | ノミネート | ||||
アカデミー賞 | 2021年4月26日 | 主演女優賞 | アンドラ・デイ | ノミネート | [26][27] |
出典
[編集]- ^ “ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ”. 映画.com. 2021年12月12日閲覧。
- ^ “The United States vs. Billie Holiday (2021)”. The Numbers. 2021年12月12日閲覧。
- ^ “ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ”. allcinema. 株式会社スティングレイ. 2022年12月28日閲覧。
- ^ a b “Lee Daniels Sets Cast For ‘The United States Vs. Billie Holiday’ With Andra Day, Trevante Rhodes, Garrett Hedlund & Natasha Lyonne”. Deadline.com (2019年9月17日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Evan Ross, Dana Gourrier, Erik Laray Harvey Join Lee Daniels’ ‘The United States vs. Billie Holiday’”. Deadline.com (2019年9月25日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “‘The United States Vs. Billie Holiday’ Adds ‘American Vandal’ & ‘Snowfall’ Actor Melvin Gregg & Miss Lawrence”. Deadline.com (2019年10月2日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “In 'The United States vs Billie Holiday,' Lee Daniels Tackles the Untold Story of the Jazz Singer’s Civil Rights Activism”. Hollywood Reporter (2021年1月11日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Christopher Gunning to Score Lee Daniels’ ‘The United States vs. Billie Holiday’”. Film Music Reporter (2019年10月17日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Mark Isham to Score Lee Daniels’ ‘The United States vs. Billie Holiday’”. Film Music Reporter (2020年4月1日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Netflix’s ‘Bridgerton’ to Feature Music by Kris Bowers”. Film Music Reporter (2020年12月1日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Andra Day’s ‘All of Me’ Cover from ‘The United States vs. Billie Holiday’ Released”. Film Music Reporter (2021年1月11日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Andra Day’s & Raphael Saadiq’s Original Song ‘Tigress & Tweed’ from ‘The United States vs. Billie Holiday’ Released”. Film Music Reporter (2021年1月26日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “‘The United States vs. Billie Holiday’ Soundtrack Album Details”. Film Music Reporter (2021年2月2日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Paramount Prevails In Auction For Lee Daniels-Directed ‘The United States Vs. Billie Holiday:’ Virtual Cannes”. Deadline.com (2020年7月1日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “‘The United States Vs. Billie Holiday’ First Look: Andra Day Transforms Into the Blues Icon in Lee Daniels’ Biopic”. /Film (2020年11月5日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Hulu Buys Lee Daniels’ ‘The United States vs. Billie Holiday’”. Variety (2020年12月24日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “The United States vs. Billie Holiday - Trailer (Official) • A Hulu Original”. YouTube (2021年1月12日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “‘Scream’ Relaunch Eyes 2022 Release, ‘Snake Eyes’ Rolls To 2021 & More – Paramount Release Date Changes”. Deadline.com (2020年8月28日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Paramount Pictures Takes Michael B. Jordan Pic 'Without Remorse,' 'Micronauts' Off 2021 Release Calendar”. Hollywood Reporter (2020年11月13日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “The United States vs. Billie Holiday”. Rotten Tomatoes. 2021年3月2日閲覧。
- ^ “The United States vs. Billie Holiday (2021)”. Metacritic. 2021年3月2日閲覧。
- ^ “【ゴールデングローブ賞】映画部門でNetflixが圧勝 「Mank マンク」が最多6部門ノミネート”. 映画.com (2021年2月4日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “ゴールデン・グローブ賞『ノマドランド』が作品賞!受賞結果全リスト”. シネマトゥデイ (2021年3月1日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Critics Choice Awards: ‘Mank’ Leads With 12 Nominations, Netflix Makes History With Four Best Picture Nominees”. Variety (2021年2月8日). 2021年3月2日閲覧。
- ^ “Critics Choice Awards: ‘Nomadland’, ‘The Crown’ Among Top Honorees – Complete Winners List”. Deadline.com (2021年3月7日). 2021年3月16日閲覧。
- ^ “アカデミー賞ノミネート全リスト!『Mank/マンク』が最多10部門”. シネマトゥデイ (2021年3月15日). 2021年3月16日閲覧。
- ^ “【第93回アカデミー賞総括】「ノマドランド」が作品賞含む最多3冠!主演男優賞発表で番狂わせ”. 映画.com (2021年4月26日). 2021年12月12日閲覧。
関連作品
[編集]- ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実 - 同じビリー・ホリデイの伝記映画。