ククルス・ドアンの島
ククルス・ドアンの島 | |||
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『機動戦士ガンダム』のエピソード | |||
話数 | 第15話 | ||
初放送日 | 1979年7月14日 | ||
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「ククルス・ドアンの島」(ククルス・ドアンのしま)は、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』第15話(1979年7月14日初放送)のサブタイトルである。このエピソードは同作品の劇場版3部作では割愛されており、安彦良和による漫画版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でも採用されていない。また、テレビシリーズがアメリカへ輸出された際にも1話まるごとカットされている[1]。以下、テレビ版と記す。
このエピソードから以下の作品が派生している。
- 機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島 - おおのじゅんじによる漫画。『THE ORIGIN』のスピンオフ作品[2]。本作には島そのものは登場しない。
- 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 - 2022年公開のアニメ映画。安彦の発案・監督による映画化作品[3]。以下、映画版と記す。
概要
[編集]テレビ版の脚本は荒木芳久[3][注釈 1]、絵コンテは貞光紳也、演出は斧谷稔[注釈 2]、作画監督は鈴村一行がそれぞれ務めた。テレビ版や劇場版3部作にアニメーションディレクターとしても関わっていた安彦良和は、本話にはキャラクターデザイン以外ではまったく関わっていない[7][注釈 1]。
前述のようにテレビシリーズの1話であるが、映画版以前には"作画崩壊"でウェブ検索すると「ククルス・ドアンの島」が検索結果に出てきていたほど(作画の)出来が悪い話である一方、ファンからは(物語の)「神回」と賞賛されてもいる[8]。 岡田斗司夫は第15話「ククルス・ドアンの島」は、話数調整のために当時流行っていた「ベトナム戦争の脱走米兵」の話を題材に作られたものと考えられるが、ザクをガンダムに投げ捨てられてククルス・ドアンが「戦争の匂い」から解放されたことが、最終回でアムロが破損しつつもまだ動くコアファイターを捨てて仲間のもとへ帰って来ることで「戦争の匂い」から解放される場面の伏線として機能していると分析している。そしてリメイク作品は『機動戦士Zガンダム』以降の続編の存在をいったん否定して「ファーストガンダム」だけで作品が独立していることを示すために作られるのだろうと推論している[9]。 安彦は「捨て回」と評しているが、同時に「いい話」とも認めている[5][10]。
業界用語として、「無人島と思えた島に実は人が住んでいて…」との内容で本編から切り離され、別の視点で物語が展開されるブロックを、「島編」と呼ぶことがある[1][11][注釈 3]。この用語はテレビアニメ『ふしぎの海のナディア』(1990年 - 1991年放送)が元とされることが多いが、その源流を遡るとこの「ククルス・ドアンの島」にヒントを得たものである[1][11]。
2020年にはテレビ版で描かれた「作画崩壊ガンダム」を作製したモデラーがSNSで話題となった[12]。また、「作画崩壊ザク」は「ドアン専用ザク」として映画版でデザインモチーフに採用された[13]。
あらすじ
[編集]ガンダムで訓練中だったアムロは、地球連邦空軍の緊急信号を受けたホワイトベースからの指示で、ガンダムからコア・ファイターで離脱して近くの島へ向かう。不時着した戦闘機のシートに縛りつけられたパイロットを発見したアムロは、応急手当を施す。そこへ、兵士に敵意を抱く3人の子供と、ドアンと呼ばれる1人の男性が乗ったザクが現れる。アムロはコア・ファイターで抗戦を試みるがザクに撃墜され、気絶してしまう。
アムロが丸太小屋の中で目を覚まして外へ出ると、そこにはロランと名乗る少女、先ほどの子供たち、そして畑仕事をするドアンがいた。実はドアンはジオン軍の脱走兵であり、追っ手におびえながら子供たちを育て、島への侵入者から防衛用の武器を奪っていたのだった。一方、ホワイトベースではアムロの捜索にかかろうとした矢先に、島へ接近するジオン軍を察知する。アムロもそれを目撃してコア・ファイターで帰還し、ガンダムに換装して再出撃するが、ドアンはアムロを制止して追っ手のザクとのザク同士による格闘戦を見せつける。
格闘戦のさなか、ドアンは子供たちの親を殺したのは自分であることや、それ以来罪の意識に囚われていたことを告白する。追っ手のザクを倒したドアンがなおも追撃の影に悩む姿を見たアムロは、ドアンから戦いの匂いを消そうとガンダムで彼のザクを抱え上げ、海へ放り投げて沈めるのであった[14]。
声の出演
[編集]島の設定
[編集]ジオン公国軍の脱走兵ククルス・ドアンが、戦争で親を亡くした孤児たちと暮らす島である。孤児は、テレビ版ではロランという少女を含む4人。映画版では20人となっている[3]。
- テレビ版では、ホワイトベースが北アメリカ大陸からアジアに渡る途中にあるため、太平洋に存在する。島の正式名称は明らかになっていない[注釈 4]。
- 映画版では、大西洋に存在するカナリア諸島の最北端の無人島アレグランサ島と設定されており[15][注釈 5]、南米のジャブローからヨーロッパに渡る途中[注釈 6]、ラス・パルマスに寄港中[15]のホワイトベースからアムロらが向かう。
ゲーム『機動戦士ガンダム オンライン』では、2014年9月3日のアップデートで新フィールドとして「ククルス・ドアンの島」が実装された。マップの中央に大きな島があり、周囲には複数の小島が点在する。また、島内にはドアンに撃破されたザクの残骸なども描写されていた[16]。2015年には「ククルス・ドアンの島 -戦いの匂い-」と題し、水位が上昇して海中洞窟が広がったマップとなった[17]。
テレビ版で本エピソードの制作にはノータッチだった安彦良和は、後年の取材で「小さな無人島にあんな大きな滝ができる川なんてないよ。差し渡し5、6kmくらいで、その気になれば歩いて回れる」と指摘し、それを踏まえて映画版では『THE ORIGIN』の時系列に沿った設定となったため、「(映画版の)ドアンの島はジャブローとオデッサの間辺りにあるんです。地図を見ると、もう絞られる訳です。映画を観て、本当にこの島に行く物好きが出て来るようなら成功ですね。ぜひ探してみて下さい」と語っている[18]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ a b 荒木は本話を含めてシリーズ全43話中の8話で脚本を担当しているが、安彦が映画版公開を前に各種メディアで発言したところでは、2人は制作当時も以後も直接会って話をする機会が一度もなかったという[4][5]。映画版公開後の対談企画で43年目にして初対面となった[6]。
- ^ テレビシリーズ総監督の富野喜幸(現:富野由悠季)の別名義。
- ^ 『機動戦士ガンダムSEED』第24話、『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』第5話など[11]。
- ^ 『ガンダムの常識 一年戦争編(3)』(双葉V文庫)では、五島列島のどこかである旨が第2章「キャラクター編09 ククルス・ドアンの島は日本の五島列島だった!?」(pp.94-96)に記述されている。
- ^ 劇場パンフレットの 「ストーリー」「美術ボード」「ワールドリサーチ」などのほか、映画のノベライズ版でも明記されており、作中でも参謀(エド・クライン)やブライトの台詞によって明言されている。ただし、映画版公式サイトでは明示されておらず、通称「帰らずの島」と表記されている。
- ^ 『THE ORIGIN』における時系列順になっている。
出典
[編集]- ^ a b c 氷川竜介 (2007年10月23日). “第15話「ククルス・ドアンの島」”. GUNDAM.INFO. バンダイナムコフィルムワークス. 2022年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月23日閲覧。
- ^ “機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島”. 機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島 公式サイト. 創通・サンライズ. 2023年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月14日閲覧。
- ^ a b c 入倉功一 (2022年4月7日). “ガンダム『ククルス・ドアンの島』脱走兵ドアンが養う子供は20人 設定画公開”. シネマトゥデイ (シネマトゥデイ). オリジナルの2022年4月21日時点におけるアーカイブ。 2022年4月22日閲覧。
- ^ 安彦良和×武内駿輔対談、『月刊ガンダムエース』2022年6月号、p.14
- ^ a b “機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島:伝説のエピソードを今アニメ化する理由 安彦良和監督が込めた「複雑な問いかけ」”. MANTANWEB (MANTAN). (2022年5月3日). オリジナルの2022年5月3日時点におけるアーカイブ。 2022年5月3日閲覧。
- ^ 「ククルス・ドアン」大ヒット記念メモリアル対談 安彦良和×荒木芳久対談、『月刊ガンダムエース』2022年9月号、p.6
- ^ 安彦良和; 財前(ガンダムエース編集長)(インタビュー)「【特別掲載】いま語られる映画『ククルス・ドアンの島』と「安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN展」への思い──安彦良和インタビュー」『ダ・ヴィンチニュース』、KADOKAWA、2022年1月21日。オリジナルの2022年5月16日時点におけるアーカイブ 。2022年4月28日閲覧。『月刊ガンダムエース』2021年12月号に掲載の記事より抜粋。
- ^ 鯨井隆正 (2022年3月16日). “安彦良和監督が『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』への思いを吐露「"神回"と言われているけど、出来の悪い話。ただの"作画崩壊"なのに(笑)」”. 週プレNEWS (集英社). オリジナルの2022年4月5日時点におけるアーカイブ。 2022年5月3日閲覧。
- ^ “【ククルス・ドアンの島】ガンダム最終回とリンクする富野由悠季が込めたメッセージ【安彦良和/アニメ/映画/サンライズ/Zガンダム/岡田斗司夫”. (2022年6月3日) 2024年10月21日閲覧。
- ^ 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』23巻収録・安彦良和ロングインタビュー
- ^ a b c 石岡良治『現代アニメ「超」講義』PLANETS/第二次惑星開発委員会、2019年、209-210頁。ISBN 9784905325130。
- ^ “「積みプラに隠れた迷彩ガンダム」「作画崩壊ガンダム」を具現化、あえて“縛り”を設ける理由とは?”. ORICON NEWS (oricon ME). (2020年2月16日). オリジナルの2022年4月21日時点におけるアーカイブ。 2022年4月22日閲覧。
- ^ “機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島:3DCGによるMS戦に注目 “鼻”が長いドアンザク 二刀流ガンダム 高機動型ザクはスケーター!?”. MANTAN WEB (MANTAN). (2022年4月17日). オリジナルの2022年4月21日時点におけるアーカイブ。 2022年4月22日閲覧。
- ^ “STORY(第15話 - 第21話)”. 機動戦士ガンダム公式Web. 創通・サンライズ. 2014年10月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月7日閲覧。
- ^ a b 内海健 (2022年6月13日). “映画『ガンダム ククルス・ドアンの島』ドアンの島は実在した! モデルの島への聖地巡礼ツアーを組んでみた”. PASH! PLUS (主婦の友社). オリジナルの2022年7月7日時点におけるアーカイブ。 2022年6月14日閲覧。
- ^ “「機動戦士ガンダムオンライン」に新フィールド「ククルス・ドアンの島」が登場。突発イベントの発生率が通常の3倍になるキャンペーンの実施も”. 4Gamer.net (Aetas). (2014年9月3日). オリジナルの2022年4月21日時点におけるアーカイブ。 2022年4月22日閲覧。
- ^ “『機動戦士ガンダムオンライン』 豪華4週連続キャンペーン“サマーフェスティバル”が開催! 大規模戦新フィールド“ククルス・ドアンの島”も配信開始”. ファミ通.com (KADOKAWA Game Linkage). (2015年7月15日). オリジナルの2022年4月21日時点におけるアーカイブ。 2022年4月22日閲覧。
- ^ 『グレートメカニックG 2022 SPRING』、2022年3月17日発行、双葉社、p.9。