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「ヒリゾ浜」の版間の差分

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[[ファイル:View of Hirizo Beach, in Minami-Izu, Shizuoka.jpg|300px|サムネイル|崖上を走る道路から見たヒリゾ浜]]
'''ヒリゾ浜'''(ヒリゾはま)は、[[静岡県]][[賀茂郡]][[南伊豆町]]にある[[海岸]]。陸続きではあるものの、道がないため[[船]]でしか行くことができない。夏季は渡し船が出る。周辺に大きな[[川]]がないことや[[黒潮]]の影響もあり、透明度が非常に高い<ref name="nkbp587">{{Cite web|url=http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20130925/1052587/|title=気分は『リトル・マーメイド』! 水中でモデルをキレイに撮るコツ|date=2013-10-7|publisher=日経BP|accessdate=2015-11-22}}</ref>。その抜群の透明度が近年[[インターネット]]により有名となり、[[シュノーケリング]]スポットとして夏季には大変な混雑となっている<ref name="nkbp587" /><ref>{{Cite web|url=http://izu.keizai.biz/headline/305/|title=伊豆半島で台風18号が猛威振るう 台風一過に「笠雲」、富士山もお目見え|publisher=伊豆経済新聞|date=2015-9-10|accessdate=2015-11-22}}</ref>。
'''ヒリゾ浜'''(ヒリゾはま)は、[[静岡県]]の[[伊豆半島]]最南端にある[[海岸]]<ref name="朝日新聞2009-07-09"/>。[[賀茂郡]][[南伊豆町]]の「中木漁港」({{ウィキ座標|34.61534631251451|||N|138.8243802408225|||E||座標}}){{Efn2|南伊豆町三坂地区には沿岸部に入間と中木の2集落があり<ref>『静岡新聞』2017年3月14日朝刊21頁「三坂に防災センター完成―南伊豆・全地区で指定避難所」(静岡新聞社)</ref>、「三坂漁港」と呼ばれる漁港も入間(中木より東方に゙位置する)と中木の2か所に分かれている<ref name="静岡新聞2000-04-16"/><ref>『ゼンリン住宅地図 静岡県 南伊豆町 202309』2023年9月。「索引図」では、入間と中木の両集落にそれぞれ「三坂漁港」がある。1(E-3およびF-3)0頁…大字中木(F-2)に面して「三坂漁港」がある。18頁F-5…入間地区に面して「入間漁港 三坂漁港」がある。</ref>。中木は1996年時点で80世帯<ref name="朝日新聞1996-06-21"/>、2013年8月時点で72世帯、人口184人の集落で、高齢化率は約41%と町内でも高い<ref name="静岡新聞2013-08-17">『静岡新聞』2013年8月17日朝刊18頁「清流=“秘境”の観光誘客」(静岡新聞社 下田支局・坂本昌信)</ref>。また同姓の住民が多いため、どの家も屋号を持っていた<ref name="朝日新聞1996-06-21"/>。[[イセエビ]]漁や潜水漁(漁対象は[[アワビ]]・[[サザエ]]などの貝類)、スクーバダイビングが盛んな集落で<ref name="静岡新聞2000-04-16">『静岡新聞』2000年4月16日別刷1頁「ぶらり・しずおか港町=中木(南伊豆町) 箱庭のような地形、穏やかな湾」(静岡新聞社 文・杉山一彦/写真・望月康)</ref>、1996年時点では80世帯のうち40戸ほどが民宿やエビ網漁などの漁業で生計を立てていた<ref name="朝日新聞1996-06-21"/>。同集落は1974年の[[伊豆半島沖地震]]で甚大な被害を受けた後、埠頭の前に3階建ての集合住宅が何棟か建てられ、1996年時点では草刈りや海水浴場の清掃などといった共同作業が義務付けられていた<ref name="朝日新聞1996-06-21"/>。}}と[[石廊崎]]の中間に位置する海岸で<ref name="紹介"/>、行政区画上は南伊豆町中木<ref name="道路地図">『県別マップル22 静岡県道路地図』2021年8月1日5版1刷発行、昭文社、92頁「下田」C-5</ref>、もしくは同町入間に属する<ref name="ゼンリン202109">『ゼンリン住宅地図 静岡県 賀茂郡 南伊豆町 202109』[[ゼンリン]]、2021年9月発行、8頁F・G-2。{{ISBN2|978-4432515776}}</ref>。


伊豆半島最南端の石廊崎から東方約2&nbsp;[[キロメートル|km]]に位置する<ref name="沼津経済新聞2022-07-01"/>。陸路では入ることができず、普段は立入禁止となっているが、夏季には[[海水浴場]]として開放され、中木港とヒリゾ浜を結ぶ[[渡し船|渡船]]が運航される<ref name="沼津経済新聞2022-07-01"/>。国内屈指の[[シュノーケリング]]・[[スクーバダイビング|ダイビング]]の好スポットとして知られ、夏季には大変混雑する<ref name="波奈美月"/>。「伊豆最後の秘境」とも呼ばれる<ref>『静岡新聞』2013年12月1日朝刊21頁「日本酒熟成へ海底に沈める―南伊豆で都内のバー」(静岡新聞社)</ref>。
== 出典 ==
<references />


==外部リンク==
== 名称 ==
かつてはアーチ型の岩の中に夕日が沈む光景が見られたことから「日入り洞浜」と呼ばれており、それが転じて「ヒリゾ浜」と呼ばれるようになったとされている<ref name="静岡新聞2016-07-18"/>。古関千恵子によれば、2015年時点で船着き場として用いられている場所の付近にはかつて洞窟があり、「日入り洞」「日入り堂」と呼ばれていたものが「ヒリド浜」となり、最終的に「ヒリゾ浜」という名称が浸透した<ref name="古関千恵子"/>。
*[http://www.nakagi.jp/hirizo/ ヒリゾ浜]


'''ひりぞ浜海水浴場'''<ref>『読売新聞』2006年8月20日東京朝刊静岡版27頁「遊泳中に2人行方不明 南伊豆と浜松で相次ぐ=静岡」(読売新聞東京本社・静岡支局)</ref><ref>『読売新聞』2006年8月21日東京朝刊静岡版31頁「水難事故相次ぐ 不明者は遺体で発見=静岡」(読売新聞東京本社・静岡支局)</ref>、'''ヒリゾ海岸'''<ref name="静岡新聞1997-07-26"/><ref name="読売新聞2004-06-28">『読売新聞』2004年6月28日東京夕刊レジャー面7頁「[レジャースポット] 6月28日 静岡・南伊豆町の海中散歩」(読売新聞東京本社)</ref>、'''ヒリド浜'''<ref name="Rec 199107">{{Cite journal|和書|journal=レクリエーション|title=NEW RECREATION PROGRAM――海の生き物たちのドラマを眺めるスノーケリングでの自然観察|date=1991-07-01|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/2811395/1/13|issue=369|pages=20-23|publisher=[[日本レクリエーション協会]]|doi=10.11501/2811395|id={{NDLJP|2811395/1/13}}}} - 1991年7月号。</ref><ref>{{Cite journal|和書|journal=レクリエーション|title=ネイチャーレクリエーション――自然とより深く交流するために|date=1996-07-01|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/2811467/1/17|issue=444|pages=29-31|publisher=日本レクリエーション協会|doi=10.11501/2811467|id={{NDLJP|2811467/1/17}}}} - 1991年7月・8月号。</ref><ref name="朝日新聞1996-06-21">『朝日新聞』1996年6月21日東京夕刊第2版科学面11頁「海のゆりかご 藻場 海浜のゴミ([[東京大学|東大]]海洋研究所助手 相生啓子)」(朝日新聞東京本社) - 『朝日新聞』[[新聞縮刷版|縮刷版]] 1996年(平成8年)8月号1019頁。</ref><ref name="静岡新聞2000-10-12">『[[静岡新聞]]』2000年10月12日朝刊21頁「ヒリド浜の保全を探る 環境庁が海中景観調査―南伊豆町中木地区」(静岡新聞社)</ref>との表記も見られる。
{{Pref-stub|pref=静岡県}}

== 地理 ==
[[File:Aerial photo of Hirizo Beach coastal area taken on August 11, 2013.jpg|230px|thumb|ヒリゾ浜周辺の空中写真。{{国土航空写真}}。<small>2013年8月11日撮影。</small>]]
海岸の全長は約250&nbsp;[[メートル|m]]<ref name="波奈美月">{{Cite web|和書|url=https://www.travel.co.jp/guide/article/39268/ |title=南伊豆「ヒリゾ浜」透明度に感動!船でしか行けない秘境浜が美しすぎる | 静岡県 | トラベルjp 旅行ガイド |access-date=2023-06-18 |publisher=[[ベンチャーリパブリック]] |author=波奈美月 |year=2018 |website=[[LINEトラベルjp|トラベルjp]] |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230618074546/https://www.travel.co.jp/guide/article/39268/ |archive-date=2023-06-18 |url-status=live |deadlinkdate=2023-06-18}}</ref>ないし約300&nbsp;m<ref name="静岡新聞2016-07-18"/>。

ヒリゾ浜のある南伊豆町中木地区は、[[海底火山]]の[[火山作用|活動]]によって形成された奥石廊エリアに位置する<ref name="伊豆新聞2011-08-20"/>。ヒリゾ浜は切り立った崖に囲まれた小さな浜で<ref name="毎日新聞2008-07-19"/>、海岸は[[礫|ゴロタ石]]で覆われている<ref name="静岡新聞2016-07-18"/>。伊豆半島と陸続きではあるが<ref name="日本経済新聞2020-07-22"/>、波の侵食でできた断崖の真下にあり、陸路がないため[[船]]でしか行くことができない<ref name="静岡新聞2016-07-18">『静岡新聞』2016年7月18日朝刊7頁「ソノ仕事×コノ絶景(22)=渡主 ヒリゾ浜(南伊豆町)−青く輝く秘密基地 案内」(静岡新聞社 文・小林稔和、写真・宮崎隆男)</ref>。周囲は[[駿河湾]]で、対岸の「大根島」{{Efn2|石廊崎港からは「石廊崎岬めぐり」という船が出ており、そのコースのうちの1つは石廊崎の南を廻り、大根島の周りを一周して(途中でヒリゾ浜と大根島の間の海峡を経由して)石廊崎港に戻るという航路である<ref>『県別マップル22 静岡県道路地図』2021年8月1日5版1刷発行、昭文社、92頁「下田」C-5およびD-5</ref>。}}と呼ばれる島をはじめ、大小様々な島がある<ref name="ゼンリン202109"/><!--大根島はE-2からF-4まで-->。伊豆にはヒリゾ浜以外にも船で渡る海岸は存在するが、岬の突端に位置しながら浜の正面に島がそびえ、外洋と直接面さないような地形になっている海岸はヒリゾ浜だけだという<ref name="古関千恵子">{{Cite news|和書 |title=まるで地中海の秘密のビーチみたい! 南伊豆の美しき至宝「ヒリゾ浜」へ | 古関千恵子のニッポン極楽ビーチ十景 |newspaper=[[文春オンライン]] |date=2015-08-29 |author=古関千恵子 |url=https://crea.bunshun.jp/articles/-/8575 |access-date=2023-10-16 |publisher=[[文藝春秋]] |page=1 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20231016141548/https://crea.bunshun.jp/articles/-/8575 |archive-date=2023年10月16日}}</ref>。海底の地形はドロップオフ(断崖)、白い砂地、[[岩礁]]など変化に富む<ref name="古関千恵子2">{{Cite news|和書 |title=まるで地中海の秘密のビーチみたい! 南伊豆の美しき至宝「ヒリゾ浜」へ | 古関千恵子のニッポン極楽ビーチ十景 |newspaper=文春オンライン |date=2015-08-29 |author=古関千恵子 |url=https://crea.bunshun.jp/articles/-/8575?page=2 |access-date=2023-10-16 |publisher=文藝春秋 |page=2 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20231016141516/https://crea.bunshun.jp/articles/-/8575?page=2 |archive-date=2023年10月16日}}</ref>。

海水の透明度が非常に高く、水面から水深5&nbsp;m以上の海底まで明瞭に見渡せる場合がある<!--気象条件などによって透明度が異なる場合があるため「場合がある」とした--><ref name="沼津経済新聞2022-07-01">{{Cite news|和書 |title=南伊豆・ヒリゾ浜で海開き 異例の「梅雨明け後」海開き |newspaper=沼津経済新聞 |date=2022-07-01 |url=https://izu.keizai.biz/headline/1488/ |access-date=2023-06-18 |publisher=[[みんなの経済新聞ネットワーク]] |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230618064947/https://izu.keizai.biz/headline/1488/ |archive-date=2023年6月18日}}</ref>。その要因として、以下の理由が挙げられている<ref name="朝日新聞2020-04-16"/>。
* 伊豆半島の最南端に位置し、[[黒潮]]の影響を強く受けること<ref name="紹介">{{Cite web|和書|url=https://nakagi.jp/2018/07/28/hirizo_top/ |title=ヒリゾ浜の紹介 |access-date=2023-06-18 |publisher=殿羽根丸 船長 |date=2018-07-28 |website=仲木へ行こうよ SNORKELING WORLD |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230618065341/https://nakagi.jp/2018/07/28/hirizo_top/ |archive-date=2023-06-18 |url-status=live |deadlinkdate=2023-06-18}} - ヒリゾ浜への渡船「殿羽根丸」の船長によるウェブサイト。</ref>
* [[富士箱根伊豆国立公園]]内に位置し、開発が制限されていること<ref name="朝日新聞2020-04-16">{{Cite news|和書 |title=光を閉じ込めたようなブルーの海 南伊豆町・ヒリゾ浜 |newspaper=[[朝日新聞デジタル]]マガジン&[and] |date=2020-04-16 |author=古関千恵子 |url=https://www.asahi.com/and/article/20200416/300237287/ |access-date=2023-10-11 |publisher=[[朝日新聞東京本社]] |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20231011135503/https://www.asahi.com/and/article/20200416/300237287/ |archive-date=2023年10月11日}}</ref>
* 人の立ち入り可能な時期・手段・人数が制限されていること<ref name="朝日新聞2020-04-16"/>
* 周囲に河川がないため、海に土砂が流入しないこと<ref name="朝日新聞2020-04-16"/>
* 周辺海域に島が点在し、[[海峡|海が狭い水路のようになっている]]こと<ref name="朝日新聞2020-04-16"/>

== 生態系 ==
[[ファイル:Underwater scenery of Hirizo Beach, in Minami-Izu, Shizuoka.jpg|300px|サムネイル|周辺海域ではソラスズメダイなど、様々な魚を見ることができる。]]
東伊豆と西伊豆の中間に位置し、双方に生息する生物が見られる<ref name="静岡新聞2000-10-12"/>。周辺海域には[[サンゴ礁]]も見られ<ref name="朝日新聞2009-07-09">『[[朝日新聞]]』2009年7月9日名古屋朝刊第一社会面27頁「渡船業者ら20人、2.5億円申告漏れ 南伊豆、組合で帳簿操作 国税指摘【名古屋】」([[朝日新聞名古屋本社]])</ref><ref>『読売新聞』2009年7月9日中部朝刊社会面33頁「渡船業者ら所得隠し2億円 南伊豆町の組合が過少明細書 名古屋国税指摘=中部」([[読売新聞中部支社]])</ref>、希少な[[エダサンゴ]]も群生している{{Efn2|2004年時点では沖合約30&nbsp;m地点にエダサンゴの一種であるエダミドリイシの群生域が確認されていた。同種は同年時点で、県内が生息域の北限近くとされていた<ref>『読売新聞』2004年12月5日東京朝刊静岡版36頁「南伊豆のエダサンゴ群生地 台風23号の波浪で大被害 再生に長い時間=静岡」(読売新聞東京本社・静岡支局)</ref>。}}<ref name="毎日新聞2008-07-19">『毎日新聞』2008年7月19日東京朝刊静岡地方版22頁「静岡の海:21日は海の日、魅力探る /静岡」(毎日新聞東京本社【望月和美】)</ref>。

黒潮の影響を受けるため、熱帯性の[[回遊#死滅回遊|季節回遊魚]]や大型の[[回遊|回遊魚]]も含め、多様な魚を見ることができる<ref name="紹介"/>。周辺海域では[[ソラスズメダイ]]、[[イワシ]]<ref name="毎日新聞2008-07-19"/>、[[ボラ]]、[[鯛|タイ]]、[[ウツボ]]<ref name="毎日新聞2022-08-23"/>、[[クマノミ]]、[[マンボウ]]、[[エイ]]<ref name="静岡新聞2016-07-18"/>、[[フグ]]、[[カワハギ]]、[[ウミウシ]]<ref name="東京新聞2002-06-20"/>などの生物が観察されており、2020年(令和2年)からは[[ナンヨウハギ]]の生息も確認されている<ref name="沼津経済新聞2022-07-01"/>。

== 観光地として ==
[[海開き]]は[[7月1日]]で、静岡県の海水浴場としては最も早い<ref name="沼津経済新聞2022-07-01"/>。ただし南伊豆町の条例で指定されている海水浴場は弓ヶ浜海水浴場と子浦海水浴場の2か所のみで{{Efn2|参照:南伊豆町海水浴場条例<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.town.minamiizu.shizuoka.jp/reiki/act/frame/frame110001268.htm |title=南伊豆町海水浴場条例 平成28年6月10日条例第30号 |access-date=2023-10-18 |publisher=南伊豆町 |date=2016-06-10 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20231018131219/https://www.town.minamiizu.shizuoka.jp/reiki/act/frame/frame110001268.htm |archive-date=2023-10-18 |url-status=live}}</ref>。}}、ヒリゾ浜は条例指定の海水浴場ではない<ref>『伊豆新聞』2023年6月27日下田版2頁「海水浴場開設 弓ケ浜22日、子浦23日―南伊豆」(伊豆新聞本社)</ref>。

2009年(平成21年)時点で周辺を含む一帯には年間約25,000人が訪れ<ref>『毎日新聞』2009年7月10日東京朝刊静岡地方版21頁「申告漏れ:南伊豆の渡船など20業者、7年間で2億5000万円 /静岡」(毎日新聞東京本社・静岡支局【山口知】)</ref>、2013年(平成25年)シーズンには3万人以上の観光客が<ref name="伊豆新聞2015-07-05"/>、2018年(平成30年)は夏の2か月間で約3万人が、それぞれヒリゾ浜を来訪した<ref name="静岡新聞2019-06-21">『静岡新聞』2019年6月21日朝刊21頁「ヒリゾ浜の事故防止 関係機関が対策検討 南伊豆」(静岡新聞社)</ref>。2022年(令和4年)夏には、[[関東地方]]を中心に静岡県外から多数の観光客がヒリゾ浜を来訪していることが報じられている<ref name="毎日新聞2022-08-23"/>。

夏季(毎年7月{{Efn2|2008年は6月20日から9月末まで<ref name="読売新聞2008-09-11"/>。}} - 9月末ごろ)にかけ、「ヒリゾ浜渡し組合」{{Efn2|2008年時点では「中木浜渡し組合」を名乗っていた<ref name="読売新聞2008-09-11"/>。}}により<ref>{{Cite web|和書|url=https://nakagi.jp/2017/06/24/hamawatashi/|title=ヒリゾ浜の紹介 |access-date=2023-06-18 |publisher=殿羽根丸 船長 |date=2017-06-24 |website=仲木へ行こうよ SNORKELING WORLD |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230618094018/https://nakagi.jp/2017/06/24/hamawatashi/ |archive-date=2023-06-18 |url-status=live |deadlinkdate=2023-06-18}} - ヒリゾ浜への渡船「殿羽根丸」の船長によるウェブサイト。</ref>、中木港から渡船(所要時間は約5分)が運航されているが<ref name="毎日新聞2022-08-23">『[[毎日新聞]]』2022年8月23日東京朝刊静岡地方版17頁「クリック!:秘境体験 /静岡」([[毎日新聞東京本社]])</ref>、オフシーズンは立入禁止になっている<ref name="沼津経済新聞2022-07-01"/><ref name="紹介"/>。渡船は中木地区の[[釣船|遊漁船]]8隻で<ref>『伊豆新聞』2011年8月11日伊東版2頁「透明度高く人気―南伊豆の秘境ヒリゾ浜」(伊豆新聞本社)</ref>、約2 - 5分間隔で中木港とヒリゾ浜を往復しており<ref name="古関千恵子2"/>、乗客に冒険気分を味わわせるための「演出」として、時速50&nbsp;[[キロメートル毎時|km/h]]の高速で運航している<ref name="静岡新聞2013-08-17"/>。繁盛期には1日500人の行楽客が訪れ、8隻の渡船が計100往復することもある<ref name="静岡新聞2016-07-18"/>。透明度の高い海水だけでなく、中木漁港から船で見渡す景観も人々を惹きつける魅力となっている<ref name="伊豆新聞2011-08-20">『伊豆新聞』2011年8月20日下田版1頁「記者コラム=多くの人を引き付けるヒリゾ」(伊豆新聞本社)</ref>。

ヒリゾ浜から約100&nbsp;m先には「あいあい岬」があるが、岬からヒリゾ浜まで泳いで渡ることは禁止されている<ref name="静岡新聞1997-07-26">『静岡新聞』1997年7月26日朝刊1頁「南伊豆の岩場の6人を救助 高波で海岸に戻れず(海難事故)」(静岡新聞社)</ref>。

海岸自体に店舗やトイレなどはなく、それらを利用する場合は渡船で中木港まで戻る必要がある<ref name="朝日新聞2020-04-16"/>。ブームを機に渡船の発着基地となる中木港に駐車場やトイレが整備され、シーズン中は水難事故防止のため、浜辺の監視小屋に渡組合員が常駐する<ref name="静岡新聞2016-07-18"/>。2018年までの10年間で水難事故が5件発生し、3人が死亡していることから、「ヒリゾ浜渡し組合」が[[ライフセービング|ライフセーバー]]の巡回、遊泳可能エリアを示すブイの増設、安全啓発の拡大などといった取り組みを行っている<ref>『伊豆新聞』2019年6月21日下田版1頁「死亡事故ゼロへ初連絡会 南伊豆・ヒリゾ浜6団体」(伊豆新聞本社)</ref>。同組合は2019年(令和元年)以降、水難事故対策を強化するためシーズン中にライフセーバーを常駐させ<ref name="静岡新聞2019-06-21"/>、監視員の増強、英語による注意喚起なども実施している<ref>『静岡新聞』2019年11月16日朝刊29頁「ヒリゾ浜渡し組合 啓発に功績で表彰 県水難防止対策協」(静岡新聞社)</ref>。

=== 歴史 ===
[[首都圏 (日本)|首都圏]]から1泊2日で行ける「秘境の浜」として[[1990年代]]から人気が高まり<ref name="静岡新聞2016-07-18"/>、遅くとも1991年(平成3年)ごろにはシュノーケリングスポットとして利用されていた<ref name="Rec 199107"/>。南伊豆町議会議員の加畑毅によれば、2022年から遡って27、8年前に自身の友人が海中散歩をメジャーにしたいと考えて趣味の範囲で整備し、自由に書き込みや写真の貼り付けができる掲示板を設置してPRした結果、多くの観光客が集まるようになったという<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.town.minamiizu.shizuoka.jp/docs/2022012000012/file_contents/R04-T03.pdf#page=46 |title=令和4年3月定例会 南伊豆町議会会議録 令和4年2月24日開会 令和4年3月17日閉会 |access-date=2023-10-18 |publisher=南伊豆町 |date=2022-02-24 |page=39 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20231017150059/https://www.town.minamiizu.shizuoka.jp/docs/2022012000012/file_contents/R04-T03.pdf#page=46 |archive-date=2023-10-18 |url-status=live}}</ref>。

1996年(平成8年)には、シーズン中の観光客輸送を手掛ける「ヒリゾ浜渡組合」が地元の漁師たちによって設立され<ref name="静岡新聞2016-07-18"/>、2002年(平成14年)ごろまでには伊豆一の海水透明度を誇る海岸、および磯遊びや[[シュノーケリング]]の穴場として人気を集めていた<ref name="東京新聞2002-06-20">『[[東京新聞]]』2002年6月20日朝刊情報3面27頁「ふるさとアラカルト ブクブク… だれでもできる海中散歩」([[中日新聞東京本社]])</ref>。2000年(平成12年)から少なくとも2004年(平成16年)までは、「中木マリンセンター」が南伊豆町観光協会の委託を受け<ref name="読売新聞2004-07-29">『読売新聞』2004年7月29日東京朝刊静岡県版第二地方面33頁「[ほのぼの@タウン]7月29日=静岡 タウンリポーターのコーナー 海中散歩体験が好評 中木マリンセンター 魚との触れ合い楽しく」(読売新聞東京本社・静岡支局 中川洋子)</ref>、ヒリゾ浜で<ref name="読売新聞2004-06-28"/>海中散歩体験を実施していた<ref name="読売新聞2004-07-29"/>。

古関千恵子によれば、ヒリゾ浜が[[インターネット]]を中心に絶景地として注目されるようになったのは、2015年(平成27年)時点から遡って約10年前からのことである<ref name="古関千恵子"/>。また『[[伊豆新聞]]』によれば、ヒリゾ浜は旅行雑誌による伊豆の秘境紹介によってブームが浸透した<ref name="伊豆新聞2011-08-20"/>。2008年(平成20年)夏までには「秘境の海岸」としてインターネットや情報誌などで取り上げられるようになっており<ref name="読売新聞2008-09-11">『[[読売新聞]]』2008年9月11日東京朝刊静岡県版第二地方面34頁「[ほのぼの@タウン]9月11日=静岡」([[読売新聞東京本社]]・静岡支局)</ref>、2013年(平成25年)7月時点では「[[下田市|下田]]周辺で最も元気な観光地の一つ」として<ref name="静岡新聞2013-08-17"/>、2017年(平成29年)時点では谷川浜{{Efn2|「谷川浜」は南伊豆町妻良にある海岸で、ヒリゾ浜と同じく渡船でしか行くことができない(所要時間は妻良港から約5分)<ref name="伊豆新聞2015-07-05">『伊豆新聞』2015年7月5日下田版1頁「“第二のヒリゾ”PR 誘客へ今夏、観光協本腰―南伊豆・谷川浜 自然、渡し船…同じ「秘境」」(伊豆新聞本社)</ref>。手つかずの自然に加え、夏には水深10&nbsp;mまで見渡せる海水の高い透明度から注目を集めているが、観光客はヒリゾ浜よりはるかに少なく(2015年時点で例年約2,000人程度)<ref name="伊豆新聞2015-07-05"/>、南伊豆町観光協会は2015年以降「第二のヒリゾ」としてPRに本腰を入れている<ref>『伊豆新聞』2016年7月22日下田版1頁「“第2のヒリゾ”谷川浜 高い透明度地元がアピール―南伊豆妻良」(伊豆新聞本社)</ref>。}}と並ぶ町内の「2大秘境」としてそれぞれ紹介されており、伊豆を代表する海水浴場である[[弓ヶ浜海水浴場|弓ヶ浜]]とともに<ref name="静岡新聞2017-04-22"/>、南伊豆町の主要な観光地となっている<ref name="静岡新聞2017-04-22">『静岡新聞』2017年4月22日朝刊19頁「魅力あるまちへ 南伊豆町町長選(下)=基幹産業の観光振興―新たな資源 回遊性期待」(静岡新聞社 下田支局・杉山諭)</ref><ref>『静岡新聞』2018年6月28日朝刊19頁「夏の海水浴前に事故防止を確認―南伊豆の対策協」(静岡新聞社)</ref><ref>『静岡新聞』2019年1月18日朝刊10頁「解説・主張 SHIZUOKA=南伊豆の石廊崎再開発 自然公園、4月開園 地域活性化の追い風に」(静岡新聞社 下田支局・杉山諭)</ref>。

== アクセス ==
2012年時点で[[伊東市|伊東]]からの所要時間は車や公共交通機関で約2時間と、アクセスは良くない<ref>『伊豆新聞』2012年9月7日伊東版3頁「記者コラム=ヒリゾ浜の取り組みに感銘」(伊豆新聞本社)</ref>。しかし[[東京]]からの車での所要時間は約4時間で、日帰りも可能である<ref name="朝日新聞2020-04-16"/>。

中木港までの所要時間は、[[沼津インターチェンジ|沼津IC]]([[東名高速道路]])から自動車で[[国道414号]]を経由して約2時間30分<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.jalan.net/kankou/spt_guide000000172519/map/ |title=【ヒリゾ浜】アクセス・営業時間・料金情報 |access-date=2023-10-11 |publisher=[[リクルートライフスタイル]] |website=[[じゃらん|じゃらんnet]] |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20231011143902/https://www.jalan.net/kankou/spt_guide000000172519/ |archive-date=2023-10-11}}</ref>。[[東海バス]]の「下田駅」バス停([[伊豆急下田駅]]に隣接)からヒリゾ浜の最寄り[[バス停留所|バス停]]である「中木」({{ウィキ座標|34.6156058753768|||N|138.82503747464702|||E||座標}})までの所要時間は約1時間で、夏季には伊豆急下田駅発「石廊崎オーシャンパーク」({{ウィキ座標|34.605330812702576|||N|138.8425513403391|||E||座標}})行きのバスに接続する形で「中木」行きの臨時便が運行される<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.tokaibus.jp/news_topics/news.php?id=186 |title=下田市・南伊豆町の海水浴場へのアクセスに便利な臨時バスを運行します - 新着情報 |access-date=2023-10-11 |publisher=[[東海バス]] |date=2022-07-20 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20220720015038/https://www.tokaibus.jp/news_topics/news.php?id=186 |archive-date=2022-07-20 |url-status=dead |deadlinkdate=2023-10-11}}</ref>。

== メディアでの紹介 ==
その雰囲気は[[タイ王国|タイ]]南部のリゾート地である[[ピーピー諸島|ピピ諸島]]に似ているとも評され、2020年(令和2年)には『[[じゃらん]]』がまとめた「「まるで海外」絶景ランキング」で第4位に選出されている<ref name="日本経済新聞2020-07-22">『[[日本経済新聞]]』2020年7月22日東京朝刊静岡版地方経済面6頁「伊豆のヒリゾ浜「まるで海外」4位」([[日本経済新聞東京本社]])</ref>。2018年に放送された『[[さまぁ〜ずの神ギ問|さまぁ~ずの神ギ問]]』([[フジテレビ系列]])では、日本各地の海を透明度を基準にランキング付けしているが、ヒリゾ浜は同番組で全国第6位([[本州]]では最高位)に選出されている<ref name="波奈美月"/>。

2017年(平成29年)時点では[[Google]]のコマーシャルで取り上げられている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.town.minamiizu.shizuoka.jp/docs/2021122800062/file_contents/H29-T03.pdf#page=14 |title=平成29年3月定例会 南伊豆町議会会議録 平成29年2月27日開会 平成29年3月16日閉会 |access-date=2023-10-18 |publisher=南伊豆町 |date=2017-02-27 |page=9 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20231017150459/https://www.town.minamiizu.shizuoka.jp/docs/2021122800062/file_contents/H29-T03.pdf#page=14 |archive-date=2023-10-18 |url-status=live}}</ref>。2019年に発売された[[あいみょん]]の新曲「[[ハルノヒ]]」のミュージックビデオには、[[東伊豆町]]の町営風力発電所、[[伊東市]]の美術館とともにヒリゾ浜が映っている<ref>『静岡新聞』2019年5月29日朝刊22頁「清流=大きな風車の価値」(静岡新聞社 下田支局・尾藤旭)</ref>。

== その他 ==
中木地区は、[[南海トラフ巨大地震]]([[東海地震]])発生時に5&nbsp;m超の[[津波]]に襲われることが想定されているが(2007年時点の想定)、ヒリゾ浜は三方を断崖に囲まれ、道路がないことから脱出方法が町の重要課題になっている<ref>『毎日新聞』2007年午前7月8日東京朝刊静岡地方版27頁「津波避難訓練:16市町沿岸で実施 8636人参加 /静岡」(毎日新聞東京本社【中村隆】)</ref>。また、付近は携帯電話が繋がりにくい<ref>『静岡新聞』2006年8月20日朝刊31頁「海で2人行方不明 水難事故が相次ぐ―浜松、南伊豆」(静岡新聞社)</ref>。

== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 関連項目 ==
* [[日本の海水浴場一覧]]

== 外部リンク ==
{{Commonscat|Hirizo Beach}}
* {{Cite web|和書|url=https://www.town.minamiizu.shizuoka.jp/docs/2013031201177/ |title=ヒリゾ海岸 |access-date=2023-10-18 |publisher=南伊豆町 |date=2002-02-19 |website=南伊豆町ホームページ |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20231017145526/https://www.town.minamiizu.shizuoka.jp/docs/2013031201177/ |archive-date=2023-10-18}}
* [http://www.nakagi.jp 仲木へ行こうよ] - ヒリゾ浜への渡船の1つである「殿羽根丸」船長が運営する、中木の観光情報などを紹介するウェブサイト。
** [http://www.nakagi.jp/hirizo/ ヒリゾ浜] - ヒリゾ浜の紹介。

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[[Category:南伊豆町の地理]]
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[[Category:日本の海岸景勝地]]
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[[Category:日本の海水浴場]]

2023年10月28日 (土) 07:18時点における版

崖上を走る道路から見たヒリゾ浜

ヒリゾ浜(ヒリゾはま)は、静岡県伊豆半島最南端にある海岸[1]賀茂郡南伊豆町の「中木漁港」(座標[注 1]石廊崎の中間に位置する海岸で[7]、行政区画上は南伊豆町中木[8]、もしくは同町入間に属する[9]

伊豆半島最南端の石廊崎から東方約2 kmに位置する[10]。陸路では入ることができず、普段は立入禁止となっているが、夏季には海水浴場として開放され、中木港とヒリゾ浜を結ぶ渡船が運航される[10]。国内屈指のシュノーケリングダイビングの好スポットとして知られ、夏季には大変混雑する[11]。「伊豆最後の秘境」とも呼ばれる[12]

名称

かつてはアーチ型の岩の中に夕日が沈む光景が見られたことから「日入り洞浜」と呼ばれており、それが転じて「ヒリゾ浜」と呼ばれるようになったとされている[13]。古関千恵子によれば、2015年時点で船着き場として用いられている場所の付近にはかつて洞窟があり、「日入り洞」「日入り堂」と呼ばれていたものが「ヒリド浜」となり、最終的に「ヒリゾ浜」という名称が浸透した[14]

ひりぞ浜海水浴場[15][16]ヒリゾ海岸[17][18]ヒリド浜[19][20][5][21]との表記も見られる。

地理

ヒリゾ浜周辺の空中写真。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。2013年8月11日撮影。

海岸の全長は約250 m[11]ないし約300 m[13]

ヒリゾ浜のある南伊豆町中木地区は、海底火山活動によって形成された奥石廊エリアに位置する[22]。ヒリゾ浜は切り立った崖に囲まれた小さな浜で[23]、海岸はゴロタ石で覆われている[13]。伊豆半島と陸続きではあるが[24]、波の侵食でできた断崖の真下にあり、陸路がないためでしか行くことができない[13]。周囲は駿河湾で、対岸の「大根島」[注 2]と呼ばれる島をはじめ、大小様々な島がある[9]。伊豆にはヒリゾ浜以外にも船で渡る海岸は存在するが、岬の突端に位置しながら浜の正面に島がそびえ、外洋と直接面さないような地形になっている海岸はヒリゾ浜だけだという[14]。海底の地形はドロップオフ(断崖)、白い砂地、岩礁など変化に富む[26]

海水の透明度が非常に高く、水面から水深5 m以上の海底まで明瞭に見渡せる場合がある[10]。その要因として、以下の理由が挙げられている[27]

生態系

周辺海域ではソラスズメダイなど、様々な魚を見ることができる。

東伊豆と西伊豆の中間に位置し、双方に生息する生物が見られる[21]。周辺海域にはサンゴ礁も見られ[1][28]、希少なエダサンゴも群生している[注 3][23]

黒潮の影響を受けるため、熱帯性の季節回遊魚や大型の回遊魚も含め、多様な魚を見ることができる[7]。周辺海域ではソラスズメダイイワシ[23]ボラタイウツボ[30]クマノミマンボウエイ[13]フグカワハギウミウシ[31]などの生物が観察されており、2020年(令和2年)からはナンヨウハギの生息も確認されている[10]

観光地として

海開き7月1日で、静岡県の海水浴場としては最も早い[10]。ただし南伊豆町の条例で指定されている海水浴場は弓ヶ浜海水浴場と子浦海水浴場の2か所のみで[注 4]、ヒリゾ浜は条例指定の海水浴場ではない[33]

2009年(平成21年)時点で周辺を含む一帯には年間約25,000人が訪れ[34]、2013年(平成25年)シーズンには3万人以上の観光客が[35]、2018年(平成30年)は夏の2か月間で約3万人が、それぞれヒリゾ浜を来訪した[36]。2022年(令和4年)夏には、関東地方を中心に静岡県外から多数の観光客がヒリゾ浜を来訪していることが報じられている[30]

夏季(毎年7月[注 5] - 9月末ごろ)にかけ、「ヒリゾ浜渡し組合」[注 6]により[38]、中木港から渡船(所要時間は約5分)が運航されているが[30]、オフシーズンは立入禁止になっている[10][7]。渡船は中木地区の遊漁船8隻で[39]、約2 - 5分間隔で中木港とヒリゾ浜を往復しており[26]、乗客に冒険気分を味わわせるための「演出」として、時速50 km/hの高速で運航している[6]。繁盛期には1日500人の行楽客が訪れ、8隻の渡船が計100往復することもある[13]。透明度の高い海水だけでなく、中木漁港から船で見渡す景観も人々を惹きつける魅力となっている[22]

ヒリゾ浜から約100 m先には「あいあい岬」があるが、岬からヒリゾ浜まで泳いで渡ることは禁止されている[17]

海岸自体に店舗やトイレなどはなく、それらを利用する場合は渡船で中木港まで戻る必要がある[27]。ブームを機に渡船の発着基地となる中木港に駐車場やトイレが整備され、シーズン中は水難事故防止のため、浜辺の監視小屋に渡組合員が常駐する[13]。2018年までの10年間で水難事故が5件発生し、3人が死亡していることから、「ヒリゾ浜渡し組合」がライフセーバーの巡回、遊泳可能エリアを示すブイの増設、安全啓発の拡大などといった取り組みを行っている[40]。同組合は2019年(令和元年)以降、水難事故対策を強化するためシーズン中にライフセーバーを常駐させ[36]、監視員の増強、英語による注意喚起なども実施している[41]

歴史

首都圏から1泊2日で行ける「秘境の浜」として1990年代から人気が高まり[13]、遅くとも1991年(平成3年)ごろにはシュノーケリングスポットとして利用されていた[19]。南伊豆町議会議員の加畑毅によれば、2022年から遡って27、8年前に自身の友人が海中散歩をメジャーにしたいと考えて趣味の範囲で整備し、自由に書き込みや写真の貼り付けができる掲示板を設置してPRした結果、多くの観光客が集まるようになったという[42]

1996年(平成8年)には、シーズン中の観光客輸送を手掛ける「ヒリゾ浜渡組合」が地元の漁師たちによって設立され[13]、2002年(平成14年)ごろまでには伊豆一の海水透明度を誇る海岸、および磯遊びやシュノーケリングの穴場として人気を集めていた[31]。2000年(平成12年)から少なくとも2004年(平成16年)までは、「中木マリンセンター」が南伊豆町観光協会の委託を受け[43]、ヒリゾ浜で[18]海中散歩体験を実施していた[43]

古関千恵子によれば、ヒリゾ浜がインターネットを中心に絶景地として注目されるようになったのは、2015年(平成27年)時点から遡って約10年前からのことである[14]。また『伊豆新聞』によれば、ヒリゾ浜は旅行雑誌による伊豆の秘境紹介によってブームが浸透した[22]。2008年(平成20年)夏までには「秘境の海岸」としてインターネットや情報誌などで取り上げられるようになっており[37]、2013年(平成25年)7月時点では「下田周辺で最も元気な観光地の一つ」として[6]、2017年(平成29年)時点では谷川浜[注 7]と並ぶ町内の「2大秘境」としてそれぞれ紹介されており、伊豆を代表する海水浴場である弓ヶ浜とともに[45]、南伊豆町の主要な観光地となっている[45][46][47]

アクセス

2012年時点で伊東からの所要時間は車や公共交通機関で約2時間と、アクセスは良くない[48]。しかし東京からの車での所要時間は約4時間で、日帰りも可能である[27]

中木港までの所要時間は、沼津IC東名高速道路)から自動車で国道414号を経由して約2時間30分[49]東海バスの「下田駅」バス停(伊豆急下田駅に隣接)からヒリゾ浜の最寄りバス停である「中木」(座標)までの所要時間は約1時間で、夏季には伊豆急下田駅発「石廊崎オーシャンパーク」(座標)行きのバスに接続する形で「中木」行きの臨時便が運行される[50]

メディアでの紹介

その雰囲気はタイ南部のリゾート地であるピピ諸島に似ているとも評され、2020年(令和2年)には『じゃらん』がまとめた「「まるで海外」絶景ランキング」で第4位に選出されている[24]。2018年に放送された『さまぁ~ずの神ギ問』(フジテレビ系列)では、日本各地の海を透明度を基準にランキング付けしているが、ヒリゾ浜は同番組で全国第6位(本州では最高位)に選出されている[11]

2017年(平成29年)時点ではGoogleのコマーシャルで取り上げられている[51]。2019年に発売されたあいみょんの新曲「ハルノヒ」のミュージックビデオには、東伊豆町の町営風力発電所、伊東市の美術館とともにヒリゾ浜が映っている[52]

その他

中木地区は、南海トラフ巨大地震東海地震)発生時に5 m超の津波に襲われることが想定されているが(2007年時点の想定)、ヒリゾ浜は三方を断崖に囲まれ、道路がないことから脱出方法が町の重要課題になっている[53]。また、付近は携帯電話が繋がりにくい[54]

脚注

注釈

  1. ^ 南伊豆町三坂地区には沿岸部に入間と中木の2集落があり[2]、「三坂漁港」と呼ばれる漁港も入間(中木より東方に゙位置する)と中木の2か所に分かれている[3][4]。中木は1996年時点で80世帯[5]、2013年8月時点で72世帯、人口184人の集落で、高齢化率は約41%と町内でも高い[6]。また同姓の住民が多いため、どの家も屋号を持っていた[5]イセエビ漁や潜水漁(漁対象はアワビサザエなどの貝類)、スクーバダイビングが盛んな集落で[3]、1996年時点では80世帯のうち40戸ほどが民宿やエビ網漁などの漁業で生計を立てていた[5]。同集落は1974年の伊豆半島沖地震で甚大な被害を受けた後、埠頭の前に3階建ての集合住宅が何棟か建てられ、1996年時点では草刈りや海水浴場の清掃などといった共同作業が義務付けられていた[5]
  2. ^ 石廊崎港からは「石廊崎岬めぐり」という船が出ており、そのコースのうちの1つは石廊崎の南を廻り、大根島の周りを一周して(途中でヒリゾ浜と大根島の間の海峡を経由して)石廊崎港に戻るという航路である[25]
  3. ^ 2004年時点では沖合約30 m地点にエダサンゴの一種であるエダミドリイシの群生域が確認されていた。同種は同年時点で、県内が生息域の北限近くとされていた[29]
  4. ^ 参照:南伊豆町海水浴場条例[32]
  5. ^ 2008年は6月20日から9月末まで[37]
  6. ^ 2008年時点では「中木浜渡し組合」を名乗っていた[37]
  7. ^ 「谷川浜」は南伊豆町妻良にある海岸で、ヒリゾ浜と同じく渡船でしか行くことができない(所要時間は妻良港から約5分)[35]。手つかずの自然に加え、夏には水深10 mまで見渡せる海水の高い透明度から注目を集めているが、観光客はヒリゾ浜よりはるかに少なく(2015年時点で例年約2,000人程度)[35]、南伊豆町観光協会は2015年以降「第二のヒリゾ」としてPRに本腰を入れている[44]

出典

  1. ^ a b 朝日新聞』2009年7月9日名古屋朝刊第一社会面27頁「渡船業者ら20人、2.5億円申告漏れ 南伊豆、組合で帳簿操作 国税指摘【名古屋】」(朝日新聞名古屋本社
  2. ^ 『静岡新聞』2017年3月14日朝刊21頁「三坂に防災センター完成―南伊豆・全地区で指定避難所」(静岡新聞社)
  3. ^ a b 『静岡新聞』2000年4月16日別刷1頁「ぶらり・しずおか港町=中木(南伊豆町) 箱庭のような地形、穏やかな湾」(静岡新聞社 文・杉山一彦/写真・望月康)
  4. ^ 『ゼンリン住宅地図 静岡県 南伊豆町 202309』2023年9月。「索引図」では、入間と中木の両集落にそれぞれ「三坂漁港」がある。1(E-3およびF-3)0頁…大字中木(F-2)に面して「三坂漁港」がある。18頁F-5…入間地区に面して「入間漁港 三坂漁港」がある。
  5. ^ a b c d e 『朝日新聞』1996年6月21日東京夕刊第2版科学面11頁「海のゆりかご 藻場 海浜のゴミ(東大海洋研究所助手 相生啓子)」(朝日新聞東京本社) - 『朝日新聞』縮刷版 1996年(平成8年)8月号1019頁。
  6. ^ a b c 『静岡新聞』2013年8月17日朝刊18頁「清流=“秘境”の観光誘客」(静岡新聞社 下田支局・坂本昌信)
  7. ^ a b c d ヒリゾ浜の紹介”. 仲木へ行こうよ SNORKELING WORLD. 殿羽根丸 船長 (2018年7月28日). 2023年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ2023年6月18日閲覧。 - ヒリゾ浜への渡船「殿羽根丸」の船長によるウェブサイト。
  8. ^ 『県別マップル22 静岡県道路地図』2021年8月1日5版1刷発行、昭文社、92頁「下田」C-5
  9. ^ a b 『ゼンリン住宅地図 静岡県 賀茂郡 南伊豆町 202109』ゼンリン、2021年9月発行、8頁F・G-2。ISBN 978-4432515776
  10. ^ a b c d e f 南伊豆・ヒリゾ浜で海開き 異例の「梅雨明け後」海開き」『沼津経済新聞』みんなの経済新聞ネットワーク、2022年7月1日。オリジナルの2023年6月18日時点におけるアーカイブ。2023年6月18日閲覧。
  11. ^ a b c 波奈美月 (2018年). “南伊豆「ヒリゾ浜」透明度に感動!船でしか行けない秘境浜が美しすぎる”. トラベルjp. ベンチャーリパブリック. 2023年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ2023年6月18日閲覧。
  12. ^ 『静岡新聞』2013年12月1日朝刊21頁「日本酒熟成へ海底に沈める―南伊豆で都内のバー」(静岡新聞社)
  13. ^ a b c d e f g h i 『静岡新聞』2016年7月18日朝刊7頁「ソノ仕事×コノ絶景(22)=渡主 ヒリゾ浜(南伊豆町)−青く輝く秘密基地 案内」(静岡新聞社 文・小林稔和、写真・宮崎隆男)
  14. ^ a b c 古関千恵子「まるで地中海の秘密のビーチみたい! 南伊豆の美しき至宝「ヒリゾ浜」へ」『文春オンライン文藝春秋、2015年8月29日、1面。オリジナルの2023年10月16日時点におけるアーカイブ。2023年10月16日閲覧。
  15. ^ 『読売新聞』2006年8月20日東京朝刊静岡版27頁「遊泳中に2人行方不明 南伊豆と浜松で相次ぐ=静岡」(読売新聞東京本社・静岡支局)
  16. ^ 『読売新聞』2006年8月21日東京朝刊静岡版31頁「水難事故相次ぐ 不明者は遺体で発見=静岡」(読売新聞東京本社・静岡支局)
  17. ^ a b 『静岡新聞』1997年7月26日朝刊1頁「南伊豆の岩場の6人を救助 高波で海岸に戻れず(海難事故)」(静岡新聞社)
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関連項目

外部リンク

  • ヒリゾ海岸”. 南伊豆町ホームページ. 南伊豆町 (2002年2月19日). 2023年10月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月18日閲覧。
  • 仲木へ行こうよ - ヒリゾ浜への渡船の1つである「殿羽根丸」船長が運営する、中木の観光情報などを紹介するウェブサイト。

座標: 北緯34度36分26.4秒 東経138度49分32.8秒 / 北緯34.607333度 東経138.825778度 / 34.607333; 138.825778