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2021年9月6日 (月) 10:24時点における版
旧台南水道 the Old Tainan Watercource | |
---|---|
中華民国 文化資産 | |
登録名称 | 原臺南水道 |
旧称 | 台南水道 |
その他の呼称 | 台南市自来水管理処、山上郷水源地、山上水源地、山上花園水道博物館、山仔頂浄水池 |
種類 | 産業[1] |
等級 | 国定古蹟 |
文化資産登録 公告時期 | (県定)2002年11月25日[2] (国定)2005年9月29日[1] |
位置 | 中華民国(台湾) 台南市山上区山上里16号(水源地) 山上区新荘里新荘59之18号(浄水池) |
建設年代 | 大正元年(1912年) - 大正11年(1922年) |
台南水道(廃止) (山仔頂浄水池) | |
---|---|
the Tainan Watercource (Shanshang Water Treatment Plant) | |
浄水池 | |
所在地 | 台湾 台南市山上区山上里16号 |
管理運営 |
(1922-)台南水道 (1947-)台南市自来水管理処 (1974-)台湾自来水公司第六区管理処 |
通水 | 1922年 |
廃止 | 1982年 |
処理方式 | 急速濾過 |
敷地面積 | 567,801.25平方メートル |
工事費総額 | 433万円(建設当時の金額) |
給水区域 | 台南州台南市(その後台湾省台南市) |
旧台南水道(きゅうたいなんすいどう、繁体字中国語: 原臺南水道)、または山上水源地(さんじょうすいげんち)は、台湾台南市山上区にある日本統治時代に供用された取水場(水源地)と浄水場(浄水池)。現在は国定古蹟となっている。
概要
1895年より日本の統治が始まると、水道インフラ整備は台湾総督府における衛生事業の一部となった。旧台南水道は曽文渓から当時の台南市域に良質な飲料水を供給するためのもので1912年に台湾総督府が帝国議会での予算承認を経て10万人分の供給能力をもつ上水道建設が始まった。水源地は往時の弁公室(オフィス)、量水器室や送水、浄水施設、発電室が現存されているほか、設計・建設に従事した日本人技師浜野弥四郎の像、皇太子時代の裕仁親王が植樹したリュウキュウマツや老樹数十本が残されている[3]。豊かな生態系が維持されている園内は水源地区と浄水池区に二分され、総面積56万7,801.25平方メートルに及ぶ[4]。水源地区は36万7,124.25平方メートル、浄水地区は20万677平方メートル[2](p10)。
建築物や空間がもつ多くの特色は当時の水道インフラの施設や日本統治時代における公衆衛生事業の近代化過程を知ることができる教育施設としての機能も持ち合わせている。
曽文渓 | |||
密林区 | 水 源 地 区 [註 1] | ||
---|---|---|---|
博物館区 | |||
宿舎区 | 山上花園 | ||
道路 | |||
敷地外 | 道路 | 敷地外 | |
量水器室 | 浄水池区 | ||
浄水池室 |
沿革
日本統治時代
日本統治時代の1897年に台湾総督府衛生顧問となったスコットランド人お雇い技師のウィリアム・K・バートン(W. K. Burton)と、助手としてバートンの東京帝国大学講師時代に教え子だった日本人土木技師の浜野弥四郎が、台湾主要都市で風土病や伝染病を予防すべく上下水道インフラ整備のため各地の整備計画に従事し、台南でも水源、水質、実地調査が行われ、急速濾過方式による建設を具申した[5]。
1912年、第28回帝国議会で台湾総督府の予算案が承認され、263万円の事業費を投じて事業が始動した。当初の工期は4年だったが第一次世界大戦の影響で資材価格が高騰、予算が433万円に増額、工期も7年延期されて1922年に竣工、10月31日に水の供給を開始した[5]。計画供給能力は10万人で当時の台南州台南市の人口8万人を賄うには充分だった[6]。(※着工前、明治44年の台南庁台南市の人口は約5.9万人[7])
台南水道水源地平面図 | 台南市水道図 |
いずれも台湾総督府民政部土木局《臺灣水道誌圖譜》より |
戦後
第二次世界大戦後に中華民国政府統治下となると、1949年に「台南市自来水管理処(略称:台南水廠、あるいは山上浄水廠)」となる[5]。戦前に場内に設置されていた日本人専用ゴルフ場は台南県政府管理下で撤去され山上苗圃として使われている[3](p2-9)。烏山頭水庫や曽文水庫を水源とする取水、配水量増加に伴い加圧ポンプ室や配水管が1952年に増設され、1965年7月に潭頂浄水廠(現・新市区潭頂里)が完成すると、設備が古い当所からの機能移転がなされた[5]。1974年に台湾自来水公司[註 2]第六区管理処管轄となり、1982年まで現役で稼働を続けた[5]。
文化資産
2001年、現・文化部の前身となる行政院文化建設委員会で台湾歴史建築百景に選定。
2002年11月25日に当時の台南県の県定古蹟として登録され[2](p10)、2005年9月に内政部指定の国定古蹟へ格上げされた。
2007年に2期にわたる修復計画が始動[8]、しかし所有する旧台南市、施設管理の自来水公司との調整がつかず、本格的な再生事業は2010年末の台南県市合併と直轄市昇格を待たねばならなかった[3]。2011年に第1期の修復が完了し、浄水池エリアの見学が可能となった[3](p1-1)。
2010年、日本の土木学会選奨土木遺産にリスト入りした[9]。
2014年9月4日、台湾自来水公司が建築物の財産権を台南市政府に寄贈[10][11]。市は予算編成を経て修復、保存に着手。
2016年2月の台湾南部地震で水源地の建築物が被害を受けたが[12][13]、再始動した修復計画を経て2019年秋に博物館として再生される[14]。
構成
山上花園水道博物館 Tainan Old Waterworks Museum 臺南山上花園水道博物館 | |
---|---|
施設情報 | |
専門分野 | 上水道 |
事業主体 | 台南市政府文化局 |
開館 | (水源地区)2019年10月10日(予定) |
所在地 | 台湾台南市山上区山上里16号 |
位置 | 北緯23度6分5.17秒 東経120度21分33.85秒 / 北緯23.1014361度 東経120.3594028度 |
アクセス | #アクセス |
外部リンク | 臺南山上花園水道博物館 (TainanOldWaterworksMuseum) - Facebook |
プロジェクト:GLAM |
水源地
山上区山上里16号の曽文渓南岸。面積は約22ヘクタール[3](p2-3)。飲料水の水源として長年開発が規制されてきたため、手つかずの自然が残り、様々な動物、昆虫にとっての絶好の棲息地となっている。水源地の正門には台南水道設計に携わった浜野弥四郎の像があり、浜野の台湾に対する貢献を偲ぶことができる。
密林区
台南水道最北端に位置し、曽文渓左岸に面している。取水口に近いため開発が禁じられ生態系が維持されている。そのためここではズグロミゾゴイ、モズ、蛍、蝶などの動物、オキナグサ、蓮などの植物を観賞することができる[3](p2-7)。
博物館区
2016年3月に水源地の修復と博物館しての再生を図る第2期の事業が始動[15][16]、2018年末に博物館としてリニューアルオープンする予定だったが[3](p1-1)、入札不調が重なったため[17]、2019年10月10日に山上花園水道博物館として開館[14]。自来水博物館としては台北市の旧台北水道に次いで国内2例目となる。
- 濾過器室と水道弁公室(濾過器室與水道辦公室)
急速濾過室はイギリス積みによる赤レンガの西洋建築。壁体内部は棒鋼で補強されているため、幾度かの災害を経ても原状を留めている。室内は14基のドイツ製[註 3]急速濾過槽が配置されている。L字型で建築面積は約1,310平方メートルの煉瓦平屋建て[3](p2-8)。
- 送水ポンプ室(送出唧筒室)
建築面積は約510平方メートルの平屋建て。内部は煉瓦、外部は鉄筋コンクリートの梁と柱が用いられている。屋根は木造[3](p2-8)。
- 急速濾過室(快濾池室)
建築面積は約102平方メートルの地上一階、地下一階。1952年に増築された木造建築物[3](p2-8)。
- 浜野弥四郎像
台南水道実地調査時に部下だった八田與一は浜野の功績を称えようと台南水道の山上水源地に銅像を設置を呼びかけ、1921年に建立されたが[18](p50)、第二次世界大戦中に金属供出令により撤去されている[19](p80)。その後、水源地を訪問した台南の実業家で奇美実業創業者の許文龍は像の不在を嘆き、浜野の胸像を製作、水源地に寄贈している[20]。
山上花園
水源地内最南端の公園。約12.7ヘクタール[3](p2-4)。 正門と駐車場を備える。上述の皇太子による植樹はここで行われた。戦前はゴルフ場、戦後は苗圃、2016年に台南市政府農業局により山上花園となった[3](p2-9)。
宿舎区
水源地区南西角にあり敷地全体は1.3ヘクタールで3棟の職員宿舎があった。現在修復工事中。駐車場が併設されている[3](p2-10、2-11)。
浄水池
別名「山仔頂浄水池」とも。山上区新荘里新荘59之18号の小高い丘にあり、水源地からは約1km離れている。面積は約20ヘクタール[3](p2-3) 2013年に修復工事が完了した。蝙蝠が棲息し、その生態を見学するガイドツアーが有料で開催されている[21]。2011年から一般開放され見学が可能。
量水器室
[3](p2-13) 1922年竣工の赤煉瓦と鉄筋コンクリート混合建築。24平方メートルの平屋建て。旅客諮詢中心(ビジターセンター)として使われている。
浄水池室
[3](p2-13) 1952年に増強された施設。地下に65メートルx28メートルx深さ5メートル、1,820立方メートルの水槽がある。屋外の外周は天然石と人造石の2種を組み合わせた塀で囲われ、トーチカ形状の鋳鉄製通気管が地表から露出している。淨水池室自体の建物はそれほど大きくはない。現在は蝙蝠生態保育室として使われている。
アクセス
脚注
註釈
出典
- ^ a b 原臺南水道 文化部文化資産局国家文化資産網
- ^ a b c 張玉璜 (2014-02-01). 大臺南文化資產叢書01-原臺南水道. 台南市政府. ISBN 9789860402179
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 原台南水道委託興建暨營運管理(OT+BOT)案 可行性評估報告(摘要版)2018-02-26,台南市政府文化局
- ^ 國定古蹟環景導覽 - 原臺南水道文化部文化資産局
- ^ a b c d e 古蹟-臺南水道 2015-12-6,山上区公所
- ^ 台湾総督官房調査課 (1923). 台湾現住人口統計. 大正11年. 台湾総督官房調査課. p. 8 国立国会図書館
- ^ 台湾現住人口統計. 明治44年. 台湾総督官房調査課. (1912). p. 28国立国会図書館
- ^ 〈南部〉斥資五千萬 台南水道展開修復2007-10-31,自由時報
- ^ 台南水道 土木学会委員会 選奨土木遺産
- ^ 文化首都大躍進 臺灣自來水公司捐贈國定古蹟原臺南水道建物予市府2014-09-04,台南市政府
- ^ 日本統治時代「台南水道」の建築、台南市に寄贈/台湾2014-09-06,フォーカス台湾
- ^ 文化部長、台南の文化遺産を視察 地震による被害状況を確認/台湾2016-02-15,フォーカス台湾
- ^ 地震撼府城》風神廟、孔廟等24處古蹟毀損 接官亭鐘樓倒塌2016-02-06,The News Lens
- ^ a b “台南の水道施設跡、博物館に 来月10日開園 日本統治時代建設/台湾”. フォーカス台湾 (2019年9月18日). 2019年9月18日閲覧。
- ^ 日本統治時代の水道施設、修復工事進む 新名所として整備へ/台湾・台南2016-03-27,フォーカス台湾
- ^ 國定古蹟規劃花園水道博物館 南市動工2016-03-27,自由時報
- ^ 國內最大水道博物館啟用時程2度跳票 南市府挨批”. 自由時報 (2018年11月19日). 2019年9月18日閲覧。 “
- ^ 回顧七十 前瞻永續 水利人的足跡. 中華民国経済部水利署. (2017-05). pp. 47-52. ISBN 9789860525120 2018年9月9日閲覧。
- ^ 自來水會刊第 36 卷第 4 期 臺灣現代化自來水建設之開拓者 都市的醫師-濱野彌四郎. 中華民國自來水協會(CTWWA) 2018年9月2日閲覧。 吳世紀 (2017-11).
- ^ 捐贈雕像給磯小屋的奇美許文龍先生2013-08-14,PeoPo公民新聞
- ^ 台南水道秘境400多隻保育蝙蝠 開始預約參觀2018-10-09,聯合報
- ^ 即時動態 大台南公車
関連項目
外部リンク
- 台南市政府
- 原台南水道-淨水池區 (TheOldTainanWatercourse) - Facebook
- 臺南山上花園水道博物館 (TainanOldWaterworksMuseum) - Facebook
- (参観予約)台南水道參觀預約 台南市政府文化局
- 旧台南水道水源地区 台南市政府観光旅遊局台南旅遊網
- 旧台南水道浄水地区 台南市政府観光旅遊局台南旅遊網
- 中華民国交通部観光局
- 旧台南水道 シラヤ国家風景区管理処