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サブフライトシステム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

サブフライトシステムとは、アニメ作品の『ガンダムシリーズ』に登場する、モビルスーツを搭載して飛行する航空機の総称。略称SFS(Sub Flight System)。

概要

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サブフライトシステムは、モビルスーツを搭載して基地や拠点施設から戦闘区域まで輸送し、時にそのまま空戦を行うための、いわば空中版の騎兵騎馬のような役割をする航空機である。

形状は主に全翼機型で、上面にモビルスーツの足が固定できるようにフットレストや溝が作られている場合が多い。当然ながら、モビルスーツの重量に耐えられる機体構造と余剰揚力、さらには機体上でのモビルスーツの動作に対する飛行安定性が必須となる。

例えば地上において、モビルスーツ単体では搭載する推進剤・歩行能力等の限界から行動範囲や移動速度が限定されてしまうが、サブフライトシステムを使用することによって推進剤等を節約でき、迅速にモビルスーツを戦闘区域まで送り届けられる。宇宙空間においても、モビルスーツが母艦から戦闘空域に到着するまでの、モビルスーツ本体の消耗を減らす役割を担っている。さらに、輸送機のように「格納」するのではなく、あくまでサブフライトシステムの上に乗せているだけのため、モビルスーツの搭載火器を利用して空戦を行うことも可能である。

熟練したパイロットの中には、モビルスーツをサブフライトシステムより離脱(ジャンプ)させ、攻撃してからまたサブフライトシステムに戻る(乗り直す)などの超高等戦術を行う者もいる。これは極めて極端な例ではあるが、サブフライトシステムはモビルスーツと共に使用して、初めて効果的に運用しうるものである。

また、可変モビルスーツ(TMS)の中にはモビルアーマー形態を取っている際、他のモビルスーツを搭載、または掴まらせて移動を助けることが可能な機種があり(Ζガンダム等)これをサブフライトシステム的な運用と解釈することもできる。

各作品世界におけるサブフライトシステム

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宇宙世紀シリーズ

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サブフライトシステムとしての最初の機体は、「一年戦争」時(『機動戦士ガンダム』)に登場する「要撃爆撃機 ドダイYS」だとされている。ザクグフなど、飛行能力を持たない、地上での移動に制限を受けるモビルスーツを搭載して輸送するのに使われた。また『ガンダム』本編の第23話ではグフを搭載して対地攻撃を行っており、以後のガンダムシリーズではサブフライトシステムは輸送よりも正面戦闘に多用されている。

テレビシリーズでは、ドダイYS登場以前の第15話で、小型偵察機ルッグンが主翼に自分より巨大なザクをぶら下げて離れ小島まで飛行するシーンがある。また、同じくテレビシリーズのみに登場したGファイターガンダムを支援する専用の大型戦闘機であるが、機体上部にガンダムを乗せて飛行したこともあり、地球連邦軍における、サブフライトシステムの先駆けと見ることもできる。Gスカイも同様の運用が可能だが、このシーンはGスカイのサイズが設定より大きく描かれている(コア・ファイターの部分がガンダムが乗れるほどの大きさになっている)。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、Gファイターに代わって、コア・ブースターが、ガンダムやGMのサブフライトシステムの役目を果たしている。これら一年戦争当時の機体は、いずれも有人操縦だった。

その後、プラモデル用企画『MS-X』にてスキウレスクートなどの移動砲台や、Gアーマーを発展させたガンキャリーなど、後のサブフライトシステムの範疇に収まる何種類かのオプション兵装が用意された。

グリプス戦役(『機動戦士Ζガンダム』)の頃にはサブフライトシステムはほぼ一般化し、モビルスーツを用いた戦術の一端を担う存在として成熟している。大気圏内用のドダイ改ベースジャバーフライングアーマー、宇宙用のゲターシャクルズ(サブフライトシステムというよりは増速用ブースターとする見方もある)の他、エゥーゴ所属のTMS・Ζガンダムがウェイブライダー形態でモビルスーツを搭載し、大気圏突入を敢行した事例も見られた(この時は百式を搭載した。後の第一次ネオ・ジオン抗争でもキュベレイMk-IIを搭載している)。また、モビルスーツ側からのSFSの操縦が可能となり、以降の時代ではほぼ無人で運用されるが、有人での操縦も可能なようにコクピットが設置されている機体や、MSの代わりに大型コンテナを搭載した有人輸送機型も存在している。

第二次ネオ・ジオン抗争(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』)の頃になると、ベースジャバーやシャクルズのようなサブフライトシステムに対する総称として、「下駄(ゲタ)」という愛称がパイロットの間に広まっているという描写が登場する[注釈 1][1][2]。語源は日本の履物である下駄にあるらしいが[2]、そのことを知らずにそう呼んでいるパイロットが大半であるとされる[1]。劇中ではベースジャバーをミサイルのように質量兵器として敵にぶつける戦法が披露された。また、後年の『機動戦士ガンダムUC』でも同様に、宇宙用のベースジャバー(89式ベースジャバー)を「ゲタ」という通称で呼んでいる描写が登場する[3]

小説版『ガンダムUC』には「エルキャックLCAC)」と呼ばれるエア・クッション型揚陸艇が水上・陸上両用型のサブフライトシステムとして登場している。

ザンスカール戦争(『機動戦士Vガンダム』)で登場したアインラッドツインラッドは、攻防の両面で能力を発揮する上、地形を問わずに運用できるという優秀な兵器であった。戦闘中に敵に奪われることがあったため、背中から伸びたアームの先にアインラッドを取り付け、非使用時には折り畳んで持ち運べるようにしたモビルスーツも開発されている。この時代には、ビームローターやミノフスキーフライトシステム等の普及により、モビルスーツ単独での飛行能力も既に実用レベルにまで達していたが、リガ・ミリティア側では従来型のサブフライトシステムの延長線上の機体であるセッターが運用されている。

宇宙世紀0200年代を舞台とする小説『ガイア・ギア』では、モビルスーツに代わって「マン・マシーン」と呼ばれる兵器が登場、戦場の主役になっている。本作ではサブフライトシステムは登場しない。ガウッサは単独での飛行能力を持っているかどうかは不明だが、「ロングドライユニット」を装備して戦闘空域での航続距離を伸ばしている。

宇宙世紀0220年代を舞台とした作品『G-SAVIOUR』では、ゲームソフト版において大気圏内の描写がなされ、ゲームシステム上では地上戦のみが行われているが、設定では一部の機体が腰部分に専用のユニットを装着することで長時間の飛行を行えるとされる他、イベント中に空中を飛行する艦船から直接モビルスーツが問題なく飛び立って発進したり、撤退の際にモビルスーツがそのまま飛び去っていく描写などがあり、モビルスーツ単体の飛行能力も向上していることが窺える。そのためか、従来のサブフライトシステムに相当するような機体は特に登場しない。

『機動武闘伝Gガンダム』

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機動武闘伝Gガンダム』では作品の性質上、使用頻度こそ多くないものの、モビルファイター輸送用のカプセルであるブッドキャリアーがサブフライトシステムとしての機能を持つ。

また、サーフボードのように搭乗し、サブフライトシステムとして使用可能なシールドを持つガンダムマックスター、台座のような形態に変形することで大気圏突破すら可能とさせる強力なサブフライトシステムとなる風雲再起が存在する。

『機動戦士ガンダムSEED』

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機動戦士ガンダムSEED』では、ザフト軍の大気圏内用無人サブフライトシステムとしてグゥルが開発されており、単独での飛行が不可能なモビルスーツを搭載して空戦を行っている。

可変モビルスーツレイダーガンダムは、モビルアーマー形態に変形することでモビルスーツを機体上部に搭載したまま飛行することが可能である。また、ジャスティスガンダムとその後継機インフィニットジャスティスガンダムは、背面に装備しているファトゥム-00(ファトゥム-01)がサブフライトシステムとして機能する。

機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では、ほとんどの機体が単独での飛行能力を得たことで、新規のサブフライトシステムは登場していない。ただしザクウォーリアなど飛行能力を持たない機体も新たに開発されており、グゥルの運用が引き続き行われている。

『機動戦士ガンダムAGE』

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機動戦士ガンダムAGE』においては、第3部にあたるキオ編にて、地球連邦軍の運用するサブフライトシステムとしてウェイボードが登場する。ウェイボードは立方体状の胴体の四方に配置された高出力スラスターにより、上部にモビルスーツ1機を搭載しての垂直離着陸や巡航飛行、および戦闘機動を可能としている。

第3部の時点においては可変モビルスーツであるクランシェが地球連邦軍の主力量産機となっており、ウェイボードはそれ以前に運用されていたジェノアスOカスタムアデルマークIIなどといった非可変モビルスーツを支援するために運用されている。基本的に機体制御はモビルスーツ側から行われるが、単体での自動飛行も可能であり、劇中では戦闘の他に解除不能な爆弾を上空で爆破処理する際にも使用された。

『ガンダム Gのレコンギスタ』

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「リギルド・センチュリー」の世界を舞台とした作品『ガンダム Gのレコンギスタ』では、依然モビルスーツが高い飛行能力を持つ一方で、戦場への輸送や連携攻撃にサブフライトシステムが多用されている。各陣営のいずれもが有人機で、武装も施され、輸送機も兼ねているために比較的広いキャビンを持つ機体もある。なお、サブフライトシステム1機にモビルスーツ2機が搭乗することも可能である。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』

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機動戦士ガンダム 水星の魔女』においては、サブフライトシステムとしてティックバランが登場する。MSを積載する他に、牽引用のフックが装備されている。

脚注

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注釈

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  1. ^ ただし「機動戦士ガンダムΖΖ」において、ブライト・ノアがアーガマからドダイ改に百式を搭載して射出する際に「下駄に載せろ」と発言する描写がある。

出典

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  1. ^ a b 富野由悠季『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』(初版)角川書店角川文庫〉、1988年2月20日、92頁。ISBN 4-04-410109-4 
  2. ^ a b 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 劇場版』学習研究社別冊アニメディア〉、1988年4月10日、78頁。 
  3. ^ 機動戦士ガンダムUC』原作小説第1, 8, 10巻、OVA版Episode6。