「穀物」の版間の差分
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[[File:Les Plantes Cultivades. Cereals. Imatge 119.jpg|thumb|穀物の粒: (上) [[トウジンビエ]]、[[米]]、[[大麦]]<br/>(中) [[モロコシ]]、[[トウモロコシ]]、[[オーツ麦]]<br/>(下) [[キビ]]、[[小麦]]、[[ライ麦]]、[[ライ小麦]]]] |
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[[ファイル:Champ de blé Seine-et-Marne.jpg|thumb|いわゆる[[コムギ|小麦]]畑。フランスで撮影。]] |
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'''穀物'''(こくもつ、{{Lang-en-short|cerealsあるいはgrain}})は、[[植物]]から得られる[[食材]]の総称の一つで、[[デンプン|澱粉]]質を主体とする[[種子]]を[[食品|食用]]とするもの。狭義には[[イネ科]]作物の種子([[米]]や[[麦]]や[[トウモロコシ]]など)のみを指し、広義にはこれに[[マメ科]]作物の種子([[豆]])や他科の作物の種子を含む<ref name="sakumotsugakuyougojiten_p241"/><ref name="maruzensyokuhinsougoujiten_p393">『丸善食品総合辞典』([[丸善雄松堂|丸善]] 1998年)p.393</ref>。 |
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[[ファイル:Lemont rice.jpg|thumb|[[イネ]]の穂。]] |
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[[ファイル:Kisoroszi, zrající kukuřice.JPG|thumb|ハンガリーで撮影された[[トウモロコシ]]。]] |
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[[ファイル:Kathmandu Durbar Square beans.jpg|thumb|カトマンズで売られている様々な[[豆]]類。]] |
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== 概要 == |
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'''穀物'''(こくもつ)は、[[植物]]から得られる[[食材]]の総称の1つで、[[デンプン|澱粉]]質を主体とする[[種子]]を[[食品|食用]]とするもの。 |
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[[イネ科]]作物の種子を'''禾穀類'''(かこくるい、''Cereals''、'''シリアル''')<ref name="sakumotsugakuyougojiten_p241">日本作物学会編『作物学用語事典』([[農山漁村文化協会]] 2010年)p.241</ref>といい、マメ科作物の種子を'''菽穀類'''(しゅこくるい、''Pulses'')<ref name="sakumotsugakuyougojiten_p241"/>という。広義の穀物のうち、禾穀類の種子([[単子葉植物]]であるイネ科作物の種子)と似ていることから穀物として利用される[[双子葉植物]]の種子をまとめて[[擬穀類|'''擬禾穀類'''あるいは'''擬穀類''']](疑似穀類、''Pseudocereals'')と呼ぶ<ref name="maruzensyokuhinsougoujiten_p393"/><ref name="sakumotsugakuyougojiten_p242">日本作物学会編『作物学用語事典』(農山漁村文化協会 2010年)p.242</ref><ref name="maruzensyokuhinsougoujiten_p268">『丸善食品総合辞典』(丸善 1998年)p.268</ref>。擬穀類には、[[ソバ]]([[タデ科]])、[[アマランサス]]([[ヒユ科]])、[[キヌア]](キノア、[[アカザ科]])などが含まれる<ref name="maruzensyokuhinsougoujiten_p393"/><ref name="syokuryounohyakkajiten_p18">『食料の百科事典』(丸善 2001年)p.18</ref>。 |
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[[国連食糧農業機関]]では禾穀類に擬穀類を加えシリアルとまとめている。[[豆類|豆]]は別集計、大豆はさらに油糧作物として集計している。 |
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生産量では[[トウモロコシ]]、[[小麦]]、[[米]]が突出しており<ref>[https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0112/05.html#:~:text=%E4%B8%BB%E9%A3%9F%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E4%BA%BA%E3%80%85%E3%81%8C,%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%A2%EF%BC%883.8%E5%84%84%E3%83%88%E3%83%B3%EF%BC%89%E3%80%82 世界各国の主食は何ですか。]農林水産省(2021年6月27日閲覧)</ref>、これら3種は[[世界三大穀物]]と呼ばれている<ref name="saishinnougyougijutsujiten_p105">農業・生物系特定産業技術研究機構編『最新農業技術事典』(農山漁村文化協会 2006年)p.105</ref>。 |
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[[イネ科]]作物の種子を'''禾穀類'''(かこくるい、''Cereals'')<ref name="sakumotsugakuyougojiten_p241">日本作物学会編『作物学用語事典』農山漁村文化協会 p.241 2010年</ref>といい、[[マメ科]]作物の種子を'''菽穀類'''(しゅこくるい、''Pulses'' )<ref name="sakumotsugakuyougojiten_p241"/>という。そして、穀物は狭義にはイネ科作物の種子(禾穀類)のみを指し、広義にはこれにマメ科作物の種子(菽穀類)や他科の作物の種子を含む<ref name="sakumotsugakuyougojiten_p241"/><ref name="maruzensyokuhinsougoujiten_p393">『丸善食品総合辞典』丸善 p.393 1998年</ref>。広義の穀物のうち、禾穀類の種子([[単子葉植物]]であるイネ科作物の種子)と似ていることから穀物として利用される[[双子葉植物]]の種子をまとめて'''擬禾穀類'''あるいは'''擬似穀類'''(疑似穀類、''Pseudocereals'')と呼ぶ<ref name="maruzensyokuhinsougoujiten_p393">『丸善食品総合辞典』丸善 p.393 1998年</ref><ref name="sakumotsugakuyougojiten_p242">日本作物学会編『作物学用語事典』農山漁村文化協会 p.242 2010年</ref><ref name="maruzensyokuhinsougoujiten_p268">『丸善食品総合辞典』丸善 p.268 1998年</ref>。擬似穀類には、[[ソバ]]([[タデ科]])、[[アマランサス]]([[ヒユ科]])、[[キヌア]](キノア、[[アカザ科]])などが含まれる<ref name="maruzensyokuhinsougoujiten_p393"/><ref name="syokuryounohyakkajiten_p18">『食料の百科事典』丸善 p.18 2001年</ref>。 |
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穀物が含む[[栄養素]]は主に[[炭水化物]]である。[[タンパク質]]や[[脂肪]]も含まれるものの穀物の摂取だけでは不足しがちなため、多くの文化圏において穀物はタンパク質を補うための豆類とセットで栽培され、消費されてきた<ref>「世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理」p24-25 バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント著 山本紀夫監訳 柊風舎 2010年1月20日第1刷</ref>。たとえば、[[アジア]]地域における「[[米]]と[[豆]]」、[[中近東]]における「[[小麦]]と豆」、[[アメリカ州]]における「[[トウモロコシ]]と豆」の組み合わせである<ref>国際連合食糧農業機関、国際食糧農業協会訳・編集『たんぱく質の品質評価 : FAO/WHO合同専門家協議報告』国際食糧農業協会、1992年。 ''[http://apps.who.int/iris/handle/10665/38133Protein Quality Evaluation, Report of the Joint FAO/Who Expert Consultation]'', 1991 ISBN 978-9251030974</ref>。 |
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== 概要 == |
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穀物は、その栽培の容易さと保存性の高さから、多くのものは生活に必要なエネルギーを得る[[主食]]の材料として用いられている。[[イモ]]類などの根菜類や[[バナナ]]などを主食とする地域を除く、世界中の大半の地域において穀物は食糧の中心部分を占めている。特に生産量の多い[[コムギ|小麦]]・[[イネ]]([[米]])・[[トウモロコシ]]は[[世界三大穀物]]と呼ばれている<ref name="saishinnougyougijutsujiten_p105">農業・生物系特定産業技術研究機構編『最新農業技術事典』農山漁村文化協会 p.105 2006年</ref>。また、特に生産量が多く[[主食]]として扱われることも多いイネ、ムギ類、トウモロコシを主穀と呼び、その他の穀物を[[雑穀]]と呼んで区別することもある。[[中国]]や[[日本]]においては、特に主要な五種の穀物を[[五穀]]と呼び重視してきたが、この五穀の内容は時代や書物によって様々であり、主要穀物の総称としての意味合いが強かった。現代日本においては、コメ、ムギ、[[アワ]]、[[マメ]]、[[キビ]]または[[ヒエ]]を指して五穀と呼ぶことが多い<ref> 「飲食事典」本山荻舟 平凡社 p197 昭和33年12月25日発行</ref>が、古来日本の主食として神聖視されてきたコメと他の4種、とくに雑穀扱いされるアワ、キビ、ヒエとの扱いの差は大きく、同格とみなされているわけではない。 |
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穀物は植物の種子である。種子は植物の生存戦略の上で、外界の環境変化に強く、こと乾燥状態に対する抵抗力を持っている。また、その多くでは堅い殻に覆われており、[[昆虫]]など他の動物には消費しにくい性質を持つ。こういった性質は[[人間]]にとっても必要な時まで保存し、好きな時に加工して食べる、ひいては大量に栽培する[[農業]]を行なう上で便利な性質であり、大規模に栽培することで大量に得やすく、また[[貯蔵]]のみならず[[輸送]]の上でも便利なことから、穀物栽培の開始は人口の集中をもたらした。こうして[[都市]]が誕生し、周辺の農地でさらに大規模な穀物栽培を行って周囲を[[穀倉地帯]]とすることで都市部の生活者が必要とする食糧を賄い、それは更に社会の[[分業]]による高度化を可能にした。このように、穀物の大規模栽培開始は[[文明]]を生み出す重要な要素となった。 |
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|ファイル:Kisoroszi, zrající kukuřice.JPG|[[トウモロコシ]]([[ハンガリー]]で撮影) |
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|ファイル:Champ de blé Seine-et-Marne.jpg|[[フランス]]の[[コムギ|小麦]]畑 |
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|ファイル:Lemont rice.jpg|[[イネ]]の穂 |
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|ファイル:Kathmandu Durbar Square beans.jpg|様々な[[豆]]類([[カトマンズ]]にて) |
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== 歴史 == |
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穀物は[[炭水化物]]のみならず、[[タンパク質]]も含んでいる。穀物のアミノ酸のバランスは理想的ではないが、多くの国での伝統的な組み合わせで欠けたアミノ酸を補い合い良好なたんぱく質の品質となり、たとえば、[[アジア]]地域における[[米]]と[[豆]]、[[中近東]]における[[小麦]]と豆、[[アメリカ]]における[[トウモロコシ]]と豆である<ref>国際連合食糧農業機関、国際食糧農業協会訳・編集 『たんぱく質の品質評価 : FAO/WHO合同専門家協議報告』国際食糧農業協会、1992年。 ''[http://apps.who.int/iris/handle/10665/38133Protein Quality Evaluation, Report of the Joint FAO/Who Expert Consultation]'', 1991 ISBN 978-9251030974</ref>。また[[脂肪]]も含まれており、現代では米・トウモロコシなどの油は産業上重要である。 |
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[[File:Trilla del trigo en el Antiguo Egipto.jpg|thumb|right|220px|[[古代エジプト]]で描かれた小麦の収穫]] |
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|image1 = Setaria viridis 1.jpg |
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|caption1 = アワの原種である[[エノコログサ]]の穂。栽培種であるアワに比べ、種子の脱落性があり実が小さく数も少ない。 |
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|alt1 = エノコログサ(猫じゃらし)の穂の画像 |
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|image2 = Foxtailmillet.jpg |
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|caption2 = アワの穂。原種のエノコログサに比べ、実が大きく数も多い。 |
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|alt2 = アワの穂の画像 |
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現代において世界で栽培される穀物は、ほぼ7地域([[近東]]、[[アフリカ]]([[サヘル]]地帯及び[[エチオピア高原]])、[[中央アジア]]、中国[[雲南省]]~[[東南アジア]]~[[北インド|インド北部]]、[[華北|中国北部]]、[[中央アメリカ]]、南米の[[アンデス]]山脈)を起源としている。これらの地域は[[農耕]]文明の発祥地と重なっている<ref name="Shokuyousakumotu">国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.3</ref>。 |
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穀物はそのほとんどが[[一年生植物|一年生]]または[[二年生植物|二年生]]の[[草本植物]]である。一年生であるイネなど多くの穀物は春に種をまいて秋に収穫するのが一般的な生産サイクルであり、熱帯で栽培される穀物はすべてこのサイクルをとっている。それに対し、二年生植物の多く主に寒冷な地域で栽培される[[ムギ]]の場合、種子を秋にまいて越年させ、翌年の春から夏にかけて収穫することが多い。これは、コムギなどでは本来発芽のためにある程度の低温期間が継続する必要があり、春に種子をまいては発芽しないためである。しかしその後、[[突然変異]]によって発芽に低温期間を必要としない品種が誕生し、気温が寒冷すぎて種子が冬を越せない地域などで使用されるようになった。コムギの場合、前者の品種を秋播きコムギまたは冬播きコムギ(冬小麦)、後者を春播きコムギ(春小麦)と称する。こうした本来秋播きである穀物としてはコムギのほかオオムギ、エンバク、ライムギなどが存在するが、いずれの穀物においてもすべて春まきの品種が開発されており、おもに寒冷地において栽培されている。 |
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;栽培化 |
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== 起源 == |
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[[近東]]地域([[中近東]])は穀物の[[栽培]]化が世界で最も早かった地域であり、コムギ、[[オオムギ]]、[[ライムギ]]、[[エンバク]]といった世界でも重要な地位を占める穀物が栽培化された地域である。アフリカの[[サヘル]]から[[エチオピア高原]]にかけては、世界に広まったモロコシをはじめ、[[シコクビエ]]や[[トウジンビエ]]、[[フォニオ]]や[[テフ]]などが栽培化された。中央アジアでは[[ソラマメ]]、[[ヒヨコマメ]]、[[レンズマメ]]が栽培化され、中国雲南省~東南アジア~インド北部においてはイネを筆頭として[[ソバ]]や[[ハトムギ]]が、中国北部においては[[キビ]]、[[ヒエ]]、[[ダイズ]]、[[アズキ]]が栽培化された。中央アメリカにおいてはトウモロコシが栽培化された。南アメリカ・[[アンデス]]においては、[[アマランサス]]や[[キノア]]の栽培化が行われた<ref name="Shokuyousakumotu" />。 |
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[[File:Setaria viridis 1.jpg|thumb|アワの原種である[[エノコログサ]]の穂。栽培種であるアワに比べ、種子の脱落性があり実が小さく数も少ないという特徴がある]] |
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[[File:Foxtailmillet.jpg|thumb|アワの穂。原種のエノコログサに比べ、実が大きく数も多いことがわかる]] |
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現代において世界で栽培される穀物はほぼ、[[中国]]北部、中国[[雲南省]]~[[東南アジア]]~[[インド]]北部、[[中央アジア]]、[[近東]]、[[アフリカ]]([[サヘル]]地帯及び[[エチオピア高原]])、[[中央アメリカ]]、南米の[[アンデス]]山脈の7地域を起源としている。これらの地域は農耕文明の発祥地と重なっている。中国北部においてはキビ、ヒエ、ダイズ、アズキが、中国雲南省~東南アジア~インド北部においてはイネを筆頭としてソバやハトムギが、中央アジアではソラマメ、ヒヨコマメ、レンズマメが栽培化されている。近東地域は穀物の栽培化が世界で最も早かった地域で、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバクといった世界でも重要な地位を占める穀物が栽培化された地域である。アフリカのサヘルからエチオピア高原にかけては、世界に広まったモロコシをはじめ、シコクビエやトウジンビエ、フォニオやテフなどが栽培化された。中央アメリカにおいてはトウモロコシが栽培化された。南アメリカ・アンデスにおいては、アマランサスやキノアの栽培化が行われた<ref>「新訂 食用作物」p3 国分牧衛 養賢堂 2010年8月10日第1版</ref>。 |
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栽培化される前は、穀物の多くは播種のために熟すると種子が穂から脱落する性質を持っていた。人類が野生の穀物を利用し |
栽培化される前は、穀物の多くは[[播種]]のために熟すると種子が穂から脱落する性質([[脱粒性]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E8%84%B1%E7%B2%92%E6%80%A7-1183354 【脱粒性】]</ref>)を持っていた。人類が野生の穀物を利用し始めた際には逆にそれを利用し、穂の下に容器を置いて穂をゆすり身を振るい落としたり、種子がまだ固定している未熟なうちに刈り取ったりするなどの手段を取っていた。しかしこうした方法には限界があり、やがて人類は穂が熟しても種子の脱落しない[[個体]]を選抜して栽培するようになり、穀物は[[非脱粒性]]<ref>[https://kotobank.jp/word/%E9%9D%9E%E8%84%B1%E7%B2%92%E6%80%A7-1399083 【非脱粒性】]</ref>を獲得していった。このほかにも可食部分の肥大化など、選抜によってより利用しやすい形へと植物自体の性質が変化していった<ref>国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.5</ref>。 |
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野生の穀物の粒は小さく、収穫しにくく、さらに加工しなければ消化もしにくいため、広く穀物を利用するようになるには[[石器]]の登場が必要であった<ref name="pmid15699220">{{cite journal |authors=Cordain L, [[:en:Stanley Boyd Eaton|Eaton SB]], Sebastian A, et al. |title=Origins and evolution of the Western diet: health implications for the 21st century |journal=Am. J. Clin. Nutr. |volume=81 |issue=2 |pages=341–54 |year=2005 |pmid=15699220 |doi= |url=http://ajcn.nutrition.org/content/81/2/341.long}}</ref>。石を原料とした器は[[旧石器時代]]のうち、4万年から1万2千年ほど前の間に出現したが、定期的な穀物の収穫は1万2千年前の |
野生の穀物の粒は小さく、収穫しにくく、さらに加工しなければ消化もしにくいため、広く穀物を利用するようになるには[[石器]]の登場が必要であった<ref name="pmid15699220">{{cite journal |authors=Cordain L, [[:en:Stanley Boyd Eaton|Eaton SB]], Sebastian A, et al. |title=Origins and evolution of the Western diet: health implications for the 21st century |journal=Am. J. Clin. Nutr. |volume=81 |issue=2 |pages=341–54 |year=2005 |pmid=15699220 |doi= |url=http://ajcn.nutrition.org/content/81/2/341.long}}</ref>。石を原料とした器は[[旧石器時代]]のうち、4万年から1万2千年ほど前の間に出現したが、定期的な穀物の収穫は1万2千年前の[[ナトゥーフ文化|ナトゥフ文化]]にみられる<ref name="pmid15699220"/>。ナトゥフ文化では野生の小麦、大麦、ライ麦を収穫し、[[ヤンガードリアス]]期に畑を作り穀物を蔵に保管するようになると、穀物を守るようにして野生の[[猫]]もそこに集まる[[ネズミ]]を狙った<ref>ジョン・ブラッドショー『猫的感覚―動物行動学が教えるネコの心理』[[早川書房]]、2014年</ref>。 |
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穀物の栽培化においては、もともと栽培化されていた穀物とは別に、それらの穀物の栽培の過程において畑に紛れ込んだ[[雑草]]が、本来の穀物に紛れて、または押しのけて成長する中で穀物として栽培されるようになっていったものがある。これらは二次作物と呼ばれ、コムギの栽培過程で作物化していったライムギやエンバクなどがあてはまる<ref>[[中尾佐助]]『栽培植物と農耕の起源』[[岩波書店]] |
なお穀物の[[栽培]]化においては、もともと栽培化されていた穀物とは別に、それらの穀物の栽培の過程において畑に紛れ込んだ[[雑草]]が、本来の穀物に紛れて、または押しのけて成長する中で穀物として栽培されるようになっていったものがある。これらは二次作物と呼ばれ、コムギの栽培過程で作物化していったライムギやエンバクなどがあてはまる<ref>[[中尾佐助]]『栽培植物と農耕の起源』([[岩波書店]] 1966年1月25日第1刷)154頁</ref>。{{Efn|強勢雑草として忌み嫌われるものもあり、日本では、イネの水田におけるヒエはその例として知られる。}} |
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栽培化後も、農法の進歩は続いていた。たとえば上記のとおり穀物が非脱落性を獲得したばかりの場合、穀物の成熟度はその穂ごとに異なるため、熟した穂を選んで収穫する穂刈りが行われていた。しかしやがて農法の進歩によって同じ農地の穀物の成熟度をほぼ同じに調整することが可能となると、穂ではなく茎を根元から収穫する根刈りが主流となっていった。 |
栽培化後も、農法の進歩は続いていた。たとえば上記のとおり穀物が非脱落性を獲得したばかりの場合、穀物の成熟度はその穂ごとに異なるため、熟した穂を選んで収穫する穂刈りが行われていた。しかしやがて農法の進歩によって同じ農地の穀物の成熟度をほぼ同じに調整することが可能となると、穂ではなく[[茎]]を根元から収穫する根刈りが主流となっていった<ref>[[中尾佐助]]『栽培植物と農耕の起源』p10-11([[岩波書店]] 1966年1月25日第1刷)</ref>。 |
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栽培化された穀物はやがて起源地から広がっていくが、この過程において、コムギ、イネ、トウモロコシの三種の穀物が突出して栽培されるようになっていった。コムギは栽培化当初は加工のしやすいオオムギに比べ二義的な穀物だったと考えられているが、やがて[[粥]]ではなく[[パン]]を製造するようになると、[[グルテン]]を持つコムギは |
栽培化された穀物はやがて起源地から広がっていくが、この過程において、コムギ、イネ、トウモロコシの三種の穀物が突出して栽培されるようになっていった。コムギは栽培化当初は加工のしやすいオオムギに比べ二義的な穀物だったと考えられているが、やがて[[粥]]ではなく[[パン]]を製造するようになると、[[グルテン]]を持つコムギは他の穀物のパンよりはるかに美味なパンを作ることができ、また加工の幅もほかの穀物とは比べ物にならないくらい広がったため、[[旧大陸]]のパン食文化圏においてはほぼどこでもコムギが第一の穀物とされるようになっていった<ref>「小麦の機能と科学」(食物と健康の科学シリーズ)p2-3 長尾精一 朝倉書店 2014年9月10日初版第1刷</ref>。 |
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穀物は多くの国家において食糧生産の根幹であり、そのため栽培化以降も各地で[[品種改良]]の努力が続けられてきた。[[19世紀]]以降には農法の改善によって[[農業革命]]が起き、またこの |
穀物は多くの国家において食糧生産の根幹であり、そのため栽培化以降も各地で[[品種改良]]の努力が続けられてきた。[[19世紀]]以降には農法の改善によって[[農業革命]]が起き、またこの頃から科学的な[[品種改良]]の理論が確立して各地で近代的な育種が行われるようになり、穀物の収量は激増した<ref>国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.6</ref>。特に20世紀後半に入ると、肥料の多用に耐えられる穀物品種の開発などによっていわゆる[[緑の革命]]が起き、穀物の反収は激増して世界人口の急増を支えることに成功した<ref>「食 90億人が食べていくために」(サイエンス・パレット025)p144-147 John Krebs著 伊藤佑子・伊藤俊洋訳 丸善出版 平成27年6月25日発行</ref>。 |
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===精製加工=== |
=== 精製加工 === |
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[[ファイル:PeiligangStoneRollerAndQuern.JPG|サムネイル|右|サドルカーンと呼ばれる石で作られた[[臼]] |
[[ファイル:PeiligangStoneRollerAndQuern.JPG|サムネイル|右|サドルカーンと呼ばれる石で作られた[[臼]]]] |
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工業 |
工業革命以前は小麦粉などを粉にするには石臼が使われ、手で選別処理をしなければ[[ふすま]](表皮)や[[胚芽]]を完全に除去することは不可能であった<ref name="pmid15699220"/>。19世紀後半には、そうした処理が自動化され高度に精製された穀物が広く消費されるようになった<ref name="pmid15699220"/>。しかし工業の発達は穀物の精製技術を向上させる一方で、[[食物繊維]]、[[ビタミン]]や[[ミネラル]]を損失させることで摂取量を減少させており、健康に影響を及ぼしていることが考えられる<ref name="pmid15699220"/>。 |
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1970年代後半には、クロマトグラフィー果糖濃縮技術の出現で[[異性化糖]](高果糖コーンシロップ、HFCS)の大量生産を可能とした<ref name="pmid15699220"/>。 |
1970年代後半には、[[クロマトグラフィー]][[果糖]]濃縮技術の出現で[[異性化糖]](高果糖コーンシロップ、HFCS)の大量生産を可能とした<ref name="pmid15699220"/>。 |
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== 生産 == |
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[[国連食糧農業機関]](FAO)の穀物の世界需給予測によると、2021年度の生産量は30億0663万トンと初めて30億トン台に乗り、貿易量は5億7959万トン、13.6億トンが食用、9.9億トンが飼料であった<ref name="FAOSTATprod"/><ref>「穀物生産28億トン 過去最高見通し」『[[日本農業新聞]]』2021年6月9日2面</ref>。以下に[[1961年]](FAO統計が利用可能な最初の年)以降の穀物生産量とその推移を示す<ref name="prodstat">{{cite web | url=http://faostat.fao.org/site/567/DesktopDefault.aspx | title=ProdSTAT | work=FAOSTAT | accessdate=2006-12-26}}</ref>。[[2003年]]にはトウモロコシ、コメ、コムギの3大穀物で世界の穀物生産の87%、世界の食物カロリーの43%を占めていた<ref name="prodstat"/>。[[緑の革命]]の影響を受けた3大穀物の生産量が爆発的に増加しているのに対し、ライムギとエンバクの生産量は1960年代に比べて大幅に減少している。 |
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{{Gallery |
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|width=260px |
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|File:Maize yields, OWID.svg|世界のトウモロコシ生産量 |
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|File:RiceYield.png|世界の米生産量 |
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|File:WheatYield.png|世界の小麦生産量 |
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}} |
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{|class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small" |
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|+ 穀物生産の推移(百万トン)<ref name="FAOSTATprod">国連食糧農業機関 [https://www.fao.org/faostat/en/#data/QCL Crops and Livestock Products] </ref><ref>FAOSTAT [https://www.fao.org/faostat/en/#data/FBS Food Balances (2010-)] </ref> |
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! |
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!1961 |
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!1981 |
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!2001 |
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!2020 |
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!2021 |
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!2001年比 |
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!備考 |
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|トウモロコシ |
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|205.03 |
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|446.77 |
|||
|615.14 |
|||
|1,163.00 |
|||
|1,210.24 |
|||
|1.97 |
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|総生産の58%飼料、食用13%<ref>20年、飼料6.7億トン、食用1.5億トン、非食用2.2億トン。輸出2.0億トン</ref> |
|||
|- |
|||
|米 |
|||
|215.65 |
|||
|410.08 |
|||
|600.25 |
|||
|769.23 |
|||
|787.29 |
|||
|1.31 |
|||
|大半81%食用<ref>20年、飼料4111万トン、食用6.1億トン、非食用2087万トン。輸出6850万トン</ref> |
|||
|- |
|||
|小麦 |
|||
|222.36 |
|||
|449.63 |
|||
|588.24 |
|||
|756.95 |
|||
|770.88 |
|||
|1.31 |
|||
|68%が食用、飼料16%<ref>20年、飼料1.2億トン、食用5.2億トン、非食用4532万トン。輸出2.4億トン</ref> |
|||
|- |
|||
|オオムギ |
|||
|72.41 |
|||
|149.60 |
|||
|140.59 |
|||
|157.71 |
|||
|145.62 |
|||
|1.04 |
|||
|58%が飼料、加工19%(麦酒など)<ref>20年、飼料9137万トン、食用838万トン、非食用173万トン。輸出3007万トン</ref> |
|||
|- |
|||
|モロコシ |
|||
|40.93 |
|||
|73.28 |
|||
|59.79 |
|||
|58.92 |
|||
|61.36 |
|||
|1.03 |
|||
|50%が食用、飼料34% |
|||
|- |
|||
|キビ亜科 |
|||
|25.71 |
|||
|26.96 |
|||
|28.90 |
|||
|30.83 |
|||
|30.09 |
|||
|1.04 |
|||
|77%が食用、飼料12% |
|||
|- |
|||
|エンバク |
|||
|49.59 |
|||
|40.29 |
|||
|26.94 |
|||
|25.32 |
|||
|22.57 |
|||
|0.84 |
|||
|58%飼料、食用24% |
|||
|- |
|||
|ライコムギ |
|||
|0.00 |
|||
|0.10 |
|||
|10.83 |
|||
|15.34 |
|||
|14.85 |
|||
|1.37 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|ライムギ |
|||
|35.11 |
|||
|24.85 |
|||
|23.38 |
|||
|15.04 |
|||
|13.22 |
|||
|0.57 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|ソバ |
|||
|2.48 |
|||
|3.40 |
|||
|2.59 |
|||
|1.81 |
|||
|1.88 |
|||
|0.72 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|フォニオ |
|||
|0.18 |
|||
|0.17 |
|||
|0.31 |
|||
|0.66 |
|||
|0.66 |
|||
|2.13 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|カナリーシード |
|||
|0.06 |
|||
|0.09 |
|||
|0.15 |
|||
|0.26 |
|||
|0.22 |
|||
|1.45 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|キノア |
|||
|0.03 |
|||
|0.03 |
|||
|0.05 |
|||
|0.18 |
|||
|0.15 |
|||
|3.20 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|その他 |
|||
|1.35 |
|||
|1.56 |
|||
|2.49 |
|||
|8.34 |
|||
|8.36 |
|||
|3.35 |
|||
| |
|||
|- |
|||
|複合 |
|||
|5.98 |
|||
|5.58 |
|||
|5.18 |
|||
|3.07 |
|||
|3.26 |
|||
|0.63 |
|||
| |
|||
|- |
|||
| |
|||
| |
|||
| |
|||
| |
|||
| |
|||
| |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
|大豆 |
|||
|26.88 |
|||
|88.53 |
|||
|177.02 |
|||
|355.37 |
|||
|371.69 |
|||
|2.10 |
|||
|88%が脱脂/搾油加工、飼料9.5%、食用3.4%<ref>20年、食用1033万トン、飼料3362万ト、主に脱脂/搾油加工3.11億トン。輸出1.73億トン</ref> |
|||
|- |
|||
|} |
|||
雑穀とみなされる穀物は全般に需要が低調であり、換金性もそれに伴って低いために栽培が減少する傾向が目立つが、雑穀のなかでも例えば[[エチオピア高原]]における[[テフ (穀物)|テフ]]のように地元の[[アムハラ人]]などによって強く嗜好され、主食の座を保っている穀物も存在する<ref>「熱帯作物学」p23 志和地弘信・遠城道雄編 朝倉書店 2022年4月5日初版第1刷</ref>。このためテフの換金性は高く高価で取引されている<ref>三輪睿太郎監訳『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』(朝倉書店 2004年9月10日第2版第1刷)p.61</ref>。 |
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穀物は世界の人口のかなりを支えており、その生産様式は多岐にわたる。東アジアから東南アジア、南アジアにかけては集約型の穀物生産が行われ、ヨーロッパにおいては年単位で耕地を移動させ[[輪作]]を行い、地力の消耗を防ぎながら食用となる穀物と飼料作物を栽培する[[混合農業]]が主流である<ref>「史上最強カラー図解 最新 世界の農業と食料問題のすべてがわかる本」p30 八木宏典監修 ナツメ社 2013年6月7日初版発行</ref>。こうした土地生産性の高い諸国に対し、アメリカの[[グレートプレーンズ]]やオーストラリア、アルゼンチンの[[パンパ]]などでは、広大な土地で穀物を大規模に栽培する企業的穀物農業が行われている<ref>「史上最強カラー図解 最新 世界の農業と食料問題のすべてがわかる本」p31 八木宏典監修 ナツメ社 2013年6月7日初版発行</ref>。こうした企業的穀物農業においては土地生産性が低く、例えばコムギにおいてはアメリカでは290㎏、オーストラリアでは190㎏と反収が低くなっている<ref name="affrc_6">[https://web.archive.org/web/20110322231639/http://www.s.affrc.go.jp/docs/report/report22/no22_p6.htm 農林水産技術会議/売れる麦に向けた新技術]、6ページ。2016年8月6日閲覧</ref>かわりに、少ない労働力で大規模に生産できるために労働生産性が非常に高くなっていることが特徴である。またこうしたことから、穀物の反収は先進国と発展途上国の間には必ずしも明確な差はなく、また穀物の種類によっても大きく左右される。例えばコムギの反収においてはもっとも高いのは西ヨーロッパ諸国であるが、[[ナイル川]]沿いの肥沃な土地を擁する[[エジプト]]や、[[ロバート・ムガベ]]政権によって穀物生産が崩壊する以前の[[ジンバブエ]]などもそれに劣らない反収を誇っていた<ref>平野克己『図説アフリカ経済』([[日本評論社]]、2002年4月)46-48頁</ref>。また、日本においてはコメの反収は世界最高レベルにあるが、コムギの反収は384㎏<ref name="affrc_6"/>と世界中位レベルであり、労働集約型農業としては低いレベルにとどまっている。 |
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農業革命や緑の革命によって品種改良や農法の改善が進んだコメ、コムギ、トウモロコシの三大穀物の収量は激増したが、雑穀などはそれらが進んでおらず、収量も低いレベルにとどまっているものがほとんどである。また、品種改良の進んだ穀物においても、たとえばトウモロコシや[[ソルガム]]のように世界中で需要の多い飼料用としての改良は大幅に進んだものの、主食用としての改良が進んでいない穀物もあり、これらの穀物を飼料用として栽培するアメリカなどの企業的穀物農業の諸国と、アフリカや中南米などの自給用としてトウモロコシやソルガムの生産を行う諸国との反収の差の一因となっている<ref>平野克己 『図説アフリカ経済』(日本評論社、2002年4月 ISBN 978-4-535-55230-2)42-43頁</ref>。 |
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穀物農業は、[[一年生植物]]である小麦栽培による[[表土]]流出など自然環境に負荷をかける面もあり、アメリカ合衆国の[[ランド研究所]]が小麦代替穀物として開発した[[多年草]]「カーンザ」のように、[[品種改良]]で新たに作出される穀物もある<ref>[https://www.asahi.com/articles/DA3S15432287.html 小麦に危機感「カーンザ」に期待 代替作物、米国で注目「持続的な農業を」土壌や水保持に高い能力 気候変動に対応]『[[朝日新聞]]』夕刊2022年9月30日1面(2022年10月8日閲覧)</ref>。 |
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穀物は、人類の多種ある主食のひとつとして使われてもいるが、実際には人類全体に穀物は届いておらず、世界で生産される穀物の3分の1は主に[[食肉]]用の[[家畜]]の[[餌]]として使われている<ref name="NHK_bangumi">[https://www2.nhk.or.jp/school/movie/outline.cgi?das_id=D0005180479_00000# NHK, 「放置しないで!飢えのない世界へ」]</ref>。 |
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穀物は必需品であり、古くから重要な交易品の一つだった。現代においても穀物交易の重要性は変わらず、北アメリカ・南アメリカ・オーストラリアなどから大量の穀物が輸出され、世界各国に販売されている<ref>「新版 キーワードで読みとく現代農業と食料・環境」p13 「農業と経済」編集委員会監修 小池恒男・新山陽子・秋津元輝編 昭和堂 2017年3月31日新版第1刷発行</ref>。なかでも世界最大の穀物輸出国はアメリカであり、主にコムギやトウモロコシの輸出を行っている<ref>「新版 キーワードで読みとく現代農業と食料・環境」p38 「農業と経済」編集委員会監修 小池恒男・新山陽子・秋津元輝編 昭和堂 2017年3月31日新版第1刷発行</ref>。逆に穀物輸入額が多いのは、日本をはじめとする[[東アジア]]諸国や、アフリカ諸国である<ref>『図説アフリカ経済』p35 平野克己 日本評論社 2002年4月4月30日第1版第1刷発行</ref>。この穀物流通においては、[[カーギル]]や[[アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド]]といった[[穀物メジャー]]と呼ばれる[[商社]]群が大きな割合を占めている<ref>「新版 キーワードで読みとく現代農業と食料・環境」p12-13 「農業と経済」編集委員会監修 小池恒男・新山陽子・秋津元輝編 昭和堂 2017年3月31日新版第1刷発行</ref>。 |
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穀物の国際価格は変動しやすく、経済や人々の生活にに大きな影響をもたらす。2007年から2008年にかけては飼料用需要の増加や人口増加、穀物在庫の減少、バイオエタノール需要の増加、そして当年の主要産地での不作によって穀物価格が暴騰し<ref>「地図とデータで見る農業の世界ハンドブック」p81-82 ジャン・ポール・シャルヴェ著 太田佐絵子訳 原書房 2020年11月1日第1刷</ref>、[[2007年-2008年の世界食料価格危機]]が発生して、特に発展途上国において都市部貧困層の生活水準悪化と、それにともなう暴動を引き起こした<ref>「地図とデータで見る農業の世界ハンドブック」p13 ジャン・ポール・シャルヴェ著 太田佐絵子訳 原書房 2020年11月1日第1刷</ref>。 |
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== 用途 == |
== 用途 == |
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穀物は、その種類によって用途の割合が異なっている<ref name="mitsui_nozaki">[https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/22/171225x_nozaki.pdf]</ref>。(生産量1位の)トウモロコシは、6割が[[飼料]]用で、4割が食用である<ref name="mitsui_nozaki" />。(生産量2位の)小麦は8割が食用で、2割が飼料用である<ref name="mitsui_nozaki" />。(生産量3位の)コメはほぼ全量が食用として使われる<ref name="mitsui_nozaki" />。 |
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[[ファイル:Meshi.JPG|thumb|right|250px|[[漆器]]の[[椀|お椀]]に盛りつけた御飯。コメはもっとも代表的な粒食タイプの穀物である]] |
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[[ファイル:Various grains.jpg|thumb|right|250px|オオムギとエンバクのパン]] |
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[[File:Ugali & Sukuma Wiki.jpg|thumb|right|250px|トウモロコシから作るウガリ]] |
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=== 食用 === |
=== 食用 === |
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穀物は、主に[[エネルギー]]源となる[[炭水化物]]を供給するための[[主食]]の材料として用いられており、[[イモ]]類などの根菜類や[[バナナ]]などを主食とする地域を除く、世界中の大半の地域において食糧の中心部分を占めている<ref name="名前なし-20230316131051">「食料の世界地図」p78-79 エリック・ミルストーン、ティム・ラング著 大賀圭治監訳 中山里美・高田直也訳 丸善 平成17年10月30日発行</ref>。一日のカロリー摂取量に占める穀物の割合は発展途上国におけるほど高くなり、低所得国では70%を超えることすら珍しくない<ref name="名前なし-20230316131051"/>。経済が成長するにつれて食生活が多様化し、脂質や肉類の消費が増加することで穀物の食卓に占める割合も低下していったが、もっとも食卓に穀類の占める割合の少ない北アメリカや西ヨーロッパでも一日のカロリー摂取量の20%程度は穀物から供給されている<ref>「食料の世界地図」p78-81 エリック・ミルストーン、ティム・ラング著 大賀圭治監訳 中山里美・高田直也訳 丸善 平成17年10月30日発行</ref>。 |
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穀物のもっとも重要な用途は、そのまま、あるいはいったん粉などに加工してから食用とすることである。食用とされる場合、主に[[エネルギー]]源となる[[炭水化物]]を供給するために[[主食]]として大量に消費されることが多かった。その後、近代化が進むにつれ食生活が多様化し、炭水化物の重要性が低下するのに伴って穀物の食卓に占める割合も低下していったが、現代においてももっとも基本的かつ重要な食料であることにかわりはなく、イモ類などで炭水化物をかわりに摂取できる場合を除けば、穀物および穀物加工物の存在しない食事は非常に珍しいものである。主食用としての用途が特に大きな割合を占める穀物として、コメとコムギが挙げられる。 |
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穀物は、[[脱稃]]をして外皮を取り除かないと食べることができない<ref>「おいしい穀物の科学 コメ、ムギ、トウモロコシからソバ、雑穀まで」p81 井上直人 講談社 2014年6月20日第1刷発行</ref>。脱稃をしたあと、通常は[[果皮]]、[[種皮]]、[[胚]]、[[胚乳]]表層部といった[[糠]]やふすま部分を取り除く[[精白]]を行う<ref>「おいしい穀物の科学 コメ、ムギ、トウモロコシからソバ、雑穀まで」p94-96 井上直人 講談社 2014年6月20日第1刷発行</ref>。また、精白しない[[全粒穀物]]を食べることもある。全粒穀物の例としては、[[玄米]]や[[オートミール]]、[[全粒粉]]の加工品などが挙げられる。精白する場合と比べて[[ビタミン]]や[[ミネラル]]、[[食物繊維]]が豊富に含まれているため、健康に良いとされる<ref>[https://dm-net.co.jp/calendar/2020/029891.php 糖尿病ネットワーク、全粒穀物]</ref>。精白の際に取り除かれた糠やふすまは通常食用とせず、飼料など様々な形で直接の食用以外に使用されることが多い<ref>「おいしい穀物の科学 コメ、ムギ、トウモロコシからソバ、雑穀まで」p162-163 井上直人 講談社 2014年6月20日第1刷発行</ref>。 |
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ただ、穀物はその性質から、乾燥状態からある程度は加工しないと[[食料]]としては利用しにくい側面もある。このため、穀物を使った[[料理]]では様々な様式が発達し、以下に述べる様々な種類の穀物には、それぞれの、地域によっても多種多様な食べ方も見出されてきた。近年では雑穀の栄養価が主穀に対しやや高いことから健康食品として注目されるようになり、さまざまな雑穀商品が開発されている。ただし雑穀も炭水化物を主成分とすることには変わりはない。 |
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穀物を製粉した場合は、たいていは次に何らかの形で粉をまとめ成形してから食べることになる。ほとんどは、まず水を加えて練り上げ、必要に応じ[[塩]]などを混ぜて[[生地 (食品)|生地]]を作る。この生地をそのまま、あるいは発酵させて火を通したものが[[パン]]である<ref>舟田詠子『パンの文化史』(講談社学術文庫 2013年12月10日第1刷発行)pp.37-38</ref>。パンはコムギから作るものがもっとも一般的であるが、トウモロコシやライムギなどから作られるパンも根強い人気がある。また、この生地を細長く切って成形したものを[[麺]]と呼び、これも世界中で広く食される。麺もやはりコムギから作るものが最も一般的であるが、コムギの出来ない東南アジアにおいては麺はコメから作られるものが多い。また日本ではソバを麺にして食べるが、ソバ単体の場合麺状にした場合ちぎれやすくなるため、[[つなぎ]]としてコムギを使用することも多い。ただし麺は作るのに手間がかかるため、近代において製麺機が実用化されるまではどの文化圏においてもかなりのごちそうとされていた<ref>石毛直道『世界の食べもの 食の文化地理』(講談社学術文庫 2013年5月9日第1刷)p.234</ref>。こうした伝統的な調理法のほか、19世紀後半に穀物をローラーで圧搾しフレーク状にする技術が開発されたため<ref>バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント著 山本紀夫監訳『世界の食用植物文化図鑑』(柊風舎 2010年1月20日第1刷)p.217</ref>、これ以後、穀物を加熱加工して長期保存に適するようにした、いわゆる[[シリアル食品]]が開発され、朝食を中心に広く利用されている。 |
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ほとんどの穀物は、[[脱穀]]をして外皮を取り除かないと食べることができない。脱穀をしても、[[果皮]]、[[種皮]]、[[胚]]、[[胚乳]]表層部といった部分は食味が劣るため、たいていは取り除かれる。これを[[精白]]という。精白された穀物は、主にそのまま穀粒を食べる粒食タイプの穀物と、主に挽いて粉にしてから整形して食する[[粉食]]タイプのものに大きく分かれる。イネは粒食タイプであり、トウモロコシやコムギは粉食タイプに属する<ref>「パンの文化史」pp30 舟田詠子 講談社学術文庫 2013年12月10日第1刷発行</ref>。特に後者のタイプにおいては[[製粉]]は企業が行うことが多く、多くの製粉企業が存在する。なお、精白によって取り除かれた部分も食べることは可能であり、しかも精白後の胚乳部分に比べて[[ビタミン]]や[[ミネラル]]、[[食物繊維]]が多量に含まれているため、この部分を含めた穀物、いわゆる[[全粒穀物]]も製造され、健康に良いとして[[玄米]]や[[オートミール]]などのこうした穀物製品を消費する人々も存在する。ただし、取り除かれた部分([[糠]]やふすまと呼ばれる)を単体で食べることはほぼなく、こうした糠は飼料など様々な形で直接の食用以外に使用されることが多い。 |
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また、多めの水で穀物を煮た[[粥]]も調理が簡単であり、古くから広く世界で利用されてきた穀物調理法である。粥はそのまま煮るだけなので粒食もできるが、アフリカの[[ウガリ]]のように一度粉にしたものを粥にして食することもある。この場合、水分が多ければ普通の粥となるが、水分が少なければ粥というより粘りの強いペースト状の固体となる<ref>「おいしい穀物の科学 コメ、ムギ、トウモロコシからソバ、雑穀まで」p126-128 井上直人 講談社 2014年6月20日第1刷発行</ref>。 |
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粉食タイプの穀物を粉のまま食べることはほとんどなく、何らかの形で粉をまとめ成形して食べることになる。ほとんどは、まず水を加えて練り上げ、必要に応じ[[塩]]などを混ぜて[[生地 (食品)|生地]]を作る。この生地をそのまま、あるいは発酵させて火を通したものが[[パン]]であり<ref>「パンの文化史」pp37-38 舟田詠子 講談社学術文庫 2013年12月10日第1刷発行</ref>、粉食タイプの穀物を食べる際に最も一般的な食べ方である。パンはコムギから作るものがもっとも一般的であるが、トウモロコシやライムギなどから作られるパンも根強い人気がある。また、この生地を細長く切って成形したものを[[麺]]と呼び、これも世界中で広く食される。麺もやはりコムギから作るものがもっとも一般的であるが、コムギの出来ない東南アジアにおいては麺はコメから作られるものが多い。また日本ではソバを麺にして食べるが、ソバ単体の場合麺状にした場合ちぎれやすくなるため、[[つなぎ]]としてコムギを使用することも多い。ただし麺は作るのに手間がかかるため、近代において製麺機が実用化されるまではどの文化圏においてもかなりのごちそうとされていた<ref>『世界の食べもの 食の文化地理』p234 石毛直道 講談社学術文庫 2013年5月9日第1刷</ref>。こうした伝統的な調理法のほか、19世紀後半に穀物をローラーで圧搾しフレーク状にする技術が開発されたため<ref>「世界の食用植物文化図鑑」p217 バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント著 山本紀夫監訳 柊風舎 2010年1月20日第1刷</ref>、これ以後穀物を加熱加工して長期保存に適するようにした、いわゆる[[シリアル食品]]が開発され、朝食を中心に広く利用されている。 |
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一部の穀物には、[[アミロース]]を含む[[粳]](うるち)性のものと、アミロースを全く、あるいはほとんど含まない[[糯]](もち)性のものの二つに分かれているものがある。本来、穀物は粳性であり、糯性のものはそこから変異して誕生したため、なかには糯性の品種が存在しない穀物も存在する。また、糯性はうるち性に比べて劣性遺伝であるうえ交雑しやすいため、自然状態では存続が難しく、糯性を好む人々が品種維持の努力を継続して初めて品種として継続するものである<ref>井上直人『おいしい穀物の科学 コメ、ムギ、トウモロコシからソバ、雑穀まで』([[講談社]][[ブルーバックス]] 2014年6月20日第1刷)pp.34-35</ref>。糯性品種が存在するものとしては、コメ([[もち米]])を筆頭に、トウモロコシ、オオムギ(もち麦)、アワ(もち粟)、キビ、モロコシ、[[アマランサス]]などがある。糯性の穀物は調理すると粘性が高くなるため、これを利用して、蒸したもち米をついて作る[[餅]]のような様々な食品が生み出された。 |
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また、多めの水で穀物を煮た[[粥]]も一般的な穀物調理法のひとつである。粥は調理が簡単であり、穀物調理法の中でももっとも古いもののひとつである。また、粥はそのまま煮るだけなので粒食タイプ向きの調理法であるが、アフリカの[[ウガリ]]のように一度粉にしたものを粥にして食することもある。この場合、水分が多ければ普通の粥となるが、水分が少なければ粥というよりペースト状の固体となる。 |
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また、トウモロコシやソルガムなど一部の穀物には、火を通すと大きくはじける爆裂種(ポップ種)が存在し、[[ポップコーン]]などに加工される<ref>『FOOD'S FOOD 新版 食材図典 生鮮食材編』([[小学館]] 2003年3月20日初版第1刷)p.313</ref>。 |
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一部の穀物には、[[アミロース]]を含む[[粳]]性のものと、アミロースを全く、あるいはほとんど含まない[[糯]]性のものの二つに分かれているものがある。穀物は本来うるち性のものであり、糯性のものはそこから変異して誕生したため、なかにはもち性の品種が存在しない穀物も存在する。また、もち性はうるち性に比べて劣性遺伝であるうえ交雑しやすいため、自然状態では存続が難しく、もち性を好む人々が品種維持の努力を継続してはじめて品種として継続するものである<ref>「おいしい穀物の科学 コメ、ムギ、トウモロコシからソバ、雑穀まで」(講談社ブルーバックス)p34-35 井上直人 講談社 2014年6月20日第1刷</ref>。もち性品種が存在するものとしては、コメ([[もち米]])を筆頭に、トウモロコシ、オオムギ(もち麦)、アワ(もち粟)、キビ、モロコシ、アマランサスなどがある。もち性の穀物は調理すると粘性が高くなるため、これを利用して、蒸したもち米をついて作る[[餅]]のような様々な食品が生み出された。 |
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また、トウモロコシやソルガムなど一部の穀物には、火を通すと大きくはじける爆裂種(ポップ種)が存在し、[[ポップコーン]]などに加工される<ref>『FOOD'S FOOD 新版 食材図典 生鮮食材編』p313 2003年3月20日初版第1刷 小学館</ref>。 |
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ファイル:Various grains.jpg|[[パン]] |
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ファイル:Bulgur on plate.jpg|[[ブルグル]]。コムギの挽き割り(1/2程度などに割ったもの)。[[レバノン]]、[[パレスチナ]]、[[シリア]]、[[トルコ]]などでは主食。 |
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File:General Mills Total cereal – Crunchy Whole Grain Wheat Flakes with vitamins and minerals.jpg|朝食のシリアル類。 |
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File:Chinese rice congee.jpg|中国の[[粥]]。 |
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ファイル:Meshi.JPG|日本の[[米飯]]。 |
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File:Bihun goreng.JPG|[[ビーフン]]。コメを粉にしてから麺にしたもの。中国南部、台湾、東南アジアなどで広く食べられている。 |
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File:Pasta with eggplant and tomatoes.jpg|[[パスタ]] |
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File:Northern Chinese Lamb Noodle Soup from Peking Garden.jpg|中国北部の[[麺類]] |
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File:釜玉うどん feat. 桃屋きざみしょうが.jpg|日本の[[うどん]] |
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File:Tortillas de maiz blanco (México) 01.jpg|トウモロコシの[[トルティーヤ]]。メキシコでは主食。 |
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File:Ugali & Sukuma Wiki.jpg|トウモロコシから作った[[ウガリ]] |
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File:Boiled Corn.jpg|茹でトウモロコシ。世界各地で食されている。 |
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File:Popcorn 9.jpg|[[ポップコーン]] |
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</gallery> |
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=== 飼料 === |
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穀物は[[飼料]]としても古くから盛んに使用されてきた。穀物は飼料としては、[[牧草]]などの[[粗飼料]]と対比して[[濃厚飼料]]と呼ばれ、栄養価が高く近代的な畜産には不可欠なものである。飼料用としてもっとも重要な穀物はトウモロコシである。トウモロコシは中南米やアフリカにおいては主食としても使用されるものの、主な用途は消費の64%を占める飼料用である<ref>榎本裕洋、安部直樹『絵でみる食糧ビジネスのしくみ』(柴田明夫監修、日本能率協会マネジメントセンター〈絵でみるシリーズ〉、2008年8月。ISBN 978-4-8207-4525-9)pp. 24-25</ref>。この他、かつては[[ウマ]]の飼料としてエンバクが非常に重要な飼料用作物であったが、第一次世界大戦後に軍用や輸送用のウマの需要が激減し、これにともなって飼料作物としてのエンバクの需要も激減して、栽培も少なくなった。ただし、現代においてもウマの飼育においてはエンバクはもっとも重要な飼料の一つである<ref>[[日本中央競馬会]]{{PDFlink|[http://company.jra.jp/bajikouen/health/kaiyou.pdf 「馬の飼養管理について」p.6]}}(2016年6月17日閲覧)</ref>。この他、オオムギの飼料向け割合も高い<ref>国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.204</ref>。また、モロコシもアフリカや南アジアを除いては飼料用の利用がほとんどを占める。 |
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[[画像:Sake.jpg|thumb|250px|酒器に酌まれた日本酒。日本酒はコメを原料とする]] |
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穀物はそのまま食料として用いるほか、さまざまな食品に加工されても使用される。主食用以外の穀物用途で最も重要なものは、穀物を[[発酵]]させて[[醸造]]し、[[酒]]を造ることである。穀物は[[果実]]と並び醸造酒の原料として最も広く用いられるものであり、オオムギを原料とする[[ビール]]やコメを原料とする[[日本酒]]などをはじめ、さまざまな種類の酒が各民族によって作られてきた。穀物の中で醸造用としての用途が特に大きな割合を占める穀物としては、ビールの原料であるオオムギが挙げられる。 |
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=== 醸造 === |
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穀物は[[酢酸]]の原料として用いることも可能であり、例えば[[酢|米酢]]のように実際に穀物から作られている酢も存在する。このように、穀物は[[調味料]]の原料として用いられることもある。 |
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穀物はそのまま食料として用いるほか、様々な食品に加工されても使用される。主食用以外の穀物用途で最も重要なものは、穀物を[[発酵]]させて[[醸造]]し、[[酒]]を造ることである。穀物は[[果実]]と並び醸造酒の原料として広く用いられるものである。<ref>「食の人類史」p66-68 佐藤洋一郎 中公新書 2016年3月25日初版</ref>たとえば、オオムギを原料として[[ビール]]、コメを原料として[[日本酒]]が造られている。様々な種類の酒が各民族によって作られてきた。穀物の中で醸造用としての用途が特に大きな割合を占める穀物としては、ビールの原料であるオオムギが挙げられる<ref>「世界の食文化百科事典」p123 野林厚志編 丸善出版 令和3年1月30日発行</ref>。 |
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穀物は[[酢酸]]の原料として用いることも可能であり、例えば[[酢|米酢]]のように実際に穀物から作られている酢も存在する<ref name="名前なし-20230316131051-2">国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.116</ref>。このように、穀物は[[調味料]]の原料として用いられることもある。 |
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=== 飼料用 === |
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穀物は[[飼料]]としても古くから盛んに使用されてきた。穀物は飼料としては、[[牧草]]などの[[粗飼料]]と対比して[[濃厚飼料]]と呼ばれ、栄養価が高く近代的な畜産には不可欠なものである。飼料用としてもっとも重要な穀物はトウモロコシである。トウモロコシは中南米やアフリカにおいては主食としても使用されるものの、主な用途は消費の64%を占める飼料用である<ref>榎本裕洋、安部直樹 『絵でみる食糧ビジネスのしくみ』 pp. 24-25 柴田明夫監修、日本能率協会マネジメントセンター〈絵でみるシリーズ〉、2008年8月。ISBN 978-4-8207-4525-9</ref>。このほか、かつては[[ウマ]]の飼料としてエンバクが非常に重要な飼料用作物であったが、第一次世界大戦後に軍用や輸送用のウマの需要が激減し、これにともなって飼料作物としてのエンバクの需要も激減して、栽培も少なくなった。ただし、現代においてもウマの飼育においてはエンバクはもっとも重要な飼料のひとつである<ref>{{PDFlink|[http://company.jra.jp/bajikouen/health/kaiyou.pdf 「馬の飼養管理について」p6 JRA 2016年6月17日閲覧]}}</ref>。このほか、モロコシもアフリカや南アジアを除いては飼料用の利用がほとんどを占める。また、オオムギの飼料向け割合も高い。 |
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File:Ayinger Bräuweisse at restaurant Jano.jpg|[[ビール]]。主に大麦を原料とする。 |
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File:Glass of whisky.jpg|[[ウイスキー]]。大麦、ライ麦、トウモロコシなどを原料とする。 |
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画像:Sake set.jpg|[[日本酒]]。コメを原料とする。 |
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=== その他 === |
=== その他 === |
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[[コーン油]]<ref>国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.248-249</ref>や[[米糠]]から取る[[米油]]<ref name="名前なし-20230316131051-2"/>などのように、一部の穀物は[[食用油]]の生産にも使われている。[[デンプン]]は[[糖化]]と[[異性化糖|異性化]]によって[[水飴]]、[[コーンシロップ]]のような[[甘味料]]に分解できる。醸造・バイオマスエタノールはこの糖化を挟む。 |
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上記のように穀物からは酒(エタノール)を作ることができるため、こと近年ではこういった穀物を醸造して得られる[[エタノール]]を[[アルコール燃料]]([[バイオマスエタノール]])として、機械装置の[[動力]]に利用する研究と実用化も進んでおり<ref>http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol2/ 日本国外務省「わかる!国際情勢 食料価格高騰~世界の食料安全保障~」2008年7月17日 2016年8月6日閲覧</ref>、人間の活動全般にわたって、様々な方面で利用されている。種を収穫した後の茎部分である[[藁]]も麦米ともに、自給自足生活をしていた時代から多様な用途に用いられている資材であるが、他の資材が容易に手に入るようになったことから利用は減少傾向にある。 |
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2000年代には、穀物を醸造して得られる[[エタノール]]を[[アルコール燃料]]([[バイオマスエタノール]])として、機械装置の[[動力]]に利用する研究と実用化も進んでいた<ref>[https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol2/ 「わかる!国際情勢 食料価格高騰~世界の食料安全保障~」][[日本国外務省]](2008年7月17日)2016年8月6日閲覧</ref>が、このバイオマスエタノール生産の急成長は穀物価格の急上昇を招き、[[2007年-2008年の世界食料価格危機]]の主因の一つとなる<ref>[https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol2/ 「わかる!国際情勢 食料価格高騰~世界の食料安全保障~」][[日本国外務省]](2008年7月17日)2023年1月17日閲覧</ref>など問題が発生したことから、2015年頃からバイオマスエタノール利用は大きく鈍化している<ref>「地図とデータで見る農業の世界ハンドブック」p46-47 ジャン・ポール・シャルヴェ著 太田佐絵子訳 原書房 2020年11月1日第1刷</ref>。なお穀物由来のバイオエタノールの主要生産国はアメリカで、主にトウモロコシから生産を行っている<ref>「地図とデータで見る農業の世界ハンドブック」p47-49 ジャン・ポール・シャルヴェ著 太田佐絵子訳 原書房 2020年11月1日第1刷</ref>。 |
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== 生産 == |
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以下に[[1961年]]<ref>1961 is the earliest year for which [[FAO]] statistics are available.</ref>、 [[2008年]]、[[2009年]]、[[2010年]]の穀物生産量とその推移を示す<ref name="prodstat">{{cite web | url=http://faostat.fao.org/site/567/DesktopDefault.aspx | title=ProdSTAT | work=FAOSTAT | accessdate=2006-12-26}}</ref>。[[2003年]]にはトウモロコシ、コメ、コムギの3大穀物で世界の穀物生産の87%、世界の食物カロリーの43%を占めていた<ref name="prodstat"/>。[[緑の革命]]の影響を受けた3大穀物の生産量が爆発的に増加しているのに対し、ライムギとエンバクの生産量は1960年代に比べて大幅に減少している。 |
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種を収穫した後の残部も広く使用され、たとえば米の茎部分である[[藁]]は工芸材料として広く利用されるほか、[[籾殻]]も[[充填材]]として利用される<ref name="名前なし-20230316131051-2"/>。コムギの藁は敷き藁などに利用され<ref>国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.187</ref>、またトウモロコシの茎は燃料や製紙原料として利用される<ref>国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.249</ref>。 |
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{| valign="top" | class="wikitable" |
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! rowspan=2 | 穀物 |
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! colspan=4 nowrap | 生産量 <br /> (100万t) |
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! rowspan=2 | 備考 |
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|- |
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! 2010 !! 2009 !! 2008 !! 1961 |
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|- |
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| [[トウモロコシ]] |
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| align="center" | 844 |
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| align="center" | 820 |
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| align="center" | 827 |
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| align="center" | 205 |
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| [[中南米]]や[[アフリカ]]では[[主食]]、そのほかの地域では主に[[飼料]]として利用されることが多い。やや乾燥した地域で主に栽培される。<br> |
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|- |
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| [[コメ]]<ref>The weight given is for paddy rice</ref> |
|||
| align="center" | 672 |
|||
| align="center" | 685 |
|||
| align="center" | 689 |
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| align="center" | 285 |
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| [[熱帯]]から[[温帯]]地域にかけて多く栽培される。多雨地域向け。[[東アジア]]から[[東南アジア]]、[[インド]]にかけての広い地域を主産地とするほか、[[ブラジル]]や[[アフリカ]]など広い地域で主食とされる。<br> |
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|- |
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| [[コムギ]] |
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| align="center" | 651 |
|||
| align="center" | 687 |
|||
| align="center" | 683 |
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| align="center" | 222 |
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| 温帯地域を中心に栽培される。やや乾燥した地域での栽培が向いている。[[ヨーロッパ]]や[[北アメリカ]]、[[オーストラリア]]、[[ニュージーランド]]、[[中東]]、[[華北]]、[[インド]]などで主食とされる。<br> |
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|- |
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| [[オオムギ]] |
|||
| align="center" | 123 |
|||
| align="center" | 152 |
|||
| align="center" | 155 |
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| align="center" | 72 |
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| [[ビール]]醸造用の[[麦芽]]、および飼料用の栽培が多い。非常に寒冷な[[チベット]]においては主食となっている。<br> |
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|- |
|||
| [[モロコシ]] |
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| align="center" | 56 |
|||
| align="center" | 56 |
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| align="center" | 66 |
|||
| align="center" | 41 |
|||
| アジアやアフリカにおいて広く栽培されるほか、アメリカでの栽培も多い。乾燥にやや強い。アフリカおよび南アジアにおいては重要な主穀であるが、そのほかの地域においては飼料用としての利用がほとんどである<br> |
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|- |
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| [[雑穀]] |
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| align="center" | 29 |
|||
| align="center" | 27 |
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| align="center" | 35 |
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| align="center" | 26 |
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| この表に表記されていない各種穀物の総計。アジアやアフリカでの栽培が多い。<br> |
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|- |
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| [[エンバク]] |
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| align="center" | 20 |
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| align="center" | 23 |
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| align="center" | 26 |
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| 以前の[[スコットランド]]の主食。世界的には特に[[馬]]の飼料としての利用が多い。<br> |
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|- |
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| [[ライコムギ]] |
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| align="center" | 13 |
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| align="center" | 16 |
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| align="center" | 14 |
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| align="center" | 12 |
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| ライムギとコムギの[[ハイブリッド]]。<br> |
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|- |
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| [[ライムギ]] |
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| align="center" | 12 |
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| align="center" | 18 |
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| align="center" | 18 |
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| [[北欧]]や[[ドイツ]]、[[ロシア]]など寒冷な地域において主食となっている。<br> |
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|- |
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| [[ソバ]] |
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| align="center" | 1.5 |
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| align="center" | 1.8 |
|||
| align="center" | 2.2 |
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| align="center" | 2.5 |
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| [[イネ科]]ではなく[[タデ科]]に属する。[[ユーラシア]]全域で栽培され、[[パンケーキ]]や[[蕎麦]]、[[粥]]などさまざまな方法で食される。<br> |
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|- |
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| [[フォニオ]] |
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| align="center" | 0.53 |
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| align="center" | 0.46 |
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| align="center" | 0.50 |
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| align="center" | 0.18 |
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| [[西アフリカ]]で栽培される。<br> |
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|- |
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| [[キノア]] |
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| align="center" | 0.07 |
|||
| align="center" | 0.07 |
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| align="center" | 0.06 |
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| align="center" | 0.03 |
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| [[アンデス]]で栽培される。<br> |
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|} |
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雑穀とみなされる穀物は全般に需要が低調であり、換金性もそれに伴って低いために栽培が減少する傾向が目立つが、雑穀のなかでも例えば[[エチオピア高原]]における[[テフ (穀物)|テフ]]のように地元の[[アムハラ人]]などによって強く嗜好され、主食の座を保っている穀物も存在する。このためテフの換金性は高く高価で取引されており<ref>『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 p61</ref>、栽培も減少してはいない。また、アンデス地域で栽培される[[キノア]](キヌア)のように、健康食品として栽培地域外で注目され、世界的人気となって栽培が増加した穀物もある。 |
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穀物は世界の人口のかなりを支えているが、その生産様式は多岐にわたる。乾燥地域においては天水に頼る粗放的な穀物農業のほか、[[水路]]を整備しての[[灌漑]]農業もさかんにおこなわれている。東アジアから東南アジア、南アジアにかけては狭い土地に多くの労働力を投入し高い収穫を上げる労働集約型の穀物生産が行われている。なかでもアジアのコメ生産地域においてはこの傾向が強い。このため、土地生産性が非常に高くなっている。ヨーロッパにおいては食用となる穀物と飼料作物を栽培する[[混合農業]]が主流である。この場合、数年単位で耕地を移動させながら栽培する[[輪作]]を行い、地力の消耗を防ぐ。この輪作は、中世以来ヨーロッパで行われていた[[三圃式農業]]が[[18世紀]]の[[ノーフォーク農法]]の開発によって発展したものである。その後も農業技術の開発が進んだこともあり、西ヨーロッパ諸国の穀物反収は東アジア諸国と肩を並べるほど高い。こうした土地生産性の高い諸国に対し、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[グレートプレーンズ]]やオーストラリア、アルゼンチンの[[パンパ]]などでは、広大な土地で穀物を大規模に栽培する企業的穀物農業がおこなわれている。こうした企業的穀物農業においては土地生産性が低く、例えばコムギにおいてはアメリカでは290㎏、オーストラリアでは190㎏と反収が低くなっている<ref name="affrc_6">[http://www.s.affrc.go.jp/docs/report/report22/no22_p6.htm 農林水産技術会議/売れる麦に向けた新技術]、6ページ。2016年8月6日閲覧{{リンク切れ|date=2017年10月}}</ref>かわりに、少ない労働力で大規模に生産できるために労働生産性が非常に高くなっていることが特徴である。またこうしたことから、穀物の反収は先進国と発展途上国の間には必ずしも明確な差はなく、また穀物の種類によっても大きく左右される。例えばコムギの反収においてはもっとも高いのは西ヨーロッパ諸国であるが、ナイル川沿いの肥沃な土地を擁する[[エジプト]]や、[[ロバート・ムガベ]]政権によって穀物生産が崩壊する以前の[[ジンバブエ]]などもそれに劣らない反収を誇っていた<ref>平野克己 『図説アフリカ経済』日本評論社、2002年4月。46-48頁。</ref>。また、日本においてはコメの反収は世界最高レベルにあるが、コムギの反収は384㎏<ref name="affrc_6"/>と世界中位レベルであり、労働集約型農業としては低いレベルにとどまっている。 |
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農業革命や緑の革命によって品種改良や農法の改善が進んだコメ・コムギ・トウモロコシの三大穀物の収量は激増したが、雑穀などはそれらが進んでおらず、収量も低いレベルにとどまっているものがほとんどである。また、品種改良の進んだ穀物においても、たとえばトウモロコシやソルガムのように世界中で需要の多い飼料用としての改良は大幅に進んだものの、主食用としての改良が進んでいない穀物もあり、これらの穀物を飼料用として栽培するアメリカなどの企業的穀物農業の諸国と、アフリカや中南米などの自給用としてトウモロコシやソルガムの生産を行う諸国との反収の差のひとつの原因となっている<ref>平野克己 『図説アフリカ経済』日本評論社、2002年4月。42-43頁。ISBN 978-4-535-55230-2</ref>。 |
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== 日本と穀物 == |
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穀物は人類社会において多くの人類が毎日必ず食するものであり、古くから重要な交易品のひとつだった。穀物交易が特に重きをなしていた交易圏として[[バルト海]]があり、[[ハンザ同盟]]やその後の[[オランダ]]の交易においてバルト海の穀物交易は重要な商品の一つとなっており、またこの穀物輸出(主にライムギ)の中心であった[[ポーランド王国]]の黄金時代を現出させる経済的な要因となった。現代においても穀物交易の重要性は変わらず、アメリカや[[カナダ]]、[[オーストラリア]]や[[アルゼンチン]]といった企業的穀物農業を行う国々からは大量の穀物が輸出され、世界各国に販売されている。なかでも世界最大の穀物輸出国はアメリカであり、コムギやトウモロコシに限らず、ソルガムなども大量に栽培し輸出を行っている。逆に輸入額が多いのは[[日本]]や[[アフリカ]]諸国である。[[中華人民共和国]]は生産量も多いが、人口が膨大であるため人口の伸びに穀物生産が追い付かず、飼料用を中心に大量の穀物を輸入している。この穀物流通において大きな割合を持っているのが[[カーギル]]や[[アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド]]といった[[穀物メジャー]]と呼ばれる商社群である。穀物貿易の上で数量的に大きな割合を占めるものは主食用のコムギと飼料用のトウモロコシである。コメは生産量は多いものの、ほとんどの主要生産国において自給用生産の割合が非常に高く、企業的生産があまり行われていないこともあって、穀物貿易における割合は高くない。大規模生産があまり行われておらず貿易量も少ないことから、コメの国際価格はコムギより高めになる傾向がある。 |
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特に生産量が多く主食として扱われることも多いイネ、ムギ類、トウモロコシを除く、その他の穀物を[[雑穀]]と呼んで区別することもある<ref>「食の人類史」p60-61 佐藤洋一郎 中公新書 2016年3月25日初版</ref>。[[中国]]や[[日本]]においては、特に主要な五種の穀物を[[五穀]]と呼び重視してきた。この五穀の内容は時代や書物によって様々であり、主要穀物の総称としての意味合いが強かった。現代日本においては、コメ、ムギ、[[アワ]]、[[豆|マメ]]、[[キビ]]または[[ヒエ]]を指して五穀と呼ぶことが多い<ref>[[本山荻舟]]『飲食事典』([[平凡社]] 昭和33年12月25日発行)p.197</ref>。 |
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== 種類 == |
== 種類 == |
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=== 禾穀類(イネ科) === |
=== 禾穀類(イネ科) === |
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* [[米]]([[イネ]]) |
* [[米]]([[イネ]]) |
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** [[米# |
** [[米#イネの系統と米|サティバ種]]([[米#イネの系統と米|アジアイネ]]) |
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*** [[ジャポニカ種]]( |
*** [[ジャポニカ種]](日本型、温帯[[島嶼]]型、短粒種) |
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*** [[ジャバニカ種]]([[ジャワ]]型、[[熱帯]]島嶼形、大粒種) |
*** [[ジャバニカ種]]([[ジャワ]]型、[[熱帯]]島嶼形、大粒種) |
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*** [[インディカ種]]( |
*** [[インディカ種]](インド型、大陸型、長粒種) |
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** [[アフリカイネ|グラベリマ種]]([[アフリカイネ]]) |
** [[アフリカイネ|グラベリマ種]]([[アフリカイネ]]) |
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** [[ネリカ]](アジアイネとアフリカイネの種間雑種) |
** [[ネリカ]](アジアイネとアフリカイネの種間雑種) |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{ |
{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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<references group="注釈"/> |
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=== 出典 === |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* [[穀物メジャー]] |
* [[穀物メジャー]] |
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** [[カーギル]] |
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** [[アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド]](ADM) |
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* [[全粒穀物]] |
* [[全粒穀物]] |
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* [[五穀]] |
* [[五穀]] |
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* [[小麦胚芽]] |
* [[小麦胚芽]] |
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* [[シリアル食品]] |
* [[シリアル食品]] |
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** [[コーンフレーク]] |
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** [[オートミール]] |
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* [[穀物菜食]] |
* [[穀物菜食]] |
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* [[農業]]、[[田]]・[[畑]]、[[脱穀]]、[[製粉]] |
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* [[グレインベルト]] |
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* {{ill2|穀物乾燥貯蔵施設|de|Darre}} - 新石器時代には、穀物は乾燥させないと品質が低下し、カビなどが生えることが知られていた。 |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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{{Wiktionary|穀物}} |
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* [http://www.zakkoku.jp/index.html 日本雑穀協会] |
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*{{Kotobank|2=日本大百科全書(ニッポニカ)}} |
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2024年10月12日 (土) 05:22時点における最新版
穀物(こくもつ、英: cerealsあるいはgrain)は、植物から得られる食材の総称の一つで、澱粉質を主体とする種子を食用とするもの。狭義にはイネ科作物の種子(米や麦やトウモロコシなど)のみを指し、広義にはこれにマメ科作物の種子(豆)や他科の作物の種子を含む[1][2]。
概要
[編集]イネ科作物の種子を禾穀類(かこくるい、Cereals、シリアル)[1]といい、マメ科作物の種子を菽穀類(しゅこくるい、Pulses)[1]という。広義の穀物のうち、禾穀類の種子(単子葉植物であるイネ科作物の種子)と似ていることから穀物として利用される双子葉植物の種子をまとめて擬禾穀類あるいは擬穀類(疑似穀類、Pseudocereals)と呼ぶ[2][3][4]。擬穀類には、ソバ(タデ科)、アマランサス(ヒユ科)、キヌア(キノア、アカザ科)などが含まれる[2][5]。 国連食糧農業機関では禾穀類に擬穀類を加えシリアルとまとめている。豆は別集計、大豆はさらに油糧作物として集計している。
生産量ではトウモロコシ、小麦、米が突出しており[6]、これら3種は世界三大穀物と呼ばれている[7]。
穀物が含む栄養素は主に炭水化物である。タンパク質や脂肪も含まれるものの穀物の摂取だけでは不足しがちなため、多くの文化圏において穀物はタンパク質を補うための豆類とセットで栽培され、消費されてきた[8]。たとえば、アジア地域における「米と豆」、中近東における「小麦と豆」、アメリカ州における「トウモロコシと豆」の組み合わせである[9]。
歴史
[編集]現代において世界で栽培される穀物は、ほぼ7地域(近東、アフリカ(サヘル地帯及びエチオピア高原)、中央アジア、中国雲南省~東南アジア~インド北部、中国北部、中央アメリカ、南米のアンデス山脈)を起源としている。これらの地域は農耕文明の発祥地と重なっている[10]。
- 栽培化
近東地域(中近東)は穀物の栽培化が世界で最も早かった地域であり、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバクといった世界でも重要な地位を占める穀物が栽培化された地域である。アフリカのサヘルからエチオピア高原にかけては、世界に広まったモロコシをはじめ、シコクビエやトウジンビエ、フォニオやテフなどが栽培化された。中央アジアではソラマメ、ヒヨコマメ、レンズマメが栽培化され、中国雲南省~東南アジア~インド北部においてはイネを筆頭としてソバやハトムギが、中国北部においてはキビ、ヒエ、ダイズ、アズキが栽培化された。中央アメリカにおいてはトウモロコシが栽培化された。南アメリカ・アンデスにおいては、アマランサスやキノアの栽培化が行われた[10]。
栽培化される前は、穀物の多くは播種のために熟すると種子が穂から脱落する性質(脱粒性[11])を持っていた。人類が野生の穀物を利用し始めた際には逆にそれを利用し、穂の下に容器を置いて穂をゆすり身を振るい落としたり、種子がまだ固定している未熟なうちに刈り取ったりするなどの手段を取っていた。しかしこうした方法には限界があり、やがて人類は穂が熟しても種子の脱落しない個体を選抜して栽培するようになり、穀物は非脱粒性[12]を獲得していった。このほかにも可食部分の肥大化など、選抜によってより利用しやすい形へと植物自体の性質が変化していった[13]。
野生の穀物の粒は小さく、収穫しにくく、さらに加工しなければ消化もしにくいため、広く穀物を利用するようになるには石器の登場が必要であった[14]。石を原料とした器は旧石器時代のうち、4万年から1万2千年ほど前の間に出現したが、定期的な穀物の収穫は1万2千年前のナトゥフ文化にみられる[14]。ナトゥフ文化では野生の小麦、大麦、ライ麦を収穫し、ヤンガードリアス期に畑を作り穀物を蔵に保管するようになると、穀物を守るようにして野生の猫もそこに集まるネズミを狙った[15]。
なお穀物の栽培化においては、もともと栽培化されていた穀物とは別に、それらの穀物の栽培の過程において畑に紛れ込んだ雑草が、本来の穀物に紛れて、または押しのけて成長する中で穀物として栽培されるようになっていったものがある。これらは二次作物と呼ばれ、コムギの栽培過程で作物化していったライムギやエンバクなどがあてはまる[16]。[注釈 1]
栽培化後も、農法の進歩は続いていた。たとえば上記のとおり穀物が非脱落性を獲得したばかりの場合、穀物の成熟度はその穂ごとに異なるため、熟した穂を選んで収穫する穂刈りが行われていた。しかしやがて農法の進歩によって同じ農地の穀物の成熟度をほぼ同じに調整することが可能となると、穂ではなく茎を根元から収穫する根刈りが主流となっていった[17]。
栽培化された穀物はやがて起源地から広がっていくが、この過程において、コムギ、イネ、トウモロコシの三種の穀物が突出して栽培されるようになっていった。コムギは栽培化当初は加工のしやすいオオムギに比べ二義的な穀物だったと考えられているが、やがて粥ではなくパンを製造するようになると、グルテンを持つコムギは他の穀物のパンよりはるかに美味なパンを作ることができ、また加工の幅もほかの穀物とは比べ物にならないくらい広がったため、旧大陸のパン食文化圏においてはほぼどこでもコムギが第一の穀物とされるようになっていった[18]。
穀物は多くの国家において食糧生産の根幹であり、そのため栽培化以降も各地で品種改良の努力が続けられてきた。19世紀以降には農法の改善によって農業革命が起き、またこの頃から科学的な品種改良の理論が確立して各地で近代的な育種が行われるようになり、穀物の収量は激増した[19]。特に20世紀後半に入ると、肥料の多用に耐えられる穀物品種の開発などによっていわゆる緑の革命が起き、穀物の反収は激増して世界人口の急増を支えることに成功した[20]。
精製加工
[編集]工業革命以前は小麦粉などを粉にするには石臼が使われ、手で選別処理をしなければふすま(表皮)や胚芽を完全に除去することは不可能であった[14]。19世紀後半には、そうした処理が自動化され高度に精製された穀物が広く消費されるようになった[14]。しかし工業の発達は穀物の精製技術を向上させる一方で、食物繊維、ビタミンやミネラルを損失させることで摂取量を減少させており、健康に影響を及ぼしていることが考えられる[14]。
1970年代後半には、クロマトグラフィー果糖濃縮技術の出現で異性化糖(高果糖コーンシロップ、HFCS)の大量生産を可能とした[14]。
生産
[編集]国連食糧農業機関(FAO)の穀物の世界需給予測によると、2021年度の生産量は30億0663万トンと初めて30億トン台に乗り、貿易量は5億7959万トン、13.6億トンが食用、9.9億トンが飼料であった[21][22]。以下に1961年(FAO統計が利用可能な最初の年)以降の穀物生産量とその推移を示す[23]。2003年にはトウモロコシ、コメ、コムギの3大穀物で世界の穀物生産の87%、世界の食物カロリーの43%を占めていた[23]。緑の革命の影響を受けた3大穀物の生産量が爆発的に増加しているのに対し、ライムギとエンバクの生産量は1960年代に比べて大幅に減少している。
1961 | 1981 | 2001 | 2020 | 2021 | 2001年比 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
トウモロコシ | 205.03 | 446.77 | 615.14 | 1,163.00 | 1,210.24 | 1.97 | 総生産の58%飼料、食用13%[25] |
米 | 215.65 | 410.08 | 600.25 | 769.23 | 787.29 | 1.31 | 大半81%食用[26] |
小麦 | 222.36 | 449.63 | 588.24 | 756.95 | 770.88 | 1.31 | 68%が食用、飼料16%[27] |
オオムギ | 72.41 | 149.60 | 140.59 | 157.71 | 145.62 | 1.04 | 58%が飼料、加工19%(麦酒など)[28] |
モロコシ | 40.93 | 73.28 | 59.79 | 58.92 | 61.36 | 1.03 | 50%が食用、飼料34% |
キビ亜科 | 25.71 | 26.96 | 28.90 | 30.83 | 30.09 | 1.04 | 77%が食用、飼料12% |
エンバク | 49.59 | 40.29 | 26.94 | 25.32 | 22.57 | 0.84 | 58%飼料、食用24% |
ライコムギ | 0.00 | 0.10 | 10.83 | 15.34 | 14.85 | 1.37 | |
ライムギ | 35.11 | 24.85 | 23.38 | 15.04 | 13.22 | 0.57 | |
ソバ | 2.48 | 3.40 | 2.59 | 1.81 | 1.88 | 0.72 | |
フォニオ | 0.18 | 0.17 | 0.31 | 0.66 | 0.66 | 2.13 | |
カナリーシード | 0.06 | 0.09 | 0.15 | 0.26 | 0.22 | 1.45 | |
キノア | 0.03 | 0.03 | 0.05 | 0.18 | 0.15 | 3.20 | |
その他 | 1.35 | 1.56 | 2.49 | 8.34 | 8.36 | 3.35 | |
複合 | 5.98 | 5.58 | 5.18 | 3.07 | 3.26 | 0.63 | |
大豆 | 26.88 | 88.53 | 177.02 | 355.37 | 371.69 | 2.10 | 88%が脱脂/搾油加工、飼料9.5%、食用3.4%[29] |
雑穀とみなされる穀物は全般に需要が低調であり、換金性もそれに伴って低いために栽培が減少する傾向が目立つが、雑穀のなかでも例えばエチオピア高原におけるテフのように地元のアムハラ人などによって強く嗜好され、主食の座を保っている穀物も存在する[30]。このためテフの換金性は高く高価で取引されている[31]。
穀物は世界の人口のかなりを支えており、その生産様式は多岐にわたる。東アジアから東南アジア、南アジアにかけては集約型の穀物生産が行われ、ヨーロッパにおいては年単位で耕地を移動させ輪作を行い、地力の消耗を防ぎながら食用となる穀物と飼料作物を栽培する混合農業が主流である[32]。こうした土地生産性の高い諸国に対し、アメリカのグレートプレーンズやオーストラリア、アルゼンチンのパンパなどでは、広大な土地で穀物を大規模に栽培する企業的穀物農業が行われている[33]。こうした企業的穀物農業においては土地生産性が低く、例えばコムギにおいてはアメリカでは290㎏、オーストラリアでは190㎏と反収が低くなっている[34]かわりに、少ない労働力で大規模に生産できるために労働生産性が非常に高くなっていることが特徴である。またこうしたことから、穀物の反収は先進国と発展途上国の間には必ずしも明確な差はなく、また穀物の種類によっても大きく左右される。例えばコムギの反収においてはもっとも高いのは西ヨーロッパ諸国であるが、ナイル川沿いの肥沃な土地を擁するエジプトや、ロバート・ムガベ政権によって穀物生産が崩壊する以前のジンバブエなどもそれに劣らない反収を誇っていた[35]。また、日本においてはコメの反収は世界最高レベルにあるが、コムギの反収は384㎏[34]と世界中位レベルであり、労働集約型農業としては低いレベルにとどまっている。
農業革命や緑の革命によって品種改良や農法の改善が進んだコメ、コムギ、トウモロコシの三大穀物の収量は激増したが、雑穀などはそれらが進んでおらず、収量も低いレベルにとどまっているものがほとんどである。また、品種改良の進んだ穀物においても、たとえばトウモロコシやソルガムのように世界中で需要の多い飼料用としての改良は大幅に進んだものの、主食用としての改良が進んでいない穀物もあり、これらの穀物を飼料用として栽培するアメリカなどの企業的穀物農業の諸国と、アフリカや中南米などの自給用としてトウモロコシやソルガムの生産を行う諸国との反収の差の一因となっている[36]。
穀物農業は、一年生植物である小麦栽培による表土流出など自然環境に負荷をかける面もあり、アメリカ合衆国のランド研究所が小麦代替穀物として開発した多年草「カーンザ」のように、品種改良で新たに作出される穀物もある[37]。
穀物は、人類の多種ある主食のひとつとして使われてもいるが、実際には人類全体に穀物は届いておらず、世界で生産される穀物の3分の1は主に食肉用の家畜の餌として使われている[38]。
穀物は必需品であり、古くから重要な交易品の一つだった。現代においても穀物交易の重要性は変わらず、北アメリカ・南アメリカ・オーストラリアなどから大量の穀物が輸出され、世界各国に販売されている[39]。なかでも世界最大の穀物輸出国はアメリカであり、主にコムギやトウモロコシの輸出を行っている[40]。逆に穀物輸入額が多いのは、日本をはじめとする東アジア諸国や、アフリカ諸国である[41]。この穀物流通においては、カーギルやアーチャー・ダニエルズ・ミッドランドといった穀物メジャーと呼ばれる商社群が大きな割合を占めている[42]。
穀物の国際価格は変動しやすく、経済や人々の生活にに大きな影響をもたらす。2007年から2008年にかけては飼料用需要の増加や人口増加、穀物在庫の減少、バイオエタノール需要の増加、そして当年の主要産地での不作によって穀物価格が暴騰し[43]、2007年-2008年の世界食料価格危機が発生して、特に発展途上国において都市部貧困層の生活水準悪化と、それにともなう暴動を引き起こした[44]。
用途
[編集]穀物は、その種類によって用途の割合が異なっている[45]。(生産量1位の)トウモロコシは、6割が飼料用で、4割が食用である[45]。(生産量2位の)小麦は8割が食用で、2割が飼料用である[45]。(生産量3位の)コメはほぼ全量が食用として使われる[45]。
食用
[編集]穀物は、主にエネルギー源となる炭水化物を供給するための主食の材料として用いられており、イモ類などの根菜類やバナナなどを主食とする地域を除く、世界中の大半の地域において食糧の中心部分を占めている[46]。一日のカロリー摂取量に占める穀物の割合は発展途上国におけるほど高くなり、低所得国では70%を超えることすら珍しくない[46]。経済が成長するにつれて食生活が多様化し、脂質や肉類の消費が増加することで穀物の食卓に占める割合も低下していったが、もっとも食卓に穀類の占める割合の少ない北アメリカや西ヨーロッパでも一日のカロリー摂取量の20%程度は穀物から供給されている[47]。
穀物は、脱稃をして外皮を取り除かないと食べることができない[48]。脱稃をしたあと、通常は果皮、種皮、胚、胚乳表層部といった糠やふすま部分を取り除く精白を行う[49]。また、精白しない全粒穀物を食べることもある。全粒穀物の例としては、玄米やオートミール、全粒粉の加工品などが挙げられる。精白する場合と比べてビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれているため、健康に良いとされる[50]。精白の際に取り除かれた糠やふすまは通常食用とせず、飼料など様々な形で直接の食用以外に使用されることが多い[51]。
穀物を製粉した場合は、たいていは次に何らかの形で粉をまとめ成形してから食べることになる。ほとんどは、まず水を加えて練り上げ、必要に応じ塩などを混ぜて生地を作る。この生地をそのまま、あるいは発酵させて火を通したものがパンである[52]。パンはコムギから作るものがもっとも一般的であるが、トウモロコシやライムギなどから作られるパンも根強い人気がある。また、この生地を細長く切って成形したものを麺と呼び、これも世界中で広く食される。麺もやはりコムギから作るものが最も一般的であるが、コムギの出来ない東南アジアにおいては麺はコメから作られるものが多い。また日本ではソバを麺にして食べるが、ソバ単体の場合麺状にした場合ちぎれやすくなるため、つなぎとしてコムギを使用することも多い。ただし麺は作るのに手間がかかるため、近代において製麺機が実用化されるまではどの文化圏においてもかなりのごちそうとされていた[53]。こうした伝統的な調理法のほか、19世紀後半に穀物をローラーで圧搾しフレーク状にする技術が開発されたため[54]、これ以後、穀物を加熱加工して長期保存に適するようにした、いわゆるシリアル食品が開発され、朝食を中心に広く利用されている。
また、多めの水で穀物を煮た粥も調理が簡単であり、古くから広く世界で利用されてきた穀物調理法である。粥はそのまま煮るだけなので粒食もできるが、アフリカのウガリのように一度粉にしたものを粥にして食することもある。この場合、水分が多ければ普通の粥となるが、水分が少なければ粥というより粘りの強いペースト状の固体となる[55]。
一部の穀物には、アミロースを含む粳(うるち)性のものと、アミロースを全く、あるいはほとんど含まない糯(もち)性のものの二つに分かれているものがある。本来、穀物は粳性であり、糯性のものはそこから変異して誕生したため、なかには糯性の品種が存在しない穀物も存在する。また、糯性はうるち性に比べて劣性遺伝であるうえ交雑しやすいため、自然状態では存続が難しく、糯性を好む人々が品種維持の努力を継続して初めて品種として継続するものである[56]。糯性品種が存在するものとしては、コメ(もち米)を筆頭に、トウモロコシ、オオムギ(もち麦)、アワ(もち粟)、キビ、モロコシ、アマランサスなどがある。糯性の穀物は調理すると粘性が高くなるため、これを利用して、蒸したもち米をついて作る餅のような様々な食品が生み出された。
また、トウモロコシやソルガムなど一部の穀物には、火を通すと大きくはじける爆裂種(ポップ種)が存在し、ポップコーンなどに加工される[57]。
-
朝食のシリアル類。
-
中国の粥。
-
日本の米飯。
-
ビーフン。コメを粉にしてから麺にしたもの。中国南部、台湾、東南アジアなどで広く食べられている。
-
中国北部の麺類
-
日本のうどん
-
トウモロコシのトルティーヤ。メキシコでは主食。
-
トウモロコシから作ったウガリ
-
茹でトウモロコシ。世界各地で食されている。
飼料
[編集]穀物は飼料としても古くから盛んに使用されてきた。穀物は飼料としては、牧草などの粗飼料と対比して濃厚飼料と呼ばれ、栄養価が高く近代的な畜産には不可欠なものである。飼料用としてもっとも重要な穀物はトウモロコシである。トウモロコシは中南米やアフリカにおいては主食としても使用されるものの、主な用途は消費の64%を占める飼料用である[58]。この他、かつてはウマの飼料としてエンバクが非常に重要な飼料用作物であったが、第一次世界大戦後に軍用や輸送用のウマの需要が激減し、これにともなって飼料作物としてのエンバクの需要も激減して、栽培も少なくなった。ただし、現代においてもウマの飼育においてはエンバクはもっとも重要な飼料の一つである[59]。この他、オオムギの飼料向け割合も高い[60]。また、モロコシもアフリカや南アジアを除いては飼料用の利用がほとんどを占める。
醸造
[編集]穀物はそのまま食料として用いるほか、様々な食品に加工されても使用される。主食用以外の穀物用途で最も重要なものは、穀物を発酵させて醸造し、酒を造ることである。穀物は果実と並び醸造酒の原料として広く用いられるものである。[61]たとえば、オオムギを原料としてビール、コメを原料として日本酒が造られている。様々な種類の酒が各民族によって作られてきた。穀物の中で醸造用としての用途が特に大きな割合を占める穀物としては、ビールの原料であるオオムギが挙げられる[62]。
穀物は酢酸の原料として用いることも可能であり、例えば米酢のように実際に穀物から作られている酢も存在する[63]。このように、穀物は調味料の原料として用いられることもある。
その他
[編集]コーン油[64]や米糠から取る米油[63]などのように、一部の穀物は食用油の生産にも使われている。デンプンは糖化と異性化によって水飴、コーンシロップのような甘味料に分解できる。醸造・バイオマスエタノールはこの糖化を挟む。
2000年代には、穀物を醸造して得られるエタノールをアルコール燃料(バイオマスエタノール)として、機械装置の動力に利用する研究と実用化も進んでいた[65]が、このバイオマスエタノール生産の急成長は穀物価格の急上昇を招き、2007年-2008年の世界食料価格危機の主因の一つとなる[66]など問題が発生したことから、2015年頃からバイオマスエタノール利用は大きく鈍化している[67]。なお穀物由来のバイオエタノールの主要生産国はアメリカで、主にトウモロコシから生産を行っている[68]。
種を収穫した後の残部も広く使用され、たとえば米の茎部分である藁は工芸材料として広く利用されるほか、籾殻も充填材として利用される[63]。コムギの藁は敷き藁などに利用され[69]、またトウモロコシの茎は燃料や製紙原料として利用される[70]。
日本と穀物
[編集]特に生産量が多く主食として扱われることも多いイネ、ムギ類、トウモロコシを除く、その他の穀物を雑穀と呼んで区別することもある[71]。中国や日本においては、特に主要な五種の穀物を五穀と呼び重視してきた。この五穀の内容は時代や書物によって様々であり、主要穀物の総称としての意味合いが強かった。現代日本においては、コメ、ムギ、アワ、マメ、キビまたはヒエを指して五穀と呼ぶことが多い[72]。
種類
[編集]禾穀類(イネ科)
[編集]- 米(イネ)
- トウモロコシ(トウキビ)
- 麦類
- キビ
- アワ
- ヒエ
- モロコシ(タカキビ、コウリャン、ソルガム)
- シコクビエ
- トウジンビエ
- テフ
- フォニオ
- コドラ(コードンビエ)
- マコモ(野生植物と栽培植物の中間)
菽穀類(マメ科)
[編集]- ダイズ
- アズキ
- リョクトウ
- ササゲ
- インゲンマメ
- ライマメ
- ラッカセイ
- エンドウ
- ソラマメ
- レンズマメ
- ヒヨコマメ
- レンズマメ(ヘントウ)
- ベニバナインゲン
- ケツルアズキ
- モスビーン
- テパリービーン
- タケアズキ
- フジマメ
- ホースグラム(英: Macrotyloma uniflorum)
- バンバラマメ
- ゼオカルパマメ
- キマメ
- ナタマメ
- タチナタマメ
- グラスピー(英: Lathyrus sativus)
- クラスタマメ
- シカクマメ
- ハッショウマメ(英: Mucuna pruriens)
- イナゴマメ
- ルピナス
- タマリンド
その他擬似穀類
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 強勢雑草として忌み嫌われるものもあり、日本では、イネの水田におけるヒエはその例として知られる。
出典
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- ^ 「地図とデータで見る農業の世界ハンドブック」p47-49 ジャン・ポール・シャルヴェ著 太田佐絵子訳 原書房 2020年11月1日第1刷
- ^ 国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.187
- ^ 国分牧衛『新訂 食用作物』(養賢堂 2010年8月10日第1版)p.249
- ^ 「食の人類史」p60-61 佐藤洋一郎 中公新書 2016年3月25日初版
- ^ 本山荻舟『飲食事典』(平凡社 昭和33年12月25日発行)p.197
関連項目
[編集]- 穀物メジャー
- 全粒穀物
- 五穀
- 玄米
- 発芽玄米
- 赤米(古代米)
- 雑穀
- フスマ
- 小麦胚芽
- シリアル食品
- 穀物菜食
- 農業、田・畑、脱穀、製粉
- グレインベルト
- 穀物乾燥貯蔵施設 - 新石器時代には、穀物は乾燥させないと品質が低下し、カビなどが生えることが知られていた。