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ISIL 2015年12月28日 (月) 23:57 より転記 - 利用者:ありぃさイスラム国は同類なので
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{{otheruses|イスラム過激派組織|英略称がISILの識別子|図書館及び関連組織のための国際標準識別子}}
'''ありぃさ'''です
{{加筆|全体像が把握できる概要節|date=2015年3月}}
== わたしがお茶をお出ししたユーザーさん ==
{{暫定記事名|date=2014年6月}}
=== こちら四名様は同一人物みたいなのです ===
{{Infobox 国
# {{IPuser2|116.82.192.62}} - (投稿ブロック歴は「暴言または嫌がらせ」で1週間、「sockpuppet: [[利用者:Watson_system|user:Watson system]]ないし模倣)」で6か月)
|公式名称 = '''{{Lang|ar|الدولة الإسلامية}}'''
# {{IPuser2|116.80.44.70}} - (投稿ブロック歴は「暴言または嫌がらせ: [[セラミック顔料]]の記事本文における他者への罵倒行為」で1週間)
|日本語国名 = ISIL <!--日本政府としての公式呼称-->
# {{IPuser2|116.80.59.221}} - (投稿ブロック歴は「暴言または嫌がらせ: 荒らし」で1週間)
|国旗画像 = Flag of the Islamic State in Iraq and the Levant.svg
# {{User2|Green Rain}} - (投稿ブロック歴は「暴言または嫌がらせ」で1日、「暴言または嫌がらせ: 2回目」で3日、「[[Wikipedia:投稿ブロック依頼/Green_Rain_延長]]」で無期限)
|alt_flag =
:なお、最新のIP氏ご本人は「[[天文学に関する記事の一覧]]の編集は偶然かぶっただけ」という理由だけをもって、GreenRain氏と同一人物であることを否定なされてますので(他にも「かぶっている」記事はたくさんあって、リスト登録に苦労するくらいなのですが)、現段階ではあくまでも「同一人物みたいだな?」という疑惑でしかないのです。したがって「このIPはブロック破りだ」などと依頼や報告等しても、管理者さんに相手にされる可能性はとても低いと思われます。わたし自身も注意喚起以上の行動をとるつもありはありませんので、今後も[[Help:ウォッチリスト|純正ヲチ機能]]で見張る程度の予定なのです。
|国章画像 = Emblem of the Islamic State of Iraq and the Levant.png
==== この方の特徴 ====
|標語 = باقية وتتمدد <br> ''Bāqiyah wa-Tatamaddad'' <br>抵抗と拡大
:※編集記事ジャンルの偏りや執着項目等は敢えて除外しています。
|位置画像 = Territorial control of the ISIS.svg
:* 都度投稿ブロックされる級の暴言癖(鉄板、ここまでの人はなかなかいない)
|位置画像キャプション = '''ISIL(IS)の勢力範囲'''(随時更新)<!--画像は随時更新されているため、日付不要-->
:* 安易に他者を荒らし認定(ありがち、あまり珍しくない)
{{legend|#c12838|事実上支配下にある地域|outline=black}}
:* 自分がやるのはいいが他人がやるのは許さないダブスタ気質(ありがち、あまり珍しくないが、暴言癖の原因のひとつかもです)
{{legend|#fefee9|領有を主張する地域|outline=black}}
|首都の種類 = [[主都]]
|首都 = [[ラッカ]]<ref>{{cite news|publisher=''Al-Monitor''|url=http://www.al-monitor.com/pulse/security/2014/06/syria-iraq-isis-invasions-strength.html|title=ISIS on offense in Iraq|date=2014-06-10|accessdate=2014-07-19}}</ref>
|公用語 = [[アラビア語]] <br>外国人戦闘員が多数いるため、[[英語]]も用いられる
|元首等肩書1 = [[カリフ]]
|元首等氏名1 = [[アブー・バクル・アル=バグダーディー]]
|面積値 = 300000
|人口統計年 = 2014年6月12日見積もり
|人口値 = 約8,000,000
|建国形態 = 独立
|建国形態追記 = [[イラク]]、[[シリア]]より
|確立形態1 = 独立宣言
|確立年月日1 = 2014年1月3日<ref name="Voice of America">{{cite web|url=http://www.voanews.com/content/iraqi-city-in-hands-of-alqaidalinked-militants/1823591.html|title=Iraqi City in Hands of Al-Qaida-Linked Militants|publisher=[[ボイス・オブ・アメリカ]]|date=2014-01-04|accessdate=2014-07-19}}</ref>
|確立形態2 = カリフ宣言
|確立年月日2 = 2014年6月29日
|時間帯 =
|utc_offset = +3
|夏時間 =
|注記 =
|footnote1 = 現在、独立を承認した国家はない。
|footnote2 = 人口値は見積もり<ref>[http://www.nytimes.com/interactive/2014/06/12/world/middleeast/the-iraq-isis-conflict-in-maps-photos-and-video.html?_r=0 Areas Under ISIS Control] - [[ニューヨーク・タイムズ]]</ref>で、面積値は推定<ref>Steven Bucci [http://www.thespec.com/news-story/4822701-11-reasons-the-islamic-state-might-be-more-dangerous-than-al-qaida/ 11 reasons the Islamic State might be more dangerous than al-Qaida] [[:en:The Hamilton Spectator|The Hamilton Spectator]] 2014年9月4日</ref>である。
}}
{{Infobox War Faction
|name = ISIL
|war = [[対テロ戦争]]、[[イラク戦争]]、[[シリア騒乱|シリア内戦]]
|image = [[ファイル:Islamic state of iraq.jpg|200px]]
|caption =
|active = [[2006年]]10月15日 - 現在
|ideology =
|leaders = [[アブー・アイユーブ・アル=マスリー]]{{KIA}}<br />[[アブー・ウマル・アル=バグダーディー]]{{KIA}}<br />[[アブー・バクル・アル=バグダーディー]]
|clans = [[スンナ派]][[アラブ人]]
|headquarters =
|area = {{IRQ}}<br />{{SYR}}<br />{{LBA}}<br />{{LEB}}
|strength =
|partof =
|previous = [[ムジャーヒディーン諮問評議会]]
|next =
|allies = [[アンサール・アル・スンナ軍]]<br />[[アル=ヌスラ戦線]]
|opponents = [[イラク駐留軍]]<br />[[イラク治安部隊]]<br />[[覚醒評議会]]<br />[[イスラム革命防衛隊]]<br />[[ヒズボラ]]<br />[[シリア軍]]<br />[[インドネシア国軍]]<br />[[自由シリア軍]]<br />[[トルコ軍]]<br />[[アルカーイダ]]<ref name="terrortuck"></ref><br />[[ターリバーン]]<ref name="terrortuck">[http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/08/isis2.php 打倒ISISで2大テロ組織が共闘]</ref>
|battles =
}}
[[File:Syrian,_Iraqi,_and_Lebanese_insurgencies.png|250px|thumb|'''[[シリア]]・[[イラク]]・[[レバノン]]における<br />勢力状況'''(随時更新){{legend|#ebc0b3|シリア政府([[バッシャール・アル=アサド|アサド]]政権)}}{{legend|#cc829b|イラク政府}}{{legend|#ffa067|レバノン政府}}
----
{{legend|#b4b2ae|'''ISIL'''}}{{legend|#fff7fd|[[アル=ヌスラ戦線]]}}{{legend|#3e79ff|[[ヒズボラ]]}}{{legend|#cdecc9|その他のシリア[[反体制|反政府]]勢力}}
----
{{legend|#e2d974|シリアにおける[[クルド人]]勢力}}{{legend|#d2cd7e|イラクにおけるクルド人勢力}}{{legend|#d4ba79|係争地域}}<small>※シリア国内の情勢について「[[シリア騒乱|シリア内戦]]」も参照</small>]]<!--画像は随時更新中-->
'''ISIL'''(アイシル、{{lang-en|'''I'''slamic '''S'''tate in '''I'''raq and the '''L'''evant}}:イラク・[[レバント]]のイスラム国<ref>{{Cite web||date=2014.09.19 |url=http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_001243.html|title=ISILにより被害を受けたイラク国内避難民等及びレバノンに流入したシリア難民等に対する緊急無償資金協力|publisher=[[外務省]]|accessdate=2015-10-11}}</ref>)とは、'''IS'''(アイエス、{{lang-en|'''I'''slamic '''S'''tate}}: イスラム国)と名乗り<ref>[http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/09/je-suis-is_n_7032708.html 「私はIS」フランスTV局のFacebookをダーイシュ(イスラム国)が乗っ取る](2015年04月09日)</ref>、[[イラク]]・[[シリア]]間にまたがって活動する[[イスラーム過激派|イスラム過激派]]組織である。'''IS''' や'''イスラム国''' 、'''ISIS''' (アイシィス、{{lang-en|'''I'''slamic '''S'''tate in '''I'''raq and '''S'''yria}})、'''ダーイシュ'''とも呼称される<ref name="cnn35053738">{{cite news |title= 「イスラム国」「ISIS」「ISIL」 その違いは? |newspaper=[[CNN]] |date=2014-9-12 |url=http://www.cnn.co.jp/world/35053738.html|accessdate=2014-9-13 }}</ref><ref name="nagoya20150304"/>(呼称についての詳細は後節の「[[#名称・表記]]」を参照)。


== 概説 ==
:116.82.192.62氏は「sockpuppet: user:Watson systemないし模倣」として投稿ブロックされました。わたしとしてはこれは意外なことでしたが、今おもえば突然なんの根拠もなくBearpark氏を持ち出してきたりして、やや不可解な感は覚えておりました。しかしこういう落としどころがあったとは、管理者さんの秀でた実務処理センスに感服いたしました。
ISILは[[アブー・バクル・アル=バグダーディー]]指揮の下[[イスラム国家]]樹立運動を行う[[アルカーイダ|アルカイダ]]系(現在は絶縁状態)イスラム過激派組織である。イラクとシリア両国の国境付近を中心とし両国の相当部分を武力制圧し、国家樹立を宣言し、[[ラッカ]]を[[首都]]と宣言している。後述するように、外交関係の相手として[[国家の承認]]を行った国家は無い。


報道により伝えられる知見によれば、活動家たちは、ISILが大規模で組織的に活動していることに感嘆していると言い、さらに、ISILに批判的な活動家までが、ISILがわずか1年足らずで[[近代国家]]のような構造を作り上げて来たことに言及する<ref name="reuter_2014_09_05" />。ISILは「カリフ国家」([[カリフ]]の指導下で運営される国家)が中東から東は中国、西は欧州まで広がることを望んでいるとされるが、彼らが言うカリフ国家がどのようなものなのか、ラッカなどで実証しようとしているようだという<ref name="reuter_2014_09_05" />(→[[#政治]]、[[#理念・目標・政治的主張]]、[[#経済、財政]]を参照)。現地の住民らは、ISILの勢力拡大の大きな要因は、[[効率性|効率的]]で極めて現実的な[[統治]]能力にこそあると語ったとも報じられる<ref name="reuter_2014_09_05" />。
=== 凍結 ===

:わたしが短期間ながらやってきた「問題ユーザーさんに対する追跡行為」というようなものは、あまり続けても自身が目的外利用者として扱われかねないリスキーさをはらんでいると思われますので、ここで凍結いたします。今後のわたしは運営系議論等への関わりは極力ひかえ、記事の草取り(それに類する細かい更新など)のみを、微力ながらしていく所存なのです。--[[利用者:ありぃさ|ありぃさ]]([[利用者‐会話:ありぃさ|会話]]) 2014年4月25日 (金) 10:29 (UTC)
[[ロイター]]の記者が取材によって2014年9月に明らかにしたことによると、ISILは、次世代を見据えて国家モデルを構築しており<ref name="reuter_2014_09_05">{{cite news |title=焦点:次世代見据えるイスラム国、シリア北東部で「国家モデル」構築 |newspaper=[[ロイター]] |date=2014-9-5 |url=http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0H007W20140905|accessdate=2014-9-5 |author=Mariam Karouny}}</ref>、たとえばシリア北東部の砂の平原にある町々においては、[[電力|電気]]の供給、水の供給、[[銀行]]([[イスラム銀行]])・[[学校]]・[[裁判所]]などだけでなく礼拝所、[[ベーカリー|パン屋]]にいたるまでがISILによって運営されている。

ISILの特徴に、現代の[[インターネット]]や[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]や動画サイトなどを利用し、巧みな広報戦略を用いて、イラク・イランの周辺地域だけでなく、はるか離れた世界各国からでも若者を多数兵士として募っているということがあげられる。

一方、住民らは[[恐怖政治]]に不満を募らせているとの[[報道]]もなされている<ref>[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41927 石油と身代金で大儲け、ではなかった? 「イスラム国」の経済統制に市民の不満が噴出 - 講談社『クーリエビジネス』]</ref><ref name="reuter_2014_09_05" />。

有志国による激しい[[空爆]]にも関わらず、勢力の拡大を続け、[[2015年]]5月までに[[シリア]]領の過半を制圧<ref>[http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN0O60TY.html 「イスラム国」、シリア領の半分を制圧=監視団体] 朝日新聞</ref>、ISILによる統治地域の面積は、2015年6月現在、[[日本]]の国土面積より一回り小さい程度である約30万[[平方キロメートル]]にも上ったが<ref name="jiji20150609">[http://www.jiji.com/jc/zc?k=201506/2015060900536&g=int 勢力圏拡大止まらず=日本の面積に匹敵か-「イスラム国」台頭1年]時事通信</ref>、IHSジェーンズ({{仮リンク|ジェーンズ・インフォメーション・グループ|en|Jane's Information Group}})によると、同年[[12月14日]]には、1月時点より支配地を約14パーセント縮小し、支配面積は[[北海道|北海道本島]]とほぼ同じ約7万8000平方キロメートルになるなど、勢いに翳りも見えてきている<ref>[http://mainichi.jp/articles/20151229/k00/00m/030/163000c ラマディ、ほぼ制圧 IS、失地重ね陰り]毎日新聞</ref>。

== 名称・表記 ==
=== 名称の翻訳と略語 ===
2013年4月、「イラクのイスラム国」(ISI)は[[シリア]]の過激派組織[[アル=ヌスラ戦線]]と合併し、組織名を[[アラビア語]]で '''الدولة الاسلامية في العراق والشام''' ([[翻字]]: Al-Dawlatu al-ʾIslāmiyyatu fii al-'Iraaqi wa al-Shaami [[片仮名|カタカナ]][[転写 (言語学)|転写]]: アッ=ダウラ・ル=イスラーミーヤ・フィ・ル=イラーク・ワ・ッ=シャーム)とした。 شام(シャーム)の指す範囲や訳語には様々あり{{efn|「Levant([[レバント]])」とは、[[トルコ]]から[[シリア]]、[[エジプト]]、[[パレスチナ]]や[[ヨルダン]]、[[レバノン]]をも含む[[歴史シリア|大シリア]]を指したり、[[ダマスカス]]を指すときに用いられることもあるため、専門家からは訳に対する疑義が表明されることもある。一方で、「ISIS」という音は Isis (=[[イシス]]神)と同じで、英語圏の人にも聞き取りやすく記憶しやすいので、英語圏の人は好む、とも指摘されることがある。}}、以下のように訳し方によって異る表記がメディアによって用いられた<ref name="cnn35053738"/>。
{| class="wikitable"
|+ الدولة الإسلامية في العراق والشام の英訳表記と英字略称
! 英訳表記 !! 略称 !! 和訳
|-
| {{en|'''Islamic State in Iraq and the Levant'''}}
| rowspan="2" | {{en|'''ISIL'''}}(アイエスアイエル、アイシル)
| rowspan="2" | イラクとレバントのイスラム国
|-
| {{en|'''Islamic State of Iraq and the Levant'''}}
|-
| {{en|'''Islamic State of Iraq and Syria'''}}
| rowspan="2" | {{en|'''ISIS'''}}(アイエスアイエス、アイシス、イシス)
| イラクとシリアのイスラム国
|-
| {{en|'''the Islamic State in Iraq and al-Sham'''}}
| イラクとシャームのイスラム国
|}

アラビア語圏では、ISILに敵対する立場から 、الدولة الإسلامية في العراق والشام の頭字語をとった '''داعش''' (翻字:Dā'ish カタカナ転写:ダーイシュ)という略語が使われる。この語は دائس(翻字:Dāis カタカナ転写:ダーイス、意:踏みにじる者)や داحس (翻字:Dāḥis カタカナ転写:ダーヒス、意:裏切り者)などといった語に近い発音や綴りを有し、否定的なニュアンスを有する<ref>{{cite web|last1=Randal|first1=Collin|title=なぜ「ダーイシュ」の語が原理主義者を煩わせるのか|url=http://www.thenational.ae/opinion/comment/why-does-a-simple-word-like-daesh-disturb-extremists-so-much|website=thenational.ae/|accessdate=22 November 2014}}</ref><ref>[http://blogs.wsj.com/washwire/2014/12/23/one-more-name-for-islamic-state-daesh/ 「イスラム国」の新しい呼び名――ダーイシュ] - [[ウォール・ストリート・ジャーナル]]</ref>。[[ラテン文字]]表記としては「{{en|'''DAISH'''}}」のほか、アラビア語翻字を省略した {{en|'''DAIISH'''}} 、発音から英語的な綴りに直した {{en|'''DAESH'''}} という表記も用いられ、西側メディアが用いる際は {{en|DAESH}} と綴られることが多い。日本語では「'''ダーイシュ'''」<ref>[http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42854 イスラム国ではなく「ダーイシュ」、弱点を突いて解体せよ - JBpress]</ref>と表記される。

この他、 دواعش (翻字:dawā'ish カタカナ転写:ダワーイシュ)という語が用いられることもあり<ref>[http://www.youm7.com/story/2015/2/16/%D8%A8%D8%A7%D9%84%D8%B5%D9%88%D8%B1-%D9%88%D8%A7%D9%84%D9%81%D9%8A%D8%AF%D9%8A%D9%88-%D8%A7%D9%87%D8%AA%D9%85%D8%A7%D9%85-%D8%A5%D8%B9%D9%84%D8%A7%D9%85%D9%89-%D8%A5%D8%B3%D8%B1%D8%A7%D8%A6%D9%8A%D9%84%D9%89-%D8%A8%D8%A7%D9%84%D8%B6%D8%B1%D8%A8%D8%A7%D8%AA-%D8%A7%D9%84%D8%AC%D9%88%D9%8A%D8%A9-%D8%A7%D9%84%D9%85%D8%B5%D8%B1/2069989 写真と動画:エジプト空軍、リビアのダワーイシュ拠点に爆撃/エジプト空軍の報復は迅速かつ過激]</ref><ref>[http://www.alalam.ir/news/1676726 ダワーイシュ戦士9人殺害、シリア軍の待ち伏せで] - ワールドチャンネル</ref><ref>[http://www.alanba.com.kw/ar/arabic-international-news/egypt-news/537746/17-02-2015 在リビア「ダワーイシュ」に押し寄せるエジプトの波] - جريدة الأنباء الكويتية</ref><ref>[http://24.ae/article/138456/%D8%A7%D9%84%D8%A8%D8%BA%D8%AF%D8%A7%D8%AF%D9%8A-%D9%8A%D8%B1%D8%B3%D9%84-%D8%AF%D9%88%D8%A7%D8%B9%D8%B4-%D8%AA%D9%88%D9%86%D8%B3%D9%8A%D9%8A%D9%86-%D8%A5%D9%84%D9%89-%D9%84%D9%8A%D8%A8%D9%8A%D8%A7-%D9%84%D8%AA%D9%86%D9%81%D9%8A%D8%B0-%D8%B9%D9%85%D9%84%D9%8A%D8%A7%D8%AA-%D8%A7%D9%86%D8%AA%D9%82%D8%A7%D9%85%D9%8A%D8%A9-%D8%B6%D8%AF-%D8%A7%D9%84%D9%85%D8%B5%D8%B1%D9%8A%D9%8A%D9%86.aspx バグダディ、チュニジア人ダワーイシュ戦闘員をリビアに送る]</ref>、こちらは「ダーイシュ」が持つ否定的なニュアンスで必要以上に ISIL を刺激すべきでないとする立場<ref>{{cite news |title= 「ダーイシュ」ではなく「ダワーイシュ」を |newspaper=ahram |date=2015-1-15 |url=http://digital.ahram.org.eg/Policy.aspx?Serial=1759620|accessdate=2015-3-10 }}</ref>に基づいて使われる。

[[2014年]][[6月29日]]、[[カリフ]]制[[イスラム国家]]の樹立を宣言し、名称を الدولة الاسلامية في العراق والشام から '''الدولة الإسلامية''' ('''Islamic State''', 略称:'''IS''')に変更すると宣言した<ref name="AFP20140630">{{Cite news |title= シリアとイラクの武装勢力、イスラム国家樹立を宣言|date= 2014-06-30|author= Rana MOUSSAOUI|url= http://www.afpbb.com/articles/-/3019144|accessdate= 2014-06-30|agency= [[フランス通信社|AFP]]|publisher= [[AFPBB News]]}}</ref>。日本語では単に'''「イスラム国」'''と訳される。

=== 表記の混在と呼び名に対する動き ===
ISILが現れた当初から表記は一定していなかったが、ISILが樹立宣言で「イスラム国」を名乗るようになるとその変更に従うメディアと、従わずに従来の表記を使い続けるメディアが混在するようになった<ref name="mainichi20150311">{{cite news |title= ナイル.com:(47)ISをどう呼ぶか |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2015-3-11 |url=http://mainichi.jp/feature/news/20150311mog00m030008000c.html|accessdate=2015-3-17 }}</ref>。
[[国際連合]]、[[日本国政府]]、[[アメリカ合衆国連邦政府]]は「国家としての独立を宣言した、過激派組織を認めない」とする立場から、名称の変更を認めず '''「ISIL」''' を使用している<ref>[http://www.asahi.com/articles/photo/AS20150131000292.html 「イスラム国」?ISIL? どう呼ぶか、国会で論議 政府「国とは認めない」 - [[朝日新聞]] 2015年1月31日]</ref>。

2014年[[9月21日]]、[[イスラム教]][[スンナ派]]最高教育機関として知られる[[アル=アズハル大学]]のイスラム法学者団体が、このテロ組織を「イスラム国」と呼ぶことは「イスラム教および[[ムスリム]]に対する侮辱である」と強く批判し、アラブ諸国のメディアでは使わないよう求めた<ref name=irib20140922>{{cite news |title=テロ組織の「イスラム国」の呼称は不正 |newspaper=[[イラン・イスラム共和国放送]] |date=2014-9-22 |url=http://japanese.irib.ir/iraq/item/48633-%E3%83%86%E3%83%AD%E7%B5%84%E7%B9%94%E3%81%AE%E3%80%8C%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E5%9B%BD%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%91%BC%E7%A7%B0%E3%81%AF%E4%B8%8D%E6%AD%A3 |accessdate=2015-3-4 }}</ref>。

アラビア語圏においても同様の混在は起きており、樹立宣言以降もイラクやシリアなどで旧称が使われる一方、[[サウジアラビア]]やエジプトでは「イスラム国」を使うようになった。ところが、先述のアル=アズハル大学の声明を受け、元々イラクとシリアの報道で使用されていた「ダーイシュ」を各国メディアが採用するようになった。2014年以降はアラビア語圏全体で「ダーイシュ」が定着している。さらには同年[[アメリカ軍]]や[[政府 (フランス第五共和政)|フランス政府]]もこの名称の使用を公式に決めた。後に非アラビア語圏を含むイスラム世界全体に伝播している。

日本においては、[[日本国政府]]が旧称を使い続ける一方で、[[マスメディア]]は「イスラム国」の名を使うようになった。この際、「過激派組織『イスラム国』」などのように、「注釈」を交えたり、または「鍵括弧」で囲む形の表現を用いることが多い。ところが、[[ISILによる日本人拘束事件]]で[[2015年]][[1月24日]]にISILが湯川遥菜を殺害したとするメッセージを流して騒がれた翌25日、略称にすることもなく「イスラム国」という語を連呼しているメディアに対して危機感を募らせたイスラム教団体'''名古屋モスク'''が、アル=アズハル大学の声明を元に「イスラム国という名称の変更を希望する」旨を題した文書を発表した<ref name="IS">{{cite news|url=http://bylines.news.yahoo.co.jp/horijun/20150211-00042956/|title=「イスラム国」やめました|author=[[堀潤]]|work=Yahoo! ニュース|date=2015-02-11|accessdate=2015-2-17}}</ref><ref name="nagoya20150304"/>。[[後藤健二 (ジャーナリスト)|後藤健二]]を殺害する動画が配信された2015年[[2月1日]]以後は、複数の[[モスク]]に対し[[電話]]や[[メール]]で嫌がらせが相次ぎ<ref name="asahi20150205">{{cite news|url=http://www.asahi.com/articles/ASH254V9SH25OIPE04P.html|title=愛知のモスクに脅迫電話 後藤さん映像公開後に|work=朝日新聞|date=2015-02-05|accessdate=2015-03-18}}</ref><ref name="sankei20150224">{{cite news|url=http://www.sankei.com/affairs/news/150224/afr1502240024-n1.html|title=モスク7カ所に嫌がらせ 「イスラム国」絡み電話で「出て行け」|work=産経ニュース|date=2015-02-24|accessdate=2015-03-18}}</ref>、2015年[[2月9日]]におよそ30の[[モスク]]の代表者やイスラム団体などとの連名で、あわせて21のメディアに対して同じ文書を送付し「イスラム国」表記をやめるよう要望をした<ref name="IS">{{cite news|url=http://bylines.news.yahoo.co.jp/horijun/20150211-00042956/|title=「イスラム国」やめました|author=[[堀潤]]|work=Yahoo! ニュース|date=2015-02-11|accessdate=2015-2-17}}</ref>。
2015年[[2月4日]]には[[トルコ]][[大使館]]も以下のような声明を出し、日本のメディアに協力を求めている。<ref name="turkiye">{{cite web|url=http://tokyo.be.mfa.gov.tr/ShowAnnouncement.aspx?ID=226985|accessdate=2015-3-19|title=Büyükelçilik Duyurusu在京報道各社各位|publisher=トルコ大使館}}</ref>

{{Quotation|今回の事件でもイスラム諸国とその国民が様々な形でこの卑劣な蛮行を強く非難しました。しかし、日本のマスメディアが最近の報道のなかで、この蛮行に及んだテロ集団を「イスラム国」と表現していることが非常に残念であり、誤解を招きかねない表現であると強く認識しています。テロ集団の名称として使われるこの表現によって、イスラム教、イスラム教徒そして世界のイスラム諸国について偏見が生じ、日本滞在のイスラム教徒がそれに悩まされています。いわば、これも一種の風評被害ではないかと思われます。

平和を重んじるイスラム教の宗教名を汚すこの「イスラム国」という表記を、卑劣なテロ行為を繰り返す一集団の組織名としてどうか使用されないよう切に願います。世界の他の国々において「イスラム国」ではなく、DAESH、ISIL等の表現を用いる例があるように、このテロ組織に関する報道で誤解が生じない表現の仕方について是非検討いただき、イスラム教徒=悪人を連想させるようなことがないよう配慮いただきたいところです。|トルコ大使館|}}

これらの要請に対し、[[日本放送協会|NHK]]では2015年[[2月13日]]夜から「イスラム国」という呼び方を完全に廃止し、'''過激派組織IS=イスラミックステート'''という表記に変更を行った<ref>{{Cite news |title=NHK NEWS WEB 過激派組織ISについて |work=NHK NEWSWEB |newspaper=[[日本放送協会]] |date=2015-2-13 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/is/0213is.html |accessdate=2015-2-13|archiveurl=https://archive.today/WhXSR |archivedate=2015-2-13}}</ref>。
[[朝日新聞]]、[[東京新聞]]、[[毎日新聞]]では記事中の初出では'''イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)'''として残し、2回目以降は '''IS''' とした<ref name="nagoya20150304">{{cite web|url=http://nagoyamosque.com/3409.html|accessdate=2015-3-4|title=経過報告:「イスラム国」という名称の変更を希望します|publisher=宗教法人名古屋モスク}}</ref><ref>[http://gohoo.org/15022403/ 朝日と中日 「IS」表記を開始 「イスラム国」連呼回避 | GoHoo]</ref>。毎日新聞は「この変更が最善の表記という確信はないものの、「イスラム教の国」のように単純な誤解をされないよう工夫していきたい」としている<ref name="mainichi20150311"/>。

[[民間放送]]局では[[TBSラジオ&コミュニケーションズ|TBSラジオ]]の朝のニュース系情報番組『[[森本毅郎・スタンバイ!]]』で、2015年2月3日の放送分までは「イスラム国」と呼んでいたが<ref>2015年2月2日のバックナンバーのニュース・ズームアップでは「イスラム国」と記載。参照:[http://www.tbs.co.jp/radio/stand-by/zoomup/20150202.html 森本毅郎・スタンバイ! バックナンバー【2015年02月02日(月)】]</ref><ref>2015年2月3日のバックナンバーの朝刊読み比べでは「イスラム国」と記載。参照:[http://www.tbs.co.jp/radio/stand-by/zoomup/20150203.html 森本毅郎・スタンバイ! バックナンバー【2015年02月03日(火)】]</ref>、2015年2月4日の放送分から「'''『イスラム国』を名乗る過激派組織=ISIL(アイシル)'''」と変更している<ref>[http://www.tbs.co.jp/radio/stand-by/zoomup/20150204.html 森本毅郎・スタンバイ! バックナンバー【2015年02月04日(水)】]</ref>。

[[大阪市]]の[[フジニュースネットワーク|フジテレビ系列局]]・[[関西テレビ放送]]の[[自己批評番組]]「[[カンテレ通信]]」は2015年[[2月15日]]放送で「外国のメディアは「イスラム国」とは呼んでいないのになぜ日本のメディアは「イスラム国」と表記するのか」という視聴者の意見に対し、同局報道番組部は「国と名乗っているが国際社会は国家と認めていないため、フジテレビ系列では「イスラム過激派組織・イスラム国」と紹介している」と回答。これに対し番組コメンテーターの[[若一光司]]と[[わかぎゑふ]]は番組内で、前述のイスラム教団体が名称変更を要望していることなどに触れ、イスラム教と混同する人が多いため「イスラム国」表記はやめるべきだ、と述べた<ref>[http://www.ktv.jp/tsushin/150215.html カンテレ通信 2015年2月15日放送] 関西テレビ放送</ref>。なお、[[南ドイツ新聞]]、[[ル・モンド]]紙、[[エル・パイス]]紙など、欧州大陸諸国の主要紙は各国語の「イスラム国」に当たる表現を用いているように、「外国のメディアは「イスラム国」とは呼んでいない」というのは誤りであり、呼称に関しての混乱が見られるのは日本に限った話ではない。

[[世界気象機関]]では2015年[[4月17日]]、太平洋北東部に発生する[[ハリケーン]]の命名リストからIsisを外し、2016年のリストからは代わりにIvette(イヴェッテ)を使うと発表した。<ref name="jiji20150418">{{cite news|url=http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2015041800109|title=ハリケーン「イシス」はだめ=「イスラム国」別称と同じつづり-世界気象機関|work=時事通信|date=2015-04-18|accessdate=2015-4-18}}</ref><ref name="asahi20150418">{{cite news|url=http://www.asahi.com/articles/ASH4L0GD4H4KUHBI028.html|title=ハリケーン名に「Isis」やめます 世界気象機関|work=朝日新聞|date=2015-04-18|accessdate=2015-4-18}}</ref>。

世界中の[[ムスリム]]からは「あれはイスラム教を詐称した、ただの犯罪集団だ。断じて[[イスラム教]]ではない」とされ、世界各国のイスラム教団体が、ISILが[[イスラーム|イスラム]]を勝手に名乗ることに憤慨している<ref>[http://japanese.irib.ir/programs/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E6%83%85%E5%8B%A2/item/46639-%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E6%95%99%E3%81%AB%E5%8F%8D%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%81%A8%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E5%9B%BD イスラム教に反するイラクとシャームのイスラム国] イランラジオ日本語 2014年7月14日</ref><ref>[http://jmaweb.net/info/830946 ISIL日本人殺害事件に対する声明] 日本ムスリム協会 2015年2月2日</ref><ref>{{Cite web |url=http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20150202-00000002-nnn-soci |title=イスラム教徒“怒りと不安” 都内のモスク |accessdate=2015-02-05 |date=2015-02-02 |publisher=[[日本テレビ放送網|日本テレビ]] |archiveurl=http://web.archive.org/web/20150202113005/http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20150202-00000002-nnn-soci |archivedate=2015-02-02 deadlinkdate=2015-03-08 }}</ref><ref>[http://www.nnn.co.jp/news/150201/20150201008.html 「テロリズム認めていない」 ムスリムの留学生訴え] [[日本海新聞]] 2015年2月1日</ref><ref>花房吾早子 [http://www.asahi.com/articles/ASH214TRBH21PTIL005.html 国内のイスラム教徒も怒り 「言動、理解できない」] [[朝日新聞]] 2015年2月1日</ref><ref>[http://www.saitama-np.co.jp/news/2015/02/02/10.html 過激派テロ「教えに反する」 春日部のモスクでイスラム教徒] [[埼玉新聞]] 2015年2月2日</ref><ref>{{Cite web |url=http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2408909.html |title=トルコ市民「これはイスラム教ではない」 |accessdate=2015-02-05 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20150205195927/http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2408909.html |archivedate=2015-02-05 |publisher=[[TBSテレビ]] |date=2015-02-01 }}</ref><ref>[http://www.sponichi.co.jp/society/news/2015/02/05/kiji/K20150205009757100.html モスクに嫌がらせ電話相次ぐ「イスラム国がイスラム教徒と混同されているのでは」] [[スポーツニッポン]] 2015年2月5日</ref><ref>[http://www.huffingtonpost.jp/2015/03/10/queen-rania-drop-the-first-i-in-isis_n_6844452.html 「ダーイシュ(イスラム国)にはイスラム的要素が全くない」ヨルダン王妃が非難] 2015年03月11日</ref>。

== 政治 ==
[[アブー・バクル・アル=バグダーディー]]を最高指導者とし、「財務担当」「国防担当」「広報担当」という役割を持つ[[行政機関]]の「評議会」が存在し、さらにその下にはシリア担当とイラク担当の副官が半数ずつおり、副官に任命された24人の県知事がその下におり、彼らが支配地域に配属され[[治安]]や[[租税|徴税]]などを行っている<ref name="shincho20150205" />。「評議会」の構成員にいるのは旧イラク軍元将校や政治・行政経験のある[[バアス党]]員などイラク人である。[[サッダーム・フセイン]][[政権]]時代の元[[将校]]や元[[政治家]]が現指導体制の中核を担っており<ref>{{cite news|title=イスラム国:国家的統治 フセイン政権残党が組織|newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-9-15 |url=http://mainichi.jp/select/news/20140915k0000m030093000c.html|accessdate=2014-9-15 }}</ref>、バグダーディーの下の最高指導部に「シリア担当」のアブー・アリー・アンバーリー(旧イラク軍[[少将]]、2015年12月12日シリアでイラク軍の空爆で殺害)と「イラク担当」のアブー・ムスリム・トゥルクマーニー(旧イラク軍[[中佐]]、2015年8月18日[[モスル]]で殺害された)がおり、どちらも旧イラク軍将校である。

ISILの広報担当が主張するには、「これはムスリムの国だ。抑圧されたムスリム、孤児、夫と死別した女性、そして貧困にあえぐ人たちのための国だ」「イスラム国の人々は生命と財産の安全を保障され、(従来の国境を越えてビザなしで)自由に移動できる」と主張している。この言葉は[[シリア騒乱|シリア内戦]]で疲れ果てた人たちの心をつかみ、ISILに支配された当初、これを歓迎した住民もいる。ラッカが支配下に置かれた時、住民たちは街はお祭り騒ぎになったという<ref name="newsweekjapan_isis-16">{{cite news |title=「カネ不足」に悩むISISの経済危機|newspaper=[[ニューズウィーク]] |date=2015-10-6|url=http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/10/isis-16.php|accessdate=2015-10-17|author=ミレン・ギッダ}}</ref>。

ISILには、これらの体制がイスラム法と合致しているか審査する宗教機関が存在する。仮に現体制がイスラム法に背いた場合、退陣を迫る権利を有しているという<ref>{{cite news|title=ISISの指揮系統 最高指導者1人、副官2人に知事24人|newspaper=[[CNN]] |date=2014-9-21 |url=http://www.cnn.co.jp/world/35054085-2.html|accessdate=2014-9-21 }}</ref>。
[[シャリーア]]([[イスラム法]])の厳格な運用で[[戒律]]が極端に厳しく、[[酒]]、[[タバコ]]が厳禁、女性には全身を隠し目だけを出す黒い服装の着用を義務付け、一人での外出も禁止、さらに夜7時以降は男女を問わず全員外出禁止令を発令。ヒスバと呼ばれる宗教警察が[[市民]]を監視し、検問所を各所に設け、住民の出入りは厳格に管理される。[[警察官]]らは、[[トヨタ]]の[[ピックアップトラック]]で巡回し、警戒する。肌を露出している女性を見かけるとその場で[[鞭打ち]]100回の刑を課し、飲酒や喫煙が発覚すると[[刑務所]]へ入れられたり、指を切り落とされたりする。こうした厳罰により住民に恐怖心を植え付けることで支配していると週刊新潮は分析している<ref name="shincho20150205" />。

[[イラク]]、[[イラン]]、[[シリア]]弱体化を狙う[[サウード家|サウジアラビア王族]]の[[バンダル・ビン・スルターン]](又はその背後の[[サウジアラビア総合情報庁]])が陰から資金提供をしていたとも言われ、イランや駐シリア[[ヨルダン]][[特命全権大使|大使]]、一部のジャーナリスト、(2013年10月時点では)学者は、バンダルこそがアルカイダやISILなどの過激派の真の指導者だと主張していた<ref>[http://en.alalam.ir/news/1526167 Saudi Prince is real leader of al-Qaeda] ALALAM 2013年10月19日</ref><ref>[http://www.intrepidreport.com/archives/13495 ‘Bandar Bush’ is back calling the shots on ISIL’s advance through Iraq] Intrepid Report 2014年7月7日</ref><ref>[http://www.globalresearch.ca/global-terrorism-and-saudi-arabia-a-retrograde-rentier-dictatorship/5364556 Global Terrorism and Saudi Arabia: Bandar’s Terror Network] Global Reseach 2014年1月11日</ref>。ただし、バンダルが解任された2014年頃からそれまでISILを静観してきたサウジアラビアもISILを非難するようになった([[#対外関係]])。

=== 行政 ===
[[役所]]、[[裁判所]]、[[警察署]]などの行政機関は従来からの建物を使用しているが、職員の多くはISIL側の人間に代わっている。ただし[[発電所]]、[[浄水場]]など専門知識を要する施設では、元の職員がそのまま勤務している。ジャラーブルスや[[マンビジュ]]といった町は[[ユーフラテス川]]という水源から近いため[[水道]]は24時間使えるが、電気の使用は1日3~4時間に制限されている。また、ラッカでは電気、水道ともに1日3時間程度しか使えない状況である<ref name="shincho20150205" />。

2014年11月の[[朝日新聞]]の記事によると、ISILは支配地域の住民のために 独自の[[パスポート]]も発行しているという<ref name="asahi_2014_11_13">{{cite news |title=「イスラム国」通貨発行へ オスマン帝国を模倣し正統性 |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2014-11-13 |url=http://www.asahi.com/articles/ASGCG02FWGCFUHBI01V.html |accessdate=2014-11-13 | author=渡辺淳基}}</ref>。しかし、外交相手として承認した国家は存在しないのでそのパスポートが使える国は無い<ref>{{cite news|url=http://www.jiji.com/jc/v4?id=isis0003|title=イスラム国 恐怖統治の実態|newspaper=時事ドットコム|publisher=[[時事通信社]]|accessdate=2015-02-07}}</ref>。

[[教育]]は様変わりし、[[ロンドン]]に拠点を置くシリア人権監視団体の職員の証言では、[[哲学]]や現代政治の授業は廃止され、[[コーラン]]を読み込む授業が増え、語学は[[アラビア語]]だけで歴史はイスラム史のみとなっている。自然科学分野では、現実に役立つエネルギー、資源に関する授業だけである<ref name="shincho20150205" />。

=== バアス党との関係 ===
イラクでは宗派対立の解消・旧バアス党系勢力等との融合に向けた取り組みが本格化し、2007年8月26日、[[ヌーリー・マーリキー|マリキ]][[イラクの首相|首相]]は政権と対立関係にある[[スンナ派]]を含む主要宗派・民族指導者と協議が行われ、宗教対立を起因とするテロ事件の発生が減少していた<ref>[http://www2.jiia.or.jp/pdf/extpub/090410-motegi_hitoshi_3.pdf 2008年テロ動向分析を基にした今後の国際テロ動向予測] 東京海上日動リスクコンサルティング株式会社 ERM事業部長 茂木寿</ref>。

イスラム国は6月下旬に新国家建設を一方的に宣言した後、モスルでバアス党の元党員や旧政府軍幹部を次々と拉致していた<ref>[https://web.archive.org/web/20140718165523/http://mainichi.jp/select/news/20140715k0000e030231000c.html イラク:スンニ派、内紛激化…イスラム国と旧政権残党] [[毎日新聞]] 2014年7月15日 アーカイブ</ref>。2014に行われたISILによる大規模なイラク侵攻時にはバアス党勢力との交戦も確認されている<ref>[http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0F404J20140629 焦点:スンニ派武装勢力のもろすぎる関係、分裂でイラク混沌化も] 2014年6月29日 [[ロイター]]</ref>。また、フセイン政権のナンバー2だった[[イッザト・イブラーヒーム]]元[[革命指導評議会]]副議長は2015年に[[イラン]]とISIL双方をイラクの敵と糾弾しており<ref>[http://www.theguardian.com/world/2015/may/16/iraqi-audio-recording-shows-saddam-husseins-deputy-may-still-be-alive "Iraqi audio recording shows Saddam Hussein's deputy may still be alive"]. The Guardian. 16 May 2015. </ref><ref>[https://www.middleeastmonitor.com/news/middle-east/18670-al-douri-criticises-isis-iran-hails-operation-decisive-storm "Al-Douri criticises ISIS, Iran, hails Operation Decisive Storm"]. Middle East Monitor. 16 May 2015. </ref>、同年に[[イラク治安部隊#イラク軍|イラク軍]]に殺害されたとされる<ref>[http://www.jiji.com/jc/zc?k=201504/2015041700970&g=int 「イスラム国の黒幕」殺害か=フセイン元大統領側近-イラク] 時事通信 2015年4月17日</ref>。

=== 住民 ===
ISILは、シリアとイラクの支配地域で、少なくとも800万人を支配下に置いているという<ref name="wall_street_journal_20140828">NOUR MALAS AND MARIA ABI-HABIB [http://jp.wsj.com/articles/SB10001424052970203483604580118851498874896 イスラム国の豊富な資金源 拡大する闇取引] {{要登録}} [[ウォール・ストリート・ジャーナル]] 2014年8月28日</ref>。

== 理念・目標・政治的主張 ==
[[日本エネルギー経済研究所]]中東研究センターの保坂修司副センター長は「イスラーム国の思想を理解するには、イスラームの基本的な思想、基本的な法学理論・政治理論を知らなければならない」と指摘した<ref name="hosaka">日本エネルギー経済研究所中東研究センター 副センター長の保坂修司{{PDFlink|[http://www.jnpc.or.jp/files/2014/12/2e3da2b77f6ba05bed797ed93f71b251.pdf 「イスラーム国をめぐる諸問題」]}} pp.4-7, 2014年12月4日</ref>。ISILの者たちは、自分たちの存立の根拠を古い古典的な議論の中に見出そうとする傾向があり、例えば'''[[サラフィー主義]]'''や'''[[カリフ|カリフ制]]'''についてある程度理解する必要がある<ref name="hosaka" />と指摘されているのである。

=== サラフィー主義 ===
《'''[[サラフィー主義]]'''》というのは、サウジアラビアなどの[[ワッハーブ派]]とほぼ同一視することができる、「[[ムハンマド]]の没後3世代(あるいは300年間)に見られた世の状態が理想的であった」とする復古主義的な思想である。《反シーア派》、<ref name="hosaka" />すなわち「シーア派が悪い」と考えるので、サウジアラビアなどを攻撃する時も、シーア派に対する攻撃を優先すべきだと考え、サウジアラビアの王族ではなくシーア派である同国の民衆を攻撃するという選択をした<ref name="hosaka" />。

サラフィー主義の他の特徴としては、「アッラーのみを信じなければならない」と厳格に考え、イスラムの他派が作った 聖者廟(聖者を記念する墓)や崇拝対象となった樹木などを、[[偶像]]として破壊する行為がある<ref name="hosaka" />。イスラム的な「勧善懲悪」を重視し、サウジアラビアのように宗教警察を置き、1日5回の祈りをしなければならないとして、それを守らない人を[[逮捕]]して祈りをさせたり、クルアーン(コーラン)やハディースに内容の書かれている刑罰、「[[ハッド刑]]」をサウジアラビア同様に導入し<ref name="hosaka" />、「窃盗をしたら左手首を切り落とす」「姦通をすれば[[石打ち刑]]に処す」などといった刑罰を実際に行っている<ref name="hosaka" />。こうしたことが、他国においては[[人権蹂躙|人権を侵害]]しているように扱われるという結果を生んでいる<ref name="hosaka" />(→[[#人権侵害と事件]]を参照)。

=== カリフ制 ===
{{main|カリフ|歴代カリフ一覧}}
'''[[カリフ]]制'''というのは、預言者ムハンマドが没したのちの[[632年]]に[[アブー・バクル]]が「カリフ(預言者の代理人)」に就任して以降続くイスラムにおける政治制度のことである<ref name="hosaka" />。アブー・バクル、ウマル、ウスマーン、アリーのムハンマドの一族の互選による[[正統カリフ]]時代と、[[ムアーウィア]]を初代とする世襲カリフ王朝[[ウマイヤ朝]]、そしてそれを打倒したアル・アッバースを初代とする[[アッバース朝]]が成立した。しかし、[[バグダードの戦い|1258年にアッバース朝がモンゴル軍に滅ぼされて]]以降「カリフ」はエジプトの[[マムルーク朝]]の庇護を受けていたが、[[オスマン帝国]]がマムルーク朝を滅ぼした時に「カリフ」の権威を継承した。このオスマン帝国の「[[スルタン=カリフ制]]」は[[1923年]]にトルコ共和国が廃止を宣言するまで継続した。「スルタン=カリフ制度」はオスマン帝国の君主がスンニ派の権威を帯びただけの虚構的なものであったので、ISILはオスマン帝国のそれは無視している。《カリフ制》というのは、多くのイスラム諸国、多くのイスラム教徒([[ムスリム]])から「理想の国家」「理想の政治体制」と認識されている<ref name="hosaka" />。初期の[[イスラム運動]]{{要曖昧さ回避|date=2015年11月}}の指導者[[ラシード・リダー]]や[[ムスリム同胞団]]などでも、《カリフ制》を理想の国家として、カリフ制度の復活を目指しており、アルカイダにとっても《カリフ制》が理想的国家である<ref name="hosaka" />。

ただし、カリフ制が廃止されてから(1923年)ずいぶん長い年月が経っているため、ほとんどのムスリムにとって、その役割などに関して具体的なイメージが湧かず、漠然としていて、曖昧な考えしか持っていない<ref name="hosaka" />。そういう状況の中、ムスリム同胞団から分岐した解放党などは、《カリフ制度》を明確に理論化し、イスラムの国家制度の中に組み込もうとしている<ref name="hosaka" />。このことについて「イスラーム国がカリフ制度が実現したかのようにみせたということに大きな意義がある」と保坂修司・日本エネルギー経済研究所中東研究副センター長は語っている<ref name="hosaka" />。
[[画像:Claim to power of ISIS.png|thumb|right|300px|2014年時点で、ISIL側が支配すべきと主張している地域(オレンジ色の場所)<ref>出典、関連記事 [http://kurier.at/politik/ausland/irak-kreuzigung-als-beweis-ihrer-ordnung/72.708.830 Kurier「Kreuzigung als Beweis ihrer Ordnung」]</ref>。]]

=== 主張する領土 ===
[[第一次世界大戦]]中の1916年に、[[イギリス]]は[[フランス]]や[[ロシア]]とともに[[オスマン帝国]]の領土を、アラブ人やクルド人などの現地住民の意向を無視して、自分たちの勢力圏を決める秘密協定「[[サイクス・ピコ協定]]」を締結し、戦後その協定に修正を加えて国境線を引いた。オスマン帝国領から西欧[[列強]]の[[植民地]]となった地域はその後独立したが、[[シリア]]、[[レバノン]]、[[イラク]]、[[ヨルダン]]といった国々に分割されたという歴史がある<ref name="sankei_20140629">[http://www.sankei.com/world/news/140629/wor1406290021-n2.html (3)覆された中東秩序 軋む「押しつけの国境」] 産経ニュース 2014年6月29日</ref>。西欧列強は中東の古い秩序を根こそぎひっくり返してしまった<ref name="sankei_20140629" />。西欧列強が秘密協定によって引いた国境線によって作られた国々の枠組みは「サイクス・ピコ体制」と呼ばれている<ref name="sankei_20140629" />。ISILは、目標の一つとしてサイクス・ピコ体制の打破を掲げている<ref name="sankei_20140629" />。「押しつけられた国境」を消し去ろうとしているかのようである<ref name="sankei_20140629" />。

ISILは、イラクやシリアなどの中東諸国を、サイクス・ピコ協定に代表される[[ヨーロッパ]]の線引きにより作られた「サイクス・ピコ体制」だとしてこれを否定し<ref>[http://sankei.jp.msn.com/world/news/140629/mds14062909010002-n2.htm (3)覆された中東秩序 軋む「押しつけの国境」]、[[産経新聞]]、2014年6月29日、同年8月13日閲覧</ref>、武力によるイスラム世界の統一を目指している。

2014年、ISILは、「5年後に占拠する領土のプラン」を発表したと[[報道]]された<ref name="breitbart201407">[http://www.breitbart.com/Big-Peace/2014/07/01/ISIS-Releases-Map-of-5-Year-Plan-to-Spread-from-Spain-to-China ISIS RELEASES MAP OF 5-YEAR PLAN TO SPREAD FROM SPAIN TO CHINA]、BREITBART、2014年7月1日、同年11月23日閲覧</ref>(異論もある<ref>{{Cite news |title=Don't believe the people telling you to freak out over this “ISIL” map |newspaper=Quartz |date=2014-07-01 |author=Tim Fernholz |url=http://qz.com/228833/dont-believe-the-people-telling-you-to-freak-out-over-this-isil-map/ |accessdate=2014-11-23}}</ref>)。彼らが発表したとされる「領土」は[[スペイン]]から[[アフリカ]]北部、[[中近東]]を経て[[インド]]、[[中華人民共和国|中国]]にまで及んでおり、歴代の[[イスラム王朝]]の領土と重なっている。そしてその区割りは現在の国境とは異なっている。

2014年7月に行われた最高指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーの演説では、ISILは将来的には[[ローマ]]へ侵攻するとしている<ref>{{Cite news|title=「イスラム国」バグダディ容疑者が動画で初登場 最高指導者カリフを名乗る【イラク情勢】|url=http://www.huffingtonpost.jp/2014/07/07/isis-leader-abu-bakr-al-baghdadi_n_5562501.html |newspaper=ハフィントン・ポスト |date=2014-07-07 |accessdate=2015-03-01 }}</ref>。

彼らが発表したとされる「領土」には、イラクを除いて古称によると思われる独自の名称が付されている{{efn|報道されたラテン文字表記の地図には、アラビア語のラテン文字転写に様々な誤りがある、と指摘されている。地図にある Orobpa は Oroba ないし Ouroba、Qoozaz は Qoqaz、また Anathol は Anaṭol が正しいという<ref name="reddit201407">[http://www.reddit.com/r/MapPorn/comments/29vlc5/isis_released_map_of_5year_plan_to_spread_from/ ISIS Released Map of 5-Year Plan to Spread from Spain to China[475x356]]、reddit.com、2014年7月4日、同年11月23日閲覧</ref>。}}。
*アナトール(Anaṭol) - [[トルコ]]
*[[アンダルス]]([[:en:Andalus|Andalus]]) - [[スペイン]]、[[ポルトガル]]
*[[マグリブ]]([[:en:Maghreb|Maghreb]]) - アフリカ北西部
*[[ヒジャーズ]]([[:en:Hijaz|Hijaz]]) - [[サウジアラビア]]南部
*イラク(Iraq) - 現在のイラクからサウジアラビア北部の東半分まで
*[[クルディスタン|コルディスタン]](Koldistan) - トルコ、イラク、[[イラン]]の[[クルド人]]居住地
*[[大ホラーサーン|ホラーサーン]]([[:en:Greater Khorasan|Khurasan]]) - 西はイランから[[インド]]まで、北は[[カザフスタン]]、東は中国西部([[チベット自治区]]、[[新疆ウイグル自治区]]の西半分)にまで達する。ただし[[バングラデシュ]]は含まれていない。
*シャーム([[:en:Sham|Sham]]) - シリア、[[イスラエル]]からサウジアラビア北部の西半分まで
*コーカズ([[:en:Qoqaz|Qoqaz]]…[[アラビア語]]で『[[コーカサス]]』) - [[ロシア]]からイランにかけての[[カスピ海]]西岸。
*ウーローバ([[:en:Ouroba|Ouroba]]) - [[東ヨーロッパ|南東ヨーロッパ]]及び[[ギリシャ]]。東は[[クリミア半島]]にまで達する。
*アルキナナ(The land of Alkinana) - [[エジプト]]、[[スーダン]]及び[[リビア]]東部。
*ハバシャ(The land of [[:en:Habesha people|Habasha]]) - [[カメルーン]]から[[アフリカの角]]にかけてのアフリカ中部。
*ヤマン(Yaman) - [[イエメン]](「ヤマン」はイエメンのアラビア語での正式名称)。

ただし、[[中東調査会]]の高岡豊は、2014年11月の段階で、領土の主張は大義名分に過ぎず、ISILは支配した領域の統治を考えず、イナゴの大群のように移動しながら殺人、誘拐、略奪などを繰り返す運動体にすぎない、とした<ref>{{cite news |title=疎外された若者を結集する「イスラム国」 |author=内田通夫 |newspaper= [[東洋経済新報社|東洋経済]]|date=2014-11-8 |url=http://toyokeizai.net/articles/-/52847 |accessdate=2014-11-9}}</ref>。また[[池内恵]]は、2014年11月の雑誌で「イスラーム国はオスマン帝国の復活を望んでいるのではなく、初期[[イスラム帝国]]のように、スンニ派アラブ人のカリフのもとに、イスラム教徒の諸民族や異教徒(キリスト教徒とユダヤ教徒)を支配下におく体制を目指している」とした<ref>(『[[エコノミスト]]』2014年11月11日号 [[池内恵]]「イスラム成立とオスマン帝国崩壊」より) - 池内恵は「《今、サイクス・ピコ協定を否定する》というイスラーム国の主張に、《欧米が勝手に引いた国境線が悪い》と漠然と共感する日本人もいるようだが、サイクス・ピコ協定を否定すれば、戦乱やジェノサイド(大虐殺)を再び引き起こすということである。(中略)その過程でどれだけの人命が失われるか想像を絶する。またその終着点も全く見えてこない。」「《サイクス・ピコ協定を放棄》という主張からは平和も秩序も生まれないのである。」と述べた。</ref>。

=== イスラム法の重視・実行 ===
バグダーディーはカリフ就任演説で「私はあなた方から支配権を担った。私はあなた方の中で最も優れているわけではない。私が正しい時には私を支援してくれ。私が悪かったなら私を正してくれ。」「あなた方がアッラーとアッラーの使徒に従順であったように、私に従順であれ。私がアッラーとアッラーの使徒に逆らうような行為や態度示すのなら、あなた方が私に従順である必要はない。」と述べ、バグダーディーがシャリーアにしたがって行動する限り、支持してくれるように呼びかけており<ref>[http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/pdf/pdfNews20140721_164156.pdf アル=バグダーディー、自らの力を誇示]Mardomsalari 2014年7月7日</ref>、[[シャリーア]]([[イスラム法]])の重視を明言している。

ISIL側の主張によると、シャリーアの下に活動をしているとしている<ref name="shincho20150205">週刊新潮2015年2月5日号 特集記事「「イスラム国」大全」</ref>。
週刊新潮の情報によると、ISILは自らに都合よく解釈したシャリーア(イスラム法)を住人にのみ厳格に適用しており、[[イスラム教]]を悪用した[[恐怖政治]]で支配地域の住民らを支配している<ref name="shincho20150205" />。尚、自分たちでは、イスラムの教えに反する行為(焼殺)<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000679/20150205-OYT1T50116.html イスラム教から逸脱…操縦士焼殺を宗教界が非難] [[読売新聞]] 2015年2月6日</ref>などを行っており、自分たちに対しては厳格に運用しておらず、どちらかと言えば住民を抑圧・[[弾圧]]したり[[虐殺]]行為を正当化する為にイスラム法の文言を利用している。イランの主要紙「ジャーメ・ジャム」紙によると、住民に対する厳格な戒律の強要は自らの道徳的逸脱の隠蔽のために行われているものであるという<ref name="Jam20150203">[http://www.jamejamonline.ir/newspreview/1819227377341556691 アブーバクル・バクダーディーからイラクの女性たちへの贈り物]ジャーメ・ジャム 2015年2月3日</ref>。同紙はISILが「国民」に戒律に従った服装をさせるために女性に衣類の無償配布を開始したことも報じている<ref name="Jam20150203" />。[[2015年]][[8月27日]]までには、若者を中心に広まっている男性の細身の服装を「敵の慣習」として禁止した<ref>[http://www.sankei.com/world/news/150828/wor1508280025-n1.html 「敵の慣習だ」男性の細身の服装、宗教警察が取り締まり]産経新聞</ref>。また、同性愛はイスラム法に反することから、同性愛者を少なくとも30人以上処刑したとされている<ref>[http://www.sankei.com/world/news/150825/wor1508250016-n1.html 「イスラム国」が性的少数者を迫害 安保理が初討議]産経新聞</ref>{{efn|もっとも同性愛を理由とする死刑はISILに限ってのことではなく、中東を中心として戒律に厳格な国では一般的なことである。[[イスラーム教徒による性的マイノリティー迫害]]の項目も参照のこと。}}。

ISILは、実効支配地域において、従来の[[教育]]制度を大きく改めることを表明している。[[歴史]]や[[哲学]]、[[公民 (教科)|公民]]、[[体育]]、[[音楽]]、[[図画工作|図工]]などの[[世俗主義|世俗的]]な[[学校教育]]を全面的に禁止し、[[シャリーア|イスラム法]]の極端な解釈に基づく過激な思想教育を児童に教えている。[[教員|教師]]にも、イスラム法の講座を受けることを義務づけている。また、[[学費]]を無償としていた[[バッシャール・アル=アサド|アサド]]政権と異なり、学費として1000[[シリア・ポンド]]を徴収する<ref>{{cite news |title=「イスラム国」が子どもに思想教育 |newspaper=[[日本放送協会|NHK]] |date=2014-11-8|url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141108/k10013044481000.html |accessdate=2014-11-8 }}</ref><ref>{{cite news |title=イスラム国:思想統制を強化 歴史、哲学、芸術の授業撤廃 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-9-23 |url=http://mainichi.jp/select/news/20140923k0000e030174000c.html |accessdate=2014-11-8 |author=秋山信一}}</ref>。

2014年、ISILは[[コーラン]]に従って<ref>エコノミスト2014年11月11日号 池内恵「イスラム成立とオスマン帝国崩壊」より、(ISILの機関紙)「ダービクではコーラン23章第6節の、配偶者だけでなく《右手の所有する者》とは交わってもよいという文言を根拠に、捕虜の女性との、正式な婚姻関係ではない妾としての性的関係を正当化している。」</ref>、[[奴隷制度]]の復活・運用を国際社会に公表した<ref>Islamic State Says Slavery is Established Part of Islamic Law.''The Islamic State's (ISIS, ISIL) Magazine'' Wed, September 10, 2014</ref>。ISILは、[[奴隷]]の取引額のガイドラインを発表しており、これに違反した者は処刑される。ガイドラインによれば、外国の出身でない限り、購入できる奴隷の数は3人までで、40歳から50歳の[[ヤズィーディー|ヤジディ教徒]]か[[キリスト教徒]]の女性は27[[ポンド (通貨)|ポンド]](約5千[[円 (通貨)|円]])、10歳から20歳の少女は80ポンド(約1万4千円)、1歳から9歳の女児は100ポンド(約1万8千円)以上で売られ、年齢が若くなるにつれ奴隷の価格も増すようになっている<ref>{{cite news |title=キリスト教とヤジディ教の女性奴隷、5千円で売られる イスラム国の文書で明らかに |newspaper=[[クリスチャントゥデイ]]|date=2014-11-6 |url=http://www.christiantoday.co.jp/articles/14504/20141107/christian-yazidi-isis.htm | accessdate=2014-11-14}}</ref>。

== 歴史 ==
2000年頃に[[アブー・ムスアブ・アッ=ザルカーウィー]]がヨルダンなどで築いた '''Jama'at al-Tawhid wal-Jihad'''(アラビア語:جماعة التوحيد والجهاد /'''タウヒードとジハード集団'''という意味、 略称: JTJ)を前身とする。この集団はアフガン戦争後、 イラクに接近し、2003年のイラク戦争後はイラク国内でさまざまなテロ活動を行った。2004年に[[アル=カーイダ]](アルカイダ)と合流して名称を「'''[[イラクの聖戦アル=カーイダ組織]]'''」と改めたが、外国人義勇兵中心の彼らはイラク人民兵とはしばしば衝突した。

2006年1月にはイラク人民兵の主流派との対立をきっかけに名称を「'''[[ムジャーヒディーン諮問評議会]]'''」(略称:MSC)と改め、他のスンニ派武装組織と合流し、さらに2006年10月には解散して他組織と統合し、「'''イラクのイスラム国'''」(略称:ISI)と改称した。また、のちに指導者となるアブー・バクル・アル=バグダーディーは、この2006年ごろに[[アメリカ軍]]によって一時拘束されて、収容所に入れられていたという。バグダーディーは、収容所の中で存在感を示し、後にISILの幹部となる者達と関係を築いた可能性が指摘されている<ref>{{cite news |title=イスラム国「謎の指導者」 誕生の経緯 |newspaper=[[日本放送協会|NHK]] |date=2015-1-1 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150101/k10014385981000.html |accessdate=2015-1-1 }}</ref>。

2009年10月25日と12月8日、ISIは首都[[バグダード]]で自爆テロを実行し、両日合わせて282人が死亡、1169人が負傷した<ref>[http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/8325600.stm Baghdad bomb fatalities pass 150] BBC(2009年10月26日)2013年7月31日閲覧</ref><ref>[http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/8400865.stm Baghdad car bombs cause carnage] BBC(2009年12月8日)2013年7月31日閲覧</ref>。

アメリカ軍はISIが[[インターネット]]上の組織に留まり、実際にバグダーディー師と呼ばれる組織内の人物は存在しないと主張していたが<ref>{{Cite news |title= イラクのアルカイダ指導者を拘束、イラク軍発表|date= 2009-04-23|author= Ammar Karim|url= http://www.afpbb.com/articles/-/2595527?pid=4065240|accessdate= 2014-06-20|agency= [[フランス通信社|AFP通信]]}}</ref>、[[2010年]][[4月18日]]、[[イラク]]の[[ヌーリー・マーリキー]][[イラクの首相|首相]]はISIの[[首長]]([[アミール]])[[アブー・ウマル・アル=バグダーディー]]と同戦争相[[アブー・アイユーブ・アル=マスリー]]が[[ティクリート]]近郊で行われたアメリカ軍と[[イラク治安部隊#イラク軍|イラク軍]]の合同作戦により死亡したと発表した<ref>[http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2719532/5639532 イラク、アルカイダ幹部2人を殺害 同組織に打撃] [[フランス通信社|AFP通信]](2010年4月20日)2013年7月30日閲覧</ref>。これに伴い、同年5月16日、アブー・ウマル・アル=バグダーディーの後を継いで[[アブー・バクル・アル=バグダーディー]]がISIの首長(アミール)に就任した<ref name="NewLeaders">{{Cite news |title= Iraqi Insurgent Group Names New Leaders |date= 2010-05-16|author= Martin Chulov|url= http://atwar.blogs.nytimes.com/2010/05/16/iraqi-insurgent-group-names-new-leaders/?_php=true&_type=blogs&_r=0|accessdate= 2015-04-09|publisher= The New York Times}}</ref>。

2012年3月20日には、バグダードを含む数十都市で連続爆弾テロを実行し、52人が死亡、約250人が負傷した<ref>[http://www.47news.jp/CN/201203/CN2012032501001482.html アルカイダ系武装勢力が犯行声明 イラクの連続爆弾テロ] [[共同通信]](2012年3月25日)2013年8月4日閲覧</ref>。

2013年4月、アブー・バクル・アル=バグダーディーは[[アル=ヌスラ戦線]]が「イラクのイスラム国」の下部組織であり、今後はアル=ヌスラ戦線と合併して組織を「イラクのイスラム国」(略称: ISI)から「'''イラクとレバントのイスラム国'''」(略称:ISIL)、別称「'''イラクとシリアのイスラム国'''」(略称: ISIS)に改称するとの声明を出し<ref name="cnn35053738"/><ref name="AFP20130410">{{Cite news |title= シリア反体制派にイスラム過激派、武装勢力が明かす|date= 2013-04-10|url= http://www.afpbb.com/articles/-/2938033?pid=10560953|accessdate= 2014-06-20|agency= [[フランス通信社|AFP通信]]}}</ref><ref>[http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-23283079 Key Free Syria Army rebel 'killed by Islamist group'] BBC(2013年7月12日)2013年7月30日閲覧</ref>、[[シリア]]への関与強化を鮮明にした<ref>{{Cite news |title= Syria's al-Nusra Front 'part of al-Qaeda'|date= 2013-04-10|url= http://www.bbc.com/news/world-middle-east-22078022|accessdate= 2014-09-16|publisher= [[BBC]]|language= 英語}}</ref>。同年7月、検問所での通行許可を巡り口論となった[[自由シリア軍]]の司令官を殺害した<ref>{{Cite news |title= 反体制派司令官殺害される=アルカイダ系と内紛―シリア|date= 2013-07-12|url= http://www.jiji.com/jc/zc?k=201307/2013071200937|accessdate=2013-07-30|agency= [[時事通信]]|publisher= ニュースばこ|archiveurl= http://newsokulog.com/news_111327.htm|archivedate= 2013-07-12}}</ref>。

2013年7月21日、[[アブグレイブ刑務所]]とバグダード近郊のタージにある刑務所を襲撃し、500人あまりの[[受刑者]]が脱獄、[[イラク治安部隊|治安部隊]]21人と受刑者20人が死亡した<ref>[http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2957557/11074157?ctm_campaign=txt_topics イラク刑務所襲撃、アルカイダ系組織が犯行声明] [[フランス通信社|AFP通信]](2013年7月23日)2013年8月5日閲覧</ref>。脱獄者の中には、武装勢力の戦闘員や幹部も多数含まれているとされる。組織側によると、今回の襲撃をもってイスラム教徒を牢獄から解放する一連の作戦は終了したとしている<ref>{{Cite news |title= アルカーイダ系が犯行声明 イラク刑務所襲撃|date= 2013-07-23|url= http://sankei.jp.msn.com/world/news/130723/mds13072321240002-n1.htm|accessdate= 2013-08-05|agency= 共同通信|publisher= [[MSN産経ニュース]]|archiveurl= https://web.archive.org/web/20130723192607/http://sankei.jp.msn.com/world/news/130723/mds13072321240002-n1.htm|archivedate= 2013-07-23}}</ref>。

2013年8月、[[アレッポ]]近郊のシリア空軍基地を制圧<ref>[http://online.wsj.com/article/SB10001424127887323420604578652250872942058.html Islamists Seize Airbase Near Aleppo] [[ウォール・ストリート・ジャーナル]](2013年8月6日)2013年9月29日閲覧</ref>。同年9月、自由シリア軍が[[シリア軍]]から奪還し1年近く支配下に置いていた[[トルコ]]国境沿いの{{仮リンク|アッザーズ|en|Azaz}}を戦闘の末に奪取、制圧した<ref>[http://www.cnn.co.jp/world/35037432.html アルカイダ系がトルコ国境の町を制圧 シリア反体制派で内紛] [[CNN]](2013年9月19日)2013年9月29日閲覧</ref><ref>{{Cite news |title= シリアでイスラム過激派が勢力拡大|date= 2013-09-23|url= http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130923/k10014741701000.html|accessdate= 2013-09-29|publisher= [[NHK]]|archiveurl= http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/3564abe8b9ffbaf0a401a8dd9b396f73|archivedate= 2013-09-23}}</ref>。アッザーズ制圧の際、現地で活動していた[[ドイツ]]人医師を拘束している<ref>[http://www.hurriyetdailynews.com/al-qaeda-group-and-fsa-declare-truce-as-turkey-keeps-syria-border-gate-closed.aspx?pageID=238&nID=54744&NewsCatID=338 Al-Qaeda group and FSA declare truce as Turkey keeps Syria border gate closed] Hürriyet Daily News(2013年9月19日)2013年9月29日閲覧</ref>。

「イラクとレバントのイスラム国」は、[[アルカイダ]]と関連のある武装集団だが、2013年5月に出された[[アイマン・ザワーヒリー]]の解散命令を無視して[[シリア]]での活動を続けているなど、アルカイダや[[アル=ヌスラ戦線]]との不和が表面化している<ref>{{Cite news |title= アル・カーイダ系組織に不和…シリアで活動|newspaper= [[読売新聞]]|date= 2013-11-09|author= 溝田拓士|url= http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131109-OYT1T01147.htm|accessdate= 2013-11-09|archiveurl= https://web.archive.org/web/20131110214325/http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131109-OYT1T01147.htm|archivedate= 2013-11-10}}</ref>{{efn|この声明に対して、ヌスラ戦線のリーダーであるアブー・ムハンマド・アル=ジャウラニ(Abu Mohammad al-Jawlani)は「イラクとレバントのイスラム国」との関係は認めたものの、合併については否定したうえアルカイダのリーダー、アイマン・ザワーヒリーに対する忠誠を誓約した。しかしシリアで活動するヌスラ戦線のメンバーによると、多くのメンバーが「イラクとレバントのイスラム国」に合流したという<ref>{{Cite news |title= Iraqi al-Qaeda chief rejects Zawahiri orders|date= 2013-06-15|url= http://www.aljazeera.com/news/middleeast/2013/06/2013615172217827810.html|accessdate= 2014-09-16|publisher= [[アルジャジーラ]]|language= 英語}}</ref>。}}。この不和の原因は「イラクとレバントのイスラム国」の残虐行為が挙げられており<ref>{{Cite news |title= イスラム過激派、シリア反体制派8人処刑 遺体はりつけに NGO|date= 2014-06-30|url= http://www.afpbb.com/articles/-/3019202|accessdate= 2014-06-30|agency= [[フランス通信社|AFP通信]]}}</ref>、実際にアルカイダを上回る残虐な組織であるとの指摘するメディアもある<ref name="jiji2014081800029">{{cite news |title=アルカイダ上回る残虐さ=女性を性奴隷、身代金誘拐-弱体化は当面困難・イスラム国|newspaper=[[時事通信社]] |date=2014-8-18|url=http://www.jiji.com/jc/zc?k=201408/2014081800029 |accessdate=2014-8-24}}</ref>。2014年2月には、アルカイダ側が「イラクとレバントのイスラム国」とは無関係であるとの声明を出した<ref>{{Cite news |title=シリアの武装集団ISILとは無関係、アルカイダがネットで声明|url=http://in.reuters.com/video/2014/02/04/シリアの武装集団ISILとは無関係-アルカイダがネットで声明字幕・4日?videoId=276703720&videoChannel=200|agency=[[ロイター]]|date= 2014-02-04|accessdate= 2014-07-08}}</ref>。[[シリア騒乱|シリア内戦]]の反政府派とも衝突しており、一部のシリアの反政府派は連合を組んで「イラクとレバントのイスラム国」を攻撃している。シリア反体制活動家は、「イラクとレバントのイスラム国」について「[[バッシャール・アル=アサド|アサド]][[シリアの大統領|大統領]]よりも酷い悪事を働いている」と語っている<ref>{{Cite news |title= シリア内戦、反体制派3派が連合してISILと激しい戦闘 |date= 2014-1-5 |url= http://www.afpbb.com/articles/-/3005977 |accessdate= 2014-7-12 | publisher= [[フランス通信社|AFP通信]] }}</ref>。

2014年2月には支配地域の[[ラッカ]]で[[キリスト教徒]]に対して、課税([[ジズヤ]])及び屋外での宗教活動の禁止を発表した<ref>{{Cite news |title= シリアのイスラム武装勢力、キリスト教徒に課税|date= 2014-02-27|url= http://www.afpbb.com/articles/-/3009430|accessdate= 2014-06-20|agency= [[フランス通信社|AFP通信]]}}</ref>。

また、シリアの油田地帯を掌握し、原油販売も行っていると伝えられている<ref name="pet">{{cite news|url=http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014070902000123.html|title=「イスラム国」シリア油田地帯掌握 資金力をさらに強化|newspaper=東京新聞|date=2014-07-09|accessdate=2014-07-09}}</ref>。

[[2015年]]5月16日、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の特殊部隊が同組織で資金源である原油・ガス取引などを指揮していた幹部、アブ・サヤフを殺害したと発表<ref name="The Huffington Post20150517">{{cite news |title=アメリカ特殊部隊がシリアで地上作戦 「イスラム国」幹部を殺害 |newspaper=[[ハフィントン・ポスト]] |date=2015-5-17 |url=http://www.huffingtonpost.jp/2015/05/16/isil-usa--syria_n_7299096.html |accessdate=2015-8-22}}</ref>。人質救出作戦以外では[[シリア]]で初の地上作戦となった<ref name="The Huffington Post20150517"/>。

2015年8月21日、[[アメリカ軍]]が[[空爆]]で、当時同組織ナンバー2であったファディル・アフマド・ハヤリ幹部を殺害したと発表<ref name="sponichi20150821">{{cite news |title=ア米軍がイスラム国ナンバー殺害 イラク空爆 |newspaper=[[スポーツニッポン]] |date=2015-8-21 |url=http://www.sponichi.co.jp/society/news/2015/08/22/kiji/K20150822010984040.html |accessdate=2015-8-22}}</ref>。

2015年8月28日、8月24日にアメリカ軍がISILの首都[[ラッカ]]に空爆を行った際、ジュネイド・フセイン幹部を殺害したと明らかにした<ref name="nikkei20150829">{{cite news |title=米、空爆で「イスラム国」幹部を殺害 |newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2015-8-28|url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM29H1A_Z20C15A8NNE000/|accessdate=2015-8-29}}</ref>。同幹部は世界各地でテロをおこす「一匹オオカミ」型のテロ要員確保を担っており、米軍や政府の関係者約1300人の個人情報をネット上に公開し、彼らを襲撃するよう呼びかけていた<ref name="nikkei20150829"/>。

=== イラクへの侵攻 ===
2014年に入り、[[シリア]]の反[[バッシャール・アル=アサド|アサド]][[政権]]組織から武器の提供や、戦闘員の増員を受けたため、急速に軍事力を強化した。その軍事力を使い政権奪取を目指して、イラクの各都市を攻撃し始めた<ref>{{cite news |title=イラク過激派攻勢 政権打倒へ戦力を増強 シリアから武器・戦闘員を獲得 |newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-6-14 |url=http://sankei.jp.msn.com/world/news/140614/mds14061409230001-n1.htm |accessdate=2014-6-14}}</ref>。2013年12月30日のイラク西部[[アンバール県]][[ラマーディー]]の座り込み運動の解散をきっかけとして侵攻を開始し、1月にラマーディーと同県の都市である[[ファルージャ]]を掌握<ref>{{Cite press release |title= イラク西部アンバール県の治安情勢(外務大臣談話)|publisher= [[外務省]]|date= 2014-01-09|url= http://www.mofa.go.jp/mofaj/page4_000339.html|accessdate= 2014-06-30}}</ref><ref>{{Cite news |title= イラクのファルージャ、武装勢力ISILが掌握 新たに65人死亡|date= 2014-01-05|url= http://www.afpbb.com/articles/-/3005973|accessdate= 2014-06-20|agency= [[フランス通信社|AFP通信]]}}</ref>、3月に[[サーマッラー|サマラ]]を襲撃した<ref name="REUTERS20140605"/>。サマラからは6月5日の[[イラク治安部隊#イラク軍|イラク軍]]の空爆により追放されたが<ref name="REUTERS20140605">{{Cite news |title= Iraq dislodges insurgents from city of Samarra with airstrikes|date= 2014-06-05|author= Ghazwan Hassan|url= http://www.reuters.com/article/2014/06/05/us-iraq-security-idUSKBN0EG1RG20140605|accessdate= 2014-06-20|agency= [[ロイター]]|language= 英語}}</ref>、6月6日、[[モースル]]に複数の攻撃を実施した<ref>{{Cite news |title= Deadly fighting breaks out in Iraq's Mosul|date= 2014-06-07|url= http://www.aljazeera.com/news/middleeast/2014/06/deadly-car-bomb-attacks-rocks-iraq-north-20146682623969252.html|accessdate= 2014-06-20|publisher= [[アルジャジーラ]]|language= 英語}}</ref>。6月10日、モースルを陥落させた。武装集団は、数百人規模で9日夜からモースル市街地を攻撃し、10日までに政府庁舎や[[警察署]]、軍基地、[[空港]]などを制圧した。過激派系のウェブサイトは、武装集団が[[刑務所]]から約3千人の囚人を脱走させたとしている<ref>[http://sankei.jp.msn.com/world/news/140611/asi14061110010006-n1.htm イラク 政権に打撃 過激派、第2の都市制圧] MSN産経ニュース(2014年6月11日)2014年6月12日閲覧</ref>。6月11日に[[モースル]]のトルコ領事館を制圧し、同国の在モースル総領事を含む領事館員ら48人を誘拐した<ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/3017436 イラク過激派、トルコ総領事ら49人を拉致] [[フランス通信社|AFP通信]](2014年6月11日)2014年6月12日閲覧</ref>。6月15日政府軍との戦闘の末、{{仮リンク|タルアファル|en|Tal Afar}}を制圧<ref>{{Cite news |title= スンニ派武装組織、イラク北西部のタルアファル制圧|date= 2014-06-16|url= http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0EQ1BH20140615|accessdate= 2014-06-21|agency= [[ロイター]]}}</ref>、6月17日には[[バグダード]]北東約60キロの[[バアクーバ]]まで進撃し<ref name="mainichi201406108">{{Cite news |title= イラク:「サウジは過激派組織ISILを支援」と非難声明|newspaper= [[毎日新聞]]|date= 2014-06-18|author= 秋山信一|url= http://mainichi.jp/select/news/20140618k0000e030165000c.html|accessdate= 2014-06-20}}</ref>、6月20日までに{{仮リンク|バイジ|en|Baiji, Iraq}}の油田施設を包囲した<ref>{{Cite news |title= イスラム過激派、北部の空港占拠 製油施設を包囲、攻防続く|date= 2014-06-20|url= http://www.47news.jp/CN/201406/CN2014062001002405.html|accessdate= 2014-06-21|agency= 共同通信|publisher= [[47NEWS]]}}</ref>。6月25日、[[イラク戦争]]で「キャンプ・アナコンダ」として知られている{{仮リンク|バラッド統合基地|en|Joint Base Balad|}}を攻撃しアジール油田地帯を制圧した<ref>{{Cite news |title= 武装勢力がイラク空軍基地を攻撃、複数の小規模油田制圧|date= 2014-06-30|url= http://jp.reuters.com/article/jpUSpolitics/idJPKBN0F01WC20140625|accessdate= 2014-06-30|agency= [[ロイター]]}}</ref>。また、[[ニーナワー県]]を断水させた<ref name="IRIB20140626">{{Cite news |title= イラクで、テロ組織ISISによる残忍な措置が継続|date= 2014-06-29|url= http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/46266-イラクで、テロ組織isisによる残忍な措置が継続|accessdate= 2014-06-30|agency= アルメナール・チャンネル|publisher= [[IRIB]]}}</ref>。「イラクとレバントのイスラム国」は占領したモースルで[[シャリーア]]の強制による支配を行い、イラク政府への協力者に対する殺害ならびに盗みや強盗をした者の手足を切る刑罰を課しており<ref name="IRIB20140626"/><ref>{{Cite news |title= イラク北部モスル 過激派掌握2週間 イスラム法強制始まる|newspaper= 東京新聞|date= 2014-06-26|author= 中村禎一郎|url= http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014062602000143.html|accessdate= 2014-06-30}}</ref>、モースルの住民は退去を迫られている<ref name="IRIB20140626"/>。

国際政治学者の[[酒井啓子]]は、これらの攻撃に対してマーリキー首相は全く対応できていないと指摘している<ref>{{cite news |title=国家の統一性に危機 旧バース党勢力も復権狙う 酒井啓子・千葉大教授 |newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-6-14 |url=http://sankei.jp.msn.com/world/news/140614/mds14061409310002-n1.htm |accessdate=2014-6-14}}</ref>。一方、6月17日にイラク首相府は「イラクとレバントのイスラム国」を[[スンナ派]]の[[サウジアラビア]]が財政的に支援し、大量虐殺を引き起こした責任があると非難する声明を発表した<ref name="mainichi201406108"/>。これに対してはサウジアラビアと[[アメリカ合衆国|アメリカ]]から反発が出ている<ref name="mainichi201406108"/><ref>{{Cite news |title= 米国:イラクのサウジ非難に強い反発 サキ国務省報道官|newspaper= 毎日新聞|date= 2014-06-18|author= 和田浩明|url= http://mainichi.jp/select/news/20140618k0000e030166000c.html|accessdate= 2014-06-20}}</ref>。[[共和党 (アメリカ)|米共和党]]の[[ランド・ポール]][[アメリカ合衆国上院議員一覧|上院議員]]は「イラクとレバントのイスラム国」が強化された理由の一つとして、[[アメリカ合衆国連邦政府|アメリカ政府]]がシリア政権打倒のため「イラクとレバントのイスラム国」に武器を移送したことを挙げている<ref>{{Cite news |title= 米上院共和党議員、「イラク現状はアメリカのテロ支援の結果によるものだ」|date= 2014-06-23|url= http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/46109-米上院共和党議員、「イラク現状はアメリカのテロ支援の結果によるものだ」|accessdate= 2014-06-24|agency= [[:en:Fars News Agency|ファールス通信]]|publisher= IRIB}}</ref>。また、[[オーストラリア]]の{{仮リンク|ジュリー・ビショップ|en|Julie Bishop}}外務大臣は150人の[[オーストラリア人]]が「イラクとレバントのイスラム国」に加入していると明らかにし、彼らの帰国の懸念を表明した<ref>{{Cite news |title= 豪外相が、同国人のテロ組織への加担を懸念|date= 2014-06-19|url= http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/46003-豪外相が、同国人のテロ組織への加担を懸念|accessdate= 2014-06-20|agency= [[ドイツ通信社|DPA]]|publisher= IRIB}}</ref>。6月20日、[[国際連合人権理事会|国連人権理事会]]は「イラクとレバントのイスラム国」の侵攻によって100万人の住民が避難を余儀なくされていると声明を出した<ref>{{Cite news |title= 1mn displaced since ISIL appeared in Iraq: UNHCR|date= 2014-06-20|url= http://www.presstv.ir/detail/2014/06/20/367875/1mn-displaced-since-isil-appeared/|accessdate= 2014-06-30|publisher= [[PRESS TV]]|language= 英語}}</ref>。

=== 「国家」樹立宣言 ===
2014年6月29日、「イラクとレバントのイスラム国」は同組織の[[アブー・バクル・アル=バグダーディー]]が「[[カリフ]]」であり、あらゆる場所のイスラム教徒の指導者であるとし、イスラム国家であるカリフ統治領をシリア・イラク両国の「イラクとレバントのイスラム国」制圧地域に樹立すると宣言した。また同声明において組織名からイラクとレバントを削除し、「イスラム国」と改変することを発表した<ref name="AFP20140630"/>。

=== 対抗する有志連合の結成 ===
[[ファイル:President Obama Makes a Statement on Iraq - 080714.ogg|サムネイル|[[ヤズィーディー]]教徒への援助と、ISILへの空爆を[[wikt:宣言|宣言]]するオバマ大統領]]
2014年8月8日、アメリカ軍がISILの武装勢力に対して、限定的な[[空爆]]及び[[ヤズィーディー]]などに対して支援物資の供給を開始。初日は、[[クルディスタン地域]]の[[アルビル]]近郊に展開していた野砲や車列が攻撃対象となった<ref>{{Cite news|url=http://www.afpbb.com/articles/-/3022712|title=米軍、イラク北部の「イスラム国」に空爆 2011年の撤退後初|publisher=[[フランス通信社|AFP通信]]|date=2014-08-09|accessdate=2014-08-12}}</ref>。アメリカは、空爆の期限を設けず、今後も空爆を実施することを示唆している<ref>{{Cite news|url=http://www.news24.jp/articles/2014/08/10/10256967.html |title=空爆「成功」今後も続けていく~オバマ氏|publisher=[[日テレNEWS24]] |date=2014-8-10|accessdate=2014-8-23}}</ref>。同年10月に入って、空爆の作戦名は「[[生来の決意作戦|生来の決意]]」(Operation Inherent Resolve) と名付けられていることが明らかになっている。

ただし、アメリカ軍の空爆は、ISILの[[イラク]]支配地域に限定されており、ISILの本拠地であるシリアでは実施されていないため空爆の効果を疑問視する人もいた。シリア国内のISIL拠点を攻撃しないのは、ISILと対立する[[バッシャール・アル=アサド|アサド]]政権を支援する形になるためと指摘されている<ref>{{cite news |title=米空爆の「イスラム国」、本拠地シリアで勢力増す |newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]] |date=2014-8-11 |url=http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303721104580085253602807276 |accessdate=2014-8-23 |author=Maria Abi-Habib}}</ref>。8月22日、アメリカはシリア国内の拠点に対する空爆の検討を開始したと発表した<ref>{{cite news |title=「国境には制約されない」米高官、シリアでのイスラム国空爆検討を認める |newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-8-22 |url=http://sankei.jp.msn.com/world/news/140823/amr14082321450010-n1.htm |accessdate=2014-8-25 | author=青木伸行}}</ref>。この時点で、ISILの支配領域の合計面積は、イギリスより広くなっている<ref name="bloombergNAW8586KLVRT01">{{cite news |title=「イスラム国」は油田備えたタリバン-莫大な自己資金力が脅威 |newspaper=[[ブルームバーグ (企業)|ブルームバーグ]] |date=2014-8-25 |url=http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NAW8586KLVRT01.html|accessdate=2014-8-27 |author=Indira A.R. Lakshmanan }}</ref>。

[[ファイル:2014-08-16 Demonstration Jesiden Eziden Aleviten Kurden in Hannover gegen die Terrorgruppe Islamischer Staat (IS), (313).JPG|サムネイル|2014年8月16日に[[ドイツ]]、[[ハノーファー]]で行われたISILへの抗議デモ]]
8月24日、ISILはシリア北東部の[[ラッカ県]]にある[[シリア軍|シリア政府軍]]の空軍基地を制圧、ラッカ県のほぼ全てを手中に収めた<ref>{{cite news |title=「イスラム国」、シリア北部の空軍基地を制圧 |newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]] |date=2014-8-25|url=http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970204431804580112652692087156 |accessdate=2014-8-27 |author=SAM DAGHER}}</ref>。この時、ISILは先日、シリア兵500人を捕らえたが、8月28日、このうち160名を処刑したと発表、[[公開処刑|処刑映像を公開]]した<ref>{{cite news |title=イスラム国、シリア兵160人以上を処刑 映像公開|newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-8-29 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3024373|accessdate=2014-8-29 }}</ref>。

8月25日、[[アメリカ合衆国]]の[[バラク・オバマ]][[アメリカ合衆国大統領|大統領]]は、[[アメリカ軍]]によるシリア上空での偵察飛行を承認した<ref>{{cite news |title=オバマ米大統領、シリアでの偵察飛行を承認 空爆の準備か |newspaper=[[CNN]] |date=2014-8-26 |url=http://www.cnn.co.jp/usa/35052889.html |accessdate=2014-8-27 }}</ref>。

シリアのアサド政権は、ISILの勢力拡大に対して国際社会と協力する用意があると表明した。これまでアサド政権打倒を目指してきた反政府派を支援してきた[[イギリス]]や[[アメリカ合衆国]]の協力も歓迎するとしている<ref>{{cite news |title=シリア、米国との対テロ共闘の「用意ある」|newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-8-26 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3024064 |accessdate=2014-8-27|author=Serene ASSIR }}</ref>。8月31日、[[ドイツ]]はISILが自国の安全保障の脅威になるとして、ISILと対峙するクルド人勢力に武器を供与する方針を発表した<ref>{{cite news |title=独もイスラム国を「脅威」と判断…武器支援へ |newspaper=[[読売新聞]] |date=2014-9-2|url=http://www.yomiuri.co.jp/world/20140902-OYT1T50009.html |accessdate=2014-9-3 |author=工藤武人}}</ref>。ドイツは世界第3位の武器輸出国である一方で、これまでは紛争地域への武器輸出を見送ってきたが、方針を転換した<ref>{{cite news |title=イスラム国に対抗 独がクルド人部隊に武器供与へ |newspaper=[[テレビ朝日]] |date=2014-9-2 |url=http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000033741.html |accessdate=2014-9-3}}</ref><ref>{{cite news |title=ドイツが軍事貢献へカジ クルド勢力に武器、東欧派兵も |newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2014-9-3 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM02H05_S4A900C1FF2000/ | accessdate=2013-4-9-3|author=赤川省吾}}</ref>。

9月1日、[[国際連合]]の[[国際連合人権理事会|人権理事会]]は、ISILの[[イラク]]での[[人権蹂躙|人権侵害]]を「最も強い言葉」で非難する決議を全会一致で採択<ref>{{cite news |title=イスラム国非難決議を採択 国連人権理、調査求める |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2014-9-2|url=http://www.asahi.com/articles/ASG920SHJG91UHBI036.html |accessdate=2014-9-3 |author=神田大介 }}</ref>、ISILの行為は[[戦争犯罪]]や[[人道に対する罪]]に当たるとした<ref>{{cite news |title=国連 イスラム過激派組織の残虐行為非難|newspaper=[[日本放送協会|NHK]] |date=2014-9-2 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140902/k10014270711000.html| accessdate=2014-9-3 }}</ref>。

9月19日、[[国際連合安全保障理事会|国連安全保障理事会]]は、全会一致でISILの壊滅に向けて対策強化を求める議長声明を採択した<ref>{{cite news |title=国連安保理、「イスラム国」壊滅へ議長声明採択 |newspaper=[[読売新聞]] |date=2014-9-20 |url=http://www.yomiuri.co.jp/world/20140920-OYT1T50036.html |accessdate=2014-9-20 |author=白川義和| author2=水野哲也 }}</ref>。また同日、[[フランス]]はISILのイラク北東部の補給所に対して、初の空爆を実施した<ref>{{cite news |title=フランス、イスラム国に初の空爆―イラク北東部で補給所を破壊 |newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]] |date=2014-9-20 |url=http://jp.wsj.com/news/articles/SB10656493786288173419804580164983143840418|accessdate=2014-9-21 |author =NOÉMIE BISSERBE }}</ref>。

9月23日にはアメリカ主導による有志国がシリア国内でも空爆作戦を開始した<ref>[http://www.sankei.com/world/news/141112/wor1411120041-n1.html 空爆死者、子供含む865人 対イスラム国、9月以降](産経ニュース 2014年11月12日)</ref>。さらに11月8日にはアメリカ軍などによって、ISILの幹部たちが乗る車列が空爆された。[[アル=アラビーヤ]]が地元部族の話として伝えたところによると、この中に、最高指導者のアブバクル・バグダーディーが乗っており、バグダーディーは致命傷を負ったという<ref>{{cite news |title=「イスラム国」車列を空爆 最高指導者「致命傷」の情報|newspaper=[[朝日新聞]] |date=2014-11-9 |url=http://www.asahi.com/articles/SDI201411099585.html|accessdate=2014-11-9 | author=渡辺淳基}}</ref>。ただし、[[アメリカ中央軍]]は、この車にバグダーディーが乗っていたかどうかについて不明としている<ref>{{cite news |title=米軍、ISIS指導者狙い車列空爆 イラク北部 |newspaper=[[CNN]] |date=2014-11-9 |url=http://www.cnn.co.jp/world/35056293.html |accessdate=2014-11-9 }}</ref>。

2014年11月24日、アメリカ政府は[[チャック・ヘーゲル]][[アメリカ合衆国国防長官|国防長官]]の辞任を発表した。辞任発表の場にはヘーゲル国防長官も立ち会い、円満な辞任であるという形での発表であったが、ヘーゲルはオバマ大統領と対ISIL政策が対立したため辞任に追い込まれた面が強く、事実上の更迭と見られている<ref>{{cite news |title=ヘーゲル米国防長官が辞任、イスラム国対応めぐり事実上の更迭 |newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-11-25 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3032565 |accessdate=2014-11-29|author= Dan De Luce| author2=Jérôme CARTILLIER}}</ref>。ヘーゲル国防長官は、泥沼の[[中東]]から、アメリカが足抜けするための[[出口戦略]]を後押しすることが期待されて国防長官に就任した人物であり、ISILとの戦争には消極的で、そのために再び中東への介入を強めるように転換しつつあるオバマ政権と対立していたとウォールストリートジャーナルは推測している<ref>{{cite news |title=ヘーゲル米国防長官が辞任する理由 |newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]] |date=2014-11-25 |url=http://jp.wsj.com/news/articles/SB12021915100590764698404580297932282866278 |accessdate=2014-11-29 |author =Gerald F. Seib}}</ref>。一方で国防総省はISILの危険性を早期に認識し地上部隊の派遣を具申したものの、あくまで軍事予算の削減により財政再建を目指し、軍事介入は限定的な空爆に留めたいホワイトハウスと対立していたとの見方もある<ref>{{cite news |title=米国防長官、ヘーゲル氏辞任とカーター氏指名の背景は? |newspaper=The Page |date=2014-12-8 |url=http://thepage.jp/detail/20141208-00000006-wordleaf |accessdate=2014-12-15 |author =The Capital Tribune Japan}}</ref>。

2014年12月、[[イラン]]の[[F-4 (戦闘機)|F4ファントム戦闘機]]が[[イラク]]東部でISILに対する空爆を行った<ref>{{cite news |language = | author = | url =http://www.afpbb.com/articles/-/3033254| title =イランのF4戦闘機がイスラム国を空爆、米国防総省報道官| publisher =| date= 2014-12-03| accessdate =2014-12-27}}</ref>。

2014年12月24日、ISILは、米軍主導の有志連合の[[戦闘機]]を[[撃墜]]し[[ヨルダン]]人の[[パイロット (航空)|操縦士]]を拘束したと発表した<ref>{{cite news |language = | author = | url =http://www.cnn.co.jp/world/35058336.html| title =ISISが戦闘機を撃墜、操縦士のヨルダン人を拘束か| publisher =| date= 2014-12-24| accessdate =2014-12-27}}</ref>。

2015年1月26日、[[パキスタン・ターリバーン運動]](TTP)元幹部とみられる人物を、ホラサン(ホラーサーン)州知事に勝手に任命した<ref>{{cite news |language = | author = | url =http://mainichi.jp/select/news/20150127k0000e030204000c.html| title =
イスラム国:「アフガン・パキスタンも領土」 2015年01月27日 13時10分(最終更新 01月27日 13時52分)|newspaper=[[毎日新聞]] |date= 2015-01-26| accessdate =2015-01-28}}</ref>。[[ターリバーン]]はISILと協力関係にないが、TTPを脱退してISILに参加した人物とみられている。

[[2015年]]1月26日、[[コバニ包囲戦]]にて、ISILと戦っていたクルド人民兵部隊が、コバニをISILから奪還したと発表した。クルド人部隊と、アメリカなどの有志連合の空爆の連携が、有効に機能した結果とされる<ref>{{cite news |title=クルド人部隊、コバニを奪還-「イスラム国」の進軍阻止 |newspaper=[[ブルームバーグ (企業)|ブルームバーグ]] |date=2015-1-27 |url=http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NISOSB6VDKHS01.html |accessdate=2015-1-31 |author=Selcan Hacaoglu }}</ref>。世界的に注目されていたコバニの攻防で、ISILが敗北したことは、ISILの士気や、各地の支配に影響を及ぼすとの意見がある<ref>{{cite news |title=コバニ奪還で揺らぐ「イスラム国」の支配 |newspaper=[[ニューズウィーク]] |date=2015-1-28 |url=http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/01/post-3533_1.php |accessdate=2015-1-31|author=リチャード・ホール }}</ref>。コバニでの戦いでは、クルドとISIL双方の戦闘員や、住民など約1600人が犠牲となったとされる<ref>{{cite news |title=「イスラム国」から奪還された街 記者が歩いた |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2015-1-31 |url=http://www.asahi.com/articles/ASH100DXVH1ZUHBI034.html |accessdate=2015-1-31 | author=貫洞欣寛}}</ref>。

2015年8月29日、[[トルコ]]が米軍などとの共同作戦に初参加し、有志連合の一員としてISILへの空爆を初めて行った<ref name="CNN20150830">{{cite news|title =トルコがISISを空爆、有志連合の一員として初|url http://www.cnn.co.jp/world/35069622.html/|publisher = [[CNN]]|date = 2015年8月30日| accessdate = 2015年8月30日}}</ref><ref name="nikkei20150830">{{cite news|title =トルコ軍、「イスラム国」を空爆 米などとの共同作戦に初参加|url= http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM29H44_Z20C15A8FF8000/|publisher = [[日本経済新聞]]|date = 2015年8月30日| accessdate = 2015年8月30日}}</ref>。

2015年9月27日、[[エリゼ宮殿|フランス大統領府]]が、[[フランス軍|仏軍]]がシリアで初めてISILの拠点に空爆を行ったと発表<ref name="yomiuri20150927">{{cite news|title =仏軍がシリアで「イスラム国」拠点を空爆|url= http://www.yomiuri.co.jp/world/20150927-OYT1T50063.html|publisher = [[読売新聞]]|date = 2015年9月27日| accessdate = 2015年9月27日}}</ref>。イラクでの空爆に参加する一方で、シリアではISILと敵対するアサド政権の延命につながるなどの理由で攻撃を見送っていたが、内戦の泥沼化で難民問題も悪化したことなどから方針転換した<ref name="yomiuri20150927"/>。

2015年12月2日、[[イギリス議会]]はイラクで実施している空爆をシリアへ拡大するよう求める動議を賛成多数で可決し承認した<ref name="yomiuri20151203">{{cite news|title =英下院が承認、シリアを空爆…欧米の包囲網強化|url= http://www.yomiuri.co.jp/world/20151203-OYT1T50116.html|publisher = [[読売新聞]]|date = 2015年10月3日| accessdate = 2015年10月4日}}</ref>。3日に空爆を始めた<ref name="yomiuri20151203"/>。

=== ロシア連邦空軍による空爆 ===
''詳細は「[[ロシア連邦航空宇宙軍によるシリア空爆]]」を参照されたし''

2015年9月30日、[[ロシア]]の[[ウラジーミル・プーチン]][[ロシア連邦大統領|大統領]]は、シリア政府からの要請を受けたとしてシリア領内でISILに対する空爆を開始する、と発表した。この作戦について[[ロシア国防省]]は、アメリカ主導の[[生来の決意作戦]]には加わらないとしている。[[ロシア航空宇宙軍|ロシア空軍]]は、2015年10月上旬現在[[Su-24 (航空機)|Su-24戦闘爆撃機]]、[[Su-25 (航空機)|Su-25シュトゥルモビーク]]を用いて空爆を実施している。北オセチア共和国にあるロシア空軍基地には[[Tu-22M (航空機)|Tu-22M中距離爆撃機]]がロシア各地から集結している(その数は少数)といい、今後は[[北オセチア共和国]]のロシア空軍基地からの長距離爆撃になる可能性が高いという。また、シリア領内に展開しているロシア空軍の機体についている[[国籍識別標]]が消されていることが確認されている<ref>[http://bylines.news.yahoo.co.jp/koizumiyu/20151001-00050033/][http://bylines.news.yahoo.co.jp/obiekt/20151001-00050039/]</ref>。

=== イラク・シリア国外への動き ===
[[File:Libyan_Civil_War.png|thumb|right|リビアにおける勢力範囲(灰色の地域)]]
2015年1月26日、ISILは、支持者に対し、各地での攻撃を呼びかける声明を出した<ref>{{cite news |title=エジプト 「イスラム国」系過激派に強い危機感|newspaper=[[日本放送協会|NHK]] |date=2015-2-1 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150201/k10015119531000.html |accessdate=2015-2-1 }}</ref>。

これを受けての攻撃と思われる動きが世界各地で起きており、1月27日には[[リビア]]の高級[[ホテル]]が武装勢力に襲撃され、9人が死亡する事件が起こった。この事件では、イスラム国「トリポリ州」を名乗る集団が犯行声明を出した<ref>{{cite news |title=イスラム国拡大、エジプトなど襲う集団 |newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]] |date=2015-1-30 |url=http://jp.wsj.com/articles/SB12431244049710433766304580431124151818724 |accessdate=2015-2-1| author=YAROSLAV TROFIMOV }}</ref>。この事件では、現地の者だけでなく、[[アメリカ合衆国]]、[[大韓民国|韓国]]、[[フランス]]、[[フィリピン]]などの者も犠牲となった<ref>{{cite news |title=リビアのホテル襲撃、「イスラム国」が犯行声明 |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2015-1-29 |url=http://www.yomiuri.co.jp/world/20150129-OYT1T50078.html |accessdate=2015-2-1}}</ref>。2015年6月には中部[[シルト]]を完全に制圧するなど<ref>[http://www.jiji.com/jc/zc?k=201506/2015061000037&g=int 中部シルト制圧を宣言=リビアの「イスラム国」]時事通信</ref>、事実上の内戦下のリビアにおいて一定程度の勢力を保持している。

1月29日には、[[エジプト]]北部の[[北シナイ県]]の軍事基地や[[警察署]]などを、武装集団が襲撃し、少なくとも26人が死亡する事件が発生した。ISILに忠誠を誓い、ISILのエジプト部門となった過激派{{仮リンク|エルサレムの支援者|en|Ansar Bait al-Maqdis}}が犯行声明を発している<ref>{{cite news |title=エジプト軍基地など襲撃で26人死亡、イスラム国系が犯行声明 |newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2015-1-30 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3038186 |accessdate=2015-1-31 }}</ref>。なおエジプト軍の報道官は、軍によって結社禁止となった[[ムスリム同胞団]]が関与していると主張した<ref>[https://www.facebook.com/Egy.Army.Spox/posts/608017975995855 الصفحة الرسمية للمتحدث العسكري للقوات المسلحة 1月29日 12:51] - [[Facebook]] エジプト軍報道官{{ar icon}}</ref>{{efn|エジプトの[[アブドルファッターフ・アッ=シーシー|シーシー]]政権は、ムスリム同胞団をテロ組織と見なしているため、「テロリスト同胞団」と表記している。}}<ref>[http://jp.wsj.com/articles/SB12431244049710433766304580430653981220426 「イスラム国」系組織、シナイ半島で軍施設攻撃 死者多数 2015 年 1 月 30 日 13:40 JST] - [[ウォール・ストリート・ジャーナル]] MATT BRADLEY and SHARAF AL-HOURANI(有料記事)</ref>。

内戦状態の[[イエメン]]でも勢力を拡大しており、[[3月20日]]には、シーア派武装勢力「フーシ」が掌握する首都[[サヌア]]でフーシ派幹部を狙ったとみられる自爆テロを起こし、140人以上の死者が出るなど攻勢を強めている<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC20H0I_Q5A320C1EA2000/ イエメンで自爆テロ、死者140人超 「イスラム国」か]日本経済新聞</ref>。[[4月30日]]には、[[イエメン軍]]兵士14人に死刑を執行したとする動画を公開した<ref>[http://www.sankei.com/world/news/150501/wor1505010036-n1.html イエメン兵士14人を殺害 「イスラム国」関連か]産経新聞</ref>。

2015年7月には、[[アフガニスタン]]のザファル・ハーシミー報道官は、少なくとも[[ナンガルハール州]]、[[ファラー州]]、[[ヘルマンド州]]の3州にISILが進出していることを明らかにした<ref>[http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/pdf/pdfNews20150717_173545.pdf ダーイシュ アフガニスタンで存在感]Jam-e Jam 2015年7月3日</ref>。6月には、[[ターリバーン]]との間で戦闘が勃発し、双方の間でISIL指導者を含む12人が死亡した<ref>[http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/pdf/pdfNews20150717_173545.pdf ダーイシュとターリバーンの間で激しい戦闘]Jam-e Jam 2015年6月29日</ref>。

2015年11月には、[[フランス]]の[[パリ]]で[[パリ同時多発テロ事件|同時多発テロ]]が発生し、<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASHCG5GFKHCGUHBI02G.html/ パリ同時テロ、128人が死亡 ISが犯行声明]朝日新聞デジタル</ref>129人が死亡した。この同時テロで、ISILが犯行声明を出した。フランスの[[フランソワ・オランド|オランド]][[共和国大統領 (フランス)|大統領]]は[[11月13日]]に[[非常事態宣言]]を発表し、全ての国境を封鎖した<ref>{{Cite news |title=仏大統領、国家非常事態を宣言 「テロに立ち向かう」 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM14H0W_U5A111C1000000/ |date=2015-11-14 |newspaper=日本経済新聞 |publisher=日本経済新聞社 |accessdate=2015-11-15}}</ref>。

== 支配地域の推移 ==
<gallery mode=packed caption="ISILの支配状態(灰色がISILの支配地域)">
Mapsyria.jpg|<center>2014年1月</center>
Syrian civil war 16-3-14.png|<center>2月</center>
Syrian civil war 19-4-14.png|<center>3月</center>
Syrian civil war 09-05-14.png|<center>4月</center>
Syrian civil war 25-05-14.png|<center>5月</center>
Syrian war map 18 6 14.png|<center>6月</center>
Syrian war map 11 7 14.png|<center>7月</center>
Syrian war map 17 8 14.png|<center>8月</center>
Syrian civil war september 2014.png|<center>9月</center>
Syrian civil war 5 October 2014.png|<center>10月</center>
Syria_and_Iraq_2014-onward_War_map.png|<center>2015年9月</center>
<!--Syrian civil war.png|<center>シリア国内の現在の状況(画像は随時更新中)</center>-->
</gallery>
<small>※2014年10月まではシリア国内の状態のみ表示</small>

== 対外関係 ==
=== 対立 ===
国家を自称しているものの、他国から[[国家の承認]](本当の意味は、英語の表現にあるように、[[:en:diplomatic recognition|diplomatic recognition]] [[外交]]上の承認、という意味で、実際にもその通りの内容)は得られていない。当事国である[[イラク]]や[[シリア]]はもちろんのこと、日本や米国、[[ヨーロッパ|欧州]]諸国などの[[政府]]が承認を行っていない。さらに、周辺の[[シーア派]]・[[スンナ派]](スンニ派)イスラム教諸国の政府などからも[[独立主張のある地域一覧|国家としては承認されていない]]。[[2015年]]1月時点で、ISILに対し公式に外交上の承認を行った[[国家]]は一つも無く、当然[[国際連合|国連]]への加盟も果たしていない。

ISILは全世界のほぼすべての国の政府と敵対している。日本にも宣戦布告を行っており<ref>{{Cite news |title= イスラム国メッセージ「日本にとっての悪夢が始まるのだ」 |newspaper= スポニチ|date= 2015-02-02|author=|url= http://www.sponichi.co.jp/society/news/2015/02/02/kiji/K20150202009735480.html|accessdate=2015-10-13}}</ref><ref>{{Cite news |title= 【イスラム国】機関誌で「日本攻撃」呼び掛け |newspaper= 産経ニュース|date= 2015-09-10|author=|url= http://www.sankei.com/world/news/150910/wor1509100050-n1.html|accessdate=2015-11-01}}</ref>、[[日本政府]]もこれらの国とISIL包囲網に加わる共同声明を発表している<ref>[http://www.voanews.com/content/us-building-coalition-diplomats-gather-discuss-islamic-state/2449833.html US Expands Airstrikes on Islamic State in Iraq]</ref>。

ISIL側は、[[中華人民共和国]]、[[インド]]、[[パキスタン]]、[[ソマリア]]、[[モロッコ]]、[[インドネシア]]、[[アフガニスタン]]、[[フィリピン]]、[[チュニジア]]、[[リビア]]、[[アルジェリア]]、[[朝鮮民主主義人民共和国]]<ref>[http://www.47news.jp/CN/201501/CN2015011401002058.html 北朝鮮の高麗航空にサイバー攻撃 米軍標的の「イスラム国」]</ref>、[[大韓民国]]<ref>{{Cite news |title= IS「韓国など60カ国、戦争の火で燃やす」 |newspaper= [[中央日報]]|date= 2015-11-27|author=|url= http://japanese.joins.com/article/968/208968.html|accessdate=2015-11-30}}</ref>、[[台湾]]([[中華民国]])<ref>{{Cite news |title= ISの最新映像に中華民国国旗 馬総統、台湾市民に平静呼びかけ |newspaper= [[中央通訊社]]|date= 2015-11-25|author=|url= http://japan.cna.com.tw/news/apol/201511250004.aspx|accessdate=2015-11-30}}</ref>、[[ミャンマー]]などあらゆる国を「攻撃対象」として名指ししている<ref>[http://www.focus-asia.com/socioeconomy/photonews/391851/ ISIS、数年後に新疆ウイグルの占領を計画、中国を「復讐ランキング」首位に―中国誌] 中国情報の日本語メディア―[[FOCUS-ASIA.COM]] - 中国の経済情報を中心としたニュースサイト。分析レポートや特集、調査、インタビュー記事なども豊富に配信。</ref>。

; 米国
2014年9月22日、アメリカの国防総省はアメリカ軍がシリア北部のラッカにて、「ISILに対する空爆を実施した」と明らかにした<ref>{{Cite news |title= 米がシリア領内で空爆 対「イスラム国」、イラクに続き|newspaper= 朝日新聞|date= 2014-09-23|author= 大島隆|url= http://www.asahi.com/articles/ASG9R3K01G9RUHBI00L.html|accessdate=2014-09-23}}</ref>。アメリカの国防総省は「攻撃には戦闘機、爆撃機が参加したのに加え、巡航ミサイル「トマホーク」も使用された」と説明<ref>{{Cite news |title= 米国がシリア空爆を開始「イスラム国」標的|newspaper= MSN産経ニュース|date= 2014-09-23|author= 加納宏幸|url= http://sankei.jp.msn.com/world/news/140923/amr14092311040004-n1.htm|accessdate=2014-09-23}}</ref>。

[[バラク・オバマ]]大統領は、2015年に入って以降、ISの勢力後退の認識を示してきたが、[[9月26日]]に、[[ニューヨーク・タイムズ]]は、米国の対ISIL作戦の戦況について楽観的に見せる歪曲した報告書が作成されたとする内部告発があったと報じており、情勢認識が誤っていた可能性が浮上した<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM27H2M_X20C15A8FF1000/ 「イスラム国」掃討報告書、米軍が戦況歪曲か 米紙報道]日本経済新聞</ref>。

; 湾岸諸国など
ISILが支配することを目標としている場所にある国々の[[政府]]は全て、(国土をほとんど奪われかねないので、ある意味、当然のことであるが)ISILを敵視している。ただしサウジアラビア総合情報庁は、シリア、イラク、イラン弱体化のために、影でISILなどの過激派に資金提供を行ってきたとされる(→[[#指導体制]]を参照)。

シーア派のイランはイラク軍と協力して越境攻撃も行い<ref>[http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4588285,00.html Top Iranian general, Hezbollah lead Iraq ground war. ynetnews] [[:en:Ynetnews|Ynetnews]] 2014年11月5日</ref><ref>イラン:革命防衛隊が越境 イラク支援のイスラム国攻撃 - 毎日新聞</ref>、反ISILの戦いを続けるイラクのクルド人勢力に武器を提供しており<ref>{{cite news |title=イランがイラク・クルド人勢力を支援、反「イスラム国」戦闘で |newspaper=[[ブルームバーグ (企業)|ブルームバーグ]] |date=2014-8-26 |url=http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NAX7WB6VDKHX01.html|accessdate=2014-9-20 |author=Zainab Fattah }}</ref>、かつては同じスンニ派を信じるためにISILの動きを静観していた[[サウジアラビア]](前記の通りISILの陰の[[スポンサー]]との指摘あり)などの湾岸諸国もまた、自国に対するテロの温床になりかねないとしてISILを強く批判するようになっている<ref>{{cite news |title=湾岸も「イスラム国」警戒 同じスンニ派サウジなど 静観一転、テロ温床懸念 |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2014-9-7 |url=http://www.asahi.com/articles/DA3S11337801.html |accessdate=2014-9-20 }}</ref>。

[[アラブ連盟]]は2014年9月7日に会合を開き、ISILを含む過激派勢力に対抗するために「必要なあらゆる措置を取る」という声明を発表した<ref>{{cite news |title=【イラク情勢】「あらゆる措置をとる」対イスラム国でアラブ連盟が合意 米国に言及なし |newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-9-8 |url=http://sankei.jp.msn.com/world/news/140908/mds14090810060001-n1.htm| accessdate=2014-9-20 |author= 大内清}}</ref>。

2014年9月11日、[[ヨルダン]]、[[エジプト]]、[[トルコ]]、[[サウジアラビア]]、[[アラブ首長国連邦|UAE]]、[[オマーン]]、[[クウェート]]、[[バーレーン]]、[[カタール]]の外相が、[[ジョン・ケリー]][[アメリカ合衆国国務長官|国務長官]]と会談し、アメリカの軍事作戦に協力することを約束した<ref>{{cite news |title=中東諸国、対「イスラム国」で米国との共闘を約束 |newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]] |date=2014-9-12 |url=http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970203714004580148541140258552 |accessdate=2014-9-20 |author=Maria Abi-Habib in Beirut | author2=Jay Solomon in Washington}}</ref>。2014年9月19日、トルコは、シリアとの国境にある有刺鉄線を排除し、国境を開放、ISILから逃げてくるクルド人などをトルコ領内に受け入れた<ref>{{cite news |title=シリアのクルド人、6万人以上がトルコに避難 イスラム国が攻勢|newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-9-21 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3026562 |accessdate=2014-9-24 |author=Bulent Kilic}}</ref>。

ISILは[[スンニ派]]を信仰しているとされるが、同じスンニ派であっても敵対する者は容赦なく排除する。[[イラク]]のスンニ派部族の中には、ISILと相容れずに戦っている者も少なくないが、ISILは彼らを大量に処刑、殺害している<ref>{{cite news |title=イスラム国:「スンニ派部族を大量処刑」 米が懸念表明 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-11-1 |url=http://mainichi.jp/select/news/20141102k0000m030059000c.html |accessdate=2014-11-2 |author=和田浩明}}</ref><ref>{{cite news |title=イスラム国、イラクで部族民40人以上を「処刑」 |newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-10-30 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3030347 |accessdate=2014-11-2 }}</ref>。

2015年7月には、ISILは[[ファタハ]]<ref>{{cite news |title=IIslamic State sends warning to Hamas and Fatah |newspaper=[[:en:The Times of Israel|The Times of Israel]] |date=2015-06-30|url=http://www.timesofisrael.com/liveblog_entry/islamic-state-sends-warning-to-hamas-and-fatah/ |accessdate=2015-11-30}}</ref>と[[イスラエル]]<ref>{{cite news |title=IS:「ハマス絶滅させる」 ネットで宣言 イスラエルも照準 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2015-07-02|url=http://sp.mainichi.jp/shimen/news/20150702ddm007030076000c.html |accessdate=2015-11-30}}</ref><ref>{{cite news |title=イスラエル、ガザ報復空爆 「イスラム国」賛同系が攻撃認める
|newspaper=日本経済新聞 |date=2015-06-07 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM07H2R_X00C15A6000000/ |accessdate=2015-11-30 }}</ref>、[[ガザ地区]]を支配する[[ハマース]]に対して「宣戦布告」をした<ref>[http://www.alquds.co.uk/?p=367404 パレスチナ:ダーイシュがハマースに宣戦布告]アル・クドゥス・ル・アラビー 2015年7月4日</ref>。

ISILと同じく[[サラフィー・ジハード主義]]を掲げる[[イエメン]]の[[イスラーム過激派|イスラム過激派]]組織「[[アラビア半島のアルカーイダ|アラビア半島のアルカイダ]]」は、ISILがイエメンの地を「自国領土」としているために対立しており、ISILを非難する声明を出している<ref>{{cite news |title=アルカイダ系組織が「イスラム国」非難 イエメン拠点 |newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2014-11-23 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H3G_S4A121C1000000/ | accessdate=2014-11-23 }}</ref>。

; テロ指定の状況
2015年1月時点でISILをテロ組織として認定しているのは、国連{{efn|国連安保理決議1267<ref>{{cite web|url=http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/terro/anpo_1267.html|accessdate=2015-01-28|title=安保理決議1267(仮訳)|publisher=[[外務省]]}}</ref><ref>{{en icon}}{{cite web|url=http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/1267(1999)|accessdate=2015-01-28|title=国際連合安全保障委員会決議1267|date=1999-10-15|publisher=[[国際連合]]}}</ref>および決議1989<ref>{{cite web|url=http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000053571.pdf|accessdate=2015-01-28|title=国連安保理決議第1989号(仮訳)|publisher=[[外務省]]}}</ref><ref>{{en icon}}{{cite web|url=http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/1989%20(2011)|accessdate=2015-01-28|title=国際連合安全保障委員会決議1989|date=2011-06-17|publisher=[[国際連合]]}}</ref>では、[[タリバン]]および[[アルカイダ]]をテロ組織に指定し、制裁措置を取ることが確認されている。前述の決議に基づいて設置された制裁委員会<ref>{{en icon}}{{cite web|url=http://www.un.org/sc/committees/1267/aq_sanctions_list.shtml|accessdate=2015-01-28|title=The Al-Qaida Sanctions Committee|publisher=[[アル・カーイダ制裁委員会]]}}</ref>の制裁対象者リストにISILも掲示されている<ref>{{en icon}}{{cite web|url=http://www.un.org/sc/committees/1267/AQList.htm|accessdate=2015-01-28|title=Al-Qaida Sanctions List|quote=QE.J.115.04. Name: AL-QAIDA IN IRAQ(イラクのアル・カーイダ)として掲示|publisher=[[アル・カーイダ制裁委員会]]}}</ref>。}}、EU{{efn|国連の制裁対象者リストを元にテロ組織指定。<ref>{{Cite report |author=Martin Waehlisch|date=2010-10|format=PDF|title=EU Terrorist Listing - An Overview about Listing and Delisting Procedures|url=http://www.berghof-foundation.org/fileadmin/redaktion/Publications/Other_Resources/RLM_EU_Terrorist_Listing.pdf|publisher=Berghof Peace Support. Berghof Foundation|accessdate=2015-1-24|pages=4-5}}</ref>}}、イギリス<ref>{{Cite press release |title=Proscribed terrorist groups|publisher=[[イギリス内務省]]|date=2015-1-23|format=PDF|url=https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/397683/Proscription-20150123.pdf|accessdate=2015-1-24}}</ref>、アメリカ<ref>{{Cite press release |title=Foreign Terrorist Organizations|publisher=[[アメリカ合衆国国務省]]|url=http://www.state.gov/j/ct/rls/other/des/123085.htm|accessdate=2015-1-24}}</ref>、ロシア<ref>{{Cite news |title=ロシア イスラム国をテロ組織認定|newspaper=[[NHKオンライン]]|date=2014-12-30|url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141230/k10014361101000.html|accessdate=2015-01-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20150101152932/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141230/k10014361101000.html|archivedate=2015-1-1}}</ref>、オーストラリア<ref>{{Cite press release |title=Listed terrorist organisations|publisher=Australian National Security|url=http://www.nationalsecurity.gov.au/Listedterroristorganisations/Pages/default.aspx|accessdate=2015-1-24}}</ref>、カナダ<ref>{{Cite press release|title=Currently listed entities|publisher=Public Safety Canada|url=http://www.publicsafety.gc.ca/cnt/ntnl-scrt/cntr-trrrsm/lstd-ntts/crrnt-lstd-ntts-eng.aspx|accessdate=2015-1-24}}</ref>、インド<ref>{{Cite news |title=India bans Islamic State|newspaper=The Hindu|date=2014-12-16|url=http://www.thehindu.com/news/national/indian-government-bans-islamic-state-terror-organisation/article6698369.ece|accessdate=2015-01-24}}</ref>、エジプト<ref>{{Cite news |title=Egypt brands jihadist ISIL a 'terrorist group'|newspaper=Hürriyet Daily News|date=2014-11-30|url=http://www.hurriyetdailynews.com/egypt-brands-jihadist-isil-a-terrorist-group.aspx?pageID=238&nID=75033&NewsCatID=352|accessdate=2015-01-24}}</ref>、サウジアラビア<ref>{{Cite news |title=Saudi Arabia designates Muslim Brotherhood terrorist group|agency=[[ロイター]]|date=2014-5-7|url=http://www.reuters.com/article/2014/03/07/us-saudi-security-idUSBREA260SM20140307|accessdate=2015-01-24}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.sankei.com/world/news/140308/wor1403080001-n1.html|accessdate=2015-01-28|title=サウジ、同胞団をテロ組織指定 思想的影響力に警戒|date=2014-03-08|newspaper=[[産経新聞]]}}</ref>、UAE<ref>{{Cite news |title=UAE publishes list of terrorist organisations|newspaper=Gulf News|date=2014-11-15|url=http://gulfnews.com/news/gulf/uae/government/uae-publishes-list-of-terrorist-organisations-1.1412895|accessdate=2015-01-24}}</ref>、日本<ref>{{cite web|url=http://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/|accessdate=2015-01-28|title=国際テロ組織 世界のテロ組織等の概要・動向|work=[[公安調査庁]]}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/ME_N-africa/AQI_ISIL.html|accessdate=2015-01-28|title=イラクのアルカイダ(AQI)|work=[[公安調査庁]]}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000053664.pdf|accessdate=2015-01-28|title=G7外相声明テロ組織ISIL/DAESHとの戦いのための共同行動(仮訳)|date=2014-09-25}}</ref>である。

=== 支持 ===
勢力を伸ばすISILを支持したり、傘下に入ったりするジハード主義組織は増えている。2014年6月、イスラム国の樹立が宣言された時、[[ナイジェリア]]の[[ボコ・ハラム]]は支持を表明している<ref>{{cite news |title=ナイジェリア:ボコ・ハラムが停戦合意を否定 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-11-2 |url=http://mainichi.jp/select/news/20141102k0000m030030000c.html |accessdate=2014-11-3 |author=服部正法 }}</ref>。2014年9月には、[[フィリピン]]のイスラーム主義過激派組織[[アブ・サヤフ]]がISILとの共闘を宣言した<ref>{{cite news |title=フィリピン過激派組織がISISと共闘宣言 |newspaper=[[ニューズウィーク]] |date=2014-10-2 |url=http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2014/10/isis-1.php |accessdate=2014-11-3 |author=ミシェル・フロルクルス }}</ref>。2014年10月14日、ISILと対立する[[ターリバーン]]と関係の深い[[パキスタン・ターリバーン運動]]の幹部6人がISILの傘下に入った<ref>{{cite news |title=「イスラム国」シンパ増殖 過激派が傘下入り |newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2014-10-19 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM19H0F_Z11C14A0FF8000/ | accessdate=2014-11-3| author=押野真也 }}</ref>。2014年11月10日、[[エジプト]]の過激派エルサレムの支援者({{仮リンク|アンサール・ベイトゥルマグディス|en|Ansar Bait al-Maqdis}})が、ISIL最高指導者アブー・バクル・バグダーディーへの忠誠を表明した<ref>{{cite news |title=エジプト過激派組織、イスラム国指導者への忠誠を表明 |newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-11-11 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3031422 |accessdate=2014-11-11 |author=Ammar Karim |author2=Samer al-Atrush in Cairo }}</ref>。「エルサレムの支援者」は、後に「イスラム国[[シナイ半島|シナイ州]]」と名を変えた<ref>{{cite news |title=【「イスラム国」世界に拡大】“領土獲得”着々 他のイスラム勢力とのあつれきも|newspaper=[[共同通信社]] |date=2015-2-4 |url=http://www.47news.jp/47topics/e/261727.php |accessdate=2015-2-28}}</ref>。他にも、リビアの過激派「イスラム青年シューラー会議」が、ISIL出身の者に指導され、「イスラム国[[キレナイカ|キレナイカ州]]」と名乗るようになっている<ref>{{cite news |title=ついに「ダーイシュ」に報復宣言、エジプトは中東を安定に導けるか? ダーイシュの“模倣犯”に挟まれ、国内は治安悪化の一途 |newspaper=[[日本ビジネスプレス]] |date=2015-2-26 |url=http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43022 |accessdate=2015-2-28 |author=松本太}}</ref>。

2014年12月、[[環球時報]]は[[東トルキスタンイスラム運動]]に所属する[[ウイグル族]]の[[中国人]]約300名がISILに参加したと発表した<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H6O_W4A211C1FF1000/ 「イスラム国」戦闘員、中国から300人合流か][[日本経済新聞]]2015年1月31日閲覧</ref>。その後エルサレムの支援者たちはISILのエジプト部門となり、同様に[[アルジェリア]]部門の中心となったカリフの兵士、[[リビア]]部門となったイスラーム青年シューラ評議会といった組織もある。

その他、[[ヨルダン]]ではタウヒードの息子たち、[[レバノン]]の自由スンニのバールベック大隊、[[インドネシア]]ではファクシという組織がISILを支持している。

== 軍事 ==
=== 兵力 ===
ISILの構成員は1万数千人と言われているが、そのうち約6,300人は「イスラム国」の建国を宣言してからの加入者だと言われており、建国宣言から急速に勢力を拡大している。新規参加者のうち大半は[[シリア]]人とされる。[[アメリカ合衆国]]の[[中央情報局|CIA]]は、[[戦闘員]]の数は2万人-3万1,500人に上るとする見方を示している<ref>{{cite news |title=「イスラム国」戦闘員3万人に拡大か |newspaper=[[日本放送協会|NHK]] |date=2014-9-12 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140912/k10014552151000.html |accessdate=2014-9-13}}</ref>。

戦闘員の人数は最小で3万、最大で15万人との推計もある。

[[2014年]]8月から、[[アメリカ軍]]などがISILへの[[空襲|空爆]]を実施しており、アメリカ軍は推定2万人のISILの兵を殺害しているが、絶えず新しい兵がISILに加入しているため、総数は減っていない<ref>{{cite news |title=2万人殺しても2万人増えるISISに米軍は打つ手なし|newspaper=[[ニューズウィーク]] |date=2015-10-14 |url=http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/10/isis-17.php |accessdate=2015-10-16 }}</ref>。

==== 外国人戦闘員 ====
[[シリア]]人など現地の人々だけで組織が構成されているわけではなく、外国人の[[傭兵]]も随時募集しており、[[兵士]]約31,000人のうち、ほぼ半数の16,000人が外国人である。外国人[[戦闘員]]は、[[アラブ世界|アラブ諸国]]や[[ヨーロッパ|欧州]]・[[中華人民共和国|中国]](特に[[新疆ウイグル自治区|ウイグル自治区]])などから参加している<ref>{{cite news |title=イスラム国:建国宣言後の1カ月で6300人が新加入 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-8-21 |url=http://mainichi.jp/select/news/20140821k0000e030199000c.html |accessdate=2014-8-24}}</ref>。[[プロパガンダ]]動画には[[空撮]]や[[スローモーション]]などの演出が盛り込まれている<ref>[http://www.sankei.com/world/news/140923/wor1409230054-n2.html イスラム国「最も裕福なテロ組織」 高水準の装備や宣伝動画] 産経新聞 2014年9月23日</ref>。

[[アメリカ合衆国|アメリカ]]や[[フランス]]の研究機関によると、([[2014年]]11月時点の分析で)[[チュニジア]]からは3,000人、[[サウジアラビア]]からは2,500人が戦闘員としてISILに参加している<ref name="afpbb3030582">{{cite news |title=空爆でも止まらない外国人戦闘員の流入、イスラム国|newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-11-1 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3030582 |accessdate=2014-11-3 |author=James PHEBY }}</ref>。

ヨーロッパ諸国では、ISILをはじめとする[[イスラーム過激派]]に加わった戦闘員が、帰国後に自国内で[[テロリズム|テロ]]を起こす可能性を危惧している<ref>{{cite news |title=米記者殺害犯はイギリス人? 英米が特定急ぐ 「イスラム国」映像の覆面男 |newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]] |date=2014-8-21 |url=http://jp.wsj.com/articles/SB10001424052970203403704580104701142494366 |accessdate=2014-8-24 |author=MARGARET COKER |author2=NICHOLAS WINNING}}</ref>。[[イギリス]]の[[デーヴィッド・キャメロン|キャメロン]][[イギリスの首相|首相]]は、2014年[[8月29日]]、イギリス国籍のISILの戦闘員は少なくとも500人にのぼると語り、国外でテロ行為に関わった疑いのあるイギリス国民の出入国を抑制する方針を発表した。ただし、[[居住移転の自由|移動の自由]]を侵害しかねない懸念もあり、[[自由民主党 (イギリス)|イギリスの自民党]]は[[国際法]]違反と指摘している<ref>{{cite news |title=イスラム国戦闘員の英国人500人 首相、帰国禁止方針 |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2014-9-2|url=http://www.asahi.com/articles/ASG9213L7G91UHBI037.html |accessdate=2014-9-3 |author=渡辺志帆}}</ref>。2014年8月、[[ドイツ]]の[[アンゲラ・メルケル|メルケル]][[ドイツの首相|首相]]によれば、ISIL要員は約2万人で、うち欧州出身者が約2,000人を占めると語った<ref>{{cite news |title=欧州出身だけで2千人…イスラム国戦闘員の1割 |newspaper=[[読売新聞]] |date=2014-8-28 |url=http://www.yomiuri.co.jp/world/20140828-OYT1T50131.html |accessdate=2014-9-3 |author=工藤武人}}</ref>。ドイツからは、400人超の若者がISILの戦闘員となり、このうち100人はドイツに帰国しているとされる。ドイツの[[トーマス・デメジエール|デメジエール]]内相は、ISILを支援するあらゆる活動を禁止する方針を発表した<ref name="k10014572951000">{{cite news |title=独 「イスラム国」の支援活動を禁止 |newspaper=[[日本放送協会|NHK]] |date=2014-9-12 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140912/k10014572951000.html|accessdate=2014-9-13}}</ref>。[[アメリカ国防総省]]は、10人ほどの[[アメリカ人]]がISILに参加しているらしいと発表した<ref>{{cite news |title=米国人10人ほど イスラム国戦闘員か |newspaper=[[日本放送協会|NHK]] |date=2014-9-5 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140905/k10014370111000.html| accessdate=2014-9-5 }}</ref>。

非イスラム教国の中では、[[ロシア]]から最も多くの戦闘員が出ており、ロシア出身の戦闘員数は800人という説がある<ref name="afpbb3030582">{{cite news |title=空爆でも止まらない外国人戦闘員の流入、イスラム国|newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-11-1 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3030582 |accessdate=2014-11-3 |author=James PHEBY }}</ref>。

『[[週刊新潮]]』[[2015年]][[2月5日]]号特集記事『「イスラム国」大全』によると、「こうしたプロパガンダや過激なイスラム思想に共鳴し、志願したものの現実に嫌気がさしている兵士も多くいる。ある[[フランス人]]兵士は、イスラムの教えに則った生活ができると参加したが、[[食事]]は1日1-2回で薄い[[パン]]と[[チーズ]]、[[羊肉]]だけで[[給与|給料]]も出なくなった。[[正義]]のために闘ってきたが、[[殺人|殺戮]]の繰り返しに単なるテロリストに過ぎないと気付き始めた。2015年[[1月12日]]には禁止されている[[サッカー]]観戦をした[[少年]]13名が[[銃殺]]されたが、これをきっかけにそういった考えを持つ[[外国人]]兵士が多くなっている。しかし、自国でテロリストとして逮捕されるため帰国できない者も多くいる。[[部隊]]での昇進の基準は「たくさん人を殺すこと」であり、対象は[[民間人]]でも女性でも子供でもよく、ISILの理念に賛同しない者、と制度化している。下級兵士が昇進するためには「10人を殺害する」ことが条件になる。9人は殺害できたが、10人目が達成できないある兵士は妻を殺害して目的を達成した」のだという<ref name="shincho20150205"/>。

;日本人
[[田母神俊雄]]は[[イスラエル]]訪問時に「9人の[[日本人]]がISILに参加している」という情報を得たと[[ブログ]]で発表した<ref>{{cite web | publisher = 田母神俊雄オフィシャルブログ | title =イスラエルを訪問して | url =http://ameblo.jp/toshio-tamogami/entry-11927690420.html | date = 2014-9-20 | accessdate = 2014-10-6}}</ref>が、[[中山泰秀]]外務副大臣がイスラエルに確認した所、そのような情報は無いという回答であった<ref>{{cite news |title=「イスラム国への日本人参加」否定 中山副大臣、イスラエル次官に電話で確認 |newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-10-2 |url=http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E3%80%8C%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E5%9B%BD%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E5%8F%82%E5%8A%A0%E3%80%8D%E5%90%A6%E5%AE%9A-%E4%B8%AD%E5%B1%B1%E5%89%AF%E5%A4%A7%E8%87%A3%E3%80%81%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB%E6%AC%A1%E5%AE%98%E3%81%AB%E9%9B%BB%E8%A9%B1%E3%81%A7%E7%A2%BA%E8%AA%8D/ar-BB6YYqk |accessdate=2014-10-6 }}</ref>。

[[2014年]][[10月6日]]、[[警視庁]]は[[北海道大学]]の学生がISILに加わろうとしたとして、[[国交に関する罪|私戦予備および陰謀]]の疑いで[[事情聴取]]をした。学生はISIL司令官と太いパイプを持っているイスラム法学者[[中田考]]の紹介によって、ISIL幹部と接触しようとした。中田は幹部に学生を紹介し、ルートや通訳の手配をしたことについて[[警視庁公安部]]の事情聴取と[[捜索|家宅捜索]]を受けた。

;戦闘員の募集手段、戦闘員の出身階層
かつて、ヨーロッパやその他先進国の国民でイスラム過激派に加わる者は、不遇な生活環境や家庭的に恵まれない若者が多かったとされるが、現在は中流・富裕層も多くいるとされる。[[France 24|フランス24]]によれば、ISILは、[[アルカーイダ|アルカイダ]]と比較して、領土的地盤があり、資金が豊富で、巧みな広報戦略などの点で、参加者にとって魅力的に映っているとされる<ref>{{cite news |title=フランス:若い女性や中流・富裕層出身者がイスラム国参加 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-9-19 |url=http://mainichi.jp/select/news/20140919k0000m030038000c.html |accessdate=2014-9-21 |author=宮川裕章}}</ref>。FBIの調査によると、アメリカからのISIL参加者の人種・民族・職業・年齢に特有の特徴は見られないという<ref>{{cite news |title=イスラム国参加米国人に特有の特徴ない=FBI長官 |newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]] |date=2014-11-4 |url=http://jp.wsj.com/articles/SB12377912224764574491004580255403015655006 |accessdate=2014-12-1}}</ref>。[[マレーシア]]からの参加者には一般[[公務員]]、軍人、[[研究者|研究職]]なども多く含まれており、特に公務員への浸透が問題となっている<ref>{{cite news |title=イスラム国参加者増、教育不足が原因との見方も…マレーシア |newspaper=[[ニュー・ストレーツ・タイムズ]] |date=2014-12-20 |url=http://response.jp/article/2014/12/20/240054.html |accessdate=2014-12-22}}</ref>。またISILの元戦闘員の証言によると、ヨーロッパ出身者など、中東以外から来た戦闘員が、主に残虐な犯罪を犯すという<ref>{{cite news |title=欧州に忍び寄るイスラム国の脅威 「聖戦地」に少年、少女が結集~北欧・福祉社会の光と影 |newspaper=[[日本ビジネスプレス]] |date=2014-11-21 |url=http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42239 |accessdate=2014-11-22 |author=みゆきポアチャ}}</ref>。

;ヨーロッパの家庭で子が戦闘員になった場合の状況
ヨーロッパに残された家族は、家族を失ったことの悲しみの他、社会からは「親の教育のせいでISILになった」という批判を受けるという二重の苦しみを味わっている。[[ベルギー]]では、子供が過激派に参加している家族の会が、若者の過激派入りを予防する運動を行っていたが、ベルギー社会からは「過激派の仲間」として扱われ、リンチじみた中傷を受けて、家族の会は解散に追い込まれた<ref>{{cite news |title=イスラム国:子失い、社会からは批判 家族二重の苦しみ |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-12-12 |url=http://mainichi.jp/select/news/20141212k0000e030169000c.html |accessdate=2014-12-13 |author=宮川裕章}}</ref>。
{{Bar chart
| title = シリア、イラク以外のISIL戦闘員の出身国(500人以上)
| label_type = 出身国
| data_type = 人数
| label1 = {{flagu|Tunisia}} | data1 = 3,000
| label2 = {{flagu|Saudi Arabia}} | data2 = 2,500
| label3 = {{flagu|Russia}} | data3 = 1,700
| label4 = {{flagu|Jordan}} | data4 = 1,500
| label5 = {{flagu|Morocco}} | data5 = 1,500
| label6 = {{flagu|France}} | data6 = 1,200
| label7 = {{flagu|Turkey}} | data7 = 1,000
| label8 = {{flagu|Lebanon}} | data8 = 900
| label9 = {{flagu|Germany}} | data9 = 650
| label10 = {{flagu|Libya}} | data10 = 600
| label11 = {{flagu|United Kingdom}} | data11 = 600
| label12 = {{flagu|Uzbekistan}} | data12 = 500
| label13 = {{flagu|Pakistan}} | data13 = 500
<!-- | label13 = {{flagu|Belgium}} | data13 = 440
| label14 = {{flagu|Turkmenistan}} | data14 = 360
| label15 = {{flagu|Egypt}} | data15 = 360
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| label19 = {{flagu|Kosovo}} | data19 = 300
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| label42 = {{flagu|Israel}} | data42 = 40–50
| label43 = {{flagu|Switzerland}} | data43 = 40
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| label46 = {{flagu|Portugal}} | data46 = 10–12 -->
}}

; 細胞組織
[[中東]]と[[北アフリカ]]の全域でISILの[[細胞 (政党)|細胞組織]]の増加を示す証拠が増えてきており、[[リビア]]にはすでに3,000人の戦闘員がいるとされる<ref name="afpbb3030582"/>。

以下、細胞組織があるとされる国家の一覧。

*中東
**{{AFG}}
**{{EGY}}
**{{PLE}}
**{{LEB}}
**{{TUR}}
**{{IRN}}
**{{JOR}}
**{{YEM}}
**{{SAU}}
*北アフリカ
**{{ALG}}
**{{LBA}}
**{{TUN}}
*西アフリカ
**{{NGA}}
**{{NIG}}
**{{TCD}}
**{{CMR}}
**{{BEN}}
*東南アジア
**{{IDN}}
**{{PHL}}
*ヨーロッパ
**{{EUR}}
; 少年兵
ISILは、13歳の[[少年兵]]も動員しているとされ、[[国際連合|国連]]は懸念を示している<ref>{{cite web |title=「子どもの被害、最大700人」国連がイスラム国批判 |newspaper=[[朝日新聞|朝日新聞デジタル]] |url=http://www.asahi.com/articles/ASG990QDNG98UHBI02Y.html|data=2014-9-9 |accessdate=2014-9-13|author=金成隆一}}</ref>。

=== 装備 ===
初期の段階では、[[戦闘員]]の多くは[[AK-47]]や[[RPG-7]]を装備し、移動には[[テクニカル]]を利用するなど、[[テロリズム|テロリスト]]然とした装備であったが、その後 事態が長期化するにつれて[[イラク治安部隊|イラク軍]]から[[鹵獲]]した[[アメリカ合衆国|アメリカ]]製および[[欧州|ヨーロッパ]]製の[[武器]]([[M4カービン]]や[[ミニミ軽機関銃]]など)や、[[欧米]]からの[[志願兵]]が持ち込んだ[[戦闘服]]・[[タクティカルベスト]]・[[暗視装置|暗視ゴーグル]]などの近代的な装備を利用し始めている。また、イラク軍の[[基地]]を制圧した際には、[[ハンヴィー]]や[[MRAP]]などの[[装甲車]]、[[T-55]]や[[M-46 130mmカノン砲|59-I式カノン砲]]や[[ZU-23-2]]などの地上戦力だけでなく、[[MiG-21 (航空機)|MiG-21 フィッシュベッド]]や[[Mi-24 (航空機)|Mi-24 ハインド]]といった[[航空機]]までも入手しているとされる<ref>[http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303721104580085253602807276 米空爆の「イスラム国」、本拠地シリアで勢力増す] - [[ワシントン・ポスト]]</ref>。[[トルコ]]の新聞社デイリー・サバー(Daily Sabah)によれば、[[戦車]]戦力の大半はT-55・[[T-62]]・[[T-72]]など[[ソビエト連邦|ソ連]]および[[ロシア]]製の戦車と見られるが、[[アメリカ軍|米軍]]が[[イラク治安部隊#陸軍|イラク陸軍]]を再建する際に提供した[[M1エイブラムス]]も鹵獲された可能性があるという<ref>{{cite web|url=http://www.middleeasteye.net/news/seizes-sirte-airbase-after-misrata-forces-pull-out-67648483|title=IS seizes Libya airbase after Misrata forces pull out|publisher=[[Middle East Eye]]|accessdate=10 June 2015}}</ref>。

ISILは、数的には決して圧倒的ではないが、優れた[[西側諸国|西側]]の[[兵器]]や[[シリア騒乱|シリア内戦]]で得た[[戦闘]]経験を持ち、攻撃目標の適切な選択をすることで不必要な犠牲を出さない効率的な戦い方を心得ており、志願兵の流入と相まって勢力を拡大している<ref>{{cite news |title=「イスラム国」が勢力拡大を続ける5つの理由 |newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-8-11 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3022684 |accessdate=2014-8-23 |author=Jean Marc MOJON }}</ref>。

2014年6月には、ISILは[[イラク]]の[[サッダーム・フセイン|フセイン]]時代に建設された[[化学兵器]]関連施設を制圧した<ref>{{cite news |title=「イスラム国」が化学兵器施設制圧 イラクが確認 |newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2014-7-10 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXNZO74036750Q4A710C1FF1000/ | accessdate=2013-4-12-27 }}</ref>。2014年10月24日には、ISILが、イラクで有毒の[[塩素]]ガスを化学兵器として戦闘に用いた可能性が報じられた<ref>{{cite news |title=イスラム国、化学兵器使用か 米が確認急ぐ 米紙報道 |newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-10-25 |url=http://www.sankei.com/world/news/141025/wor1410250014-n1.html | accessdate=2014-12-27 | author=加納宏幸}}</ref>。この化学兵器関連施設は、2014年12月1日に、イラクが奪還した<ref>{{cite news |title=イラクが化学兵器施設を奪還 イスラム国から |newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-12-2 |url=http://www.sankei.com/world/news/141202/wor1412020028-n1.html | accessdate=2014-12-27 }}</ref>。

[[2015年]][[2月10日]]、[[化学兵器禁止機関]]は[[東京都|東京]]で[[記者会見]]を開き、ISILが、[[イラク]]の[[兵士]]に対して[[塩素]]ガスを使ったと、[[イラク治安部隊|イラク当局]]から通報を受けたことを明らかにした。化学兵器禁止機関は、この通報について「疑いを持つ根拠はない」とする一方、ISILによる[[化学兵器]]の保有については把握していないとした<ref>{{cite news |title=「イスラム国」、イラクで塩素ガス使用か OPCW会見 |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2015-2-10 |url=http://www.asahi.com/articles/ASH2B62WQH2BUHBI02R.html |accessdate=2015-3-1 }}</ref>。[[9月11日]]、[[英国放送協会]]は、アメリカ政府筋の話として、ISILが化学兵器を製造し、少なくとも4回にわたって、[[マスタードガス]]を使用したと報じた<ref>[http://www.sankei.com/world/news/150911/wor1509110045-n1.html 独自に化学兵器を製造、使用か 英BBC報道]産経新聞</ref>。

=== 評価 ===
2014年8月22日、[[チャック・ヘーゲル]][[アメリカ合衆国国防長官|国防長官]]は記者会見で、ISILの特徴として野蛮な思想と洗練された軍事力、潤沢な資金を併せ持つことを挙げ、「これまでに見たどの組織よりも洗練され、資金も豊富で、単なるテロ組織を超えている」と評した<ref>{{cite news |title=「イスラム国」勢い衰えず 警戒強める欧米諸国 |newspaper=[[日本経済新聞]] |date=2014-8-23 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H11_S4A820C1FF1000/ |accessdate=2014-8-25 }}</ref><ref>{{cite news |title=「イスラム国、ただのテロ集団でない」米国防長官 |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2014-8-22 |url=http://www.asahi.com/articles/ASG8Q3FZTG8QUHBI00B.html |accessdate=2014-8-25 | author=小林哲}}</ref>。ISILは、[[アメリカ合衆国]]の最大の敵として急浮上している<ref>{{cite news |title=「イスラム国」勢い衰えず 警戒強める欧米諸国 |newspaper=[[日本経済新聞]] |date=2014-8-23 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H11_S4A820C1FF1000/ |accessdate=2014-8-25 }}</ref><ref>{{cite news |title=コラム:米国「究極の敵」に急浮上したイスラム国 |newspaper=[[ロイター]] |date=2014-8-27|url=http://jp.reuters.com/article/jpUSpolitics/idJPKBN0GR0MD20140827 |accessdate=2014-8-27 | author=Jack Shafer}}</ref>。豊富な資金源を持つISILは、アル・カーイダをしのぐ影響力を持つ可能性も指摘されている<ref>{{cite news |title=イスラム国:アフリカにも影響力 豊富な資金力も一因 |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-9-2 |url=http://mainichi.jp/select/news/20140903k0000m030120000c.html|accessdate=2014-9-3 }}</ref>。

アメリカの[[マーティン・デンプシー]][[アメリカ統合参謀本部議長|統合参謀本部議長]]は、2014年11月の段階で、ISILの掃討にかかる時間は、3年から4年の長期戦になるとの見方を示した<ref>{{cite news |title=米軍、「イスラム国」掃討「3~4年かかる」 |newspaper=[[読売新聞]] |date=2014-11-20 |url=http://www.yomiuri.co.jp/world/20141120-OYT1T50045.html |accessdate=2014-11-23 |author=今井隆}}</ref>。

== 経済、財政 ==
=== 資金調達、経済運営 ===
かつては、ISILは湾岸諸国の(イスラムの)富裕層からの寄付(資金援助)や、[[イスラム世界]]全体からの寄付で資金を得ていると考えられていた<ref name="wall_street_journal_20140828" />。

しかし2014年8月の段階ですでに、資金面ではほぼ自立している状態になっているという<ref name="wall_street_journal_20140828" />。米国の国務省当局者の分析では、外部からの資金供与の割合はほんのわずかなのだという<ref name="wall_street_journal_20140828" />。

ウォールストリートジャーナルに掲載された情報によると、ISILの主な資金獲得方法は次のようなものだという(2014年8月時点)<ref name="wall_street_journal_20140828" />。
*中央銀行の支店からの収奪<ref name="wall_street_journal_20140828" />
*[[人質]]([[身代金]])<ref name="wall_street_journal_20140828" />
*[[石油]]の販売<ref name="wall_street_journal_20140828" />
*海外からの[[寄付金]]<ref name="wall_street_journal_20140828" />

[[イラク]]、[[イラン]]、[[シリア]]弱体化を狙う[[サウジアラビア]][[王族]]の[[バンダル・ビン・スルターン]](又はその背後の[[サウジアラビア総合情報庁]])が影から資金提供をしていたとされ、イランや駐シリア[[ヨルダン]][[特命全権大使|大使]]、一部のジャーナリスト、学者は、バンダルこそがアルカイダやISILなどの過激派の真の指導者だと主張している<ref>[http://en.alalam.ir/news/1526167 Saudi Prince is real leader of al-Qaeda] ALALAM 2013年10月19日</ref><ref>[http://www.intrepidreport.com/archives/13495 ‘Bandar Bush’ is back calling the shots on ISIL’s advance through Iraq] Intrepid Report 2014年7月7日</ref><ref>[http://www.globalresearch.ca/global-terrorism-and-saudi-arabia-a-retrograde-rentier-dictatorship/5364556 Global Terrorism and Saudi Arabia: Bandar’s Terror Network] Global Reseach 2014年1月11日</ref>。ただし、バンダルが解任された2014年頃からそれまでISILを静観してきたサウジアラビアもISILを非難するようになった。

;自立的収入
商人や農民に寄付をさせ、[[公共交通機関]]から手数料をとり、支配地域にとどまる選択をした[[キリスト教徒]]などからは「安全保証料」を徴収しているという<ref name="wall_street_journal_20140828" />。

石油・[[小麦]]・古代[[遺物]]の取引の管理と闇市場の運営をしている<ref name="wall_street_journal_20140828" />(取引相手には、意外なところではアサド政権派のシリア人、シーア派、クルド人ビジネスマンまで含まれる<ref name="wall_street_journal_20140828" />)。

シリアとイラク内のISIL支配地域で、経済はおおむね安定しているという。ISILには、組織内に資金を管理する「財務相」と財政委員会を置いているという<ref name="wall_street_journal_20140828" />。

シリアの反体制派の者が語ったことによると、ISILはラッカ県とデリゾール県の8カ所の油田・ガス田を管理しており、(シリアやレバノンの石油取引業者の話では)重質油は1[[バレル]]を26-35ドルで、軽質油は最高60ドルで、地元やイラクの石油取引業者などに売り渡しているという(2014年8月時点)<ref name="wall_street_journal_20140828" />。

ISILは、[[原油]]販売や、支配地住民への略奪や[[租税|課税]]、[[密輸]]などを通じて、2014年には1日当たり100万ドルを調達していたが<ref name="cnn35052773">{{cite news |title=イラクで油田奪取のイスラム過激派、密売で1日2億円稼ぐ |newspaper=[[CNN]] |date=2014-8-24 |url=http://www.cnn.co.jp/world/35052773.html |accessdate=2014-8-27 }}</ref>、その後、制圧した原油が増加し、2014年8月下旬時点では1日当たり200万[[アメリカ合衆国ドル|ドル]](約2億800万[[円 (通貨)|円]])余りの資金を調達していると見られている<ref name="bloombergNAW8586KLVRT01" />。ISILは、1日あたり3万[[バレル]]の原油を産出しているとされる<ref name="cnn35052773"/>。また、[[遺跡]]の[[盗掘]]も資金源になっていることが判明した<ref>[http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140627004 ナショナルジオグラフィックニュース](2014年6月27日)</ref>。支配地域の拡大についても天然資源の確保に重点を置いているとされる<ref>[http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/pdf/pdfNews20150717_173545.pdf ダーイシュの戦略に変化]Mardomsalari 2015年7月2日</ref>。

2014年11月27日、[[石油輸出国機構]]の総会で、減産を見送り、12カ国の生産目標をいまの日量3千万バレルで据え置くことを決めた。これに伴って、原油価格が急落した<ref>{{cite news |title=OPEC、減産見送り 決定を受け原油価格が急落 |newspaper=[[朝日新聞]] |url=http://www.asahi.com/articles/ASGCW5SR0GCWUHBI01H.html |accessdate=2014-12-21 |date = 2014-11-28 | author=星野真三雄 | author2=畑中徹 }}</ref>。この原油安は、[[ロシア]]では[[ロシア・ルーブル]]が暴落し、急遽、ロシア政府が12月16日に[[政策金利]]を10.5%から17%に大幅に引き上げたり、[[ベネズエラ]]では[[債務不履行]]の懸念が高まる<ref>{{cite news |title=ベネズエラは恐らく来年デフォルト状態に陥る-ソシエテG |newspaper=[[ブルームバーグ (企業)|ブルームバーグ]] |date=2014-12-18 |url=http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NGRBL36TTDS401.html |accessdate=2014-12-21 |author=Sebastian Boyd }}</ref><ref>{{cite news |title=焦点:デフォルト懸念のベネズエラ、原油依存で深まる苦境 |newspaper=[[ニューズウィーク]] |date=2014-12-10 |url=http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2014/12/139790_1.php|accessdate=2014-12-21 |author=Daniel Bases}}</ref>など、原油輸出国に大きな打撃を与えている<ref>{{cite news |title=ルーブル危機でロシア経済はもう手遅れ |newspaper=[[ニューズウィーク]] |date=2014-12-17 |url=http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2014/12/post-3497_1.php |accessdate=2014-12-21 |author=ジョーダン・ワイスマン}}</ref>。この原油安について、各所で[[陰謀論]]が唱えられており、代表的な所では[[ロシア]]の[[ウラジーミル・プーチン|プーチン]][[ロシア連邦大統領|大統領]]がアメリカと[[サウジアラビア]]によって仕組まれた可能性を示唆している<ref>{{cite news |title=Putin says oil market price conspiracy between Saudi Arabia and US not ruled out |newspaper=[[イタルタス通信]] |url=http://itar-tass.com/en/russia/767896 |date=2014-12-18}}</ref>。また、[[イラン]]の[[ハサン・ロウハーニー]][[イランの大統領|大統領]]も陰謀論を唱える代表的人物である<ref>{{cite news |title=Iranian president blames oil price fall on political conspiracy |newspaper=[[CNBC]] |url=http://www.cnbc.com/id/102256076 |date=2014-12-10 }}</ref>。同時期に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[ホワイトハウス]]が出した発表において、[[バラク・オバマ|オバマ]][[アメリカ合衆国大統領|大統領]]が[[サウジアラビア]]の[[アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ|アブドラ]][[サウジアラビアの国王一覧|国王]]とISILへの対応に関して話し合いをした<ref>{{cite news |title=Readout of the President’s Call with His Majesty King Abdullah bin Abdulaziz of the Kingdom of Saudi Arabia |newspaper=[[The White House Office of the Press Secretary]] |url=http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2014/09/10/readout-president-s-call-his-majesty-king-abdullah-bin-abdulaziz-kingdom}}</ref>とのことだが、原油価格について触れられたかどうかのデータは無い。

石油の国際価格が急落したことや、米軍主導の有志連合の激しい空爆により、ISILの懐具合は苦しくなっているとされる<ref name="newsweekjapan_isis-16" />。

;外部からの資金
西側当局の分析では、ISILは、収入を増やすために、[[人質]]([[身代金]])を組織的に活用している、とのことである。ただし、解放した人質の数(=身代金を得た件数)は少ないため、結局 身代金による収入は安定していない。<ref name="wall_street_journal_20140828" />。

外部からの資金である 「湾岸諸国の富裕層からの寄付」は急減しているという(2014年8月時点)。ISILが湾岸諸国にとっても脅威であると認識されるようになったからだという<ref name="wall_street_journal_20140828" />。

;制圧による支配<ref>[http://www.kamiura.com/whatsnew/continues_3048.html イラク過激派組織、国内最大のダムを制圧(出典:CNN日本)] [[日本軍事情報センター]] 2014年8月4日</ref>
ISILは住民からあらゆる物を略奪している。[[銀行]]や[[発電所]]、[[モスク|礼拝所]]や[[パン]]屋に至るまで制圧している。利があると見れば、敵対するはずのアサド政権と親しい業者とも取引を行う他、元アサド派や、多数いる外国人にも要職を任せており、[[貧困]]層や[[母子家庭]]への支援も行っている<ref>{{cite news |title=焦点:次世代見据えるイスラム国、シリア北東部で「国家モデル」構築 |newspaper=[[ロイター]] |date=2014-9-5 |url=http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0H007W20140905|accessdate=2014-9-5 |author=Mariam Karouny}}</ref>。

ISILは、税金の他にも、他にも様々な名目で罰金を課しており、住民はその負担に苦しんでいる。また、ISIL支配域の医療、交通、水道、電気など公共サービスは、ISILの支配が始まってから、料金が大幅に上がっている<ref name="newsweekjapan_isis-16" />。

=== 通貨 ===
2014年11月13日、ISILは独自の[[金貨]]・[[銀貨]]・[[銅貨]]を発行すると発表した<ref name="asahi_2014_11_13" />(ただし、金や銀をどう調達するかは不明である<ref>{{cite web|date=2014-11-20|url=http://bizacademy.nikkei.co.jp/quiz/backnumber/quizanswer.aspx?cd=BBE81DE0518D42998CDCD830CC96BEC2&seq=739&no=8|title=日経ニュースクイズ (2014年11月20日 第8問) - ななめ読み版 - クイズ解答 : 日経Bizアカデミー|publisher=日経Biz|accessdate=2015-02-07}}</ref>)。ISIL自身の説明<ref name="Dabiq Issue 5">{{cite web|url=http://media.clarionproject.org/files/islamic-state/isis-isil-islamic-state-magazine-issue-5-remaining-and-expanding.pdf|title=THE CURRENCY OF THE KHILAFAH|publisher=Dabiq Issue 5|accessdate=2014-11-27}}</ref>においては(オスマン帝国のことには一切触れられておらず)[[ウマイヤ朝]]のカリフである[[アブドゥルマリク]]による金貨が起源である、とする説明がなされている。ISILは、支配する域内で今まで流通してきた(そして「専制国の通貨システム」として彼らが忌み嫌っている)[[アメリカ合衆国ドル|米国のドル]]や[[イラク・ディナール]]を使用することは止めて、今回発行することになった独自通貨を使用するよう勧めている、という<ref name="asahi_2014_11_13" /><ref>{{cite news |title=「イスラム国」が独自の硬貨を発行、バグダディ容疑者の命令で |newspaper=[[ブルームバーグ (企業)|ブルームバーグ]] |date=2014-11-13 |url=http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NEZL016VDKHW01.html |accessdate=2014-11-13 |author=Donna Abu-Nasr }}</ref>。2014年11月13日に朝日新聞の採用した分析・推測では、独自通貨を発行・流通させることは経済の統制を強める狙いもあるが、国家としての正統性を高める狙いもあるとされる<ref name="asahi_2014_11_13" />。これらのお金の単位は、(ISILのメンバーらが、この地域の本来の あるべき姿だと思っている)[[オスマン帝国]]が用いていた通貨名・硬貨名と同じ、「[[ディナール]]」や「[[ディルハム]]」などである<ref name="asahi_2014_11_13" />。硬貨のデザインとしては、[[アルアクサー・モスク]]などイスラム教に関係する絵柄が描かれており、(通貨名および)図柄により、ISILのことを、イスラム国家であったオスマン帝国を継承している正統性のある存在として、各地の[[ムスリム]]たちに認めてもらおうとする狙いがある、と朝日新聞は分析した<ref name="asahi_2014_11_13" />。

2014年11月には、[[ディナール]]という[[金貨]]の新通貨の使用を開始、ラッカではすでに一部で流通が始まっているが、供給量は少なく他の街ではほとんど見られず、[[シリア・ポンド]]と[[米ドル]]が中心である<ref name="shincho20150205" />。

=== 軍事支援 ===
シリア情勢に注目してきた米上院共和党議員のランド・ポール氏は今年の6月、CNNとNBCテレビで「米政府はアサド政権打倒のため、ISISに武器を供与してきた」と述べた。英国のガーディアン紙も「CIA([[中央情報局|米国中央情報局]])がヨルダンの秘密基地でISISを訓練している」と報じたことがある。<ref>田岡俊次 [http://dot.asahi.com/toyo/2014101400077.html?page=2 矛盾だらけの「イスラム国」攻撃] 週刊東洋経済 2014年10月14日</ref>

== プロパガンダ戦略 ==
[[ファイル:Al-Hayat Media Center-english-logo.png|thumb|ISILの[[広報]]組織「アルハヤト・メディアセンター{{efn|[[ロンドン]]に本部を置く[[アラビア語]]日刊紙の[[アル・ハヤート]]と同名であるが、無関係である。}}」のロゴ。]]
{{see also|ISISちゃん}}
ISILの構成員は[[Twitter]]や[[YouTube]]にアカウントを開設し、画像や動画を投稿するなどして[[プロパガンダ]]活動を展開している。TwitterやYouTubeなどから相次いでアカウント停止処分を受けたため<ref name="itmedia_diaspora">[http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1408/22/news099.html Twitterから閉めだされた「イスラム国」、分散型SNSのDiasporaに乗り換え] - ITmedia(2014年08月22日付、2014年8月24日閲覧)</ref><ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM2100I_R20C14A8EAF000/ ツイッター、過激派の投稿を遮断 ネット利用せめぎ合い] - 日本経済新聞電子版(2014年8月21日付、2014年8月24日閲覧)</ref>、2014年8月には[[インターネット]]上での活動を分散型[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]のDiasporaへ移行する動きを見せたという[[報道]]もある<ref name="itmedia_diaspora" />が、2015年1月の「[[ISILによる日本人拘束事件]]」に際しても犯行声明動画がYouTubeに投稿され、その動画を宣伝するためにTwitterへの投稿が行われている<ref>[http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/20/islamic-state-yukawa-haruna-twitter_n_6505174.html イスラム国、人質らの身代金動画拡散のために「ズワイガニ」を使う] - ハフィントン・ポスト(2015年01月22日付、2015年2月1日閲覧。</ref>など、SNSを利用したプロパガンダ活動は続いている。これに対し、TwitterやYouTubeなどはISIL関連アカウントを凍結する措置を継続しており、Twitterでは1万8000件以上のアカウントが凍結されたという<ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/3038270 対「イスラム国」闘争、ツイッターにも拡大 アカウントを大量凍結] - [[フランス通信社|AFP通信]](2015年01月30日付、2015年2月1日閲覧)</ref>。このように、ISILは、インターネットを使った巧みな宣伝術を持っているため、これが欧米からも若者が加わる要因にもなっている<ref name="jiji2014081800029"/>。

また、ISILの広報部門として「アルハヤト・メディアセンター」が存在する。拘束した[[外国人]]を殺害する動画にも、この「アルハヤト・メディアセンター」のロゴが付されている。この他、ISIL支配地域への移住を促す内容のものなど、多数の動画を公開しており、それらはスローモーションや効果音を駆使していることで知られている<ref>辻田真佐憲『たのしいプロパガンダ』161ページ。</ref>。プロパガンダ動画だけでなく、機関誌も制作している。

ISILの英語版ネット機関誌「[[ダービク (機関誌)|ダービク]]」には2014年7月、創刊時に「アラーの戦士は村々を開放するだけではない。住民のニーズも無視しない。預言者は代理人を指名し、残された住民の面倒を見るよう命じた。たとえ苛烈な戦時にあってもムスリムたちを放置はしない。そのニーズには応える」と謳っている。また地域の[[インフラストラクチャー|インフラ]]の整備を行っているとし、[[電気]]の復旧、[[農業]]地域での灌漑設備の建設・整備、[[高速道路]]、一般[[道路]]の補修などを手がけ、橋の修復工事の写真を載せるなどしている。同時に、小児がん対策や[[老人ホーム]]の拡充など[[福祉]]、厚生、[[医療]]の充実を謳う記事や写真と、捕虜への虐待シーン、処刑地までの死の行進の写真などを同時に載せるなどしている<ref name="shincho20150205" />。

== 人権侵害と事件 ==
[[画像:Wien - Kobane-Demo 2014-10-10 - V.jpg|thumb|2014年10月10日、[[オーストリア]]の[[ウィーン]]で行われた、[[亡命]][[クルド人]]によるISILを批判するデモ]]
2014年[[6月11日]]、[[イラク]]の[[モースル]]にあった[[トルコ]]領事館にいたトルコの外交官や軍人、その子どもたち49人が、ISILによって拉致された。のちにイラク人スタッフ3人は解放されたが、トルコ人たち46人は3ヶ月後の[[9月20日]]まで拘束されていた。解放後、トルコ人たちは無事に母国へと戻った。この拉致事件の解決には、詳細は不明であるが、トルコの情報機関と軍、警察当局が取り組んだとされる。身代金の支払いは無かったという<ref>{{cite news |title=イスラム国が拉致のトルコ総領事ら46人、無事解放 イラク |newspaper=[[フランス通信社|AFP通信]] |date=2014-9-21 |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3026570 |accessdate=2014-9-24 |author=Dilay GUNDOGAN}}</ref>。

[[8月19日]]、拘束していた米国人ジャーナリスト、[[ジェームズ・フォーリー (ジャーナリスト)|ジェームズ・フォーリー]]を[[斬首]]し、処刑動画が投稿された。ISILは米軍による空爆への報復と主張している<ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/3023534 「イスラム国」、米国人記者の「斬首」映像公開 2014年08月20日 09:05 発信地:ベイルート/レバノン] - [[フランス通信社]]</ref>。[[8月20日]]、[[ホワイトハウス]]はこの動画が本物であると発表した<ref>[http://www.bbc.com/news/world-middle-east-28867627 Foley beheading video shocks the world, Obama says] - [[BBC]] 20 August 2014 Last updated at 18:40</ref>。フォーリー記者の処刑を担当した兵士は、動画の中で[[英語]]を話していたが、その[[発音]]に[[イギリス英語|イギリスの特徴]]のあることから、[[イギリス]]人の可能性が指摘されている。[[イギリスの警察]]などは、身元の調査を開始した<ref>{{cite news |title=米ジャーナリスト殺害 英国人関与か |newspaper=[[日本放送協会|NHK]] |date=2014-8-21 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140821/k10013959701000.html |accessdate=2014-8-24}}</ref>。

;国連人権理事会でISILの人権侵害を非難する決議が全会一致での採択される
2014年9月に[[国際連合人権理事会|国連人権理事会]]でISILのイラクでの[[人権蹂躙|人権侵害]]を非難する決議が全会一致で採択された<ref>{{Cite news |title=イスラム国非難決議を採択 国連人権理、調査求める|newspaper=[[朝日新聞]]|date=2014-9-2|url=http://www.asahi.com/articles/ASG920SHJG91UHBI036.html}}</ref>。

だがその後も[[9月2日]]に米国人ジャーナリスト<ref>{{cite news |title=米ジャーナリスト殺害映像は本物=米政府 |newspaper=[[ロイター]] |date=2014-9-3 |url=http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0GY0S420140903 |accessdate=2015-1-28}}</ref>、[[9月13日]]に英国人の人道支援活動家<ref>{{cite news |title=「イスラム国」が殺害…遺族がコメント |newspaper=[[日本テレビ放送網|日本テレビ]] |date=2014-9-15 |url=http://www.news24.jp/articles/2014/09/15/10259159.html |accessdate=2015-1-28}}</ref>。10月3日に英国人の[[タクシー]]運転手の人道支援活動家<ref>{{cite news |title=イスラム国、4人目の殺害動画か |newspaper=[[時事通信社]] |date=2014-10-3 |url=http://www.jiji.com/jc/ws?g=top&k=SB11102303130114484576704580192972982694914 |accessdate=2015-1-28}}</ref>、[[11月16日]]に米国人の人道支援活動家<ref>{{cite news |title=イスラム国、また米国人を殺害 欧米人の人質5人目 |newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]] |date=2014-11-17 |url=http://jp.wsj.com/articles/SB11526184417694423301104580281323420695814 |accessdate=2015-1-28}}</ref>の処刑映像が配信されているが、処刑された人物は全てオレンジ色の服が着せられている。オレンジ色の服の由来は、イラク戦争後、イラクの旧アブグレイブ刑務所では拘束されたイラク人捕虜がオレンジ色の服を着せられたことに因る<ref name="Orange Meaning2">{{cite web | url = http://www.j-cast.com/2015/01/24226114.html/ | title = 「イスラム国」人質はオレンジ服着用 それはどんな理由からなのか | publisher = [[ジェイ・キャスト|J-CASTニュース]] | date = 2015-01-24 | accessdate = 2015-01-28}}</ref>。ISILは人質にオレンジ色の囚人服を着せてひざまづかせるという構図によってアブグレイブの報復を示唆しており、ISILの宣伝につなげている。

2014年[[11月3日]]、[[オーストラリア]]の[[シドニー]]で、[[シーア派]]の信者が銃で撃たれる事件が起こった。事件前、車に乗った男たちが「イスラム国は永遠」「シーアの犬め」と叫ぶ姿が目撃されており、[[トニー・アボット]][[オーストラリアの首相|首相]]は、ISIL支持者による犯行との見方を示した<ref>{{cite news |title=「イスラム国」支持者が発砲か=シーア派男性負傷-豪州 |newspaper=[[時事通信社]] |date=2014-11-4 |url=http://www.jiji.com/jc/zc?k=201411/2014110400541 | accessdate=2014-11-20 }}</ref>。

2015年5月20日、ISILは[[パルミラ]]を制圧、20人以上の男性の死刑を執行し、パルミラの支配者としての力を示した<ref>[http://www.sankei.com/world/news/150528/wor1505280012-n1.html シリア・パルミラ遺跡で20人銃殺]産経新聞</ref>。パルミラ周辺での処刑は少なくとも217人に及ぶ。

5月27日には、[[ティクリート]]近郊で処刑されたとみられる470体のイラク兵の遺体が発見された。ISILは約1700人を処刑したとしており、遺体数は今後増えると思われる<ref>[http://www.sankei.com/world/news/150529/wor1505290005-n1.html 戦闘員による虐殺か イラク北部で470遺体掘り起こし]産経新聞</ref>。

=== 文化浄化 ===
[[2014年]]7月、イラクのモースルにあったイスラム教徒とキリスト教徒の双方が崇敬{{efn|キリスト教、イスラム教における聖人「崇敬」(≠崇拝)については「[[聖人#崇敬と歴史]]」、「[[聖人#イスラム教]]」を参照。}}する[[預言者]][[ヨナ]]の墓があるナビ・ユヌス (Nabi Yunus) 聖廟を爆破したほか、[[盗掘]]も行っており、これに関し[[国際連合教育科学文化機関|ユネスコ]]の[[イリナ・ボコヴァ]]事務局長が「カルチュラル・クレンジング([[文化浄化]])」であると批判した<ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/3027509 「イスラム国」が遺跡を破壊・略奪、ユネスコが警鐘] - [[フランス通信社|AFP通信]](2014年9月30日)</ref>。

[[2015年]]2月には、モスルの博物館で彫像などの所蔵品を破壊する映像を、[[インターネット]]上に投稿した<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/world/20150227-OYT1T50055.html?from=yartcl_popin 「イスラム国」が博物館の所蔵品破壊…映像投稿]読売新聞(2015年02月27日)</ref>。さらに同年3月、イラク北部[[ニーナワー県]]にある[[アッシリア]]の考古遺跡[[ニムルド]]や[[世界遺産]]で[[パルティア]]の古代都市[[ハトラ]]を破壊した。ユネスコは、「文化浄化という(同組織の)恐ろしい戦略の中でも岐路になる破壊行為だ」と非難した<ref>[http://www.sankei.com/world/news/150307/wor1503070051-n1.html 【イスラム国】世界遺産「ハトラ遺跡」を破壊 2000年前の古代都市 「大きな爆発音」] 産経ニュース(2015年3月7日)</ref><ref>[http://www.yomiuri.co.jp/world/20150308-OYT1T50064.html 世界遺産のハトラ遺跡、「イスラム国」が破壊] [[読売新聞]](2015年3月8日)</ref>。
[[4月11日]]、古代[[アッシリア]]の[[ニムルド]]遺跡を爆破する映像を公開した<ref>[http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/12/nimrud-destroy_n_7048732.html ダーイシュ(イスラム国)が古代アッシリアのニムルド遺跡を爆破【動画】](2015年04月12日)</ref>。

2015年[[8月24日]]、約2000年の歴史があり、[[世界遺産]]である[[パルミラ]]の「バール・シャミン神殿」を爆破<ref name="sankei20150824">{{cite news|title =世界遺産パルミラ遺跡を爆破 「最悪の事態」現実に 考古学者も首はねられ“遺体”吊された|url= http://www.sankei.com/world/news/150830/wor1508300005-n1.html|publisher = [[産経新聞]]|date = 2015年8月24日| accessdate = 2015年8月30日}}</ref><ref name="The Huffington Post20150824">{{cite news|title =考古学者82歳、IS(イスラム国)に斬首される パルミラ遺跡を守り続け|url= http://www.huffingtonpost.jp/2015/08/23/archeologist-khaled-asaad-refused-to-tell-isis-_n_8029230.html|publisher = [[ハフィントン・ポスト]]|date = 2015年8月24日| accessdate = 2015年8月30日}}</ref>。パルミラの隠された文化財の保管場所を明らかにすることを拒否したパルミラの考古学者ハレド・アサドがISILによって首をはねられ、遺体は史跡のメイン広場にあるローマ時代の柱の1つに吊された<ref name="sankei20150824"/><ref name="The Huffington Post20150824"/>。

2015年[[8月31日]]、パルミラで[[ベル神殿]]を破壊<ref name="yomiuri20150831">{{cite news|title =「イスラム国」、パルミラで2つ目の神殿破壊か|url= http://www.yomiuri.co.jp/world/20150831-OYT1T50031.html|publisher = [[読売新聞]]|date = 2015年8月31日| accessdate = 2015年9月1日}}</ref><ref name="nikkei20150831">{{cite news|title =世界遺産パルミラの神殿また爆破か 「イスラム国」|url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM31H0W_R30C15A8EAF000/|publisher = [[日本経済新聞]]|date = 2015年8月31日| accessdate = 2015年9月1日}}</ref>。

2015年[[9月16日]]、[[国際連合教育科学文化機関]]の[[イリナ・ボコヴァ]]事務局長は、ISILがシリアの遺跡で「かなり大規模」な略奪を行っており、資金源としていることを明らかにした<ref>[http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2015091600824&j4 シリア遺跡で大略奪=「イスラム国」収益源に-ユネスコ事務局長]時事通信</ref>。

2015年[[10月5日]]、パルミラで「凱旋門」を破壊<ref name="yomiuri20151006">{{cite news|title =「イスラム国」、古代ローマ遺跡「凱旋門」破壊|url= http://www.yomiuri.co.jp/world/20151006-OYT1T50027.html|publisher = [[読売新聞]]|date = 2015年10月6日| accessdate = 2015年10月7日}}</ref><ref name="sankei20151005">{{cite news|title =パルミラの凱旋門爆破 「イスラム国」また破壊|url= http://www.sankei.com/world/news/151005/wor1510050017-n1.html|publisher = [[産経新聞]]|date = 2015年10月5日| accessdate = 2015年10月7日}}</ref>。凱旋門は遺跡の柱廊の入り口に位置し、東西文明の結節点として栄えた隊商都市を象徴する建造物の一つだった<ref name="sankei20151005"/>。

=== 日本人の拘束と殺害 ===
{{Main|ISILによる日本人拘束事件}}
2014年8月、「民間軍事会社の[[最高経営責任者|CEO]]」としてシリア入りしていた日本人 湯川遥菜(ゆかわ はるな)がISILに拘束された。流血している彼を尋問している様子を撮影した動画が動画投稿サイトYouTubeにアップロードされ、波紋を呼んだ。当初は[[日本国政府|日本政府]]などに対する身代金要求はなく<ref>[http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140818/plc14081815560013-n1.htm 政府、安否確認急ぐ 身代金要求なし 不法入国か] - MSN産経ニュース(2014年8月18日付、2014年8月24日閲覧)[http://megalodon.jp/2014-0824-0125-24/sankei.jp.msn.com/politics/news/140818/plc14081815560013-n1.htm キャッシュ]</ref>、シリア政府や武装組織「イスラム戦線」を通じて解放への交渉が行われている<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/national/20140823-OYT1T50029.html 日本人拘束、イスラム国との解放交渉進まず] - [[読売新聞]](2014年08月23日付、2014年8月24日閲覧)[http://megalodon.jp/2014-0824-0126-10/www.yomiuri.co.jp/national/20140823-OYT1T50029.html キャッシュ]</ref>と報道された。2014年10月に湯川を追ってシリア入りしたフリージャーナリストの[[後藤健二 (ジャーナリスト)|後藤健二]]も捕らえられ、2015年1月20日、「72時間以内に[[身代金]]の支払いがないとこの二人の日本人人質を殺害する」とISILメンバーが述べている動画が公開された<ref>[http://www.nikkansports.com/m/general/news/f-gn-tp1-20150120-1424163_m.html 「日本人の命に1億ドル」ビデオ声明全文] 日刊スポーツ (2015年1月20日)</ref>。1月24日にISILは静止動画により湯川を殺害したというメッセージを流すとともに、身代金の要求は取りやめ、代わりに後藤と[[ヨルダン]]で[[収監]]されていた[[サジダ・リシャウィ]][[死刑囚]]との交換を要求した。しかし人質交換も行われることはなく2月1日に後藤を殺害したとする内容の動画が公表された<ref>{{Cite news |title=イスラム国が後藤さん殺害動画ネット公開 |url=http://www.nikkansports.com/m/general/news/f-gn-tp1-20150120-1424163_m.html|date=2015-02-02 |newspaper=日刊スポーツ|publisher=日刊スポーツ新聞社 |accessdate=2015-02-23}}</ref>。

[[File:InsideTheSoukInAleppo.JPG|thumb|240px|right|アレッポの町]]

=== アレッポの小児病院から惨殺死体100体 ===
トルコ国境に近いシリア第2の都市である[[アレッポ]]は激戦地となったが、ISILが[[刑務所]]として使用していた小児病院からは後に両手両足を縛られ目隠しをされた男性の遺体が100体以上発見された。原型をとどめないほど顔面を殴られた遺体や、口の中から頭に銃弾が貫通している遺体もあった。そのほとんどは一般[[市民]]であった。また、町の各所に[[爆弾]]を仕掛け無差別殺人をも行っていた<ref name="shincho20150205" />。

=== スペイサーの虐殺 ===
2014年6月にISILがイラクの町[[ティクリート]]を陥落させ入た際、スペイサー軍事基地に所属していた若い新兵がISIL戦闘員やISIL支持派の武装集団に拉致殺害された「スペイサーの虐殺」と呼ばれる大量殺害が行われた<ref name="afp20150611">{{cite news|title = ティクリートの虐殺、収容遺体約600人に イラク|url = http://www.afpbb.com/articles/-/3051353|publisher = [[フランス通信社 ]]|date = 2015年6月11日| accessdate = 2015年6月18日}}</ref>。2015年[[6月11日]]、イラク人権相のバヤティは[[バグダード]]で記者団に「スペイサーの虐殺による597人の遺体を掘り起こした」と述べた<ref name="afp20150611"/>。

=== 拉致と各国政府に対する脅迫行為 ===
週刊新潮2015年2月5日号の特集記事『「イスラム国」大全』によると、ISILはさまざまな人々を拉致して人質としており、人質の国籍も多岐にわたる。元人質の[[フランス人]]ジャーナリスト、ニコラ・エナンの証言によると以下のような状態である。

「2013年6月、車から降りてきた男らに頭からコートを被せられ、わずか10秒足らずで拉致され、ラッカ近郊の石油採掘所に連行される。採掘所の事務所が刑務所になっており、シャワー室に[[監禁]]される。鉄格子の窓をこじ開け逃走するが再度捕えられ、激しい[[拷問]]を受ける。刑務所は転々とし、計10回ほど移動する。シリア人の[[囚人]]もおり、ほとんどは飲酒、麻薬売買、政治的理由によるものであり終日拷問を受けていた。エナンは20人の人質と同房で女性も6人いた。国籍は、米国、[[スペイン]]、[[デンマーク]]、[[ベルギー]]、[[イタリア]]など全員が[[白人]]であった。牢は20㎡ほどで裸足で電灯、暖房、家具はなく、夏は暑く冬は寒い。窓から雪が舞い込むこともあった。[[食事]]は1日2回。昼過ぎに出る1ダースの[[オリーブ]]と[[ヨーグルト]]、夜はカップ1杯の[[飯|ご飯]]だけと毎食ごとに[[パン]]で最低限の食事であった。[[トイレ]]の時間も厳格に決められ、看守に見守られながら1日2-3回、各1分と決められていた。同室の人質が連れ出されると数日後、看守が[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]を持ってやってきては、処刑場面を見せられた。また、オレンジ色の服は[[イラク戦争]]で捕まったテロリストが[[グアンタナモ湾収容キャンプ|収容先のグアンタナモ米軍基地]]で着せられていたものと同色で、[[ジハード主義|ジハード主義者]]にとっての[[復讐]]を意味している。すなわちこれを着せられることは、死刑囚を意味する」のだという<ref name="shincho20150205" />。

=== 日本の在外公館に対する攻撃の呼び掛け ===
2015年9月、ISILの機関誌[[ダービク (機関誌)|ダービク]]は「イスラム国を敵対視する十字軍連合」として、日本を含む60以上の国や機関などを列挙した上で、[[インドネシア]]、[[マレーシア]]、[[ボスニア・ヘルツェゴビナ]]にある[[日本の在外公館の一覧|日本の在外公館]]に対し攻撃を行うよう呼び掛けた<ref>{{Cite news |title=日本公館への攻撃呼び掛け=インドネシアなどで-「イスラム国」 |newspaper=[[時事通信]] |date=2015-09-10 |url=http://www.jiji.com/jc/zc?k=201509/2015091000939 |accessdate=2015-09-11}}</ref>。これは、[[イラク]]や[[シリア]]にあるISILの支配地域に来られない支持者に向けて、これらの国や機関の具体的な攻撃対象を挙げ「近くにいる敵に聖戦を行わなければならない」などと呼び掛ける内容となっている<ref name=asahi0910>{{Cite news |title=「イスラム国」が日本の大使館攻撃を呼び掛け |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2015-09-10 |url=http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000058496.html |accessdate=2015-09-11}}</ref>。なお、名指しされた在インドネシアの日本大使館は「内容は承知している。これまで講じてきたテロ対策を続けていく」としている<ref name=asahi0910/>。

== 関連項目 ==
*[[宗教戦争]]
*[[神権政治]]
*[[ロシア航空宇宙軍|ロシア空軍]]
*[[ジハード主義]]

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注 ===
{{Notelist}}

=== 出典 ===
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|3}}

== 外部リンク ==
{{commonscat|Islamic State of Iraq and the Levant}}
* [http://understandingwar.org/iraq-blog Iraq updates – Institute for the Study of War]{{en icon}}

{{対テロ戦争}}
{{アラブの春}}

{{DEFAULTSORT:あいしる}}
[[Category:呼称問題]]
[[Category:内戦]]
[[Category:イラク戦争]]
[[Category:対テロ戦争]]
[[Category:サラフィー・ジハード主義組織]]
[[Category:犯罪組織]]
[[Category:アメリカ合衆国によりテロリスト認定された組織]]
[[Category:イギリス内務省によりテロリスト認定された組織]]
[[Category:インドによりテロリスト認定された組織]]
[[Category:エジプトによりテロリスト認定された組織]]
[[Category:オーストラリアによりテロリスト認定された組織]]
[[Category:カナダによりテロリスト認定された組織]]
[[Category:欧州連合によりテロリスト認定された組織]]
[[Category:ロシア連邦保安庁によりテロリスト認定された組織]]
[[Category:アラブ首長国連邦によりテロリスト認定された組織]]
[[Category:サウジアラビアによりテロリスト認定された組織]]
[[Category:トルコによりテロリスト認定された組織]]
[[Category:日本公安調査庁によりテロリスト認定された組織]]
[[Category:シリアの政治]]
[[Category:シリアの宗教]]
[[Category:イラクのテロリズム]]
[[Category:シリアのテロリズム]]
[[Category:トルコのテロリズム]]
[[Category:2006年設立]]
[[Category:アクロニム|ISIL]]
[[Category:イラク・レバントのイスラム国]]

2016年1月1日 (金) 03:32時点における版

時間帯 UTC+3
  1. 現在、独立を承認した国家はない。
  2. 人口値は見積もり[1]で、面積値は推定[2]である。
ISIL
対テロ戦争イラク戦争シリア内戦に参加
活動期間 2006年10月15日 - 現在
構成団体 スンナ派アラブ人
指導者 アブー・アイユーブ・アル=マスリー 
アブー・ウマル・アル=バグダーディー 
アブー・バクル・アル=バグダーディー
活動地域 イラクの旗 イラク
シリアの旗 シリア
リビアの旗 リビア
レバノンの旗 レバノン
前身 ムジャーヒディーン諮問評議会
関連勢力 アンサール・アル・スンナ軍
アル=ヌスラ戦線
敵対勢力 イラク駐留軍
イラク治安部隊
覚醒評議会
イスラム革命防衛隊
ヒズボラ
シリア軍
インドネシア国軍
自由シリア軍
トルコ軍
アルカーイダ[5]
ターリバーン[5]
テンプレートを表示
シリアイラクレバノンにおける
勢力状況
(随時更新)
  シリア政府(アサド政権)
  イラク政府
  レバノン政府

  ISIL
  その他のシリア反政府勢力

  シリアにおけるクルド人勢力
  イラクにおけるクルド人勢力
  係争地域
※シリア国内の情勢について「シリア内戦」も参照

ISIL(アイシル、英語: Islamic State in Iraq and the Levant:イラク・レバントのイスラム国[6])とは、IS(アイエス、英語: Islamic State: イスラム国)と名乗り[7]イラクシリア間にまたがって活動するイスラム過激派組織である。ISイスラム国ISIS (アイシィス、英語: Islamic State in Iraq and Syria)、ダーイシュとも呼称される[8][9](呼称についての詳細は後節の「#名称・表記」を参照)。

概説

ISILはアブー・バクル・アル=バグダーディー指揮の下イスラム国家樹立運動を行うアルカイダ系(現在は絶縁状態)イスラム過激派組織である。イラクとシリア両国の国境付近を中心とし両国の相当部分を武力制圧し、国家樹立を宣言し、ラッカ首都と宣言している。後述するように、外交関係の相手として国家の承認を行った国家は無い。

報道により伝えられる知見によれば、活動家たちは、ISILが大規模で組織的に活動していることに感嘆していると言い、さらに、ISILに批判的な活動家までが、ISILがわずか1年足らずで近代国家のような構造を作り上げて来たことに言及する[10]。ISILは「カリフ国家」(カリフの指導下で運営される国家)が中東から東は中国、西は欧州まで広がることを望んでいるとされるが、彼らが言うカリフ国家がどのようなものなのか、ラッカなどで実証しようとしているようだという[10](→#政治#理念・目標・政治的主張#経済、財政を参照)。現地の住民らは、ISILの勢力拡大の大きな要因は、効率的で極めて現実的な統治能力にこそあると語ったとも報じられる[10]

ロイターの記者が取材によって2014年9月に明らかにしたことによると、ISILは、次世代を見据えて国家モデルを構築しており[10]、たとえばシリア北東部の砂の平原にある町々においては、電気の供給、水の供給、銀行イスラム銀行)・学校裁判所などだけでなく礼拝所、パン屋にいたるまでがISILによって運営されている。

ISILの特徴に、現代のインターネットSNSや動画サイトなどを利用し、巧みな広報戦略を用いて、イラク・イランの周辺地域だけでなく、はるか離れた世界各国からでも若者を多数兵士として募っているということがあげられる。

一方、住民らは恐怖政治に不満を募らせているとの報道もなされている[11][10]

有志国による激しい空爆にも関わらず、勢力の拡大を続け、2015年5月までにシリア領の過半を制圧[12]、ISILによる統治地域の面積は、2015年6月現在、日本の国土面積より一回り小さい程度である約30万平方キロメートルにも上ったが[13]、IHSジェーンズ(ジェーンズ・インフォメーション・グループ英語版)によると、同年12月14日には、1月時点より支配地を約14パーセント縮小し、支配面積は北海道本島とほぼ同じ約7万8000平方キロメートルになるなど、勢いに翳りも見えてきている[14]

名称・表記

名称の翻訳と略語

2013年4月、「イラクのイスラム国」(ISI)はシリアの過激派組織アル=ヌスラ戦線と合併し、組織名をアラビア語الدولة الاسلامية في العراق والشام翻字: Al-Dawlatu al-ʾIslāmiyyatu fii al-'Iraaqi wa al-Shaami カタカナ転写: アッ=ダウラ・ル=イスラーミーヤ・フィ・ル=イラーク・ワ・ッ=シャーム)とした。 شام(シャーム)の指す範囲や訳語には様々あり[注釈 1]、以下のように訳し方によって異る表記がメディアによって用いられた[8]

الدولة الإسلامية في العراق والشام の英訳表記と英字略称
英訳表記 略称 和訳
Islamic State in Iraq and the Levant ISIL(アイエスアイエル、アイシル) イラクとレバントのイスラム国
Islamic State of Iraq and the Levant
Islamic State of Iraq and Syria ISIS(アイエスアイエス、アイシス、イシス) イラクとシリアのイスラム国
the Islamic State in Iraq and al-Sham イラクとシャームのイスラム国

アラビア語圏では、ISILに敵対する立場から 、الدولة الإسلامية في العراق والشام の頭字語をとった داعش (翻字:Dā'ish カタカナ転写:ダーイシュ)という略語が使われる。この語は دائس(翻字:Dāis カタカナ転写:ダーイス、意:踏みにじる者)や داحس (翻字:Dāḥis カタカナ転写:ダーヒス、意:裏切り者)などといった語に近い発音や綴りを有し、否定的なニュアンスを有する[15][16]ラテン文字表記としては「DAISH」のほか、アラビア語翻字を省略した DAIISH 、発音から英語的な綴りに直した DAESH という表記も用いられ、西側メディアが用いる際は DAESH と綴られることが多い。日本語では「ダーイシュ[17]と表記される。

この他、 دواعش (翻字:dawā'ish カタカナ転写:ダワーイシュ)という語が用いられることもあり[18][19][20][21]、こちらは「ダーイシュ」が持つ否定的なニュアンスで必要以上に ISIL を刺激すべきでないとする立場[22]に基づいて使われる。

2014年6月29日カリフイスラム国家の樹立を宣言し、名称を الدولة الاسلامية في العراق والشام から الدولة الإسلاميةIslamic State, 略称:IS)に変更すると宣言した[23]。日本語では単に「イスラム国」と訳される。

表記の混在と呼び名に対する動き

ISILが現れた当初から表記は一定していなかったが、ISILが樹立宣言で「イスラム国」を名乗るようになるとその変更に従うメディアと、従わずに従来の表記を使い続けるメディアが混在するようになった[24]国際連合日本国政府アメリカ合衆国連邦政府は「国家としての独立を宣言した、過激派組織を認めない」とする立場から、名称の変更を認めず 「ISIL」 を使用している[25]

2014年9月21日イスラム教スンナ派最高教育機関として知られるアル=アズハル大学のイスラム法学者団体が、このテロ組織を「イスラム国」と呼ぶことは「イスラム教およびムスリムに対する侮辱である」と強く批判し、アラブ諸国のメディアでは使わないよう求めた[26]

アラビア語圏においても同様の混在は起きており、樹立宣言以降もイラクやシリアなどで旧称が使われる一方、サウジアラビアやエジプトでは「イスラム国」を使うようになった。ところが、先述のアル=アズハル大学の声明を受け、元々イラクとシリアの報道で使用されていた「ダーイシュ」を各国メディアが採用するようになった。2014年以降はアラビア語圏全体で「ダーイシュ」が定着している。さらには同年アメリカ軍フランス政府もこの名称の使用を公式に決めた。後に非アラビア語圏を含むイスラム世界全体に伝播している。

日本においては、日本国政府が旧称を使い続ける一方で、マスメディアは「イスラム国」の名を使うようになった。この際、「過激派組織『イスラム国』」などのように、「注釈」を交えたり、または「鍵括弧」で囲む形の表現を用いることが多い。ところが、ISILによる日本人拘束事件2015年1月24日にISILが湯川遥菜を殺害したとするメッセージを流して騒がれた翌25日、略称にすることもなく「イスラム国」という語を連呼しているメディアに対して危機感を募らせたイスラム教団体名古屋モスクが、アル=アズハル大学の声明を元に「イスラム国という名称の変更を希望する」旨を題した文書を発表した[27][9]後藤健二を殺害する動画が配信された2015年2月1日以後は、複数のモスクに対し電話メールで嫌がらせが相次ぎ[28][29]、2015年2月9日におよそ30のモスクの代表者やイスラム団体などとの連名で、あわせて21のメディアに対して同じ文書を送付し「イスラム国」表記をやめるよう要望をした[27]。 2015年2月4日にはトルコ大使館も以下のような声明を出し、日本のメディアに協力を求めている。[30]

今回の事件でもイスラム諸国とその国民が様々な形でこの卑劣な蛮行を強く非難しました。しかし、日本のマスメディアが最近の報道のなかで、この蛮行に及んだテロ集団を「イスラム国」と表現していることが非常に残念であり、誤解を招きかねない表現であると強く認識しています。テロ集団の名称として使われるこの表現によって、イスラム教、イスラム教徒そして世界のイスラム諸国について偏見が生じ、日本滞在のイスラム教徒がそれに悩まされています。いわば、これも一種の風評被害ではないかと思われます。 平和を重んじるイスラム教の宗教名を汚すこの「イスラム国」という表記を、卑劣なテロ行為を繰り返す一集団の組織名としてどうか使用されないよう切に願います。世界の他の国々において「イスラム国」ではなく、DAESH、ISIL等の表現を用いる例があるように、このテロ組織に関する報道で誤解が生じない表現の仕方について是非検討いただき、イスラム教徒=悪人を連想させるようなことがないよう配慮いただきたいところです。 — トルコ大使館

これらの要請に対し、NHKでは2015年2月13日夜から「イスラム国」という呼び方を完全に廃止し、過激派組織IS=イスラミックステートという表記に変更を行った[31]朝日新聞東京新聞毎日新聞では記事中の初出ではイスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)として残し、2回目以降は IS とした[9][32]。毎日新聞は「この変更が最善の表記という確信はないものの、「イスラム教の国」のように単純な誤解をされないよう工夫していきたい」としている[24]

民間放送局ではTBSラジオの朝のニュース系情報番組『森本毅郎・スタンバイ!』で、2015年2月3日の放送分までは「イスラム国」と呼んでいたが[33][34]、2015年2月4日の放送分から「『イスラム国』を名乗る過激派組織=ISIL(アイシル)」と変更している[35]

大阪市フジテレビ系列局関西テレビ放送自己批評番組カンテレ通信」は2015年2月15日放送で「外国のメディアは「イスラム国」とは呼んでいないのになぜ日本のメディアは「イスラム国」と表記するのか」という視聴者の意見に対し、同局報道番組部は「国と名乗っているが国際社会は国家と認めていないため、フジテレビ系列では「イスラム過激派組織・イスラム国」と紹介している」と回答。これに対し番組コメンテーターの若一光司わかぎゑふは番組内で、前述のイスラム教団体が名称変更を要望していることなどに触れ、イスラム教と混同する人が多いため「イスラム国」表記はやめるべきだ、と述べた[36]。なお、南ドイツ新聞ル・モンド紙、エル・パイス紙など、欧州大陸諸国の主要紙は各国語の「イスラム国」に当たる表現を用いているように、「外国のメディアは「イスラム国」とは呼んでいない」というのは誤りであり、呼称に関しての混乱が見られるのは日本に限った話ではない。

世界気象機関では2015年4月17日、太平洋北東部に発生するハリケーンの命名リストからIsisを外し、2016年のリストからは代わりにIvette(イヴェッテ)を使うと発表した。[37][38]

世界中のムスリムからは「あれはイスラム教を詐称した、ただの犯罪集団だ。断じてイスラム教ではない」とされ、世界各国のイスラム教団体が、ISILがイスラムを勝手に名乗ることに憤慨している[39][40][41][42][43][44][45][46][47]

政治

アブー・バクル・アル=バグダーディーを最高指導者とし、「財務担当」「国防担当」「広報担当」という役割を持つ行政機関の「評議会」が存在し、さらにその下にはシリア担当とイラク担当の副官が半数ずつおり、副官に任命された24人の県知事がその下におり、彼らが支配地域に配属され治安徴税などを行っている[48]。「評議会」の構成員にいるのは旧イラク軍元将校や政治・行政経験のあるバアス党員などイラク人である。サッダーム・フセイン政権時代の元将校や元政治家が現指導体制の中核を担っており[49]、バグダーディーの下の最高指導部に「シリア担当」のアブー・アリー・アンバーリー(旧イラク軍少将、2015年12月12日シリアでイラク軍の空爆で殺害)と「イラク担当」のアブー・ムスリム・トゥルクマーニー(旧イラク軍中佐、2015年8月18日モスルで殺害された)がおり、どちらも旧イラク軍将校である。

ISILの広報担当が主張するには、「これはムスリムの国だ。抑圧されたムスリム、孤児、夫と死別した女性、そして貧困にあえぐ人たちのための国だ」「イスラム国の人々は生命と財産の安全を保障され、(従来の国境を越えてビザなしで)自由に移動できる」と主張している。この言葉はシリア内戦で疲れ果てた人たちの心をつかみ、ISILに支配された当初、これを歓迎した住民もいる。ラッカが支配下に置かれた時、住民たちは街はお祭り騒ぎになったという[50]

ISILには、これらの体制がイスラム法と合致しているか審査する宗教機関が存在する。仮に現体制がイスラム法に背いた場合、退陣を迫る権利を有しているという[51]シャリーアイスラム法)の厳格な運用で戒律が極端に厳しく、タバコが厳禁、女性には全身を隠し目だけを出す黒い服装の着用を義務付け、一人での外出も禁止、さらに夜7時以降は男女を問わず全員外出禁止令を発令。ヒスバと呼ばれる宗教警察が市民を監視し、検問所を各所に設け、住民の出入りは厳格に管理される。警察官らは、トヨタピックアップトラックで巡回し、警戒する。肌を露出している女性を見かけるとその場で鞭打ち100回の刑を課し、飲酒や喫煙が発覚すると刑務所へ入れられたり、指を切り落とされたりする。こうした厳罰により住民に恐怖心を植え付けることで支配していると週刊新潮は分析している[48]

イラクイランシリア弱体化を狙うサウジアラビア王族バンダル・ビン・スルターン(又はその背後のサウジアラビア総合情報庁)が陰から資金提供をしていたとも言われ、イランや駐シリアヨルダン大使、一部のジャーナリスト、(2013年10月時点では)学者は、バンダルこそがアルカイダやISILなどの過激派の真の指導者だと主張していた[52][53][54]。ただし、バンダルが解任された2014年頃からそれまでISILを静観してきたサウジアラビアもISILを非難するようになった(#対外関係)。

行政

役所裁判所警察署などの行政機関は従来からの建物を使用しているが、職員の多くはISIL側の人間に代わっている。ただし発電所浄水場など専門知識を要する施設では、元の職員がそのまま勤務している。ジャラーブルスやマンビジュといった町はユーフラテス川という水源から近いため水道は24時間使えるが、電気の使用は1日3~4時間に制限されている。また、ラッカでは電気、水道ともに1日3時間程度しか使えない状況である[48]

2014年11月の朝日新聞の記事によると、ISILは支配地域の住民のために 独自のパスポートも発行しているという[55]。しかし、外交相手として承認した国家は存在しないのでそのパスポートが使える国は無い[56]

教育は様変わりし、ロンドンに拠点を置くシリア人権監視団体の職員の証言では、哲学や現代政治の授業は廃止され、コーランを読み込む授業が増え、語学はアラビア語だけで歴史はイスラム史のみとなっている。自然科学分野では、現実に役立つエネルギー、資源に関する授業だけである[48]

バアス党との関係

イラクでは宗派対立の解消・旧バアス党系勢力等との融合に向けた取り組みが本格化し、2007年8月26日、マリキ首相は政権と対立関係にあるスンナ派を含む主要宗派・民族指導者と協議が行われ、宗教対立を起因とするテロ事件の発生が減少していた[57]

イスラム国は6月下旬に新国家建設を一方的に宣言した後、モスルでバアス党の元党員や旧政府軍幹部を次々と拉致していた[58]。2014に行われたISILによる大規模なイラク侵攻時にはバアス党勢力との交戦も確認されている[59]。また、フセイン政権のナンバー2だったイッザト・イブラーヒーム革命指導評議会副議長は2015年にイランとISIL双方をイラクの敵と糾弾しており[60][61]、同年にイラク軍に殺害されたとされる[62]

住民

ISILは、シリアとイラクの支配地域で、少なくとも800万人を支配下に置いているという[63]

理念・目標・政治的主張

日本エネルギー経済研究所中東研究センターの保坂修司副センター長は「イスラーム国の思想を理解するには、イスラームの基本的な思想、基本的な法学理論・政治理論を知らなければならない」と指摘した[64]。ISILの者たちは、自分たちの存立の根拠を古い古典的な議論の中に見出そうとする傾向があり、例えばサラフィー主義カリフ制についてある程度理解する必要がある[64]と指摘されているのである。

サラフィー主義

サラフィー主義》というのは、サウジアラビアなどのワッハーブ派とほぼ同一視することができる、「ムハンマドの没後3世代(あるいは300年間)に見られた世の状態が理想的であった」とする復古主義的な思想である。《反シーア派》、[64]すなわち「シーア派が悪い」と考えるので、サウジアラビアなどを攻撃する時も、シーア派に対する攻撃を優先すべきだと考え、サウジアラビアの王族ではなくシーア派である同国の民衆を攻撃するという選択をした[64]

サラフィー主義の他の特徴としては、「アッラーのみを信じなければならない」と厳格に考え、イスラムの他派が作った 聖者廟(聖者を記念する墓)や崇拝対象となった樹木などを、偶像として破壊する行為がある[64]。イスラム的な「勧善懲悪」を重視し、サウジアラビアのように宗教警察を置き、1日5回の祈りをしなければならないとして、それを守らない人を逮捕して祈りをさせたり、クルアーン(コーラン)やハディースに内容の書かれている刑罰、「ハッド刑」をサウジアラビア同様に導入し[64]、「窃盗をしたら左手首を切り落とす」「姦通をすれば石打ち刑に処す」などといった刑罰を実際に行っている[64]。こうしたことが、他国においては人権を侵害しているように扱われるという結果を生んでいる[64](→#人権侵害と事件を参照)。

カリフ制

カリフというのは、預言者ムハンマドが没したのちの632年アブー・バクルが「カリフ(預言者の代理人)」に就任して以降続くイスラムにおける政治制度のことである[64]。アブー・バクル、ウマル、ウスマーン、アリーのムハンマドの一族の互選による正統カリフ時代と、ムアーウィアを初代とする世襲カリフ王朝ウマイヤ朝、そしてそれを打倒したアル・アッバースを初代とするアッバース朝が成立した。しかし、1258年にアッバース朝がモンゴル軍に滅ぼされて以降「カリフ」はエジプトのマムルーク朝の庇護を受けていたが、オスマン帝国がマムルーク朝を滅ぼした時に「カリフ」の権威を継承した。このオスマン帝国の「スルタン=カリフ制」は1923年にトルコ共和国が廃止を宣言するまで継続した。「スルタン=カリフ制度」はオスマン帝国の君主がスンニ派の権威を帯びただけの虚構的なものであったので、ISILはオスマン帝国のそれは無視している。《カリフ制》というのは、多くのイスラム諸国、多くのイスラム教徒(ムスリム)から「理想の国家」「理想の政治体制」と認識されている[64]。初期のイスラム運動[要曖昧さ回避]の指導者ラシード・リダームスリム同胞団などでも、《カリフ制》を理想の国家として、カリフ制度の復活を目指しており、アルカイダにとっても《カリフ制》が理想的国家である[64]

ただし、カリフ制が廃止されてから(1923年)ずいぶん長い年月が経っているため、ほとんどのムスリムにとって、その役割などに関して具体的なイメージが湧かず、漠然としていて、曖昧な考えしか持っていない[64]。そういう状況の中、ムスリム同胞団から分岐した解放党などは、《カリフ制度》を明確に理論化し、イスラムの国家制度の中に組み込もうとしている[64]。このことについて「イスラーム国がカリフ制度が実現したかのようにみせたということに大きな意義がある」と保坂修司・日本エネルギー経済研究所中東研究副センター長は語っている[64]

2014年時点で、ISIL側が支配すべきと主張している地域(オレンジ色の場所)[65]

主張する領土

第一次世界大戦中の1916年に、イギリスフランスロシアとともにオスマン帝国の領土を、アラブ人やクルド人などの現地住民の意向を無視して、自分たちの勢力圏を決める秘密協定「サイクス・ピコ協定」を締結し、戦後その協定に修正を加えて国境線を引いた。オスマン帝国領から西欧列強植民地となった地域はその後独立したが、シリアレバノンイラクヨルダンといった国々に分割されたという歴史がある[66]。西欧列強は中東の古い秩序を根こそぎひっくり返してしまった[66]。西欧列強が秘密協定によって引いた国境線によって作られた国々の枠組みは「サイクス・ピコ体制」と呼ばれている[66]。ISILは、目標の一つとしてサイクス・ピコ体制の打破を掲げている[66]。「押しつけられた国境」を消し去ろうとしているかのようである[66]

ISILは、イラクやシリアなどの中東諸国を、サイクス・ピコ協定に代表されるヨーロッパの線引きにより作られた「サイクス・ピコ体制」だとしてこれを否定し[67]、武力によるイスラム世界の統一を目指している。

2014年、ISILは、「5年後に占拠する領土のプラン」を発表したと報道された[68](異論もある[69])。彼らが発表したとされる「領土」はスペインからアフリカ北部、中近東を経てインド中国にまで及んでおり、歴代のイスラム王朝の領土と重なっている。そしてその区割りは現在の国境とは異なっている。

2014年7月に行われた最高指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーの演説では、ISILは将来的にはローマへ侵攻するとしている[70]

彼らが発表したとされる「領土」には、イラクを除いて古称によると思われる独自の名称が付されている[注釈 2]

ただし、中東調査会の高岡豊は、2014年11月の段階で、領土の主張は大義名分に過ぎず、ISILは支配した領域の統治を考えず、イナゴの大群のように移動しながら殺人、誘拐、略奪などを繰り返す運動体にすぎない、とした[72]。また池内恵は、2014年11月の雑誌で「イスラーム国はオスマン帝国の復活を望んでいるのではなく、初期イスラム帝国のように、スンニ派アラブ人のカリフのもとに、イスラム教徒の諸民族や異教徒(キリスト教徒とユダヤ教徒)を支配下におく体制を目指している」とした[73]

イスラム法の重視・実行

バグダーディーはカリフ就任演説で「私はあなた方から支配権を担った。私はあなた方の中で最も優れているわけではない。私が正しい時には私を支援してくれ。私が悪かったなら私を正してくれ。」「あなた方がアッラーとアッラーの使徒に従順であったように、私に従順であれ。私がアッラーとアッラーの使徒に逆らうような行為や態度示すのなら、あなた方が私に従順である必要はない。」と述べ、バグダーディーがシャリーアにしたがって行動する限り、支持してくれるように呼びかけており[74]シャリーアイスラム法)の重視を明言している。

ISIL側の主張によると、シャリーアの下に活動をしているとしている[48]。 週刊新潮の情報によると、ISILは自らに都合よく解釈したシャリーア(イスラム法)を住人にのみ厳格に適用しており、イスラム教を悪用した恐怖政治で支配地域の住民らを支配している[48]。尚、自分たちでは、イスラムの教えに反する行為(焼殺)[75]などを行っており、自分たちに対しては厳格に運用しておらず、どちらかと言えば住民を抑圧・弾圧したり虐殺行為を正当化する為にイスラム法の文言を利用している。イランの主要紙「ジャーメ・ジャム」紙によると、住民に対する厳格な戒律の強要は自らの道徳的逸脱の隠蔽のために行われているものであるという[76]。同紙はISILが「国民」に戒律に従った服装をさせるために女性に衣類の無償配布を開始したことも報じている[76]2015年8月27日までには、若者を中心に広まっている男性の細身の服装を「敵の慣習」として禁止した[77]。また、同性愛はイスラム法に反することから、同性愛者を少なくとも30人以上処刑したとされている[78][注釈 3]

ISILは、実効支配地域において、従来の教育制度を大きく改めることを表明している。歴史哲学公民体育音楽図工などの世俗的学校教育を全面的に禁止し、イスラム法の極端な解釈に基づく過激な思想教育を児童に教えている。教師にも、イスラム法の講座を受けることを義務づけている。また、学費を無償としていたアサド政権と異なり、学費として1000シリア・ポンドを徴収する[79][80]

2014年、ISILはコーランに従って[81]奴隷制度の復活・運用を国際社会に公表した[82]。ISILは、奴隷の取引額のガイドラインを発表しており、これに違反した者は処刑される。ガイドラインによれば、外国の出身でない限り、購入できる奴隷の数は3人までで、40歳から50歳のヤジディ教徒キリスト教徒の女性は27ポンド(約5千)、10歳から20歳の少女は80ポンド(約1万4千円)、1歳から9歳の女児は100ポンド(約1万8千円)以上で売られ、年齢が若くなるにつれ奴隷の価格も増すようになっている[83]

歴史

2000年頃にアブー・ムスアブ・アッ=ザルカーウィーがヨルダンなどで築いた Jama'at al-Tawhid wal-Jihad(アラビア語:جماعة التوحيد والجهاد /タウヒードとジハード集団という意味、 略称: JTJ)を前身とする。この集団はアフガン戦争後、 イラクに接近し、2003年のイラク戦争後はイラク国内でさまざまなテロ活動を行った。2004年にアル=カーイダ(アルカイダ)と合流して名称を「イラクの聖戦アル=カーイダ組織」と改めたが、外国人義勇兵中心の彼らはイラク人民兵とはしばしば衝突した。

2006年1月にはイラク人民兵の主流派との対立をきっかけに名称を「ムジャーヒディーン諮問評議会」(略称:MSC)と改め、他のスンニ派武装組織と合流し、さらに2006年10月には解散して他組織と統合し、「イラクのイスラム国」(略称:ISI)と改称した。また、のちに指導者となるアブー・バクル・アル=バグダーディーは、この2006年ごろにアメリカ軍によって一時拘束されて、収容所に入れられていたという。バグダーディーは、収容所の中で存在感を示し、後にISILの幹部となる者達と関係を築いた可能性が指摘されている[84]

2009年10月25日と12月8日、ISIは首都バグダードで自爆テロを実行し、両日合わせて282人が死亡、1169人が負傷した[85][86]

アメリカ軍はISIがインターネット上の組織に留まり、実際にバグダーディー師と呼ばれる組織内の人物は存在しないと主張していたが[87]2010年4月18日イラクヌーリー・マーリキー首相はISIの首長アミールアブー・ウマル・アル=バグダーディーと同戦争相アブー・アイユーブ・アル=マスリーティクリート近郊で行われたアメリカ軍とイラク軍の合同作戦により死亡したと発表した[88]。これに伴い、同年5月16日、アブー・ウマル・アル=バグダーディーの後を継いでアブー・バクル・アル=バグダーディーがISIの首長(アミール)に就任した[89]

2012年3月20日には、バグダードを含む数十都市で連続爆弾テロを実行し、52人が死亡、約250人が負傷した[90]

2013年4月、アブー・バクル・アル=バグダーディーはアル=ヌスラ戦線が「イラクのイスラム国」の下部組織であり、今後はアル=ヌスラ戦線と合併して組織を「イラクのイスラム国」(略称: ISI)から「イラクとレバントのイスラム国」(略称:ISIL)、別称「イラクとシリアのイスラム国」(略称: ISIS)に改称するとの声明を出し[8][91][92]シリアへの関与強化を鮮明にした[93]。同年7月、検問所での通行許可を巡り口論となった自由シリア軍の司令官を殺害した[94]

2013年7月21日、アブグレイブ刑務所とバグダード近郊のタージにある刑務所を襲撃し、500人あまりの受刑者が脱獄、治安部隊21人と受刑者20人が死亡した[95]。脱獄者の中には、武装勢力の戦闘員や幹部も多数含まれているとされる。組織側によると、今回の襲撃をもってイスラム教徒を牢獄から解放する一連の作戦は終了したとしている[96]

2013年8月、アレッポ近郊のシリア空軍基地を制圧[97]。同年9月、自由シリア軍がシリア軍から奪還し1年近く支配下に置いていたトルコ国境沿いのアッザーズ英語版を戦闘の末に奪取、制圧した[98][99]。アッザーズ制圧の際、現地で活動していたドイツ人医師を拘束している[100]

「イラクとレバントのイスラム国」は、アルカイダと関連のある武装集団だが、2013年5月に出されたアイマン・ザワーヒリーの解散命令を無視してシリアでの活動を続けているなど、アルカイダやアル=ヌスラ戦線との不和が表面化している[101][注釈 4]。この不和の原因は「イラクとレバントのイスラム国」の残虐行為が挙げられており[103]、実際にアルカイダを上回る残虐な組織であるとの指摘するメディアもある[104]。2014年2月には、アルカイダ側が「イラクとレバントのイスラム国」とは無関係であるとの声明を出した[105]シリア内戦の反政府派とも衝突しており、一部のシリアの反政府派は連合を組んで「イラクとレバントのイスラム国」を攻撃している。シリア反体制活動家は、「イラクとレバントのイスラム国」について「アサド大統領よりも酷い悪事を働いている」と語っている[106]

2014年2月には支配地域のラッカキリスト教徒に対して、課税(ジズヤ)及び屋外での宗教活動の禁止を発表した[107]

また、シリアの油田地帯を掌握し、原油販売も行っていると伝えられている[108]

2015年5月16日、アメリカの特殊部隊が同組織で資金源である原油・ガス取引などを指揮していた幹部、アブ・サヤフを殺害したと発表[109]。人質救出作戦以外ではシリアで初の地上作戦となった[109]

2015年8月21日、アメリカ軍空爆で、当時同組織ナンバー2であったファディル・アフマド・ハヤリ幹部を殺害したと発表[110]

2015年8月28日、8月24日にアメリカ軍がISILの首都ラッカに空爆を行った際、ジュネイド・フセイン幹部を殺害したと明らかにした[111]。同幹部は世界各地でテロをおこす「一匹オオカミ」型のテロ要員確保を担っており、米軍や政府の関係者約1300人の個人情報をネット上に公開し、彼らを襲撃するよう呼びかけていた[111]

イラクへの侵攻

2014年に入り、シリアの反アサド政権組織から武器の提供や、戦闘員の増員を受けたため、急速に軍事力を強化した。その軍事力を使い政権奪取を目指して、イラクの各都市を攻撃し始めた[112]。2013年12月30日のイラク西部アンバール県ラマーディーの座り込み運動の解散をきっかけとして侵攻を開始し、1月にラマーディーと同県の都市であるファルージャを掌握[113][114]、3月にサマラを襲撃した[115]。サマラからは6月5日のイラク軍の空爆により追放されたが[115]、6月6日、モースルに複数の攻撃を実施した[116]。6月10日、モースルを陥落させた。武装集団は、数百人規模で9日夜からモースル市街地を攻撃し、10日までに政府庁舎や警察署、軍基地、空港などを制圧した。過激派系のウェブサイトは、武装集団が刑務所から約3千人の囚人を脱走させたとしている[117]。6月11日にモースルのトルコ領事館を制圧し、同国の在モースル総領事を含む領事館員ら48人を誘拐した[118]。6月15日政府軍との戦闘の末、タルアファル英語版を制圧[119]、6月17日にはバグダード北東約60キロのバアクーバまで進撃し[120]、6月20日までにバイジ英語版の油田施設を包囲した[121]。6月25日、イラク戦争で「キャンプ・アナコンダ」として知られているバラッド統合基地英語版を攻撃しアジール油田地帯を制圧した[122]。また、ニーナワー県を断水させた[123]。「イラクとレバントのイスラム国」は占領したモースルでシャリーアの強制による支配を行い、イラク政府への協力者に対する殺害ならびに盗みや強盗をした者の手足を切る刑罰を課しており[123][124]、モースルの住民は退去を迫られている[123]

国際政治学者の酒井啓子は、これらの攻撃に対してマーリキー首相は全く対応できていないと指摘している[125]。一方、6月17日にイラク首相府は「イラクとレバントのイスラム国」をスンナ派サウジアラビアが財政的に支援し、大量虐殺を引き起こした責任があると非難する声明を発表した[120]。これに対してはサウジアラビアとアメリカから反発が出ている[120][126]米共和党ランド・ポール上院議員は「イラクとレバントのイスラム国」が強化された理由の一つとして、アメリカ政府がシリア政権打倒のため「イラクとレバントのイスラム国」に武器を移送したことを挙げている[127]。また、オーストラリアジュリー・ビショップ英語版外務大臣は150人のオーストラリア人が「イラクとレバントのイスラム国」に加入していると明らかにし、彼らの帰国の懸念を表明した[128]。6月20日、国連人権理事会は「イラクとレバントのイスラム国」の侵攻によって100万人の住民が避難を余儀なくされていると声明を出した[129]

「国家」樹立宣言

2014年6月29日、「イラクとレバントのイスラム国」は同組織のアブー・バクル・アル=バグダーディーが「カリフ」であり、あらゆる場所のイスラム教徒の指導者であるとし、イスラム国家であるカリフ統治領をシリア・イラク両国の「イラクとレバントのイスラム国」制圧地域に樹立すると宣言した。また同声明において組織名からイラクとレバントを削除し、「イスラム国」と改変することを発表した[23]

対抗する有志連合の結成

ヤズィーディー教徒への援助と、ISILへの空爆を宣言するオバマ大統領

2014年8月8日、アメリカ軍がISILの武装勢力に対して、限定的な空爆及びヤズィーディーなどに対して支援物資の供給を開始。初日は、クルディスタン地域アルビル近郊に展開していた野砲や車列が攻撃対象となった[130]。アメリカは、空爆の期限を設けず、今後も空爆を実施することを示唆している[131]。同年10月に入って、空爆の作戦名は「生来の決意」(Operation Inherent Resolve) と名付けられていることが明らかになっている。

ただし、アメリカ軍の空爆は、ISILのイラク支配地域に限定されており、ISILの本拠地であるシリアでは実施されていないため空爆の効果を疑問視する人もいた。シリア国内のISIL拠点を攻撃しないのは、ISILと対立するアサド政権を支援する形になるためと指摘されている[132]。8月22日、アメリカはシリア国内の拠点に対する空爆の検討を開始したと発表した[133]。この時点で、ISILの支配領域の合計面積は、イギリスより広くなっている[134]

2014年8月16日にドイツハノーファーで行われたISILへの抗議デモ

8月24日、ISILはシリア北東部のラッカ県にあるシリア政府軍の空軍基地を制圧、ラッカ県のほぼ全てを手中に収めた[135]。この時、ISILは先日、シリア兵500人を捕らえたが、8月28日、このうち160名を処刑したと発表、処刑映像を公開した[136]

8月25日、アメリカ合衆国バラク・オバマ大統領は、アメリカ軍によるシリア上空での偵察飛行を承認した[137]

シリアのアサド政権は、ISILの勢力拡大に対して国際社会と協力する用意があると表明した。これまでアサド政権打倒を目指してきた反政府派を支援してきたイギリスアメリカ合衆国の協力も歓迎するとしている[138]。8月31日、ドイツはISILが自国の安全保障の脅威になるとして、ISILと対峙するクルド人勢力に武器を供与する方針を発表した[139]。ドイツは世界第3位の武器輸出国である一方で、これまでは紛争地域への武器輸出を見送ってきたが、方針を転換した[140][141]

9月1日、国際連合人権理事会は、ISILのイラクでの人権侵害を「最も強い言葉」で非難する決議を全会一致で採択[142]、ISILの行為は戦争犯罪人道に対する罪に当たるとした[143]

9月19日、国連安全保障理事会は、全会一致でISILの壊滅に向けて対策強化を求める議長声明を採択した[144]。また同日、フランスはISILのイラク北東部の補給所に対して、初の空爆を実施した[145]

9月23日にはアメリカ主導による有志国がシリア国内でも空爆作戦を開始した[146]。さらに11月8日にはアメリカ軍などによって、ISILの幹部たちが乗る車列が空爆された。アル=アラビーヤが地元部族の話として伝えたところによると、この中に、最高指導者のアブバクル・バグダーディーが乗っており、バグダーディーは致命傷を負ったという[147]。ただし、アメリカ中央軍は、この車にバグダーディーが乗っていたかどうかについて不明としている[148]

2014年11月24日、アメリカ政府はチャック・ヘーゲル国防長官の辞任を発表した。辞任発表の場にはヘーゲル国防長官も立ち会い、円満な辞任であるという形での発表であったが、ヘーゲルはオバマ大統領と対ISIL政策が対立したため辞任に追い込まれた面が強く、事実上の更迭と見られている[149]。ヘーゲル国防長官は、泥沼の中東から、アメリカが足抜けするための出口戦略を後押しすることが期待されて国防長官に就任した人物であり、ISILとの戦争には消極的で、そのために再び中東への介入を強めるように転換しつつあるオバマ政権と対立していたとウォールストリートジャーナルは推測している[150]。一方で国防総省はISILの危険性を早期に認識し地上部隊の派遣を具申したものの、あくまで軍事予算の削減により財政再建を目指し、軍事介入は限定的な空爆に留めたいホワイトハウスと対立していたとの見方もある[151]

2014年12月、イランF4ファントム戦闘機イラク東部でISILに対する空爆を行った[152]

2014年12月24日、ISILは、米軍主導の有志連合の戦闘機撃墜ヨルダン人の操縦士を拘束したと発表した[153]

2015年1月26日、パキスタン・ターリバーン運動(TTP)元幹部とみられる人物を、ホラサン(ホラーサーン)州知事に勝手に任命した[154]ターリバーンはISILと協力関係にないが、TTPを脱退してISILに参加した人物とみられている。

2015年1月26日、コバニ包囲戦にて、ISILと戦っていたクルド人民兵部隊が、コバニをISILから奪還したと発表した。クルド人部隊と、アメリカなどの有志連合の空爆の連携が、有効に機能した結果とされる[155]。世界的に注目されていたコバニの攻防で、ISILが敗北したことは、ISILの士気や、各地の支配に影響を及ぼすとの意見がある[156]。コバニでの戦いでは、クルドとISIL双方の戦闘員や、住民など約1600人が犠牲となったとされる[157]

2015年8月29日、トルコが米軍などとの共同作戦に初参加し、有志連合の一員としてISILへの空爆を初めて行った[158][159]

2015年9月27日、フランス大統領府が、仏軍がシリアで初めてISILの拠点に空爆を行ったと発表[160]。イラクでの空爆に参加する一方で、シリアではISILと敵対するアサド政権の延命につながるなどの理由で攻撃を見送っていたが、内戦の泥沼化で難民問題も悪化したことなどから方針転換した[160]

2015年12月2日、イギリス議会はイラクで実施している空爆をシリアへ拡大するよう求める動議を賛成多数で可決し承認した[161]。3日に空爆を始めた[161]

ロシア連邦空軍による空爆

詳細は「ロシア連邦航空宇宙軍によるシリア空爆」を参照されたし

2015年9月30日、ロシアウラジーミル・プーチン大統領は、シリア政府からの要請を受けたとしてシリア領内でISILに対する空爆を開始する、と発表した。この作戦についてロシア国防省は、アメリカ主導の生来の決意作戦には加わらないとしている。ロシア空軍は、2015年10月上旬現在Su-24戦闘爆撃機Su-25シュトゥルモビークを用いて空爆を実施している。北オセチア共和国にあるロシア空軍基地にはTu-22M中距離爆撃機がロシア各地から集結している(その数は少数)といい、今後は北オセチア共和国のロシア空軍基地からの長距離爆撃になる可能性が高いという。また、シリア領内に展開しているロシア空軍の機体についている国籍識別標が消されていることが確認されている[162]

イラク・シリア国外への動き

リビアにおける勢力範囲(灰色の地域)

2015年1月26日、ISILは、支持者に対し、各地での攻撃を呼びかける声明を出した[163]

これを受けての攻撃と思われる動きが世界各地で起きており、1月27日にはリビアの高級ホテルが武装勢力に襲撃され、9人が死亡する事件が起こった。この事件では、イスラム国「トリポリ州」を名乗る集団が犯行声明を出した[164]。この事件では、現地の者だけでなく、アメリカ合衆国韓国フランスフィリピンなどの者も犠牲となった[165]。2015年6月には中部シルトを完全に制圧するなど[166]、事実上の内戦下のリビアにおいて一定程度の勢力を保持している。

1月29日には、エジプト北部の北シナイ県の軍事基地や警察署などを、武装集団が襲撃し、少なくとも26人が死亡する事件が発生した。ISILに忠誠を誓い、ISILのエジプト部門となった過激派エルサレムの支援者英語版が犯行声明を発している[167]。なおエジプト軍の報道官は、軍によって結社禁止となったムスリム同胞団が関与していると主張した[168][注釈 5][169]

内戦状態のイエメンでも勢力を拡大しており、3月20日には、シーア派武装勢力「フーシ」が掌握する首都サヌアでフーシ派幹部を狙ったとみられる自爆テロを起こし、140人以上の死者が出るなど攻勢を強めている[170]4月30日には、イエメン軍兵士14人に死刑を執行したとする動画を公開した[171]

2015年7月には、アフガニスタンのザファル・ハーシミー報道官は、少なくともナンガルハール州ファラー州ヘルマンド州の3州にISILが進出していることを明らかにした[172]。6月には、ターリバーンとの間で戦闘が勃発し、双方の間でISIL指導者を含む12人が死亡した[173]

2015年11月には、フランスパリ同時多発テロが発生し、[174]129人が死亡した。この同時テロで、ISILが犯行声明を出した。フランスのオランド大統領11月13日非常事態宣言を発表し、全ての国境を封鎖した[175]

支配地域の推移

※2014年10月まではシリア国内の状態のみ表示

対外関係

対立

国家を自称しているものの、他国から国家の承認(本当の意味は、英語の表現にあるように、diplomatic recognition 外交上の承認、という意味で、実際にもその通りの内容)は得られていない。当事国であるイラクシリアはもちろんのこと、日本や米国、欧州諸国などの政府が承認を行っていない。さらに、周辺のシーア派スンナ派(スンニ派)イスラム教諸国の政府などからも国家としては承認されていない2015年1月時点で、ISILに対し公式に外交上の承認を行った国家は一つも無く、当然国連への加盟も果たしていない。

ISILは全世界のほぼすべての国の政府と敵対している。日本にも宣戦布告を行っており[176][177]日本政府もこれらの国とISIL包囲網に加わる共同声明を発表している[178]

ISIL側は、中華人民共和国インドパキスタンソマリアモロッコインドネシアアフガニスタンフィリピンチュニジアリビアアルジェリア朝鮮民主主義人民共和国[179]大韓民国[180]台湾中華民国[181]ミャンマーなどあらゆる国を「攻撃対象」として名指ししている[182]

米国

2014年9月22日、アメリカの国防総省はアメリカ軍がシリア北部のラッカにて、「ISILに対する空爆を実施した」と明らかにした[183]。アメリカの国防総省は「攻撃には戦闘機、爆撃機が参加したのに加え、巡航ミサイル「トマホーク」も使用された」と説明[184]

バラク・オバマ大統領は、2015年に入って以降、ISの勢力後退の認識を示してきたが、9月26日に、ニューヨーク・タイムズは、米国の対ISIL作戦の戦況について楽観的に見せる歪曲した報告書が作成されたとする内部告発があったと報じており、情勢認識が誤っていた可能性が浮上した[185]

湾岸諸国など

ISILが支配することを目標としている場所にある国々の政府は全て、(国土をほとんど奪われかねないので、ある意味、当然のことであるが)ISILを敵視している。ただしサウジアラビア総合情報庁は、シリア、イラク、イラン弱体化のために、影でISILなどの過激派に資金提供を行ってきたとされる(→#指導体制を参照)。

シーア派のイランはイラク軍と協力して越境攻撃も行い[186][187]、反ISILの戦いを続けるイラクのクルド人勢力に武器を提供しており[188]、かつては同じスンニ派を信じるためにISILの動きを静観していたサウジアラビア(前記の通りISILの陰のスポンサーとの指摘あり)などの湾岸諸国もまた、自国に対するテロの温床になりかねないとしてISILを強く批判するようになっている[189]

アラブ連盟は2014年9月7日に会合を開き、ISILを含む過激派勢力に対抗するために「必要なあらゆる措置を取る」という声明を発表した[190]

2014年9月11日、ヨルダンエジプトトルコサウジアラビアUAEオマーンクウェートバーレーンカタールの外相が、ジョン・ケリー国務長官と会談し、アメリカの軍事作戦に協力することを約束した[191]。2014年9月19日、トルコは、シリアとの国境にある有刺鉄線を排除し、国境を開放、ISILから逃げてくるクルド人などをトルコ領内に受け入れた[192]

ISILはスンニ派を信仰しているとされるが、同じスンニ派であっても敵対する者は容赦なく排除する。イラクのスンニ派部族の中には、ISILと相容れずに戦っている者も少なくないが、ISILは彼らを大量に処刑、殺害している[193][194]

2015年7月には、ISILはファタハ[195]イスラエル[196][197]ガザ地区を支配するハマースに対して「宣戦布告」をした[198]

ISILと同じくサラフィー・ジハード主義を掲げるイエメンイスラム過激派組織「アラビア半島のアルカイダ」は、ISILがイエメンの地を「自国領土」としているために対立しており、ISILを非難する声明を出している[199]

テロ指定の状況

2015年1月時点でISILをテロ組織として認定しているのは、国連[注釈 6]、EU[注釈 7]、イギリス[207]、アメリカ[208]、ロシア[209]、オーストラリア[210]、カナダ[211]、インド[212]、エジプト[213]、サウジアラビア[214][215]、UAE[216]、日本[217][218][219]である。

支持

勢力を伸ばすISILを支持したり、傘下に入ったりするジハード主義組織は増えている。2014年6月、イスラム国の樹立が宣言された時、ナイジェリアボコ・ハラムは支持を表明している[220]。2014年9月には、フィリピンのイスラーム主義過激派組織アブ・サヤフがISILとの共闘を宣言した[221]。2014年10月14日、ISILと対立するターリバーンと関係の深いパキスタン・ターリバーン運動の幹部6人がISILの傘下に入った[222]。2014年11月10日、エジプトの過激派エルサレムの支援者(アンサール・ベイトゥルマグディス英語版)が、ISIL最高指導者アブー・バクル・バグダーディーへの忠誠を表明した[223]。「エルサレムの支援者」は、後に「イスラム国シナイ州」と名を変えた[224]。他にも、リビアの過激派「イスラム青年シューラー会議」が、ISIL出身の者に指導され、「イスラム国キレナイカ州」と名乗るようになっている[225]

2014年12月、環球時報東トルキスタンイスラム運動に所属するウイグル族中国人約300名がISILに参加したと発表した[226]。その後エルサレムの支援者たちはISILのエジプト部門となり、同様にアルジェリア部門の中心となったカリフの兵士、リビア部門となったイスラーム青年シューラ評議会といった組織もある。

その他、ヨルダンではタウヒードの息子たち、レバノンの自由スンニのバールベック大隊、インドネシアではファクシという組織がISILを支持している。

軍事

兵力

ISILの構成員は1万数千人と言われているが、そのうち約6,300人は「イスラム国」の建国を宣言してからの加入者だと言われており、建国宣言から急速に勢力を拡大している。新規参加者のうち大半はシリア人とされる。アメリカ合衆国CIAは、戦闘員の数は2万人-3万1,500人に上るとする見方を示している[227]

戦闘員の人数は最小で3万、最大で15万人との推計もある。

2014年8月から、アメリカ軍などがISILへの空爆を実施しており、アメリカ軍は推定2万人のISILの兵を殺害しているが、絶えず新しい兵がISILに加入しているため、総数は減っていない[228]

外国人戦闘員

シリア人など現地の人々だけで組織が構成されているわけではなく、外国人の傭兵も随時募集しており、兵士約31,000人のうち、ほぼ半数の16,000人が外国人である。外国人戦闘員は、アラブ諸国欧州中国(特にウイグル自治区)などから参加している[229]プロパガンダ動画には空撮スローモーションなどの演出が盛り込まれている[230]

アメリカフランスの研究機関によると、(2014年11月時点の分析で)チュニジアからは3,000人、サウジアラビアからは2,500人が戦闘員としてISILに参加している[231]

ヨーロッパ諸国では、ISILをはじめとするイスラーム過激派に加わった戦闘員が、帰国後に自国内でテロを起こす可能性を危惧している[232]イギリスキャメロン首相は、2014年8月29日、イギリス国籍のISILの戦闘員は少なくとも500人にのぼると語り、国外でテロ行為に関わった疑いのあるイギリス国民の出入国を抑制する方針を発表した。ただし、移動の自由を侵害しかねない懸念もあり、イギリスの自民党国際法違反と指摘している[233]。2014年8月、ドイツメルケル首相によれば、ISIL要員は約2万人で、うち欧州出身者が約2,000人を占めると語った[234]。ドイツからは、400人超の若者がISILの戦闘員となり、このうち100人はドイツに帰国しているとされる。ドイツのデメジエール内相は、ISILを支援するあらゆる活動を禁止する方針を発表した[235]アメリカ国防総省は、10人ほどのアメリカ人がISILに参加しているらしいと発表した[236]

非イスラム教国の中では、ロシアから最も多くの戦闘員が出ており、ロシア出身の戦闘員数は800人という説がある[231]

週刊新潮2015年2月5日号特集記事『「イスラム国」大全』によると、「こうしたプロパガンダや過激なイスラム思想に共鳴し、志願したものの現実に嫌気がさしている兵士も多くいる。あるフランス人兵士は、イスラムの教えに則った生活ができると参加したが、食事は1日1-2回で薄いパンチーズ羊肉だけで給料も出なくなった。正義のために闘ってきたが、殺戮の繰り返しに単なるテロリストに過ぎないと気付き始めた。2015年1月12日には禁止されているサッカー観戦をした少年13名が銃殺されたが、これをきっかけにそういった考えを持つ外国人兵士が多くなっている。しかし、自国でテロリストとして逮捕されるため帰国できない者も多くいる。部隊での昇進の基準は「たくさん人を殺すこと」であり、対象は民間人でも女性でも子供でもよく、ISILの理念に賛同しない者、と制度化している。下級兵士が昇進するためには「10人を殺害する」ことが条件になる。9人は殺害できたが、10人目が達成できないある兵士は妻を殺害して目的を達成した」のだという[48]

日本人

田母神俊雄イスラエル訪問時に「9人の日本人がISILに参加している」という情報を得たとブログで発表した[237]が、中山泰秀外務副大臣がイスラエルに確認した所、そのような情報は無いという回答であった[238]

2014年10月6日警視庁北海道大学の学生がISILに加わろうとしたとして、私戦予備および陰謀の疑いで事情聴取をした。学生はISIL司令官と太いパイプを持っているイスラム法学者中田考の紹介によって、ISIL幹部と接触しようとした。中田は幹部に学生を紹介し、ルートや通訳の手配をしたことについて警視庁公安部の事情聴取と家宅捜索を受けた。

戦闘員の募集手段、戦闘員の出身階層

かつて、ヨーロッパやその他先進国の国民でイスラム過激派に加わる者は、不遇な生活環境や家庭的に恵まれない若者が多かったとされるが、現在は中流・富裕層も多くいるとされる。フランス24によれば、ISILは、アルカイダと比較して、領土的地盤があり、資金が豊富で、巧みな広報戦略などの点で、参加者にとって魅力的に映っているとされる[239]。FBIの調査によると、アメリカからのISIL参加者の人種・民族・職業・年齢に特有の特徴は見られないという[240]マレーシアからの参加者には一般公務員、軍人、研究職なども多く含まれており、特に公務員への浸透が問題となっている[241]。またISILの元戦闘員の証言によると、ヨーロッパ出身者など、中東以外から来た戦闘員が、主に残虐な犯罪を犯すという[242]

ヨーロッパの家庭で子が戦闘員になった場合の状況

ヨーロッパに残された家族は、家族を失ったことの悲しみの他、社会からは「親の教育のせいでISILになった」という批判を受けるという二重の苦しみを味わっている。ベルギーでは、子供が過激派に参加している家族の会が、若者の過激派入りを予防する運動を行っていたが、ベルギー社会からは「過激派の仲間」として扱われ、リンチじみた中傷を受けて、家族の会は解散に追い込まれた[243]

シリア、イラク以外のISIL戦闘員の出身国(500人以上)
出身国 人数
チュニジアの旗 チュニジア
3,000
サウジアラビアの旗 サウジアラビア
2,500
ロシアの旗 ロシア
1,700
ヨルダンの旗 ヨルダン
1,500
モロッコの旗 モロッコ
1,500
フランスの旗 フランス
1,200
トルコの旗 トルコ
1,000
レバノンの旗 レバノン
900
ドイツの旗 ドイツ
650
リビアの旗 リビア
600
イギリスの旗 イギリス
600
ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン
500
パキスタンの旗 パキスタン
500
細胞組織

中東北アフリカの全域でISILの細胞組織の増加を示す証拠が増えてきており、リビアにはすでに3,000人の戦闘員がいるとされる[231]

以下、細胞組織があるとされる国家の一覧。

少年兵

ISILは、13歳の少年兵も動員しているとされ、国連は懸念を示している[244]

装備

初期の段階では、戦闘員の多くはAK-47RPG-7を装備し、移動にはテクニカルを利用するなど、テロリスト然とした装備であったが、その後 事態が長期化するにつれてイラク軍から鹵獲したアメリカ製およびヨーロッパ製の武器M4カービンミニミ軽機関銃など)や、欧米からの志願兵が持ち込んだ戦闘服タクティカルベスト暗視ゴーグルなどの近代的な装備を利用し始めている。また、イラク軍の基地を制圧した際には、ハンヴィーMRAPなどの装甲車T-5559-I式カノン砲ZU-23-2などの地上戦力だけでなく、MiG-21 フィッシュベッドMi-24 ハインドといった航空機までも入手しているとされる[245]トルコの新聞社デイリー・サバー(Daily Sabah)によれば、戦車戦力の大半はT-55・T-62T-72などソ連およびロシア製の戦車と見られるが、米軍イラク陸軍を再建する際に提供したM1エイブラムスも鹵獲された可能性があるという[246]

ISILは、数的には決して圧倒的ではないが、優れた西側兵器シリア内戦で得た戦闘経験を持ち、攻撃目標の適切な選択をすることで不必要な犠牲を出さない効率的な戦い方を心得ており、志願兵の流入と相まって勢力を拡大している[247]

2014年6月には、ISILはイラクフセイン時代に建設された化学兵器関連施設を制圧した[248]。2014年10月24日には、ISILが、イラクで有毒の塩素ガスを化学兵器として戦闘に用いた可能性が報じられた[249]。この化学兵器関連施設は、2014年12月1日に、イラクが奪還した[250]

2015年2月10日化学兵器禁止機関東京記者会見を開き、ISILが、イラク兵士に対して塩素ガスを使ったと、イラク当局から通報を受けたことを明らかにした。化学兵器禁止機関は、この通報について「疑いを持つ根拠はない」とする一方、ISILによる化学兵器の保有については把握していないとした[251]9月11日英国放送協会は、アメリカ政府筋の話として、ISILが化学兵器を製造し、少なくとも4回にわたって、マスタードガスを使用したと報じた[252]

評価

2014年8月22日、チャック・ヘーゲル国防長官は記者会見で、ISILの特徴として野蛮な思想と洗練された軍事力、潤沢な資金を併せ持つことを挙げ、「これまでに見たどの組織よりも洗練され、資金も豊富で、単なるテロ組織を超えている」と評した[253][254]。ISILは、アメリカ合衆国の最大の敵として急浮上している[255][256]。豊富な資金源を持つISILは、アル・カーイダをしのぐ影響力を持つ可能性も指摘されている[257]

アメリカのマーティン・デンプシー統合参謀本部議長は、2014年11月の段階で、ISILの掃討にかかる時間は、3年から4年の長期戦になるとの見方を示した[258]

経済、財政

資金調達、経済運営

かつては、ISILは湾岸諸国の(イスラムの)富裕層からの寄付(資金援助)や、イスラム世界全体からの寄付で資金を得ていると考えられていた[63]

しかし2014年8月の段階ですでに、資金面ではほぼ自立している状態になっているという[63]。米国の国務省当局者の分析では、外部からの資金供与の割合はほんのわずかなのだという[63]

ウォールストリートジャーナルに掲載された情報によると、ISILの主な資金獲得方法は次のようなものだという(2014年8月時点)[63]

イラクイランシリア弱体化を狙うサウジアラビア王族バンダル・ビン・スルターン(又はその背後のサウジアラビア総合情報庁)が影から資金提供をしていたとされ、イランや駐シリアヨルダン大使、一部のジャーナリスト、学者は、バンダルこそがアルカイダやISILなどの過激派の真の指導者だと主張している[259][260][261]。ただし、バンダルが解任された2014年頃からそれまでISILを静観してきたサウジアラビアもISILを非難するようになった。

自立的収入

商人や農民に寄付をさせ、公共交通機関から手数料をとり、支配地域にとどまる選択をしたキリスト教徒などからは「安全保証料」を徴収しているという[63]

石油・小麦・古代遺物の取引の管理と闇市場の運営をしている[63](取引相手には、意外なところではアサド政権派のシリア人、シーア派、クルド人ビジネスマンまで含まれる[63])。

シリアとイラク内のISIL支配地域で、経済はおおむね安定しているという。ISILには、組織内に資金を管理する「財務相」と財政委員会を置いているという[63]

シリアの反体制派の者が語ったことによると、ISILはラッカ県とデリゾール県の8カ所の油田・ガス田を管理しており、(シリアやレバノンの石油取引業者の話では)重質油は1バレルを26-35ドルで、軽質油は最高60ドルで、地元やイラクの石油取引業者などに売り渡しているという(2014年8月時点)[63]

ISILは、原油販売や、支配地住民への略奪や課税密輸などを通じて、2014年には1日当たり100万ドルを調達していたが[262]、その後、制圧した原油が増加し、2014年8月下旬時点では1日当たり200万ドル(約2億800万)余りの資金を調達していると見られている[134]。ISILは、1日あたり3万バレルの原油を産出しているとされる[262]。また、遺跡盗掘も資金源になっていることが判明した[263]。支配地域の拡大についても天然資源の確保に重点を置いているとされる[264]

2014年11月27日、石油輸出国機構の総会で、減産を見送り、12カ国の生産目標をいまの日量3千万バレルで据え置くことを決めた。これに伴って、原油価格が急落した[265]。この原油安は、ロシアではロシア・ルーブルが暴落し、急遽、ロシア政府が12月16日に政策金利を10.5%から17%に大幅に引き上げたり、ベネズエラでは債務不履行の懸念が高まる[266][267]など、原油輸出国に大きな打撃を与えている[268]。この原油安について、各所で陰謀論が唱えられており、代表的な所ではロシアプーチン大統領がアメリカとサウジアラビアによって仕組まれた可能性を示唆している[269]。また、イランハサン・ロウハーニー大統領も陰謀論を唱える代表的人物である[270]。同時期にアメリカホワイトハウスが出した発表において、オバマ大統領サウジアラビアアブドラ国王とISILへの対応に関して話し合いをした[271]とのことだが、原油価格について触れられたかどうかのデータは無い。

石油の国際価格が急落したことや、米軍主導の有志連合の激しい空爆により、ISILの懐具合は苦しくなっているとされる[50]

外部からの資金

西側当局の分析では、ISILは、収入を増やすために、人質身代金)を組織的に活用している、とのことである。ただし、解放した人質の数(=身代金を得た件数)は少ないため、結局 身代金による収入は安定していない。[63]

外部からの資金である 「湾岸諸国の富裕層からの寄付」は急減しているという(2014年8月時点)。ISILが湾岸諸国にとっても脅威であると認識されるようになったからだという[63]

制圧による支配[272]

ISILは住民からあらゆる物を略奪している。銀行発電所礼拝所パン屋に至るまで制圧している。利があると見れば、敵対するはずのアサド政権と親しい業者とも取引を行う他、元アサド派や、多数いる外国人にも要職を任せており、貧困層や母子家庭への支援も行っている[273]

ISILは、税金の他にも、他にも様々な名目で罰金を課しており、住民はその負担に苦しんでいる。また、ISIL支配域の医療、交通、水道、電気など公共サービスは、ISILの支配が始まってから、料金が大幅に上がっている[50]

通貨

2014年11月13日、ISILは独自の金貨銀貨銅貨を発行すると発表した[55](ただし、金や銀をどう調達するかは不明である[274])。ISIL自身の説明[275]においては(オスマン帝国のことには一切触れられておらず)ウマイヤ朝のカリフであるアブドゥルマリクによる金貨が起源である、とする説明がなされている。ISILは、支配する域内で今まで流通してきた(そして「専制国の通貨システム」として彼らが忌み嫌っている)米国のドルイラク・ディナールを使用することは止めて、今回発行することになった独自通貨を使用するよう勧めている、という[55][276]。2014年11月13日に朝日新聞の採用した分析・推測では、独自通貨を発行・流通させることは経済の統制を強める狙いもあるが、国家としての正統性を高める狙いもあるとされる[55]。これらのお金の単位は、(ISILのメンバーらが、この地域の本来の あるべき姿だと思っている)オスマン帝国が用いていた通貨名・硬貨名と同じ、「ディナール」や「ディルハム」などである[55]。硬貨のデザインとしては、アルアクサー・モスクなどイスラム教に関係する絵柄が描かれており、(通貨名および)図柄により、ISILのことを、イスラム国家であったオスマン帝国を継承している正統性のある存在として、各地のムスリムたちに認めてもらおうとする狙いがある、と朝日新聞は分析した[55]

2014年11月には、ディナールという金貨の新通貨の使用を開始、ラッカではすでに一部で流通が始まっているが、供給量は少なく他の街ではほとんど見られず、シリア・ポンド米ドルが中心である[48]

軍事支援

シリア情勢に注目してきた米上院共和党議員のランド・ポール氏は今年の6月、CNNとNBCテレビで「米政府はアサド政権打倒のため、ISISに武器を供与してきた」と述べた。英国のガーディアン紙も「CIA(米国中央情報局)がヨルダンの秘密基地でISISを訓練している」と報じたことがある。[277]

プロパガンダ戦略

ファイル:Al-Hayat Media Center-english-logo.png
ISILの広報組織「アルハヤト・メディアセンター[注釈 8]」のロゴ。

ISILの構成員はTwitterYouTubeにアカウントを開設し、画像や動画を投稿するなどしてプロパガンダ活動を展開している。TwitterやYouTubeなどから相次いでアカウント停止処分を受けたため[278][279]、2014年8月にはインターネット上での活動を分散型SNSのDiasporaへ移行する動きを見せたという報道もある[278]が、2015年1月の「ISILによる日本人拘束事件」に際しても犯行声明動画がYouTubeに投稿され、その動画を宣伝するためにTwitterへの投稿が行われている[280]など、SNSを利用したプロパガンダ活動は続いている。これに対し、TwitterやYouTubeなどはISIL関連アカウントを凍結する措置を継続しており、Twitterでは1万8000件以上のアカウントが凍結されたという[281]。このように、ISILは、インターネットを使った巧みな宣伝術を持っているため、これが欧米からも若者が加わる要因にもなっている[104]

また、ISILの広報部門として「アルハヤト・メディアセンター」が存在する。拘束した外国人を殺害する動画にも、この「アルハヤト・メディアセンター」のロゴが付されている。この他、ISIL支配地域への移住を促す内容のものなど、多数の動画を公開しており、それらはスローモーションや効果音を駆使していることで知られている[282]。プロパガンダ動画だけでなく、機関誌も制作している。

ISILの英語版ネット機関誌「ダービク」には2014年7月、創刊時に「アラーの戦士は村々を開放するだけではない。住民のニーズも無視しない。預言者は代理人を指名し、残された住民の面倒を見るよう命じた。たとえ苛烈な戦時にあってもムスリムたちを放置はしない。そのニーズには応える」と謳っている。また地域のインフラの整備を行っているとし、電気の復旧、農業地域での灌漑設備の建設・整備、高速道路、一般道路の補修などを手がけ、橋の修復工事の写真を載せるなどしている。同時に、小児がん対策や老人ホームの拡充など福祉、厚生、医療の充実を謳う記事や写真と、捕虜への虐待シーン、処刑地までの死の行進の写真などを同時に載せるなどしている[48]

人権侵害と事件

2014年10月10日、オーストリアウィーンで行われた、亡命クルド人によるISILを批判するデモ

2014年6月11日イラクモースルにあったトルコ領事館にいたトルコの外交官や軍人、その子どもたち49人が、ISILによって拉致された。のちにイラク人スタッフ3人は解放されたが、トルコ人たち46人は3ヶ月後の9月20日まで拘束されていた。解放後、トルコ人たちは無事に母国へと戻った。この拉致事件の解決には、詳細は不明であるが、トルコの情報機関と軍、警察当局が取り組んだとされる。身代金の支払いは無かったという[283]

8月19日、拘束していた米国人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー斬首し、処刑動画が投稿された。ISILは米軍による空爆への報復と主張している[284]8月20日ホワイトハウスはこの動画が本物であると発表した[285]。フォーリー記者の処刑を担当した兵士は、動画の中で英語を話していたが、その発音イギリスの特徴のあることから、イギリス人の可能性が指摘されている。イギリスの警察などは、身元の調査を開始した[286]

国連人権理事会でISILの人権侵害を非難する決議が全会一致での採択される

2014年9月に国連人権理事会でISILのイラクでの人権侵害を非難する決議が全会一致で採択された[287]

だがその後も9月2日に米国人ジャーナリスト[288]9月13日に英国人の人道支援活動家[289]。10月3日に英国人のタクシー運転手の人道支援活動家[290]11月16日に米国人の人道支援活動家[291]の処刑映像が配信されているが、処刑された人物は全てオレンジ色の服が着せられている。オレンジ色の服の由来は、イラク戦争後、イラクの旧アブグレイブ刑務所では拘束されたイラク人捕虜がオレンジ色の服を着せられたことに因る[292]。ISILは人質にオレンジ色の囚人服を着せてひざまづかせるという構図によってアブグレイブの報復を示唆しており、ISILの宣伝につなげている。

2014年11月3日オーストラリアシドニーで、シーア派の信者が銃で撃たれる事件が起こった。事件前、車に乗った男たちが「イスラム国は永遠」「シーアの犬め」と叫ぶ姿が目撃されており、トニー・アボット首相は、ISIL支持者による犯行との見方を示した[293]

2015年5月20日、ISILはパルミラを制圧、20人以上の男性の死刑を執行し、パルミラの支配者としての力を示した[294]。パルミラ周辺での処刑は少なくとも217人に及ぶ。

5月27日には、ティクリート近郊で処刑されたとみられる470体のイラク兵の遺体が発見された。ISILは約1700人を処刑したとしており、遺体数は今後増えると思われる[295]

文化浄化

2014年7月、イラクのモースルにあったイスラム教徒とキリスト教徒の双方が崇敬[注釈 9]する預言者ヨナの墓があるナビ・ユヌス (Nabi Yunus) 聖廟を爆破したほか、盗掘も行っており、これに関しユネスコイリナ・ボコヴァ事務局長が「カルチュラル・クレンジング(文化浄化)」であると批判した[296]

2015年2月には、モスルの博物館で彫像などの所蔵品を破壊する映像を、インターネット上に投稿した[297]。さらに同年3月、イラク北部ニーナワー県にあるアッシリアの考古遺跡ニムルド世界遺産パルティアの古代都市ハトラを破壊した。ユネスコは、「文化浄化という(同組織の)恐ろしい戦略の中でも岐路になる破壊行為だ」と非難した[298][299]4月11日、古代アッシリアニムルド遺跡を爆破する映像を公開した[300]

2015年8月24日、約2000年の歴史があり、世界遺産であるパルミラの「バール・シャミン神殿」を爆破[301][302]。パルミラの隠された文化財の保管場所を明らかにすることを拒否したパルミラの考古学者ハレド・アサドがISILによって首をはねられ、遺体は史跡のメイン広場にあるローマ時代の柱の1つに吊された[301][302]

2015年8月31日、パルミラでベル神殿を破壊[303][304]

2015年9月16日国際連合教育科学文化機関イリナ・ボコヴァ事務局長は、ISILがシリアの遺跡で「かなり大規模」な略奪を行っており、資金源としていることを明らかにした[305]

2015年10月5日、パルミラで「凱旋門」を破壊[306][307]。凱旋門は遺跡の柱廊の入り口に位置し、東西文明の結節点として栄えた隊商都市を象徴する建造物の一つだった[307]

日本人の拘束と殺害

2014年8月、「民間軍事会社のCEO」としてシリア入りしていた日本人 湯川遥菜(ゆかわ はるな)がISILに拘束された。流血している彼を尋問している様子を撮影した動画が動画投稿サイトYouTubeにアップロードされ、波紋を呼んだ。当初は日本政府などに対する身代金要求はなく[308]、シリア政府や武装組織「イスラム戦線」を通じて解放への交渉が行われている[309]と報道された。2014年10月に湯川を追ってシリア入りしたフリージャーナリストの後藤健二も捕らえられ、2015年1月20日、「72時間以内に身代金の支払いがないとこの二人の日本人人質を殺害する」とISILメンバーが述べている動画が公開された[310]。1月24日にISILは静止動画により湯川を殺害したというメッセージを流すとともに、身代金の要求は取りやめ、代わりに後藤とヨルダン収監されていたサジダ・リシャウィ死刑囚との交換を要求した。しかし人質交換も行われることはなく2月1日に後藤を殺害したとする内容の動画が公表された[311]

アレッポの町

アレッポの小児病院から惨殺死体100体

トルコ国境に近いシリア第2の都市であるアレッポは激戦地となったが、ISILが刑務所として使用していた小児病院からは後に両手両足を縛られ目隠しをされた男性の遺体が100体以上発見された。原型をとどめないほど顔面を殴られた遺体や、口の中から頭に銃弾が貫通している遺体もあった。そのほとんどは一般市民であった。また、町の各所に爆弾を仕掛け無差別殺人をも行っていた[48]

スペイサーの虐殺

2014年6月にISILがイラクの町ティクリートを陥落させ入た際、スペイサー軍事基地に所属していた若い新兵がISIL戦闘員やISIL支持派の武装集団に拉致殺害された「スペイサーの虐殺」と呼ばれる大量殺害が行われた[312]。2015年6月11日、イラク人権相のバヤティはバグダードで記者団に「スペイサーの虐殺による597人の遺体を掘り起こした」と述べた[312]

拉致と各国政府に対する脅迫行為

週刊新潮2015年2月5日号の特集記事『「イスラム国」大全』によると、ISILはさまざまな人々を拉致して人質としており、人質の国籍も多岐にわたる。元人質のフランス人ジャーナリスト、ニコラ・エナンの証言によると以下のような状態である。

「2013年6月、車から降りてきた男らに頭からコートを被せられ、わずか10秒足らずで拉致され、ラッカ近郊の石油採掘所に連行される。採掘所の事務所が刑務所になっており、シャワー室に監禁される。鉄格子の窓をこじ開け逃走するが再度捕えられ、激しい拷問を受ける。刑務所は転々とし、計10回ほど移動する。シリア人の囚人もおり、ほとんどは飲酒、麻薬売買、政治的理由によるものであり終日拷問を受けていた。エナンは20人の人質と同房で女性も6人いた。国籍は、米国、スペインデンマークベルギーイタリアなど全員が白人であった。牢は20㎡ほどで裸足で電灯、暖房、家具はなく、夏は暑く冬は寒い。窓から雪が舞い込むこともあった。食事は1日2回。昼過ぎに出る1ダースのオリーブヨーグルト、夜はカップ1杯のご飯だけと毎食ごとにパンで最低限の食事であった。トイレの時間も厳格に決められ、看守に見守られながら1日2-3回、各1分と決められていた。同室の人質が連れ出されると数日後、看守がパソコンを持ってやってきては、処刑場面を見せられた。また、オレンジ色の服はイラク戦争で捕まったテロリストが収容先のグアンタナモ米軍基地で着せられていたものと同色で、ジハード主義者にとっての復讐を意味している。すなわちこれを着せられることは、死刑囚を意味する」のだという[48]

日本の在外公館に対する攻撃の呼び掛け

2015年9月、ISILの機関誌ダービクは「イスラム国を敵対視する十字軍連合」として、日本を含む60以上の国や機関などを列挙した上で、インドネシアマレーシアボスニア・ヘルツェゴビナにある日本の在外公館に対し攻撃を行うよう呼び掛けた[313]。これは、イラクシリアにあるISILの支配地域に来られない支持者に向けて、これらの国や機関の具体的な攻撃対象を挙げ「近くにいる敵に聖戦を行わなければならない」などと呼び掛ける内容となっている[314]。なお、名指しされた在インドネシアの日本大使館は「内容は承知している。これまで講じてきたテロ対策を続けていく」としている[314]

関連項目

脚注

  1. ^ 「Levant(レバント)」とは、トルコからシリアエジプトパレスチナヨルダンレバノンをも含む大シリアを指したり、ダマスカスを指すときに用いられることもあるため、専門家からは訳に対する疑義が表明されることもある。一方で、「ISIS」という音は Isis (=イシス神)と同じで、英語圏の人にも聞き取りやすく記憶しやすいので、英語圏の人は好む、とも指摘されることがある。
  2. ^ 報道されたラテン文字表記の地図には、アラビア語のラテン文字転写に様々な誤りがある、と指摘されている。地図にある Orobpa は Oroba ないし Ouroba、Qoozaz は Qoqaz、また Anathol は Anaṭol が正しいという[71]
  3. ^ もっとも同性愛を理由とする死刑はISILに限ってのことではなく、中東を中心として戒律に厳格な国では一般的なことである。イスラーム教徒による性的マイノリティー迫害の項目も参照のこと。
  4. ^ この声明に対して、ヌスラ戦線のリーダーであるアブー・ムハンマド・アル=ジャウラニ(Abu Mohammad al-Jawlani)は「イラクとレバントのイスラム国」との関係は認めたものの、合併については否定したうえアルカイダのリーダー、アイマン・ザワーヒリーに対する忠誠を誓約した。しかしシリアで活動するヌスラ戦線のメンバーによると、多くのメンバーが「イラクとレバントのイスラム国」に合流したという[102]
  5. ^ エジプトのシーシー政権は、ムスリム同胞団をテロ組織と見なしているため、「テロリスト同胞団」と表記している。
  6. ^ 国連安保理決議1267[200][201]および決議1989[202][203]では、タリバンおよびアルカイダをテロ組織に指定し、制裁措置を取ることが確認されている。前述の決議に基づいて設置された制裁委員会[204]の制裁対象者リストにISILも掲示されている[205]
  7. ^ 国連の制裁対象者リストを元にテロ組織指定。[206]
  8. ^ ロンドンに本部を置くアラビア語日刊紙のアル・ハヤートと同名であるが、無関係である。
  9. ^ キリスト教、イスラム教における聖人「崇敬」(≠崇拝)については「聖人#崇敬と歴史」、「聖人#イスラム教」を参照。

出典

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外部リンク