「熊本市交通局8200形電車」の版間の差分
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{{鉄道車両 |
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{{No footnotes|date=2016年4月}} |
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|車両名=熊本市交通局8200形電車 |
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{{ローレル賞|23|1983}} |
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|社色=#269926 |
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'''熊本市交通局8200形電車'''(くまもとしこうつうきょく8200がたでんしゃ)は[[熊本市交通局]]の[[路面電車]]の形式である。形式名は1982年(昭和57年)に製造されたことに由来する。 |
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|画像=Kumamoto City Tram 8201 20180727.jpg |
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|画像説明=8200形8201号<br />(2018年7月・[[熊本駅|熊本駅前]]付近) |
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{{右| |
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|運用者=[[熊本市交通局]] |
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[[ファイル:Kumamoto8201 1.jpg|220px|none|thumb|8201「しらかわ」]] |
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|製造所=[[日本車輌製造]] |
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[[ファイル:Kumamoto8202 1.jpg|220px|none|thumb|8202「火の国」]] |
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|製造年=[[1982年]] |
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|製造数=2両 (8201・8202) |
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|運用開始=1982年[[8月2日]] |
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|軌間=1,435 [[ミリメートル|mm]] |
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|電気方式=[[直流電化|直流]]600 [[ボルト (単位)|V]]([[架空電車線方式]]) |
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|最高運転速度=40 [[キロメートル毎時|km/h]] |
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|起動加速度=3.0 [[キロメートル毎時毎秒|km/h/s]] |
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|常用減速度=4.6 km/h/s |
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|非常減速度=5.0 km/h/s |
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|車両定員=70人(座席25人) |
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|自重=19 [[トン|t]] |
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|全長=12,800 mm |
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|全幅=2,360 mm |
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|全高=3,900 mm |
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|車体=全金属製軽量構造車体 |
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|台車=日本車輌製造製<br />NS-18(電動台車)<br />NS-19(付随台車) |
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|主電動機=[[三菱電機]]製 MB-5008-A<br />[[かご形三相誘導電動機]] |
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|主電動機出力=120.0 [[キロワット|kW]] |
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|搭載数=1基 / 両 |
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|駆動方式=[[直角カルダン駆動方式]] |
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|歯車比=6.735 (51:8) |
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|定格速度=29.0 km/h |
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|定格引張力=1,400 [[キログラム|kg]] |
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|制御方式=[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバーター制御方式]] |
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|制御装置=電圧形[[パルス幅変調|PWM]]インバーター |
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|制動装置=SME-R [[発電ブレーキ|電制]]併用[[直通ブレーキ]]<br />[[応荷重装置]]・[[保安ブレーキ]]付 |
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|備考=出典:[[#jari160|『車両技術』第160号]]38-51頁および[[#rf256|『鉄道ファン』通巻256号]]78-82頁 |
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|備考全幅={{ローレル賞|23|1983|link=no|align=right}} |
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'''熊本市交通局8200形電車'''(くまもとしこうつうきょく8200がたでんしゃ)は、[[熊本市交通局]](熊本市電)に在籍する[[路面電車]][[鉄道車両|車両]]である。 |
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[[1982年]](昭和57年)に2両導入された。熊本市電では22年ぶりとなる新型車両であり、日本で初めてとなる[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバーター制御方式]]による[[交流電動機]]方式など当時の新技術を採用する。 |
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== 車両概説 == |
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熊本市電では1981年(昭和56年)までにほぼ全車の冷房化を完了したが、この時点で保有している全車両が製造後20年 - 30年を経過していたことから、[[長崎電気軌道2000形電車]]のような[[軽快電車]]風の新車を導入し、一部の経年車両の置き換えを図ったものである。 |
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== 導入の経緯 == |
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1982年(昭和57年)に8201・8202の2両が[[日本車輌製造]]にて製作された。8201は「しらかわ」、8202は「火の国」の愛称名が付けられている。熊本市電では1960年(昭和35年)に新製した350形(現・[[熊本市交通局1350形電車|1350形]])以降、自局発注の新車がなく、本形式が22年ぶりの新車となった。 |
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[[熊本市]]の市内電車である熊本市電は、最盛期には全長25.2キロメートルの路線網を有したが、1963年度をピークに乗客は減少、路線も[[1965年]](昭和40年)から[[1972年]](昭和47年)にかけて廃止が相次ぎ、残された12.1キロメートルの路線と2つの系統も1970年代末までに廃止される予定であった<ref name="rj362">[[#rj362|『鉄道ジャーナル』通巻362号]]27-35頁</ref>。しかし[[オイルショック]]など社会環境の変化で路面電車の価値が見直され、市電全廃計画は撤回される<ref name="rj362"/>。そして存続が決まると、一転して車両の[[冷房]]化をはじめとする積極投資が続いた<ref name="rj362"/>。 |
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[[1980年]](昭和55年)に冷房化が完了すると、次なる積極策として新造車を導入することとなった<ref name="rj362"/>。熊本市電においては、[[1949年]](昭和24年)の[[熊本市交通局120形・130形電車|120形]]導入から[[1960年]](昭和35年)の[[熊本市交通局1350形電車|350形(→1350形)]]導入に至るまで、数年に1度のペースで新造[[ボギー台車|ボギー車]]の導入が進められたが、それ以降は中古車両([[連接台車|連接車]][[熊本市交通局5000形電車|5000形]]など)を購入することはあったものの、新造車両の導入は途絶えていた<ref name="jtb-150">[[#jtb|『熊本市電が走る街今昔』]]150-157頁</ref>。従って車齢25年以上の車両が大半を占める状態にあるため、冷房化に伴い増加傾向を示す乗客に対しイメージアップを推進する必要があった<ref name="rf256">[[#rf256|『鉄道ファン』通巻256号]]78-83頁</ref>。 |
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1983年(昭和58年)に[[鉄道友の会]][[ローレル賞]]を受賞している。 |
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このような経緯により熊本市電に導入されたのが8200形である。導入数は2両 (8201・8202)<ref name="rf256"/>。形式名は導入年の[[1982年]](昭和57年)にちなむ<ref name="70th-108">[[#70th|『熊本市電70年』]]108-110頁</ref>。メーカーは[[日本車輌製造]]で<ref name="rf256"/>、車両価格は1両あたり6300万円<ref name="70th-108"/>。メーカーでの性能試験ののち<ref name="rf256"/>、1982年5月10日未明に市電大江車庫へ搬入され、長期にわたる試運転・乗務員訓練を経て、形式名にちなんだ同年[[8月2日]]に大江車庫にて出発式が挙行され、同日から営業運転に就いた<ref name="70th-108"/>。また出発式において、8201号は「[[白川 (熊本県)|しらかわ]]」、8202号は「[[火国|火の国]]」という公募による愛称がつけられた<ref name="70th-108"/>。 |
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== 構造 == |
== 構造 == |
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本形式は「近代性・快適性・高性能化」の3点を基本設計に採用しており、先に開発された「[[軽快電車]]」([[広島電鉄3500形電車|広島電鉄3500形]]・[[長崎電気軌道2000形電車|長崎電気軌道2000形]])をモデルとしている<ref name="rf256"/>。 |
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=== 車体・車内設備 === |
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スクエアな造形の全金属製車体である。前面窓は大形一枚窓で、前面両端下部に前照灯と尾灯を配置している。窓配置はD3D3の左右非対称形で、下段上昇・上段下降式のユニット式アルミサッシ窓、2枚折り戸を2組用いた両開き式4枚扉の中央扉、2枚折り戸の左扉、電動式大型方向幕など、長崎電気軌道2000形との共通点が多い。 |
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=== 車体 === |
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[[鉄道車両の座席|座席]]は1人掛けクロスシートとロングシートを組み合わせたセミクロスシートである。これも長崎電気軌道2000形と同じである。屋根上に[[富士電機]]製の冷房装置と補助インバータを搭載する。暖房装置は客席に反射板シーズ線ヒーターを、運転席にファン付ヒーターを装備する。 |
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[[ファイル:Kumamoto City Tram 8202 20160727.jpg|thumb|8202号(2016年)<br />車体側面の方向幕は使用されていない。]] |
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本形式は全金属製軽量構造車体を持つ[[ボギー台車|ボギー車]]である<ref name="jari160">[[#jari160|『車両技術』第160号]]38-51頁</ref>。最大寸法は長さ12.8メートル、幅2.36メートル、高さ3.9メートル(=パンタグラフ折り畳み高さ。屋根上機器を除いた車体高さは3.26メートル)<ref name="jari160"/>。車体の[[構体 (鉄道車両)|構体]]は[[一般構造用圧延鋼材]]の[[プレス加工|プレス材]]を用いた[[溶接]]構造で、外板は厚さ1.2ミリメートルの普通鋼板、屋根・床板は厚さ0.8ミリメートルの[[ステンレス鋼|ステンレス鋼板]]をそれぞれ用いる<ref name="rf256"/>。自重は19[[トン]]<ref name="jari160"/>。 |
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中扉付近には連結運転を想定した車掌用設備が設けられ、側面系統幕も設置しているが現在は両方とも使用していない(連結運転の詳細は後述)。車掌用設備は中扉上部に巻取式運賃表([[交通電業社]]製)を取りつけていたが、現在は撤去されたものの扉開閉装置及び放送始動装置関連は現在も側柱に残存している。 |
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また側面系統幕の使用中止後も旧型車両が最初に取付たアルミ製の側面系統表示板は取り付けられず、前面だけで行先を確認しなくてはならなかったが、A・B系統設定時に[[熊本市交通局8800形電車|8800形]](101も含む)・[[熊本市交通局9200形電車|9200形]]・[[熊本市交通局9700形電車|9700形]]・[[熊本市交通局0800形電車|0800形]]と共に取付られた。 |
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また、前面系統表示板の取付位置は電照式愛称板がある為、左側のままである。 |
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車体デザインは「軽快電車」を範とする、直線を多用したスタイルになっている<ref name="rf256"/>。前面窓は熱線入りガラス(防曇ガラス)を用いた大型窓で、窓上に大型の[[方向幕]]を配置する<ref name="rf256"/>。ライト類は窓下にあり、[[前照灯]](内側)と[[尾灯]]兼制動灯(外側)を左右に1組ずつ配す<ref name="rf256"/>。ライトと窓の間には、正面から見て左手は系統板、右手には愛称板が取り付けられている<ref name="rf256"/>。ライト・表示板の間(前面中央部)には車両番号を記す<ref name="rf256"/>。 |
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<gallery> |
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ファイル:Kumamoto8201 cockpit 1.jpg|運転台 |
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ファイル:Kumamoto8201 interior 1.jpg|車内 |
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ファイル:Kumamoto8201 conductor booth 1.jpg|車掌用設備 |
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</gallery> |
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側面ドアは左右非対称の配置であり、進行方向に向かって左側では車体前部と中央部やや後ろ寄り、右側では車体後部と中央部やや前寄りにある<ref name="rf256"/>。熊本市電では原則として進行方向左手に停留場ホームがあることから、中扉が乗車口、前扉が降車口となる(後乗り前降り)<ref name="rp509">[[#rp509|『鉄道ピクトリアル』通巻509号]]132-134頁</ref><ref name="rp688">[[#rp688|『鉄道ピクトリアル』通巻688号]]230-234頁</ref>。ドアは中扉が2枚折り戸を2組用いた幅140センチメートルの両開き折り戸、前扉が有効幅85センチメートルの片開き2枚折り戸<ref name="rf256"/>。ドア部分の高さはレール上面35センチメートルで、2段のステップで車内(床面高さ85センチメートル)に上がる<ref name="jari160"/>。 |
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=== 電装品・台車 === |
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本形式は営業用車両としては日本で初めて[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]を採用していることで知られている。インバータ装置と交流モータは[[三菱電機]]が製造した。モータは120kWの[[かご形三相誘導電動機]](MB-5008-A) を使用しており、1台車1モータ方式を採用している。路面電車ではVVVFインバータの採用に障害となる微弱電流の流れている軌道回路がなかったことから、VVVFインバータの採用が容易であった。またブレーキ装置も三菱電機製である。 |
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側面窓は、幅1.1メートル・高さ1.0メートルの窓をドア間とその反対側ともに各3枚、片側計6枚配置する<ref name="rf256"/>。外はめ式[[ユニット窓]]であり<ref name="rp464">[[#rp464|「新車年鑑1986年版」]]134頁</ref>、開閉方式は上段下降・下段上昇式<ref name="jari160"/>。ただし中央ドア右手の車掌台部分のみ窓形状が異なっており<ref name="rf294">[[#rf294|『鉄道ファン』通巻294号]]92-99頁</ref>、他の窓の下段にあたる位置に側面方向幕が設けられている<ref name="rf256"/><ref name="rf294"/>。 |
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[[鉄道車両の台車|台車]]は日本車輌製で、緩衝ゴム支持方式コイルバネ台車である。1個が駆動台車(NS-18)で、もう1個は付随台車(NS-19)である。すなわちモータは1両につき1基のみであり、駆動台車側に乾式ディスクブレーキと空転防止用電動式砂撒装置を備える(ディスクブレーキ装着車両は熊本市交通局ではこの2両のみ)。本形式の8201と8202は線路上に逆向きになるよう配置されており、8201は田崎橋/上熊本駅側が動力台車、8202は健軍町側が動力台車となっている。 |
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車体塗装は[[アイボリー]]に[[緑]]の帯を巻いたもので、「軽快さ」と「緑と水の熊本」のイメージを表現しているという<ref name="rf256"/>。熊本市電では[[1999年]](平成11年)4月に、車体全面を利用した広告電車が[[ラッピング車両|フィルムラッピング]]を用いる方法で10年ぶりに復活した<ref name="rp688"/>。本形式も広告車両に使用されることがあり、1999年末までに一旦2両とも広告電車となった<ref name="rp688"/>。 |
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付随台車側、すなわち8201の健軍町側と8202の田崎橋/上熊本駅側には[[連結器#密着連結器|密着連結器]](折りたたみ式)と[[連結器#電気連結器|電気連結器]](形式表記の下に収納)が設けられており、2両を連結運転することが出来、2016年(平成28年)時点でも密着連結器及び電気連結器は現在も取付けたままとなっている。上記でも述べてるが、連結を前提に落成した為8202は逆向きに配置し、逆に8202の向きを元に戻せば、連結器、主要電源、車掌設備、パンタグラフの向きと位置は8201と同じ位置である(8201が後に導入された8800形(101も含む)、9200形と同様に熊本駅・田崎橋側に主要電源設備の位置、パンタグラフの向きが同じ為)。 |
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=== 客室設備 === |
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しかし実際には[[辛島町停留場|辛島町電停]]西側の[[分岐器|ポイント]]操作において支障があるため、連結運転は導入当初に行われた試験運転のみで営業運転で実施されたことは現在まで一度もない。 |
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[[ファイル:Kumamoto8201 interior 1.jpg|thumb|車内の様子(8201号・2008年)]] |
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車内のうち両端の運転台を除いた客室の長さは10.2メートルである<ref name="jari160"/>。定員は70人<ref name="jari160"/>。 |
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== 現況 == |
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2006年(平成18年)より製造当初からのVVVF装置が経年により順次交換され、[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT素子]]を用いたVVVF装置が搭載された。 |
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座席は[[鉄道車両の座席#セミクロスシート|セミクロスシート]]を採用する<ref name="jari160"/>。クロスシート部は各ドア間の計2か所で、1人掛け座席を[[シートピッチ]]69.0センチメートルにて5席ずつ並べる<ref name="jari160"/>。同じくセミクロスシートを採用する「軽快電車」のクロスシート部は運転台向きに固定されているが<ref name="rf234">[[#rf234|『鉄道ファン』通巻234号]]45-55頁</ref>、本形式では車内設置のハンドルを回すことで転換作業が可能<ref name="rf256"/>。ロングシート部はクロスシート部の向い側、計2か所の設置で、2位側(連結器設置側を先頭とした場合の進行方向左手)に長さ2.99メートルの7人掛け座席、1位側(同右手)に長さ3.56メートルの8人掛け座席を配置する<ref name="jari160"/>。 |
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== 主要諸元 == |
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* 製造年:1982年(昭和57年) |
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* 全長:12,800mm |
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* 全幅:2,360mm |
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* 全高:3,900mm |
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* 自重:19.0t |
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* 車体構造:全金属製 |
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* 定員(着席):70(25)人 |
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* 電動機 |
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** 出力:120kW×1基 |
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** 駆動方式:直角カルダン方式 |
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* 制御方式:VVVFインバータ制御方式 |
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* 制動装置:ME38LM型(三菱電機製) |
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新造当時は[[運賃制度]]が対距離区間制であった<ref name="jtb-157">[[#jtb|『熊本市電が走る街今昔』]]157-158頁</ref>([[2007年]]10月に均一運賃制に復帰<ref name="rp852">[[#rp852|『鉄道ピクトリアル』通巻852号]]264-269頁</ref>)ため、車内には[[乗車整理券|整理券]]発行器や[[運賃表示器]]が設置されていた<ref name="rf256"/>。 |
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== 塗装及び広告車両 == |
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2018年4月現在 |
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* 8201 : 標準塗装 |
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* 8202 : 標準塗装 |
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車内の[[冷房]]吹出口は天井に24か所設置<ref name="rf256"/>。[[暖房]]は客室座席下に反射板シーズ線方式ヒーターを8個設置し、運転席にもファン付きヒーターを備える<ref name="rf256"/>。 |
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塗装は白色アイボリーに緑色ストライプを施した「軽快さ」と「緑と水の熊本」を表現したデザインであり、このデザインが平成元年に全面広告を廃止し、旧型車両が([[熊本市交通局1060形電車 |1060形]]1063の現在の塗装より)現在の標準塗装へ導く結果となった。 |
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{{-}} |
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因みに塗装変更第一号は[[熊本市交通局1090形電車 |1090形]]の1097である。 |
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=== 主要機器 === |
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: 本形式では、連結器設置面を「II端」、その反対側を「I端」と称する<ref name="jari160"/>。この連結器の存在ゆえに本形式は搬入当初から車両の向きが揃えられておらず<ref name="rf256"/>、II端は8201号では健軍町方面、8202号では田崎橋・上熊本方面を向く<ref>[[#tram1|『日本の路面電車 I』]]166頁(写真参照)</ref>。 |
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==== 台車 ==== |
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[[ファイル:Kumamoto City Tram 8201 Bogie truck NS19.jpg|thumb|付随台車NS-19形(8201号)]] |
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[[鉄道車両の台車|台車]]は[[主電動機]]を設置するI端側の電動台車がNS-18形、II側の付随台車がNS-19形である<ref name="jari160"/>。いずれも[[日本車輌製造]]製<ref name="nissha-b">[[#nissha-b|『日車の車輌史』写真・図面集台車編]]30・252頁</ref>。下揺れ枕と揺れ枕吊りを省略したインダイレクトマウント台車であり<ref name="nissha-b"/>、鋼板溶接構造の台車枠の上に[[枕バネ]](オイルダンパー併用コイルバネ)、防振ゴム、揺れ枕、心皿の順で取り付けて車体を支持する<ref name="jari160"/>。心皿はNS-18形では主電動機の設置スペースを確保するため特殊ボール軸受による大径心皿を採用し、NS-19形は従来構造の小径心皿を採用する<ref name="jari160"/>。[[鉄道車両の台車#軸箱支持装置|軸箱支持装置]]はシェブロン式だが、車輪の内側で車軸を支持するため外からは見えない<ref name="nissha-b"/>。車輪には防音車輪を利用<ref name="jari160"/>。車軸は軽量化のため中空軸になっている<ref name="jari160"/>。[[ホイールベース|軸距]]はNS-18形では1,800ミリメートル、NS-19形では1,400ミリメートルで、車輪径はいずれも660ミリメートルである<ref name="jari160"/>。 |
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内側軸受方式(インサイドフレーム方式)・シェブロン式軸箱支持装置・中空車軸・防音車輪の採用や、電動台車と付随台車で軸距が異なる点、さらには下記の直角カルダン駆動によるモノモーター方式、ディスクブレーキの採用は「軽快電車」用の台車と共通する<ref name="rf234"/>。 |
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==== 主電動機・制御装置 ==== |
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主電動機は[[三菱電機]]製MB-5008-A形[[かご形三相誘導電動機]]を1両につき1台のみ設置する(モノモーター方式)<ref name="rf256"/>。主要諸元は1時間定格出力120[[ワット|キロワット]]、定格電圧440[[ボルト (単位)|ボルト]]、定格電流200[[アンペア]]、定格周波数53[[ヘルツ]]、定格回転数1,600[[rpm (単位)|rpm]]<ref name="jari160"/>。装荷位置は電動台車の中央で、レール方向に設置<ref name="jari160"/>。駆動装置は[[直角カルダン駆動方式]]であり、2組の装置を主電動機の両軸に取り付けて台車の両軸を駆動する<ref name="jari160"/>。[[歯車比]]は6.375 (51:8)<ref name="jari160"/>。 |
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[[電気車の速度制御|制御方式]]は[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバーター方式]]を採用<ref name="jari160"/>。当初の装置は三菱電機製<ref name="rf361">[[#rf361|『鉄道ファン』通巻361号]]14・24・42-43頁</ref>のSIV-244形電圧形[[パルス幅変調|PWM]]インバーターを用いた<ref name="jari160"/>。スイッチング素子は[[サイリスタ|逆導通サイリスタ (RCT)]] である<ref name="rf361"/>。VVVFインバーターによる主電動機制御の採用は、日本では本形式が初<ref name="rf361"/>。こうした新技術が本形式で採用された理由は、路面電車のため電気的なトラブルが発生した際に影響を受けやすい[[軌道回路]]が存在せず初の実用化の場として都合がよいことと、当時の交通局長が技術系出身者で導入に動きやすかったことがあるという<ref>[[#rj362|『鉄道ジャーナル』通巻362号]]27-35頁</ref>。その後[[2006年]](平成18年)3月に8201号、翌[[2007年]](平成19年)3月に8202号がそれぞれインバーター制御装置の更新工事を受け、三菱電機製MAP-121-60VD155形に載せ替えられた<ref>[[#rp781|「鉄道車両年鑑2006年版」]]140・220頁</ref><ref>[[#rp795|「鉄道車両年鑑2007年版」]]141・235頁</ref>。これはスイッチング素子を[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]]とした電圧形PWMインバーターである<ref>[[#rp868|『鉄道ピクトリアル』通巻868号]]193頁</ref>。 |
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運転台の[[マスター・コントローラー|主幹制御器]]は「軽快電車」においては左右が連動する[[マスター・コントローラー#1軸ツーハンドルマスコン|1軸ツーハンドルマスコン]]を採用するが<ref name="rf234"/>、本形式では在来車と同様に左手の制御器(KL-140B形<ref name="rp688"/>)と右手のブレーキ弁(ME-38LM形<ref name="jari160"/>)に分かれる<ref name="rf256"/>。 |
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==== ブレーキシステム ==== |
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[[ファイル:Kumamoto8201 cockpit 1.jpg|thumb|運転台(8201号)<br />左手にKL-140B形制御器、右手にME-38LM形ブレーキ弁を配置。]] |
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[[鉄道のブレーキ|ブレーキ]]は三菱電機製SME-R形自動非常付電制併用[[直通ブレーキ|直通空気ブレーキ]]を使用する<ref name="rf256"/>。これはSME形直通ブレーキに電気ブレーキ([[回生ブレーキ]]または回生失効時のみ[[発電ブレーキ]])を組み合わせたシステムである<ref name="jari160"/>。運転台のブレーキ弁を操作すると、その操作角度にあわせて直通管に空気圧が生じ(セルフラップ式ブレーキ弁)、それがアクチュエーターおよびSME-R作用装置へ入力される<ref name="jari188">[[#jari188|『車両技術』第188号]]36-45頁</ref>。このブレーキ指令は[[応荷重装置|荷重条件を加味して]]ブレーキ量を出力する<ref name="jari188"/>。このとき動軸では電気ブレーキが作用し、この作用量はSME-R作用装置へフィードバックされ空気ブレーキ圧力を減ずる<ref name="jari188"/>。これらのブレーキ機構のほか、空気ブレーキによる[[保安ブレーキ]]も別系統で設置する<ref name="jari160"/>。 |
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台車設置の基礎ブレーキ装置は[[ディスクブレーキ]]であり電動台車には2組、付随台車には4組のディスクを取り付けている<ref name="jari160"/>。油圧式のため空気指令は台車設置の空油変換装置によって油圧力に変換される<ref name="jari160"/>。また落葉時の[[空転]]防止のため[[砂撒き装置]]が電動台車にある<ref name="jari160"/>。 |
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==== 屋根上機器 ==== |
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屋根上にはI端側から順に[[冷房]]装置、PT110-BZ形[[集電装置#Z型・シングルアーム型|Z型パンタグラフ]]、補助電源装置が設置されている<ref name="jari160"/>。 |
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冷房装置は架線電圧([[直流]]600ボルト)で直接駆動するFAD-2220-1形[[集中式冷房装置]]を採用<ref name="jari160"/>。[[富士電機]]製で、冷房能力は2万キロカロリー毎時、強冷・弱冷・送風の切り替えが可能である<ref name="rf256"/>。補助電源装置は[[静止形インバータ|SIVインバーター装置]]を利用しており、[[単相交流]]100ボルト・60ヘルツおよび直流24ボルトの電気を出力する<ref name="jari160"/>。 |
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パンタグラフは[[東洋電機製造]]製で、「軽快電車」用と同系列のものを取り付けている<ref name="70th-108"/>。 |
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[[ファイル:Kumamoto8201 conductor booth 1.jpg|thumb|upright|車掌用設備と運賃表示器(2008年)]] |
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本形式の特徴的な設備として、ラッシュ時などの連結運転を想定した[[連結器]]が挙げられる<ref name="rf256"/>。II端側に設置されており、床下に密着連結器、窓下中央部に電気連結器を配する<ref name="rf256"/>。これらの連結器は単行運転時には折りたたむようになっており、特に電気連結器は車両番号を記したカバーで隠すことが可能<ref name="rf256"/>。連結運転時には[[ワンマン運転]]ではなく[[車掌]]が乗務することから、車内に車掌扱い機器や車掌と運転士の連絡機器を備える<ref name="jari160"/>。ただし、[[西辛島町停留場|西辛島町]]分岐点における信号の関係で、営業にて連結運転を行った実績はない<ref name="70th-108"/>。 |
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== 運用と改造 == |
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前述の通り、8200形2両は[[1982年]](昭和57年)[[8月2日]]より営業運転に投入された。本形式の投入は乗客から高評価を得たことから、[[1985年]](昭和60年)になって本形式に準じた新造車体と旧型車の機器を組み合わせた[[熊本市交通局8500形電車|8500形]]が導入された<ref name="rf292">[[#rf292|『鉄道ファン』通巻292号]]64-67頁</ref>。車体更新車の増備に切り替えたのは車両導入費の圧縮を図るためである<ref name="rf292"/>。従って本形式は最初に投入された2両以降、増備されていない。また運用はほかのボギー車と共通であり、1997年以降に登場した[[超低床電車]]([[熊本市交通局9700形電車|9700形]]・[[熊本市交通局0800形電車|0800形]])のような固定ダイヤがあるわけではない<ref name="rp688"/><ref name="rp852"/>。 |
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運転開始から1年後の[[1983年]](昭和58年)[[7月24日]]<ref name="jtb-157"/>、本形式はVVVFインバーター制御をはじめ多数の新技術を取り入れた点が評価され[[鉄道友の会]]の「[[ローレル賞]]」を受賞した<ref name="jtb-150"/>。受賞車を示す円形のプレートは8201号に取り付けられている<ref name="jtb-150"/>。また[[1994年]](平成6年)には、8201号を用いた熊本市電開業70周年記念の装飾電車が7月から9月にかけて運転された<ref>[[#70th|『熊本市電70年』]]123頁</ref>。 |
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新造後の改造点には、以下のような他形式と共通のものが挙げられる。 |
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* 無線機器設置 - [[1991年]](平成3年)4月からの[[列車無線]]導入に伴う<ref>[[#70th|『熊本市電70年』]]117頁</ref>。 |
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* 乗降口へのカードリーダー設置 - [[1998年]](平成10年)3月からの[[乗車カード]]「[[TO熊カード]]」導入に伴う<ref name="rp688"/>。 |
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* 常時記録型[[ドライブレコーダー]]設置 - [[2010年]]度(平成22年度)施工<ref>[[#rp855|「鉄道車両年鑑2011年版」]]154頁</ref>。 |
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* 方向幕更新 - [[2011年]](平成23年)3月の系統名変更ならびにラインカラー設定に伴う。[[熊本市電A系統|A系統]]が赤、[[熊本市電B系統|B系統]]が青、その他臨時系統が黄色とされ、それぞれ色付き方向幕に変更<ref name="rp852">[[#rp852|『鉄道ピクトリアル』通巻852号]]264-269頁</ref>。 |
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* ICカードリーダー設置 - [[2014年]](平成26年)3月の[[ICカード乗車券]]「[[nimoca|でんでんnimoca]]」導入に伴う<ref>[[#handbook2018|『路面電車ハンドブック』2018年版]]175-181</ref>。 |
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== 脚注 == |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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{{Commons|Category:Kumamoto City Tram 8200 series}} |
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*「熊本市電70年」細井敏幸(著) 1995/02/14 |
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* {{Cite book|和書|author=中村弘之 |title=熊本市電が走る街今昔 |publisher=[[JTBパブリッシング]]([[JTBキャンブックス]]) |year=2005 |ref=jtb }} |
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'''書籍''' |
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* {{Cite book|和書|author=中村弘之 |title=熊本市電が走る街今昔 |publisher=[[JTBパブリッシング]]([[JTBキャンブックス]]) |year=2005 |isbn=4-533-05990-2 |ref=jtb }} |
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* {{Cite book|和書|author=日本車両鉄道同好部・鉄道史資料保存会(編) |title=日車の車輌史 |volume=写真・図面集台車編 |publisher=鉄道史資料保存会 |year=2000 |ref=nissha-b }} |
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* {{Cite book|和書|author=日本路面電車同好会 |title=日本の路面電車ハンドブック |volume=2018年版 |publisher=日本路面電車同好会 |year=2018 |ref=handbook2018 }} |
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* {{Cite book|和書|author=[[原口隆行]] |title=日本の路面電車 I 現役路線編 |publisher=[[JTB]](JTBキャンブックス) |year=2000 |ref=tram1 }} |
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* {{Cite book|和書|author=細井敏幸 |title=熊本市電70年 |publisher=細井敏幸<!--自費出版本--> |year=1995 |ref=70th }} |
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'''雑誌記事''' |
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* 『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』各号 |
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** {{Cite journal|和書|author=小山柾 |title=さわやかにデビュー 広島・長崎に軽快電車 |journal=鉄道ファン |volume=第20巻第10号(通巻234号) |publisher=[[交友社]] |date=1980-10 |pages=45-55 |ref=rf234 }} |
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** {{Cite journal|和書|author=中富孝明 |title=熊本市電に「新電車」8200形登場 |journal=鉄道ファン |volume=第22巻第8号(通巻256号) |publisher=交友社 |date=1982-08 |pages=78-83 |ref=rf256 }} |
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** {{Cite journal|和書|author=中富孝明 |title=新車カイド2 熊本市電に更新車8500形登場 |journal=鉄道ファン |volume=第25巻第8号(通巻292号) |publisher=交友社 |date=1985-08 |pages=64-67 |ref=rf292 }} |
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** {{Cite journal|和書|author=小林隆雄 |title=シリーズ路面電車を訪ねて 6 熊本市交通局 |journal=鉄道ファン |volume=第25巻第10号(通巻294号) |publisher=交友社 |date=1985-10 |pages=92-99 |ref=rf294 }} |
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** {{Cite journal|和書|author=[[吉川文夫]] |title=VVVFインバータ車両 |journal=鉄道ファン |volume=第31巻第5号(通巻361号) |publisher=交友社 |date=1991-05 |pages=9-43 |ref=rf361 }} |
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* 『[[鉄道ピクトリアル]]』各号 |
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** {{Cite journal|和書|author=細井敏幸 |title=九州・四国・北海道地方のローカル私鉄現況6 熊本市交通局 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第39巻第3号(通巻509号) |publisher=電気車研究会 |date=1989-03 |pages=130-134 |ref=rp509 }} |
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** {{Cite journal|和書|author=細井敏幸 |title=日本の路面電車現況 熊本市交通局 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第50巻第7号(通巻688号) |publisher=電気車研究会 |date=2000-07 |pages=230-234 |ref=rp688 }} |
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** {{Cite journal|和書|author=細井敏幸 |title=日本の路面電車各車局現況 熊本市交通局 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第61巻第8号(通巻852号) |publisher=電気車研究会 |date=2011-08 |pages=264-269 |ref=rp852 }} |
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** {{Cite journal|和書|author=松川和憲 |title=熊本市交通局9200形VVVFインバータ制御装置更新 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第62巻第10号(通巻868号) |publisher=電気車研究会 |date=2012-10 |pages=193 |ref=rp868 }} |
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* 「新車年鑑」・「鉄道車両年鑑」(『鉄道ピクトリアル』臨時増刊号)各号 |
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** {{Cite journal|和書|title=新車年鑑1986年版 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第36巻第5号(通巻464号) |publisher=電気車研究会 |date=1986-05 |ref=rp464 }} |
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** {{Cite journal|和書|title=鉄道車両年鑑2006年版 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第56巻第10号(通巻781号) |publisher=電気車研究会 |date=2006-10 |ref=rp781 }} |
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** {{Cite journal|和書|title=鉄道車両年鑑2007年版 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第57巻第10号(通巻795号) |publisher=電気車研究会 |date=2007-10 |ref=rp795 }} |
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** {{Cite journal|和書|title=鉄道車両年鑑2011年版 |journal=鉄道ピクトリアル |volume=第61巻第10号(通巻855号) |publisher=電気車研究会 |date=2011-10 |ref=rp855 }} |
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* {{Cite journal|和書|author=鶴通孝 |title=熊本LRV前夜 |journal=[[鉄道ジャーナル]] |volume=第30巻12号(通巻362号) |publisher=[[鉄道ジャーナル社]] |date=1996-12 |pages=27-35 |ref=rj362 }} |
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* {{Cite journal|和書|author=初鹿野強・大崎隆・太田幹雄・赤川英爾 |title=熊本市交通局8200形新性能電車 |journal=車両技術 |volume=第160号 |publisher=[[日本鉄道車輌工業会]] |date=1982-10 |pages=38-51 |ref=jari160 }} |
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* {{Cite journal|和書|author=成田昌司・岡部信雄・吉田力・奥田良三 |title=熊本市交通局8800形 |journal=車両技術 |volume=第188号 |publisher=日本鉄道車輌工業会 |date=1989-10 |pages=36-45 |ref=jari188 }} |
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== 外部リンク == |
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* [https://www.jrc.gr.jp/award/bl/bl1983 1983年ブルーリボン・ローレル賞選定車両] - 鉄道友の会 |
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{{熊本市交通局の路面電車}} |
{{熊本市交通局の路面電車}} |
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{{ローレル賞選定車両一覧}} |
{{ローレル賞選定車両一覧}} |
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{{rail-stub}} |
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{{DEFAULTSORT:くまもとしこうつうきよく8200かたてんしや}} |
{{DEFAULTSORT:くまもとしこうつうきよく8200かたてんしや}} |
2018年10月22日 (月) 14:23時点における版
熊本市交通局8200形電車 | |
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8200形8201号 (2018年7月・熊本駅前付近) | |
基本情報 | |
運用者 | 熊本市交通局 |
製造所 | 日本車輌製造 |
製造年 | 1982年 |
製造数 | 2両 (8201・8202) |
運用開始 | 1982年8月2日 |
主要諸元 | |
軌間 | 1,435 mm |
電気方式 | 直流600 V(架空電車線方式) |
最高運転速度 | 40 km/h |
起動加速度 | 3.0 km/h/s |
減速度(常用) | 4.6 km/h/s |
減速度(非常) | 5.0 km/h/s |
車両定員 | 70人(座席25人) |
自重 | 19 t |
全長 | 12,800 mm |
全幅 | 2,360 mm |
全高 | 3,900 mm |
車体 | 全金属製軽量構造車体 |
台車 |
日本車輌製造製 NS-18(電動台車) NS-19(付随台車) |
主電動機 |
三菱電機製 MB-5008-A かご形三相誘導電動機 |
主電動機出力 | 120.0 kW |
搭載数 | 1基 / 両 |
駆動方式 | 直角カルダン駆動方式 |
歯車比 | 6.735 (51:8) |
定格速度 | 29.0 km/h |
定格引張力 | 1,400 kg |
制御方式 | VVVFインバーター制御方式 |
制御装置 | 電圧形PWMインバーター |
制動装置 |
SME-R 電制併用直通ブレーキ 応荷重装置・保安ブレーキ付 |
備考 | 出典:『車両技術』第160号38-51頁および『鉄道ファン』通巻256号78-82頁 |
熊本市交通局8200形電車(くまもとしこうつうきょく8200がたでんしゃ)は、熊本市交通局(熊本市電)に在籍する路面電車車両である。
1982年(昭和57年)に2両導入された。熊本市電では22年ぶりとなる新型車両であり、日本で初めてとなるVVVFインバーター制御方式による交流電動機方式など当時の新技術を採用する。
導入の経緯
熊本市の市内電車である熊本市電は、最盛期には全長25.2キロメートルの路線網を有したが、1963年度をピークに乗客は減少、路線も1965年(昭和40年)から1972年(昭和47年)にかけて廃止が相次ぎ、残された12.1キロメートルの路線と2つの系統も1970年代末までに廃止される予定であった[1]。しかしオイルショックなど社会環境の変化で路面電車の価値が見直され、市電全廃計画は撤回される[1]。そして存続が決まると、一転して車両の冷房化をはじめとする積極投資が続いた[1]。
1980年(昭和55年)に冷房化が完了すると、次なる積極策として新造車を導入することとなった[1]。熊本市電においては、1949年(昭和24年)の120形導入から1960年(昭和35年)の350形(→1350形)導入に至るまで、数年に1度のペースで新造ボギー車の導入が進められたが、それ以降は中古車両(連接車5000形など)を購入することはあったものの、新造車両の導入は途絶えていた[2]。従って車齢25年以上の車両が大半を占める状態にあるため、冷房化に伴い増加傾向を示す乗客に対しイメージアップを推進する必要があった[3]。
このような経緯により熊本市電に導入されたのが8200形である。導入数は2両 (8201・8202)[3]。形式名は導入年の1982年(昭和57年)にちなむ[4]。メーカーは日本車輌製造で[3]、車両価格は1両あたり6300万円[4]。メーカーでの性能試験ののち[3]、1982年5月10日未明に市電大江車庫へ搬入され、長期にわたる試運転・乗務員訓練を経て、形式名にちなんだ同年8月2日に大江車庫にて出発式が挙行され、同日から営業運転に就いた[4]。また出発式において、8201号は「しらかわ」、8202号は「火の国」という公募による愛称がつけられた[4]。
構造
本形式は「近代性・快適性・高性能化」の3点を基本設計に採用しており、先に開発された「軽快電車」(広島電鉄3500形・長崎電気軌道2000形)をモデルとしている[3]。
車体
本形式は全金属製軽量構造車体を持つボギー車である[5]。最大寸法は長さ12.8メートル、幅2.36メートル、高さ3.9メートル(=パンタグラフ折り畳み高さ。屋根上機器を除いた車体高さは3.26メートル)[5]。車体の構体は一般構造用圧延鋼材のプレス材を用いた溶接構造で、外板は厚さ1.2ミリメートルの普通鋼板、屋根・床板は厚さ0.8ミリメートルのステンレス鋼板をそれぞれ用いる[3]。自重は19トン[5]。
車体デザインは「軽快電車」を範とする、直線を多用したスタイルになっている[3]。前面窓は熱線入りガラス(防曇ガラス)を用いた大型窓で、窓上に大型の方向幕を配置する[3]。ライト類は窓下にあり、前照灯(内側)と尾灯兼制動灯(外側)を左右に1組ずつ配す[3]。ライトと窓の間には、正面から見て左手は系統板、右手には愛称板が取り付けられている[3]。ライト・表示板の間(前面中央部)には車両番号を記す[3]。
側面ドアは左右非対称の配置であり、進行方向に向かって左側では車体前部と中央部やや後ろ寄り、右側では車体後部と中央部やや前寄りにある[3]。熊本市電では原則として進行方向左手に停留場ホームがあることから、中扉が乗車口、前扉が降車口となる(後乗り前降り)[6][7]。ドアは中扉が2枚折り戸を2組用いた幅140センチメートルの両開き折り戸、前扉が有効幅85センチメートルの片開き2枚折り戸[3]。ドア部分の高さはレール上面35センチメートルで、2段のステップで車内(床面高さ85センチメートル)に上がる[5]。
側面窓は、幅1.1メートル・高さ1.0メートルの窓をドア間とその反対側ともに各3枚、片側計6枚配置する[3]。外はめ式ユニット窓であり[8]、開閉方式は上段下降・下段上昇式[5]。ただし中央ドア右手の車掌台部分のみ窓形状が異なっており[9]、他の窓の下段にあたる位置に側面方向幕が設けられている[3][9]。
車体塗装はアイボリーに緑の帯を巻いたもので、「軽快さ」と「緑と水の熊本」のイメージを表現しているという[3]。熊本市電では1999年(平成11年)4月に、車体全面を利用した広告電車がフィルムラッピングを用いる方法で10年ぶりに復活した[7]。本形式も広告車両に使用されることがあり、1999年末までに一旦2両とも広告電車となった[7]。
客室設備
車内のうち両端の運転台を除いた客室の長さは10.2メートルである[5]。定員は70人[5]。
座席はセミクロスシートを採用する[5]。クロスシート部は各ドア間の計2か所で、1人掛け座席をシートピッチ69.0センチメートルにて5席ずつ並べる[5]。同じくセミクロスシートを採用する「軽快電車」のクロスシート部は運転台向きに固定されているが[10]、本形式では車内設置のハンドルを回すことで転換作業が可能[3]。ロングシート部はクロスシート部の向い側、計2か所の設置で、2位側(連結器設置側を先頭とした場合の進行方向左手)に長さ2.99メートルの7人掛け座席、1位側(同右手)に長さ3.56メートルの8人掛け座席を配置する[5]。
新造当時は運賃制度が対距離区間制であった[11](2007年10月に均一運賃制に復帰[12])ため、車内には整理券発行器や運賃表示器が設置されていた[3]。
車内の冷房吹出口は天井に24か所設置[3]。暖房は客室座席下に反射板シーズ線方式ヒーターを8個設置し、運転席にもファン付きヒーターを備える[3]。
主要機器
- 本形式では、連結器設置面を「II端」、その反対側を「I端」と称する[5]。この連結器の存在ゆえに本形式は搬入当初から車両の向きが揃えられておらず[3]、II端は8201号では健軍町方面、8202号では田崎橋・上熊本方面を向く[13]。
台車
台車は主電動機を設置するI端側の電動台車がNS-18形、II側の付随台車がNS-19形である[5]。いずれも日本車輌製造製[14]。下揺れ枕と揺れ枕吊りを省略したインダイレクトマウント台車であり[14]、鋼板溶接構造の台車枠の上に枕バネ(オイルダンパー併用コイルバネ)、防振ゴム、揺れ枕、心皿の順で取り付けて車体を支持する[5]。心皿はNS-18形では主電動機の設置スペースを確保するため特殊ボール軸受による大径心皿を採用し、NS-19形は従来構造の小径心皿を採用する[5]。軸箱支持装置はシェブロン式だが、車輪の内側で車軸を支持するため外からは見えない[14]。車輪には防音車輪を利用[5]。車軸は軽量化のため中空軸になっている[5]。軸距はNS-18形では1,800ミリメートル、NS-19形では1,400ミリメートルで、車輪径はいずれも660ミリメートルである[5]。
内側軸受方式(インサイドフレーム方式)・シェブロン式軸箱支持装置・中空車軸・防音車輪の採用や、電動台車と付随台車で軸距が異なる点、さらには下記の直角カルダン駆動によるモノモーター方式、ディスクブレーキの採用は「軽快電車」用の台車と共通する[10]。
主電動機・制御装置
主電動機は三菱電機製MB-5008-A形かご形三相誘導電動機を1両につき1台のみ設置する(モノモーター方式)[3]。主要諸元は1時間定格出力120キロワット、定格電圧440ボルト、定格電流200アンペア、定格周波数53ヘルツ、定格回転数1,600rpm[5]。装荷位置は電動台車の中央で、レール方向に設置[5]。駆動装置は直角カルダン駆動方式であり、2組の装置を主電動機の両軸に取り付けて台車の両軸を駆動する[5]。歯車比は6.375 (51:8)[5]。
制御方式はVVVFインバーター方式を採用[5]。当初の装置は三菱電機製[15]のSIV-244形電圧形PWMインバーターを用いた[5]。スイッチング素子は逆導通サイリスタ (RCT) である[15]。VVVFインバーターによる主電動機制御の採用は、日本では本形式が初[15]。こうした新技術が本形式で採用された理由は、路面電車のため電気的なトラブルが発生した際に影響を受けやすい軌道回路が存在せず初の実用化の場として都合がよいことと、当時の交通局長が技術系出身者で導入に動きやすかったことがあるという[16]。その後2006年(平成18年)3月に8201号、翌2007年(平成19年)3月に8202号がそれぞれインバーター制御装置の更新工事を受け、三菱電機製MAP-121-60VD155形に載せ替えられた[17][18]。これはスイッチング素子をIGBTとした電圧形PWMインバーターである[19]。
運転台の主幹制御器は「軽快電車」においては左右が連動する1軸ツーハンドルマスコンを採用するが[10]、本形式では在来車と同様に左手の制御器(KL-140B形[7])と右手のブレーキ弁(ME-38LM形[5])に分かれる[3]。
ブレーキシステム
ブレーキは三菱電機製SME-R形自動非常付電制併用直通空気ブレーキを使用する[3]。これはSME形直通ブレーキに電気ブレーキ(回生ブレーキまたは回生失効時のみ発電ブレーキ)を組み合わせたシステムである[5]。運転台のブレーキ弁を操作すると、その操作角度にあわせて直通管に空気圧が生じ(セルフラップ式ブレーキ弁)、それがアクチュエーターおよびSME-R作用装置へ入力される[20]。このブレーキ指令は荷重条件を加味してブレーキ量を出力する[20]。このとき動軸では電気ブレーキが作用し、この作用量はSME-R作用装置へフィードバックされ空気ブレーキ圧力を減ずる[20]。これらのブレーキ機構のほか、空気ブレーキによる保安ブレーキも別系統で設置する[5]。
台車設置の基礎ブレーキ装置はディスクブレーキであり電動台車には2組、付随台車には4組のディスクを取り付けている[5]。油圧式のため空気指令は台車設置の空油変換装置によって油圧力に変換される[5]。また落葉時の空転防止のため砂撒き装置が電動台車にある[5]。
屋根上機器
屋根上にはI端側から順に冷房装置、PT110-BZ形Z型パンタグラフ、補助電源装置が設置されている[5]。
冷房装置は架線電圧(直流600ボルト)で直接駆動するFAD-2220-1形集中式冷房装置を採用[5]。富士電機製で、冷房能力は2万キロカロリー毎時、強冷・弱冷・送風の切り替えが可能である[3]。補助電源装置はSIVインバーター装置を利用しており、単相交流100ボルト・60ヘルツおよび直流24ボルトの電気を出力する[5]。
パンタグラフは東洋電機製造製で、「軽快電車」用と同系列のものを取り付けている[4]。
連結器その他
本形式の特徴的な設備として、ラッシュ時などの連結運転を想定した連結器が挙げられる[3]。II端側に設置されており、床下に密着連結器、窓下中央部に電気連結器を配する[3]。これらの連結器は単行運転時には折りたたむようになっており、特に電気連結器は車両番号を記したカバーで隠すことが可能[3]。連結運転時にはワンマン運転ではなく車掌が乗務することから、車内に車掌扱い機器や車掌と運転士の連絡機器を備える[5]。ただし、西辛島町分岐点における信号の関係で、営業にて連結運転を行った実績はない[4]。
運用と改造
前述の通り、8200形2両は1982年(昭和57年)8月2日より営業運転に投入された。本形式の投入は乗客から高評価を得たことから、1985年(昭和60年)になって本形式に準じた新造車体と旧型車の機器を組み合わせた8500形が導入された[21]。車体更新車の増備に切り替えたのは車両導入費の圧縮を図るためである[21]。従って本形式は最初に投入された2両以降、増備されていない。また運用はほかのボギー車と共通であり、1997年以降に登場した超低床電車(9700形・0800形)のような固定ダイヤがあるわけではない[7][12]。
運転開始から1年後の1983年(昭和58年)7月24日[11]、本形式はVVVFインバーター制御をはじめ多数の新技術を取り入れた点が評価され鉄道友の会の「ローレル賞」を受賞した[2]。受賞車を示す円形のプレートは8201号に取り付けられている[2]。また1994年(平成6年)には、8201号を用いた熊本市電開業70周年記念の装飾電車が7月から9月にかけて運転された[22]。
新造後の改造点には、以下のような他形式と共通のものが挙げられる。
- 無線機器設置 - 1991年(平成3年)4月からの列車無線導入に伴う[23]。
- 乗降口へのカードリーダー設置 - 1998年(平成10年)3月からの乗車カード「TO熊カード」導入に伴う[7]。
- 常時記録型ドライブレコーダー設置 - 2010年度(平成22年度)施工[24]。
- 方向幕更新 - 2011年(平成23年)3月の系統名変更ならびにラインカラー設定に伴う。A系統が赤、B系統が青、その他臨時系統が黄色とされ、それぞれ色付き方向幕に変更[12]。
- ICカードリーダー設置 - 2014年(平成26年)3月のICカード乗車券「でんでんnimoca」導入に伴う[25]。
脚注
- ^ a b c d 『鉄道ジャーナル』通巻362号27-35頁
- ^ a b c 『熊本市電が走る街今昔』150-157頁
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab 『鉄道ファン』通巻256号78-83頁
- ^ a b c d e f 『熊本市電70年』108-110頁
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag 『車両技術』第160号38-51頁
- ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻509号132-134頁
- ^ a b c d e f 『鉄道ピクトリアル』通巻688号230-234頁
- ^ 「新車年鑑1986年版」134頁
- ^ a b 『鉄道ファン』通巻294号92-99頁
- ^ a b c 『鉄道ファン』通巻234号45-55頁
- ^ a b 『熊本市電が走る街今昔』157-158頁
- ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻852号264-269頁
- ^ 『日本の路面電車 I』166頁(写真参照)
- ^ a b c 『日車の車輌史』写真・図面集台車編30・252頁
- ^ a b c 『鉄道ファン』通巻361号14・24・42-43頁
- ^ 『鉄道ジャーナル』通巻362号27-35頁
- ^ 「鉄道車両年鑑2006年版」140・220頁
- ^ 「鉄道車両年鑑2007年版」141・235頁
- ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻868号193頁
- ^ a b c 『車両技術』第188号36-45頁
- ^ a b 『鉄道ファン』通巻292号64-67頁
- ^ 『熊本市電70年』123頁
- ^ 『熊本市電70年』117頁
- ^ 「鉄道車両年鑑2011年版」154頁
- ^ 『路面電車ハンドブック』2018年版175-181
参考文献
書籍
- 中村弘之『熊本市電が走る街今昔』JTBパブリッシング(JTBキャンブックス)、2005年。ISBN 4-533-05990-2。
- 日本車両鉄道同好部・鉄道史資料保存会(編)『日車の車輌史』 写真・図面集台車編、鉄道史資料保存会、2000年。
- 日本路面電車同好会『日本の路面電車ハンドブック』 2018年版、日本路面電車同好会、2018年。
- 原口隆行『日本の路面電車 I 現役路線編』JTB(JTBキャンブックス)、2000年。
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- 中富孝明「新車カイド2 熊本市電に更新車8500形登場」『鉄道ファン』第25巻第8号(通巻292号)、交友社、1985年8月、64-67頁。
- 小林隆雄「シリーズ路面電車を訪ねて 6 熊本市交通局」『鉄道ファン』第25巻第10号(通巻294号)、交友社、1985年10月、92-99頁。
- 吉川文夫「VVVFインバータ車両」『鉄道ファン』第31巻第5号(通巻361号)、交友社、1991年5月、9-43頁。
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外部リンク
- 1983年ブルーリボン・ローレル賞選定車両 - 鉄道友の会