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|兵種 = [[特殊部隊]]、テロ対処部隊{{Efn2|[[警察庁]]は[[警察白書]]の中で、特殊部隊(SAT)、[[銃器対策部隊]]、[[NBCテロ対応専門部隊]]、[[爆発物処理班]]を『テロ対処部隊』に位置付けている<ref>[https://www.npa.go.jp/hakusyo/h26/honbun/html/q6120000.html 【警察庁】平成26年版警察白書(第6章第1節第2項 国際テロ対策)]</ref>。}}
|人員 = 11個班<br>300名<ref>{{Citation|和書|editor=[[警察庁]]|date=2011年3月|issue=279|url=http://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten279/p18.html|title=平成22年の警備情勢を顧みて|journal=焦点|chapter=警察の集団警備力}}</ref>
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'''特殊急襲部隊'''(とくしゅきゅうしゅうぶたい、{{Lang-en|Special Assault Team, '''SAT'''}})は、[[日本の警察]]の[[警備部]]に編成されている[[特殊部隊]]。[[対テロ作戦]]を担当しており、[[ハイジャック]]や[[重要防護施設|重要施設占拠]]等の重大[[テロリズム|テロ事件]]、[[組織犯罪|組織的な犯行]]や強力な[[武器]]が使用されている事件において、[[被害者]]等の安全を確保しつつ事態を[[鎮圧]]し、[[被疑者]]を[[逮捕 (日本法)|検挙]]することをその主たる任務としている{{Sfn|警察庁|2014}}。また、[[刑事部]]の[[特殊事件捜査係]]だけでは対処できない凶悪事件にも出動する。
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'''特殊急襲部隊'''(とくしゅきゅうしゅうぶたい、{{Lang-en|Special Assault Team, '''SAT'''}}(サット))は、[[日本の警察]]の[[警備部]]に編成されている[[特殊部隊]]。


なお、特殊急襲部隊という名称は「Special Assault Team」を日本語に直訳したもので、正式な部隊名ではない。日本警察においてSATの正式な部隊名は'''特殊部隊'''であり<ref>{{Cite web|和書|archiveurl=https://warp.da.ndl.go.jp/collections/content/info:ndljp/pid/286864/www.npa.go.jp/pdc/notification/keibi/keibi/keibi19960401.pdf|url=http://www.npa.go.jp/pdc/notification/keibi/keibi/keibi19960401.pdf|archivedate=2009-07-01|title= 警察庁通達 特殊部隊の再編強化について 平成8年4月1日乙備発第6号|date=1996-04-01|author=警察庁|accessdate=2022-02-26}}</ref>、さらに所属する都道府県警察名を付けるため、'''警視庁特殊部隊'''、'''千葉県警察特殊部隊'''などと表記されている<ref>警視庁組織規則</ref>{{Efn2|千葉県警察ホームページ内の資料に「千葉県警察特殊部隊指揮支援班運用要綱の制定について 平成19年8月23日例規(備)第63号」という例規通達があり、SATの名称を「千葉県警察特殊部隊」と表記している<ref>{{Cite web|和書|archiveurl=https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/284752/www.police.pref.chiba.jp/information/orders/pdfs/keibi/h190823.pdf|archivedate=2009-03-04|title= 千葉県警察特殊部隊指揮支援班運用要綱の制定について 平成19年8月23日例規(備)第63号|url=http://www.police.pref.chiba.jp/information/orders/pdfs/keibi/h190823.pdf|date=2007-08-23|accessdate=2022-02-26|author=千葉県警察}}</ref>。}}。
SATは[[ハイジャック]]や重要施設占拠等の重大[[テロリズム|テロ事件]]、組織的な犯行や強力な武器が使用されている事件において、[[被害者]]等の安全を確保しつつ事態を鎮圧し、[[被疑者]]を検挙することをその主たる任務としている<ref name="hakusyo">{{cite book|和書|editor=[[警察庁]]|title=平成14年 [[警察白書]]|chapter=第2章 国際テロ情勢と警察の対応|url=https://www.npa.go.jp/hakusyo/h14/h140202.html|year=2002|publisher=財務省印刷局|isbn=978-4171821770}}</ref>。また、[[刑事部]]の[[特殊事件捜査係]]だけでは対処できない凶悪事件にも出動する。


== 来歴 ==
なお、特殊急襲部隊という名称は「Special Assault Team」を日本語に直訳したもので、正式な部隊名ではない。日本警察においてSATの正式な部隊名は'''特殊部隊'''であり<ref>[https://www.npa.go.jp/pdc/notification/keibi/keibi/keibi19960401.pdf 警察庁通達「特殊部隊の再編強化について」平成8年4月1日乙備発第6号]</ref>、さらに所属する都道府県警察名を付けるため、'''警視庁特殊部隊'''、'''千葉県警察特殊部隊'''などと表記されている<ref>警視庁組織規則に記載</ref>{{Efn2|千葉県警察ホームページ内の資料に「千葉県警察特殊部隊指揮支援班運用要綱の制定について 平成19年8月23日例規(備)第63号」という例規通達があり、SATの名称を「千葉県警察特殊部隊」と表記している<ref>[http://www.police.pref.chiba.jp/information/orders/pdfs/keibi/h190823.pdf]</ref>}}。
=== 特殊部隊の誕生 ===
[[1972年]]9月5日に[[西ドイツ]]で[[ミュンヘンオリンピック事件]]が発生し、犯行グループによりイスラエル選手11名が殺害された。翌日の9月6日、[[警察庁]]は全国の[[都道府県警察]]に対して[[通達]]を出し、「銃器等使用の重大突発事案」が発生した際、これを制圧できるよう特殊部隊の編成を行う事とした<ref>[[警察庁次長]]発各都道府県警察の長宛通達「特殊部隊の編成について」昭和47年9月6日乙備発第11号</ref>。


これに基づき、全国の[[機動隊]]に特殊部隊が設置された。これらの部隊は銃器使用事件をはじめ、ハイジャック事件など高度な逮捕制圧技術を要する事案に備えるため、耐弾・耐爆性能を有する装備資器材を有していた<ref>{{Cite book|和書|editor=警察庁|chapter=第8章 公安の維持|title=昭和49年 警察白書|publisher=大蔵省印刷局|url=https://www.npa.go.jp/hakusyo/s49/s490800.html|ncid=AN10025504|ref=harv}}</ref>。[[警視庁警備部#機動隊|警視庁機動隊]]では第一〜九機動隊および特科車両隊に特殊部隊を設置していたが、ふだんはレスキュー隊員や一般の警備に出動しているメンバーで、訓練といっても年に数回行なっているにすぎなかった{{Sfn|永峯|1978|pp=202-204}}。
== 沿革 ==
[[1972年]]9月5日に[[西ドイツ]]で[[ミュンヘンオリンピック事件]]が発生し、犯行グループによりイスラエル選手11名が殺害された。翌日の9月6日に[[警察庁]]は全国の[[都道府県警察]]に対して[[通達]]を出し、「銃器等使用の重大突発事案」が発生した際、これを制圧できるよう特殊部隊の編成を行う事とした<ref>[[警察庁次長]]発各都道府県警察の長宛通達「特殊部隊の編成について」昭和47年9月6日乙備発第11号</ref>。


=== 特科中隊と零中隊 ===
[[1974年]]の[[警察白書]]には、この通達で編成された部隊が紹介されており、以下のように記載されている。
[[1977年]]9月に発生した[[ダッカ日航機ハイジャック事件]]において、[[日本国政府|日本政府]]は、一度は機動隊員23名の派遣を検討したものの、[[バングラデシュ]]当局に拒絶されて、結局は犯人側の要求を全面的に受け入れるかたちでの決着となった{{Sfn|永峯|1978|pp=202-204}}。これに対し、翌月に発生した[[ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件]]では、西ドイツ政府は犯人側の要求を受け容れることなく、ミュンヘンオリンピック事件を教訓に創設した特殊部隊[[GSG-9]]の突入作戦によって犯人を制圧、人質を解放した{{Sfn|伊藤|2004|pp=35-45}}。
{{Quotation|銃器使用事件をはじめ、ハイジャック事件など高度な逮捕制圧技術を要する事案の発生に備えて、全国の[[機動隊]]には、耐弾・耐爆性能を有する装備資器材をもつ「特殊部隊」が編成され、実戦的な訓練を実施している}}
一方、当時[[警視庁]][[記者クラブ]](七社会)に籍を置いた[[記者]]は、この特殊部隊について以下のように記載している。
{{Quotation|警視庁の第一〜第九機動隊、特科車両隊には、特殊部隊はあった。しかし、ふだんはレスキュー隊員や一般の警備に出動しているメンバーで、訓練といっても年に数回行なっているにすぎなかった。|永峯正義『この剛直な男たち 警視庁機動隊30年のあゆみ』立花書房 P.204、1978年}}


ダッカ事件の後、警察は従来の「特殊部隊」による、より実戦的な訓練に着手したものの{{Sfn|永峯|1978|pp=202-204}}、2つのハイジャック事件が異なる結末を迎えたことを契機として、政府関係者や警察上層部のあいだで、より本格的な[[対テロ作戦]][[部隊]]の保有論が強まった{{Sfn|伊藤|2004|pp=35-45}}。警察庁は警視庁と大阪府警察に対テロ作戦部隊の編成を下命し、警視庁では1977年10月20日より隊員の面接を開始した。そして同年11月1日、警視庁[[警視庁警備部#機動隊|第六機動隊]] 特科中隊および大阪府警察第二機動隊 零中隊として、対テロ作戦部隊が発足した{{Sfn|伊藤|2004|pp=46-51}}{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}。
警察庁の通達後、[[1977年]]9月28日に[[ダッカ日航機ハイジャック事件]]が発生し、犯行グループは[[日本国政府|日本政府]]に身代金の支払いと、獄中メンバーの釈放を要求した。日本政府は犯行グループの要求を受け入れて身代金を支払い、[[超法規的措置]]により獄中にいたメンバーなど6人を釈放した。さらに、事件から約1ヶ月後の10月13日には、[[ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件|ルフトハンザ航空機ハイジャック事件]]が発生し、犯行グループは日航機ハイジャック事件と同様に、西ドイツ政府に身代金の支払いと、獄中メンバーの釈放を要求した。これに対して西ドイツ政府はミュンヘンオリンピック事件を教訓に創設した特殊部隊[[GSG-9]](国境警備隊第9部隊)をハイジャックされた航空機内に突入させた。この突入によりGSG-9は犯人らを制圧し、人質となっていた乗員、乗客を無事救出した。


部隊創設当時、警視庁機動隊の各隊はそれぞれ6個中隊(基幹中隊4個+特別機動隊2個)編成であったことから、この特科中隊は他の機動隊にはない7個目の中隊として、「六機七中」と通称された{{Sfn|佐々|2013|loc=第二章 『よど号』模倣犯ハイジャック}}。また1982年夏頃、[[警視総監]]により、警視庁特科中隊の名称が'''SAP'''({{Lang|en|Special Armed Police}})として認定され、「S」をあしらった紫色の部隊旗が授与された。しかし部隊自体は極秘の扱いであり{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}、第六機動隊の隊員名簿からも名前を消される措置を受けていた{{Sfn|伊藤|2004|pp=111-115}}。
日本ではこれらのハイジャック事件を教訓として、GSG-9を参考にした対ハイジャック部隊の創設を[[後藤田正晴]][[衆議院議員]](元[[警察庁長官]]、後の[[内閣官房長官]])が提唱した。さらに後藤田正晴の命令を受けた[[佐々淳行]][[警察庁刑事局]][[参事官]](後の[[内閣安全保障室|内閣安全保障室長]])が西ドイツに赴いて交渉を行った。その結果、装備、訓練、ノウハウなどでGSG-9の全面協力を得ることになり<ref name="sasa2010">『ザ・ハイジャック、日本赤軍とのわが「七年戦争」』(著者佐々淳行、文藝春秋、2010年)の「第二章『よど号』模倣犯ハイジャック」に記載</ref>、[[警視庁]]と[[大阪府警察]]の[[日本の警察官|警察官]]数名が研修としてGSG-9や、イギリスの[[SAS (イギリス陸軍)|SAS]]に派遣された{{Sfn|伊藤|2004}}<ref name="asou1999">『戦慄 昭和・平成裏面史の光芒』(著者[[麻生幾]]、新潮社、1999年)の『三菱銀行「梅川事件」の地獄絵巻』に記載</ref>。
=== SATへの改編・増強 ===
[[1995年]]の[[全日空857便ハイジャック事件]]での出動に際して、SAPの存在が初めて公表された{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}。翌年の[[1996年]]4月1日には警察庁の通達により、従来の警視庁・大阪府警察に加えて[[北海道警察]]、[[千葉県警察]]、[[神奈川県警察]]、[[愛知県警察]]、[[福岡県警察]]にも特殊部隊を設置し、呼称を'''SAT'''({{Lang|en|Special Assault Team}})とすることが決定した{{Sfn|警察庁|2004}}<ref>警察庁通達「特殊部隊の再編強化について」平成8年4月1日乙備発第6号</ref>{{Efn2|なお警察庁は同日に「銃器対策部隊の編成について」平成8年4月1日丙備発第50号という通達も出している。}}。同年5月8日には、特殊部隊の存在が公式に発表されるとともに、警察庁において隊旗授与式が行われ、[[國松孝次]][[警察庁長官]]から隊旗が授与された{{Sfn|伊藤|2004|pp=1-16}}。


[[2000年]]に警視庁SATは、第六機動隊から[[警視庁警備部|警備部]]警備第一課に所属が移され、[[2001年]]に大阪府警察SATは、第二機動隊から[[警備部]][[警備課]]に所属が移された。これにより、警視庁と大阪府警察のSATは、組織編成上、機動隊から独立した組織となった<ref>警視庁組織規則、大阪府警察組織規則に記載</ref>。また[[2005年]]9月6日には[[沖縄県警察]]にもSATが編成され{{Efn2|各報道機関は沖縄県警察にSATが新設された理由について「[[在日米軍|米軍基地]]へのテロ対策である」と報道した。一方、沖縄県警察は報道機関の取材に対して「[[島嶼]]県で事件発生時に、[[本土]]からの部隊派遣に時間がかかることが新設理由。米軍基地の集中をめぐる『対テロ重点配置』ではない」と述べている<ref>『[[朝日新聞]]』沖縄版、2005年9月7日</ref>。}}、各地の部隊も増員された{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}。
1977年10月20日に警視庁では対ハイジャック部隊を創設するため、[[機動隊]]員の書類選考と面接を開始した{{Sfn|伊藤|2004}}。同年11月1日に警察庁は、ハイジャック対策を主要任務とする特殊部隊を警視庁と大阪府警察に設置した<ref>平成9年 [[警察白書]] 第1章第2節3 我が国のテロ対策の現状</ref>{{Sfn|伊藤|2004}}。対ハイジャック部隊は創設当初、GSG-9と同じ装備を導入し、GSG-9の隊長を日本に招聘して訓練方法も学び、徐々に日本独自の訓練方法を考案していった<ref>『警視庁捜査一課特殊班』(著者毛利文彦、角川書店、2002年)の「第五章 刑事警察の特殊部隊」に記載</ref>。警視庁では第六機動隊の'''特科中隊'''、大阪府警察では第二機動隊の'''零中隊'''とされており、また[[1980年代]]初頭から警視庁の部隊は'''Special Armed Police'''、通称'''SAP'''と呼ばれていたが{{Sfn|伊藤|2004}}、部隊の存在自体を極秘としていたため、部隊名称も非公式なものであった。これらの部隊は[[1979年]]に発生した[[三菱銀行人質事件]]などに出動したが、創設から20年近くの間、部隊の存在が公表されることは無かった。その後、[[1995年]]に[[全日空857便ハイジャック事件]]が発生し、SAPが出動したことにより、部隊の存在が初めて公表された。


== 編制 ==
[[1996年]]4月1日に警察庁の通達により、それまで存在していた各特殊部隊が公式部隊として強化、再編成される方針となり<ref>警察庁通達「特殊部隊の再編強化について」平成8年4月1日乙備発第6号。なお警察庁は同日に「銃器対策部隊の編成について」平成8年4月1日丙備発第50号という通達も出している</ref>、同年5月8日には'''Special Assault Team'''、通称'''SAT''' という部隊名を定めて編成され、警察庁において隊旗授与式が行われた。授与式では、[[國松孝次]][[警察庁長官]]が各隊の隊長に隊旗を授与した。SATは総員200名体制で警視庁、大阪府警察、[[北海道警察]]、[[千葉県警察]]、[[神奈川県警察]]、[[愛知県警察]]、[[福岡県警察]]に編成された。[[2000年]]に警視庁SATは、第六機動隊から[[警視庁警備部|警備部]]警備第一課に所属が移され、[[2001年]]に大阪府警察SATは、第二機動隊から[[警備部]][[警備課]]に所属が移された。これにより、警視庁と大阪府警察のSATは、組織編成上、機動隊から独立した組織となった<ref>警視庁組織規則、大阪府警察組織規則に記載</ref>。道県警察のSATは機動隊に設置されている。
=== 所掌 ===
[[警察庁]]は特殊部隊(SAT)のほか、[[銃器対策部隊]]、[[NBCテロ対応専門部隊|NBCテロ対応専門部隊等]]、[[爆発物処理班|爆発物対応専門部隊等]]を'''テロ対処部隊'''と位置付けており<ref>[http://www.npa.go.jp/hakusyo/r01/honbun/html/vf122000.html 警察庁 令和元年版警察白書 - 第1部第2節第2項 警察におけるテロ対策]</ref>、SATの任務として「ハイジャック、重要施設占拠事案等の重大テロ事件、銃器等の武器を使用した事件等に出動し、被害者や関係者の安全を確保しつつ、被疑者を制圧・検挙する」としている{{Sfn|警察庁|2014}}。


しかし実際には、特に[[ハイジャック]]の場合、[[刑事部]]で[[人質救出作戦]]も担当する[[特殊事件捜査係|特殊犯捜査係]](SIT)などとの境界線が問題になる。政治的な背景をもった事件は警備部(SAT)、そうでない事件は刑事部(SIT)とされたこともあったものの、実際にはその区別がはっきりせず、結局はその都度警察本部長の裁定を受けることになっている{{Sfn|毛利|2002|loc=第九章 SITとSAT}}。概して、戦技・体力ではSAT、捜査力ではSITが優れていると評される{{Sfn|毛利|2002|loc=第九章 SITとSAT}}。また武器の使用へのスタンスにも差異があり、SITでは犯人の逮捕を重視して<ref>{{Cite news|url=https://web.archive.org/web/20150211233049/http://www.sankei.com/premium/news/150209/prm1502090004-n5.html|title=【日本の議論】「イスラム国事件」急派、警察の情報特殊部隊「TRT-2」の実像 「SAT」「SIT」と何が違うか|date=2015-02-09|newspaper=産経ニュース}}</ref>、犯人射殺への抵抗が強いのに対し{{Sfn|毛利|2002|loc=第六章 なぜ、人質は射殺されたのか}}、SATでは、頭部を照準しての短連射で確実に制圧することを重視している{{Sfn|伊藤|2004|pp=159-167}}。SATでは、自らを上回る装備を有するテロリストに対しても奇襲性などを活用して重装備を使わせないようにしつつ制圧するといった訓練を行っており<ref>{{Cite conference|title=衆議院予算委員会| conference = 第140回国会| volume = 18|date= 1997-02-25| quote = 海外への派遣というお話を前提にいたしますと話は若干複雑でございますので、一般論として申し上げます。| url = https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=114005261X01819970225&spkNum=174&current=5| language = ja}}</ref>、元隊員である[[伊藤鋼一]]は、[[ロケット弾]]による射撃を回避しつつ[[ヘリコプター]]上から[[自動小銃]]で[[制圧射撃]]を行うといった実戦的な状況を例示している{{Sfn|伊藤|2004|pp=184-192}}。
[[2005年]]9月6日には[[沖縄県警察]]にSATが編成され、沖縄県[[警察学校]]において隊旗授与式が行われた。また他の部隊も増員されたことにより、SATは総員250名体制となり、翌[[2006年]]にはさらに部隊が増員され、総員300名体制となった。なお各報道機関は沖縄県警察にSATが新設された理由について「[[在日米軍|米軍基地]]へのテロ対策である」と報道した。一方、沖縄県警察は報道機関の取材に対して「[[島嶼]]県で事件発生時に、[[本土]]からの部隊派遣に時間がかかることが新設理由。米軍基地の集中をめぐる『対テロ重点配置』ではない」と述べている<ref>『[[朝日新聞]]』沖縄版、2005年9月7日</ref>。


=== 組織 ===
[[2000年代]]後半からSATは、銃器使用の立てこもり事件において[[特殊捜査班|特殊犯捜査係]]の支援を行っており、[[2007年]]4月には[[町田市立てこもり事件 (2007年)|町田市立てこもり事件]]に警視庁SATが出動した。さらに同年5月に発生した[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]では、愛知県警察SATが出動したが、事件を統括指揮していた[[刑事部]]捜査第一課との連携や情報共有の不足から、隊員1名が犯人の放った銃弾により死亡した。警察庁は、この事件を教訓としてSATを支援する'''特殊部隊支援班'''(SAT Support Staff、通称スリーエス)を創設した。特殊部隊支援班は、都道府県警察刑事部との連携や[[警察本部長]]の補佐、警察庁との連絡調整を担当している。また警察庁は死亡した隊員が[[ボディアーマー|防弾ベスト]]の隙間から被弾したことから、SATの装備品を再検証する方針であると発表した。
上記の経緯により、現在では、[[警視庁]]、[[大阪府警察]]、[[北海道警察]]、[[千葉県警察]]、[[神奈川県警察]]、[[愛知県警察]]、[[福岡県警察]]、[[沖縄県警察]]の8個[[警察本部]]にSATが設置されている。いずれも[[警備部]]に所属しており、基本的には[[機動隊]]に設置されているが、警視庁では[[警視庁警備部|警備部]]警備第一課、大阪府警では[[警備部]][[警備課]]の附置機関とされており、機動隊から独立している{{Sfn|柿谷|菊池|2008|pp=6-17}}。また運用に関しては[[警察庁]]の[[警備局]][[警備運用部]]警備第三課の指導下にある<ref>{{Cite web|和書|title= 総合職技術系行政職 2024|url= https://www.npa.go.jp/about/recruitment/pamph_sougoutech_2024.pdf|publisher=警察庁|format=PDF|page=20|quote=災害対応、特殊部隊の運用、原子力警戒施設の警戒警備、緊急事態対処、警察用航空機の運用等を所掌する警備第三課に所属|accessdate=2024-07-01}}</ref>{{Efn2|{{Harvnb|麻生幾|2020}}では警備第二課としている{{Sfn|麻生幾|2020|pp=5,213-214}}。}}。


警視庁の特科中隊の創設時の体制は[[警視]]1名、[[警部]]2名、[[警部補]]6名、[[巡査部長]]12名、[[巡査]]30名の計51名体制であり、大阪府警察の零中隊は約半数の規模であったとされている{{Sfn|伊藤|2004|pp=46-51}}。特科中隊では、当初は小隊編成であったが、後に専門任務別のチーム制に移行した{{Sfn|伊藤|2004|pp=111-115}}。
愛知立てこもり事件の発生以来、SATは報道機関に訓練を公開するようになり、2007年には警視庁SATが初めて訓練を公開し、2010年には神奈川県警察SATと愛知県警察SATが訓練を公開した。さらに2013年には千葉県警察SATが訓練を公開した。なお、2007年以降の公開訓練でSAT隊員が着用した防弾ベストは、上腕部を保護するプレートが追加されており、防護範囲が拡大されている。


SATとして改編された後は、警視庁に3個班、大阪府警察に2個班、他の道県警察に各1個班の合計11個班が編成され、部隊の総員は300名とされている。警視庁では警備第一課長、道府県警察本部では警備課長など[[警視]]を[[指揮官]]として、指揮班、制圧班、狙撃支援班、技術支援班という班編成となっており、各班長は警部・警部補が務めているといわれている。また1個班にはおよそ20名の隊員がいるとされる{{Sfn|柿谷|菊池|2008|pp=6-17}}。2012年に公開された訓練では、警視庁SATにおいて[[NBCテロ対応専門部隊|化学防護]]担当の隊員が確認された。また、[[警備犬]]担当の隊員も確認された<ref name="SATマガジン2012">[https://m.youtube.com/watch?v=s9CXdVBXjYM "SATマガジン 第28回 警視庁・特殊部隊SATが新宿に現れた!"]</ref>。 さらに2016年に公開された訓練では、警視庁SATにおいて[[衛生兵|メディック]]担当の隊員が確認された{{Sfn|SATマガジン出版|2017}}。
== 年表 ==
; [[1972年]]
: '''9月5日'''
: [[ミュンヘンオリンピック事件]]が発生。犯行グループによりイスラエル選手11名が殺害された。
: '''9月6日'''
: [[警察庁]]から各[[都道府県警察]]に通達「特殊部隊の編成について」が出される。
; [[1977年]]
: '''9月28日'''
: [[ダッカ日航機ハイジャック事件]]が発生。[[日本政府]]は犯行グループの要求を受け入れ、身代金を支払い、獄中にいたメンバーなど6人を釈放した。
: '''10月13日'''
: [[ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件|ルフトハンザ航空機ハイジャック事件]]が発生。犯行グループは[[西ドイツ]]政府に対して身代金の支払いと、獄中メンバーの釈放を要求したが、西ドイツ政府は[[GSG-9]]を航空機内に突入させることにより犯人を制圧し、人質を救出した。この事件を受け、日本では[[佐々淳行]][[警察庁刑事局]][[参事官]]を西ドイツ派遣、さらに[[警視庁]]と[[大阪府警察]]は[[日本の警察官|警察官]]数名を研修のため、GSG-9とイギリス[[SAS (イギリス陸軍)|SAS]]に派遣した。
: '''10月20日'''
: 対ハイジャック部隊を創設するため、警視庁で[[機動隊]]員の書類選考と面接が開始される。
: '''11月1日'''
: 警視庁第六機動隊と、大阪府警察第二機動隊に対ハイジャック部隊が極秘裏に創設される。警視庁では「特科中隊」、大阪府警察では「零中隊」と呼ばれ、[[1980年代]]初頭から警視庁部隊はSpecial Armed Police、通称SAPと呼ばれていたが、部隊名称は非公式なものであった。
; [[1979年]]
: '''1月26日'''
: [[三菱銀行人質事件]]が発生。零中隊が出動。銀行内に突入し、近距離から[[けん銃]]で犯人を射撃することより、人質を救出した。犯人は病院に搬送後、死亡が確認された。突入の際、零中隊の隊員は部隊の存在を秘匿するため、アサルトスーツ(突入服)の代わりにトレーニングウェアを着用しており、犯人への射撃には、S&W社製45口径けん銃を使用した<ref name="asou1999" />。事件後の記者会見では、零中隊指揮官であった警部も、「第二機動隊ハイジャック対策部隊」の肩書で同席していた{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}。
; [[1987年]]
: [[後藤田正晴]][[内閣官房長官]]と[[佐々淳行]][[内閣安全保障室|内閣安全保障室長]]が、[[陸上自衛隊]][[習志野演習場]]においてSAPの訓練を視察。この視察は報道関係者を一切伴わず、非公式に行われた<ref name="sasa2010" />。
<!--: * [[1992年]] [[町田市立てこもり事件 (1992年)|町田市立てこもり事件]]が発生。SAPが出動。出典とされる『警視庁捜査一課特殊班』(著者毛利文彦、角川書店、2002年)では、「警備部の狙撃手」との記載はありますが、具体的な所属に関しては記載されていません。ですから、他の出典が明らかになるまでコメントアウトした方が良いと思います。-->
; [[1995年]]
: '''3月22日'''
: [[オウム真理教事件|一連の凶悪事件]]を発生させた[[オウム真理教]]の本部(山梨県[[上九一色村]])への強制捜査にSAPが出動{{Efn2|[[麻生幾]]の著作に以下の記述がある。『[[サティアン]]を取り囲む機動隊員たちは、第一線の部隊に続き、第二線、第三線、第四線の部隊が突入の機会を窺っていたが、その一番後方で身を低くしている五十名ほどの“集団”がいたことはテレビ局も気がつかなかった。』『警視庁が“[[国家機密]]”としている対テロ特殊部隊は、極力目立たぬよう、最後方で待機していた。』<ref>{{Cite book|和書|title=極秘捜査 政府・警察・自衛隊の[対オウム事件ファイル]|author=[[麻生幾]]|year=1997|publisher=文芸春秋|chapter=第五章 Dデー}}</ref>}}。
: '''6月21日'''
: 函館空港で[[全日空857便ハイジャック事件|全日空機ハイジャック事件]]が発生。SAPが[[東京国際空港|羽田空港]]から[[航空自衛隊]]の[[C-1 (輸送機)|C-1輸送機]]で緊急派遣され、翌22日に[[北海道警察]]の機動隊員、捜査員らの機内突入と犯人逮捕を支援した。これが、SAPの存在が認められた最初の事件となった。なおSAPが羽田空港で輸送機に機材を搭載し、離陸した様子は、[[TBSテレビ|TBS]]の報道班が収録、放送したVTRによって確認されている。また、この輸送機は航空自衛隊の[[八雲飛行場]]に着陸し、SAPはこの飛行場から函館空港に向かったといわれている。
: '''9月'''
: オウム事件捜査の教訓により、SAPの経験者7名が[[警視庁警備部|警備部]]から[[刑事部]]捜査第一課[[特殊捜査班|特殊犯捜査係]](SIT)に配属される。この人事異動の目的は、SAPの突入技術をSITに取り入れることであった{{Sfn|毛利|2002|loc=&sect;9}}。
; [[1996年]]
: '''4月1日'''
: 警察庁から都道府県警察に通達「特殊部隊の再編強化について」と「[[銃器対策部隊]]の編成について」が出される。
: '''5月8日'''
: 既存の各特殊部隊が公式部隊として強化、再編成され「Special Assault Team」通称SATという部隊名を定め、警察庁において隊旗授与式が行われた。授与式では[[國松孝次]][[警察庁長官]]が各隊の隊長に隊旗を授与した。SATは総員200名体制で警視庁、大阪府警察、北海道警察、[[千葉県警察]]、[[神奈川県警察]]、[[愛知県警察]]、[[福岡県警察]]に編成された。また公式部隊化と再編成に伴い正規の予算計上が可能となったため、装備は最新のものに更新された。
: '''12月17日'''
: [[在ペルー日本大使公邸占拠事件]]が発生。警視庁SATが原寸大の模擬日本大使館を造り、[[人質救出作戦|人質救出訓練]]を繰り返す。神奈川県警察SATも隊員をドイツに派遣、[[GSG-9]]から訓練を受ける。
<!--: * [[1999年]] [[京葉銀行津田沼支店立て籠もり事件|京葉銀行立て籠もり事件]]が発生。千葉県警SATが出動。SATの出動に関する出典が明らかになるまで、コメントアウトした方が良いと思います。-->
; [[2000年]]
: '''5月3日'''
: [[西鉄バスジャック事件]]が発生。福岡県警察、大阪府警察のSATが出動。[[広島県警察]]機動隊に指導を行い、突入を支援した。この事件では、初めて[[手榴弾#殺傷を目的としない手榴弾|閃光弾]]を使用することにより犯人を逮捕した。また同年、警視庁SATの所属が第六機動隊から[[警視庁警備部|警備部]]警備第一課に移され、機動隊から独立した組織となった。
; [[2001年]]
: 大阪府警察SATの所属が第二機動隊から[[警備部]][[警備課]]に移され、機動隊から独立した組織となった。
; [[2002年]]
: '''5月10日'''
: 警察庁が警視庁SATの訓練映像を公開。
; [[2003年]]
: '''9月16日'''
: [[名古屋立てこもり放火事件]]が発生。現場を支援するため、警察庁は愛知県警察SATに待機命令を出した<ref>[[読売新聞]]2003年9月17日</ref>。
; [[2005年]]
: '''9月6日'''
: [[沖縄県警察]]にSATが新設され、沖縄県[[警察学校]]において隊旗授与式が行われた。授与式には[[漆間巌]]警察庁長官、沖縄県警察SAT隊長と隊員約20名が参加した。なお隊員は[[目出し帽|マスク(目出し帽)]]で顔を隠し、ヘルメットの防弾[[バイザー]]を下ろした状態であった<ref>沖縄県警察SATの隊旗授与式の様子は『SATマガジン』NO11に掲載された記事「沖縄県警SAT発足」に写真付きで記載。</ref>。また同年、他の部隊も増員しSATは総員250名体制となった。
: '''10月20日'''
: 北海道において北海道警察と[[陸上自衛隊]]が合同訓練を実施。北海道警察SATと見られる部隊が訓練に参加した。なお北海道警察では、SATが訓練に参加したとの公表はしていない。
; [[2006年]]
: SATをさらに増員。総員300名体制となった。
; [[2007年]]
: '''4月20日'''
: [[町田市立てこもり事件 (2007年)|町田市立てこもり事件]]が発生。警視庁SATが出動し、[[特殊捜査班|特殊犯捜査係]](SIT)の突入を支援した。
: '''5月17日'''
: [[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]が発生。愛知県警察SATが出動。犯人の銃撃で重傷を負った警察官を愛知県警察[[特殊捜査班|SIT]]が救出した際、犯人が再び拳銃を発砲。この発砲により、SITの後方支援を担当していたSAT隊員(当時23歳)が被弾し、病院搬送後に死亡した。SAT隊員が出動現場で[[殉職]]したのは、この事件が初めてである。
: '''6月5日'''
: 警察庁は、愛知長久手町立てこもり発砲事件において愛知県警察SATとSITの連携が課題となった事を受け、全国[[警察本部]]の[[本部長]]を集め、東京都内の専用施設において警視庁SATとSITの合同訓練を実施した。また6月に警察庁は、SATの活動を支援する特殊部隊支援班(通称スリーエス)を創設した。特殊部隊支援班は、都道府県警察[[刑事部]]との連携や警察本部長の補佐、警察庁との連絡調整を担当する組織である。
: '''7月5日'''
: [[東京都]]内の訓練施設において、警視庁SATの訓練が報道機関に初めて公開された。
: '''8月16日'''
: 大阪府警察SATとみられる部隊が、同年開催の[[2007年世界陸上競技選手権大会|世界陸上大阪大会]]に向けた総合警備訓練に参加。なお大阪府警察はSATの訓練参加を公表しておらず、参加部隊は[[銃器対策部隊]]と発表した。
: '''12月14日'''
: [[ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件]]が発生。福岡県警察SATが出動。長崎県警察銃器対策部隊と合同で犯人の捜索に当たり、自殺した犯人の遺体を発見した<ref>『[[中国新聞]]』2007年12月16日</ref>。
; [[2010年]]
: '''9月6日'''
: [[神奈川県]]横浜市内の県警第一機動隊訓練場において、神奈川県警察SATが同年11月開催の[[2010年日本APEC|APEC首脳会談]]に向けた合同警備訓練に参加した。
: '''11月26日'''
: [[石川県]][[志賀原子力発電所]]において、外国人工作員の襲撃を想定した警備訓練が報道機関に公開され、[[石川県警察]]銃器対策部隊と[[愛知県警察]]SATが参加した。
; [[2012年]]
: '''11月22日'''
: 愛知県豊川市の[[豊川信用金庫]]蔵子支店において、人質立てこもり事件が発生。愛知県警察SATがSITと共に出動<ref>『[[朝日新聞デジタル]]』2012年11月22日</ref>。この事件は発生から約13時間後にSITが突入し、サバイバルナイフを持って立てこもっていた犯人を逮捕、人質4名を救出した。
; [[2013年]]
: '''5月11日'''
: 福島県の[[東京電力]][[福島第二原子力発電所]]において、武装工作員の襲撃を想定した訓練が報道機関に公開され、[[福島県警察]]銃器対策部隊と[[千葉県警察]]SAT、[[海上保安庁]][[特殊警備隊]]などが参加した。
; [[2015年]]
: '''3月'''
: 宮城県仙台市で開催された国連世界防災会議の警備にSATが出動<ref>NHKニュース2015年3月13日</ref>。
: '''12月22日'''
: [[警察庁]]は東京都内の訓練施設において、[[警視庁]]SATと[[神奈川県警察]]SATの合同訓練を公開した<ref>[http://www.jiji.com/jc/zc?k=201512/2015122200714 時事ドットコム:2都県SATが合同訓練=サミット前に連携確認]{{リンク切れ|date=2017年10月}}</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=ojDMAHiquAk KYODO NEWS 【共同通信社】 YouTube公式チャンネル:テロ備え、実戦訓練 SAT、合同初公開]</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=jKBD0PQNa9I 時事通信社/JIJIPRESS YouTube公式チャンネル:警視庁、神奈川県警SAT合同訓練=実弾連射、閃光弾投てき、狙撃で犯人制圧]</ref>。訓練は[[2016年]]5月開催の[[第42回先進国首脳会議]](伊勢志摩サミット)を控え行われたもので、SAT同士の合同訓練の公開は創設以来初である。
; [[2016年]]
: '''3月28日'''
: 東京都江東区において、警視庁SATが突入訓練を報道機関に公開した。
; [[2017年]]
: '''5月16日'''
: 愛知県小牧市の警察施設において、愛知県警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。
: '''11月8日'''
: 福岡県北九州市のマンションにおいて、男が室内犬を猟銃で射殺し立てこもる事件が発生。福岡県警察SATが福岡県警察[[銃器対策部隊]]と福岡県警察SITと共に出動。
; [[2018年]]
: '''2月16日'''
: 東京都江東区の[[首都高速道路]]上において、警視庁SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。訓練施設以外での公開は初となる。


== 編成 ==
=== 人員 ===
元関係者の証言によれば、警視庁SATは、機動隊の新隊員訓練にあわせて、おおむね6ヶ月ごとに試験入隊者を募り、2~4名程度の新隊員を採用していたとされる{{Sfn|伊藤|2004|pp=194-198}}。また警視庁の特科中隊が創設された際には、[[機動隊]]員の中から、武道や運動能力に秀でた者や射撃選手、[[銃器対策部隊]]隊員、[[爆発物処理班|爆発物処理隊]]員、[[日本の救助隊#警察|レスキュー]]隊員、[[レンジャー (日本の警察)|レンジャー]]隊員に指定されているものを対象として入隊希望者を募っていた{{Sfn|伊藤|2004|pp=46-51}}。SAT発足当初も、隊員はレンジャー有資格者を中心に選抜されたといわれている{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}{{Efn2|入隊資格を「25歳以下の独身の男性警察官」とする説もあったが{{Sfn|毛利|2002|loc=第九章 SITとSAT}}、警視庁SAPのOBは「隊員選考の絶対的条件のなかには「25歳以下」「未婚者」「次男以下の者」というのはない」としてこれを否定している<ref>{{Cite journal|和書|last=伊藤|first=鋼一|year=2002|month=8|title=SAT 日本警察特殊急襲部隊|journal=[[コンバットマガジン]]|publisher=[[ワールドフォトプレス]]}}</ref>。報道によれば、2006年に訓練で負傷した大阪府警察SATの隊員は、事故当時28歳であった。また2007年に[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]で死亡した愛知県警察SATの隊員には妻子がいたことが明らかとなっている。}}。
SATは、計8所属の都道府県[[警察本部]]に設置されている。また、重大事件やテロ事件が発生した際には、警察車両や[[都道府県警察航空隊|警察航空隊]]のヘリコプター等を使用して、全国に展開できる体制が整えられている。


機密保持は極めて厳しく、警視庁SATの前身であるSAP当時は、警視庁のコンピュータ個人ファイルや第六機動隊の隊員名簿からも名前を消される措置を受けており、人事記録簿には自筆で「第六機動隊特務係」と記載していた{{Sfn|伊藤|2004|pp=111-115}}。入隊すると隊員は、「部隊で見たり聞いたりしたことを他人に話せば、時には法で罰せられる。家族に対しても同様である」という訓示を受け、機密保持を徹底させられると言われている{{Sfn|伊藤|2004|p=113}}。また1987年に、[[後藤田正晴]][[内閣官房長官]]が警視庁SAPを視察した際に「何が辛いか」と尋ねたところ、当時の寺沢隊長は「覆面部隊なので、父親が何をしているか家族にも言えず、同僚や奥さん同士の交際も避けなければならず、日常が辛い」と述べたといわれている{{Sfn|佐々|2013|loc=第二章 『よど号』模倣犯ハイジャック}}。
SATの主な任務はハイジャックやテロ対策であるため、以下の地域に部隊が配備されている。


在隊期間はおおむね5年とされる。ただし昇任して[[警察署]]などに転勤したのち、幹部の欠員補充のため、再びSATに戻る例もある。転勤先としては、[[セキュリティポリス|警護課・警衛課]]など[[警視庁警備部|警備部]]内のことが多いが、上記の刑事部のSITに配属される場合もある。これは、刑事部が、SAT隊員の[[射撃]]技術などを即戦力として期待した結果としてはじまった措置であった{{Sfn|伊藤|2004|pp=194-198}}。例として1995年9月には、[[オウム事件]]の捜査を教訓として、警視庁SAPの経験者7名が警備部からSITに配属された。階級別内訳は[[警部補]]1名、[[巡査部長]]2名、[[巡査]]4名であった{{Sfn|毛利|2002|loc=第九章 SITとSAT}}。
*成田・東京・中部・関西の各国際空港が所在する地域
*上記以外で国際・国内線の拠点となる空港が所在する一部の地域
*[[在日米軍]]関連施設が集中している地域


なお過去には隊員に関する不祥事案が1件発生している。2010年1月に28歳の警視庁SAT隊員が、東京都国立市内のコンビエンスストアで万引きをしたことにより、現行犯逮捕された。後にこの隊員は警視庁を依願退職した<ref>{{Cite news|title=警視庁SAT隊員、窃盗容疑で書類送検|date=2010/01/16|url=http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4332392.html|newspaper=TBS NEWS}}</ref>。
また、SATが編成されている都道府県警察は以下のとおりである。


== 装備 ==
; [[警視庁]]
{{Triple image stack|right|SAT operator holding MP5.jpg|SAT operators deploying from heavily-armored SWAT Vehicle.jpg|SAT operators preparing to abseil from Bell 412EP.jpg|250|MP5を構える隊員。シュアファイアM628ウェポンライトを装着している{{Sfn|伊藤|2004|pp=1-16}}。|[[特型警備車#銃器対策警備車|銃器対策警備車]]から降車展開する隊員|[[警視庁航空隊]]の[[ベル 412]]EPからの[[懸垂下降|ラペリング]]を準備する隊員{{Sfn|伊藤|2004|pp=1-16}}}}
: 管内には[[東京国際空港]](羽田空港)を含む、各種[[重要防護施設]]([[皇居]]、[[総理大臣官邸]]、[[国会議事堂]]、[[日本の行政機関|中央省庁]]、各国[[大使館]]等)が所在。SATは[[警視庁警備部|警備部]]警備第一課に所属。警視庁SATは、SAPが発展した部隊である。
=== けん銃 ===
; [[大阪府警察]]
{{See also|日本の警察官#けん銃}}
: 管内に[[関西国際空港]]、[[大阪国際空港]]、外国の[[総領事館]]が所在。SATは[[警備部]][[警備課]]に所属。大阪府警察SATは、零中隊が発展した部隊である。
警視庁SAPでは、[[S&W M36]]および[[H&K P9S]]を使用していたといわれている{{Sfn|伊藤|2004|pp=91-98}}。また、1979年に発生した[[三菱銀行人質事件]]において零中隊が使用したけん銃は、[[スミス&ウェッソン|S&W]]社製の[[M1917リボルバー|.45口径けん銃]]だったとされている{{Sfn|麻生|1999}}。
; [[北海道警察]]
: 管内に[[新千歳空港]]、[[函館空港]]が所在。SATは機動隊に所属。なお、函館空港では1995年に[[全日空857便ハイジャック事件|全日空機ハイジャック事件]]が発生している。
; [[千葉県警察]]
: 管内に[[成田国際空港]]が所在。SATは第一機動隊に所属。
; [[神奈川県警察]]
: 管内に[[在日米軍]]施設が所在。SATは第一機動隊に所属。
; [[愛知県警察]]
: 管内に[[中部国際空港]]が所在。SATは機動隊に所属。
; [[福岡県警察]]
: 管内に[[福岡空港]]、在日米軍施設、各国[[領事館]]が所在。SATは第二機動隊に所属。
; [[沖縄県警察]]
: 管内に在日米軍関連施設、[[那覇空港]]が所在。SATは機動隊に所属。沖縄は[[島嶼]]県であり、テロ事件等が発生した際に本土からのSAT派遣に時間が掛かるため、編成された。


SAT発足後の公開訓練において、下記のけん銃の使用が確認されている。これらの自動拳銃は、回転式拳銃や小口径の自動拳銃とは区別され、部内では特殊けん銃と通称されているといわれている{{Sfn|大塚|2009}}。
部隊の規模は警視庁に3個班、大阪府警察に2個班、他の道県警察に1個班の合計11個班が編成されており、隊員の総数は約300名である。なお、警視庁SATの前身である特科中隊は、指揮班、技術支援班、狙撃支援班、制圧一班、制圧二班に分かれていたとされている{{Sfn|伊藤|2004}}。また、特科中隊の創設時の体制は[[警視]]1名、[[警部]]2名、[[警部補]]6名、[[巡査部長]]12名、[[巡査]]30名の計51名体制であり、大阪府警察の零中隊は約半数の規模であったとされている{{Sfn|伊藤|2004}}。


* [[H&K USP]]{{Sfn|大塚|2009}}{{Sfn|Takano|2015}}{{Efn2|2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用(専用の[[懐中電灯|フラッシュライト]](ITI社製、M2)を装着したもの)。また2010年9月に公開された合同警備訓練において、神奈川県警察SATが、同年11月に公開された警備訓練において、愛知県警察SATが使用。}}
=== 編成例 ===
* [[SIG SAUER P226]]{{Sfn|大塚|2009}}{{Efn2|2015年12月に公開された合同訓練において、警視庁SATと神奈川県警察SATが使用。一体型のグリップとフラッシュライト([[シュアファイア]]社製、X300 ULUTRA)を装着したもの。}}
例:警視庁警備部第六機動隊特科中隊(当時)の編成
* [[グロック17#グロック19 / 23 / 25 / 32 / 38|グロック19]]{{Sfn|Takano|2015}}{{Efn2|2002年に警察庁が公開したSAT訓練映像で使用が確認されたもの。}}


=== 特殊銃 ===
; 指揮班
{{See also|日本の警察官#特殊銃}}
: 部隊の庶務、新隊員の教育を担当。部隊活動の際は部隊の現場指揮所となり、現場調整、情報収集、無線担当、記録、伝令を担当。
警察官等特殊銃使用及び取扱い規範では、警察官が所持する銃のうち、[[警察法]]第六十八条の規定により貸与されるもの(けん銃)以外のものを「特殊銃」と規定している<ref>{{Cite web|和書|author=国家公安委員会|url=https://laws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=414M60400000016|title=警察官等特殊銃使用及び取扱い規範(平成十四年国家公安委員会規則第十六号)|date=2019-05-24|accessdate=2019-10-17}}</ref>。
; 技術支援班
: [[偵察]]用機材(コンクリートマイク等)の設置や、突入時に装備資機材([[プラスチック爆弾]]等)を使用し、突入支援(ドア、壁の破壊等)を行う。
; 狙撃支援班
: [[狙撃]]や偵察を担当。
; 制圧一班、制圧二班
: 突入を担当。


機関けん銃([[短機関銃]])については、SATの前身である警視庁SAPでは、創設の際に[[西ドイツ]]の[[GSG-9]]から装備、訓練、ノウハウなどの全面協力を受けたことから{{Sfn|佐々|2013|loc=第二章 『よど号』模倣犯ハイジャック}}、[[1980年代]]初頭の時点で[[H&K MP5#9×19mm弾モデル|MP5A5]]、[[H&K MP5#MP5Kシリーズ|MP5K]]および[[H&K MP5#MP5SDシリーズ|MP5SD6]]が配備されていたとされる{{Sfn|伊藤|2004|pp=111-115}}。
== SAT及び機動隊関連施設 ==
SATの関連する[[射撃]]訓練場、及びSATが所在する都道府県で、射撃場を有する機動隊の訓練施設は以下のとおりである。


1996年にSATが発足して以降、2007年からSATの訓練が報道機関に公開されるようになり、SAT隊員が使用するMP5についても、仕様や付属品が判明した。例として、2015年に警視庁と神奈川県警のSATが合同訓練を公開した際、SAT隊員は[[H&K MP5#9×19mm弾モデル|MP5F]]を使用し、付属品としてEO-Tech社製のXPSホロサイト、フォアグリップ、シュアファイヤ社製の628LMフラッシュライト等を装着していた{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2016年3月号|pp=12-15}}。
; 警視庁術科センター
: [[東京都]][[江東区]]に所在。術科([[射撃]]、[[柔道]]、[[剣道]]、[[逮捕術]])の総合訓練施設。総延べ面積は約2万3700平方メートルであり、2010年から全面的な改修工事が行われている。この改修には10年間を要し、改修費用は50億3000万円である<ref>『建通新聞電子版』に記載[http://www.kentsu.co.jp/webnews/html/090806500002.html]。</ref>。
: 元SAP隊員である[[伊藤鋼一]]の著書によれば、1980年代当時、同センターの奥には、厳重な管理体制で護られたSAP専用の射撃訓練場が設置されていた{{Sfn|伊藤|2004}}。
: 2007年には警視庁術科センターと「夢の島総合警備訓練場」において、警視庁SATの訓練が報道機関に公開されている<ref>公開訓練の場所に関しては「SATマガジン」2007年9月号に掲載された記事「警視庁SAT公開訓練」に記載。</ref>。
; 警視庁機動隊総合訓練所
: 東京都[[立川市]]に所在。射撃場を有しており、2010年に射撃場の改修に関する工事が行われている<ref>『警視庁国費案件平成21年度年間工事発注予定表』に記載[http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetuzuki/nyusatu/image/hatyuyotei_21.pdf]。</ref>。
; 大阪府警察総合訓練センター
: [[大阪府]][[大東市]]に所在。射撃場、[[陸上競技場]]、車両訓練コース等を有する大阪府警察の総合訓練施設。1997年に完成。
: 同センターでは、2008年に大阪府警察のSAT隊員が射撃訓練中の事故で負傷している<ref>『[[産経新聞]]』(2006年8月23日、大阪版朝刊)に記載。</ref>。
; 北海道警察総合訓練場
: [[北海道]][[千歳市]]に所在。主に機動隊が使用する訓練施設。
: 2006年に完成。鉄筋コンクリート構造4階建て、延べ面積は2849平方メートルである<ref name="daikenn2012">訓練場の設計を担当した『株式会社大建設計』のホームページに掲載[http://www.daiken-sekkei.co.jp/works/officebuilding_s02.html]。</ref>。また、2010年には訓練場敷地内で新棟の建設工事が行われた。この新棟は床面積約6000平方メートルで、射程距離の長い[[小銃|ライフル]]射撃に対応可能な射撃場を有しており、既存棟とともに、重大テロや人質立てこもりなど各種災害警備、救出救助事件の訓練を行う施設である<ref>『[[苫小牧民報|苫小牧民報社]]』2010年2月12日の記事「道警の総合訓練場を拡張へ」に記載[http://www.tomamin.co.jp/2010c/c10021204.html]。</ref>。
; 千葉県警察機動隊総合訓練施設(多古訓練場)
: [[千葉県]][[香取郡]][[多古町]]に所在。
: 同訓練施設については、[[成田空港問題]]を扱うサイトに「300mの長さを持つライフルの射的訓練場を含む、ハイジャック対策訓練場」と記載されている<ref>『成田空港サーバー』1998年8月9日の記録に記載[http://www.page.sannet.ne.jp/km_iwata/98nen8gatu.html]。1998年8月9日の記録には、訓練場の建設に関して「22日に地元説明会が開かれることになっており、これによって詳細がわかるものと思われます。」との記載がある。また同サイトの1999年3月22日の記録には、『千葉県警の、「ハイジャック対策」のためと言っている「ライフル射撃練習場」』との記載がある。</ref>。
; 愛知県警察機動隊総合訓練場
: [[愛知県]][[小牧市]]に所在。2006年に完成。鉄筋コンクリート構造2階建て、延べ面積は2412平方メートルである<ref name="daikenn2012" />。射撃場を有しており、2011年に標的装置の点検業務に関する[[随意契約]]が行われている<ref>愛知県警察ホームページの随意契約情報に記載
[http://www.pref.aichi.jp/police/houritu/keiyaku/keiyaku05.pdf]。なお、支出は[[国費]](国家予算)で行われている。</ref>。
; 福岡県警察機動隊総合訓練場
: [[福岡県]][[福岡市]]に所在。2005年に完成。鉄筋コンクリート構造4階建て、延べ面積は3291平方メートルである<ref name="daikenn2012" />。射撃場を有しており、2009年に射撃場の改修工事に関する[[競争入札]]が行われている<ref>福岡県警察ホームページに記載[http://www.police.pref.fukuoka.jp/data/open/cnt/3/4/1/koukyou.pdf]。</ref>。


[[狙撃銃]]については、警視庁SAP当時、[[豊和ゴールデンベア]]や[[64式7.62mm小銃]]に照準器を取り付け、[[64式7.62mm小銃#64式7.62mm狙撃銃|狙撃用]]仕様にしたものを使用していたとされる{{Sfn|伊藤|2004|pp=98-103}}。 SAT発足後に公開された訓練では、[[豊和M1500]]を使用している。 その他の狙撃銃としては、SAT専用に改修された[[H&K PSG1]]や、[[アキュラシー・インターナショナル]]社製[[L96A1]]を配備しているといわれている{{Sfn|大塚|2009}}。
== 行動方針 ==
SATが出動した際は、[[警視総監]](道府県警察は[[本部長#警察本部長|本部長]])、[[警備部]]長がSATの指揮を行い、SAT隊長は現場[[指揮官]]として命令を受け任務にあたる。原則としてSAT隊長は突入を独断では行えず、警視総監(または道府県警察本部長)、警備部長の許可が必要といわれている。2007年に発生した、[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]の際は、愛知県警察SAT、SIT、応援派遣された大阪府警察MAATの統括指揮を、[[刑事部]]捜査第一課長が担当していたとされている<ref>『[[週刊新潮]]』2007年5月31日号</ref>。


[[自動小銃]]については、2004年に政府が有識者を集めて開催した「安全保障と防衛力に関する懇談会」の第9回懇談会において、警察庁が作成・配布した資料に<ref>[https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ampobouei/dai9/9siryou3.pdf 参考資料~警察のテロ対策について~](2004年9月6日)警察庁、2021年7月17日閲覧</ref>、SATの装備品として[[89式5.56mm小銃]]が掲載された{{Sfn|大塚|2009}}。その他の自動小銃としては、[[H&K HK53]]を配備しているといわれている<ref name="ロケット弾">『SATマガジン』2004年1月号 p.45-46</ref>。
SATの行動方針に関して、[[警察庁]]では「被害者・関係者の安全を確保しつつ、事態の鎮圧、被疑者の検挙を実施する」と公表している<ref name="hakusyo" />。報道によれば、SATは「犯人の身柄拘束よりも、現場の危機的状況を狙撃などで排除する」方針であり、一方、[[特殊捜査班|SIT]]は「説得を中心に最後まで投降を促し、犯人の[[逮捕]]を目指す」方針であるとされている<ref>『[[産経新聞]]』2007年5月29日</ref>。2007年に公開された警視庁SATの訓練では、隊員が屋内施設に突入した際、複数の人型標的の頭部へ射撃を実施している。


=== その他の個人装備品 ===
狙撃については複数配置を基本としている。これは、[[1970年]]に発生した[[瀬戸内シージャック事件]]において、大阪府警察の[[狙撃手]]が、人権擁護を標榜する[[弁護士]]から[[殺人罪 (日本)|殺人罪]]で告発された事を教訓としており、隊員が犯人を射殺した際、個人を特定・告訴できなくするための措置である{{Sfn|伊藤|2004}}。
警視庁SATの前身であるSAPでは[[手榴弾#スタングレネード|特殊閃光弾]]が導入されており{{Sfn|佐々|2013|loc=第二章 『よど号』模倣犯ハイジャック}}、特殊閃光弾はDRCと呼称されていた{{Sfn|伊藤|2004|pp=91-98}}。


また先述のように警視庁SAPは創設当時、多くの装備をGSG-9に準拠したとされている。例として、1987年に[[後藤田正晴]][[内閣官房長官]]が警視庁SAPの訓練を視察した際、SAPの隊員は耳の部分に余裕を持たせた形状の[[戦闘用ヘルメット|ヘルメット]]に、[[ポリカーボネート|強化プラスチック]]製の[[防弾]][[バイザー]]を装着していたが、同バイザーは、厚さにもかかわらず視野の歪みがない、西ドイツの特許製品であった{{Sfn|佐々|2013|loc=第二章 『よど号』模倣犯ハイジャック}}。
SATに類似する名称の警察部隊として、[[アメリカ合衆国]]の[[SWAT]]が挙げられるが、SWATの行動方針は日本のSITに近く、可能な限り犯人の逮捕を優先している。なおアメリカでは、国内でのテロ事件などに対処する部隊として、[[連邦捜査局|連邦捜査局(FBI)]]に[[人質対応部隊|特殊部隊(HRT)]]が編成されている。


1980年代当時の装備として、SAPの隊員は防弾シールドが付き、無反射塗装がされたチタン製ヘルメットを使用し、被服については灰色の特殊部隊用活動服(アサルトスーツ)が貸与され{{Sfn|伊藤|2004|pp=106-111}}、同スーツの下にはチタン合金とケプラー繊維製の防弾ベストを着込んでいたとされている{{Sfn|伊藤|2004|pp=138-139}}。
=== 武器の使用 ===
SATの[[交戦規定|武器使用]]は法律([[警察官職務執行法]]第7条)に基づいて行われ、突入の際には[[短機関銃|機関けん銃]]や、[[自動式拳銃|自動式けん銃]]などを使用する。また日本の警察では、「警察官等特殊銃使用及び取扱い規範」により、機関けん銃やライフルなどの装備を、「特殊銃」と規定しており、使用や取り扱いの規範を定めている{{Efn2|「警察官等特殊銃使用及び取扱い規範」第二条では、警察法第六十八条第一項の規定により警察官又は[[皇宮護衛官]]が貸与される小型武器(けん銃)以外のものを「特殊銃」と規定している。}}。この規範によれば、特殊銃は、[[本部長#警察本部長|警察本部長]](警視庁は[[警視総監]])から指定を受けた「指定警察官」が使用する。さらに特殊銃の「取り出し」、「連射への設定変更」、「使用」は現場[[指揮官]]の命令が必要であるが、状況が急迫し、命令を受けることができない場合は、指定警察官の判断で行うことができる。


2007年にオーストラリアの[[クイーンズランド州]]において訓練を実施した際には、SAT隊員が[[迷彩服]]を使用していた<ref name="Police Bulletin"/>。またSATは[[積雪]]や[[吹雪]]といった環境下での活動も想定していることから、これまでに公開されていないが、冬季迷彩服なども装備しているとされている<ref name="伊藤2022"/>。
== 隊員 ==
主に[[機動隊]]から入隊希望者を募り、選抜試験を通過した者がSATに入隊する。隊員には<!-- “[[柔道|柔]][[剣道]]三段以上、[[逮捕術]]上級者といった”警視庁SPの入隊条件は公表されていますが、SATの入隊条件については出典が確認できないため、現段階ではコメントアウトした方が良いと思います。-->高い身体能力、判断能力及び強靱な精神力が必要とされる。特に発足当初は、[[レンジャー (日本の警察)|レンジャー]]有資格者を中心に選抜されたとされている{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}。


2007年に発生した[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]では、SAT隊員が銃撃を受けて[[ボディアーマー|防弾ベスト]]の隙間から被弾したことにより、死亡した。そのため、当時の[[国家公安委員会委員長]][[溝手顕正]]は、同年5月18日の記者会見で「装備の検証が必要」との見方を示し、これを受けて警察庁は装備を再検証する方針であると発表した<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.asahi.com/special/070518/TKY200705180228.html |title=装備・安全検証へ SAT隊員死亡で警察庁 |author= |date=2007-05-18 |work= |publisher=朝日新聞 |accessdate=2015-11-28 }}</ref>。国家公安委員会委員長の記者会見後に公開された訓練{{Efn2|2010年に神奈川県警SATが公開した訓練以降。「活動史」の項目を参照。}}では、SAT隊員の上腕部に防弾装備が追加されており、防護範囲は拡大した。
作家の毛利文彦は著書でSAT隊員を「25歳以下の独身の男性警察官」と解説しているが、元SAP隊員の伊藤鋼一は「隊員選考の絶対的条件のなかには「25歳以下」「未婚者」「次男以下の者」というのはない」としてこれを否定している{{Sfn|毛利|2002|loc=&sect;9}}<ref>『[[コンバットマガジン]]』2002年8月号に掲載された記事「SAT 日本警察特殊急襲部隊」に記載</ref>。報道によれば、2006年に訓練で負傷した大阪府警察SATの隊員は、事故当時28歳であった。また2007年に[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]で死亡した愛知県警察SATの隊員には妻子がいたことが明らかとなっている。伊藤鋼一によれば隊員に求められるものは「死を恐れぬ精神力」「プロ意識(実戦では100点か0点しかなく、平均点はない。)」「(制圧第一であるが)仲間を見捨てない」とされる。<ref>2014年4月24日[[朝日放送]][[ビーバップ!ハイヒール]]「ヒミツのベールに包まれた警察特殊部隊SAT」</ref>


2012年に[[東京都]][[新宿区]]において訓練を実施した際には、SAT隊員が[[化学防護服]]や[[除染]]用機材を使用していた<ref name="SATマガジン2012" />。
入隊すると隊員は、「部隊で見たり聞いたりしたことを他人に話せば、時には法で罰せられる。家族に対しても同様である。」という訓示を受け、保秘を徹底させられると言われている{{Sfn|伊藤|2004}}。例として、愛知長久手町立てこもり発砲事件においてSAT隊員が死亡した際、隊員の両親は「死亡するまで、息子がSAT隊員であることを知らなかった」と報道されている。


=== 部隊活動用装備 ===
通常、SAT隊員は個人が特定できないようにするため、氏名も階級も部外には公開されず、報道関係者の前では[[目出し帽|マスク(目出し帽)]]を着用して素顔を隠している。もしも隊員個人が特定されれば、隊員および親類縁者に危害が加えられたり、[[脅迫]]あるいは[[獲得工作]]が行われることが懸念されるからである。一方、SAT隊長は狙撃や突入を実行しない責任者であるため、隊旗授与式等で報道関係者に対して素顔を公表している。1979年に発生した[[三菱銀行人質事件]]の際には、突入を行った零中隊の隊長が犯人を制圧後「機動隊員」として報道陣に姿を現し、記者会見に応じたことがある。
部隊活動時の[[偵察]]用機材として、[[暗視装置]]、[[ジャイロスコープ|ジャイロ機構]]付[[双眼鏡]]<!--<ref>『SATマガジン』2004年1月号 p.45</ref>-->、[[集音器]]<!--<ref name="黒木昭雄"/>-->、[[マイクロフォン#コンクリートマイク|コンクリートマイク]]<!--<ref name="黒木昭雄"/>-->、[[電磁波人命探査装置]]、[[光波測距儀|レーザー距離測定器]]なども用いられる<ref name="SmaSTATION">{{Cite news|date=2004年1月10日|newspaper=[[テレビ朝日]][[SmaSTATION!!]]|url=https://www.tv-asahi.co.jp/ss/102/tokushu/top.html|title=トクシュブタイ}}</ref>。


また部隊活動時の[[近接戦闘#突入の技術|突入]]用機材として、[[破城槌|バッティングラム]]、[[プラスチック爆弾]]なども用いられる{{Efn2|バッティングラムとは、鉄製の大型ハンマーで、ドアを破壊する際に使用する。2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=V3SNbVoAA8Q 警察庁 SATの訓練を初公開] - YouTube([[TOKYO MX]]の[[YouTube]]チャンネル)</ref>。 プラスチック爆弾は、ドアや壁を破壊する際に使用する<ref name="黒木昭雄">[[黒木昭雄]] 警察の世界の「お約束」([[青春出版社]]、2007年)</ref>。}}。
在隊期間はおおむね5年とされ、昇任した後に再びSATに入隊することもある。再入隊すればさらに5年間在隊することになる。昇任試験は一般の警察官と同様に行われる。


[[装甲車]]としては、標準的な[[特型警備車]]のほかに、SAT専用の[[特型警備車#銃器対策警備車|銃器対策警備車]]も配備されているほか、車列警護用として銃眼を備えたワゴン車もある{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}。元隊員である伊藤鋼一は、要人が移動する際の車列の前後に警護のSAT隊員が乗車した車両が配置される状況を例示している{{Sfn|伊藤|2004|pp=184-192}}。またこの他の車輌として、[[人員輸送車#警察|人員輸送車]]やトラックのほか、警視庁SAPでは、マイクロバスを改造した専用の指揮車両を保有していたといわれている{{Sfn|伊藤|2004|pp=133-137}}。
近年、警視庁ではSATを除隊した一部の隊員が、[[刑事部]]の[[特殊捜査班|特殊犯捜査係]](警視庁SIT)に配属されている。これは刑事部がSAT隊員の[[射撃]]技術などを即戦力として期待した結果、起用したものである{{Sfn|伊藤|2004}}。確認できる最も古い刑事部への配属は1995年9月に行われた。この人事異動では[[オウム事件]]の捜査を教訓として、警視庁SATの前身であるSAPの経験者7名が警備部からSITに配属された。なお、配属された警察官の階級別内訳は[[警部補]]1名、[[巡査部長]]2名、[[巡査]]4名であった{{Sfn|毛利|2002|loc=&sect;9}}。
<!-- “また、道県警察では特殊犯捜査係の定員が少なく、[[機動捜査隊]]の捜査員などと合同して突入班を編成している。そのためSAT隊員が除隊後に、機動捜査隊に異動することがある。千葉県警察では、SATの除隊者を機動捜査隊に異動させ、事件発生に応じて[[突入救助班|突入班]](ART)を編成する。”「突入救助班」の項目の編集に伴い、出典が確認できないため、現段階ではコメントアウトした方が良いと思います。-->


またSATの保有機材ではないが、[[都道府県警察航空隊#テロ対策機|テロ対策機]]を中心として、[[都道府県警察航空隊|警察航空隊]]の[[ヘリコプター]]による展開も行われる{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}。
この他にもSATの除隊者は、機動隊の[[スカイマーシャル]]{{Efn2|なお、日本の警察において「スカイマーシャル」とは航空機警乗組織のことであり、大阪府警察と千葉県警察の機動隊に設置されている。}}等に配属されていると言われている。


なお[[シージャック]]対策訓練では、[[ダイビング器材#スクーバ器材|スクーバ器材]]を着用した状態で、MP5A5やけん銃を携行し、水中からの犯人へ接近する映像が公開された{{Sfn|伊藤|2004|pp=1-16}}。
また過去には隊員に関する不祥事案が1件発生している。2010年1月に28歳の警視庁SAT隊員が、東京都国立市内のコンビエンスストアで万引きをしたことにより、現行犯逮捕された。後にこの隊員は警視庁を依願退職した。[http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4332392.html]


== 訓練 ==
== 他組織との連携 ==
=== 警察内での連携 ===
{{Double image stack|right|SAT operators deploying from heavily-armored SWAT Vehicle.jpg|Hijack training drills of the SAT.jpg|250|[[特型警備車#銃器対策警備車|銃器対策警備車]]から降車展開するSAT|SATのハイジャック訓練}}
[[2000年代]]後半からSATは、銃器使用の立てこもり事件において特殊犯捜査係(SIT)の支援を行っており、[[2007年]]4月には[[町田市立てこもり事件 (2007年)|町田市立てこもり事件]]に警視庁SATが出動した{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}。


さらに同年5月に発生した[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]では、愛知県警察のSITとともにSATが出動したが、事件を統括指揮していた[[刑事部]]捜査第一課との連携や情報共有の不足から、隊員1名が犯人の放った銃弾により死亡した。警察庁は、この事件を教訓としてSATを支援する'''特殊部隊支援班'''<ref>『[[警察白書]]』平成20年度版の第4章第3節「国際テロ対策」</ref>(SAT Support Staff、通称スリーエス)を創設した。これは、都道府県警察刑事部との連携や[[警察本部長]]の補佐、警察庁警備局との連絡調整を担当するとされる{{Sfn|柿谷|菊池|2008|pp=6-17}}。
===国内における訓練===
SATは思想的背景のある犯罪者や、テロリストを主に取り扱う[[警備部]]に所属しており、装備品や訓練施設の大半は地方予算(都道府県警察予算)ではなく、国家予算([[国費]])で賄われている。そのため通常の機動隊に比べて装備、訓練施設は充実している。


===自衛隊との連携===
日本国内には、先述のようにSATの関連施設が設置されており、訓練が行われている。訓練は危険を伴い、過去においては隊員が重傷を負う事故も発生している。2006年には大阪府警察SATの隊員が[[射撃]]訓練中、首からさげた[[自動小銃]]を構える際に引き金に指がかかり、実弾1発を[[暴発]]させ、自身の左足ふくらはぎを貫通し、全治約1カ月の重傷を負った<ref>『[[産経新聞]]』、2006年8月23日大阪版、朝刊</ref>。
[[1996年]]の[[江陵浸透事件]]、[[1999年]]の[[能登半島沖不審船事件]]などの[[北朝鮮工作員]]関連事案を通じて、[[スパイ|武装工作員]]事案の脅威が認識されるようになったことを受けて、SATでは武装工作員事案への対処を想定した訓練も実施している{{Sfn|伊藤|2004|p=200}}。元関係者の証言によれば、警視庁SATの前身であるSAP当時から、[[東京都]]内の山中で[[ゲリラ]]掃討訓練を実施していたとされる{{Sfn|伊藤|2004|p=95}}。2000年2月に[[国家公安委員会]]と[[防衛省|防衛庁]](当時)とで「治安出動の際における治安の維持に関する協定」が締結されたのに続いて、2001年2月には警察庁および防衛庁とで細部協定が締結され、2002年4月までに、各都道府県警察と[[陸上自衛隊]]の各師旅団とで現地協定が締結された{{Sfn|警察庁|2007|p=189}}。


そして共同図上訓練を経て、2004年9月に警察庁と防衛庁とで「治安出動の際における武装工作員等共同対処指針」が策定されたのを受けて、2005年3月には各都道府県警察と陸上自衛隊の各師旅団とで「治安出動の際における武装工作員等事案への共同対処マニュアル」が作成された。これに基づく共同訓練の第一弾として、同年10月に北海道警察と陸上自衛隊[[北部方面隊]]とが行った共同実動訓練では{{Sfn|警察庁|2007|p=189}}、道警のSATも出動し、陸上自衛隊の[[レンジャー (陸上自衛隊)|レンジャー]]隊員とSAT隊員がスタック体制を組む姿も公開された{{Sfn|柿谷|菊池|2008|pp=52-64}}。
専用の訓練施設以外では、[[陸上自衛隊]]の[[駐屯地]]で[[自動小銃|小銃]]を使用した[[狙撃]]訓練や、ヘリコプター降下の訓練を実施したとされている{{Sfn|伊藤|2004}}。


=== 他国との交流 ===
部隊の具体的な訓練内容については、創設以来、非公開とされていたが、[[2002年]]の[[2002 FIFAワールドカップ|サッカーワールドカップ]]開催を前にして、[[警察庁]]は同年5月10日に警視庁SATの訓練映像を公開した。映像ではヘリコプターからの降下訓練や、航空機、バスへの突入訓練、狙撃や潜水器具を使用したプールでの訓練などが公開された。
特科中隊・零中隊の発足の際には、装備・訓練・ノウハウなど、[[西ドイツ]][[連邦国境警備隊|国境警備隊]]の[[GSG-9]]の全面協力を受けており{{Sfn|佐々|2013|loc=第二章 『よど号』模倣犯ハイジャック}}、8名の警察官が派独された{{Sfn|伊藤|2004|pp=46-51}}。また[[イギリス陸軍]]の[[SAS (イギリス陸軍)|SAS]]への派遣も行われたほか{{Sfn|麻生|1999}}{{Efn2|その際、隊員の1人がロンドンでスリに遭い、猛突進して逮捕した{{Sfn|麻生|1999}}。}}、1980年代から90年代には[[フランス]]の[[フランス国家憲兵隊治安介入部隊|GIGN]]にも研修に行っていたことが判明しており、GIGN本部庁舎内にはSATと交換した盾が飾られている{{Sfn|菊池|2021}}。


[[オーストラリア]]の[[パース (西オーストラリア州)|パース]]に所在する大規模な[[市街戦]]・屋内戦用の訓練施設(通称キリングヴィレッジ)で訓練を行ったと言われており<ref>{{Cite book|和書|title=特殊部隊全史|author=マーティン・C・アロステギ|publisher=朝日新聞社|year=1998|chapter=第7章「キリングハウス」を越えて}}</ref>、2000年代初頭からはオーストラリアの[[クイーンズランド州]]において訓練を実施している<ref name="Police Bulletin">{{Cite journal|author=Michelle Connolly|year=2007|title=Japanese officers put to the test in Sunshine State|journal=Police Bulletin|issue=314|url=http://www.police.qld.gov.au/Resources/Internet/services/reportsPublications/bulletin/314/documents/Page%2026-27%20-%20Japanese%20officers%20put%20to%20the%20test%20in%20Sunshine%20State.pdf|archiveurl=https://web.archive.org/web/20070829185835/http://www.police.qld.gov.au/Resources/Internet/services/reportsPublications/bulletin/314/documents/Page%2026-27%20-%20Japanese%20officers%20put%20to%20the%20test%20in%20Sunshine%20State.pdf|archivedate=2007-08-29}}</ref>。また[[オーストリア]]の[[コブラ (特殊部隊)|コブラ]]、イタリアの[[治安作戦中央部隊|NOCS]]とも交流があり、合同訓練を実施している<ref>軍事専門誌『Jグランド』第9号に掲載された記事「フランス特殊部隊GIGN&amp;RAID」には、「現在でもGIGNとSATの教官クラスは交換留学トレーニングを行っている。」と記載されている。</ref><ref>双葉社『実録 世界の特殊部隊』133ページ、「オーストリア特殊任務部隊Cobra」の記事において、Cobraを「日本のSATと交流が深い」と記載。</ref><ref>{{Cite web|date=2014年4月8日|title=Nocs - Japan Sat, insieme per migliorarsi|url=http://www.poliziadistato.it/articolo/view/32920/|author=イタリア国家警察|accessdate=2019/10/18}}</ref>。
2007年6月5日に警察庁は、東京都内の警視庁の専用施設に全国[[警察本部]]の[[本部長]]を集め、警視庁SATとSITの合同訓練を実施した。この合同訓練は、[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]において愛知県警察SATとSITの連携が課題となった事を受けて行われたもので、全国の警察本部長にSATとSITの技能や効果的な運用方法に関する理解を深めさせ、実践的な訓練や事件対応に生かすことが目的であった。訓練内容は人質立てこもり事件において犯人が警察官に向かって銃撃し、建物から出て来るとの想定に基づき、SATとSITは閃光弾やけん銃を使った突入や狙撃銃での狙撃など、役割を分担して訓練を実施した<ref>『[[時事ドットコム]]』2007年6月5日</ref>。


これらの交流の結果、日本国外の治安機関の特殊部隊と比較しても劣らない能力を獲得しているとして、2001年の[[第153回国会]]の衆議院内閣委員会では「国外での競技会で一位をとるほどの実力」との答弁がなされている<ref>{{Cite conference
===海外における訓練、および他国の特殊部隊との交流===
| 和書
SATの前身部隊が[[オーストラリア]]の[[パース (西オーストラリア州)|パース]]に所在する大規模な[[市街戦]]・屋内戦用の訓練施設(通称キリングヴィレッジ)で訓練を行ったと言われている<ref>{{Cite book|和書|title=特殊部隊全史|author=マーティン・C・アロステギ|publisher=朝日新聞社|year=1998|chapter=第7章「キリングハウス」を越えて}}</ref>。
| url = https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=115304889X00320011128&spkNum=62&single
さらにSATは2001年から、オーストラリアの[[クイーンズランド州]]において訓練を実施している<ref>クイーンズランド州警察の広報誌『Police Bulletin』の第314号に掲載された「Japanese officers put to the test in Sunshine State」という記事に記載。記事が掲載されたのは2007年であり「訓練は7年前から毎年実施されている。」と記載されている。[http://www.police.qld.gov.au/Resources/Internet/services/reportsPublications/bulletin/314/documents/Page%2026-27%20-%20Japanese%20officers%20put%20to%20the%20test%20in%20Sunshine%20State.pdf]</ref>。
| date = 2001-11-28
| title = 衆議院内閣委員会
| volume = 3
| conference = 第153回国会
| quote = これにつきましては、外国の治安機関の特殊部隊と比肩してもまさに力が劣らない
}}</ref>。


== 訓練 ==
他国の特殊部隊との交流としては、先述のとおりSATの前身部隊である特科中隊(警視庁)、零中隊(大阪府警察)が部隊創設時に[[ドイツ]]の[[GSG-9]]から全面的な支援を受けた。
{{Triple image stack|right|SAT operators preparing to rush out of their helicopter.jpg|Hijack training drills of the SAT.jpg|SAT operators rushing into a building.jpg|250|ヘリコプターからビルの屋上に降りようとする隊員{{Sfn|伊藤|2004|pp=1-16}}|ハイジャック訓練|建物への突入訓練}}
またSATは[[フランス]]の[[フランス国家憲兵隊治安介入部隊|GIGN]]、オーストリアの[[コブラ (特殊部隊)|Cobra]]、イタリアの[[治安作戦中央部隊|NOCS]] と交流があり、合同訓練を実施した<ref>軍事専門誌『Jグランド』第9号に掲載された記事「フランス特殊部隊GIGN&amp;RAID」には、「現在でもGIGNとSATの教官クラスは交換留学トレーニングを行っている。」と記載されている。</ref><ref>双葉社『実録 世界の特殊部隊』133ページ、「オーストリア特殊任務部隊Cobra」の記事において、Cobraを「日本のSATと交流が深い」と記載。</ref><ref>イタリア国家警察のホームページに2014年4月8日に掲載された記事「Nocs - Japan Sat, insieme per migliorarsi」には、SATとNOCSが合同訓練を実施したと記載されている。[http://www.poliziadistato.it/articolo/view/32920/]</ref>。
===日本における訓練===
日本国内には、下記のようにSATの訓練施設が設置されており、訓練が行われている。訓練は危険を伴い、過去においては隊員が重傷を負う事故も発生している。2006年には大阪府警察SATの隊員が[[射撃]]訓練中、首からさげた[[自動小銃]]を構える際に引き金に指がかかり、実弾1発を[[暴発]]させ、自身の左足ふくらはぎを貫通し、全治約1カ月の重傷を負った<ref>『[[産経新聞]]』、2006年8月23日大阪版、朝刊</ref>。


部隊の具体的な訓練内容については、創設以来、非公開とされていたが、[[2002年]]の[[2002 FIFAワールドカップ|サッカーワールドカップ]]開催を前にして、[[警察庁]]は同年5月10日に警視庁SATの訓練映像を公開した。映像ではヘリコプターからの降下訓練や、航空機、バスへの突入訓練、狙撃や潜水器具を使用したプールでの訓練などが公開された。
===報道機関に公開された訓練===
2007年7月5日には東京都内の訓練施設において、警視庁SATの訓練が初めて報道陣に公開された。この訓練は同年7月に北海道洞爺湖町で開催された[[第34回主要国首脳会議|主要国首脳会議]](サミット)に備えたもので、屋内突入による犯人制圧と人質救出訓練や、ヘリコプターからの降下、狙撃訓練などが行われた。


2007年6月5日に警察庁は、東京都内の警視庁の専用施設に全国[[警察本部]]の[[本部長]]を集め、警視庁SATとSITの合同訓練を実施した。この合同訓練は、[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]において愛知県警察SATとSITの連携が課題となった事を受けて行われたもので、全国の警察本部長にSATとSITの技能や効果的な運用方法に関する理解を深めさせ、実践的な訓練や事件対応に生かすことが目的であった。訓練内容は人質立てこもり事件において犯人が警察官に向かって銃撃し、建物から出て来るとの想定に基づき、SATとSITは閃光弾やけん銃を使った突入や狙撃銃での狙撃など、役割を分担して訓練を実施した<ref>『[[時事ドットコム]]』2007年6月5日</ref>。
2010年9月6日に神奈川県横浜市内の県警第一機動隊訓練場において神奈川県警察、警視庁、[[関東管区警察局]]の合同警備訓練が行われた。この訓練は同年11月に神奈川県横浜市で開催された[[2010年日本APEC|APEC首脳会議]]に備えたもので、関係者が乗ったバスが[[ハイジャック]]されたとの想定に基づき、神奈川県警察SATの狙撃班がヘリコプターからビル屋上に降下して狙撃配置に付き、突入班が閃光弾を使用してバスに突入し犯人を制圧、人質を救出した。


=== 訓練施設 ===
また、2010年11月26日には[[石川県]][[志賀原子力発電所]]において、外国人工作員の襲撃を想定した警備訓練が報道機関に公開され、[[石川県警察]][[銃器対策部隊]]と[[愛知県警察]]SATが参加した。この訓練を視察した[[安藤隆春]][[警察庁長官]]は「[[朝鮮半島]]の緊張が高まる中、警察としては、全国の重要施設の警備に張り詰めた意識を持って当たりたい」と発言した<ref>『読売オンライン』2010年11月26日</ref>。
SATの訓練施設には室内[[射撃|射撃場]]、[[クライミング|登はん]]訓練施設、屋内[[スクーバダイビング|スキューバ・ダイビング]]施設、[[ヘリコプター]]施設が設置されているとされる<ref name="Police Bulletin"/>。SATの所在する都道府県で[[射撃]]場を有する機動隊の訓練施設は以下のとおりである。SATの装備品や訓練施設は都道府県警察予算ではなく、[[国庫制度|国家予算]]で整備されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.npa.go.jp/policies/budget/review/r2/reviewsheet/PDF/01001500.pdf |title= 令和2年度行政事業レビューシート|format=PDF|date=2021-08-25 |author=警察庁|accessdate=2022-02-26}}</ref>。そのため、通常の機動隊に比べて装備や訓練施設は充実している。


; 警視庁術科センター : [[東京都]][[江東区]]に所在。術科([[射撃]]、[[柔道]]、[[剣道]]、[[逮捕術]])の総合訓練施設。総延べ面積は約2万3700平方メートルであり、2010年から全面的な改修工事が行われている。この改修には10年間を要し、改修費用は50億3000万円である<ref>『建通新聞電子版』に記載[http://www.kentsu.co.jp/webnews/html/090806500002.html]。</ref>。
2013年5月11日に[[東京電力]][[福島第二原子力発電所]]において、警察と海上保安庁の合同テロ対策訓練が行われた。この訓練はテロリストが復旧作業中の[[福島第一原子力発電所]]を襲撃したとの想定で行われ、千葉県警察SATと福島県警察銃器対策部隊、[[海上保安庁]][[特殊警備隊]](SST)などが参加した。この訓練では千葉県警察のSATが初めて報道機関に公開されており、訓練に参加した隊員は放射線による汚染環境下を想定し、放射線防護服を着用してテロリストの制圧を行った。
: 元SAP隊員である[[伊藤鋼一]]の著書によれば、1980年代当時、同センターの奥には、厳重な管理体制で護られたSAP専用の射撃訓練場が設置されていた{{Sfn|伊藤|2004}}。
: 2007年には警視庁術科センターと「夢の島総合警備訓練場」において、警視庁SATの訓練が報道機関に公開されている<ref>公開訓練の場所に関しては「SATマガジン」2007年9月号に掲載された記事「警視庁SAT公開訓練」に記載。</ref>。
; 警視庁機動隊総合訓練所
: 東京都[[立川市]]に所在。射撃場を有しており、2010年に射撃場の改修に関する工事が行われている<ref>『警視庁国費案件平成21年度年間工事発注予定表』に記載[https://web.archive.org/web/20090902064141/http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetuzuki/nyusatu/image/hatyuyotei_21.pdf]。</ref>。
; 大阪府警察総合訓練センター
: [[大阪府]][[大東市]]に所在。射撃場、[[陸上競技場]]、車両訓練コース等を有する大阪府警察の総合訓練施設。1997年に完成。
: 同センターでは、2008年に大阪府警察のSAT隊員が射撃訓練中の事故で負傷している<ref>『[[産経新聞]]』(2006年8月23日、大阪版朝刊)に記載。</ref>。
; 北海道警察総合訓練場
: [[北海道]][[千歳市]]に所在。主に機動隊が使用する訓練施設。
: 2006年に完成。鉄筋コンクリート構造4階建て、延べ面積は2849平方メートルである<ref name="daikenn2012">訓練場の設計を担当した『株式会社大建設計』のホームページに掲載[http://www.daiken-sekkei.co.jp/works/officebuilding_s02.html]。</ref>。また、2010年には訓練場敷地内で新棟の建設工事が行われた。この新棟は床面積約6000平方メートルで、射程の長い[[小銃|ライフル]]射撃に対応可能な射撃場を有しており、既存棟とともに、重大テロや人質立てこもりなど各種災害警備、救出救助事件の訓練を行う施設である<ref>『[[苫小牧民報|苫小牧民報社]]』2010年2月12日の記事「道警の総合訓練場を拡張へ」に記載[http://www.tomamin.co.jp/2010c/c10021204.html]。</ref>。
; 千葉県警察機動隊総合訓練施設(多古訓練場)
: [[千葉県]][[香取郡]][[多古町]]に所在。
: 同訓練施設については、[[成田空港問題]]を扱うサイトに「300mの長さを持つライフルの射的訓練場を含む、ハイジャック対策訓練場」と記載されている<ref>『成田空港サーバー』1998年8月9日の記録に記載[http://www.page.sannet.ne.jp/km_iwata/98nen8gatu.html]。1998年8月9日の記録には、訓練場の建設に関して「22日に地元説明会が開かれることになっており、これによって詳細がわかるものと思われます。」との記載がある。また同サイトの1999年3月22日の記録には、『千葉県警の、「ハイジャック対策」のためと言っている「ライフル射撃練習場」』との記載がある。</ref>。2019年には射撃標的装置の点検業務に関する入札が公示されている<ref>NJSS入札情報速報サービスのサイトに掲載[https://www.njss.info/offers/view/12821458/]。</ref>。
; 神奈川県警察機動隊総合訓練施設
: [[神奈川県]][[横浜市]]に所在。2018年に完成。鉄筋コンクリート構造(一部鉄骨構造)4階建て、延床面積は1848.72平方メートルである<ref>株式会社建設データバンクのホームページに掲載[https://www.kensetsu-databank.co.jp/osirase/detail.php?id=36892]。</ref>。
; 愛知県警察機動隊総合訓練場
: [[愛知県]][[小牧市]]に所在。2006年に完成。鉄筋コンクリート構造2階建て、延べ面積は2412平方メートルである<ref name="daikenn2012" />。射撃場を有しており、2011年には射撃標的装置の点検業務に関する[[随意契約]]が行われている<ref>愛知県警察ホームページの随意契約情報に記載 [http://www.pref.aichi.jp/police/houritu/keiyaku/keiyaku05.pdf]。なお、支出は[[国費]](国家予算)で行われている。</ref>。
; 福岡県警察機動隊総合訓練場
: [[福岡県]][[福岡市]]に所在。2005年に完成。鉄筋コンクリート構造4階建て、延べ面積は3291平方メートルである<ref name="daikenn2012" />。射撃場を有しており、2009年には射撃場の改修工事に関する[[競争入札]]が行われている<ref>福岡県警察ホームページに記載[http://www.police.pref.fukuoka.jp/data/open/cnt/3/4/1/koukyou.pdf]。</ref>。


専用の訓練施設以外では、[[陸上自衛隊]]の[[駐屯地]]で[[自動小銃|小銃]]を使用した[[狙撃]]訓練や、ヘリコプター降下の訓練を実施したとされている{{Sfn|伊藤|2004|p=95}}。また[[積雪]]や[[吹雪]]といった環境下での活動を想定して、[[雪山]]でのテロに対処するための訓練も実施されている<ref name="伊藤2022">{{Cite web|url=https://www.facebook.com/itoh.koh/posts/pfbid027stjpXuM85bbcTb9pFvVe2kvhrPcwdaExzhcUSexnh7jqXWQT7RhjLfiiZa1gHzjl |title=警察特殊部隊の神髄|author=[[伊藤鋼一]] |date=2022-04-21 |work= www.facebook.com|publisher= |accessdate=2022-11-28 }}</ref>。
2015年12月22日に警察庁は東京都内の訓練施設において、警視庁SATと神奈川県警察SATの合同訓練を報道機関に公開し、[[河野太郎]][[国家公安委員長]]が視察した。この訓練は2016年5月に開催される[[第42回先進国首脳会議]](伊勢志摩サミット)を控え行われたもので、実弾を使用した射撃訓練や突入制圧訓練、人質救出を想定した狙撃訓練などが行われた。SAT同士の合同訓練の公開は創設以来初となる。


===報道機関に公開された訓練===
2016年3月28日に東京都江東区において、警視庁SATが突入訓練を報道機関に公開した。この訓練は[[東京駅]]構内で自爆テロが起きた後、逃走したテロリストが倉庫内に立てこもったとの想定で行われたもので、[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]など関連企業を含め、約360名が参加した。
愛知立てこもり事件の発生以来、SATは報道機関に訓練を公開するようになり、2007年には警視庁SATが初めて訓練を公開し、2010年には神奈川県警察SATと愛知県警察SATが訓練を公開した。さらに2013年には千葉県警察SATが訓練を公開した。なお、2007年以降の公開訓練でSAT隊員が着用した防弾ベストは、上腕部を保護するプレートが追加されており、防護範囲が拡大されている。


2007年7月5日には東京都内の訓練施設において、警視庁SATの訓練が初めて報道陣に公開された。この訓練は同年7月に北海道洞爺湖町で開催された[[第34回主要国首脳会議]]に備えたもので、屋内突入による犯人制圧と人質救出訓練や、ヘリコプターからの降下、狙撃訓練などが行われた。
2017年5月16日に愛知県小牧市の警察施設において、愛知県警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。この訓練は、テロリストが市街地で歩行者の列に車で突っ込み、銃を乱射したとの想定で行われ、愛知県警察SATの隊員らが車で逃走するテロリストを追い詰め、閃光弾などを用いて制圧した。訓練を視察した[[坂口正芳]]警察庁長官は「あらゆる事態に適切に対応できるよう常に新しい手法を開発し、訓練により練度を高めるなど、テロ対策に万全を期してまいりたい」と発言した。


2018216日に東京都内の高速道路上において、警視庁SATがテロ対処訓練を報道機関に公開した。この訓練は、2020年に開催され[[2020東京オリンピック|東京オリンピック・パラリンピック]]の中止を企てるテロリストタクシーを乗っ取り、競技会場に向かう選手団や各国の要人を乗せたバスを襲撃して、人質を取ったとの想定で行われた。視庁SATバスに突入し、テロリスト役を制圧、人質を救出した。
201096日に神奈川県横浜市内の県警第一機動隊訓練場において神奈川県警察、警視庁、[[関東管区警察局]]の合同警備訓練が行われた。この訓練は11月神奈川県横浜市で開催され[[2010日本APEC|APEC首脳会議]]に備えたもで、関係者が乗ったバスが[[ハイジャック]]されたとの想定に基づき、神奈川県SATの狙撃班がヘリコプターからビル屋上に降下して狙撃配置に付き、突入班が閃光弾を使用してバスに突入し犯人を制圧、人質を救出した。


また、2010年11月26日には[[石川県]][[志賀原子力発電所]]において、外国人工作員の襲撃を想定した警備訓練が報道機関に公開され、[[石川県警察]][[銃器対策部隊]]と[[愛知県警察]]SATが参加した。この訓練を視察した[[安藤隆春]][[警察庁長官]]は「[[朝鮮半島]]の緊張が高まる中、警察としては、全国の重要施設の警備に張り詰めた意識を持って当たりたい」と発言した<ref>『読売オンライン』2010年11月26日</ref>。
== 支援組織および他機関との連携 ==


2013年5月11日に[[東京電力]][[福島第二原子力発電所]]において、警察と海上保安庁の合同テロ対策訓練が行われた。この訓練はテロリストが復旧作業中の[[福島第一原子力発電所]]を襲撃したとの想定で行われ、千葉県警察SATと福島県警察銃器対策部隊、[[海上保安庁]][[特殊警備隊]](SST)などが参加した。この訓練では千葉県警察のSATが初めて報道機関に公開されており、訓練に参加した隊員は放射線による汚染環境下を想定し、放射線防護服を着用してテロリストの制圧を行った。
===SATの支援組織===
SATを支援する部隊として、全国の[[機動隊]]に[[銃器対策部隊]]が編成されている。
また2007年5月に発生した[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]でSAT隊員が殉職したことを受け、警察庁は同年6月、「特殊部隊支援班(SAT Support Staff、通称スリーエス)」を発足させた<ref>組織の正式名称は『[[警察白書]]』平成20年度版の第4章第3節「国際テロ対策」に記載</ref>。特殊部隊支援班はSATの効果的な運用と、隊員の受傷事故防止を目的としており、警察庁のほか、警視庁、大阪府警察のSAT経験者、現役隊員ら10人程度で構成される。SATが出動した際は、特殊部隊支援班から2〜3人が現地に赴き、警視総監や警察本部長にSATの態勢や活用方法を助言し、刑事部との連携や警察庁[[警備局]]などとの連絡調整を担当する。


2015年12月22日に警察庁は東京都内の訓練施設において、警視庁SATと神奈川県警察SATの合同訓練を報道機関に公開し、[[河野太郎]][[国家公安委員長]]が視察した。この訓練は2016年5月に開催される[[第42回先進国首脳会議]]を控え行われたもので、実弾を使用した射撃訓練や突入制圧訓練、人質救出を想定した狙撃訓練などが行われた。SAT同士の合同訓練の公開は創設以来初となる。
===自衛隊との連携===
近年では、[[スパイ|武装工作員]]等による[[テロ]]、[[ゲリラ]]事案に共同で対処することを目的として、関係各機関の間で様々な協定が締結されている。[[2002年]]には[[陸上自衛隊]]と都道府県警察により、'''[[治安出動]]の際における治安の維持に関する現地協定'''が締結された。さらに[[2004年]]には、[[防衛庁]]運用局長と[[警察庁]][[警備局]]長により、'''武装工作員等共同対処指針'''が策定された。これを受け、警察と自衛隊による共同対処訓練が全国各地で実施されており、[[2005年]]10月20日には北海道において、北海道警察(総勢150名)と陸上自衛隊(総勢200名)による合同訓練が行われた。この訓練では、陸上自衛隊[[第18普通科連隊]]の隊員と、北海道警察の機動隊員がヘリコプターから降下し、他の機動隊員(銃器対策部隊)を現場まで誘導する部隊輸送訓練が行われた。なおヘリコプターから降下した機動隊員に関しては、装備やリペリング(ロープ降下)技術などから、軍事専門誌の記事において「北海道警察のSAT」であると掲載された<ref>『SATマガジン』12号</ref>。一方、北海道警察では同訓練にSATが参加したとの公表は行っておらず、参加部隊は機動隊であると公表した。


2016年3月28日に東京都江東区において、警視庁SATが突入訓練を報道機関に公開した。この訓練は[[東京駅]]構内で自爆テロが起きた後、逃走したテロリストが倉庫内に立てこもったとの想定で行われたもので、[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]など関連企業を含め、約360名が参加した。
== 主要装備 ==
=== 銃器類 ===
==== けん銃 ====
; [[H&K USP]]
: 2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用。専用の[[懐中電灯|フラッシュライト]](ITI社製、M2)を装着したもの。
: 2010年9月に公開された合同警備訓練において、神奈川県警察SATが使用。
: 2010年11月に公開された警備訓練において、愛知県警察SATが使用。
; [[SIG SAUER P226|SIG SAUER P226R]]
: 2015年12月に公開された合同訓練において、警視庁SATと神奈川県警察SATが使用。一体型のグリップとフラッシュライト([[シュアファイア]]社製、X300 ULUTRA)を装着したもの。
; [[SIG SAUER P226#P228|SIG SAUER P228]]
: 2002年に警察庁が公開したSAT訓練映像で使用が確認されたもの。
; [[グロック17#グロック19 / 23 / 25 / 32 / 38|GLOCK19]]
: 2002年に警察庁が公開したSAT訓練映像で使用が確認されたもの。
; [[S&W M39#バリエーション|S&W M3913]]
: 2005年に北海道で実施された北海道警察と[[陸上自衛隊]]の合同訓練の際に、北海道警察SATと見られる部隊が使用。
; [[H&K P9S]]
: 警視庁の特科中隊(SAP)が使用していたとされている{{Sfn|伊藤|2004}}。
<!-- “: [[S&W M586]](アメリカ): フランスの[[GIGN]]でも[[リボルバー]]を使用しているのと同様に確実性や装弾トラブルが許されないような場合などに使用する。”訓練映像や資料などの出典が確認できないため、現段階ではコメントアウトした方が良いと思います。-->
また、1979年に発生した[[三菱銀行人質事件]]において零中隊が使用したけん銃は、[[スミス&ウェッソン|S&W]]社製の45[[口径]]けん銃だったとされている<ref name="asou1999" />。事件当時の警察の装備で該当するけん銃は、[[M1917リボルバー]]である。この銃は[[ニューナンブM60]]が配備される以前に、[[アメリカ軍]]から支給されたものである。


2017年5月16日に愛知県小牧市の警察施設において、愛知県警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。この訓練は、テロリストが市街地で歩行者の列に車で突っ込み、銃を乱射したとの想定で行われ、愛知県警察SATの隊員らが車で逃走するテロリストを追い詰め、閃光弾などを用いて制圧した。訓練を視察した[[坂口正芳]]警察庁長官は「あらゆる事態に適切に対応できるよう常に新しい手法を開発し、訓練により練度を高めるなど、テロ対策に万全を期して参りたい」と発言した。
==== 狙撃銃 ====
; [[豊和工業]] [[豊和M1500|M1500]]
: 2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用した[[ボルトアクション方式|ボルトアクション]][[小銃|ライフル]]。[[照準器]]と[[二脚]]を装着したもの。
: 2010年9月に公開された合同警備訓練において、神奈川県警察SATが使用。
; 豊和工業 [[豊和ゴールデンベア|ゴールデンベア]]
: 照準器と二脚を装着したボルトアクションライフル。警視庁の特科中隊(SAP)が使用していたとされている{{Sfn|伊藤|2004}}。
; 豊和工業 [[64式7.62mm小銃]]
: 照準器を取り付け、[[64式7.62mm小銃#64式7.62mm狙撃銃|狙撃用]]としたもの。警視庁の特科中隊(SAP)が使用していたとされている{{Sfn|伊藤|2004}}。
<!-- “; レミントンM700”明確な出典が確認できないため、現段階ではコメントアウトした方が良いと思います。-->


2018年2月16日に東京都内の高速道路上において、警視庁SATがテロ対処訓練を報道機関に公開した。この訓練は、2020年に開催される[[2020年東京オリンピック|東京オリンピック]]・[[2020年東京パラリンピック|パラリンピック]]の中止を企てるテロリストがタクシーを乗っ取り、競技会場に向かう選手団や各国の要人を乗せたバスを襲撃して、人質を取ったとの想定で行われた。警視庁SATはバスに突入し、テロリスト役を制圧、人質役を救出した。
その他の[[狙撃銃]]として軍事専門誌の記事には、SATが日本仕様に改修した[[ヘッケラー&コッホ|H&K]]社製[[H&K PSG1|PSG1]]と、[[アキュラシー・インターナショナル]]社製[[L96A1]]を配備と記載されている<ref>『SATマガジン』2009年1月号に掲載された記事「日本警察の拳銃」に記載</ref>。


2019年5月9日に大阪府大東市の警察施設において、大阪府警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。この訓練は、6月28日に開催される[[第14回20か国・地域首脳会合]]の中止を企てるテロリストが銃を乱射して、市街地のビルに立て籠もったとの想定で行われた。大阪府警察SATの隊員らがビルの屋上からローブで降下し、閃光弾などを用いて制圧した。
また、近年では日本の銃器代理店(日本特装株式会社)が、自社のカタログに「[[アキュラシーインターナショナル AW50|アキュラシーインターナショナル社製の対物ライフル]]を警察に納入した」と記載している。[[対物ライフル]]は、[[ハイジャック]]事件における[[狙撃]]用として、各国の対テロ部隊に配備されている。その理由は、通常の[[7.62x51mm NATO弾|7.62mm弾]]を使用する狙撃ライフルでは、[[航空機]]の風防ガラスを破壊し、かつ標的に達することができないためである。


2021年6月22日に東京都江東区において、警視庁SATがテロ対処訓練を報道機関に公開した。この訓練は、7月に開催される[[2020年東京オリンピック|東京オリンピック]]・[[2020年東京パラリンピック|パラリンピック]]の中止を企てるテロリストがバスを乗っ取り、人質を取ったとの想定で行われた。警視庁SATはバスに突入し、テロリスト役を制圧、人質役を救出した。
==== 機関けん銃 ====
; [[H&K MP5|H&K MP5シリーズ]]
MP5については、複数の仕様が確認されている。
; [[H&K MP5#9×19mm弾モデル|MP5A5]]
: [[銃床]]が[[伸縮構造|伸縮型]]のもの。2007年に実施された公開訓練において、警視庁SATが使用。[[:en:EOTec|EOテック]]社製の[[照準器#オプティカルサイト(Optical sight)|レーザーホログラムサイト]]を装着したもの。
: 2007年5月に愛知県で発生した立てこもり事件において、愛知県警察SATが使用。[[銃砲身|銃身]]にフォアグリップを装着したもの。
: 2010年9月に公開された合同警備訓練において、神奈川県警察SATが使用。
: 2015年12月に公開された合同訓練において、警視庁・神奈川県警察SATが使用。この訓練ではMP5A5にフォアグリップ内蔵型の[[懐中電灯|フラッシュライト]]や、[[シュアファイア]]社製M63 フラッシュライトなどを装備しており、複数の仕様が確認された。
; MP5F
: [[銃口]]に[[フラッシュサプレッサー|消炎制退器]]を装着しており、銃床が伸縮型のもの。
: 2005年に北海道で実施された北海道警察と[[陸上自衛隊]]の合同訓練の際、北海道警察SATと見られる部隊が使用。
: 2013年5月に東京電力福島第二原子力発電所において行われたテロ対策訓練の際、千葉県警察SATが使用。
: 2015年12月に公開された合同訓練において、警視庁・神奈川県警察SATが使用。[[照準器]]やフラッシュライトは、MP5A5と同様に複数の仕様が確認された。
; [[H&K MP5#MP5Kシリーズ|MP5K]]
: 銃身が短縮型のもの。2018年2月に公開された訓練において、警視庁SATがフォアグリップとレーザーホログラムサイトを装着したMP5Kを使用。
; [[H&K MP5#MP5SDシリーズ|MP5SD6]]
: [[サプレッサー|減音器]]を装着しており、銃床が伸縮型のもの。警視庁の特科中隊(SAP)が使用していたとされている{{Sfn|伊藤|2004}}。


==== 小銃 ====
== ==
; [[1979年]]
; [[豊和工業]] [[89式5.56mm小銃]](折曲銃床式)
: '''1月26日'''
: 2004年に政府が有識者を集めて開催した「安全保障と防衛力に関する懇談会」の第9回懇談会において、警察庁が作成し、配布した資料に「SAT装備品」として写真入りで掲載されていたもの。
: [[三菱銀行人質事件]]が発生。零中隊が出動。銀行内に突入し、近距離から[[けん銃]]で犯人を射撃することより、人質を救出した。犯人は病院に搬送後、死亡が確認された。突入の際、零中隊の隊員は部隊の存在を秘匿するため、アサルトスーツ(突入服)の代わりにトレーニングウェアを着用しており、犯人への射撃には、S&W社製45口径けん銃を使用した{{Sfn|麻生|1999}}。事件後の記者会見では、零中隊指揮官であった警部も、「第二機動隊ハイジャック対策部隊」の肩書で同席していた{{Sfn|ストライクアンドタクティカルマガジン|2017|pp=37-45}}。
<!--: [[コルト]]社製 [[M4A1 SOPMOD|M4カービン]](英語版Wikipediaより。[[警察庁]]が試験運用を考えていたらしいのですが、ここでは、コメントアウトします。)-->
; [[1987年]]
<!--: [[HK53]]三点バースト機構が搭載されている。ヘリからの狙撃支援に使用。(確認できる出典は「警視庁・特殊部隊の真実」の「警視庁SAT出動」という章ですが、この章については著者が「フィクションである」と記載しています。警察庁の調達資料等、裏付けとなるような出典が明らかとなるまで、コメントアウトした方が良いと思います。)-->
: [[後藤田正晴]][[内閣官房長官]]と[[佐々淳行]][[内閣安全保障室|内閣安全保障室長]]が、[[陸上自衛隊]][[習志野演習場]]においてSAPの訓練を視察。この視察は報道関係者を一切伴わず、非公式に行われた{{Sfn|佐々|2013|loc=第二章 『よど号』模倣犯ハイジャック}}。
<!--: ==== 散弾銃 ====[[モスバーグ]]社(アメリカ)製の散弾銃を使用している、と言われている。その他、[[レミントン・アームズ|
レミントン]]社やベネリ社イタリア)の散弾銃を使用との説もる。{{要出典}}ドアの鍵を破壊るなど突入支援に使用する。(突入用としてSATが装備している可能性は高いのです具体的なメーカーや、警察庁調達資料等で出典が明らかなるまでコメントアウトした方が良いと思います。-->
<!--: * [[1992年]] [[町田市立てこもり事件 (1992年)|町田市立てこもり事件]]が発生。SAPが出動。出典とされる『警視庁捜査一課特殊班』著者毛利文彦、角川書店、2002年では、「警備部狙撃手」との記載はりま具体的な所属しては記載されていません。ですからの出典が明らかなるまでコメントアウトした方が良いと思います。-->
; [[1990年]]
==== その他の銃器 ====
: '''8月'''
; [[圧縮空気泡消火システム|高圧放水銃]]
: [[湾岸戦争]]が発生。SAPが邦人救出用の民間航空機に同乗して[[サウジアラビア]]に派遣され、邦人退避警護を行った{{Sfn|伊藤|2004|pp=91-98}}<ref name="SmaSTATION"/>。
: 犯人制圧用の装備であり、主に犯人が可燃性物質([[ガソリン]]など)を所持している際に使用する。SATでは個人携行型の圧縮空気泡消火システム(CAFS)を使用しており、[[機動隊]]や[[特殊事件捜査係|特殊犯捜査係]]が使用している[[インパルス消火システム]]とは異なる(警察庁調達資料および危機管理産業展などで確認)。
; [[1995年]]
: なお、警察では装備の名称を「銃」とすると、[[銃砲刀剣類所持等取締法|銃刀法]]や、けん銃取り扱い規範などの法令が適用され、使用の際に様々な制約を受けるため、「放水銃」という名称は使用しない。
: '''3月22日'''

: [[オウム真理教事件|一連の凶悪事件]]を発生させた[[オウム真理教]]の本部(山梨県[[上九一色村]])への強制捜査にSAPが出動{{Efn2|[[麻生幾]]の著作に以下の記述がある。『[[サティアン]]を取り囲む機動隊員たちは、第一線の部隊に続き、第二線、第三線、第四線の部隊が突入の機会を窺っていたが、その一番後方で身を低くしている五十名ほどの“集団”がいたことはテレビ局も気がつかなかった。』『警視庁が“[[国家機密]]”としている対テロ特殊部隊は、極力目立たぬよう、最後方で待機していた。』<ref>{{Cite book|和書|title=極秘捜査 政府・警察・自衛隊の[対オウム事件ファイル]|author=[[麻生幾]]|year=1997|publisher=文芸春秋|chapter=第五章 Dデー}}</ref>}}<ref name="SmaSTATION"/>。
=== 銃器以外の主要装備 ===
: '''6月21日'''
; [[手榴弾#スタングレネード|特殊閃光弾]]
: 函館空港で[[全日空857便ハイジャック事件|全日空機ハイジャック事件]]が発生。SAPが[[東京国際空港|羽田空港]]から[[航空自衛隊]]の[[C-1 (輸送機)|C-1輸送機]]で緊急派遣され、翌22日に[[北海道警察]]の機動隊員、捜査員らの機内突入と犯人逮捕を支援した。これが、SAPの存在が認められた最初の事件となった。なおSAPが羽田空港で輸送機に機材を搭載し、離陸した様子は、[[TBSテレビ|TBS]]の報道班が収録、放送したVTRによって確認されている。また、この輸送機は航空自衛隊の[[八雲飛行場]]に着陸し、SAPはこの飛行場から函館空港に向かったといわれている。
: 「スタングレネード」または「フラッシュバン」などと呼ばれているもの。閃光と爆音で犯人の視覚や聴覚を一定時間失わせ、無力化する。
: '''9月'''
; [[戦闘用ヘルメット|ヘルメット]]
: オウム事件捜査の教訓により、SAPの経験者7名が[[警視庁警備部|警備部]]から[[刑事部]]捜査第一課[[特殊捜査班|特殊犯捜査係]](SIT)に配属される。この人事異動の目的は、SAPの突入技術をSITに取り入れることであった{{Sfn|毛利|2002|loc=第九章 SITとSAT}}。
: [[ケブラー]]製のヘルメットに[[ポリカーボネート]]製の[[防弾]][[バイザー]]を付けたもの。<!-- “マスメディアでは「レンジャーヘル」と呼称されていた。”新聞名、雑誌名など、具体的な出典が掲載されるまで、コメントアウトした方が良いと思います。 -->また、2007年に公開された訓練において、警視庁SATの[[狙撃]][[班]]がプロテック社製のヘルメットを使用。このヘルメットは[[ABS樹脂]]製で、防弾機能は無い。
; [[1996年]]
: なお、警視庁の特科中隊(SAP)は、[[チタン合金]]製のヘルメットを使用していたとされている{{Sfn|伊藤|2004}}。
: '''4月1日'''
; [[ボディアーマー|防弾ベスト]]
: 警察庁から都道府県警察に通達「特殊部隊の再編強化について」と「[[銃器対策部隊]]の編成について」が出される。
: [[弾丸|銃弾]]から胴体を防護するベスト。下腹部を防護するプレートが付属。2007年以降に行われた公開訓練では、上腕部を防護するプレートが付属している。また、タクティカルベストと一体化したものも装備している。
: '''5月8日'''
; [[タクティカルベスト]]
: 既存の各特殊部隊が公式部隊として強化、再編成され「Special Assault Team」通称SATという部隊名を定め、警察庁において隊旗授与式が行われた。授与式では[[國松孝次]][[警察庁長官]]が各隊の隊長に隊旗を授与した。SATは総員200名体制で警視庁、大阪府警察、北海道警察、[[千葉県警察]]、[[神奈川県警察]]、[[愛知県警察]]、[[福岡県警察]]に編成された。また公式部隊化と再編成に伴い正規の予算計上が可能となったため、装備は最新のものに更新された。
: 予備[[弾倉]]や[[警察無線|無線機]]など、様々な装備品を収納できるベスト。防弾ベストの上から重ね着をして使用する。イーグル社製の「TAC-V1」を使用。
: '''12月17日'''
: 2015年12月に公開された、警視庁SATと神奈川県警察SATの合同訓練では、各種ポーチ類を付けられる[[Pouch Attachment Ladder System|PALS]]を装備したベストを使用。この訓練では、警視庁SATのベストは背面に小文字で「警視庁」と記載されており、神奈川県警察SATのベストは背面に青色の布が付いていた。
: [[在ペルー日本大使公邸占拠事件]]が発生。警視庁SATが原寸大の模擬日本大使館を造り、[[人質救出作戦|人質救出訓練]]を繰り返す。神奈川県警察SATも隊員をドイツに派遣、[[GSG-9]]から訓練を受ける{{Sfn|伊藤|2004|pp=91-98}}。
; アサルトスーツ
; [[2000年]]
: 紺色の突入服。[[機動隊]]が使用している「出動服」とは異なる。また、2002年に警察庁が公開した訓練映像や、2007年の公開訓練において、警視庁SATの隊員はアサルトスーツ右上腕部に部隊のワッペンを装着している。
: '''5月3日'''
: なお、警視庁の特科中隊(SAP)は、[[ハイジャック]]対策訓練の際、灰色の突入服を使用していたとされている{{Sfn|伊藤|2004}}。
: [[西鉄バスジャック事件]]が発生。福岡県警察、大阪府警察のSATが出動。[[広島県警察]]機動隊に指導を行い、突入を支援した。この事件では、初めて[[手榴弾#殺傷を目的としない手榴弾|閃光弾]]を使用することにより犯人を逮捕した。また同年、警視庁SATの所属が第六機動隊から[[警視庁警備部|警備部]]警備第一課に移され、機動隊から独立した組織となった。
; [[ライオットシールド|小型防弾盾]]
; [[2001年]]
: ポリカーボネート製の透明防弾盾。片手で所持して使用する。2002年に警察庁が公開した訓練映像、および2007年の公開訓練では、SAT隊員が左手に小型防弾盾を持ち、右手に[[拳銃|けん銃]]を所持して突入を行っている。
: 大阪府警察SATの所属が第二機動隊から[[警備部]][[警備課]]に移され、機動隊から独立した組織となった。
; [[ライオットシールド|大型防弾盾]]
; [[2002年]]
: ケブラー製の黒色防弾盾。覗き窓にも[[防弾ガラス]]が付けられている。防弾盾には、アルファベットの「J」を逆さにしたような形状の取っ手が設置されている。2007年の公開訓練の際、警視庁SATが使用。また、2013年の公開訓練では、千葉県警察SATが覗き窓を大型化した灰色の防弾盾を使用。<!-- “(余談であるが、38口径(9mm)までの防弾性能を持つ)”警察から公式に性能等が公表されていないため、現段階ではコメントアウトした方が良いと思います。-->
: '''5月10日'''
; [[結束機|結束紐]]
: 警察庁が警視庁SATの訓練映像を公開。
: 商品名「タイラップ」「インシュロック」などと呼ばれているもの。手錠より軽量で、素早く犯人を拘束できる。バンド(紐)の片端にロック用部品が付いており、これに反対側の端を通して結束する。2007年に公開された訓練において、警視庁SATの隊員が装備しているほか、2010年の北陸電力志賀原子力発電所における訓練では、愛知県警察SATの隊員が[[スパイ|工作員]]役を拘束する際に使用した。さらに、2013年の東京電力福島第二原子力発電所での訓練において、千葉県警察SATの隊員が[[テロリズム|テロリスト]]役を拘束する際に使用した。
; [[2003年]]
; [[破城槌|バッティングラム]]
: '''9月16日'''
: 鉄製の大型[[ハンマー]]。ドアを破る際に使用する。2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用。
: [[名古屋立てこもり放火事件]]が発生。現場を支援するため、警察庁は愛知県警察SATに待機命令を出した<ref>[[読売新聞]]2003年9月17日</ref>。
; 各種突入、[[偵察]]用機材
; [[2005年]]
: [[プラスチック爆弾]]、[[暗視装置]]、[[潜水]]用機材など(水中から[[船|船舶]]へ突入する際に使用)。
: '''9月6日'''

: [[沖縄県警察]]にSATが新設され、沖縄県[[警察学校]]において隊旗授与式が行われた。授与式には[[漆間巌]]警察庁長官、沖縄県警察SAT隊長と隊員約20名が参加した。なお隊員は[[目出し帽|マスク(目出し帽)]]で顔を隠し、ヘルメットの防弾[[バイザー]]を下ろした状態であった<ref>沖縄県警察SATの隊旗授与式の様子は『SATマガジン』NO11に掲載された記事「沖縄県警SAT発足」に写真付きで記載。</ref>。また同年、他の部隊も増員しSATは総員250名体制となった。
=== 部隊支援用装備 ===
: '''10月20日'''
; 警備車両
: 北海道において北海道警察と[[陸上自衛隊]]が合同訓練を実施。北海道警察SATと見られる部隊が訓練に参加した。なお北海道警察では、SATが訓練に参加したとの公表はしていない。
: [[特型警備車]]や、[[特型警備車#銃器対策警備車|銃器対策警備車]]などを装備している。これらの車両は[[防弾]]仕様の[[装甲車]]であり、主に突入支援に使用される。また、隊員輸送車(大型バス、ワンボックスカー、4WD車など)や、資器材搬送用のトラック、無線指揮車なども保有している。なお、アメリカの[[SWAT]]では犯罪者に対する威圧効果と犯罪抑止のため、車体に大きく「SWAT」と書かれた専用車両を使用することがある。一方、SATはテロ対処を主要任務としており、現場に展開していること自体を犯人([[テロリズム|テロリスト]])や、報道関係者などから秘匿する必要があるため、部隊名が書かれた車両を使用していない。
; [[ヘリコプター]]
; [[2006年]]
: SATをさらに増員。総員300名体制となった。
: 都道府県警察の[[都道府県警察航空隊|航空隊]]に所属するヘリコプターを使用。また、一部の航空隊にはSATとの連携を想定した[[都道府県警察航空隊#テロ対策機|テロ対策機]]が配備されている。これは、中型ヘリコプター、[[ベル 412#派生型|ベル 412EP]]に夜間飛行用の[[暗視装置|赤外線カメラ]]や、電線切断用のワイヤーカッターなどを装備したもので、機体は抗弾仕様であると言われている。また、災害発生時には災害支援ヘリコプターとして使用される。
; [[2007年]]

: '''4月20日'''
上記以外にも様々な資機材があり、国産品だけでなく、世界各国のメーカーが製造した装備品を採用している。このような傾向は、日本においては[[陸上自衛隊]]の[[特殊作戦群]]や、[[海上自衛隊]]の[[特別警備隊 (海上自衛隊)|特別警備隊]]、[[海上保安庁]]の[[特殊警備隊]]にも見られる。
: [[町田市立てこもり事件 (2007年)|町田市立てこもり事件]]が発生。警視庁SATが出動し、[[特殊捜査班|特殊犯捜査係]](SIT)の突入を支援した。

: '''5月17日'''
なお、2007年に発生した[[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]では、SAT隊員が銃撃を受けて[[ボディアーマー|防弾ベスト]]の隙間から被弾したことにより、死亡した。そのため、当時の[[国家公安委員会委員長]]、[[溝手顕正]]は、同年5月18日の記者会見で「装備の検証が必要」との見方を示し、これを受けて警察庁は装備を再検証する方針であると発表した<ref>{{Cite web|url=http://www.asahi.com/special/070518/TKY200705180228.html |title=装備・安全検証へ SAT隊員死亡で警察庁 |author= |date=2007-05-18 |work= |publisher=朝日新聞 |accessdate=2015-11-28 }}</ref>。
: [[愛知長久手町立てこもり発砲事件]]が発生。愛知県警察SATが出動。犯人の銃撃で重傷を負った警察官を愛知県警察[[特殊捜査班|SIT]]が救出した際、犯人が再び拳銃を発砲。この発砲により、SITの後方支援を担当していたSAT隊員(当時23歳)が被弾し、病院搬送後に死亡した。SAT隊員が出動現場で[[殉職]]したのは、この事件が初めてである。
: '''6月5日'''
: 警察庁は、愛知長久手町立てこもり発砲事件において愛知県警察SATとSITの連携が課題となった事を受け、全国[[警察本部]]の[[本部長]]を集め、東京都内の専用施設において警視庁SATとSITの合同訓練を実施した。また6月に警察庁は、SATの活動を支援する特殊部隊支援班(通称スリーエス)を創設した。特殊部隊支援班は、都道府県警察[[刑事部]]との連携や警察本部長の補佐、警察庁との連絡調整を担当する組織である。
: '''7月5日'''
: [[東京都]]内の訓練施設において、警視庁SATの訓練が報道機関に初めて公開された。
: '''8月16日'''
: 大阪府警察SATとみられる部隊が、同年開催の[[2007年世界陸上競技選手権大会|世界陸上大阪大会]]に向けた総合警備訓練に参加。なお大阪府警察はSATの訓練参加を公表しておらず、参加部隊は[[銃器対策部隊]]と発表した。
: '''12月14日'''
: [[ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件]]が発生。福岡県警察SATが出動。長崎県警察銃器対策部隊と合同で犯人の捜索に当たり、自殺した犯人の遺体を発見した<ref>『[[中国新聞]]』2007年12月16日</ref>。
; [[2010年]]
: ''' 9月6日'''
: [[神奈川県]]横浜市内の県警第一機動隊訓練場において、神奈川県警察SATが同年11月開催の[[2010年日本APEC|APEC首脳会談]]に向けた合同警備訓練に参加した。
: '''11月26日'''
: [[石川県]][[志賀原子力発電所]]において、外国人工作員の襲撃を想定した警備訓練が報道機関に公開され、[[石川県警察]]銃器対策部隊と[[愛知県警察]]SATが参加した<ref>『[https://news.ntv.co.jp/category/society/171288 石川・志賀原発でテロ訓練 警察庁長官視察]』日テレNEWS 2010年11月26日</ref>。
; [[2012年]]
: '''11月22日'''
: 愛知県豊川市の[[豊川信用金庫]]蔵子支店において、人質立てこもり事件が発生。愛知県警察SATがSITと共に出動<ref>『[[朝日新聞デジタル]]』2012年11月22日</ref>。この事件は発生から約13時間後にSITが突入し、サバイバルナイフを持って立てこもっていた犯人を逮捕、人質4名を救出した。
; [[2013年]]
: '''5月11日'''
: 福島県の[[東京電力]][[福島第二原子力発電所]]において、武装工作員の襲撃を想定した訓練が報道機関に公開され、[[福島県警察]]銃器対策部隊と[[千葉県警察]]SAT、[[海上保安庁]][[特殊警備隊]]などが参加した。
; [[2015年]]
: '''3月'''
: 宮城県仙台市で開催された国連世界防災会議の警備にSATが出動<ref>NHKニュース2015年3月13日</ref>。
: '''12月22日'''
: [[警察庁]]は東京都内の訓練施設において、[[警視庁]]SATと[[神奈川県警察]]SATの合同訓練を公開した<ref>[http://www.jiji.com/jc/zc?k=201512/2015122200714 時事ドットコム:2都県SATが合同訓練=サミット前に連携確認]{{リンク切れ|date=2017年10月}}</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=ojDMAHiquAk KYODO NEWS 【共同通信社】 YouTube公式チャンネル:テロ備え、実戦訓練 SAT、合同初公開]</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=jKBD0PQNa9I 時事通信社/JIJIPRESS YouTube公式チャンネル:警視庁、神奈川県警SAT合同訓練=実弾連射、閃光弾投てき、狙撃で犯人制圧]</ref>。訓練は[[2016年]]5月開催の[[第42回先進国首脳会議]]を控え行われたもので、SAT同士の合同訓練の公開は創設以来初である。
; [[2016年]]
: '''3月28日'''
: 東京都江東区において、警視庁SATが突入訓練を報道機関に公開した。
; [[2017年]]
: '''5月16日'''
: 愛知県小牧市の警察施設において、愛知県警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。
: '''11月8日'''
: 福岡県北九州市のマンションにおいて、男が室内犬を猟銃で射殺し立てこもる事件が発生。福岡県警察SATが福岡県警察[[銃器対策部隊]]と福岡県警察SITと共に出動。
; [[2018年]]
: '''2月16日'''
: 東京都江東区の[[首都高速道路]]上において、警視庁SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。訓練施設以外での公開は初となる。
; [[2019年]]
: '''5月9日'''
: 大阪府大東市の警察施設において、大阪府警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。
; [[2021年]]
: '''6月22日'''
: 東京都江東区において、警視庁SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。
; [[2023年]]
: '''5月25日'''
: [[長野県]]で[[中野市4人殺害事件]]が発生。神奈川県警察SATが警視庁SITと共に出動<ref>{{Cite news|url=https://www.sankei.com/article/20230526-B3S3EQ3YCBKNVIRA6WERNJ4U2M/|title=「SIT」「SAT」2つの特殊部隊連携 全国的な応援体制構築 長野立てこもり|newspaper=産経新聞|date=2022-05-26|accessdate=2023-05-26}}</ref>。


== 登場作品 ==
== 登場作品 ==
'''映画・テレビドラマ'''
* 『[[20世紀少年 (映画)|20世紀少年 第1章 終わりの始まり]]』
* 『[[相棒]]』 - シーズン9第1話と第2話では元SATの隊長が、重要な登場人物として登場する。
* 『[[アンフェア the movie]]』
* 『[[踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル]]』
* 『[[踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!]]』
* 『[[踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!]]』
* 『[[ジウ (小説)|ジウ]]』
* 『[[外事警察#テレビドラマ|外事警察]]』
* 『[[寄生獣 (映画)]]』
* 『[[マジすか学園5]]』
'''アニメ・漫画'''
* 『[[S -最後の警官-]]』
* 『[[S -最後の警官-]]』
* 『[[宣戦布告 (小説)]]』
* 『[[亜人 (漫画)|亜人]]』
* 『[[オメガ7]]』
* 『[[怪盗ジョーカー]]』 - 登場人物の一人、交通課巡査の白井モモが元SAT隊員。
* 『[[学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD]]』
* 『[[こちら葛飾区亀有公園前派出所]]』
* 『[[魔法少女特殊戦あすか]]』 - 「[[#警察内での連携|警察内での連携]]」の節で述べた特殊部隊支援班(SAT Support Staff、通称スリーエス)も登場。
* 『[[名探偵コナン]]』
* 『[[闇のイージス]]』 - 主人公は元SAT隊員である。
'''小説・ライトノベル'''
* 『[[Op.ローズダスト]]』
* 『[[Op.ローズダスト]]』
* 『アフリカン・ゲーム・カートリッジズ』 - [[深見真]]の小説。
* 『[[名探偵コナン]]』
*『[[こちら葛飾区亀有公園前派出所]]』
* 『[[海の底]]』
* 『感染捜査』 - [[吉川英梨]]の小説。
* 『官邸襲撃』 - [[高嶋哲夫]]の小説。
* 『[[ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり]]』
* 『[[ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり]]』
* 『ゴルゴタ』 - 深見真の小説。
* 『[[亜人 (漫画)|亜人]]』
* 『外事警察』
* 『[[六機の特殊 〜警視庁特殊部隊〜]]』
* 『[[蒼白の仮面 〜六機の特殊II〜]]』
* 『[[ジウ (小説)|ジウ]]』
* 『[[精鋭 (小説)]]』
* 『[[精鋭 (小説)]]』
* 『ゼロの迎撃』 - [[安生正]]の小説。
* 『[[マジすか学園5]]』
* 『[[宣戦布告 (小説)]]』
* 『[[レインボーシックス シージ]]』 - 攻撃側オペレーターとして「ヒバナ」、防衛側オペレーターとして「エコー」が登場する。{{Efn2|2016年秋配信のDLCで追加。}}
* 『[[日本国召喚]]』
* 『[[バニラ A sweet partner]]』
* 『[[六機の特殊 〜警視庁特殊部隊〜]]』 - [[黒崎視音]]の小説。
** 『[[蒼白の仮面 〜六機の特殊II〜]]』
'''ゲーム'''
* 『[[レインボーシックス シージ]]』 - 愛知県警察SATの隊員が、攻撃側オペレーター「ヒバナ」、防衛側オペレーター「エコー」として2人登場する{{Efn2|2016年秋配信のDLCで追加。}}。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist2}}
=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
=== 注釈 ===
{{notelist2}}
* {{Cite book|和書|last1=柿谷|first1=哲也|last2=菊池|first2=雅之|year=2008|title=最新 日本の対テロ特殊部隊|publisher=三修社|isbn=978-4384042252|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|editor=ストライクアンドタクティカルマガジン|year=2017|month=3|title=日本の特殊部隊|ncid=BB01834038|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|authorlink=伊藤鋼一|last=伊藤|first=鋼一|year=2004|title=警視庁・特殊部隊の真実|publisher=大日本絵画|isbn=978-4499228657|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|last=毛利|first=文彦|year=2002|title=警視庁捜査一課特殊班|publisher=[[角川書店]]|isbn=978-4043762019|ref=harv}}


== 関連項目 ==
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
* [[特殊部隊]]
** [[特殊捜査班|特殊犯捜査係]]
** [[銃器対策部隊]]
** [[特殊警備隊|海上保安庁特殊警備隊(SST)]]
* [[警備部]]
* [[機動隊]]
* [[スカイマーシャル]]


== 参考文献 ==
{{日本の特殊部隊}}
* {{Citation|和書|authorlink=麻生幾|last=麻生|first=幾|year=1999|chapter=三菱銀行「梅川事件」の地獄絵巻|title=戦慄 昭和・平成裏面史の光芒|publisher=[[新潮社]]|isbn=978-4104326013}}
* {{Citation|和書|authorlink=伊藤鋼一|last=伊藤|first=鋼一|year=2004|title=警視庁・特殊部隊の真実|publisher=大日本絵画|isbn=978-4499228657}}
* {{Citation|和書|last=伊藤|first=鋼一|year=2004|month=1|title=日本警察・特殊急襲部隊|journal=SATマガジン|pages=45-48|publisher=アーマーモデリング}}
* {{Citation|和書|last=伊藤 |first=鋼一 |title=警察のすべて |chapter=特殊急襲部隊・機動隊の中から選ばれし精鋭部隊 |date=2015-07-31 |publisher=宝島社 |series=[[別冊宝島]] |ISBN=978-4-8002-4376-8}}
* {{Citation|和書|last=大塚|first=正諭|year=2009|month=1|title=日本警察の拳銃|journal=SATマガジン|pages=50-57|publisher=KAMADO}}
* {{Citation|和書|last=柿谷|first=哲也|last2=菊池|first2=雅之|authorlink2=菊池雅之|year=2008|title=最新 日本の対テロ特殊部隊|publisher=三修社|isbn=978-4384042252}}
* {{Citation|和書|last=菊池|first=雅之|year=2021|month=2|chapter=SAT部隊活動小史|title=特殊部隊SAT|pages=78-81|series=JPOLICE特別編集 警察の力|publisher=イカロス出版|isbn=978-4-8022-0956-4}}
* {{Citation|和書|editor=警察庁|year=2004|title=警備警察50年の歩み|url=https://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten269/sec01/sec01_0302.htm|journal=焦点|issue=269|naid=40006379089}}
* {{Citation|和書|editor=警察庁|year=2007|title=平成19年版警察白書|chapter=第4章 公安の維持と災害対策|url=https://www.npa.go.jp/hakusyo/h19/honbun/pdf/19p04000.pdf|ncid=BN00303788}}
* {{Citation|和書|editor=警察庁|year=2014|title=平成26年版警察白書|chapter=第6章第1節第2項 国際テロ対策|url=https://www.npa.go.jp/hakusyo/h26/honbun/html/q6120000.html|ncid=BN00303788}}
* {{Citation|和書|authorlink=佐々淳行|last=佐々|first=淳行|year=2013|title=日本赤軍とのわが「七年戦争」 ザ・ハイジャック|publisher=文藝春秋|isbn=978-4167560195}}
* {{Citation|和書|editor=ストライクアンドタクティカルマガジン|year=2017|month=3|title=日本の特殊部隊|ncid=BB01834038}}
* {{Citation|和書|editor=SATマガジン出版|year=2017|month=5|title=日本の特殊部隊・番外編|pages=13-23|journal=ストライクアンドタクティカルマガジン|publisher=SATマガジン出版|ncid=BB01834038}}
* {{Cite journal|和書|first=Turk|last=Takano|year=2015|month=9|title=警視庁の特殊拳銃|journal=[[Gun Professionals]]|pages=70-71|publisher=ホビージャパン|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=永峯|first=正義|year=1978|title=この剛直な男たち 警視庁機動隊30年のあゆみ|publisher=立花書房|ncid=BA60111513}}
* {{Citation|和書|last=毛利|first=文彦|year=2002|title=警視庁捜査一課特殊班|publisher=[[角川書店]]|isbn=978-4043762019}}


== 関連項目 ==
{{デフォルトソート:とくしゆきゆうしゆうふたい}}
{{Commonscat|Special Assault Team}}
[[Category:日本の警察系特殊部隊]]
* [[特殊部隊]]
[[Category:ハイジャック]]
** [[特殊事件捜査係|特殊犯捜査係]]
** [[銃器対策部隊]]
** [[特殊警備隊|海上保安庁特殊警備隊(SST)]]
* [[警備部]]
* [[機動隊]]
* [[スカイマーシャル]]
{{日本の特殊部隊}}
{{デフォルトソート:とくしゆきゆうしゆうふたい}}
[[Category:日本の警察系特殊部隊]]
[[Category:ハイジャック]]
[[Category:カウンターテロリズム]]
[[Category:カウンターテロリズム]]
[[Category:軍事組織]]
[[Category:軍事テロ対策組織]]

2024年10月25日 (金) 13:32時点における最新版

特殊部隊
(Special Assault Team)
創設 前身部隊(特科中隊、零中隊)1977年11月1日
再編成 1996年5月8日
所属政体 日本の旗 日本
所属組織 警察
兵種/任務 特殊部隊
人員 11個班
300名[1]
編成地 東京都大阪府北海道千葉県神奈川県愛知県福岡県沖縄県
通称号/略称 SAT、特殊急襲部隊
担当地域 日本全国
特記事項 主な出動事件
三菱銀行人質事件(前身部隊が出動)
全日空857便ハイジャック事件(前身部隊が出動)
西鉄バスジャック事件
町田市立てこもり事件
愛知長久手町立てこもり発砲事件
ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件
テンプレートを表示

特殊急襲部隊(とくしゅきゅうしゅうぶたい、英語: Special Assault Team, SAT)は、日本の警察警備部に編成されている特殊部隊対テロ作戦を担当しており、ハイジャック重要施設占拠等の重大テロ事件組織的な犯行や強力な武器が使用されている事件において、被害者等の安全を確保しつつ事態を鎮圧し、被疑者検挙することをその主たる任務としている[2]。また、刑事部特殊事件捜査係だけでは対処できない凶悪事件にも出動する。

なお、特殊急襲部隊という名称は「Special Assault Team」を日本語に直訳したもので、正式な部隊名ではない。日本警察においてSATの正式な部隊名は特殊部隊であり[3]、さらに所属する都道府県警察名を付けるため、警視庁特殊部隊千葉県警察特殊部隊などと表記されている[4][注 1]

来歴

特殊部隊の誕生

1972年9月5日に西ドイツミュンヘンオリンピック事件が発生し、犯行グループによりイスラエル選手11名が殺害された。翌日の9月6日、警察庁は全国の都道府県警察に対して通達を出し、「銃器等使用の重大突発事案」が発生した際、これを制圧できるよう特殊部隊の編成を行う事とした[6]

これに基づき、全国の機動隊に特殊部隊が設置された。これらの部隊は銃器使用事件をはじめ、ハイジャック事件など高度な逮捕制圧技術を要する事案に備えるため、耐弾・耐爆性能を有する装備資器材を有していた[7]警視庁機動隊では第一〜九機動隊および特科車両隊に特殊部隊を設置していたが、ふだんはレスキュー隊員や一般の警備に出動しているメンバーで、訓練といっても年に数回行なっているにすぎなかった[8]

特科中隊と零中隊

1977年9月に発生したダッカ日航機ハイジャック事件において、日本政府は、一度は機動隊員23名の派遣を検討したものの、バングラデシュ当局に拒絶されて、結局は犯人側の要求を全面的に受け入れるかたちでの決着となった[8]。これに対し、翌月に発生したルフトハンザ航空181便ハイジャック事件では、西ドイツ政府は犯人側の要求を受け容れることなく、ミュンヘンオリンピック事件を教訓に創設した特殊部隊GSG-9の突入作戦によって犯人を制圧、人質を解放した[9]

ダッカ事件の後、警察は従来の「特殊部隊」による、より実戦的な訓練に着手したものの[8]、2つのハイジャック事件が異なる結末を迎えたことを契機として、政府関係者や警察上層部のあいだで、より本格的な対テロ作戦部隊の保有論が強まった[9]。警察庁は警視庁と大阪府警察に対テロ作戦部隊の編成を下命し、警視庁では1977年10月20日より隊員の面接を開始した。そして同年11月1日、警視庁第六機動隊 特科中隊および大阪府警察第二機動隊 零中隊として、対テロ作戦部隊が発足した[10][11]

部隊創設当時、警視庁機動隊の各隊はそれぞれ6個中隊(基幹中隊4個+特別機動隊2個)編成であったことから、この特科中隊は他の機動隊にはない7個目の中隊として、「六機七中」と通称された[12]。また1982年夏頃、警視総監により、警視庁特科中隊の名称がSAPSpecial Armed Police)として認定され、「S」をあしらった紫色の部隊旗が授与された。しかし部隊自体は極秘の扱いであり[11]、第六機動隊の隊員名簿からも名前を消される措置を受けていた[13]

SATへの改編・増強

1995年全日空857便ハイジャック事件での出動に際して、SAPの存在が初めて公表された[11]。翌年の1996年4月1日には警察庁の通達により、従来の警視庁・大阪府警察に加えて北海道警察千葉県警察神奈川県警察愛知県警察福岡県警察にも特殊部隊を設置し、呼称をSATSpecial Assault Team)とすることが決定した[14][15][注 2]。同年5月8日には、特殊部隊の存在が公式に発表されるとともに、警察庁において隊旗授与式が行われ、國松孝次警察庁長官から隊旗が授与された[16]

2000年に警視庁SATは、第六機動隊から警備部警備第一課に所属が移され、2001年に大阪府警察SATは、第二機動隊から警備部警備課に所属が移された。これにより、警視庁と大阪府警察のSATは、組織編成上、機動隊から独立した組織となった[17]。また2005年9月6日には沖縄県警察にもSATが編成され[注 3]、各地の部隊も増員された[11]

編制

所掌

警察庁は特殊部隊(SAT)のほか、銃器対策部隊NBCテロ対応専門部隊等爆発物対応専門部隊等テロ対処部隊と位置付けており[19]、SATの任務として「ハイジャック、重要施設占拠事案等の重大テロ事件、銃器等の武器を使用した事件等に出動し、被害者や関係者の安全を確保しつつ、被疑者を制圧・検挙する」としている[2]

しかし実際には、特にハイジャックの場合、刑事部人質救出作戦も担当する特殊犯捜査係(SIT)などとの境界線が問題になる。政治的な背景をもった事件は警備部(SAT)、そうでない事件は刑事部(SIT)とされたこともあったものの、実際にはその区別がはっきりせず、結局はその都度警察本部長の裁定を受けることになっている[20]。概して、戦技・体力ではSAT、捜査力ではSITが優れていると評される[20]。また武器の使用へのスタンスにも差異があり、SITでは犯人の逮捕を重視して[21]、犯人射殺への抵抗が強いのに対し[22]、SATでは、頭部を照準しての短連射で確実に制圧することを重視している[23]。SATでは、自らを上回る装備を有するテロリストに対しても奇襲性などを活用して重装備を使わせないようにしつつ制圧するといった訓練を行っており[24]、元隊員である伊藤鋼一は、ロケット弾による射撃を回避しつつヘリコプター上から自動小銃制圧射撃を行うといった実戦的な状況を例示している[25]

組織

上記の経緯により、現在では、警視庁大阪府警察北海道警察千葉県警察神奈川県警察愛知県警察福岡県警察沖縄県警察の8個警察本部にSATが設置されている。いずれも警備部に所属しており、基本的には機動隊に設置されているが、警視庁では警備部警備第一課、大阪府警では警備部警備課の附置機関とされており、機動隊から独立している[26]。また運用に関しては警察庁警備局警備運用部警備第三課の指導下にある[27][注 4]

警視庁の特科中隊の創設時の体制は警視1名、警部2名、警部補6名、巡査部長12名、巡査30名の計51名体制であり、大阪府警察の零中隊は約半数の規模であったとされている[10]。特科中隊では、当初は小隊編成であったが、後に専門任務別のチーム制に移行した[13]

SATとして改編された後は、警視庁に3個班、大阪府警察に2個班、他の道県警察に各1個班の合計11個班が編成され、部隊の総員は300名とされている。警視庁では警備第一課長、道府県警察本部では警備課長など警視指揮官として、指揮班、制圧班、狙撃支援班、技術支援班という班編成となっており、各班長は警部・警部補が務めているといわれている。また1個班にはおよそ20名の隊員がいるとされる[26]。2012年に公開された訓練では、警視庁SATにおいて化学防護担当の隊員が確認された。また、警備犬担当の隊員も確認された[29]。 さらに2016年に公開された訓練では、警視庁SATにおいてメディック担当の隊員が確認された[30]

人員

元関係者の証言によれば、警視庁SATは、機動隊の新隊員訓練にあわせて、おおむね6ヶ月ごとに試験入隊者を募り、2~4名程度の新隊員を採用していたとされる[31]。また警視庁の特科中隊が創設された際には、機動隊員の中から、武道や運動能力に秀でた者や射撃選手、銃器対策部隊隊員、爆発物処理隊員、レスキュー隊員、レンジャー隊員に指定されているものを対象として入隊希望者を募っていた[10]。SAT発足当初も、隊員はレンジャー有資格者を中心に選抜されたといわれている[11][注 5]

機密保持は極めて厳しく、警視庁SATの前身であるSAP当時は、警視庁のコンピュータ個人ファイルや第六機動隊の隊員名簿からも名前を消される措置を受けており、人事記録簿には自筆で「第六機動隊特務係」と記載していた[13]。入隊すると隊員は、「部隊で見たり聞いたりしたことを他人に話せば、時には法で罰せられる。家族に対しても同様である」という訓示を受け、機密保持を徹底させられると言われている[33]。また1987年に、後藤田正晴内閣官房長官が警視庁SAPを視察した際に「何が辛いか」と尋ねたところ、当時の寺沢隊長は「覆面部隊なので、父親が何をしているか家族にも言えず、同僚や奥さん同士の交際も避けなければならず、日常が辛い」と述べたといわれている[12]

在隊期間はおおむね5年とされる。ただし昇任して警察署などに転勤したのち、幹部の欠員補充のため、再びSATに戻る例もある。転勤先としては、警護課・警衛課など警備部内のことが多いが、上記の刑事部のSITに配属される場合もある。これは、刑事部が、SAT隊員の射撃技術などを即戦力として期待した結果としてはじまった措置であった[31]。例として1995年9月には、オウム事件の捜査を教訓として、警視庁SAPの経験者7名が警備部からSITに配属された。階級別内訳は警部補1名、巡査部長2名、巡査4名であった[20]

なお過去には隊員に関する不祥事案が1件発生している。2010年1月に28歳の警視庁SAT隊員が、東京都国立市内のコンビエンスストアで万引きをしたことにより、現行犯逮捕された。後にこの隊員は警視庁を依願退職した[34]

装備

MP5を構える隊員。シュアファイアM628ウェポンライトを装着している[16]
銃器対策警備車から降車展開する隊員
警視庁航空隊ベル 412EPからのラペリングを準備する隊員[16]

けん銃

警視庁SAPでは、S&W M36およびH&K P9Sを使用していたといわれている[35]。また、1979年に発生した三菱銀行人質事件において零中隊が使用したけん銃は、S&W社製の.45口径けん銃だったとされている[36]

SAT発足後の公開訓練において、下記のけん銃の使用が確認されている。これらの自動拳銃は、回転式拳銃や小口径の自動拳銃とは区別され、部内では特殊けん銃と通称されているといわれている[37]

特殊銃

警察官等特殊銃使用及び取扱い規範では、警察官が所持する銃のうち、警察法第六十八条の規定により貸与されるもの(けん銃)以外のものを「特殊銃」と規定している[39]

機関けん銃(短機関銃)については、SATの前身である警視庁SAPでは、創設の際に西ドイツGSG-9から装備、訓練、ノウハウなどの全面協力を受けたことから[12]1980年代初頭の時点でMP5A5MP5KおよびMP5SD6が配備されていたとされる[13]

1996年にSATが発足して以降、2007年からSATの訓練が報道機関に公開されるようになり、SAT隊員が使用するMP5についても、仕様や付属品が判明した。例として、2015年に警視庁と神奈川県警のSATが合同訓練を公開した際、SAT隊員はMP5Fを使用し、付属品としてEO-Tech社製のXPSホロサイト、フォアグリップ、シュアファイヤ社製の628LMフラッシュライト等を装着していた[40]

狙撃銃については、警視庁SAP当時、豊和ゴールデンベア64式7.62mm小銃に照準器を取り付け、狙撃用仕様にしたものを使用していたとされる[41]。 SAT発足後に公開された訓練では、豊和M1500を使用している。 その他の狙撃銃としては、SAT専用に改修されたH&K PSG1や、アキュラシー・インターナショナル社製L96A1を配備しているといわれている[37]

自動小銃については、2004年に政府が有識者を集めて開催した「安全保障と防衛力に関する懇談会」の第9回懇談会において、警察庁が作成・配布した資料に[42]、SATの装備品として89式5.56mm小銃が掲載された[37]。その他の自動小銃としては、H&K HK53を配備しているといわれている[43]

その他の個人装備品

警視庁SATの前身であるSAPでは特殊閃光弾が導入されており[12]、特殊閃光弾はDRCと呼称されていた[35]

また先述のように警視庁SAPは創設当時、多くの装備をGSG-9に準拠したとされている。例として、1987年に後藤田正晴内閣官房長官が警視庁SAPの訓練を視察した際、SAPの隊員は耳の部分に余裕を持たせた形状のヘルメットに、強化プラスチック製の防弾バイザーを装着していたが、同バイザーは、厚さにもかかわらず視野の歪みがない、西ドイツの特許製品であった[12]

1980年代当時の装備として、SAPの隊員は防弾シールドが付き、無反射塗装がされたチタン製ヘルメットを使用し、被服については灰色の特殊部隊用活動服(アサルトスーツ)が貸与され[44]、同スーツの下にはチタン合金とケプラー繊維製の防弾ベストを着込んでいたとされている[45]

2007年にオーストラリアのクイーンズランド州において訓練を実施した際には、SAT隊員が迷彩服を使用していた[46]。またSATは積雪吹雪といった環境下での活動も想定していることから、これまでに公開されていないが、冬季迷彩服なども装備しているとされている[47]

2007年に発生した愛知長久手町立てこもり発砲事件では、SAT隊員が銃撃を受けて防弾ベストの隙間から被弾したことにより、死亡した。そのため、当時の国家公安委員会委員長溝手顕正は、同年5月18日の記者会見で「装備の検証が必要」との見方を示し、これを受けて警察庁は装備を再検証する方針であると発表した[48]。国家公安委員会委員長の記者会見後に公開された訓練[注 9]では、SAT隊員の上腕部に防弾装備が追加されており、防護範囲は拡大した。

2012年に東京都新宿区において訓練を実施した際には、SAT隊員が化学防護服除染用機材を使用していた[29]

部隊活動用装備

部隊活動時の偵察用機材として、暗視装置ジャイロ機構双眼鏡集音器コンクリートマイク電磁波人命探査装置レーザー距離測定器なども用いられる[49]

また部隊活動時の突入用機材として、バッティングラムプラスチック爆弾なども用いられる[注 10]

装甲車としては、標準的な特型警備車のほかに、SAT専用の銃器対策警備車も配備されているほか、車列警護用として銃眼を備えたワゴン車もある[11]。元隊員である伊藤鋼一は、要人が移動する際の車列の前後に警護のSAT隊員が乗車した車両が配置される状況を例示している[25]。またこの他の車輌として、人員輸送車やトラックのほか、警視庁SAPでは、マイクロバスを改造した専用の指揮車両を保有していたといわれている[52]

またSATの保有機材ではないが、テロ対策機を中心として、警察航空隊ヘリコプターによる展開も行われる[11]

なおシージャック対策訓練では、スクーバ器材を着用した状態で、MP5A5やけん銃を携行し、水中からの犯人へ接近する映像が公開された[16]

他組織との連携

警察内での連携

2000年代後半からSATは、銃器使用の立てこもり事件において特殊犯捜査係(SIT)の支援を行っており、2007年4月には町田市立てこもり事件に警視庁SATが出動した[11]

さらに同年5月に発生した愛知長久手町立てこもり発砲事件では、愛知県警察のSITとともにSATが出動したが、事件を統括指揮していた刑事部捜査第一課との連携や情報共有の不足から、隊員1名が犯人の放った銃弾により死亡した。警察庁は、この事件を教訓としてSATを支援する特殊部隊支援班[53](SAT Support Staff、通称スリーエス)を創設した。これは、都道府県警察刑事部との連携や警察本部長の補佐、警察庁警備局との連絡調整を担当するとされる[26]

自衛隊との連携

1996年江陵浸透事件1999年能登半島沖不審船事件などの北朝鮮工作員関連事案を通じて、武装工作員事案の脅威が認識されるようになったことを受けて、SATでは武装工作員事案への対処を想定した訓練も実施している[54]。元関係者の証言によれば、警視庁SATの前身であるSAP当時から、東京都内の山中でゲリラ掃討訓練を実施していたとされる[55]。2000年2月に国家公安委員会防衛庁(当時)とで「治安出動の際における治安の維持に関する協定」が締結されたのに続いて、2001年2月には警察庁および防衛庁とで細部協定が締結され、2002年4月までに、各都道府県警察と陸上自衛隊の各師旅団とで現地協定が締結された[56]

そして共同図上訓練を経て、2004年9月に警察庁と防衛庁とで「治安出動の際における武装工作員等共同対処指針」が策定されたのを受けて、2005年3月には各都道府県警察と陸上自衛隊の各師旅団とで「治安出動の際における武装工作員等事案への共同対処マニュアル」が作成された。これに基づく共同訓練の第一弾として、同年10月に北海道警察と陸上自衛隊北部方面隊とが行った共同実動訓練では[56]、道警のSATも出動し、陸上自衛隊のレンジャー隊員とSAT隊員がスタック体制を組む姿も公開された[57]

他国との交流

特科中隊・零中隊の発足の際には、装備・訓練・ノウハウなど、西ドイツ国境警備隊GSG-9の全面協力を受けており[12]、8名の警察官が派独された[10]。またイギリス陸軍SASへの派遣も行われたほか[36][注 11]、1980年代から90年代にはフランスGIGNにも研修に行っていたことが判明しており、GIGN本部庁舎内にはSATと交換した盾が飾られている[58]

オーストラリアパースに所在する大規模な市街戦・屋内戦用の訓練施設(通称キリングヴィレッジ)で訓練を行ったと言われており[59]、2000年代初頭からはオーストラリアのクイーンズランド州において訓練を実施している[46]。またオーストリアコブラ、イタリアのNOCSとも交流があり、合同訓練を実施している[60][61][62]

これらの交流の結果、日本国外の治安機関の特殊部隊と比較しても劣らない能力を獲得しているとして、2001年の第153回国会の衆議院内閣委員会では「国外での競技会で一位をとるほどの実力」との答弁がなされている[63]

訓練

ヘリコプターからビルの屋上に降りようとする隊員[16]
ハイジャック訓練
建物への突入訓練

日本における訓練

日本国内には、下記のようにSATの訓練施設が設置されており、訓練が行われている。訓練は危険を伴い、過去においては隊員が重傷を負う事故も発生している。2006年には大阪府警察SATの隊員が射撃訓練中、首からさげた自動小銃を構える際に引き金に指がかかり、実弾1発を暴発させ、自身の左足ふくらはぎを貫通し、全治約1カ月の重傷を負った[64]

部隊の具体的な訓練内容については、創設以来、非公開とされていたが、2002年サッカーワールドカップ開催を前にして、警察庁は同年5月10日に警視庁SATの訓練映像を公開した。映像ではヘリコプターからの降下訓練や、航空機、バスへの突入訓練、狙撃や潜水器具を使用したプールでの訓練などが公開された。

2007年6月5日に警察庁は、東京都内の警視庁の専用施設に全国警察本部本部長を集め、警視庁SATとSITの合同訓練を実施した。この合同訓練は、愛知長久手町立てこもり発砲事件において愛知県警察SATとSITの連携が課題となった事を受けて行われたもので、全国の警察本部長にSATとSITの技能や効果的な運用方法に関する理解を深めさせ、実践的な訓練や事件対応に生かすことが目的であった。訓練内容は人質立てこもり事件において犯人が警察官に向かって銃撃し、建物から出て来るとの想定に基づき、SATとSITは閃光弾やけん銃を使った突入や狙撃銃での狙撃など、役割を分担して訓練を実施した[65]

訓練施設

SATの訓練施設には室内射撃場登はん訓練施設、屋内スキューバ・ダイビング施設、ヘリコプター施設が設置されているとされる[46]。SATの所在する都道府県で射撃場を有する機動隊の訓練施設は以下のとおりである。SATの装備品や訓練施設は都道府県警察予算ではなく、国家予算で整備されている[66]。そのため、通常の機動隊に比べて装備や訓練施設は充実している。

警視庁術科センター
東京都江東区に所在。術科(射撃柔道剣道逮捕術)の総合訓練施設。総延べ面積は約2万3700平方メートルであり、2010年から全面的な改修工事が行われている。この改修には10年間を要し、改修費用は50億3000万円である[67]
元SAP隊員である伊藤鋼一の著書によれば、1980年代当時、同センターの奥には、厳重な管理体制で護られたSAP専用の射撃訓練場が設置されていた[68]
2007年には警視庁術科センターと「夢の島総合警備訓練場」において、警視庁SATの訓練が報道機関に公開されている[69]
警視庁機動隊総合訓練所
東京都立川市に所在。射撃場を有しており、2010年に射撃場の改修に関する工事が行われている[70]
大阪府警察総合訓練センター
大阪府大東市に所在。射撃場、陸上競技場、車両訓練コース等を有する大阪府警察の総合訓練施設。1997年に完成。
同センターでは、2008年に大阪府警察のSAT隊員が射撃訓練中の事故で負傷している[71]
北海道警察総合訓練場
北海道千歳市に所在。主に機動隊が使用する訓練施設。
2006年に完成。鉄筋コンクリート構造4階建て、延べ面積は2849平方メートルである[72]。また、2010年には訓練場敷地内で新棟の建設工事が行われた。この新棟は床面積約6000平方メートルで、射程の長いライフル射撃に対応可能な射撃場を有しており、既存棟とともに、重大テロや人質立てこもりなど各種災害警備、救出救助事件の訓練を行う施設である[73]
千葉県警察機動隊総合訓練施設(多古訓練場)
千葉県香取郡多古町に所在。
同訓練施設については、成田空港問題を扱うサイトに「300mの長さを持つライフルの射的訓練場を含む、ハイジャック対策訓練場」と記載されている[74]。2019年には射撃標的装置の点検業務に関する入札が公示されている[75]
神奈川県警察機動隊総合訓練施設
神奈川県横浜市に所在。2018年に完成。鉄筋コンクリート構造(一部鉄骨構造)4階建て、延床面積は1848.72平方メートルである[76]
愛知県警察機動隊総合訓練場
愛知県小牧市に所在。2006年に完成。鉄筋コンクリート構造2階建て、延べ面積は2412平方メートルである[72]。射撃場を有しており、2011年には射撃標的装置の点検業務に関する随意契約が行われている[77]
福岡県警察機動隊総合訓練場
福岡県福岡市に所在。2005年に完成。鉄筋コンクリート構造4階建て、延べ面積は3291平方メートルである[72]。射撃場を有しており、2009年には射撃場の改修工事に関する競争入札が行われている[78]

専用の訓練施設以外では、陸上自衛隊駐屯地小銃を使用した狙撃訓練や、ヘリコプター降下の訓練を実施したとされている[55]。また積雪吹雪といった環境下での活動を想定して、雪山でのテロに対処するための訓練も実施されている[47]

報道機関に公開された訓練

愛知立てこもり事件の発生以来、SATは報道機関に訓練を公開するようになり、2007年には警視庁SATが初めて訓練を公開し、2010年には神奈川県警察SATと愛知県警察SATが訓練を公開した。さらに2013年には千葉県警察SATが訓練を公開した。なお、2007年以降の公開訓練でSAT隊員が着用した防弾ベストは、上腕部を保護するプレートが追加されており、防護範囲が拡大されている。

2007年7月5日には東京都内の訓練施設において、警視庁SATの訓練が初めて報道陣に公開された。この訓練は同年7月に北海道洞爺湖町で開催された第34回主要国首脳会議に備えたもので、屋内突入による犯人制圧と人質救出訓練や、ヘリコプターからの降下、狙撃訓練などが行われた。

2010年9月6日に神奈川県横浜市内の県警第一機動隊訓練場において神奈川県警察、警視庁、関東管区警察局の合同警備訓練が行われた。この訓練は同年11月に神奈川県横浜市で開催されたAPEC首脳会議に備えたもので、関係者が乗ったバスがハイジャックされたとの想定に基づき、神奈川県警察SATの狙撃班がヘリコプターからビル屋上に降下して狙撃配置に付き、突入班が閃光弾を使用してバスに突入し犯人を制圧、人質を救出した。

また、2010年11月26日には石川県志賀原子力発電所において、外国人工作員の襲撃を想定した警備訓練が報道機関に公開され、石川県警察銃器対策部隊愛知県警察SATが参加した。この訓練を視察した安藤隆春警察庁長官は「朝鮮半島の緊張が高まる中、警察としては、全国の重要施設の警備に張り詰めた意識を持って当たりたい」と発言した[79]

2013年5月11日に東京電力福島第二原子力発電所において、警察と海上保安庁の合同テロ対策訓練が行われた。この訓練はテロリストが復旧作業中の福島第一原子力発電所を襲撃したとの想定で行われ、千葉県警察SATと福島県警察銃器対策部隊、海上保安庁特殊警備隊(SST)などが参加した。この訓練では千葉県警察のSATが初めて報道機関に公開されており、訓練に参加した隊員は放射線による汚染環境下を想定し、放射線防護服を着用してテロリストの制圧を行った。

2015年12月22日に警察庁は東京都内の訓練施設において、警視庁SATと神奈川県警察SATの合同訓練を報道機関に公開し、河野太郎国家公安委員長が視察した。この訓練は2016年5月に開催される第42回先進国首脳会議を控え行われたもので、実弾を使用した射撃訓練や突入制圧訓練、人質救出を想定した狙撃訓練などが行われた。SAT同士の合同訓練の公開は創設以来初となる。

2016年3月28日に東京都江東区において、警視庁SATが突入訓練を報道機関に公開した。この訓練は東京駅構内で自爆テロが起きた後、逃走したテロリストが倉庫内に立てこもったとの想定で行われたもので、JR東日本など関連企業を含め、約360名が参加した。

2017年5月16日に愛知県小牧市の警察施設において、愛知県警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。この訓練は、テロリストが市街地で歩行者の列に車で突っ込み、銃を乱射したとの想定で行われ、愛知県警察SATの隊員らが車で逃走するテロリストを追い詰め、閃光弾などを用いて制圧した。訓練を視察した坂口正芳警察庁長官は「あらゆる事態に適切に対応できるよう常に新しい手法を開発し、訓練により練度を高めるなど、テロ対策に万全を期して参りたい」と発言した。

2018年2月16日に東京都内の高速道路上において、警視庁SATがテロ対処訓練を報道機関に公開した。この訓練は、2020年に開催される東京オリンピックパラリンピックの中止を企てるテロリストがタクシーを乗っ取り、競技会場に向かう選手団や各国の要人を乗せたバスを襲撃して、人質を取ったとの想定で行われた。警視庁SATはバスに突入し、テロリスト役を制圧、人質役を救出した。

2019年5月9日に大阪府大東市の警察施設において、大阪府警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。この訓練は、6月28日に開催される第14回20か国・地域首脳会合の中止を企てるテロリストが銃を乱射して、市街地のビルに立て籠もったとの想定で行われた。大阪府警察SATの隊員らがビルの屋上からローブで降下し、閃光弾などを用いて制圧した。

2021年6月22日に東京都江東区において、警視庁SATがテロ対処訓練を報道機関に公開した。この訓練は、7月に開催される東京オリンピックパラリンピックの中止を企てるテロリストがバスを乗っ取り、人質を取ったとの想定で行われた。警視庁SATはバスに突入し、テロリスト役を制圧、人質役を救出した。

活動史

1979年
1月26日
三菱銀行人質事件が発生。零中隊が出動。銀行内に突入し、近距離からけん銃で犯人を射撃することより、人質を救出した。犯人は病院に搬送後、死亡が確認された。突入の際、零中隊の隊員は部隊の存在を秘匿するため、アサルトスーツ(突入服)の代わりにトレーニングウェアを着用しており、犯人への射撃には、S&W社製45口径けん銃を使用した[36]。事件後の記者会見では、零中隊指揮官であった警部も、「第二機動隊ハイジャック対策部隊」の肩書で同席していた[11]
1987年
後藤田正晴内閣官房長官佐々淳行内閣安全保障室長が、陸上自衛隊習志野演習場においてSAPの訓練を視察。この視察は報道関係者を一切伴わず、非公式に行われた[12]
1990年
8月
湾岸戦争が発生。SAPが邦人救出用の民間航空機に同乗してサウジアラビアに派遣され、邦人退避警護を行った[35][49]
1995年
3月22日
一連の凶悪事件を発生させたオウム真理教の本部(山梨県上九一色村)への強制捜査にSAPが出動[注 12][49]
6月21日
函館空港で全日空機ハイジャック事件が発生。SAPが羽田空港から航空自衛隊C-1輸送機で緊急派遣され、翌22日に北海道警察の機動隊員、捜査員らの機内突入と犯人逮捕を支援した。これが、SAPの存在が認められた最初の事件となった。なおSAPが羽田空港で輸送機に機材を搭載し、離陸した様子は、TBSの報道班が収録、放送したVTRによって確認されている。また、この輸送機は航空自衛隊の八雲飛行場に着陸し、SAPはこの飛行場から函館空港に向かったといわれている。
9月
オウム事件捜査の教訓により、SAPの経験者7名が警備部から刑事部捜査第一課特殊犯捜査係(SIT)に配属される。この人事異動の目的は、SAPの突入技術をSITに取り入れることであった[20]
1996年
4月1日
警察庁から都道府県警察に通達「特殊部隊の再編強化について」と「銃器対策部隊の編成について」が出される。
5月8日
既存の各特殊部隊が公式部隊として強化、再編成され「Special Assault Team」通称SATという部隊名を定め、警察庁において隊旗授与式が行われた。授与式では國松孝次警察庁長官が各隊の隊長に隊旗を授与した。SATは総員200名体制で警視庁、大阪府警察、北海道警察、千葉県警察神奈川県警察愛知県警察福岡県警察に編成された。また公式部隊化と再編成に伴い正規の予算計上が可能となったため、装備は最新のものに更新された。
12月17日
在ペルー日本大使公邸占拠事件が発生。警視庁SATが原寸大の模擬日本大使館を造り、人質救出訓練を繰り返す。神奈川県警察SATも隊員をドイツに派遣、GSG-9から訓練を受ける[35]
2000年
5月3日
西鉄バスジャック事件が発生。福岡県警察、大阪府警察のSATが出動。広島県警察機動隊に指導を行い、突入を支援した。この事件では、初めて閃光弾を使用することにより犯人を逮捕した。また同年、警視庁SATの所属が第六機動隊から警備部警備第一課に移され、機動隊から独立した組織となった。
2001年
大阪府警察SATの所属が第二機動隊から警備部警備課に移され、機動隊から独立した組織となった。
2002年
5月10日
警察庁が警視庁SATの訓練映像を公開。
2003年
9月16日
名古屋立てこもり放火事件が発生。現場を支援するため、警察庁は愛知県警察SATに待機命令を出した[81]
2005年
9月6日
沖縄県警察にSATが新設され、沖縄県警察学校において隊旗授与式が行われた。授与式には漆間巌警察庁長官、沖縄県警察SAT隊長と隊員約20名が参加した。なお隊員はマスク(目出し帽)で顔を隠し、ヘルメットの防弾バイザーを下ろした状態であった[82]。また同年、他の部隊も増員しSATは総員250名体制となった。
10月20日
北海道において北海道警察と陸上自衛隊が合同訓練を実施。北海道警察SATと見られる部隊が訓練に参加した。なお北海道警察では、SATが訓練に参加したとの公表はしていない。
2006年
SATをさらに増員。総員300名体制となった。
2007年
4月20日
町田市立てこもり事件が発生。警視庁SATが出動し、特殊犯捜査係(SIT)の突入を支援した。
5月17日
愛知長久手町立てこもり発砲事件が発生。愛知県警察SATが出動。犯人の銃撃で重傷を負った警察官を愛知県警察SITが救出した際、犯人が再び拳銃を発砲。この発砲により、SITの後方支援を担当していたSAT隊員(当時23歳)が被弾し、病院搬送後に死亡した。SAT隊員が出動現場で殉職したのは、この事件が初めてである。
6月5日
警察庁は、愛知長久手町立てこもり発砲事件において愛知県警察SATとSITの連携が課題となった事を受け、全国警察本部本部長を集め、東京都内の専用施設において警視庁SATとSITの合同訓練を実施した。また6月に警察庁は、SATの活動を支援する特殊部隊支援班(通称スリーエス)を創設した。特殊部隊支援班は、都道府県警察刑事部との連携や警察本部長の補佐、警察庁との連絡調整を担当する組織である。
7月5日
東京都内の訓練施設において、警視庁SATの訓練が報道機関に初めて公開された。
8月16日
大阪府警察SATとみられる部隊が、同年開催の世界陸上大阪大会に向けた総合警備訓練に参加。なお大阪府警察はSATの訓練参加を公表しておらず、参加部隊は銃器対策部隊と発表した。
12月14日
ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件が発生。福岡県警察SATが出動。長崎県警察銃器対策部隊と合同で犯人の捜索に当たり、自殺した犯人の遺体を発見した[83]
2010年
9月6日
神奈川県横浜市内の県警第一機動隊訓練場において、神奈川県警察SATが同年11月開催のAPEC首脳会談に向けた合同警備訓練に参加した。
11月26日
石川県志賀原子力発電所において、外国人工作員の襲撃を想定した警備訓練が報道機関に公開され、石川県警察銃器対策部隊と愛知県警察SATが参加した[84]
2012年
11月22日
愛知県豊川市の豊川信用金庫蔵子支店において、人質立てこもり事件が発生。愛知県警察SATがSITと共に出動[85]。この事件は発生から約13時間後にSITが突入し、サバイバルナイフを持って立てこもっていた犯人を逮捕、人質4名を救出した。
2013年
5月11日
福島県の東京電力福島第二原子力発電所において、武装工作員の襲撃を想定した訓練が報道機関に公開され、福島県警察銃器対策部隊と千葉県警察SAT、海上保安庁特殊警備隊などが参加した。
2015年
3月
宮城県仙台市で開催された国連世界防災会議の警備にSATが出動[86]
12月22日
警察庁は東京都内の訓練施設において、警視庁SATと神奈川県警察SATの合同訓練を公開した[87][88][89]。訓練は2016年5月開催の第42回先進国首脳会議を控え行われたもので、SAT同士の合同訓練の公開は創設以来初である。
2016年
3月28日
東京都江東区において、警視庁SATが突入訓練を報道機関に公開した。
2017年
5月16日
愛知県小牧市の警察施設において、愛知県警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。
11月8日
福岡県北九州市のマンションにおいて、男が室内犬を猟銃で射殺し立てこもる事件が発生。福岡県警察SATが福岡県警察銃器対策部隊と福岡県警察SITと共に出動。
2018年
2月16日
東京都江東区の首都高速道路上において、警視庁SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。訓練施設以外での公開は初となる。
2019年
5月9日
大阪府大東市の警察施設において、大阪府警察SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。
2021年
6月22日
東京都江東区において、警視庁SATがテロリストの制圧訓練を報道機関に公開した。
2023年
5月25日
長野県中野市4人殺害事件が発生。神奈川県警察SATが警視庁SITと共に出動[90]

登場作品

映画・テレビドラマ

アニメ・漫画

小説・ライトノベル

ゲーム

脚注

注釈

  1. ^ 千葉県警察ホームページ内の資料に「千葉県警察特殊部隊指揮支援班運用要綱の制定について 平成19年8月23日例規(備)第63号」という例規通達があり、SATの名称を「千葉県警察特殊部隊」と表記している[5]
  2. ^ なお警察庁は同日に「銃器対策部隊の編成について」平成8年4月1日丙備発第50号という通達も出している。
  3. ^ 各報道機関は沖縄県警察にSATが新設された理由について「米軍基地へのテロ対策である」と報道した。一方、沖縄県警察は報道機関の取材に対して「島嶼県で事件発生時に、本土からの部隊派遣に時間がかかることが新設理由。米軍基地の集中をめぐる『対テロ重点配置』ではない」と述べている[18]
  4. ^ 麻生幾 2020では警備第二課としている[28]
  5. ^ 入隊資格を「25歳以下の独身の男性警察官」とする説もあったが[20]、警視庁SAPのOBは「隊員選考の絶対的条件のなかには「25歳以下」「未婚者」「次男以下の者」というのはない」としてこれを否定している[32]。報道によれば、2006年に訓練で負傷した大阪府警察SATの隊員は、事故当時28歳であった。また2007年に愛知長久手町立てこもり発砲事件で死亡した愛知県警察SATの隊員には妻子がいたことが明らかとなっている。
  6. ^ 2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用(専用のフラッシュライト(ITI社製、M2)を装着したもの)。また2010年9月に公開された合同警備訓練において、神奈川県警察SATが、同年11月に公開された警備訓練において、愛知県警察SATが使用。
  7. ^ 2015年12月に公開された合同訓練において、警視庁SATと神奈川県警察SATが使用。一体型のグリップとフラッシュライト(シュアファイア社製、X300 ULUTRA)を装着したもの。
  8. ^ 2002年に警察庁が公開したSAT訓練映像で使用が確認されたもの。
  9. ^ 2010年に神奈川県警SATが公開した訓練以降。「活動史」の項目を参照。
  10. ^ バッティングラムとは、鉄製の大型ハンマーで、ドアを破壊する際に使用する。2007年に公開された訓練において、警視庁SATが使用[50]。 プラスチック爆弾は、ドアや壁を破壊する際に使用する[51]
  11. ^ その際、隊員の1人がロンドンでスリに遭い、猛突進して逮捕した[36]
  12. ^ 麻生幾の著作に以下の記述がある。『サティアンを取り囲む機動隊員たちは、第一線の部隊に続き、第二線、第三線、第四線の部隊が突入の機会を窺っていたが、その一番後方で身を低くしている五十名ほどの“集団”がいたことはテレビ局も気がつかなかった。』『警視庁が“国家機密”としている対テロ特殊部隊は、極力目立たぬよう、最後方で待機していた。』[80]
  13. ^ 2016年秋配信のDLCで追加。

出典

  1. ^ 警察庁警察の集団警備力「平成22年の警備情勢を顧みて」『焦点』第279号、2011年3月http://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten279/p18.html 
  2. ^ a b 警察庁 2014.
  3. ^ 警察庁 (1996年4月1日). “警察庁通達 特殊部隊の再編強化について 平成8年4月1日乙備発第6号”. 2009年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月26日閲覧。
  4. ^ 警視庁組織規則
  5. ^ 千葉県警察 (2007年8月23日). “千葉県警察特殊部隊指揮支援班運用要綱の制定について 平成19年8月23日例規(備)第63号”. 2009年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月26日閲覧。
  6. ^ 警察庁次長発各都道府県警察の長宛通達「特殊部隊の編成について」昭和47年9月6日乙備発第11号
  7. ^ 警察庁 編「第8章 公安の維持」『昭和49年 警察白書』大蔵省印刷局。 NCID AN10025504https://www.npa.go.jp/hakusyo/s49/s490800.html 
  8. ^ a b c 永峯 1978, pp. 202–204.
  9. ^ a b 伊藤 2004, pp. 35–45.
  10. ^ a b c d 伊藤 2004, pp. 46–51.
  11. ^ a b c d e f g h i ストライクアンドタクティカルマガジン 2017, pp. 37–45.
  12. ^ a b c d e f g 佐々 2013, 第二章 『よど号』模倣犯ハイジャック.
  13. ^ a b c d 伊藤 2004, pp. 111–115.
  14. ^ 警察庁 2004.
  15. ^ 警察庁通達「特殊部隊の再編強化について」平成8年4月1日乙備発第6号
  16. ^ a b c d e 伊藤 2004, pp. 1–16.
  17. ^ 警視庁組織規則、大阪府警察組織規則に記載
  18. ^ 朝日新聞』沖縄版、2005年9月7日
  19. ^ 警察庁 令和元年版警察白書 - 第1部第2節第2項 警察におけるテロ対策
  20. ^ a b c d e 毛利 2002, 第九章 SITとSAT.
  21. ^ “【日本の議論】「イスラム国事件」急派、警察の情報特殊部隊「TRT-2」の実像 「SAT」「SIT」と何が違うか”. 産経ニュース. (2015年2月9日). https://web.archive.org/web/20150211233049/http://www.sankei.com/premium/news/150209/prm1502090004-n5.html 
  22. ^ 毛利 2002, 第六章 なぜ、人質は射殺されたのか.
  23. ^ 伊藤 2004, pp. 159–167.
  24. ^ 衆議院予算委員会」『第140回国会』議事録、18巻、1997年2月25日(日本語)。「海外への派遣というお話を前提にいたしますと話は若干複雑でございますので、一般論として申し上げます。」
  25. ^ a b 伊藤 2004, pp. 184–192.
  26. ^ a b c 柿谷 & 菊池 2008, pp. 6–17.
  27. ^ 総合職技術系行政職 2024” (PDF). 警察庁. p. 20. 2024年7月1日閲覧。 “災害対応、特殊部隊の運用、原子力警戒施設の警戒警備、緊急事態対処、警察用航空機の運用等を所掌する警備第三課に所属”
  28. ^ 麻生幾 2020, pp. 5, 213–214.
  29. ^ a b "SATマガジン 第28回 警視庁・特殊部隊SATが新宿に現れた!"
  30. ^ SATマガジン出版 2017.
  31. ^ a b 伊藤 2004, pp. 194–198.
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  34. ^ “警視庁SAT隊員、窃盗容疑で書類送検”. TBS NEWS. (2010年1月16日). http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4332392.html 
  35. ^ a b c d 伊藤 2004, pp. 91–98.
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  60. ^ 軍事専門誌『Jグランド』第9号に掲載された記事「フランス特殊部隊GIGN&RAID」には、「現在でもGIGNとSATの教官クラスは交換留学トレーニングを行っている。」と記載されている。
  61. ^ 双葉社『実録 世界の特殊部隊』133ページ、「オーストリア特殊任務部隊Cobra」の記事において、Cobraを「日本のSATと交流が深い」と記載。
  62. ^ イタリア国家警察 (2014年4月8日). “Nocs - Japan Sat, insieme per migliorarsi”. 2019年10月18日閲覧。
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  65. ^ 時事ドットコム』2007年6月5日
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  67. ^ 『建通新聞電子版』に記載[1]
  68. ^ 伊藤 2004.
  69. ^ 公開訓練の場所に関しては「SATマガジン」2007年9月号に掲載された記事「警視庁SAT公開訓練」に記載。
  70. ^ 『警視庁国費案件平成21年度年間工事発注予定表』に記載[2]
  71. ^ 産経新聞』(2006年8月23日、大阪版朝刊)に記載。
  72. ^ a b c 訓練場の設計を担当した『株式会社大建設計』のホームページに掲載[3]
  73. ^ 苫小牧民報社』2010年2月12日の記事「道警の総合訓練場を拡張へ」に記載[4]
  74. ^ 『成田空港サーバー』1998年8月9日の記録に記載[5]。1998年8月9日の記録には、訓練場の建設に関して「22日に地元説明会が開かれることになっており、これによって詳細がわかるものと思われます。」との記載がある。また同サイトの1999年3月22日の記録には、『千葉県警の、「ハイジャック対策」のためと言っている「ライフル射撃練習場」』との記載がある。
  75. ^ NJSS入札情報速報サービスのサイトに掲載[6]
  76. ^ 株式会社建設データバンクのホームページに掲載[7]
  77. ^ 愛知県警察ホームページの随意契約情報に記載 [8]。なお、支出は国費(国家予算)で行われている。
  78. ^ 福岡県警察ホームページに記載[9]
  79. ^ 『読売オンライン』2010年11月26日
  80. ^ 麻生幾「第五章 Dデー」『極秘捜査 政府・警察・自衛隊の[対オウム事件ファイル]』文芸春秋、1997年。 
  81. ^ 読売新聞2003年9月17日
  82. ^ 沖縄県警察SATの隊旗授与式の様子は『SATマガジン』NO11に掲載された記事「沖縄県警SAT発足」に写真付きで記載。
  83. ^ 中国新聞』2007年12月16日
  84. ^ 石川・志賀原発でテロ訓練 警察庁長官視察』日テレNEWS 2010年11月26日
  85. ^ 朝日新聞デジタル』2012年11月22日
  86. ^ NHKニュース2015年3月13日
  87. ^ 時事ドットコム:2都県SATが合同訓練=サミット前に連携確認[リンク切れ]
  88. ^ KYODO NEWS 【共同通信社】 YouTube公式チャンネル:テロ備え、実戦訓練 SAT、合同初公開
  89. ^ 時事通信社/JIJIPRESS YouTube公式チャンネル:警視庁、神奈川県警SAT合同訓練=実弾連射、閃光弾投てき、狙撃で犯人制圧
  90. ^ “「SIT」「SAT」2つの特殊部隊連携 全国的な応援体制構築 長野立てこもり”. 産経新聞. (2022年5月26日). https://www.sankei.com/article/20230526-B3S3EQ3YCBKNVIRA6WERNJ4U2M/ 2023年5月26日閲覧。 

参考文献

関連項目