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「艦船擬人化」の版間の差分

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[[2011年]]には、[[台湾]]の[[漫画家]]で「制服兵器兵站局」の投稿者でもあった皇宇(ZECO)が[[中華民国]]政府中央研究院発行の『文化振興雑誌CCC創作集』で[[日本統治時代の台湾]]をテーマにした作品を特集する号に寄稿した[[絵物語|イラストレイテッド・ストーリー]]『陽炎少女 -丹陽-』(2009年)を基に、日本の[[ワニブックス]]が発行していた漫画雑誌『[[コミックガム]]』で『Battleship Girl -鋼鉄少女-』が[[2011年]]から2012年の同誌休刊まで連載された。この作品はデザインにおいて上述の作品群の影響を受けつつも艦艇の擬人化を中心に扱っている。同作品は掲載誌の休刊により未完となっているが、2016年には[[iOS (アップル)|iOS]]/[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]用ゲームアプリが製作され[[繁体字|台湾正体字]]版と中国大陸向けの[[簡体字]]版がそれぞれ配信されている。
[[2011年]]には、[[台湾]]の[[漫画家]]で「制服兵器兵站局」の投稿者でもあった皇宇(ZECO)が[[中華民国]]政府中央研究院発行の『文化振興雑誌CCC創作集』で[[日本統治時代の台湾]]をテーマにした作品を特集する号に寄稿した[[絵物語|イラストレイテッド・ストーリー]]『陽炎少女 -丹陽-』(2009年)を基に、日本の[[ワニブックス]]が発行していた漫画雑誌『[[コミックガム]]』で『Battleship Girl -鋼鉄少女-』が[[2011年]]から2012年の同誌休刊まで連載された。この作品はデザインにおいて上述の作品群の影響を受けつつも艦艇の擬人化を中心に扱っている。同作品は掲載誌の休刊により未完となっているが、2016年には[[IOS (Apple)|iOS]]/[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]用ゲームアプリが製作され[[繁体字|台湾正体字]]版と中国大陸向けの[[簡体字]]版がそれぞれ配信されている。


== 『艦これ』 ==
== 『艦これ』 ==

2021年5月21日 (金) 01:50時点における版

艦船擬人化(かんせんぎじんか)は、フィクションにおいて軍用の艦船に人間ないしそれとよく似た性質・特徴を与えて描写する擬人化表現の一ジャンルである。

2000年代以降は萌え擬人化の一ジャンルとして兵器擬人化を取り入れた作品が広く見られるようになったが[1]、その中でも艦船擬人化は日本中国台湾で発表された漫画コンピュータゲームの諸作品が相互に影響し合う形で大きなカテゴリを形成するようになっている[2]

ジャンル化以前

高雄型重巡洋艦の2番艦・愛宕の艦内で発行されていた艦内新聞の『愛宕新聞』では1934年(昭和9年)発行のものに1番艦の高雄を「タカ夫君」、愛宕を「アタ子さん」と言う名前で擬人化したイラストが見られる[3]

1940年(昭和15年)に小磯良平が描いた日本郵船新田丸級貨客船3隻(新田丸・八幡丸・春日丸)を三姉妹に見立てて擬人化したポスターもこの3隻が海軍に徴用され大鷹型航空母艦大鷹雲鷹冲鷹)となったことから、艦船擬人化のルーツとして言及されることがある[4]

ジャンルの形成期

前節のように、艦船擬人化自体は第二次世界大戦以前からも見られる。一方で、1990年代以降に形成された萌え擬人化、サブカルチャーとしての艦船擬人化とはその発生、経緯共に異なるものであるとも言える。

モデルグラフィックス

1984年に創刊した月刊模型雑誌モデルグラフィックス』(編集:アートボックス、発行:大日本絵画。以下『MG』)では「艦船ちゃんいらっしゃい」という名称で、第二次世界大戦当時に運用された艦船などを可愛いものと見立て考察、解説する誌上企画が行われていたが、1995年中頃から該当する艦船の兵装の一部をまとった少女のイラストが「今月の大鑑巨砲少女」と題して実際に投稿されるようになる[5]。もっとも、第一回である1995年6月号は『MG』に連載を持ち、つながりの深い岡部いさくの告知的なイラストであったため、実際に読者投稿としての艦船擬人化のファンアートが始まったのは次の1995年7月号以降である[5][6]。この企画はおよそ7年にわたって続き、2002年8月号を最後にそれ以降は「今月の大鑑巨砲少女」ではなく基本的に巻末の総合イラストコーナーに統合されているが、「艦船ちゃんいらっしゃい」自体はその後も続いた[7][8]

『MG』はガンダムシリーズに注力してきた雑誌であり、ガンダムの萌え擬人化であるMS少女について「今月のMS少女」とする題名で1987年11月号より数年にわたりシリーズ化するなど、萌え擬人化自体にも積極的であった[9][10]。MS少女の初出は雑誌Animec第25号(1982年7月)掲載の赤井孝美によるイラストとされている。この「今月のMS少女」を行っていた『MG』が、その関連として始めた企画が「今月の大鑑巨砲少女」であって、元々はMS少女の派生にその由来を求めることができ、現在当然のものとされている艦船が該当する船の兵装の一部をまとう少女といった表現もMS少女のそれを踏襲してきた経緯がある[9]。もっとも「今月のMS少女」は明貴美加による固定連載だったのに対し「今月の大鑑巨砲少女」は、読者からファンアートと言う形でイラストを募集していたという違いはある[5][9]

軍艦越後の生涯

2001年には中里融司による架空戦記軍艦越後の生涯」が発表された。艦艇に少女型の「船魂」が宿るという形式を取っており、現在に直接繋がる艦船擬人化作品としては最初期のものである。

制服兵器兵站局

2002年になると、艦船擬人化を含む兵器の萌え擬人化をテーマとしたイラストのアップロードサイトである「制服兵器兵站局」が立ち上がる。始まりこそ戦闘機・航空機の萌え擬人化の投稿が中心であったが[11]、数か月後には陸海空の兵器擬人化の総合サイトとなる[12]。サイトが2014年に閉鎖されるまでに、陸海空兵器の萌え擬人化とカテゴリーが制限されている中で3000枚を超えるイラストが投稿された[13]。2014年の閉鎖に伴い、一部を残して保管されていたイラストの大部分が散逸し、現在は後継サイトがその投稿記録を保持しているにとどまる。

制服兵器兵站局の元ユーザーとして、じじ (イラストレーター)[注 1]島田フミカネ[注 2]くーろくろ[注 3]ZECO[注 4]などがあげられる。また、2006年に専門商業誌として立ち上げられたMC☆あくしずと、制服兵器兵站局の運営されていた時期の多くが重なっており、これらを横断して活動していたイラストレーターも少なくない。『MC☆あくしず』と並び、後続の商業化作品群への影響が小さくないサイトであったといえる。

MC☆あくしず

2006年イカロス出版の『MILITARY CLASSICS』誌から分離独立する形で発刊された『MC☆あくしず』では艦船のみならず戦車軍用機など近代兵器全般の萌え擬人化を扱っており、同誌から派生したゲーム作品としてブラウザゲーム『ブラウザMC☆あくしず -鋼鉄の戦姫-』(マーベラス2012年 - 2016年[14]、並びにスマートフォン用アプリ『あくしず☆戦姫 戦場を駆ける乙女たち』(Donuts、2017年 - 2018年)がある[15]

萌え萌え2次大戦シリーズ

『MC☆あくしず』発刊の翌2007年にはシステムソフト・アルファーが『大戦略』シリーズのスピンオフとして『萌え萌え2次大戦(略)』を発売しており、作中で「鋼の乙女」と呼ばれるユニットの一類型として擬人化された艦船が登場している。

蒼き鋼のアルペジオ

2009年にはヤングキングアワーズにて『蒼き鋼のアルペジオ』の連載を開始。同作では艦が人間と接触するために自らの構成素材である「ナノマテリアル」から生み出した人間体である「メンタルモデル」が登場している。2013年にはアニメ化され、2019年にはゲームアプリが製作された。

Battleship Girl -鋼鉄少女-

2011年には、台湾漫画家で「制服兵器兵站局」の投稿者でもあった皇宇(ZECO)が中華民国政府中央研究院発行の『文化振興雑誌CCC創作集』で日本統治時代の台湾をテーマにした作品を特集する号に寄稿したイラストレイテッド・ストーリー『陽炎少女 -丹陽-』(2009年)を基に、日本のワニブックスが発行していた漫画雑誌『コミックガム』で『Battleship Girl -鋼鉄少女-』が2011年から2012年の同誌休刊まで連載された。この作品はデザインにおいて上述の作品群の影響を受けつつも艦艇の擬人化を中心に扱っている。同作品は掲載誌の休刊により未完となっているが、2016年にはiOS/Android用ゲームアプリが製作され台湾正体字版と中国大陸向けの簡体字版がそれぞれ配信されている。

『艦これ』

『艦これ』のヒットによるジャンル確立

2013年角川ゲームスの開発でDMM.comがサービスを開始したブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』はそれまでの兵器擬人化を主題にしたゲームと一線を画し、艦船擬人化を一ジャンルとして確立する契機となった作品と評されている[16]。『艦これ』は2015年アニメ化されたのを始め積極的にメディアミックス展開が行われ、後続の作品にも大きな影響を与えることとなった[2]

『艦これ』フォロワーの発生とその後

日本での『艦これ』大ヒットは国外にも波及したが、ゲーム自体はDMMの方針により国外からのアクセスを遮断しているため中国大陸や台湾などで『艦これ』と共通するコンセプトを取り入れた「『艦これ』フォロワー」とも呼ばれるゲーム作品がブラウザゲームやスマートフォン用アプリとして次々にリリースされた[17]。初期に登場したタイトルには『艦これ』の海賊版同然のものも見られたためDMMでは「対抗措置を検討する」としていたが[18]、こうした海賊版に対しては現地の『艦これ』ファンからも非難が相次ぎ、サイバー攻撃によるサーバダウンを経て撤退に追い込まれている[19]

それらの中華圏『艦これ』フォロワーの中でも2014年にサービスを開始した『戦艦少女』は、開始当初こそ『艦これ』の影響が強く見られたが『戦艦少女R』へのリニューアル後は独自性を強めており[注 5]2016年には日本版もリリースされている[1]他、2018年にはスピンオフとなる『蒼青のミラージュ』がリリースされている。

2017年1月に韓国でリリースされた『少女艦隊』(Gamepub、日本版タイトル『最終戦艦withラブリーガールズ』)は中国大陸および日本、繁体字圏(台湾・香港・マカオ)、東南アジアシンガポールマレーシア)でリリースされている[20]。ゲームの特徴としては恋愛シミュレーションゲームの要素を取り入れており、繁体字版(タイトル『請命令! 提督SAMA』)ではZECOをゲストキャラクターデザインに招いている[21]。また、それまでの「美少女に擬装を着けて戦わせる」擬人化とは異なり、平時では人間体だが、戦闘時は実艦となって戦うという点で他の艦船擬人化ゲームとの差別化を見せており(『蒼き鋼のアルペジオ』のメンタルモデルに近い)、その擬人化方式は2019年に配信開始された『ガーディアン・プロジェクト』に引き継がれている。

2017年5月に中国大陸でBilibiliからリリースされた『アズールレーン』は『艦これ』以来の主流だったシミュレーションゲームの要素を残しつつシューティングゲームとして『艦これ』やそのフォロワーとは異なるゲーム性を打ち出している[17][22]

2018年に発表された重慶煜顔文化伝播有限公司の3DアクションRPGアビス・ホライズン』は、中国大陸で先行リリースしてから日本など他の市場で展開するパターンが主流だったそれまでの作品と異なり、日本と中国大陸で同時期のリリースを目指して開発されていた。結果的には中国版は政府審査の滞りにより、最初にリリースされた日本版に2年遅れてサービスを開始した。

2020年に台湾からリリースされた『ブラック・サージナイト』は、それまでの人類と艦船擬人化キャラクターが協力して異形の怪物と戦うというシナリオとは異なり、闇堕ち形態が存在し人類に対し反旗を翻すという点で他の艦船擬人化ゲームとの差別化を見せている。

その他の艦船擬人化ゲームとしては、2019年に中国でリリースされた『蒼藍の誓い ブルーオース』、2020年に発表された『ヴェルヴェット・コード』、アメリカ合衆国のBlack Chicken Studiosが2015年頃より開発中の『Victory Belles』が挙げられる。

脚注

注釈

  1. ^ MC☆あくしず、萌え萌え2次大戦、艦隊これくしょん(Zara、Polaなど)
  2. ^ MC☆あくしず、艦隊これくしょん(大鳳、Bismarckなど)
  3. ^ MC☆あくしず、艦隊これくしょん(龍驤、隼鷹など)
  4. ^ 「皇宇(ZECO)」に同じ。鋼鉄少女、請命令! 提督SAMA(扶桑)、艦隊これくしょん(Samuel B.Roberts)
  5. ^ DMMゲームズ代表の片岸憲一は2015年に中華圏のモバイルゲームニュースサイト「魔方網」のインタビュー(映像 - YouTube)において、中華圏での『戦艦少女』の人気について「明白な著作権の侵害がなければいいかなと」と静観する姿勢を表明している。

出典

  1. ^ a b G.Suzuki (2017年8月3日). “【特集】『兵器擬人化ゲーム』9選―『艦これ』だけじゃない!”. iNSIDE (イード). https://www.inside-games.jp/article/2017/08/03/108969.html 2018年1月1日閲覧。 
  2. ^ a b 盛田諒 (2017年10月20日). “「中国版艦これ」話題のゲーム会社に聞く”. ASCII.jp (KADOKAWA/アスキー・メディアワークス事業局). http://ascii.jp/elem/000/001/571/1571007/ 2018年1月1日閲覧。 
  3. ^ 『艦内新聞集成』第9巻「愛宕新聞」第1号〜第204号〈昭和9年2月〜10月〉(不二出版、2016年) ISBN 978-4-8350-7954-7
  4. ^ 咲村珠樹 (2012年1月27日). “【おたく温故知新】第五回 戦前にもあった萌え擬人化? 〜戦火に消えた悲運のNYK美少女三姉妹〜”. おたくま経済新聞. C.S.T.エンターテインメント. 2018年5月1日閲覧。
  5. ^ a b c 月刊モデルグラフィックス 大日本絵画 1995年7月号 P42
  6. ^ 月刊モデルグラフィックス 大日本絵画 1995年6月号 P106
  7. ^ 月刊モデルグラフィックス 大日本絵画 2002年8月号 P56
  8. ^ 月刊モデルグラフィックス 大日本絵画 2002年12月号 P135
  9. ^ a b c 月刊モデルグラフィックス 大日本絵画 1987年11月号 P13
  10. ^ 月刊モデルグラフィックス 大日本絵画 1987年12月号 P56
  11. ^ 兵站局整備記録1”. 2018年4月24日閲覧。
  12. ^ 兵站局整備記録4”. 2018年4月24日閲覧。
  13. ^ 整備中隊本部”. 2018年4月24日閲覧。
  14. ^ “「ブラウザ MC☆あくしず 鋼鉄の戦姫」の正式サービスが4月5日にスタート。特別なカードがもらえる記念イベントも開催”. 4gamer.net (Aetas). (2012年4月4日). http://www.4gamer.net/games/150/G015081/20120404050/ 2018年1月1日閲覧。 
  15. ^ 超ド級! 兵器美少女RPG「あくしず戦姫」
  16. ^ クリモトコウダイ (2017年11月1日). “話題の『アズールレーン』はたった10名の会社が運営! 社長が“今のガチャ文化に違和感”を抱いた結果、SSR出現割合が7%になる【インタビュー】”. 電ファミニコゲーマー (ドワンゴ). http://news.denfaminicogamer.jp/interview/171101 2018年1月1日閲覧。 
  17. ^ a b 怪しい隣人 (2017年9月30日). “話題の擬人化艦船ゲーム「アズールレーン」はなぜ突然ブレークしたのか”. ねとらぼ (ITmedia). http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1709/30/news019.html 2018年1月1日閲覧。 
  18. ^ 安藤健二 (2014年12月11日). “【艦これ】中国の海賊版「艦娘国服」にDMMが対抗措置を検討”. ハフポスト. http://www.huffingtonpost.jp/2014/12/11/kancolle-chinese-copy_n_6312662.html 2018年1月1日閲覧。 
  19. ^ 菜種 (2015年1月20日). “中国の提督たち、『艦これ』そっくりのゲーム『艦娘世界』のサーバーをダウンさせる”. iNSIDE (イード]). https://www.inside-games.jp/article/2015/01/20/84302.html 2018年1月1日閲覧。 
  20. ^ 《舰姬》签约东南亚 开拓全新二次元市场. 3367.com. (2017年11月13日). http://news.3367.com/cs/201711/107650.shtml 2018年5月1日閲覧。  (簡体字中国語)
  21. ^ 《請命令! 提督SAMA》繪畫比賽正式開賽 《鋼鐵少女》原作皇宇老師將擔任評審. GNN新聞. (2017年10月24日). https://gnn.gamer.com.tw/2/154252.html 2018年5月1日閲覧。  (繁体字中国語)
  22. ^ “Yostar、スマホ向け艦船擬人化×横スクロールSTG『アズールレーン』の世界観とキャラクターについての最新情報を公開!”. Social Game Info. (2017年8月17日). http://gamebiz.jp/?p=191389 2018年1月1日閲覧。 

関連項目