道路情報板
道路情報板(どうろじょうほうばん)は、道路における情報(渋滞・交通事故・気象など)を提供する目的で設置される可変式の表示板。
呼び方は「道路情報板」以外に情報板[1]、道路情報掲示板[2]、道路情報表示装置[3]などがある。
概要
[編集]交通渋滞、交通事故、工事、交通規制、所要時間などの交通情報をリアルタイムに道路利用者に提供する装置の1つであり、路側あるいは道路上空で文字・イラスト・地図などにより情報を提供する[4]。
道路上の情報提供の手段には、通行止めや渋滞などの文字情報を提供する文字情報板、道路網の模式図上に交通状況を表示する図形情報板、主要地点(出口や本線分岐点)までの所要時間を表示する所要時間表示板などがあるが、情報提供のレベルは各国で異なる[5]。
道路情報板は走行中のすべての道路利用者に対して道路利用者の操作いらずで情報を提供できるメリットがある一方で、個人の好みの情報を選択できず優先的な事象1つか2つしか提供されないというデメリットがある[6]。また、表示できる文字数に上限があるため詳細な情報提供はできず、設置場所が固定されているため設置場所以外では情報提供できないという特徴がある[7]。
日本の道路情報板
[編集]高速道路の情報板
[編集]NEXCO各社(旧:日本道路公団)が管理する道路での道路情報板は以下の種類が存在する[8](電光掲示板)。
- A型情報板(インター流出部情報板)
- B型情報板(インター入口情報板)
- C型情報板(料金所情報板)
- D型情報板(トンネル入口情報板)
- E型情報板(トンネル内情報板)
- F型情報板(中間地点情報板)
- J型情報板(ジャンクション情報板)
- K型情報板(広域情報板)
上記のほか、必要に応じて休憩施設混雑表示板や所要時間情報板、図形情報板なども設置される[9]。渋滞多発区間では速度低下による渋滞を抑制するためサグ部での速度回復を促す情報や追突注意の啓発を行う渋滞予告板が設置されることがある[10]。また、都市高速道路でも独自の様式で情報板が設置される[11][12]。高速で走行するドライバーへの視認性を確保するため150 m手前からでも確認できるように文字高さは450 mmとしている[13]。
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B型情報板(インター入口情報板)
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D型情報板(トンネル入口情報板)
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J型情報板(ジャンクション情報板)
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K型情報板(広域情報板)
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図形情報板
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首都高速入口に設置されている道路情報板。
一般道路の情報板
[編集]道路管理者
[編集]一般道路で道路管理者が設置する道路情報板の仕様は「道路情報表示装置」として仕様が定められている。
1986年(昭和61年)にLED道路情報板(電光掲示板)が開発[14]されてからLEDを用いたものが主流である。3色表示可能なタイプは「NHL形」、15色表示可能なタイプは「HLM形」として仕様が定められている[15][16]。以下、NHL形・HLM形共通の表示部の寸法を示す[15][16]。
1形 | 2形 | 3形 | 4形 | 5形 | 6形 | 7形 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
表示部寸法(縦×横) | 2080×1920 | 2880×1920 | 4320×1440 | 6720×960 | 6720×1440 | 6720×480 | 3360×960 |
表示可能文字数 | 16文字 | 24文字 | 27文字 | 28文字 | 42文字 | 14文字 | 14文字 |
標準文字数 | 4文字4段
(16文字) |
6文字4段
(24文字) |
9文字3段
(27文字) |
14文字2段
(28文字) |
14文字3段
(42文字) |
14文字1段
(14文字) |
7文字2段
(14文字) |
それ以前は建設省によって定められた1972年(昭和47年)9月27日の通達に基づいて以下の3種類のものが設置されていた[3]。
- 道路情報表示装置A型:原則としてオーバーヘッド形式であるもの。
- 道路情報表示装置B型:原則として路側に設置し、表示幕により表示するもの。
- 道路情報表示装置C型:原則として路側に設置し、表示板により表示するもの。
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道路情報表示装置B型
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道路情報表示装置C型
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NHL形
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HLM形
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道路情報表示装置B型を模したLED情報板
警察
[編集]一般道路で警察が設置する道路情報板の仕様は警交仕規によって定められている[17]。以下に警交仕規による道路情報板の種類を列挙する。
- 警交仕規第19号 交通管制用可変標識(1976年)
- 警交仕規第42号 集中制御用フリーパタン式情報板(1982年)
- 警交仕規第52号 集中制御用セミフリーパタン式交通情報提供装置(1986年)
- 警交仕規第65号 マルチパタン式交通情報提供装置(1991年)
- 警交仕規第66号 専用パタン式交通情報提供装置(1991年)
- 警交仕規第220号 小型文字情報板(1996年)
- 警交仕規第221号 小型旅行時間情報板(1996年)
- 警交仕規第234号 マルチパタン式交通情報板(1998年)
- 警交仕規第235号 専用パタン式交通情報板(1998年)
- 警交仕規第1021号 交通情報板(2009年)
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マルチパタン式情報板
構造
[編集]道路情報板は主に表示部・制御部・電源部によって成り立つ[18]。
表示部はLEDチップを1つの透明樹脂レンズに封入したLED素子と、LED素子の駆動回路からなる表示ユニットを多数組み合わせて1つの画面を形成している[18]。制御部から送信された表示データ信号を駆動回路で受信し、個々のLED素子を点灯・消灯させて文字やシンボルを表示している[19]。
制御部は交通管制から送られた情報を送受信する「伝送ユニット」と表示部や電源部などの制御を行う「制御処理ユニット」によって構成される[13]。制御処理ユニットでは受信した情報によって表示部での文字位置や文字間隔の決定、文字フォントデータの読み込みなどの処理を行い表示部の点灯・消灯の制御を行う[13]。
電源部は表示部や制御部への給電を行い、同時に電源装置の故障や入出力電圧の異常値の検出などの状態監視を行う[13]。
整備の沿革
[編集]現場において手動で表示内容を変えるタイプの道路情報板は昭和30年台後半には既に登場していた[20]。しかし、情報提供が必要になる都度作業を行わなければならない欠点があった[21]。名神高速道路の開通当初も手動で表示内容を差し替えるタイプであったが、視認性の改良するため内部に照明を設けた字幕式に変更し、日本道路公団が管理する道路で標準的に採用するに至る[22]。
1966年(昭和41年)12月に日本で初めて遠隔操作による電光式道路情報板が岐阜県大垣市の国道21号(現在の岐阜県道31号岐阜垂井線)に設置された[21][23]。この頃から遠隔操作による道路情報板の設置が始まったとされる[24]。この当時の自動式の道路情報板は透光式、字幕式、電光式に分かれていた[3][24][25]。
昭和60年頃より省エネ・長寿命の利点を持ったLEDが道路情報板に採用された[24]。これに伴い、多様な表現が可能となり、道路利用者に提供できる情報の質と量が向上したと言える[26]。
欧米の道路情報板
[編集]フランス
[編集]フランスでは文字情報板と所要時間表示板が用いられているが、図形情報板は存在しない[5]。
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ドイツ
[編集]ドイツでは文字情報板のみ用いられており、図形情報板や所要時間表示板は存在しない[5]。
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イギリス
[編集]イギリスでは文字情報板と所要時間表示板が用いられているが、図形情報板は存在しない[5]。
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アメリカ
[編集]アメリカでは文字情報板と所要時間表示板が用いられているが、図形情報板は存在しない[5]。
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製造メーカー
[編集]脚注
[編集]- ^ NEXCO西日本:情報板の種類と見方(最終閲覧日:2017年9月12日)
- ^ 星和電機株式会社:高速道路情報表示システム AL形情報表示装置(最終閲覧日:2017年9月12日)
- ^ a b c 1972年9月27日、道企発第52号 (PDF)
- ^ 日本交通管理技術協会 2018, p. 27.
- ^ a b c d e 「使える」ハイウェイ政策の推進に向けて提言 (PDF) 国土交通省、2018年7月24日閲覧。
- ^ 高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会 2017, pp. 70–71.
- ^ 高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会 2017, p. 71.
- ^ “技術と設備の用語集 交通管理施設”. NEXCO東日本. 2017年9月12日閲覧。
- ^ 高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会 (2017-4-14). 高速道路交通管制技術ハンドブック (新版 ed.). 電気書院. pp. 72-74
- ^ 高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会 2017, p. 73.
- ^ “道路情報板の見方”. 阪神高速道路株式会社. 2017年10月2日閲覧。
- ^ “首都高の情報提供について”. 首都高速道路株式会社. 2017年10月2日閲覧。
- ^ a b c d 高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会 2017, p. 75.
- ^ “沿革”. 名古屋電機工業. 2017年9月12日閲覧。
- ^ a b “道路情報表示装置 NHL形表示機 機器仕様書” (PDF). 国土交通省 (2022年3月). 2023年12月8日閲覧。
- ^ a b “道路情報表示装置 HLM形表示機 機器仕様書” (PDF). 国土交通省 (2022年3月). 2023年12月8日閲覧。
- ^ 『日本の交通信号史 その後の40年』2016年8月、136頁。
- ^ a b 高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会 2017, p. 74.
- ^ 高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会 2017, pp. 74–75.
- ^ 例として鷹田吉憲・堂垣内尚弘 (1962-03-30). 道路の除雪. 理工図書. pp. 36-37
- ^ a b 小栗良知・馬場知秋 (7 1967). “遠隔操作方式交通情報板の設置”. 道路 315: 32-35.
- ^ 日本道路公団総務部 1976, p. 515.
- ^ “沿革”. 名古屋電機工業株式会社. 2017年10月2日閲覧。
- ^ a b c 山谷正人 (2012). “道路情報板の表示方式の変遷及び視認距離”. Kensetsu Denki Gijyutsu 176: 20.
- ^ 高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会 2017, p. 153.
- ^ “vol.07 名神高速道路、全線開通50周年”. NEXCO西日本. 2017年10月2日閲覧。
参考文献
[編集]- 日本道路公団総務部『日本道路公団二十年史』日本道路公団、1976年4月16日。
- 高速道路交通管制技術ハンドブック編集委員会(編)『高速道路交通管制技術ハンドブック』(第2版)電気書院、2017年4月14日。ISBN 978-4-485-66548-0。
- 日本交通管理技術協会『日本の交通管制』日本交通管理技術協会、2018年3月。