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1,4-ブタンジオール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1,4-ブタンジオール
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識別情報
CAS登録番号 110-63-4 チェック
PubChem 8064
ChemSpider 13835209 チェック
UNII 7XOO2LE6G3 チェック
EC番号 203-786-5
DrugBank DB01955
ChEBI
ChEMBL CHEMBL171623 チェック
RTECS番号 EK0525000
特性
化学式 C4H10O2
モル質量 90.12 g mol−1
密度 1.0171 g/cm3 (20 °C)
融点

20.1 °C, 293 K, 68 °F

沸点

235 °C, 508 K, 455 °F

への溶解度 混和
エタノールへの溶解度 溶ける
磁化率 -61.5·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.4460 (20 °C)
危険性
GHSピクトグラム Acute Tox. (oral) 4
GHSシグナルワード 警告(WARNING)
Hフレーズ H302, H336
Pフレーズ P261, P264, P270, P271, P301+312, P304+340, P312, P330, P403+233, P405, P501
NFPA 704
1
1
0
引火点 121 °C (250 °F; 394 K)
発火点 350 °C (662 °F; 623 K)
関連する物質
関連するブタンジオール 1,2-ブタンジオール
1,3-ブタンジオール
2,3-ブタンジオール
cis-ブテン-1,4-ジオール
関連物質 スクシンアルデヒド
コハク酸
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

1,4-ブタンジオール (1,4-Butanediol) は、プラスチックなどの原料となる有機化合物であり、鎮静作用ももっている。ブタンジオールの4つの異性体のうちの1つであり、無色で粘度の高い液体である。ポリブチレンテレフタラート (PBT) などプラスチックや繊維の原料となる。また体内でγ-ヒドロキシ酪酸 (GHB) へと代謝され、代謝されていない状態でも向精神作用があると考えられている。

合成

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工業的にはアセチレンを2当量のホルムアルデヒドと反応させて1,4-ブチンジオールを作る[1]。これを水素化することによって1,4-ブタンジオールができる[1]

また、エステルとマレイン酸コハク酸の無水物を気相で水素化することによっても合成できる。

1982年に三菱化学は、ブタジエンを基質とする製法を工業化した。その方法ではパラジウム触媒と酢酸で 1,4-ジアセトキシ化した後、還元、加水分解を経て 1,4-ブタンジオールを得る。

利用

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1,4-ブタンジオールは工業的には溶媒として、またPET樹脂などのプラスチックや繊維の原料として用いられる。リン酸の存在下に高温で脱水され、重要な溶媒であるテトラヒドロフランになる[1][2]。1,4-ブタンジオールはまた、NMP(溶媒)やNVPPVPの原料)の前駆体であるγ-ブチロラクトンの原料となる[1]ルテニウム触媒の存在下、約200℃ではジオール部分が脱水素化されてγ-ブチロラクトンが生成する[3]

向精神薬として使われ、代謝産物のγ-ヒドロキシ酪酸 (GHB) と同様の効果を持つ[4]

事例報告によると、1,4-ブタンジオールは吸収時にGHBの形にならなくても強い感覚を起こさせることが指摘されている[5][6]。また、臓器のうち特に肝臓に損傷を与えることも指摘されている[5][7]。乱用は中毒や死を招くこともある[8][9][10]

薬物動態

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1,4-ブタンジオールはアルコールデヒドロゲナーゼアルデヒドデヒドロゲナーゼの触媒によってGHBに変換され、この2つの酵素の強さの比が作用や副作用の個人差につながる[5][11]。これらの酵素はアルコールの代謝にも関わっているため、薬物の危険性との間に強い相関がある[11][12]

2007年の事件

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オーストラリアで販売された中国製のBindeezという玩具が、1,4-ブタンジオールを含んでいるという理由で、2007年11月に卸業者によって回収された。この玩具では少量の水の中に小さなビーズが浮いているが、ガスクロマトグラフィーによってビーズから1,4-ブタンジオールが検出された[13]1,5-ペンタンジオールを使うべきところを、製造工場がコスト削減のために混入したと見られている。1,4-ブタンジオールの価格が1トン当たり1350-2800ドルなのに対して、1,5-ペンタンジオールの価格は1トン当たり9700ドルとなっている[14]

薬理作用

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1,4-ブタンジオールには2通りの薬効があると考えられている。主要な薬効は代謝物であるGHBによるものであるが、GHBへの変換を経ないでもアルコール様の薬理効果を持っているという証拠もある[12]

規制

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アメリカ合衆国では、政府は1,4-ブタンジオールの規制を行っていないが、いくつかの州では規制の対象に加えている。日本でも規制はされておらず、脱法ドラッグの一つとなっている。

出典

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  1. ^ a b c d 浅野泰資「THF, γ-ブチロラクトンの製造技術の発達について」『有機合成化学協会誌』第36巻第2号、有機合成化学協会、1978年、146-155頁、doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.36.146 
  2. ^ "Ethers, by Lawrence Karas and W. J. Piel". Kirk‑Othmer Encyclopedia of Chemical Technology. John Wiley & Sons, Inc. 2004.
  3. ^ J. Zhao, J. F. Hartwig "Acceptorless, Neat, Ruthenium-Catalyzed Dehydrogenative Cyclization of Diols to Lactones" Organometallics 2005, volume 24, 2441-2446.
  4. ^ Satta R, Dimitrijevic N, Manev H. Drosophila metabolize 1,4-butanediol into gamma-hydroxybutyric acid in vivo. Eur J Pharmacol. 2003 Jul 25;473(2-3):149-52. PMID 12892832
  5. ^ a b c "Murple". “1,4-Butanediol Toxicity”. The Lycaeum. 2007年11月11日閲覧。
  6. ^ "Itsuoda". “Nasty Headache: 1,4 BD, GBL & 5-MeO-DiPT”. Erowid. 2008年5月3日閲覧。
  7. ^ "Andro". “1,4-Butanediol Toxicity?”. Erowid. 2008年5月3日閲覧。
  8. ^ Zvosec DL, Smith SW, McCutcheon JR, Spillane J, Hall BJ, Peacock EA. Adverse events, including death, associated with the use of 1,4-butanediol. NEJM. 2001 Jan 11;344(2):87-94. PMID 11150358
  9. ^ Anonymous. “1,4-B is Not a Toy”. Erowid. 2008年5月3日閲覧。
  10. ^ "Elizabeth". “Definitely addictive: 1,4-Butanediol”. Erowid. 2008年5月3日閲覧。
  11. ^ a b Theodore I Benzer, Scott Cameron, Christopher S Russi (8 January 2007). “Toxicity, Gamma-Hydroxybutyrate”. eMedicine. 2008年5月3日閲覧。
  12. ^ a b Poldrugo, F.; Snead, O.C. 3rd. (1984). “1,4 Butanediol, gamma-hydroxybutyric acid and ethanol: relationships and interactions”. Neuropharmacology 59 (23): 109-113. PMID 6717752. 
  13. ^ Linda Wang (9 November 2007). “Industrial Chemical Sullies Popular Children's Toy”. Chemical & Engineering News. http://pubs.acs.org/cen/news/85/i46/8546news11.html 
  14. ^ Associated Press (7 November 2007). “US mother says her son began to stumble and vomit after eating Chinese-made toy, now recalled”. International Herald Tribune 

関連項目

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