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「阪神5700系電車」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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{{鉄道車両
{{鉄道車両
|車両名=阪神5700系電車
|車両名=阪神5700系電車<br />(ジェット・シルバー5700)
|色=royalblue
|背景色=#6495ed
|文字色=#ffffff
|画像=Hanshin 5700 amagasaki.jpg
|画像=Hanshin-Series5700-5717.jpg
|画像説明=尼崎駅付近を営業運転中の5700系
|画像説明=[[香櫨園駅]]に進入する5700系<br>(2021年12月)
|両数=4両
|運用者=[[阪神電気鉄道]]
|起動加速度=4.0
|製造所=[[近畿車輛]]
|営業最高速度=91
|製造年=2015年 -
|設計最高速度=110
|製造数=13編成52両
|減速度(通常)=
|運用開始=2015年8月24日
|減速度(非常)=
|運用範囲=[[阪神本線|本線]]・[[阪神神戸高速線|神戸高速線]]
|座席=ロングシート
|編成=4両編成
|車両定員=先頭車140人<br />中間車150人
|軌間=1,435 mm([[標準軌]])
|編成定員=
|電気方式=[[直流電化|直流]]1,500[[ボルト (単位)|V]]<br />([[架空電車線方式]])
|全長=18,880 mm<br />5701形 18,980
|最高運転速度=91 km/h
|全幅=2,800
|設計最高速度=110 km/h
|起動加速度=4.0&nbsp;km/h/s
|減速度=4.5&nbsp;km/h/s
|車両定員=先頭車:140人<br />中間車:150人
|全長=先頭車:18,980mm<br />18,880 mm
|全幅=2,800 mm
|全高=
|全高=
|車体材質=[[ステンレス鋼]]
|車体=[[ステンレス鋼]]
|車両=
|重=
|台車=FS-581M, FS-581T
|編成重量=
|駆動方式=[[TD平行カルダン駆動方式]]
|軌間=1,435
|主電動機=[[永久磁石同期電動機|全閉自冷式永久磁石同期電動機]] (PMSM)<br/>東芝製 SEA-545
|電気方式=[[直流電化|直流]]1,500V<br />([[架空電車線方式]])
|主電動機出力=190 [[ワット|kW]]
|台車=[[新日鐵住金]] FS-581M, FS-581T
|歯車比=97:16 (6.06)
|駆動装置=[[TD平行カルダン駆動方式]]
|制御方式=[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]][[半導体素子|素子]][[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]<br/>東芝製 SVF102-E0
|電動機=全閉自冷式永久磁石同期電動機(PMSM)
|制動方式=MBSA [[回生ブレーキ|回生制動]]併用[[電気指令式ブレーキ|全電気指令式空気制動]]、[[抑速ブレーキ|抑速制動]]
(形式:SEA538A)
|編成出力=190kw×12=2280kw
|歯車比=81:14 (5.77)
|制御装置=[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]
|ブレーキ方式=MBSA [[回生ブレーキ|回生制動]]併用[[電気指令式ブレーキ|全電気指令式電磁直通空気制動]]、[[抑速ブレーキ|抑速制動]]
|保安装置=[[自動列車停止装置#AF軌道回路方式(連続照査型)|阪神・山陽・阪急形ATS]]
|保安装置=[[自動列車停止装置#AF軌道回路方式(連続照査型)|阪神・山陽・阪急形ATS]]
|備考=4in1×2群
|製造メーカー=[[近畿車輛]]
|備考全幅 = {{ブルーリボン賞 (鉄道)|59|2016}}
|備考=
}}
|MT比 = 4M0T
'''阪神5700系電車'''(はんしん5700けいでんしゃ)は、[[阪神電気鉄道]](阪神)が[[2015年]]に導入した[[各駅停車]]用の[[通勤形車両 (鉄道)|通勤形電車]]。「'''ジェット・シルバー5700'''」の愛称がある<ref>{{Cite web|和書|url=http://rail.hobidas.com/rmn/archives/2015/07/5700_1.html|title=【阪神】5700系試乗会開催|RMニュース|鉄道ホビダス|publisher=ネコ・パブリッシング|date=2015-07-28|accessdate=2016-03-18}}</ref>。
先頭車は0.5Mユニット方式。

実質3M1T}}
本記事では、編成表記を大阪梅田方先頭車の[[鉄道の車両番号|車両番号]]で代表する(例:5701F)。
'''阪神5700系電車'''(はんしん5700けいでんしゃ)は、[[阪神電気鉄道]]が所有する[[各駅停車]]用の[[通勤形車両 (鉄道)|通勤形電車]]。[[2015年]][[8月24日]]に営業運転を開始した。


== 概要 ==
== 概要 ==
旧型[[ジェットカー]]([[阪神5001形電車 (2代)|5001形]], [[阪神5131形・5331形電車|5131形・5331形]])と一部の[[阪神5500系電車|5500系]]([[阪神武庫川線|武庫川線]]へ転用)の置き換えを目的として登場した{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=90}}。[[2015年]][[8月24日]]に営業運転を開始した<ref>{{Cite web|和書|url=http://railf.jp/news/2015/08/25/180000.html |title=阪神5700系が営業運転を開始 |publisher=交友社 |date=2015-08-25 |accessdate=2016-06-25}}</ref>。
[[阪神1000系電車|1000系]]の増備が一段落し、[[阪神8000系電車|8000系]]のリニューアルが佳境に達したため、今度は旧型ジェットカーの[[阪神5001形電車 (2代)|
5001形]]、[[阪神5131形・5331形電車|5131形・5331形]]の置き換えが行われることになった。ベースは、阪神1000系になっている。


普通系車両として[[阪神5500系電車|5500系]]以来20年ぶりのフルモデルチェンジが行われた。形式としては[[2010年]]に[[阪神5550系電車|5550系]]が登場しており<ref name="rp201712増_p38">小松克祥「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2017年12月臨時増刊号、電気車研究会。38頁。</ref>、5700系はジェットカーとしては13形式目にあたる<ref>{{Cite journal |和書 |title=阪神電気鉄道5700系 ジェット・シルバー5700 |journal=鉄道ファン |publisher=[[交友社]] |year=2015 |month=10 |issue=654}}</ref>。
[[永久磁石同期電動機]](PMSM)を用いた[[VVVFインバータ制御]]を採用し、消費電力を5001形[[抵抗制御]]車と比べ50%、5500系と比べ33%削減している。電動機出力は阪神最大の190kwである。
[[File:Hanshin-5700.ogg|right|阪神5700系 走行音(新在家→石屋川)]]


車体は急行系の[[阪神1000系電車|1000系]]を基本とし、電装品は[[阪急阪神東宝グループ|グループ]]である[[阪急電鉄]]の[[阪急1000系電車 (2代)|1000系]]・[[阪急1300系電車 (2代)|1300系]]で採用された要素も取り入れ<ref>{{Cite web|和書|date=2015-06 |url=https://www.hankyu-hanshin.co.jp/corporate/about_us/newsletter/file/newsletter_06.pdf |title=阪急阪神ホールディングスグループ 都市交通事業の節電・省エネへのさまざまな取り組み |format=PDF |publisher=[[阪急阪神ホールディングス]] |accessdate=2016-07-09}}</ref><ref name="tr201601_p39">{{Harvnb|プレス・アイゼンバーン|2016|p=39}}.</ref>、「人と地球へのやさしさ」を追求し、サービス向上と新技術などの導入で環境負担の低減が図られている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=90}}。その一例として、車両に搭載されている全ての照明器具には[[発光ダイオード|LED]]が使用されている<ref name="pressrelease">{{Cite press release |和書 |url=http://www.hanshin.co.jp/company/press/pdf/20150330-5700kei.pdf |format=PDF |title=人と地球へのやさしさを追求した新型普通用車両5700系を導入します 〜普通用車両で20年振りの新型を今夏から導入〜 |author=阪神電気鉄道株式会社 |publisher=阪神電車 |date=2015-03-30 |accessdate=2015-12-09}}</ref>。
試作車として製造された阪神の[[阪神5101形・5201形電車|5201形]](5201,5202)以来、約半世紀ぶりにステンレス車体を採用した阪神初の量産型ジェットカーである。量産型と試作車の違いはあるが、「2代目ジェットシルバー」または「ジェットシルバー5700」と呼ばれている。


4両固定編成で、貫通扉を備えているが併結運転は行わない{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。本形式ではMc車を0.5M0.5T構成とした事で5550系と同様に3M1T相当の[[電動車]]比率かつ全電動車編成となった{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=90}}<ref name="railf">{{Cite journal|和書|month=10|year=2015|title=阪神「ジェット・カー」57年のあゆみ|journal=[[鉄道ファン (雑誌)| 鉄道ファン]]|issue=654|page=85|publisher=[[交友社]]}}</ref>。これにより回生電力の向上と乗り心地の改善が図られている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=90}}。
== 外装 ==
エクステリアデザインは、ステンレス車体に青 (カインドブルー) を配色し、ドア周りには青いアクセントを大きい丸で描いた。
前面のデザインは、[[阪神1000系電車|1000系]]の黄色の部分を青色にしたような感じになっている。


{{試聴
== 内装 ==
|filename = Hanshin-5700.ogg
インテリアデザインは、吊り革、座席、床など、[[大阪湾|摂津灘]]をイメージした水模様が施されている。
|title = 阪神5700系
|description = 阪神5700系 走行音(新在家駅 - 石屋川駅間)。
}}


[[2016年]]には[[鉄道友の会]]より[[ブルーリボン賞 (鉄道)|ブルーリボン賞]]([[第59回ブルーリボン賞 (鉄道)|第59回]])を阪神の車両として初受賞した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.jrc.gr.jp/award/bl/bl2016|title=2016年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両|publisher=鉄道友の会|date=2016-05-24|accessdate=2016-05-24}}</ref><ref>{{Cite press release|和書|title=普通用車両5700系(ジェット・シルバー5700)が、「ブルーリボン賞」を受賞!|publisher=阪神電車|date=2016-05-24|url=http://www.hanshin.co.jp/company/press/pdf/20160524-5700kei2.pdf|format=PDF|accessdate=2016-06-08|author=阪神電気鉄道株式会社}}</ref><ref>{{Cite press release|和書|title=阪神電気鉄道 5700系 ブルーリボン賞贈呈式を開催(2016. 10. 2)|publisher=鉄道友の会|date=2016-10-03|url=https://www.jrc.gr.jp/newsreleas/3526.htm|accessdate=2016-11-25}}</ref>。
急停車時や事故などに備えて枕木方向に吊り革が、座席間には握り棒が増設された他、扉上部には[[阪急1000系電車 (2代)|阪急1000系・1300系]]と同じハーフサイズ32インチの[[液晶ディスプレイ|LCD]]式[[車内案内表示装置]]が設置されている。


<gallery>
阪神電鉄の車両としては初めて、また日本の大手私鉄全体でも[[西武4000系電車|西武4000系]]に次いで2例目となる、[[西宮駅 (阪神)|西宮駅]]や[[御影駅 (阪神)|御影駅]]など長時間停車する駅での車内保温対策として、[[自動ドア#ボタン式半自動|半自動ドア]]ボタンを設置した。
ファイル:Hanshin 5701 Blue Ribbon Award at Daimotsu Station 20161009.jpg|5700系ブルーリボン賞受賞記念ラッピング列車<br>(2016年10月9日 [[大物駅]])
ファイル:Hanshin5700-blue-ribbon.jpg|運転台仕切に設置されたブルーリボン賞エンブレム
</gallery>


== 車両概説 ==
運転台は、5550系と同様に、[[鉄道車両のモニタ装置|モニター]]と[[マスター・コントローラー#縦横軸併用ツインレバー型マスコン|縦横軸併用マスコン]]を採用している。


=== 車体 ===
梅田寄り先頭車(5701号車)には短時間の乗車に対応して乗り降りしやすいように座面を高めた「ちょい乗りシート」が試験的に設置されている。
[[ファイル:阪神5700系5701F.jpg|サムネイル|5701Fのみ前照灯が異なる]]
[[レーザー溶接]]で組み立てられた[[オールステンレス車両|ステンレス]]無塗装構造で{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=90}}、構造・工法とも1000系と共通となっている<ref name="tr201601_p40">{{Harvnb|プレス・アイゼンバーン|2016|p=40}}.</ref>。[[プロトタイプ#鉄道車両|試作車]]として製造された[[阪神5101形・5201形電車|5201形]] (5201・5202) 以来、ジェットカーとしては約半世紀ぶりにステンレス車体を採用した{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。損傷時の修復を容易化するため、運転台部分は普通鋼製で塗装仕上げとなっている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=90}}。

前照灯周りは1000系と共通しているが、新色のカインドブルーを配している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。尾灯は車体下部に縦に設置されている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=90}}。前面ガラスは[[合わせガラス|熱線吸収強化合わせガラス]]が採用され、飛散防止中間膜の他新たに赤外線カット膜が追加されている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。側面窓は従来車より6ミリメートル厚い熱線吸収強化ガラスを採用し、巻き上げ式のフリーストップカーテンを設置する{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。

側面は、ドア周りに「一期一駅」のおもてなしの心と青い地球をシンボリックにイメージした青い大円のグラフィックを配している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。これはドアの位置を容易に把握しやすくさせるとともに普通用車両の「やさしさ」を表現している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。側面の行先表示器は関西の鉄道車両では初めて次駅表示に対応している<ref name="RJ400">{{Cite journal|和書|month=8|year=2015|title=阪神電気鉄道 普通用新型車両5700系の導入を開始|journal=鉄道ダイヤ情報|issue=400|pages=70 - 71|publisher=[[交通新聞社]]}}</ref>。

=== 内装 ===
インテリアデザインは、吊り革、座席、床など、[[大阪湾|摂津灘]]をイメージした水模様が施されている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。これは、車内でも一目で普通列車だと判るようにもなっている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。

全車両に[[優先席]]と車椅子・ベビーカースペースを設けており、これらのスペースを明確にするために優先席の表地や吊革は緑色となっている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。また、車椅子利用者に配慮して横手摺りと非常通話装置が設置されている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。座席は片持ち式のオールロングシートで、出入口付近のスペースを拡大するために座席数はこれまでの8席から7席に減少している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。衝突時の二次衝突の軽減効果を狙いそれぞれ2・3・2席単位で仕切られている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。出入口側には大型の袖仕切を設置している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。この仕切りは出入口側に向けて出っ張り、座席側が窪んでいる構造であり、立客の腰当てとなるほか着席する乗客の肘当てにもなる{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。第1編成の梅田方先頭車(5701号車)には短時間の乗車に対応して乗降しやすいように座面を30ミリメートル高めた「ちょい乗りシート」が試験的に設置されていた{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。これは第2編成(5703F)以降、本格採用され、第1編成でも4両全車に設置する改造を施した。

各袖仕切りには立客の姿勢保持のために[[スタンションポール]]が併設されている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。急停車時や事故などに備えて枕木方向に吊り手が、座席間には握り棒が増設された{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。背の低い乗客に配慮し、これまでより低い吊り手も設置している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。乗降扉は2001年以降の製造車両と同様に幅は1300ミリメートルとし、ガラスにはUVカットの[[複層ガラス]]が採用されている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。戸袋への吸い込み対策として、ブロック状のCR皮膜付きのスポンジゴムが取り付けられている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。また、扉の車内側には車内乗車位置表示板が貼られている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。扉上部には阪急1000系と同じ東芝製のハーフサイズ32インチ[[液晶ディスプレイ|LCD]]式[[車内案内表示装置]]が各車両3箇所千鳥設置されている<ref name="RJ400" />{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://ascii.jp/elem/000/000/995/995123/ |title=メトロや阪急に続いて! 阪神電鉄が消費電力半減の東芝製「全閉PMSM」と「VVVFインバータ」導入 |publisher=ASCII.jp |date=2015-04-01 |accessdate=2015-12-09}}</ref>。[[日本語]]・[[英語]]・[[中国語]]・[[朝鮮語|韓国語]]の4か国語で表示し、全画面で駅名を表示するほか、静止画・動画コンテンツと運行情報を分割しての2画面表示も行う{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。なお、静止画では停車駅に近づいた際、その駅にちなんだスポットの画像が表示される。

この他、[[ドアチャイム]]、扉開閉予告灯と[[盲導鈴|誘導鈴]]が設けられている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。安全性と視認性の向上のために車外のステップと車内の水切り部に黄色の識別帯を引いている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。また、車椅子の乗降をスムーズにするために、車椅子スペース付近のドアはタイヤの通行部分に合わせて下レールの一部が切り欠いている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。

[[エア・コンディショナー|空調装置]]は24.4キロワットのセミ集中式クーラーを1両につき2台搭載し、低騒音型のラインフローファンを併用し体感温度を下げることで冷房効果を向上させている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。暖房装置は各座席下に吊り下げられている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。空調の制御にはマイコン制御方式を採用し、外の天候や車両の状態を加味し、更に体感温度を考慮してきめ細かく制御される{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}。

長時間停車する駅での車内保温対策として、関西の[[大手私鉄]]では初めて各扉に[[自動ドア#ボタン式半自動|半自動ドア]]ボタンを設置している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。


<gallery>
<gallery>
File:Hanshin5700-button.jpg|半自動ドア開閉ボタン
ファイル:Hanshin5700-shanai.jpg|車内
File:Hanshin_5701_seat.jpg|座席(2人掛け座席はちょい乗りシート)
ファイル:Hanshin 5701 seat.jpg|座席(2人掛け座席はちょい乗りシート)
ファイル:Hanshin5700-button.jpg|半自動ドア開閉ボタン
File:Hanshin57-lcd.JPG|車内LCD
ファイル:Hanshin57-lcd koshien 2017-11.jpg|車内LCD。停車駅に近づいた際、その駅にちなんだスポットの画像が表示される(写真は甲子園駅のもの)。
File:Hanshin5700-shanai.jpg|車内
ファイル:IMG poster.JPG|扉上の路線図の下にある5700系のポスター
ファイル:HS5700 turikawa.jpg|alt=|優先座席付近の緑色のつり革
</gallery>
</gallery>


==== 乗務員室 ====
==台車・電装品==
運転台は、5550系と同様に[[鉄道車両のモニタ装置|モニター]](5550系よりはサイズが拡大されている)と[[マスター・コントローラー#縦横軸併用ツインレバー型マスコン|縦横軸併用マスコン]]を採用している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。増えつつある女性乗務員の操作性を考慮して一部のスイッチとブレーカーの位置が低くなり、手掛けや踏み台も設置された{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。放送装置はAVC付増幅方式の装置を搭載し、放送回路の切り替えモードに加えて車内外同時に放送可能とする機能と乗降促進放送機能が追加された{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。半自動ドア使用時や急ブレーキ使用時に自動放送が流れる{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。
台車は新日鐵住金製のモノリンク式ボルスタ付台車のFS-581M(電動台車用)・FS-581Tを装着する。1995年登場の5500系以来、普通系急行系共にモノリンク式ボルスタレス台車を装着していたので、阪神電車の車両としては20年振りのボルスタ付台車装着車である。主回路は騒音低減を目的として、東芝製の全閉自冷式永久磁石同期電動機(PMSM)を用いたVVVFインバータ制御装置を採用している。これはグループ会社である阪急の1000系車両のものを参考としている。
<gallery>
ファイル:Hanshin 5700 cab.JPG|運転台
</gallery>

=== 機器類 ===
台車は[[新日本製鐵|新日鐵住金]](現在は[[日本製鉄]])製<ref name="RJ400" />のモノリンク式ボルスタ付台車のFS-581M(電動台車)・FS-581T(付随台車)を装着する{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。1000系や1995年登場の5500系ではモノリンク式ボルスタレス台車を装着していたが、本形式ではボルスタ付台車に戻っている<ref name="railf" />。これは普通列車が待避線に入線する事が多い事と、ランニングコストを考慮しての判断によるものである{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}。

4両編成の神戸方先頭車が付随車となっていた5550系では、運転士より神戸方面行き列車を運転する際に後ろから押される違和感を覚えるとの意見もあった<ref name="dj201903_p19">「阪神電車“ジェットカー”大研究」『[[鉄道ダイヤ情報]]』2019年3月号(通巻419号)、[[交通新聞社]]。p.19。</ref>。5700系では同一の[[MT比]]ながら両先頭車の運転台側の台車が付随台車とされており、神戸方面行きと大阪方面行きの両方向の列車で同じ運転感覚となるよう改良がなされている<ref name="dj201903_p19" />。

騒音低減を目的として、[[主電動機]]には定格出力190キロワットの東芝製全閉自冷式[[永久磁石同期電動機]] (PMSM) を採用している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}<ref>{{Cite press release |和書 |url=https://www.toshiba.co.jp/about/press/2015_03/pr_j3104.htm |title=阪神電気鉄道 新型車両向け電気品受注について |publisher=東芝 |date=2015-03-31 |accessdate=2015-12-09}}</ref>。制御装置は[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]]素子を用いた2レベル方式の[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ]]制御装置である{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。これにより抵抗制御車の5001形に比べて約50パーセントほど消費電力を削減している<ref name="pressrelease" />。補助電源装置はスイッチング素子にハイブリッド[[炭化ケイ素|SiC]]インバータを用いた高効率の装置を両先頭車に搭載している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=91}}{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。出力が異なる装置を各車2台搭載し、1台停止してもサービス維持のために必要な電力を供給できるようM1車に受給電装置を設置している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。駆動装置は低騒音化を図った歯車と{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=92}}、風切音を低減した新形式の[[TD継手]]を採用している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。

ブレーキ装置は、MBSA形回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用している{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。常用ブレーキと非常ブレーキの他、直通予備ブレーキを搭載する{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。Mc-M車の2両を制御するブレーキ受信装置がM車に搭載されている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。常用ブレーキ時は1両単位でブレーキシリンダーの圧力を調整し、回生ブレーキ作動時はM台車のみでブレーキ力を負担するが、それだけで不足する場合は全台車均等に補足空気ブレーキが掛かるようになっている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=93}}。

== 形式 ==
列車はMc-M車の各2両のユニットで構成されている{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=90}}。車番は5500系同様、梅田方には奇数の連番、元町方には偶数の連番が付与される{{sfn|鉄道ジャーナル社|2015|p=90}}。

車種構成と搭載機器、諸元を示す{{Sfn|岡本|2015a|p=48}}。[[静止形インバータ|SIV]]は補助電源装置、VVVFは制御装置、CPは[[空気圧縮機]]、BTは蓄電池{{Sfn|岡本|2015a|p=44}}。

{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:80%; margin:1em 0em 2em 3em;"
|+
|-style="border-bottom:solid 3px #7B766A;"
!
|colspan="4"|{{列車方向|大阪|神戸}}
|-
!形式
!5701形
!5801形
!5801形
!5701形
|- style="border-bottom:solid 3px royalblue;"
!車種
|Mc1
|M1
|M2
|Mc2
|-
!搭載機器
|SIV, CP
|VVVF, BT
|VVVF, BT
|SIV, CP
|-
!自重
|34.0 t
|37.0 t
|37.0 t
|34.0 t
|- style="border-bottom:solid 3px #7B766A;"
!主電動機出力
|190 kW×2
|190 kW×4
|190 kW×4
|190 kW×2
|-
![[定員]](座席)
|124 (41)
|133 (45)
|133 (46)
|124 (41)
|}

<gallery widths="240px" heights="180px" perrow="4" caption="5700系">
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</gallery>

== 運用 ==
[[2015年]]に5701編成が落成し、同年8月より営業運転を開始した<ref name="RJ400" /><ref name="tr201601_p41">{{Harvnb|プレス・アイゼンバーン|2016|p=41}}.</ref>。運転開始当初は1日4往復の固定運用で、運転時刻もウェブサイトや乗降扉を手動扱いとする駅のホームに掲示されていた<ref>{{Cite web|和書|url=http://rail.hanshin.co.jp/car_5700/ |title=5700系車両の運行スケジュールについて |publisher=阪神電車 |accessdate=2015-12-09 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20150918215649/http://rail.hanshin.co.jp/car_5700/ |archivedate=2015-09-18}}</ref>。同年[[12月1日]]以降は日ごとに異なる運用となった<ref name="tr201601_p41" />が、[[2016年]]10月はブルーリボン賞受賞により土休日ダイヤに限り固定運用で営業運転を実施した<ref>{{Cite web|和書|url=http://rail.hanshin.co.jp/uploads/info/7cad9a45865e1da672684e6957f790c4764f9fc5.pdf |title=5700系の運行スケジュール(2016年10月 土休日ダイヤ)|format=PDF |accessdate=2016-12-21}}</ref>。

以降も増備が続いており<ref name="rf_201708 DATA">{{Cite journal |和書 |journal=鉄道ファン |title=大手私鉄車両ファイル2017 車両データバンク |publisher=交友社 |year=2017 |month=8 |issue=676}}</ref>、[[2019年]]12月には5711編成が<ref name="railf20200102">{{Cite news|url=https://railf.jp/news/2020/01/02/192000.html |title=阪神5700系5711編成が営業運転を開始|publisher=交友社|agency=鉄道ニュース|work=railf.jp|date=2020-01-02}}</ref>、[[2020年]]2月には5713編成が<ref>{{Cite news|url=https://railf.jp/news/2020/02/13/175000.html |title=阪神5700系5713編成が営業運転を開始|publisher=交友社|agency=鉄道ニュース|work=railf.jp|date=2020-02-13}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://rail.hanshin.co.jp/service/more/?mode=detail&more_no=73 |title=5700系車両の新造を進めています |publisher=[[阪神電気鉄道]] |date=2020-02-11 |accessdate=2020-02-11 }}</ref>、それぞれ運行を開始した。この2編成に限っては、5500系の[[武庫川線]]転用に伴う不足分として投入されている。2021年度以降は、引き続き、阪神最後の青胴車となる[[阪神5001形電車 (2代)|5001形]]の置き換えを目的とした増備が行われ、2024年4月現在では13編成52両が在籍している。


== 現状 ==
== その他 ==
*『[[ザ!鉄腕!DASH!!]]』([[日本テレビ放送網|日本テレビ]][[日本テレビネットワーク協議会|系]])の20周年記念企画として、初期に行われていた『電車リレー対決』の復刻版「TOKIOvs阪神電車 リレー対決」が[[2015年]][[11月8日]]に放送され、[[打出駅]]にて本系式と[[TOKIO]]の5人が50メートル×5人のリレー方式で250m競走を行った<ref name="ntv">{{Cite web|和書|url=https://www.ntv.co.jp/dash/tetsuwan_new/past/2015/1108/02/ |title=2015年11月8日 放送内容 20周年企画 TOKIOvs阪神電車 リレー対決 〜平均年齢41歳のTOKIOは勝てるのか!?〜 |publisher=[[日本テレビ放送網|日テレ]] |accessdate=2015-12-09}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.oricon.co.jp/news/2061607/full/ |title=TOKIO、阪神電車“ジェットカー”と17年ぶり対決 城島「グループの意地は出せた」 |publisher=ORICON STYLE |date=2015-10-31 |accessdate=2015-12-09}}</ref>。5500系を用いて行われた[[1998年]]以来、17年ぶりの対決となった<ref name="ntv" />。
2015年8月現在、4両×1編成の4両が在籍している。当面は1日4往復の運用としており、運転時刻はホームページや乗降扉を手動扱いとする駅のホームに掲示されている。
* [[尼崎競艇場]]においては、同車両の登場以降「阪神電車 ジェットシルバー5700杯」という冠レースが組まれている<ref>[https://www.boatrace.jp/owpc/pc/race/raceindex?jcd=13&hd=20230221 当該レース最終日出走表]BOAT RACEオフィシャルサイト 2023年2月21日</ref>
== 編成表 ==
2024年4月1日の編成を基本に記す<ref>「大手私鉄車両ファイル 車両配置表」『鉄道ファン』2024年8月号付録、交友社。</ref>。


== 編成 ==
{| class="wikitable" style="font-size:80%; text-align:center; margin:1em 0em 2em 3em;"
{| class="wikitable" style="font-size:80%; text-align:center; margin:1em 0em 2em 3em;"
|-
|-
|colspan="7"|{{TrainDirection|梅田|元町}}
|colspan="4"|{{列車方向|[[大阪梅田駅 (阪神)|大阪梅田]]|[[元町駅 (兵庫県)|元町]]・[[新開地駅|新開地]]}}
!竣工
|-style="background-color:royalblue; color:#fff;"
!注釈
|style="width:5.5em;"|'''5700'''<br /> (Mc1)
|- style="border-bottom:solid 3px royalblue;"
0.5M
|style="width:5.5em;"|'''5800'''<br /> (M1)
!style="width:4em;"|Mc1
|style="width:5.5em;"|'''5800'''<br /> (M2)
!style="width:4em;"|M1
|style="width:5.5em;"|'''5700'''<br /> (Mc2)
!style="width:4em;"|M2
!style="width:4em;"|Mc2
0.5M
!colspan="2"|
|-
|-
|5701||5801||5802||5702
|5701||5801||5802||5702
|2015年6月25日<ref>ジェー・アール・アール編『私鉄車両編成表 2016』交通新聞社、2016年、196頁。</ref>
|前照灯はコイト電工のPES式[[発光ダイオード|LED]]
|-
|5703||5803||5804||5704
|2017年3月21日<ref>ジェー・アール・アール編『私鉄車両編成表 2017』交通新聞社、2017年、195頁。</ref>
|
|-
|5705||5805||5806||5706
|2017年6月15日<ref name="私鉄編成2018_p195">ジェー・アール・アール編『私鉄車両編成表 2018』交通新聞社、2018年、195頁。</ref>
|
|-
|5707||5807||5808||5708
|2017年7月11日<ref name="私鉄編成2018_p195" />
|
|-
|5709||5809||5810||5710
|2019年3月22日<ref>「大手私鉄車両ファイル 車両データバンク」『鉄道ファン』2019年8月号付録、交友社。</ref>
|
|-
|5711||5811||5812||5712
|2019年12月19日<ref name=":0">「大手私鉄車両ファイル 車両配置表」『鉄道ファン』2020年8月号付録、交友社。</ref>
|
|-
|5713||5813||5814||5714
|2020年2月3日<ref name=":0" />
|
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|5715
|5815
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|2021年4月15日<ref name="私鉄車両編成表2022_p201">ジェー・アール・アール編『私鉄車両編成表 2022』交通新聞社、2022年、201頁。</ref>
|
|-
|5717
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|5818
|5718
|2021年6月7日<ref name="私鉄車両編成表2022_p201" />
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|-
|5719
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|5820
|5720
|2022年4月8日<ref name="私鉄車両編成表2023_p201">ジェー・アール・アール編『私鉄車両編成表 2023』交通新聞社、2023年、201頁。</ref>
|
|-
|5721
|5821
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|2022年5月13日<ref name="私鉄車両編成表2023_p201" />
|
|-
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|2023年11月16日<ref name="私鉄車両編成表2024">ジェー・アール・アール編『私鉄車両編成表 2024』交通新聞社、2024年、201頁</ref>
|
|-
|5725
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|5826
|5726
|2023年12月21日<ref name="私鉄車両編成表2024" />
|
|}
|}
梅田寄り、元町寄りの先頭車はそれぞれ0.5Mユニット方式。実質3M1T。


== 出典 ==
== テレビ番組での登場 ==
{{Reflist|2}}
『[[ザ!鉄腕!DASH!!]]』([[日本テレビ放送網|日本テレビ]]系)の20周年企画のコーナー「TOKIOvs阪神電車 リレー対決」で5700系と[[TOKIO]]の5人<ref>TOKIOは50m×5人のリレーであった。</ref>が[[打出駅]]で250m競争を行った。

== 参考文献 ==
* {{Cite journal |和書 |author=岡本正史 |date=2015-08 |title=5700系新型車両“ジェット・シルバー5700”の紹介 |journal=SUBWAY |number=通巻206号 |pages=44-48 |publisher=[[日本地下鉄協会]] |url=http://www.jametro.or.jp/upload/subway/hgOQmnRuFOfo.pdf |ref={{SfnRef|岡本|2015a}}}}
* {{Cite journal |和書 |author=岡本正史 |date=2015-09 |title=新車ガイド 阪神電気鉄道5700系 |journal=[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]] |number=653 |pages=58-62 |publisher=交友社 |ref={{SfnRef|岡本2015b}}}}
* {{Cite journal |和書 |date=2015-10 |title=阪神電気鉄道普通用車両5700系 ジェット・シルバー 5700 |journal=[[鉄道ジャーナル]] |issue=588 |pages=90-93 |publisher=鉄道ジャーナル社 |ref={{SfnRef|鉄道ジャーナル社|2015}}}}
* {{Cite journal |和書 |date=2016-01 |title=MODELERS FILE 阪神電鉄 5700系電車 |journal=[[とれいん (雑誌)|とれいん]] |number=通巻493号 |pages=39-45 |publisher=プレス・アイゼンバーン |ref={{SfnRef|プレス・アイゼンバーン|2016}}}}
* {{Cite journal |和書 |date=2017-04 |title=阪神電気鉄道株式会社5700系車両用電機品 |journal=東洋電機技報 |number=第135号 |publisher=[[東洋電機製造]] |url=https://www.toyodenki.co.jp/technical-report/pdf/giho135/s135-10.pdf |archive-url=https://web.archive.org/web/20230422040001/https://www.toyodenki.co.jp/technical-report/pdf/giho135/s135-10.pdf |archive-date=2023-04-22 |ref={{SfnRef|東洋電機製造|2017}}}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://www.hanshin.co.jp/company/press/pdf/20150330-5700kei.pdf#search='%E9%98%AA%E7%A5%9E5700%E7%B3%BB' 人と地球へのやさしさを追求した新型普通用車両5700系を導入します] - 阪神電気鉄道プレスリリース、2015年3月30日。
* [http://rail.hanshin.co.jp/car_5700/ 5700系車両の運行スケジュールについて] - 阪神電気鉄道ホームページ、2015年9月5日閲覧。
* [https://www.hankyu-hanshin.co.jp/corporate/about_us/newsletter/file/newsletter_06.pdf 阪急阪神ホールディングスグループ都市交通事業の節電・省エネへのさまざまな取り組み] - 阪急阪神ホールディングスグループホームページ、2015年11月7日閲覧。
{{Commonscat|Hanshin 5700 series}}
{{Commonscat|Hanshin 5700 series}}
* [http://rail.hanshin.co.jp/car_5700/ 5700系車両の運行スケジュールについて] - 阪神電気鉄道公式ウェブサイト、2015年9月5日閲覧。
* [http://rail.hanshin.co.jp/car/car_5700kei.html 車両のご案内 普通5700系] - 阪神電気鉄道公式ウェブサイト、2016年8月5日閲覧。
* [http://www.hanshin.co.jp/taisetsu/katsudou_9.html HANSHIN“たいせつ”活動 ジェット・シルバー5700] - 阪神電気鉄道公式ウェブサイト、2016年8月5日閲覧。
* [https://web.archive.org/web/20190901195618/http://rail.hobidas.com/blog/natori/archives/2015/06/15_22.html 編集長敬白:阪神5700系登場。 - 鉄道ホビダス]
* [[日本地下鉄協会]]『SUBWAY』2021年2月号{{PDFlink|[http://www.jametro.or.jp/upload/subway/fLSVhhnvtoFf.pdf 特集「快適な車内環境づくりの取り組み(その3)」「阪神電車における快適な車内環境づくり - 人に優しい車両設計 - 」]}}(pp.26 - 29掲載)

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2024年12月9日 (月) 11:40時点における最新版

阪神5700系電車
(ジェット・シルバー5700)
香櫨園駅に進入する5700系
(2021年12月)
基本情報
運用者 阪神電気鉄道
製造所 近畿車輛
製造年 2015年 -
製造数 13編成52両
運用開始 2015年8月24日
投入先 本線神戸高速線
主要諸元
編成 4両編成
軌間 1,435 mm(標準軌
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 91 km/h
設計最高速度 110 km/h
起動加速度 4.0 km/h/s
減速度 4.5 km/h/s
車両定員 先頭車:140人
中間車:150人
全長 先頭車:18,980mm
18,880 mm
全幅 2,800 mm
車体 ステンレス鋼
台車 FS-581M, FS-581T
主電動機 全閉自冷式永久磁石同期電動機 (PMSM)
東芝製 SEA-545
主電動機出力 190 kW
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
歯車比 97:16 (6.06)
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
東芝製 SVF102-E0
制動装置 MBSA 回生制動併用全電気指令式空気制動抑速制動
保安装置 阪神・山陽・阪急形ATS
備考 4in1×2群
第59回(2016年
テンプレートを表示

阪神5700系電車(はんしん5700けいでんしゃ)は、阪神電気鉄道(阪神)が2015年に導入した各駅停車用の通勤形電車。「ジェット・シルバー5700」の愛称がある[1]

本記事では、編成表記を大阪梅田方先頭車の車両番号で代表する(例:5701F)。

概要

[編集]

旧型ジェットカー(5001形, 5131形・5331形)と一部の5500系武庫川線へ転用)の置き換えを目的として登場した[2]2015年8月24日に営業運転を開始した[3]

普通系車両として5500系以来20年ぶりのフルモデルチェンジが行われた。形式としては2010年5550系が登場しており[4]、5700系はジェットカーとしては13形式目にあたる[5]

車体は急行系の1000系を基本とし、電装品はグループである阪急電鉄1000系1300系で採用された要素も取り入れ[6][7]、「人と地球へのやさしさ」を追求し、サービス向上と新技術などの導入で環境負担の低減が図られている[2]。その一例として、車両に搭載されている全ての照明器具にはLEDが使用されている[8]

4両固定編成で、貫通扉を備えているが併結運転は行わない[9]。本形式ではMc車を0.5M0.5T構成とした事で5550系と同様に3M1T相当の電動車比率かつ全電動車編成となった[2][10]。これにより回生電力の向上と乗り心地の改善が図られている[2]

2016年には鉄道友の会よりブルーリボン賞第59回)を阪神の車両として初受賞した[11][12][13]

車両概説

[編集]

車体

[編集]
5701Fのみ前照灯が異なる

レーザー溶接で組み立てられたステンレス無塗装構造で[2]、構造・工法とも1000系と共通となっている[14]試作車として製造された5201形 (5201・5202) 以来、ジェットカーとしては約半世紀ぶりにステンレス車体を採用した[9]。損傷時の修復を容易化するため、運転台部分は普通鋼製で塗装仕上げとなっている[2]

前照灯周りは1000系と共通しているが、新色のカインドブルーを配している[9]。尾灯は車体下部に縦に設置されている[2]。前面ガラスは熱線吸収強化合わせガラスが採用され、飛散防止中間膜の他新たに赤外線カット膜が追加されている[15]。側面窓は従来車より6ミリメートル厚い熱線吸収強化ガラスを採用し、巻き上げ式のフリーストップカーテンを設置する[9]

側面は、ドア周りに「一期一駅」のおもてなしの心と青い地球をシンボリックにイメージした青い大円のグラフィックを配している[9]。これはドアの位置を容易に把握しやすくさせるとともに普通用車両の「やさしさ」を表現している[9]。側面の行先表示器は関西の鉄道車両では初めて次駅表示に対応している[16]

内装

[編集]

インテリアデザインは、吊り革、座席、床など、摂津灘をイメージした水模様が施されている[9]。これは、車内でも一目で普通列車だと判るようにもなっている[9]

全車両に優先席と車椅子・ベビーカースペースを設けており、これらのスペースを明確にするために優先席の表地や吊革は緑色となっている[15]。また、車椅子利用者に配慮して横手摺りと非常通話装置が設置されている[15]。座席は片持ち式のオールロングシートで、出入口付近のスペースを拡大するために座席数はこれまでの8席から7席に減少している[9]。衝突時の二次衝突の軽減効果を狙いそれぞれ2・3・2席単位で仕切られている[9]。出入口側には大型の袖仕切を設置している[9]。この仕切りは出入口側に向けて出っ張り、座席側が窪んでいる構造であり、立客の腰当てとなるほか着席する乗客の肘当てにもなる[9]。第1編成の梅田方先頭車(5701号車)には短時間の乗車に対応して乗降しやすいように座面を30ミリメートル高めた「ちょい乗りシート」が試験的に設置されていた[9]。これは第2編成(5703F)以降、本格採用され、第1編成でも4両全車に設置する改造を施した。

各袖仕切りには立客の姿勢保持のためにスタンションポールが併設されている[9]。急停車時や事故などに備えて枕木方向に吊り手が、座席間には握り棒が増設された[9]。背の低い乗客に配慮し、これまでより低い吊り手も設置している[9]。乗降扉は2001年以降の製造車両と同様に幅は1300ミリメートルとし、ガラスにはUVカットの複層ガラスが採用されている[15]。戸袋への吸い込み対策として、ブロック状のCR皮膜付きのスポンジゴムが取り付けられている[15]。また、扉の車内側には車内乗車位置表示板が貼られている[15]。扉上部には阪急1000系と同じ東芝製のハーフサイズ32インチLCD車内案内表示装置が各車両3箇所千鳥設置されている[16][17][18]日本語英語中国語韓国語の4か国語で表示し、全画面で駅名を表示するほか、静止画・動画コンテンツと運行情報を分割しての2画面表示も行う[17]。なお、静止画では停車駅に近づいた際、その駅にちなんだスポットの画像が表示される。

この他、ドアチャイム、扉開閉予告灯と誘導鈴が設けられている[15]。安全性と視認性の向上のために車外のステップと車内の水切り部に黄色の識別帯を引いている[15]。また、車椅子の乗降をスムーズにするために、車椅子スペース付近のドアはタイヤの通行部分に合わせて下レールの一部が切り欠いている[15]

空調装置は24.4キロワットのセミ集中式クーラーを1両につき2台搭載し、低騒音型のラインフローファンを併用し体感温度を下げることで冷房効果を向上させている[17]。暖房装置は各座席下に吊り下げられている[17]。空調の制御にはマイコン制御方式を採用し、外の天候や車両の状態を加味し、更に体感温度を考慮してきめ細かく制御される[9]

長時間停車する駅での車内保温対策として、関西の大手私鉄では初めて各扉に半自動ドアボタンを設置している[15]

乗務員室

[編集]

運転台は、5550系と同様にモニター(5550系よりはサイズが拡大されている)と縦横軸併用マスコンを採用している[17]。増えつつある女性乗務員の操作性を考慮して一部のスイッチとブレーカーの位置が低くなり、手掛けや踏み台も設置された[15]。放送装置はAVC付増幅方式の装置を搭載し、放送回路の切り替えモードに加えて車内外同時に放送可能とする機能と乗降促進放送機能が追加された[17]。半自動ドア使用時や急ブレーキ使用時に自動放送が流れる[17]

機器類

[編集]

台車は新日鐵住金(現在は日本製鉄)製[16]のモノリンク式ボルスタ付台車のFS-581M(電動台車)・FS-581T(付随台車)を装着する[15]。1000系や1995年登場の5500系ではモノリンク式ボルスタレス台車を装着していたが、本形式ではボルスタ付台車に戻っている[10]。これは普通列車が待避線に入線する事が多い事と、ランニングコストを考慮しての判断によるものである[15]

4両編成の神戸方先頭車が付随車となっていた5550系では、運転士より神戸方面行き列車を運転する際に後ろから押される違和感を覚えるとの意見もあった[19]。5700系では同一のMT比ながら両先頭車の運転台側の台車が付随台車とされており、神戸方面行きと大阪方面行きの両方向の列車で同じ運転感覚となるよう改良がなされている[19]

騒音低減を目的として、主電動機には定格出力190キロワットの東芝製全閉自冷式永久磁石同期電動機 (PMSM) を採用している[17][20]。制御装置はIGBT素子を用いた2レベル方式のVVVFインバータ制御装置である[17]。これにより抵抗制御車の5001形に比べて約50パーセントほど消費電力を削減している[8]。補助電源装置はスイッチング素子にハイブリッドSiCインバータを用いた高効率の装置を両先頭車に搭載している[9][17]。出力が異なる装置を各車2台搭載し、1台停止してもサービス維持のために必要な電力を供給できるようM1車に受給電装置を設置している[17]。駆動装置は低騒音化を図った歯車と[15]、風切音を低減した新形式のTD継手を採用している[17]

ブレーキ装置は、MBSA形回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用している[17]。常用ブレーキと非常ブレーキの他、直通予備ブレーキを搭載する[17]。Mc-M車の2両を制御するブレーキ受信装置がM車に搭載されている[17]。常用ブレーキ時は1両単位でブレーキシリンダーの圧力を調整し、回生ブレーキ作動時はM台車のみでブレーキ力を負担するが、それだけで不足する場合は全台車均等に補足空気ブレーキが掛かるようになっている[17]

形式

[編集]

列車はMc-M車の各2両のユニットで構成されている[2]。車番は5500系同様、梅田方には奇数の連番、元町方には偶数の連番が付与される[2]

車種構成と搭載機器、諸元を示す[21]SIVは補助電源装置、VVVFは制御装置、CPは空気圧縮機、BTは蓄電池[22]

← 大阪
神戸 →
形式 5701形 5801形 5801形 5701形
車種 Mc1 M1 M2 Mc2
搭載機器 SIV, CP VVVF, BT VVVF, BT SIV, CP
自重 34.0 t 37.0 t 37.0 t 34.0 t
主電動機出力 190 kW×2 190 kW×4 190 kW×4 190 kW×2
定員(座席) 124 (41) 133 (45) 133 (46) 124 (41)

運用

[編集]

2015年に5701編成が落成し、同年8月より営業運転を開始した[16][23]。運転開始当初は1日4往復の固定運用で、運転時刻もウェブサイトや乗降扉を手動扱いとする駅のホームに掲示されていた[24]。同年12月1日以降は日ごとに異なる運用となった[23]が、2016年10月はブルーリボン賞受賞により土休日ダイヤに限り固定運用で営業運転を実施した[25]

以降も増備が続いており[26]2019年12月には5711編成が[27]2020年2月には5713編成が[28][29]、それぞれ運行を開始した。この2編成に限っては、5500系の武庫川線転用に伴う不足分として投入されている。2021年度以降は、引き続き、阪神最後の青胴車となる5001形の置き換えを目的とした増備が行われ、2024年4月現在では13編成52両が在籍している。

その他

[編集]
  • ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)の20周年記念企画として、初期に行われていた『電車リレー対決』の復刻版「TOKIOvs阪神電車 リレー対決」が2015年11月8日に放送され、打出駅にて本系式とTOKIOの5人が50メートル×5人のリレー方式で250m競走を行った[30][31]。5500系を用いて行われた1998年以来、17年ぶりの対決となった[30]
  • 尼崎競艇場においては、同車両の登場以降「阪神電車 ジェットシルバー5700杯」という冠レースが組まれている[32]

編成表

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2024年4月1日の編成を基本に記す[33]

竣工 注釈
Mc1 M1 M2 Mc2
5701 5801 5802 5702 2015年6月25日[34] 前照灯はコイト電工のPES式LED
5703 5803 5804 5704 2017年3月21日[35]
5705 5805 5806 5706 2017年6月15日[36]
5707 5807 5808 5708 2017年7月11日[36]
5709 5809 5810 5710 2019年3月22日[37]
5711 5811 5812 5712 2019年12月19日[38]
5713 5813 5814 5714 2020年2月3日[38]
5715 5815 5816 5716 2021年4月15日[39]
5717 5817 5818 5718 2021年6月7日[39]
5719 5819 5820 5720 2022年4月8日[40]
5721 5821 5822 5722 2022年5月13日[40]
5723 5823 5824 5724 2023年11月16日[41]
5725 5825 5826 5726 2023年12月21日[41]

出典

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参考文献

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外部リンク

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