艤装
艤装(ぎそう、英語: rigging、outfitting)とは、船舶・自動車・鉄道車両・航空機などの製造過程のうち、原動機や室内外の各種装備を、船体(船殻)や車体や機体に取り付ける工程を指す。またその工程で取り付けられるもののこと。
造船
[編集]造船における艤装とは、船を機能させるために必要な装置や設備を取り付ける作業を指す[1]。船体をおおまかに完成させ進水を終えた後に行われることが一般的である。
例えば大型客船では、主機関の取り付けや船室の様々な工事、等々を指す。 また艤装が終わったことを「竣工」という。
- セーリングクルーザーでは、クリート・ブロック(=滑車)・セイル・シート(=ロープ)・(コンパスなどの)航法装置、等々をとりつけることや、船内のこまごました工事を行うことを指す。
- 漁船では、主機関、漁に必要な諸装備・機器の取り付けや、居住スペースの様々な工事 等々の工程ということになろう。
- 軍艦(特に駆逐艦やフリゲートなどの水上戦闘艦)の場合は、兵装(艦砲やミサイルランチャーなど)やセンサー類(レーダーなど)の取り付けはこの段階で行われる。
もともと同じ設計の船体ではあっても、艤装のしかたによって、操船のしやすさや業務遂行のしやすさや居住性など、船の性質は大きく異なるものとなるのであり、その意味で重要な要素である。操船の方法や業務のやりかたについてはひとりひとりの操縦者によって流儀(好みのスタイル)が異なっていることやこだわりがあることも多く、各人の流儀を実現するためには艤装も異なってくることになる。そのため、艤装の工程は、実際にその船を操縦することになる人物が事前にじっくり吟味し、細かく注文をつけるかたちで進められることも多い。
軍艦の場合、艤装員長[注釈 1]が、そのまま初代艦長に就任する場合が多い(つまり艦長になる見込みの人が、自分自身で自分の船の艤装の段階から陣頭指揮することが多い、ということである)。
自動車
[編集]自動車であれば、インパネやシートなどを取り付ける工程を指し、総組み立ての工程とも言える。「艤」の漢字が常用漢字外であり、かつ船を連想させ違和感があるため、義装(ぎそう)やぎ装とも書く。
トラックなどにおいては車体を製造・架装するコーチビルダーに対し、消防車やクレーンなどの特殊装備を持つ車両を製造・架装する会社は艤装メーカーとして区別される(特装車を参照)。
航空機
[編集]航空機の場合も同様に、機体に、運航(飛行)に必要な各種配管や配線や機器類、それに壁材・窓枠・座席などの内装品の取付(build-up)を指す。なお、取り外しての整備が必須のエンジンの場合、「本体に配管・配線と補機類を装着し,機体に取り付ける直前の姿まで仕上げること」も艤装と言う[2]。
艤装と建設工事
[編集]艤装における役務提供の中には、内装工事・電気工事・給排水設備工事・空調工事等、実態として建設工事とほぼ変わらないものも含まれる。しかしながら、艤装における役務提供は建設工事に含まれない。建設工事は土地に接着させた工作物[注釈 2]を対象とするものであり、艤装の対象は土地に接着させたものではないためである。
艤装に対して建設業法は適用されない。艤装における役務提供の経験は、たとえその内容が建設工事とほぼ変わらないものであったとしても、建設業法上の建設工事の実務経験としては認められない。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “その10-艤装工事 | フェリーができるまで”. ALINE. マルエーフェリー. 2020年10月19日閲覧。
- ^ “PART2 飛行機の運航/整備 [7]整備 10.関連用語”. 航空実用事典. Japan Airlines. 2020年10月19日閲覧。