「国鉄ワム90000形貨車」の版間の差分
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2022年1月22日 (土) 09:14時点における版
国鉄ワム90000形貨車 | |
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ワム90000形、ワム123725 ワム23000形からの二段リンク改造のうち、ドアにリブのないタイプ | |
基本情報 | |
車種 | 有蓋車 |
運用者 | 日本国有鉄道 |
所有者 | 日本国有鉄道 |
製造所 | 国鉄工場、日本車輌製造他 |
製造年 | 1954年(昭和29年) - 1958年(昭和33年) |
製造数 | 3,395両 |
種車 | ワム23000形、トキ900形、ワム50000形 |
改造年 | 1953年(昭和28年) |
改造数 | 15,617両 |
消滅 | 1986年(昭和61年) |
主要諸元 | |
車体色 | 黒 |
軌間 | 1,067 mm |
全長 | 7,850 mm |
全幅 | 2,742 mm |
全高 | 3,740 mm |
荷重 | 15 t |
実容積 | 37.6 m3 |
自重 | 9.9 t |
換算両数 積車 | 2.0 |
換算両数 空車 | 1.0 |
走り装置 | 二段リンク式 |
車輪径 | 860 mm |
軸距 | 3,900 mm |
最高速度 | 75 km/h |
国鉄ワム90000形貨車(こくてつワム90000がたかしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が製作した 15 t 積の二軸有蓋車である。
本形式からの派生形式であるポム1形についても本項目で解説する。
概要
昭和20年代後半から貨車(特に二軸車)の速度向上のため研究を重ねた結果、1952年(昭和27年)の実験でばね吊り装置を二段リンク式にすることでこれまでより高速時の安定性が取れることが判明したため、翌年から標準形有蓋車として1938年から大量製作されていたワム23000形を名古屋工場で150両二段リンク化した際に新形式としてワム90000形式と付けられたのが始まりである。なお、番号が90000番台と大きくなった理由は「9」が試作の意味だからと言われている[1]。
製造初年は1953年(昭和28年)で、ワム90000形としての新製は翌1954年(昭和29年)から開始され、1958年(昭和33年)まで製作された。1969年(昭和44年)3月末での両数は、18,790両[2]であった。 床面高は1,090 mm、床面積は15.9 m2、走行装置は平軸受に12 t 長軸を使用しており、側面に片開き 1,700 mm の荷扱い用扉をもち、戦後の国鉄有蓋車の代表形式であるが、やがて国鉄の有蓋車は1958年(昭和33年)から製作されたワム70000形など、両開き扉を持ち近代的荷役に対応する形式に移行[3]した。
なお、ドアに横2本のリブのあるのが外見上の特徴であるが、ワム23000形の初期のものはこのリブがないため、この時期製造の車両を改造したものはリブがない。 ただし、後日番号をつけなおした車両が存在する[4]ため、戦後再生産組の番号(29998番以後)でもドアにリブのないものもある[5]。
1955年(昭和30年)8月より本形式車中250両が、だいだい色の帯線、「急行便」の標記が行われ、ワキ1形、ワキ1000形とともに急行貨物列車に運用された。
1959年(昭和34年)1月31日より急行便表示のある車(1958年(昭和33年)11月末日現在1,798両)に対して記号番号表記は特殊標記符号「キ」(急行)を前置し「キワム」と標記した。
1986年(昭和61年)に形式消滅した。
製造番号
ワム90000形は番号別に大きく分けると90000番台4,335両(ワム90000 - ワム94334)と123000番台14,672両(ワム123000 - ワム131809, ワム132000 - ワム133599, ワム135000 - ワム140534。欠番あり)に分かれ、前者は基本的に昭和28年以降の新製車であるのに対して、後者は昭和13年度からワム23000形として製作された車両を二段リンク改造した際に原番号に100000(十万)をプラスしてワム90000形に編入したものである。例外的に90000番台でも改造車が一部あり下記の通り[6]。
- 90000~90149:昭和28年に初のワム90000形となったワム23000の二段リンク初期改造車グループ。
- 90875~91174、91825~92224:国鉄工場でトキ900形を改造したグループ。
- 91775~91824、93725~93764:国鉄工場においてワム50000形を改造したグループ。
123000番台側にはワム90000形としての新製車は存在しないが、以下のような理由で番号が一部抜けている[7]。
- 元々ワム23000形時代から番号が抜けている。
- 戦中製造されたものは製造工場によっては戦争激化で割り当てられてた車両が製造中止になっている[8]。また戦後増備車も昭和21~24年製造の29998~31804には欠番があるので23000~31804の合計台数は8170両しかない。
- トキ900形からの改造車[9](実質は部品流用)が昭和25~27年にかけて1600両製造されたが、32000~33599と前述のグループと(31804)と番号が離れている。
- 戦後新製した車両は前述のように戦中の物のラストナンバー(29997)を引き継ぎ、29998~31804(欠番あり)となったが、上記のトキ900形改造車と同時期(昭和26~29年)増備の5535両は35000~40534とまた番号が離れている。
- ワム23000形では存在していたが、ワム90000形(123000番台)には該当番号がない。
- ワム23000形時代に廃車されているので二段リンク式改造を最後まで受けなかった。
- 昭和28年にワム90000~90149に真っ先に改造されたので123000番台に入っていない。
年度別製造数
各年度による製造会社(改造所)と両数は次のとおりである。
- 昭和28年度 - 150両
- (名古屋工場) 150両 ワム23000形よりの改造(ワム90000 - ワム90149)
- 昭和29年度 - 1,025両
- 新製車 725両(ワム90150 - ワム90874)
- (新津工場) 100両 トキ900形よりの改造(ワム90875 - ワム91174)
- (長野工場) 100両 トキ900形よりの改造(同上)
- (名古屋工場) 100両 トキ900形よりの改造(同上)
- 昭和31年度 - 1,050両
- 新製車 600両(ワム91175 - ワム91774)
- (名古屋工場) 50両 ワム50000形よりの改造(ワム91775 - ワム91824)
- (新津工場) 150両 トキ900形よりの改造(ワム91825 - ワム92224)
- (長野工場) 200両 トキ900形よりの改造(同上)
- (名古屋工場) 50両 トキ900形よりの改造(同上)
- 昭和32年度 - 1,540両
- 新製車 1,500両(ワム92225 - ワム93724)
- (名古屋工場) 40両 ワム50000形よりの改造(ワム93725 - ワム93764)
- 昭和33年度 - 570両
- 新製車 570両(ワム93765 - ワム94334)
- 昭和34年度 - 917両
- (旭川工場) 55両 ワム23000形よりの改造
- (五稜郭工場) 51両 ワム23000形よりの改造
- (盛岡工場) 30両 ワム23000形よりの改造
- (土崎工場) 160両 ワム23000形よりの改造
- (郡山工場) 50両 ワム23000形よりの改造
- (新津工場) 91両 ワム23000形よりの改造
- (新小岩工場) 70両 ワム23000形よりの改造
- (大宮工場) 45両 ワム23000形よりの改造
- (長野工場) 120両 ワム23000形よりの改造
- (浜松工場) 50両 ワム23000形よりの改造
- (高砂工場) 38両 ワム23000形よりの改造
- (多度津工場) 143両 ワム23000形よりの改造
- (幡生工場) 14両 ワム23000形よりの改造
特筆車両
- ワム91665(空気ばねつき二軸車)[10]
- 昭和32年8月、大宮工場で試験的に空気ばねを取り付けたがその後二段リンクに戻された。
- ワム92551・92552(簡易冷蔵車。レワム)[10]
- 冷蔵車不足を解消しようと普通有蓋車に保冷性能を施したが中途半端に終わった。
- ワム133170~133174(鋼板屋根車)[10]
- ワム90000形は通常屋根が木造に防水布だが、この5両のみ試験的に屋根まで鋼板を試用。構造は1両ずつ異なっており、例としてワム133174は張り上げ屋根だが、同じ張り上げ鋼板屋根の鉄製有蓋車達と異なり、普通の有蓋車であるため通気口が妻面にあり側柱は内側にある[11]。
派生形式
国鉄ポム1形貨車 | |
---|---|
基本情報 | |
車種 | 陶器車 |
運用者 | 日本国有鉄道 |
所有者 | 日本国有鉄道 |
種車 | ワム90000形 |
改造年 | 1958年(昭和33年) |
消滅 | 1986年(昭和61年) |
主要諸元 | |
車体色 | 黒 |
軌間 | 1,067 mm |
全長 | 7,850 mm |
全幅 | 2,742 mm |
全高 | 3,740 mm |
荷重 | 15 t |
実容積 | 37.6 m3 |
自重 | 10.5 t |
換算両数 積車 | 2.0 |
換算両数 空車 | 1.0 |
走り装置 | 二段リンク式 |
車輪径 | 860 mm |
軸距 | 3,900 mm |
最高速度 | 75 km/h |
ポム1形
15 t 積み陶器車で、1958年(昭和33年)から1965年(昭和40年)にかけて、192両(ポム1 - ポム192)が製造された。大半はワム90000形の改造車であるが、最初からポム1形として新製されたものも存在する。車内に取外し可能な棚などを追加[12]した以外はワム90000形と同一で、標記以外外観上の差異はない。
主に名古屋鉄道管理局内の貨物扱い駅の常備とされ、名古屋地区を中心に運用されたが、1986年(昭和61年)までに全車が廃車となった。
秩父鉄道ワム700型
秩父鉄道に存在した同型車で、ときには国鉄線への乗り入れもあった。
台鉄15C8000形
鋼板屋根化、台湾仕様により短軸、下作用式自動連結器以外、ワム90000形の同型車両。
脚注
- ^ (渡辺1979-2)p.131
- ^ 『貨車の知識』、p.108。
- ^ 以後の貨車との荷役効率の違いについて、昭和51年から52年にかけて荷役作業をしていた松本正司の体験談によると「ワム90000などは扉が狭く中が暗いので(ワム60000・70000などに比べ)積み下ろしが大変だった」としている。
(高橋政士・松本正司『貨物列車 機関車と貨車の分類と歴史がわかる本』株式会社秀和システム、2011年1月、ISBN 978-4-7980-2814-9、164。) - ^ 番号つけなおしがはっきりしているものでは『鉄道ファン』214号・p.133-134によると30126と31805~31809(注)の6両が該当し、番号上は戦後新製組だが、前者1両が戦中廃車の復帰(参考文献に元番号未記載)、後者5両が二車現存車があったため「23194重複→31805と31808」、「23718重複→31806と31809」、「23740重複→31807(もう一台はワム21000形だったのでそちらに編入)」とそれぞれ新しく番号をつけなおしたもの。
(注:「鉄道ファン」p.134本文中では二車現存車の改番は「31805~31808」だが、記述中に「31806と31809は23718の2車現存車」とあるため誤記と判断した。) - ^ RP 332, p.72。
- ^ (渡辺1979-2)p.132
- ^ (渡辺1979-2)p.132-134
- ^ 戦前戦中製造の内23000~28680までは連番だが、この辺から29997までは飛び飛びに番号が抜けているものがある。
- ^ ワム23000形になったものは車軸を長軸の物を用意したもののみ、トキ900の短軸をそのまま使った車両は「ワム2000形式」になっている。
- ^ a b c (渡辺1979-2)p.132-134
- ^ (渡辺1979-2)p.131右下写真
- ^ このため、自重はワム90000形に比べて 0.6 t 程度増えている。
参考文献
- 卯之木十三・森川克二 『国鉄客車・貨車ガイドブック』 誠文堂新光社 1975年 第3版。
- 輸送業務研究会『貨車の知識』交通日本社 1970年。
- 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1977年4月号 No.332 特集・貨車のすべて
- 渡辺 喜一「貨車千一夜 消えゆく貨車 ワム90000」『鉄道ファン 第19巻第2号(通巻214号、雑誌06459-2)』、株式会社交友社、1979年2月1日、130-134頁。
- 貨車技術発達史編纂委員会『日本の貨車―技術発達史―』2009年 社団法人 日本鉄道車輌工業会