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* 『ギリシア悲劇III [[エウリピデス]](上)』、[[ちくま文庫]](1986年)
* 『ギリシア悲劇III [[エウリピデス]](上)』、[[ちくま文庫]](1986年)
* 『ギリシア悲劇全集6 エウリーピデースII』、[[岩波書店]](1991年)
* 『ギリシア悲劇全集6 エウリーピデースII』、[[岩波書店]](1991年)
* [[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
* [[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年)
* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年)
* [[ホメロス]]『[[イリアス]](下)』[[松平千秋]]訳、岩波文庫(1992年)
* [[ホメロス]]『[[イリアス]](下)』[[松平千秋]]訳、岩波文庫(1992年)

2021年11月15日 (月) 11:04時点における版

リグドスの娘イーピスとその母テレトゥーサ。女神イシスがイーピスの性別を変える場面が描かれている。1703年版オウィディウス『変身物語』の挿絵。

イーピス古希: Ἶφις, Īphis)は、ギリシア神話の人物である。男性名としても女性名としても用いられる。長母音を省略してイピスとも表記される。主に、

のほか数名が知られている。以下に説明する。

アレクトールの子

このイーピスは、アルゴス王アレクトールの子で[1][2]、一説にカパネウスと兄弟[2][注釈 1]エテオクロス[4][3]、娘エウアドネーの父[5][6][7]。息子のエテオクロスはテーバイ攻めの7将の1人であり[8][9][10][4][3][11]、娘エウアドネーは同じく7将の1人カパネウスの妻となった[12][13][6][7][14]

イーピスは7将の1人テューデウスから、アムピアラーオスをテーバイ遠征軍に加えられないかと相談を受けた。そこでイーピスはアムピアラーオスの妻エリピューレーハルモニアーの首飾りを与え、彼女に協力を求めるよう助言をした[1]。またテーバイ遠征が失敗に終わり、エウアドネーがゼウスの雷に打たれて死んだ夫の後を追おうとしたとき、イーピスは娘を説得しようとした[15]。のちにカパネウスの子ステネロスが成長すると王位を譲り、プロイトス以来の王権はステネロスの子キュララベースの代まで続いた[2]

先代
アレクトール
アルゴス王(神話時代)
次代
ステネロス

パトロクロスの捕虜

このイーピスは、トロイア戦争でパトロクロスの捕虜になった女性。

イーリアス』で語られている前日譚によると、アキレウスがエニューエウス王の支配するスキューロス[注釈 2]を攻略した際に手に入れた女性で、パトロクロスに褒賞として与えられた。その後、アガメムノーンがアキレウスに和解の使者を送った夜、老将ポイニクスとパトロクロスはアキレウスの幕屋で休んだが、その際アキレウスにディオメーデーが、パトロクロスにイーピスがともに添寝したと語られている。『イーリアス』でイーピスが登場するのはこのシーンのみである[17]

なお、デルポイにはタソス島画家ポリュグノートスによるトローイア陥落を描いた壁画があり、その中にブリーセーイス、ディオメーデーとともにイーピスの姿が描かれていたと伝えられている[18]

リグドスの娘

このイーピスは、クレータ島の都市パイストスに住むリグドスと妻テレトゥーサの娘である。

リグドスは妻が身ごもったとき、もし娘だったなら生活の重荷になるという理由で育てないことに決めた。テレトゥーサは懇願したが夫の意思は堅かった。ある夜、テレトゥーサの夢に女神イシス(つまりイーオー)が現れ、男の子でも女の子でも安心して育てるように言った。果たして生まれてきたのは女の子だったが、テレトゥーサは女神の言葉を信じ、男の子と偽って育ることにした。リグドスは祖父の名前にちなんでイーピスと名付けたが、テレトゥーサはその名前が男にも女にも用いられる名前であるのを都合がいいと喜んだ。イーピスが13歳の時、リグドスはイーピスをテレステースの娘イアンテー婚約させた。これをきっかけにイアンテーはイーピスを愛するようになり、イーピスも自分が女であることを 偽りつつもイアンテーを愛するようになり、自分が女であることに苦しんだまたテレトゥーサも結婚で露見することを恐れ、婚礼の日を何かと理由をつけて引き延ばした。そしてイシスの祭壇で嘆願した。その願いは聞き届けられ、イーピスは男に変身し、2人はめでたく結ばれた[19]

その他のイーピス

脚注

注釈

  1. ^ アポロドーロスではカパネウスの父はヒッポノオスとされる[3]
  2. ^ ギリシア近くのスキューロス島ではなく、トローイア近隣の都市と思われる[16]

脚注

  1. ^ a b アポロドーロス、3巻6・2。
  2. ^ a b c パウサニアス、2巻18・5。
  3. ^ a b c アポロドーロス、3巻6・3。
  4. ^ a b エウリーピデース『救いを求める女たち』1036行。
  5. ^ エウリーピデース『救いを求める女たち』984行-985行。
  6. ^ a b エウリーピデース『救いを求める女たち』1038行。
  7. ^ a b アポロドーロス、3巻7・1。
  8. ^ アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』421行以下。
  9. ^ ソポクレース『コローノスのオイディプース』1316行以下。
  10. ^ エウリーピデース『救いを求める女たち』871行-880行。
  11. ^ パウサニアス、10巻10・3。
  12. ^ エウリーピデース『救いを求める女たち』985行-986行。
  13. ^ エウリーピデース『救いを求める女たち』996行-999行。
  14. ^ ヒュギーヌス、97話。
  15. ^ エウリーピデース『救いを求める女たち』1034行-1113行。
  16. ^ 松平訳注、p.425。
  17. ^ 『イーリアス』9巻。
  18. ^ パウサニアス、10巻25・4。
  19. ^ オウィディウス『変身物語』9巻666行-797行。
  20. ^ アポロドーロス、2巻7・8。
  21. ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.55b。
  22. ^ オウィディウス『変身物語』14巻。

参考文献

関連項目