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阪神5550系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


阪神5550系電車
5550系電車
(2021年12月 香櫨園駅
基本情報
運用者 阪神電気鉄道
製造所 車体:アルナ車両
艤装:阪神車両メンテナンス
製造年 2010年
製造数 1編成4両
運用開始 2010年12月29日
投入先 本線神戸高速線
主要諸元
編成 4両編成 (3M1T)
軌間 1,435 mm(標準軌
電気方式 直流 1,500V
架空電車線方式
設計最高速度 110 km/h
起動加速度 4.0 km/h/s
減速度 4.5 km/h/s
全長 先頭車:18,980 mm
中間車:18,880 mm
全幅 2,800 mm
車体 普通鋼
台車 SS171M・SS171T
主電動機 東洋電機製造 TDK-6147-A
主電動機出力 170 kW × 4
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
歯車比 97:16 (6.06)
制御方式 VVVFインバータ制御IGBT
制御装置 三菱電機 MAP-174-15V163B (1C4M)
制動装置 MBSA 回生制動併用全電気指令式電磁直通制動
保安装置 阪神・山陽・阪急形ATS
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阪神5550系電車(はんしん5550けいでんしゃ)は、阪神電気鉄道(阪神)が2010年普通系車両(ジェットカー)として導入した電車である。1編成4両のみ制作された[1]

概要

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阪神車両メンテナンスとアルナ車両の銘板

阪神最後の運行標識板使用車であった5311形5313・5314の老朽代替車として、2000年まで製造されていた5500系の設計をベースに、2006年に登場した急行用車両の1000系に準ずる装備としたマイナーチェンジ車である[2]。この経緯から形式は5500系から下2桁を50番台として5550系となった[3]

投入は2010年に1編成4両が製造されたのみで終了し[4][5]、以降の旧型ジェットカー置き換えは5700系に移行している。

日本の大手私鉄の通勤車の形式としては、最後に登場した普通鋼製車体の形式である[注 1]

製造

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5000系は阪神子会社の武庫川車両工業が製造を担当していたが、製造終了後の2002年にメンテナンス業務のみを阪神車両メンテナンスに承継して解散していた。

このため、設計自体は阪神車両メンテナンスが行ったが、車体制作そのものは同じく阪急阪神ホールディングスグループ企業で、普通鋼車体の製造ノウハウを持つアルナ車両が制作し[注 2]艤装を阪神車両メンテナンスが行った[6]。車内には2社の銘板が設置されている[4]

構造

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可能な限り5500系・1000系との共通設計とすることで、設計製作期間の短縮とイニシャルコストの抑制が図られた[7]

編成構成

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5500系同様、2両ユニット2組による4両固定編成を組成する[8]。従来のジェットカーは全電動車であったが、1000系との機器共通化で主電動機の出力が向上したため(後述)、神戸方ユニットの先頭車(5562形5562号[9])が制御付随車となった[4][10][1]

この5562形5562号はジェットカーで初の付随車となったが、登場後に運転士より神戸方面行き列車で後ろから押される違和感を感じるとの意見もあり[11]、後継の5700系では編成構成が見直され[注 3]、現状登場以来唯一の完全な付随車となっている[4][10][1]

在来車との併結運用は行われないが、試運転などで5500系との併結が可能なよう、ジャンパ連結器や引き通し回路などの艤装は共通化されている[3]。M1車とM2車の間には車庫構内運転用の簡易運転台が設けられ[3]、従来車と同様に工場入場時は2両単位で分割される[9]


編成各車の諸元、車両番号の一例を記す[8][13]

方向
← 大阪梅田
神戸三宮 →
形式 5551形 5651形 5651形 5562形
車種 Mc M1 M2 Tc
車両番号 5551 5651 5652 5562
自重 35.5 t 35.0 t 35.0 t 29.0 t
定員(座席) 124 (46) 133 (50) 133 (50) 124 (46)
搭載機器 VVVF, CP VVVF, SIV VVVF, SIV CP

車体

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5500系に準じた片側3扉車体である。構体は普通鋼製であるが、屋根板および客用扉の戸袋部下部の外板はステンレス鋼が採用された[14]。塗装も5500系(登場時)と同じ「アレグロブルー」と「シルキーグレイ」である[10][注 4]。床面高さは5500系以降の標準となった1,130mm[14]であるが、客用扉の幅は5500系の1,400mmから1,300mmに変更された[5]

種別・行先表示器も、5500系の字幕式からLED式に変更された[4]。種別表示がフルカラーLED、行先表示が白色LEDとなっている[5]。設定器には区間急行・準急の表示も用意されている[5]

車内は青色を基調としており、普通列車と認識できるよう配慮されている[10]。座席はロングシートであり、バケットシートが採用された[16]

登場時より全車に車椅子スペースが設置されており、開閉扉上部には扉開閉予告灯と盲導鈴も新設された[5]。天井周りも1000系に準じ、蛍光灯カバーが省略されている[10]車内案内表示装置はLEDによるフリーパターン式となった[5]

乗務員室の構成は5500系とほぼ共通であるが、運転台の主幹制御器がデッドマン装置付きとなったほか、運転台パネルにモニタ装置の情報表示器が設置されている[4]

5550系(左)と5500系(右)の前面比較。種別・行先表示器等に差異が見られる。

主要機器

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機器類は1000系と共通のものが採用されている。

主電動機は1000系と共通の三相かご形誘導電動機の東洋電機製造TDK-6147-Aを採用、1基あたりの出力は5500系の110kWから170kWに向上した[16]。制御方式はVVVFインバータ制御で、制御装置は高耐圧IPMIGBT素子を組み込んだ三菱電機製MAP-174-15V163Bを各電動車に搭載し、1基の制御装置で4個の主電動機を制御する1C4M方式となっている[4]。急行用の1000系とは加減速性能が異なるため、ソフトウェアによるパターン電流の変更により対応された[16]

最高速度は110km/h[17]、加減速度は5500系と同じく起動加速度4.0km/h/s、減速度4.5km/h/sである[9]

台車は住友金属工業(現・日本製鉄)製のモノリンク式ボルスタレス台車で、1000系と同様に電動車はSS171M、制御付随車はSS171Tをそれぞれ装着する[4]歯車比も1000系と同一の97:16 (6.06)[4]、駆動方式はTD平行カルダン駆動方式を採用している[16]

補助電源装置は出力150kVAの静止形インバータ(IGBT素子)で、東芝製INV146-L0[4]を中間電動車各車に搭載する。電動空気圧縮機は交流コンプレッサのC-2000-MLを両先頭車にそれぞれ搭載する[4]

パンタグラフはシングルアーム式のPT7160-Aを採用し、電動車5551形・5651形各車の神戸方に搭載する[5]。車体側は従来の下枠交差式パンタグラフの搭載にも対応した構造となっている[8]

編成先頭部の連結器は当初より廻り子式の密着連結器であり、貫通路下部には当初より切り欠きが存在する[4]

運用

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2010年8月5日には尼崎駅 - 石屋川駅間で試運転を実施、5550系で初の日中走行となった[18]。その後しばらくの間尼崎駅西側に留置されていたが、同年12月29日より営業運転を開始した[19]。運用開始後は他の普通用車両と区別なく運用されている[5]

編成表

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2022年2月1日現在[20]

← 大阪梅田
元町,新開地 →
製造所 竣工 備考
Mc M1 M2 Tc
5551 5651 5652 5562 阪神車両メンテナンス[21] 2010年8月5日[22][21] 前照灯LED化

脚注

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注釈

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  1. ^ 通勤車両以外では近畿日本鉄道名古屋鉄道特急形車両に普通鋼製車体を採用している例がある。
  2. ^ アルナ車両は前身のアルナ工機時代に阪急電鉄をはじめとする鉄道車両の制作実績があったが、発足後は一部の阪急電鉄車両の艤装を担当したのみで軌道線向け車両の製造が主であり、現状構体を制作した唯一の鉄道線車両である。
  3. ^ 5700系では両先頭車を0.5M方式として、同様のMT比3:1を実現している[12][11]
  4. ^ 5500系は2017年から2022年まで行われたリニューアル工事により塗装が変更されたが、車齢の浅い5550系は工事の対象から外れているため、従前の塗装である[15]

出典

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  1. ^ a b c 来住憲司「阪神『ジェット・カー』57年のあゆみ」『鉄道ファン』2015年10月号、交友社。85頁。
  2. ^ 「みなさまの足阪神電車」『ホッと!HANSHIN』2010年4月号。
  3. ^ a b c 小松克祥「阪神電気鉄道5550系」『鉄道ピクトリアル』2011年2月号、98頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 木下和弘「阪神電気鉄道 現有車両プロフィール2017」『鉄道ピクトリアル』2017年12月臨時増刊号、224頁。
  5. ^ a b c d e f g h 木下和弘「阪神電気鉄道 現有車両プロフィール2017」『鉄道ピクトリアル』2017年12月臨時増刊号、225頁。
  6. ^ 小松克祥「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2017年12月臨時増刊号、電気車研究会。38頁。
  7. ^ 小松克祥「阪神電気鉄道5550系」『鉄道ピクトリアル』2011年2月号、97頁。
  8. ^ a b c 小松克祥「阪神電気鉄道5550系」『鉄道ピクトリアル』2011年2月、101頁。 
  9. ^ a b c 木下和弘「阪神電気鉄道 現有車両プロフィール2017」『鉄道ピクトリアル』2017年12月臨時増刊号、226頁。 
  10. ^ a b c d e “新ジェットカー誕生と消える運行標識板。”. 編集長敬白(鉄道ホビダス). (2010年9月30日). https://web.archive.org/web/20190901195618/http://rail.hobidas.com/blog/natori/archives/2010/09/30.html (インターネットアーカイブ)
  11. ^ a b 「阪神電車“ジェットカー”大研究」『鉄道ダイヤ情報』2019年3月号(通巻419号)、交通新聞社。p.19。
  12. ^ “阪神5700系登場。”. 編集長敬白(鉄道ホビダス). (2015年6月15日). https://web.archive.org/web/20190901195618/http://rail.hobidas.com/blog/natori/archives/2015/06/15_22.html (インターネットアーカイブ)
  13. ^ 「阪神電気鉄道 現有車両諸元表」『鉄道ピクトリアル』、電気車研究会、2017年12月臨時増刊号、284-285頁。 
  14. ^ a b 小松克祥「阪神電気鉄道5550系」『鉄道ピクトリアル』2011年2月号、99頁。
  15. ^ 阪神電気鉄道5500系リニューアル、「リノベーション車両」5/2営業運転開始”. マイナビニュース (2017年4月27日). 2019年11月22日閲覧。
  16. ^ a b c d 小松克祥「阪神電気鉄道5550系」『鉄道ピクトリアル』2011年2月、100頁。 
  17. ^ ハンドブック阪神 2018” (PDF). 阪神電気鉄道. p. 27-29. 2019年11月22日閲覧。
  18. ^ “阪神5550系が日中試運転”. 交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース. (2010年8月6日). http://railf.jp/news/2010/08/06/113900.html 
  19. ^ “阪神5550系が営業運転を開始”. 交友社鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース. (2010年12月31日). http://railf.jp/news/2010/12/31/150300.html 
  20. ^ 「大手私鉄車両ファイル2017 車両配置表」『鉄道ファン』、交友社、2017年8月。 
  21. ^ a b 「阪神電気鉄道 現有車両履歴表」『鉄道ピクトリアル』2017年12月臨時増刊号、電気車研究会。292-293頁。
  22. ^ ジェー・アール・アール編『私鉄車両編成表 2011』交通新聞社、2011年、184頁。

参考文献

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  • 小松克祥「New model 阪神電気鉄道5550系」『鉄道ピクトリアル』2011年2月号・通巻844号、電気車研究会。97-101頁。
  • 木下和弘「阪神電気鉄道 現有車両プロフィール2017」『鉄道ピクトリアル』2017年12月臨時増刊号・通巻940号(特集: 阪神電気鉄道)、電気車研究会。211-282頁。

外部リンク

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