東京メトロ18000系電車
東京メトロ18000系電車 | |
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基本情報 | |
運用者 | 東京地下鉄(東京メトロ) |
製造所 | 日立製作所笠戸事業所[1] |
製造年 | 2020年 - |
製造数 | 19編成190両(予定)[2] |
運用開始 | 2021年8月7日[3] |
投入先 |
半蔵門線 東武日光線(東武動物公園駅 - 南栗橋駅間) 東武伊勢崎線(押上駅 - 久喜駅間) 東急田園都市線 |
主要諸元 | |
編成 | 10両編成 |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 | 直流1,500 V(架空電車線方式) |
最高運転速度 | 110 km/h |
設計最高速度 | 120 km/h |
起動加速度 | 3.3 km/h/s |
減速度(常用) | 3.5 km/h/s |
減速度(非常) | 4.5 km/h/s |
編成定員 | 1,508人 |
車両定員 |
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自重 | 26.7 - 32.8 t |
編成重量 | 298.4 t |
車体長 |
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車体幅 |
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車体高 |
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床面高さ | 1,140 mm |
車体 | アルミニウム合金製オールダブルスキン構体 (A-train) |
台車 |
ボルスタ付きモノリンク式空気バネ台車 FS-781形(全車共通) |
主電動機 | 全密閉式永久磁石同期電動機 (PMSM) |
主電動機出力 | 205 kW(16台/編成) |
駆動方式 | 平行軸歯形継手式(WN式) |
歯車比 | 99:14 (7.07) |
制御方式 | フルSiC-MOSFET素子適用VVVFインバータ制御(PGレス2レベルベクトル制御方式) |
制御装置 | 三菱電機製 MAP-214-15V336[4] |
制動装置 |
ATC連動電気指令式電空併用ブレーキ(回生ブレーキ併用) TISによる編成総括回生ブレンディング制御 |
保安装置 | 新CS-ATC・ATC-P・東武形ATS・無線列車制御システム (CBTC) |
備考 | 出典:交友社『鉄道ファン 2021年9月号』、電気車研究会『鉄道ピクトリアル 2021年9月号』 |
東京メトロ18000系電車(とうきょうメトロ18000けいでんしゃ)は、東京地下鉄(東京メトロ)半蔵門線用の通勤形電車。2021年(令和3年)8月7日より営業運転を開始した[3][5][6][7]。
概要
[編集]1980年から約40年に渡り活躍してきた8000系の老朽化に伴う置き換え用として、車両のさらなる安全・安心かつ高品質な輸送サービスを提供するため製造された[6][7]。半蔵門線では08系以来約18年ぶりの新型形式である[6][7]。
当系列が走行する半蔵門線はラッシュ時間帯は高頻度運行を行っていることや乗り入れ先の区間が多く占めることが特徴で、歴代車両は8000系に日本初のボルスタレス台車の使用、08系にアルミニウム合金製セミダブルスキン構体を使用するなど時代の先駆けとなる技術を取り入れたことが特徴となっている[8][9]。これらを踏まえ、歴代車両の遺伝子を継承するとともに、渋谷や表参道、清澄白河、押上など伝統と新しさが交じり合う街にさらなる活力を与え、幅広い利用者の乗車目的に寄り添う車両を目指して設計されている[10][11]。
2021年10月20日に日立製作所と共同でグッドデザイン賞を受賞した[12]。また、2022年5月26日に鉄道友の会よりローレル賞を受賞した(17000系との同時受賞)[13]。
車両概説
[編集]車体
[編集]同時期に製造した17000系と同様に[1]、アルミニウム合金を使用したダブルスキン構造を、上質化を目指すために接合には摩擦攪拌接合が採用されている[10][14]。これらを採用することで、高強度かつ歪みの少ない仕上がりとなっている[10][14]。また、構体の合金種別を極力A6005Cに統一することで、リサイクル性の向上を図っている[10][14]。中間車を例に挙げると、構体の質量約6,200 kgのうち約87%がA6005Cの合金を使用している[10][14]。17000系と仕様を極力揃えることで、補修部品などの共通化による将来的な保守コストの削減を図っている[1]。
エクステリアは、8000系や08系の端正な表情を受け継ぎ、前面や側面の形状に合わせて直線的な形状の前照灯を配置している[10][11]。併せて、ラインカラーのパープルを基調とした2色の識別帯を前面から側面に向かって流れるように配置することで、親しみやスタイリッシュな印象が感じられる外観としている[10][11]。先頭付近の側面の識別帯には半蔵門線の路線記号である「Z」のモチーフを入れている[10]。側面の識別帯はホームドアの高さを考慮して、8000系や08系のように側面中央部(腰部)だけでなく上部にも配置している[10]。側面肩部には車椅子スペース・ベビーカースペースを表すピクトグラムが配置されている[10][11]。
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行先表示器
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直通先の表示(東武線内)
車内
[編集]客室設備
[編集]客室内はラインカラーである紫色(パープル)を基本とし、天井や床敷物、座席、つり革に採り入れている[10][15]。伝統と新しさが交じり合う街や多様な人々の活気を表現するために、車内の床から天井に向かって明るい色となるようなトーンオントーン配色を採用している[10][15]。床面と座面を同じ色で構成することで地下区間においても、開放感が感じられるようにしている[15]。
10000系以来引き続いて荷棚はアルミ製のフレームに強化ガラスをはめ込んだものを、連結面貫通扉には強化ガラス製の扉を採用している[10][15]。また、袖仕切は17000系と同様に、全体が強化ガラスを使用し、下部を織物を想起するような柄を引用しながらも、単調にならならないように、水玉模様や斜線などを並べてリズムを作っている[16]。この柄は連結面貫通扉の衝突防止表示にも使用されている[16]。連結面貫通扉は開扉アシスト機能を付加することで、軽やかな開操作を可能とし、エアクッション付きドアクローザを採用することで、開閉時の安全に配慮した構造としている[17]。
座席はドア間が7人がけ、車端部が3人がけのロングシートで、1人分の掛け幅は460 mm(8000系は430 mm)[18]、モケットを紫色としたバケットシートを採用している[19][20]。表地は織物を想起させるような柄を採用し、アラミド繊維を織り込むことで耐久性の向上を図っている(龍村美術織物製)[21][19][20]。
バリアフリー向上のため、床面の高さを8000系と比較し、1,200 mmから1,140 mmに低減するとともに、乗降ドア出入口下部の形状をホーム側に約10°傾斜させることでホームと車両との段差の低減を図っている[17]。また、車椅子やベビーカーの利用者も乗降しやすいように、フリースペース近くの乗降ドアのドアレールに切り欠き加工を行っている[17][20]。多様なニーズに対応するため、全ての車両の車端部にフリースペースを設けている[17][20]。車端部ではつり革の高さを床面から1,580 mm(一般部は1,660 mm)、荷棚の高さを1,700 mm(一般部は1,750 mm)に設定している[17][20]。
利用者に安心感を提供するため、全車両のドア上の鴨居部に、セキュリティカメラを千鳥状に1両あたり4箇所設置されている[22][23]。
乗降ドアは近接センサを新設し、閉扉約50 mm手前から弱め制御を開始させることで完全閉時の衝撃軽減とともに、ドアに挟みこまれた手荷物などを引き抜きやすくしている[24]。また、開扉操作によって、手荷物などが戸袋に引き込まれることを防止するため、新たに絞り電磁弁を追加し、開扉時に用いる空気流入量を絞り込むことで急激な開扉動作を抑制している[24]。戸先ゴムは、全長にわたって戸挟み検知精度を向上しつつも、閉扉時の衝撃力が不必要に高くならないように検証した上で、厚さ5 mm・硬度80°と厚さ15 mm・硬度40°のゴムを合わせた2層くびれ構造のものを採用している[24]。
2021年11月1日から2022年3月上旬まで、空気中に浮遊するウイルスや菌を抑制する機能を持つ空気循環式紫外線清浄機の搭載試験を行った[25]。
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車内全景
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優先席付近
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フリースペース
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ドア上のLCD
乗務員室
[編集]設計工数を低減するため、同時期に製造されている有楽町線・副都心線用の17000系と共通化している[19][26]。但し、半蔵門線に運行するのに必要な機器は乗務員の取り扱いを考慮して配置している[19][26]。T字形ワンハンドルマスコンの左横には、将来のATO化を見据え、出発ボタンが配置されている[19][26]。デフロスターを運転士前面ガラスだけでなく、貫通扉にも設けることで前方視界向上を図っている[19][26]。
走行機器
[編集]主電動機には1時間定格出力205 kWの東芝製の永久磁石同期電動機を採用している[27][28]。地下鉄区間は、駅間が短いことや急勾配・急曲線が多いこと、高加速・高減速を高頻度使用することの3つの特徴があるため、高いトルク出力が必要となるが、相互直通運転先を考慮し設計最高速度120 km/hを満たすため、歯数比を7.07にしている[27][28]。これらを踏まえた上で全体的に高効率となるよう調整することで、従来の誘導電動機の規約効率が8000系制御更新車の約92%に対して、約96%に向上している[27][28]。
ブレーキ制御は、編成全体の回生ブレーキを最大限に活用し、雨天時に滑走を抑制するため、ブレーキ指令に対して編成全体で必要なブレーキ力と全てのM車で回生可能なブレーキ力をTISで集約し、M車の回生ブレーキだけでブレーキ力が不足する場合は、全てのT車の空気ブレーキだけで補足する「編成統括ブレーキ制御方式」を採用している[29][30]。雨天時はワイパーの作動を検知することで、雨天の影響を受けやすい先頭車から後方車に向けてブレーキ力を傾斜配分し、車両の滑走を軽減する制御を付与されている[29][30]。
台車は、低速・急曲線区間と比較的高速で走行する直線区間の両方が存在する半蔵門線で走行することから、曲線通過性能と直進走行安定性が両立出来るように配慮している[22][23]。外部要因等により、万一脱線した際に脱線以上の被害を拡大させないために「脱線検知装置」を搭載している[24]。
編成
[編集]号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
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形式 | 18100形 (CT1) |
< 18200形 (M) |
18300形 (T) |
< 18400形 (M) |
18500形 (Tc1) |
18600形 (Tc2) |
< 18700形 (M) |
18800形 (T) |
< 18900形 (M) |
18000形 (CT2) |
搭載機器 | VVVF | Bt,CP | VVVF | SIV,CP | SIV | VVVF | Bt,CP | VVVF | ||
動輪軸 | ○○ ○○ | ●● ●● | ○○ ○○ | ●● ●● | ○○ ○○ | ○○ ○○ | ●● ●● | ○○ ○○ | ●● ●● | ○○ ○○ |
自重 | 28.5t | 32.6t | 26.7t | 32.8t | 29.1t | 28.2t | 32.8t | 26.7t | 32.6t | 28.4t |
車内設備 | ♿︎ | ♿︎ | ♿︎ | ♿︎ | ♿︎ | ♿︎ | ♿︎ | ♿︎ | ♿︎ | ♿︎ |
車両番号 | 18101 : |
18201 : |
18301 : |
18401 : |
18501 : |
18601 : |
18701 : |
18801 : |
18901 : |
18001 : |
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脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c “「半蔵門線」新車に見る東京メトロの車両開発戦略 東急、東武との共通化はどの程度重視される?”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社. p. 2 (2021年6月14日). 2021年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月25日閲覧。 アーカイブ 2021年7月25日 - ウェイバックマシン
- ^ 『半蔵門線に新型車両18000系を導入します 2021年度上半期 営業運転開始予定』(PDF)(プレスリリース)東京地下鉄、2020年9月30日。オリジナルの2020年9月30日時点におけるアーカイブ 。2021年7月25日閲覧。
- ^ a b 『半蔵門線新型車両18000系いよいよデビュー! 2021年8月7日(土)より運行開始します!』(PDF)(プレスリリース)東京地下鉄、2021年8月7日。オリジナルの2021年8月7日時点におけるアーカイブ 。2021年8月7日閲覧。
- ^ 編集部「東京メトロ半蔵門線 18000が8月から営業運転開始」『Rail Magazine』第38巻第5号(通巻450号)、ネコ・パブリッシング、2021年7月19日、67頁。
- ^ “東京メトロ半蔵門線の新型車両「18000系」公開 車内は紫に”. 毎日新聞. (2021年6月2日). オリジナルの2021年6月4日時点におけるアーカイブ。 2021年7月25日閲覧。
- ^ a b c 『鉄道ファン』通巻725号、p.48。
- ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、p.116。
- ^ 『鉄道ファン』通巻725号、pp.48 - 49。
- ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、pp.116 - 117。
- ^ a b c d e f g h i j k l m 『鉄道ファン』通巻725号、p.49。
- ^ a b c d 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、p.117。
- ^ 『2021年度グッドデザイン賞を受賞!「半蔵門線 新型車両18000系」』(PDF)(プレスリリース)東京地下鉄/日立製作所、2021年10月20日。オリジナルの2021年10月20日時点におけるアーカイブ 。2021年10月20日閲覧。
- ^ 『東京メトロ有楽町線・副都心線新型車両17000系及び 半蔵門線新型車両18000系車両が「ローレル賞」を受賞しました! サービス設備の更なるレベルアップ等が評価されました!』(PDF)(プレスリリース)東京地下鉄、2022年5月26日。オリジナルの2022年5月26日時点におけるアーカイブ 。2022年5月26日閲覧。
- ^ a b c d 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、pp.118 - 119。
- ^ a b c d 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、pp.117 - 118。
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、p.118。
- ^ a b c d e 『鉄道ファン』通巻725号、pp.50 - 51。
- ^ “東京メトロ半蔵門線の新型車両「18000系」登場! 紫1色から「いろんな紫」に そのワケは”. 乗りものニュース (2021年6月2日). 2021年8月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月1日閲覧。 アーカイブ 2021年8月1日 - ウェイバックマシン
- ^ a b c d e f 『鉄道ファン』通巻725号、p.50。
- ^ a b c d e 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、p.118。
- ^ “東京地下鉄株式会社18000系 座席シート地に当社生地採用”. 龍村美術織物 (2021年12月9日). 2022年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月1日閲覧。 アーカイブ 2022年6月1日 - ウェイバックマシン
- ^ a b 『鉄道ファン』通巻725号、p.53。
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、p.123。
- ^ a b c d 『SUBWAY』通巻231号、p.39。
- ^ 『空気中のウイルス・菌を抑制する機能を持つ 空気循環式紫外線清浄機の搭載試験を実施します』(PDF)(プレスリリース)東京地下鉄、2021年11月1日。オリジナルの2021年11月1日時点におけるアーカイブ 。2021年11月1日閲覧。
- ^ a b c d 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、p.119。
- ^ a b c 『鉄道ファン』通巻725号、p.51。
- ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、pp.120 - 121。
- ^ a b 『鉄道ファン』通巻725号、p.52。
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻989号、p.121。
参考文献
[編集]- 川村哲也(東京地下鉄鉄道本部車両部設計課)「東京地下鉄18000系」『鉄道ファン』第61巻第9号(通巻725号)、交友社、2021年9月1日、48 - 52頁。
- 高山滋之(東京地下鉄鉄道本部車両部設計課)「東京地下鉄18000系」『鉄道ピクトリアル』第71巻第9号(通巻989号)、電気車研究会、2021年9月1日、116 - 123頁、ISSN 0040-4047。
- 中村大樹(東京地下鉄鉄道本部車両部設計課)「東京メトロ半蔵門線18000系の概要」(PDF)『SUBWAY(日本地下鉄協会報)』第231号、日本地下鉄協会、2021年11月26日、35 - 39頁、ISSN 0289-5668、 オリジナルの2022年1月9日時点におけるアーカイブ。