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1975年のワールドシリーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1975年ワールドシリーズ
チーム 勝数
シンシナティ・レッズNL 4
ボストン・レッドソックスAL 3
シリーズ情報
試合日程 10月11日–22日
観客動員 7試合合計:30万8272人
1試合平均:04万4039人
MVP ピート・ローズ(CIN)
ALCS BOS 3–0 OAK
NLCS CIN 3–0 PIT
殿堂表彰者 スパーキー・アンダーソン(CIN監督)
ジョニー・ベンチ(CIN捕手)
ジョー・モーガン(CIN内野手)
トニー・ペレス(CIN内野手)
カールトン・フィスク(BOS捕手)
カール・ヤストレムスキー(BOS外野手)
チーム情報
シンシナティ・レッズ(CIN)
シリーズ出場 3年ぶり7回目
GM ボブ・ホーサム
監督 スパーキー・アンダーソン
シーズン成績 108勝54敗・勝率.667
NL西地区優勝
分配金 選手1人あたり1万9060.45ドル[1]

ボストン・レッドソックス(BOS)
シリーズ出場 8年ぶり8回目
GM ディック・オコンネル
監督 ダレル・ジョンソン
シーズン成績 095勝65敗・勝率.594
AL東地区優勝
分配金 選手1人あたり1万3325.86ドル[1]
全米テレビ中継
放送局 NBC
実況 カート・ガウディ(第1・3・5・7戦)
ジョー・ガラジオーラ・シニア(第2・4・6戦)
解説 トニー・クーベック(全試合)
ディック・ストックトン(第1・6戦)
ネッド・マーティン(第2・7戦)
マーティー・ブレナマン(第3~5戦)
平均視聴率 28.3%(前年比3.1ポイント上昇)[2]
ワールドシリーズ
 < 1974 1976 > 

1975年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第72回ワールドシリーズ英語: 72nd World Series)は、10月11日から22日にかけて計7試合が開催された。その結果、シンシナティ・レッズナショナルリーグ)がボストン・レッドソックスアメリカンリーグ)を4勝3敗で下し、35年ぶり3回目の優勝を果たした。

両チームの対戦はシリーズ史上初めて。サヨナラゲームが2試合あったのは1924年以来史上2度目であるほか、9回に同点または勝ち越しの試合が3試合、1点差試合が5試合を数えるなど接戦続きだった[3]。今シリーズは史上屈指の名勝負として高く評価されている[4]シリーズMVPには、第2戦から6試合連続安打を記録し第7戦の7回表に同点適時打を放つなど、7試合で打率.370・2打点OPS.966という成績を残したレッズのピート・ローズが選出された。

MLBにおいて指名打者(DH)制度は、1973年にアメリカンリーグでのみ導入された。しかしワールドシリーズでは、同年から今回までの3年間、DH制は一切採用されていない[5]

試合結果

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1975年のワールドシリーズは10月11日に開幕し、途中に移動日と雨天順延を挟んで12日間で7試合が行われた。日程・結果は以下の通り。

日付 試合 ビジター球団(先攻) スコア ホーム球団(後攻) 開催球場
10月11日(土) 第1戦 シンシナティ・レッズ 0-6 ボストン・レッドソックス フェンウェイ・パーク
10月12日(日) 第2戦 シンシナティ・レッズ 3-2 ボストン・レッドソックス
10月13日(月) 移動日
10月14日(火) 第3戦 ボストン・レッドソックス 5-6x シンシナティ・レッズ リバーフロント・スタジアム
10月15日(水) 第4戦 ボストン・レッドソックス 5-4 シンシナティ・レッズ
10月16日(木) 第5戦 ボストン・レッドソックス 2-6 シンシナティ・レッズ
10月17日(金) 移動日
10月18日(土) 第6戦 雨天順延 フェンウェイ・パーク
10月19日(日) 第6戦 雨天順延
10月20日(月) 第6戦 雨天順延
10月21日(火) 第6戦 シンシナティ・レッズ 6-7x ボストン・レッドソックス
10月22日(水) 第7戦 シンシナティ・レッズ 4-3 ボストン・レッドソックス
優勝:シンシナティ・レッズ(4勝3敗 / 35年ぶり3度目)

第1戦 10月11日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
7回表、デーブ・コンセプシオンの左前に落ちそうな打球を左翼手カール・ヤストレムスキーが好捕でアウトに(42秒)
7回裏、レッドソックス打線が一挙6点を先制(2分23秒)
レッドソックス先発投手ルイス・ティアントが完封勝利を挙げる(1分12秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
シンシナティ・レッズ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0
ボストン・レッドソックス 0 0 0 0 0 0 6 0 X 6 12 0
  1. 勝利ルイス・ティアント(1勝)  
  2. 敗戦ドン・ガレット(1敗)  
  3. 審判
    [球審]アート・フランツ(AL)
    [塁審]一塁: ニック・コロシ(NL)、二塁: ラリー・バーネット(AL)、三塁: ディック・ステーロ(NL)
    [外審]左翼: ジョージ・マロニー(AL)、右翼: サッチ・デビッドソン(NL)
  4. 昼間試合 試合時間: 2時間27分 観客: 3万5205人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
シンシナティ・レッズ ボストン・レッドソックス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 P・ローズ 1 D・エバンス
2 J・モーガン 2 D・ドイル
3 J・ベンチ 3 C・ヤストレムスキー
4 T・ペレス 4 C・フィスク
5 G・フォスター 5 F・リン
6 D・コンセプシオン 6 R・ペトロセリ
7 K・グリフィー 7 R・バールソン
8 C・ジェロニモ 8 C・クーパー
9 D・ガレット 9 L・ティアント
先発投手 投球 先発投手 投球
D・ガレット L・ティアント

レッドソックスの先発投手ルイス・ティアントキューバ出身である。この日、フェンウェイ・パークではティアントの両親が息子の登板を観ていた。アメリカ合衆国とキューバは、1959年のキューバ革命成立とその後の関係悪化により、1961年に国交を断絶した。キューバが国内でのプロフェッショナルスポーツ制度を禁止する一方、ティアントはアメリカ合衆国でプロ選手として活動することを選び、キューバに残る両親とは離れ離れになった。レッドソックスでのティアントの活躍を受けて、マサチューセッツ州選出の連邦議会上院議員エドワード・ブルック共和党)がキューバの首相フィデル・カストロ宛に、両親の特例による訪米許可を要請する書簡をしたためた。この書簡がブルックからサウスダコタ州選出の同議員ジョージ・マクガヴァン民主党)に託され、マクガヴァンが5月のキューバ訪問時にカストロへ渡したことで、カストロの許可がおりてティアント親子の再会が実現した[6]

ティアントは最初の3イニングでひとりの出塁も許さず、4回表以降は一転して3イニング連続で二塁に走者を背負うものの、無失点で切り抜ける。一方レッズの先発投手ドン・ガレットも、1回・2回・5回・6回と4度も複数走者を出塁させながら本塁は踏ませず、試合は6回終了時点で0-0のまま。ティアントは、7回表の投球で二死一・二塁とされるが、9番ガレットを二直に打ち取り危機を脱する。さらにその裏、先頭打者として打席に入るとガレットから左前打を放ち出塁した。これをきっかけにレッドソックスは無死満塁の好機を迎え、3番カール・ヤストレムスキーの右前打で先制点を挙げた。レッズはここでクレイ・キャロルに継投したが、4番カールトン・フィスク四球を選び押し出し。後続も3番手ウィル・マッケナニーから2安打犠牲フライで4点を加え、レッドソックス打線はこの回6点を奪った。ティアントはその後の8回・9回を三者凡退に抑え、完封勝利を挙げた。

第2戦 10月12日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
9回表二死三塁、デーブ・コンセプシオンの内野安打でレッズが同点に追いつく(54秒)
そのあと二死二塁から、ケン・グリフィーの適時二塁打でレッズが逆転(33秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
シンシナティ・レッズ 0 0 0 1 0 0 0 0 2 3 7 1
ボストン・レッドソックス 1 0 0 0 0 1 0 0 0 2 7 0
  1. 勝利ローリー・イーストウィック(1勝)  
  2. 敗戦ディック・ドラゴ(1敗)  
  3. 審判
    [球審]ニック・コロシ(NL)
    [塁審]一塁: ラリー・バーネット(AL)、二塁: ディック・ステーロ(NL)、三塁: ジョージ・マロニー(AL)
    [外審]左翼: サッチ・デビッドソン(NL)、右翼: アート・フランツ(AL)
  4. 昼間試合 試合時間: 2時間38分 観客: 3万5205人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
シンシナティ・レッズ ボストン・レッドソックス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 P・ローズ 1 C・クーパー
2 J・モーガン 2 D・ドイル
3 J・ベンチ 3 C・ヤストレムスキー
4 T・ペレス 4 C・フィスク
5 G・フォスター 5 F・リン
6 D・コンセプシオン 6 R・ペトロセリ
7 K・グリフィー 7 D・エバンス
8 C・ジェロニモ 8 R・バールソン
9 J・ビリンガム 9 B・リー
先発投手 投球 先発投手 投球
J・ビリンガム B・リー

この日はレッドソックスが初回から、4番カールトン・フィスクの右前打で先制する。レッズは4回表一死一・三塁で、4番トニー・ペレスが遊ゴロに打ち取られたものの、一塁走者二塁封殺の間に三塁走者ジョー・モーガンが生還して同点に追いついた。6回裏、レッドソックスは二死一・二塁から6番リコ・ペトロセリの中前打で1点を勝ち越し。その後は両チームとも得点を挙げられず、2-1でレッドソックスがリードしたまま8回を終える。

レッドソックスの先発投手ビル・リーは9回表もマウンドに上がるが、先頭打者ジョニー・ベンチ二塁打を浴び降板する。レッズは4番ペレスと5番ジョージ・フォスターディック・ドラゴに打ち取られ、ベンチを三塁へ進めながらも、あと1アウトで連敗というところに追い込まれた。しかし6番デーブ・コンセプシオンは中前へ抜けそうな打球を放ち、二塁手デニー・ドイルが捕球するも一塁へ投げられず、ベンチがその間に同点のホームを踏んだ。さらにコンセプシオンが盗塁したあと、次打者ケン・グリフィーが左中間への逆転二塁打でコンセプシオンを還し、レッズが土壇場で逆転した。その裏、8回から登板の4番手ローリー・イーストウィックが2イニング目を三者凡退で締め、レッズが1勝1敗のタイにした。

第3戦 10月14日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
2回表、カールトン・フィスクのソロ本塁打でレッドソックスが先制(44秒)
9回表、ドワイト・エバンスの2点本塁打でレッドソックスが同点に(47秒)
10回裏無死一塁、バントの打球を捕手フィスクが二塁へ悪送球し二・三塁に。レッドソックスは打者エド・アームブリスターの守備妨害を主張も認められず(2分57秒)
その後一死満塁からジョー・モーガンがサヨナラ打を放ち、レッズが2勝目(37秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 R H E
ボストン・レッドソックス 0 1 0 0 0 1 1 0 2 0 5 10 2
シンシナティ・レッズ 0 0 0 2 3 0 0 0 0 1x 6 7 0
  1. 勝利ローリー・イーストウィック(2勝)  
  2. 敗戦ジム・ウィロビー(1敗)  
  3. 本塁打
    BOS:カールトン・フィスク1号ソロ、バーニー・カーボ1号ソロ、ドワイト・エバンス1号2ラン
    CIN:ジョニー・ベンチ1号2ラン、デーブ・コンセプシオン1号ソロ、シーザー・ジェロニモ1号ソロ
  4. 審判
    [球審]ラリー・バーネット(AL)
    [塁審]一塁: ディック・ステーロ(NL)、二塁: ジョージ・マロニー(AL)、三塁: サッチ・デビッドソン(NL)
    [外審]左翼: アート・フランツ(AL)、右翼: ニック・コロシ(NL)
  5. 夜間試合 試合時間: 3時間3分 観客: 5万5392人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ボストン・レッドソックス シンシナティ・レッズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 C・クーパー 1 P・ローズ
2 D・ドイル 2 K・グリフィー
3 C・ヤストレムスキー 3 J・モーガン
4 C・フィスク 4 T・ペレス
5 F・リン 5 J・ベンチ
6 R・ペトロセリ 6 G・フォスター
7 D・エバンス 7 D・コンセプシオン
8 R・バールソン 8 C・ジェロニモ
9 R・ワイズ 9 G・ノーラン
先発投手 投球 先発投手 投球
R・ワイズ G・ノーラン

フェンウェイ・パークでの最初の2試合では本塁打が1本も出なかったが、舞台をリバーフロント・スタジアムに移しての最初の試合では両チーム合わせて6本塁打が飛び交った。まず2回表、レッドソックスが4番カールトン・フィスクのソロ本塁打で先制する。レッズは4回裏に5番ジョニー・ベンチの2点本塁打で逆転し、5回裏には先頭打者デーブ・コンセプシオンシーザー・ジェロニモの2者連続本塁打などでリードを4点に広げた。レッドソックスは6回表に5番フレッド・リン犠牲フライで1点を返し、7回表にも代打バーニー・カーボのソロ本塁打で2点差に詰め寄った。そして9回表、一死一塁で7番ドワイト・エバンスローリー・イーストウィックから同点の2点本塁打を放ち、5-5で試合は延長戦に突入した。

10回表、イーストウィックは先頭打者デニー・ドイル安打を許すが、フィスクを併殺に打ち取り無失点で終える。その裏、レッズも先頭打者ジェロニモが安打で出塁した。ここで投手のイーストウィックに打順がまわり、レッズは代打にエド・アームブリスターを起用して犠牲バントを試みた。アームブリスターは2球目をバントし、打球を処理しようとした捕手フィスクとぶつかる。フィスクはボールを捕って二塁へ送球したが逸れ、一塁走者ジェロニモは三塁へ、打者走者アームブリスターも二塁へ進んだ。レッドソックスは、このプレイに対しアームブリスターの守備妨害ではないかと抗議するが判定は覆らず、1番ピート・ローズ敬遠して満塁策を採る。一死後、3番ジョー・モーガンが中前打でジェロニモを還し、レッズがサヨナラ勝利を挙げた。

第4戦 10月15日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
4回表、レッドソックス打線が3本の適時打に敵失も絡め5得点で逆転(57秒)
9回裏一死一・二塁、ケン・グリフィーの打球を中堅手フレッド・リンが好捕し走者の進塁を許さず(48秒)
次打者ジョー・モーガンは一飛で試合終了、ルイス・ティアントが完投勝利(44秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ボストン・レッドソックス 0 0 0 5 0 0 0 0 0 5 11 1
シンシナティ・レッズ 2 0 0 2 0 0 0 0 0 4 9 1
  1. 勝利ルイス・ティアント(2勝)  
  2. 敗戦フレッド・ノーマン(1敗)  
  3. 審判
    [球審]ディック・ステーロ(NL)
    [塁審]一塁: ジョージ・マロニー(AL)、二塁: サッチ・デビッドソン(NL)、三塁: アート・フランツ(AL)
    [外審]左翼: ニック・コロシ(NL)、右翼: ラリー・バーネット(AL)
  4. 夜間試合 試合時間: 2時間52分 観客: 5万5667人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ボストン・レッドソックス シンシナティ・レッズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 J・ベニケス 1 P・ローズ
2 D・ドイル 2 K・グリフィー
3 C・ヤストレムスキー 3 J・モーガン
4 C・フィスク 4 T・ペレス
5 F・リン 5 J・ベンチ
6 R・ペトロセリ 6 G・フォスター
7 D・エバンス 7 D・コンセプシオン
8 R・バールソン 8 C・ジェロニモ
9 L・ティアント 9 F・ノーマン
先発投手 投球 先発投手 投球
L・ティアント F・ノーマン

レッドソックスの先発投手ルイス・ティアントは、第1戦の完封勝利から中3日で再び先発し、この日は初回から3安打を浴び2点を失った。しかし4回表、レッドソックスは一死二・三塁から7番ドワイト・エバンスと8番リック・バールソンの連続長打で3点を奪い逆転に成功、相手先発フレッド・ノーマンを降板させる。2番手ペドロ・ボーボンからも3番カール・ヤストレムスキーの適時打などで2点を加えた。その直後の4回裏、ティアントは二死から3連打で2点を返され、なおも三塁に同点の走者を背負ったものの、最後は代打テリー・クロウリー三振に仕留めて同点にはさせなかった。ティアントは5回裏に二死二・三塁、9回裏に一死一・二塁の危機を迎えるも、後続を断って1点リードを守りきり、この日も完投勝利を収めた。

第5戦 10月16日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
レッズのトニー・ペレスが4回裏に同点ソロ本塁打、6回裏に3点本塁打を放ち4打点を挙げる(1分14秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
ボストン・レッドソックス 1 0 0 0 0 0 0 0 1 2 5 0
シンシナティ・レッズ 0 0 0 1 1 3 0 1 X 6 8 0
  1. 勝利ドン・ガレット(1勝1敗)  
  2. セーブローリー・イーストウィック(2勝1S)  
  3. 敗戦レジー・クリーブランド(1敗)  
  4. 本塁打
    CIN:トニー・ペレス1号ソロ・2号3ラン
  5. 審判
    [球審]ジョージ・マロニー(AL)
    [塁審]一塁: サッチ・デビッドソン(NL)、二塁: アート・フランツ(AL)、三塁: ニック・コロシ(NL)
    [外審]左翼: ラリー・バーネット(AL)、右翼: ディック・ステーロ(NL)
  6. 夜間試合 試合時間: 2時間23分 観客: 5万6393人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ボストン・レッドソックス シンシナティ・レッズ
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 J・ベニケス 1 P・ローズ
2 D・ドイル 2 K・グリフィー
3 C・ヤストレムスキー 3 J・モーガン
4 C・フィスク 4 J・ベンチ
5 F・リン 5 T・ペレス
6 R・ペトロセリ 6 G・フォスター
7 D・エバンス 7 D・コンセプシオン
8 R・バールソン 8 C・ジェロニモ
9 R・クリーブランド 9 D・ガレット
先発投手 投球 先発投手 投球
R・クリーブランド D・ガレット

レッドソックスは初回表、2番デニー・ドイル三塁打で出塁し、次打者カール・ヤストレムスキー犠牲フライで先制点を挙げる。レッズの先発投手ドン・ガレットは2回以降は立ち直り、4回表まで3イニング連続でレッドソックス打線を三者凡退に封じた。レッズは4回裏に5番トニー・ペレスのソロ本塁打で同点に追いつくと、5回裏には1番ピート・ローズ二塁打でガレットが一塁から勝ち越しのホームを踏んだ。さらに6回裏にも、無死二・三塁からペレスがこの日2本目の本塁打を放ち、5-1と突き放した。ペレスは今シリーズ初戦からこの日の第1打席まで、15打数無安打の不振に陥っていたが、2本塁打で挽回した[7]。ガレットは9回表二死から3連打で2点目を失い、ローリー・イーストウィックにマウンドを譲って完投こそ逃したものの、2失点で勝利投手となった。レッズはシリーズ3勝目を挙げ、優勝に王手をかけた。

第6戦 10月21日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
初回裏、フレッド・リンの3点本塁打でレッドソックスが先制(54秒)
5回表、ケン・グリフィーの2点三塁打でレッズが1点差に詰め寄る。打球を追った中堅手リンはフェンスに衝突し、しばらく動けず(2分59秒)
一死後、ジョニー・ベンチの適時打でグリフィーが還りレッズが同点に(41秒)
7回表二死一・三塁、ジョージ・フォスターの中越え二塁打でレッズが2点を勝ち越し(28秒)
8回表、先頭打者シーザー・ジェロニモの本塁打でレッズがリードを3点に広げる(47秒)
8回裏二死一・三塁、代打バーニー・カーボの3点本塁打でレッドソックスが同点に追いつく(1分18秒)
9回裏無死満塁、リンの左飛で三塁走者デニー・ドイルがタッチアップし生還を狙うも、左翼手フォスターの送球でアウトに(1分18秒)
10回表二死二塁、代打ダン・ドリーセンの飛球を左翼手カーボがフェンス際で捕ってイニング終了(50秒)
11回表無死一塁、グリフィーが犠牲バント失敗(30秒)
次打者ジョー・モーガンの打球を右翼手ドワイト・エバンスが背走しながら捕球し、併殺を完成させる(49秒)
12回表二死一・二塁、リック・ワイズがジェロニモを見逃し三振に仕留めてイニング終了(26秒)
12回裏、先頭打者カールトン・フィスクの飛球が左翼ポールを直撃し、レッドソックスがサヨナラ勝ち(1分)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 R H E
シンシナティ・レッズ 0 0 0 0 3 0 2 1 0 0 0 0 6 14 0
ボストン・レッドソックス 3 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 1x 7 10 1
  1. 勝利リック・ワイズ(1勝)  
  2. 敗戦パット・ダーシー(1敗)  
  3. 本塁打
    CIN:シーザー・ジェロニモ2号ソロ
    BOS:フレッド・リン1号3ラン、バーニー・カーボ2号3ラン、カールトン・フィスク2号ソロ
  4. 審判
    [球審]サッチ・デビッドソン(NL)
    [塁審]一塁: アート・フランツ(AL)、二塁: ニック・コロシ(NL)、三塁: ラリー・バーネット(AL)
    [外審]左翼: ディック・ステーロ(NL)、右翼: ジョージ・マロニー(AL)
  5. 夜間試合 試合時間: 4時間1分 観客: 3万5205人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
シンシナティ・レッズ ボストン・レッドソックス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 P・ローズ 1 C・クーパー
2 K・グリフィー 2 D・ドイル
3 J・モーガン 3 C・ヤストレムスキー
4 J・ベンチ 4 C・フィスク
5 T・ペレス 5 F・リン
6 G・フォスター 6 R・ペトロセリ
7 D・コンセプシオン 7 D・エバンス
8 C・ジェロニモ 8 R・バールソン
9 G・ノーラン 9 L・ティアント
先発投手 投球 先発投手 投球
G・ノーラン L・ティアント

第6戦は本来18日に行われるはずが、長雨のため3日順延されて21日に開催された。両チームの先発投手は、レッドソックスは第4戦から中5日のルイス・ティアント、レッズは第3戦から中6日のゲイリー・ノーラン。初回裏、レッドソックスはノーランの立ち上がりを攻めたてて二死一・二塁とし、5番フレッド・リンの3点本塁打で先制する。レッズは5回表、一死一・三塁から2番ケン・グリフィーが2点三塁打、次打者アウトのあと4番ジョニー・ベンチが適時打を放ち同点に追いつく。7回表には二死一・三塁から6番ジョージ・フォスター二塁打で2点を勝ち越し、8回表にも8番シーザー・ジェロニモのソロ本塁打で点差を広げた。

8回裏、レッズの5番手投手ペドロ・ボーボンが3イニング目のマウンドに上がるが、先頭打者リンと次打者リコ・ペトロセリを続けて出塁させた。レッズはボーボンに代えてローリー・イーストウィックを投入し、走者を進めさせずに2アウトを奪う。ここで打順が投手のロジャー・モレットにまわり、レッドソックスはバーニー・カーボ代打に送った。カーボが5球目をとらえると、打球は中堅フェンスを越えて客席に飛び込み、同点の3点本塁打となった。カーボの代打本塁打は、第3戦に続き今シリーズ2本目である。1シリーズで代打本塁打2本を記録したのは、1959年チャック・エッセジアン以来史上2人目だった[8]

イーストウィックは9回裏にも無死一・三塁の危機を招いて降板した。レッズは4番カールトン・フィスク敬遠して満塁策を採り、左のウィル・マッケナニーを左打者リンと勝負させた。リンは初球に手を出し、左翼線へ浅い飛球を打ち上げる。三塁コーチのドン・ジマーは三塁走者デニー・ドイルに対し "No, no"(「行くな、行くな」)と制止したが、ドイルは "Go, go"(「行け、行け」)と聞き間違えたためタッチアップし、左翼手フォスターの送球に刺されて併殺となった[9]。レッドソックスはサヨナラ勝利の好機を逸し、試合は延長戦に入った。

10回以降は、レッズが勝ち越しの好機を逃し続けた。10回表は、7番デーブ・コンセプシオンが安打と盗塁得点圏へ進むが、後続が打ち取られる。11回表は、先頭打者ピート・ローズ死球で出塁しながらグリフィーが犠牲バントに失敗、3番ジョー・モーガン長打性の打球は右翼手ドワイト・エバンスの好捕に阻まれ、グリフィーが一塁へ戻れず併殺に。12回表は、一死一・二塁からコンセプシオンとジェロニモが倒れた。その裏、レッドソックスの先頭打者フィスクが、パット・ダーシーの2球目をとらえる。打球は左翼線を飛び、フィスクがフェアの側に「入れ、入れ」と手を振るなか、左翼ポールを直撃するサヨナラ本塁打となった。負ければ敗退という瀬戸際の試合を延長戦のサヨナラ本塁打で制したのは、このレッドソックスがシリーズ史上初だった[10]

第7戦 10月22日

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映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
2回表、ジョージ・フォスターが左翼フェンス直撃の安打を放つも、左翼手バーニー・カーボの返球により二塁でアウトに(44秒)
6回表、レッズがトニー・ペレスの2点本塁打で1点差に詰め寄る(40秒)
7回表、ピート・ローズの適時打でレッズが同点に追いつく(52秒)
9回表二死一・三塁、ジョー・モーガンの打球が中前に落ちレッズが1点勝ち越し(37秒)
9回裏、ウィル・マッケナニーがカール・ヤストレムスキーを中飛に打ち取り試合終了、レッズの優勝が決定(49秒)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
シンシナティ・レッズ 0 0 0 0 0 2 1 0 1 4 9 0
ボストン・レッドソックス 0 0 3 0 0 0 0 0 0 3 5 2
  1. 勝利クレイ・キャロル(1勝)  
  2. セーブウィル・マッケナニー(1S)  
  3. 敗戦ジム・バートン(1敗)  
  4. 本塁打
    CIN:トニー・ペレス3号2ラン
  5. 審判
    [球審]アート・フランツ(AL)
    [塁審]一塁: ニック・コロシ(NL)、二塁: ラリー・バーネット(AL)、三塁: ディック・ステーロ(NL)
    [外審]左翼: ジョージ・マロニー(AL)、右翼: サッチ・デビッドソン(NL)
  6. 夜間試合 試合時間: 2時間52分 観客: 3万5205人
    詳細: MLB.com Gameday / Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
シンシナティ・レッズ ボストン・レッドソックス
打順 守備 選手 打席 打順 守備 選手 打席
1 P・ローズ 1 B・カーボ
2 J・モーガン 2 D・ドイル
3 J・ベンチ 3 C・ヤストレムスキー
4 T・ペレス 4 C・フィスク
5 G・フォスター 5 F・リン
6 D・コンセプシオン 6 R・ペトロセリ
7 K・グリフィー 7 D・エバンス
8 C・ジェロニモ 8 R・バールソン
9 D・ガレット 9 B・リー
先発投手 投球 先発投手 投球
D・ガレット B・リー

レッドソックスは3回裏、相手先発ドン・ガレットを攻めたてて一死一・三塁とし、3番カール・ヤストレムスキーの右前打で先制点を挙げる。さらに二死満塁としたあと、リコ・ペトロセリドワイト・エバンスが2者連続の押し出し四球を選び、3-0とした。レッズ打線はビル・リーに封じられ、5回までは無得点だった。しかし6回表、4番トニー・ペレスが山なりのスローボールをとらえ、シリーズ第3号の2点本塁打として1点差に迫る。7回表、一死からケン・グリフィー四球で出塁し、レッドソックスはリーからロジャー・モレットへ継投した。二死一・二塁となったあと、1番ピート・ローズの中前打でグリフィーが生還し、レッズが同点に追いついた。

9回表、左の4番手ジム・バートンが登板するが、先頭打者グリフィーをフルカウントからの四球で歩かせた。続くシーザー・ジェロニモは初球に犠牲バントを決め、代打ダン・ドリーセンも二ゴロでグリフィーを三塁へ進めた。ローズの四球を挟み、2番ジョー・モーガンに打順がまわる。モーガンは3球で2ストライクと追い込まれたものの、5球目を中前へ運び、三塁走者グリフィーを還す勝ち越しの適時打とした。その裏、レッズのマウンドには左腕ウィル・マッケナニーが立った。レッドソックスは右打者を続けて代打に送ったが、マッケナニーはフアン・ベニケスを右飛、ボブ・モンゴメリーを遊ゴロに退ける。最後は3番ヤストレムスキーを中飛に打ち取り、レッズが35年ぶりのシリーズ制覇を達成した。

評価

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The perfect World Series, complete with five one-run games and the most famous extra-inning game in World Series history, Game 6, which ended with Carlton Fisk's down-the-line blast. Game 7 is one of the more underrated games in World Series history.
[訳]1点差試合が5試合あり、シリーズ史上最も有名な延長戦も擁する、素晴らしいシリーズ。その延長戦は第6戦で、カールトン・フィスクがポール直撃の一発で決着をつけた。第7戦の過小評価ぶりはシリーズ史上有数である。
ジョー・ポズナンスキー[11]

スポーティングニュース』のジェイソン・フォスターは、2017年のワールドシリーズ期間中に「今回のシリーズが皆の目を釘付けにする前に、よく『史上最高』として取りあげられていたシリーズは3つある」として、1991年2001年のシリーズとともにこの1975年を挙げた[12]。また同時期にWCBS-TV(CBSニューヨーク)のスティーブ・シルバーマンは、自身が観てきた1964年以降のシリーズ全52回を順位づけし、今シリーズを1位とした[13]。MLB.comのジョー・ポズナンスキーは2019年3月、シリーズの総得失点差や1点差試合および延長戦の多さなどを基準に最終第7戦までもつれたシリーズ全39回を順位づけし、今シリーズを1位とした[11]ESPNのサム・ミラーは2020年10月、出場2チームの実力がどれほど伯仲していたかやどれほど記憶に残るシリーズとなったかなどを基準に全116回のシリーズを順位づけし、こちらも今シリーズを1位とした[14]

ハードボール・タイムズ』のクリス・ジャフは2011年10月、歴代のポストシーズン各シリーズについて、面白さの数値化を試みた。「1点差試合は3ポイント、1-0の試合ならさらに1ポイント」「サヨナラゲームは10ポイント、サヨナラが本塁打によるものならさらに5ポイント」「7試合制のシリーズが最終戦までもつれれば15ポイント」などというように、試合経過やシリーズの展開が一定の条件を満たすのに応じてポイントを付与することで、主観的ではなく定量的な評価を行った。その結果、同年の両リーグ優勝決定戦まで全262シリーズの平均が45ポイントのところ、今シリーズは135.7ポイントを獲得した。これは当時106回を数えるワールドシリーズの中では1991年に次ぐ2位、地区シリーズやリーグ優勝決定戦を含めても3位の高得点だった[3]

脚注

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  1. ^ a b "World Series Gate Receipts," Baseball Almanac. 2019年9月15日閲覧。
  2. ^ "World Series Television Ratings," Baseball Almanac. 2019年9月15日閲覧。
  3. ^ a b Chris Jaffe, "The top ten postseason series of all-time," The Hardball Times, October 24, 2011. 2019年9月15日閲覧。
  4. ^ 出野哲也[編著] 『メジャー・リーグ球団史 ナショナル&アメリカン・リーグ30球団の全歴史』 言視舎、2018年、ISBN 978-4-86565-119-5、86頁・160-161頁。
  5. ^ John Cronin, "The Historical Evolution of the Designated Hitter Rule," Society for American Baseball Research, 2016. 2019年9月15日閲覧。
  6. ^ Tom Lawrence, Special to the American News, "Lawrence: Baseball fan McGovern made unusual pitch to Castro," aberdeennews.com, May 5, 2015. 2019年9月15日閲覧。
  7. ^ The Associated Press, "This Date In Baseball," Associated Press News, October 12, 2018. 2019年9月15日閲覧。
  8. ^ Jerry Crowe, "Essegian lived a dream, but someone pinched him," Los Angeles Times, October 23, 2006. 2019年9月15日閲覧。
  9. ^ Peter Gammons, "1975: The Sixth Game," ESPN.com, October 18, 2003. 2019年9月15日閲覧。
  10. ^ Albert Chen, "David Freese adds to postseason heroics as Cardinals top Pirates in Game 5," SI.com, October 10, 2013. 2019年10月5日閲覧。
  11. ^ a b Joe Posnanski, "Ranking every 7-game World Series," MLB.com, March 12, 2019. 2019年9月15日閲覧。
  12. ^ Jason Foster, "World Series 2017: Dodgers, Astros making case for best Fall Classic ever," Sporting News, October 31, 2017. 2019年9月15日閲覧。
  13. ^ Steve Silverman, "Silverman: Astros-Dodgers Not Yet An All-Time Great World Series," CBS New York, October 31, 2017. 2019年9月15日閲覧。
  14. ^ Sam Miller, "Ranking every World Series in MLB history," ESPN.com, October 30, 2020. 2021年12月7日閲覧。

外部リンク

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