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2021年4月20日 (火) 11:01時点における版
ホームライナーとは、着席を提供することを主な目的として日本国有鉄道(国鉄)及びそれを継承したJR各社において運行されている料金徴収形の座席指定制もしくは定員制快速列車の愛称である[1]。東海旅客鉄道(JR東海)の登録商標[注 1] となっているが、JR東海以外でも「ホームライナー」の名称で運行している事業者がある。本項では、「ホームライナー」の名称を用いないJR各社及び私鉄の類似列車(総称して「通勤ライナー」[2] などと呼ばれることもある。)についても述べる。
概要
ホームライナー及びその類似列車(以下総称して「ホームライナー等」という)は、主として通勤時間帯に着席乗車のニーズに応える目的で設定されている列車である。快速列車と同様に主要駅のみ停車する列車が多い。列車愛称は路線や運転時間帯によって「ホームライナー○○」や「○○ライナー」などのバリエーションが存在し、利用には乗車整理券(ライナー券)が必要とされる。
基本的に朝ラッシュ時は郊外のベッドタウンから企業の集中する都心に向かって運行され、帰宅時間帯となる夜間は逆に都心から郊外に向かって運行されることがほとんどであるが、地方都市圏においては静岡地区や新潟地区のように、都市間を比較的長距離にわたって運行される列車もある。
また、JR東海中央本線(中央西線)の「セントラルライナー」のように収益確保・近距離利用客との分離を図るため日中に設定された列車や、同社静岡地区で臨時に設定される定員制のウォーキングイベント列車「さわやかウォーキングライナー」のような行楽・イベントを目的とした列車も存在する。
国鉄及びJR各社におけるホームライナー等
JRグループにおける種別としては普通列車となるが、国鉄時代には団体専用列車として運転された列車も存在する。
登場の経緯と現状
都心に到着した優等列車を郊外の車両基地まで回送する代わりに営業列車とした早い例としては、1968年(昭和43年)10月1日ダイヤ改正で設定された総武本線の気動車による快速列車がある。新宿駅に到着した房総方面からの急行列車の折り返しで、御茶ノ水駅発20時台に千葉駅行(停車駅は秋葉原駅・船橋駅の2駅)として2本運行された。ただし特別料金は徴収せず、回送列車のダイヤを踏襲したため所要時間も各駅停車と変わりなかった[3]。
「ホームライナー」の名称で運行されたものの初出は、1984年(昭和59年)6月1日、当時の国鉄旅客局長だった須田寬(現・JR東海相談役)の考案により、東北線上野駅 - 大宮駅間で回送する特急用電車を活用したものとされる。これは、当時私鉄各社で運行されていた通勤時の特急列車をヒントとして生まれたものであった。同列車は同年7月23日に「ホームライナー大宮」と命名され、次いで同日には総武快速線で「ホームライナー津田沼」が、同年9月からは阪和線で「ホームライナーいずみ」の運行が開始された[4][5]。
運転開始当時は1編成のうちの数両で客扱いを行っており、この際にはグリーン車を普通車扱いとしていた。しかし運転開始当初より人気が高く常に満席となり、積み残し客の方が多くなることもあったことから、運転開始数日で急遽1編成の大半を開放することに変更し、わずか数ヵ月後には1編成すべてを開放して客扱いを取り扱うようになった。
1986年(昭和61年)11月1日に運行を開始した東海道線の「湘南ライナー」、阪和線の「はんわライナー」では、回送ダイヤの流用ではなく単独の列車運用を持つようになった。また、当初は回送列車扱いのため省略されていた車内整備も行われるようになった。
以降、その盛況により国鉄末期からJR各社発足後の1990年代にかけて、各都市圏で設定された。これまでに東日本旅客鉄道(JR東日本)に継承された首都圏をはじめ、同社の新潟・長野・仙台地区、北海道旅客鉄道(JR北海道)に継承された札幌地区、東海旅客鉄道(JR東海)の静岡・名古屋地区、西日本旅客鉄道(JR西日本)に継承され近畿圏(アーバンネットワーク)、九州旅客鉄道(JR九州)の福岡・北九州・宮崎・鹿児島地区で設定されてきた。四国旅客鉄道(JR四国)では徳島地区で一時期に試験的に運行されていたが(鳴門きんときライナー)、定期列車化には至らなかった。
その後、特急列車や追加料金不要の快速列車・普通列車への置き換え、首都圏ではこれに加えて一般の快速・普通列車へのグリーン車連結による利用者の減少などによって、数を減らしていくこととなる。近畿圏や九州からは2011年(平成23年)3月までに全廃され、首都圏でも2021年(令和2年)3月で全廃となり[6]、現在は札幌・静岡・名古屋地区に残るのみとなっている。
乗車制度
ライナー列車に乗車するには、乗車券(定期券を含む)のほかに乗車整理券またはライナー券(列車によって異なる)を必要とする。基本的に座席分の枚数しか発売されないため、着席が保証されるいわゆる座席定員制であるが、札幌地区では乗車整理券の発売枚数に制限はなく、着席保証はない[7][8]。座席を指定しない列車もあるが、近畿圏では車両や座席の列などが指定されるものもあり、JR東海はすべて座席指定となっている。また大手民鉄で運行されるライナー列車は乗車整理券の購入箇所または乗車駅によって乗車できる車両が指定されていることが多い。
多くの場合は着席が保証されるため、到着前に整理券類が完売するほど人気のある列車もある。一部のライナー列車にはグリーン車が連結されているが、列車によりグリーン車としてグリーン料金を要するもの[注 2] と、普通車扱いとしてグリーン料金を必要としないものが存在する。かつて静岡地区で運用された371系のようにグリーン車を締切扱いとしたケースもある[9]。
乗車整理券またはライナー券を発売していない停車駅を「降車専用駅」の扱いとし、原則として乗車を認めない列車が一部存在する。
この列車の扱いは普通列車であることから、特別企画乗車券で特急・急行列車に乗車できない「青春18きっぷ」などでも乗車整理券またはライナー券を購入すれば乗車可能とされている。「フルムーン夫婦グリーンパス」や「ジャパンレールパス」などの特急・急行列車に乗車可能な特別企画乗車券を所持する場合でも、乗車整理券またはライナー券を必要とする。
使用車両
元々、車両基地まで回送される特急列車の車両を使用したことから、一般に特急列車の車両が使われることが多い。
特に利用者の多い東海道本線東京口の「湘南ライナー」では、特急用車両のほかに、全車2階建車両の215系を使用して混雑緩和が図られている。また、日中に運行される中央西線の「セントラルライナー」では、この列車のために近郊形車両である313系8000番台が新造された。
自社の車両が運用されることが多いが、JR東海の東海道線名古屋地区のホームライナーには、JR西日本の「しらさぎ」用683系2000番台(金沢総合車両所配属)も用いられている。過去にはJR東日本の「ホームライナー古河」「ホームライナー鴻巣」でJR西日本の車両が、逆にJR西日本の「びわこライナー」でJR東日本の車両が用いられていたことがある[4][5]。
運行概況
詳細な運行状況は各運行路線・個別記事で記載されているため、本節では運行される線区での概要のみを記載するにとどめる。乗車整理券料金は特記が無い限り300円(消費税抜き)である。
札幌地区
札幌駅を中心とした札幌地区の函館本線では、国鉄時代の1985年8月12日に手稲駅 - 札幌駅間で「ホームライナー」の運行が開始され、国鉄では4例目となった。JR発足後の1988年3月13日から小樽駅→札幌駅間の列車も加わった[10]。2013年11月1日のダイヤ改正から小樽駅→手稲駅間が運行休止となっていたが、2014年8月1日から全区間の運行が再開された。その後、2015年3月14日のダイヤ改正から小樽駅→札幌駅間の列車の運行を取りやめた[11]。2020年2月現在は平日朝に手稲駅→札幌駅間の列車3本が運行されている。
乗車整理券は100円とされており、現在に至るまで料金の変更はない。手稲駅の改札内に乗車整理券の自動券売機が設置されており、乗車する際は券売機で購入した整理券を列車出入り口付近に立つ係員に渡して乗車する。グリーン車が連結されている場合、追加料金無しで自由にグリーン車に着席できる。かつて運行されていた小樽駅発のホームライナーは、小樽駅 - 銭函駅で乗車する場合、乗車整理券は310円であった。運行開始当初は会員制の団体専用列車とされており、旅客が会員証を提示することにより11枚セットの「特急回数乗車整理券」(1,000円)が発行された[12]。
列車には号数が与えられておらず、時刻表上は全て「ホームライナー」と表記されている。
車両は、手稲駅 - 札幌駅間の列車では785系電車・789系1000番台電車・キハ261系1000番台気動車・キハ281系気動車・キハ283系気動車。手稲駅はホーム有効長が6両分しか無いため、キハ283系気動車など7両以上の編成を使用する場合にはホームからはみ出して停車する。小樽駅→札幌駅間の列車では785系電車・789系1000番台電車が使用されていた。
- 停車駅
現在は手稲駅→札幌駅間途中無停車。途中無停車ではあるものの、前後を普通列車が走行しているため高速運転ができず、手稲駅→札幌駅間の所要時間は普通列車と同じである。過去運行されていた小樽駅→札幌駅の列車は、 小樽駅 - 南小樽駅 - 小樽築港駅 - 銭函駅 - 手稲駅 - 札幌駅
仙台地区
常磐線では、2005年12月16日から2007年3月16日まで、仙台駅 - 原ノ町駅間で「常磐ホームトレイン」が運行されていた。
首都圏
首都圏では東京都心の山手線上の各ターミナル駅(東京駅・上野駅・新宿駅)と埼玉県・千葉県・神奈川県・茨城県・多摩地区の各ベッドタウンとの間で、これまでに大きく分けて6系統の列車が運行されてきた。列車愛称は朝時間帯に運行されるものに「おはようライナー○○」、夜時間帯に運行されるものに「ホームライナー○○」と名付けられている線区が多い。○○には郊外側の駅名が入るが、例外として「おはようライナー新宿」は都心側の駅名を採ることで東京駅方面の「湘南ライナー」との区別がなされている。
運行開始当時は300円(のち310円)の「乗車整理券」での乗車制度となっていたが、1999年3月1日より500円(のち520円)に改定され[13]、名称も「ライナー券」と改められた。朝ラッシュ時に運行される「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「おはようライナー逗子」では、1か月分のライナー券が1枚になった「ライナーセット券」が発売されていた[12]。
首都圏では普通列車へのグリーン車導入や特急列車への置き換えが進んだこともあり、2021年春をもって全廃となった。
ここでは設定された年代順に記載する。使用車両はすべて電車である。
- 宇都宮線(東北線)・高崎線
- 1984年6月1日に国鉄・JR最初のホームライナーとして上野駅→大宮駅間で運行が開始され、「ホームライナー大宮」と命名された[4][14]。その後運行区間が宇都宮線古河駅、高崎線鴻巣駅まで延伸されて「ホームライナー古河」「ホームライナー鴻巣」となった。運行開始以来夜間のみの運行で、新宿駅発の列車も設定されていたことがある。
- 2014年3月15日改正において特急「スワローあかぎ」の置換えなどにより全列車が廃止された[15][16]。
- 車両は185系・189系・485系・489系が用いられた。
- 総武快速線
- 総武快速線では、1984年7月13日に国鉄で2例目のホームライナーとして東京駅→津田沼駅間の「ホームライナー津田沼」として運行が開始され、翌年には新宿駅発列車も設定された[4][14]。その後運行区間が千葉駅まで延伸されて現在の名称「ホームライナー千葉」となった。朝の列車は一時期のみ「おはようライナー津田沼」が設定されていたが、廃止時点では夜間のみ運行されていた。
- 2019年3月16日改正において全列車が廃止された[17]。
- 車両は房総特急で使用される255系・E257系500番台を使用。過去には183系が使用された。
- 東海道線
- 東海道線東京口では1986年11月1日に小田原駅・平塚駅 - 東京駅間で「湘南ライナー」の運行が開始された[4][14]。1988年からは走行ルートとして東海道貨物線が活用され、新宿駅発着の「湘南新宿ライナー」も新設された[4][14]。この「湘南新宿ライナー」は後に「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」と名称が変更されて現在に至っている。運行規模はJR全線区中最大を誇り、最盛期には朝12本・夜間13本、最末期は朝10本・夜間11本が運行されていた。
- 車両は特急「踊り子」などで使用される185系のほか、ライナー用に製造された215系が使用されている。かつては「スーパービュー踊り子」で使用されていた251系や中央線用の183系・E351系・E257系0番台も用いられていた。なお、下り列車については大船以西の区間は快速となり、一般乗客も乗車可能(但し、着席の保証は無い)。
- 2021年3月13日改正で東京・新宿 - 小田原間で新設された特急「湘南」への置き換えにより全列車が廃止された[18]。
- 常磐線
- 常磐線では1989年3月11日に「ホームライナー土浦」、翌1990年3月10日に「おはようライナー土浦」がそれぞれ上野駅 - 土浦駅間で運行が開始された。車両は485系を使用。1998年12月8日に特急「フレッシュひたち」に置き換えられる形で廃止された。
- 横須賀線
- 横須賀線では1990年3月10日に東京駅 - 逗子駅間で「おはようライナー逗子」「ホームライナー逗子」の運行が開始された[4][14]。車両は当初は183系、その後はE257系500番台を使用していた。2015年3月14日のダイヤ改正で廃止された。
- 中央線・青梅線
- 中央線・青梅線では、1991年3月16日に高尾駅 - 新宿駅間で「おはようライナー高尾」「ホームライナー高尾」、新宿駅 - 青梅駅間で「ホームライナー青梅」の運行が開始された[4][14]。2001年には全車座席指定制とするとともに運行区間を東京駅 - 高尾駅・青梅駅に改め、名称を高尾駅発着は「中央ライナー」、青梅駅発着は「青梅ライナー」に改められた。「えきねっと」加入者向けに携帯電話を使用した予約サービスが行われていることが特徴[10][19]。
- 2019年3月16日改正において特急「はちおうじ」「おうめ」への置換えなどにより全列車が廃止された[20]。
- 車両はE257系0番台・E351系を使用。過去には183系・185系が使用された。
-
185系
「ホームライナー鴻巣」 -
489系
「ホームライナー鴻巣」 -
185系
「ホームライナー古河」 -
185系
「湘南ライナー」 -
215系
「湘南ライナー」 -
183系
「中央ライナー」 -
E351系
「中央ライナー」 -
E257系
「中央ライナー」 -
E257系
「青梅ライナー」
長野地区
長野地区では、1989年3月より信越本線にL特急あさま用の189系・489系電車を使用した快速「モーニングライナー」の運行が朝の軽井沢駅 - 長野駅間で開始された。また、夜には長野駅 - 小諸駅間で快速みすず用の165系・169系電車を使用した快速「ホームライナー」も運行されていた[21]。この列車は1997年の北陸新幹線長野駅までの開業に伴う信越本線のしなの鉄道移管後も継承され、「しなのサンライズ」「しなのサンセット」として運行されている(以降は後述の「#しなの鉄道」の節を参照)。
2004年10月16日からは篠ノ井線松本駅 - 長野駅間に「おはようライナー」の運行が開始され、翌2005年には塩尻駅 - 長野駅間に区間が延長された。平日は基本的に毎日運行されていたが、列車としては臨時快速列車の扱いであった[22]。乗車整理券は300円で、車両は183系・189系電車(2015年5月以降は189系のみ)を使用。2019年3月16日のダイヤ改正を前に運転を終了し、改正後は211系電車を使用した乗車整理券不要の快速列車として運行されている(こちらも列車としては臨時快速列車の扱い[23])。
新潟地区
新潟駅を中心とした新潟地区では、1994年に信越本線新潟駅→長岡駅間で夜間に運行開始。2004年3月13日に白新線・羽越本線新潟駅→村上駅間の「らくらくトレイン村上」が新設され、従来の列車は「らくらくトレイン長岡」と改称された[10]。「らくらくトレイン長岡」はさらに2012年に「らくらくトレイン信越」と改称され、新潟駅→直江津駅間での運行となった[24]。「らくらくトレイン」は夜間に運行され、乗車整理券は300円。
また直江津駅→新潟駅間では朝に「おはよう信越」が2012年より運行されているが、これは全車指定席であり、普通車の利用は乗車整理券やライナー券ではなく指定席券が必要とされている[24]。
現在車両はすべてE653系電車を使用し、毎日運転される。E653系置換え以前は485系が使用されていた。
2021年に「おはよう信越」と「らくらくトレイン信越」を全車指定席の「信越」に統合、「らくらくトレイン村上」は廃止となり、乗車整理券制によるライナーは廃止された。
静岡地区
静岡県内の東海道本線では、1991年3月16日よりホームライナーの運行が開始された。同県3大都市の沼津駅・静岡駅・浜松駅の相互間で運行されており、列車名は終着駅名を採り「ホームライナー沼津」「ホームライナー静岡」「ホームライナー浜松」となっている。かつては三島駅発浜松駅行きの設定もあり、この列車の走行距離は営業キロで136.4キロメートルと、歴代ホームライナーの中では最長である[注 3]。
車両はすべて373系電車の3両・6両編成だが、設定当初から2012年まで「あさぎり」用の371系電車も運用されていた。
なおこの地区ではホームライナー設定以前の1989年(平成元年)7月から、乗車整理券方式の「花の木金号」が週末深夜に165系電車(一時的に311系電車が使われたこともある)を使用して(運転開始直後はゆうゆう東海が優先的に使用されていた)各駅停車で運行されており、この列車は後に「ホームライナー」に吸収された。
名古屋地区
名古屋地区では名古屋駅を中心として東西南北4方向に路線が伸び、その全方向に対してホームライナーが設定されたが、現在は中央本線と東海道本線大垣方面の2方向のみの設定となった。列車愛称は朝・夜の列車とも郊外側の発着駅名を採って「ホームライナー○○」としている[25]。
- 中央本線
- 中央西線では、国鉄民営化直前の1987年3月23日に名古屋駅→中津川駅間で設定されたのが最初である。その後「ホームライナー中津川」のほか、「ホームライナー多治見」「ホームライナー瑞浪」も登場した。車両は「しなの」用の383系電車、および313系8000番台電車が使用される。1990年3月からはキハ85系気動車を使用した太多線直通の「ホームライナー太多」(名古屋駅 - 美濃太田駅間)も設定されていたが、2012年3月のダイヤ改正で廃止されている。
- またこの線区では日中にホームライナーと同様の乗車制度を採用した「セントラルライナー」が、1999年12月から2013年3月まで名古屋駅 - 中津川駅間で運行されていた。これが昼間帯に運行されたライナー列車の唯一の例である。
- 東海道本線
- 名古屋地区の東海道本線では、1988年3月に「ホームライナーながら」が名古屋駅 - 大垣駅間で設定されたのが最初である。その後同列車は「ホームライナー大垣」と改称され運行されている。かつては名古屋以南にも設定があり「ホームライナー豊橋」「ホームライナー岐阜」「ホームライナー蒲郡」「ホームライナー岡崎」が設定されていたほか、大垣以北に行く「ホームライナー関ヶ原」が運行されていた。
- 車両は「はくたか」から「しらさぎ」に転用された681系電車・683系電車が使用されている。過去には485系電車、キハ85系気動車、373系電車も使用されていた[26]。
- 関西本線
- 関西本線名古屋口では、1988年7月1日から1990年3月9日まで名古屋駅 - 伊勢市駅間でキハ82系気動車を使用して「ホームライナーみえ」が運転されたが、快速「みえ」に代替される形で廃止された。
- また、1996年3月から2011年3月まで、四日市駅→名古屋駅間に「ホームライナー四日市」がキハ85系気動車で運行されたが、これも快速「みえ」に代替される形で廃止された。
-
683系
「ホームライナー大垣」 -
373系
「ホームライナー豊橋」 -
383系
「ホームライナー中津川」 -
キハ85系
「ホームライナー太多」
近畿圏
近畿圏では、大阪環状線内の大阪駅・天王寺駅を中心として大阪府南部 - 和歌山県方面・滋賀県方面・奈良県方面・兵庫県東部(丹波)方面の4線区で設定されていたが、2000年代以降の特急の通勤時間帯への拡充などにより、現在は運行されていない。各線区ごとに列車愛称が異なっていた[5]。
- 阪和線
- 阪和線では、国鉄時代の1984年9月に国鉄3例目、近畿圏では初のホームライナーとして「ホームライナーいずみ」が天王寺駅 - 日根野駅間で設定された。その後1986年11月に天王寺駅 - 和歌山駅間に運行区間が延長され、列車名も「はんわライナー」に改称。最盛期には朝3本・夜5本が運行され、近畿圏では最大の運行規模となったが、特急の増発に伴ってライナーの減便が行われ、2011年3月のダイヤ改正をもって全列車が廃止された。車両は「くろしお」用の381系電車が使用された。
- 東海道本線(琵琶湖線・JR京都線)
- 琵琶湖線・JR京都線では、1987年10月より米原駅 - 大阪駅間で「びわこライナー」1往復が運行された。車両は「雷鳥」用の485系電車を使用。2003年6月に特急「びわこエクスプレス」[注 4] に置き換えられる形(同時に車両も681・683系電車に置き換え)で廃止された。
- 関西本線(大和路線)
- 大和路線では、1988年3月の加茂駅 - 木津駅間電化にあわせ、「やまとじライナー」の運行が開始された。運行区間は朝が木津駅→湊町駅(現在のJR難波駅)間、夜が大阪駅→加茂駅間であった。車両は381系電車を使用。2011年3月のダイヤ改正をもって区間快速に代替される形で廃止された。
- 福知山線(JR宝塚線)
- JR宝塚線では、1988年3月より篠山口駅 - 大阪駅間で「ほくせつライナー」が運行された。車両は「北近畿」用の485系・183系電車のほか、「エーデル北近畿」用のキハ65形気動車改造車も用いられた。2002年10月に特急「北近畿」(現在は「こうのとり」に改称)に置き換えられる形で廃止された。
-
381系
「はんわライナー」 -
381系
「やまとじライナー」 -
キハ65系
「ほくせつライナー」
九州地区
JR九州では「エアポートライナー」を除き、朝の列車は「さわやかライナー」、夜の列車は「ホームライナー」の列車名で運行されていた。本社直轄の福岡都市圏と、鹿児島支社管内の宮崎地区・鹿児島地区の合計3地区で設定されたが、現在はいずれも運行されていない。各地区とも車両は主に485系電車が使用された[10]。
これらのライナーは「エクセルパス」で乗車する場合、乗車整理券を不要としていた[注 5]。
- 福岡・北九州地区
- 博多駅を中心とした福岡地区の鹿児島本線では、1987年6月より門司港駅 - 博多駅間で「エアポートライナー」「ホームライナー」の運行が開始され、2001年3月に特急「きらめき」に置き換えられるまで運行されていた。また、博多駅 - 大牟田駅でも設定されたが、こちらは1995年4月のダイヤ改正をもって廃止された。
- 宮崎地区
- 宮崎駅を中心とした宮崎地区の日豊本線では、まず1990年3月に西都城駅→宮崎駅間に1本設定され、1992年7月には宮崎空港へのアクセス列車を兼ねて延岡駅 - 宮崎駅間において朝と夜に設定された。1996年7月の宮崎空港線開業後は延岡駅発着列車が同線宮崎空港駅まで延長された。車両は485系のほかに783系電車も使用されたが、2011年3月に特急「ひゅうが」「きりしま」に置き換えられて廃止された。
- 鹿児島地区
- 鹿児島地区では西鹿児島駅(後の鹿児島中央駅)を中心として、鹿児島本線と日豊本線で運行された。
- 鹿児島本線では、1989年3月に川内駅 - 西鹿児島駅間に設定され、後に運行区間が出水駅 - 西鹿児島駅・鹿児島駅間に延長されたが、2004年3月の九州新幹線部分開業とともに川内駅以北が経営分離されたのに伴い、再び川内駅 - 鹿児島中央駅間に短縮。2011年3月に特急「川内エクスプレス」に置き換えられ、廃止された。
- 日豊本線では、1990年3月より国分駅 - 西鹿児島駅間で運行されていたが、 2004年3月に特急「きりしま」に置き換えられて廃止された。
特急列車・快速列車との関連
前述したように、ホームライナー等は特急列車や快速列車への置き換えによって数を減らしつつある。特急に格上げされたケースとしては常磐線の「フレッシュひたち」(現在の「ときわ」)の一部や琵琶湖線・JR京都線の「びわこエクスプレス」、かつての鹿児島本線の「川内エクスプレス」などが存在する。
地区によっては元からホームライナー等を設定せず、代わりに同様の性格を持つ特急(いわゆる通勤特急)を運行しているケースもある。JR西日本北陸地区の「おはようエクスプレス」「おやすみエクスプレス」、JR四国の「ミッドナイトEXP」「ホームエクスプレス阿南」、JR九州の「かいおう」などが該当する。また、ホームライナーを運行している路線であっても、JR東海の中央線やかつてのJR東日本の総武快速線や高崎線のように、並行して通勤特急も運行し両者を共存させることにより、短距離利用はホームライナー・長距離利用は特急(または新幹線)と振り分けることで利用客の遠近分離が図られている線区もある[10][14]。
JR西日本の山陰地区や広島地区では「通勤ライナー」を名乗るホームライナーと同様の性格の列車が運行されているが、こちらは追加料金を要しない一般の快速列車である。山陰地区ではかつて特急形車両が使用されていた。
私鉄・第三セクターにおける類似列車
JR以外においても、ホームライナーに類似する列車を運行している鉄道事業者が存在する。ここではJRのライナーと同様に着席通勤を目的として座席定員制で運転されるものを中心に記載する。
なお、ライナー列車としての固有種別の形をとってはいないが、小田急電鉄や東武鉄道(伊勢崎線・日光線・野田線系統)・西武鉄道・名古屋鉄道・近畿日本鉄道では通勤輸送向けに有料特急列車が設定されている。これらの列車は種別・運行形態こそ基本的に日中の特急列車と変わらない[注 6] が、利用実態はホームライナーに比較的近く、かつて国鉄がホームライナーを設定するにあたってのヒントともされた[4]。ただし、東武鉄道で運行している浅草駅発の特急「スカイツリーライナー」「アーバンパークライナー」は途中駅せんげん台駅以降[注 7] は料金不要の一般列車となる運行形態がとられている。
これらについては、「ホームウェイ・モーニングウェイ」(小田急電鉄)、「しもつけ (列車)」「りょうもう」「けごん」「きりふり (列車)・スカイツリーライナー」「アーバンパークライナー」(以上東武鉄道)、「レッドアロー」(西武鉄道)、「名鉄特急」、「近鉄特急」も参照。
京成電鉄
京成電鉄では、朝に上り「モーニングライナー」、夜間に下り「イブニングライナー」を運転している。これらは「スカイライナー」用のAE形(2010年7月16日まではAE100形)が充当され、ライナー券は座席指定でなく車両指定で、乗車整理券扱いとなっていたが、2015年12月5日改正からスカイライナー同様、全席座席指定に変わっている。
停車駅は「スカイライナー」より多く設定され[注 8] 通勤客の利便が図られているものの、「シティライナー」が停車するJR総武線・東武野田線との乗換駅である京成船橋駅は通過として、あくまでも都心まで・都心からの乗り通しを前提としていたが、2015年12月5日改正から「シティライナー」の廃止の代替として、同駅にも停車するようになった。これらの運行時間帯には夕方の移行時間帯を除き「スカイライナー」が運転されないため、空港アクセス列車としても利用される。
京浜急行電鉄
京浜急行電鉄では、1992年4月から平日の夕方以降に座席定員制の「京急ウィング号」を運行している。列車は全席クロスシート車両である2100形が充当され、下り列車のみの運行で京急川崎駅・横浜駅を通過し、途中停車駅からの乗車は料金不要といった特徴を持つ。
2015年12月7日から平日の早朝に「モーニング・ウィング号」が運行開始。上り列車のみの運行で、「京急ウィング号」よりも停車駅が少ない、途中停車駅からの乗車でも別料金が必要等の特徴がある。
当初は座席定員制だったが、2017年5月1日から全席指定となった。
東武鉄道
東武東上線では2008年6月14日のダイヤ改正で、着席乗車目的の座席定員制「TJライナー」を夕方以降の時間帯に運転開始。本列車には50090系を新製充当。下り列車の途中停車駅からの乗車は料金不要である。2016年3月26日からは平日のみ朝の上り方向でも運行を開始した。
東武伊勢崎線では2020年6月6日のダイヤ改正より、日比谷線との直通列車として70090型を使用した座席指定制列車「THライナー」を運行している。
西武鉄道・東京地下鉄・東急電鉄・横浜高速鉄道
西武鉄道他3社では2017年3月25日のダイヤ改正より座席指定制「S-TRAIN」を運転開始した。全区間で座席指定料金が必要である。
2018年3月10日のダイヤ改正より、西武新宿駅始発で「拝島ライナー」の運転を開始した[27]。こちらは途中の小平駅以降の停車駅から乗車する場合は座席指定料金は不要である。
京王電鉄
京王電鉄では2018年2月22日のダイヤ改正より「京王ライナー」の運行を開始した。乗車には座席指定料金が必要であるが、下り列車については途中停車駅から乗車する場合の別料金は不要である。
しなの鉄道
しなの鉄道では、転換以前から運行されていたライナー列車を引き継ぐ形で1997年から「しなのサンライズ」および「しなのサンセット」を運行している。当初は乗車整理券制だったが、2015年に一旦料金不要に変更[28]。その後SR1系の運行開始に伴い2020年から座席指定制に変更された。
あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道
あいの風とやま鉄道ならびにIRいしかわ鉄道は、北陸本線からの転換後最初の平日となる2015年3月16日より、座席指定制の「あいの風ライナー」を朝夕の時間帯に運行する[29]。
WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)
WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)は、2017年3月4日のダイヤ改正により、宮福線に朝の上り1本のみ「通勤ライナー」を運行している[30]。JR西日本の同名の列車とは異なりライナー券を要する列車となっているが、ライナー券の発売枚数に制限はなく、着席保証はない[31]。特急用車両であるKTR8000形「丹後の海」編成で運行されている。
京阪電気鉄道
京阪電気鉄道では、2017年8月21日から平日朝の下り方向に、全席指定制の「ライナー」を運転している。2018年9月15日のダイヤ改正から夕方から夜にかけて上り方向にも運転開始、下りも出町柳発の運転も開始した。同列車には8000系が充当され、乗車する場合はライナー券(プレミアムカー乗車の場合はプレミアムカー券)が必要である。下りは出町柳駅から七条駅間の相互利用は不可能で、京橋駅から先はライナー券なしで一般車両に乗車可能である。上りは淀屋橋駅から京橋駅間の相互利用は不可能で、七条駅から先はライナー券なしで一般車両に乗車可能である。
JRの運行開始以前に運行されたホームライナーに相当する列車
名古屋鉄道が過去にホームライナーに相当する列車を運行していた。愛称は「ディーゼル特急」で、特急「北アルプス」の間合い運用で名鉄キハ8000系気動車によって運行されていた。徳田耕一の文献によると、設定開始は1965年12月30日のダイヤ改正で、区間は豊橋 - 新名古屋(現名鉄名古屋)間。一等車であったキロ8100型も連結されており、運行開始当初は一等110円、二等50円の線内特急料金を要したが[注 9]、座席が完全に指定され、なおかつ定期券での乗車が可能だったため好評だったという。翌1966年春のダイヤ改正で夕方に1往復増発され、さらに1970年秋の改正で昼間に4往復増発された。運行終了時期は定かではない[32]。
注記
- ^ 登録第3022530号。役務商標を認める商標法改正が施行された1992年に出願された。
- ^ 首都圏の「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」や名古屋地区ではグリーン料金を要する代わりに乗車整理券が不要とされている。
- ^ 次点は0.1キロメートル差で「らくらくトレイン信越」の136.3キロメートル。
- ^ 2019年3月より通勤特急に変更。
- ^ JR九州公式サイト「特急定期券エクセルパス」では「さわやかライナー、ホームライナーにも乗車可能」との記載があった。
- ^ 路線によっては平日ダイヤ時、あるいは朝夕ラッシュ時のみ運行されるケースも多い。
- ^ 大宮駅始発「アーバンパークライナー」は春日部駅以降。
- ^ 現在のスカイライナーは当ライナーとは異なるルートを経由するが、日暮里~空港第2ビル間はノンストップ。
- ^ 当時の名鉄特急はこのディーゼル特急と初詣時の臨時特急以外原則として料金不要で乗車することが可能であった。
出典
参考文献
- 佐藤信之「総武・中央緩行線をめぐり--記憶に残しておきたい5つの話」『鉄道ピクトリアル』第590号、1994年。
- 『鉄道ジャーナル』第33巻第4号、鉄道ジャーナル社、1999年4月。
- 「【特集】通勤ライナー」『鉄道ピクトリアル』第747号、電気車研究会、2004年6月。
- 大塚良治「通勤輸送向け着席保証列車の可能性―企業価値向上と利用客の満足度向上の両立に向けて―」『湘北紀要』第32号、2011年3月。
- 徳田耕一『新版まるごとJR東海ぶらり沿線の旅』七賢出版、1998年。ISBN 4-88304-339-8。
- 徳田耕一『名鉄パノラマカー』。
脚注
- ^ 大塚(2011) p.110
- ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻747号【特集】通勤ライナー
- ^ 佐藤(1994) p.58
- ^ a b c d e f g h i 「首都圏の国鉄-JR 通勤ライナー運転変遷史」(pp.52-55)
- ^ a b c 「JR各社のライナー輸送 歴史と概況 JR西日本アーバンネットワーク」(pp.20-23)
- ^ “「必ず座れる」JR東の通勤ライナー、3月でお別れ…コロナ禍と重なり需要減”. 読売新聞 (2020年1月30日). 2021年1月30日閲覧。
- ^ 大塚(2011) p.112
- ^ 大塚(2011) p.118
- ^ 徳田(1998) p.80
- ^ a b c d e 「「通勤ライナー」 その生い立ちと現状」(pp.44-51)
- ^ 平成27年春ダイヤ改正について (PDF) - JR北海道プレスリリース 2014年12月19日
- ^ a b 「全国 JR通勤ライナー 乗車整理券便覧」(pp.41-13)
- ^ RJ1999 p.83
- ^ a b c d e f g 「JR各社のライナー輸送 歴史と概況 JR東日本東京圏」(pp.10-15)
- ^ 2014年3月ダイヤ改正について (PDF) - 東日本旅客鉄道プレスリリース 2013年12月20日付、同月22日閲覧。
- ^ 2014年3月ダイヤ改正について (PDF) - 東日本旅客鉄道高崎支社プレスリリース 2013年12月20日付、同月22日閲覧。
- ^ 2019年3月ダイヤ改正について (PDF) - 東日本旅客鉄道プレスリリース 2018年12月14日付、同月16日閲覧。
- ^ "東海道線特急が新しく生まれ変わります" (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道. 12 November 2020. 2020年11月12日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2020年11月12日閲覧。
- ^ ライナー券携帯電話予約サービス - 東日本旅客鉄道ウェブサイト、2012年1月20日閲覧。
- ^ 2019年3月ダイヤ改正について (PDF) - 東日本旅客鉄道プレスリリース 2019年12月14日付、同月16日閲覧。
- ^ 平成9年3月22日改正 上田駅監修 信越線/中央線時刻表
- ^ (株)交通新聞社 全国版 コンパス時刻表 2018年5月 第580項
- ^ JR東日本長野支社 ポケットJR時刻表 2019春号 3月16日ダイヤ改正列車掲載 第69項
- ^ a b 2012年3月ダイヤ改正について (PDF) - 東日本旅客鉄道新潟支社プレスリリース、2011年12月16日付、2013年1月14日閲覧。
- ^ 「JR各社のライナー輸送 歴史と概況 JR東海名古屋圏」(pp.16-19)
- ^ “373系の名古屋地区“ホームライナー”運用が終了”. 鉄道ファン railf.jp. 交友社 (2013年3月16日). 2013年3月17日閲覧。
- ^ "2018年3月10日(土)から「拝島ライナー」の運行を開始します!" (PDF) (Press release). 西武鉄道. 25 January 2018. 2018年1月25日閲覧。
- ^ 快速乗車整理券(200円)の廃止について (PDF) - しなの鉄道公式サイト、2015年2月27日。2015年3月7日閲覧。
- ^ 開業時の列車運行ダイヤについて - あいの風とやま鉄道、2015年1月8日、同日閲覧。
- ^ 平成29年3月ダイヤ改正について - 京都丹後鉄道 2017年1月12日
- ^ よくあるご質問 - 京都丹後鉄道 2017年6月2日閲覧
- ^ 徳田 p.41